説明

遊技台用電磁波遮蔽フイルム、及び該遊技台用電磁波遮蔽フイルムを用いた遊技台

【課題】パチンコ機などの遊技台内部の視認性を損なわず、不必要な電磁波の入射や放出を防止できる、遊技台の前面に取り付けられるのに好適な電磁波遮蔽フイルム及び当該電磁波遮蔽フィルムを取り付けた遊技台を低コストで提供する。
【解決手段】樹脂フイルム上に金属層を有し、該金属層が網目状構造であり、該金属層の厚みが3μm以下であることを特徴とする、遊技台用電磁波遮蔽フイルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技台の前面に取り付けられたガラスに用いて、ガラスの外側から入射する電磁波の侵入を防ぎ、遊技台自身の内部から発生する電磁波が放出されるのを防止する遊技台用電磁波遮蔽フイルムに関する。また、本発明は、遊技台の前面に取り付けられたガラスに前記電磁波遮蔽フイルムが取り付けられた遊技台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ機などの遊技台の前面に取り付けられるガラスは、遊技台内部の見通しを妨げることなく、遊技盤上の遊技球の位置を容易に確認することができる透明性を有する必要があり、厚さ3mmの透明ガラスが広く使われている。
【0003】
近年、無線発信機や携帯電話などを用いて遊技台の前面ガラスの外側から遊技台に向けて電波を発信し、遊技台(代表的にはパチンコ台)の出玉を制御する電磁誘導式センサ、賞球センサあるいは演算装置の基板などを故意に動作させる不正行為が増加している。
【0004】
通常、透明ガラスは、絶縁性材料で構成されるゆえに電気抵抗値が高く、電磁波を通過させてしまう。
【0005】
このような電磁波を遮蔽する目的で、遊技台の前面ガラスに金属繊維を貼合したフイルムが貼られた透明ガラス(特許文献1)や、透明導電性化合物をスパッタリングあるいはコーティング(蒸着)により付着させた透明ガラス(特許文献2、3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−214170号公報
【特許文献2】特開2000−216590号公報
【特許文献3】特開平9−219597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、金属繊維を貼合した場合は可視光線透過率が犠牲となり、遊技台内部の視認性を妨げる。視認性を高める目的で透明導電性化合物を用いる場合は遊技台のコストが大幅に高くなる割に充分な電磁波遮蔽能力が得られない。
【0008】
特に、MHz〜GHzといった高周波帯域では、非金属材料では充分な電磁波遮蔽が出来ない。
【0009】
そこで、本発明は、パチンコ機などの遊技台内部の視認性を損なわず、不必要な電磁波の入射や放出を防止できる、遊技台の前面に取り付けられたガラスに電磁波遮蔽フイルムが取り付けられた遊技台を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、以下である。
1) 樹脂フイルム上に金属層を有し、該金属層が網目状構造であり、該金属層の厚みが3μm以下であることを特徴とする、遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
2) ヘイズが5%以下であることを特徴とする、1)に記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
3) 反射光について、Lab系におけるL値が19〜29、a値が−3〜1、b値が−3〜1であることを特徴とする、1)又は2)に記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
4) 窒化銅層を有し、該層が網目状構造であることを特徴とする、1)〜3)のいずれかに記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
5) 金属層が、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を主成分とする、1)〜4)のいずれかに記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
6) 波長500nm〜550nmのいずれかの波長において、光線透過率が70%以上であることを特徴とする、1)〜5)のいずれかに記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
7) 1)〜6)のいずれかに記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルムを用いた遊技台。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遊技台内部の視認性を損なわず、不必要な電磁波の入射や放出を防止した、遊技台の前面ガラスに好適に取り付けることが可能な電磁波遮蔽フイルムを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】携帯電話を用いた遊技台の電磁波遮蔽効果の評価を実施したパチンコ台の外観を示す図。
【図2】本発明のパチンコ台を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムは、樹脂フイルム上に金属層を有し、該金属層が網目状構造であり、該金属層の厚みが3μm以下であることを特徴とする。
【0014】
樹脂フィルムとは、例えばポリエチレンテレフタレート(以降PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、或いは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、或いは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂等を溶融または溶液製膜したものである。これらの中でも、透明性、耐熱性、耐薬品性、コスト等の点より、PETフィルムが最も好ましい。
【0015】
樹脂フィルムの厚みとしては、50〜300μmの範囲が適当であるが、コストの点から80〜250μmの範囲が特に好ましい。また樹脂フイルムとしては、複数の層を積層した積層フィルムを用いることもできる。
【0016】
金属層とは、金属が積層されてなる状態をいう。なお、金属層を形成する金属の組成については、後述する。
【0017】
また金属層は、網目状構造であることが重要である。網目状構造とは、規則性の有無に関わらず、金属部分と下地の樹脂フィルムが露出した部分が混在する状態であって、金属部分は繋がっている状態を示す。網目状構造は、前述の通り金属部分と下地の樹脂フィルムが露出した部分が混在する状態であり、金属部分は繋がっている状態であれば特に限定されないが、好ましくはメッシュ状構造やストライプ状構造であり、より好ましくはメッシュ状構造である。
【0018】
また金属層の厚みは、3μm以下であることが重要である。厚みの下限は特に限定されないが、現実的な厚みの下限は0.1μm程度と思われる。金属層の厚みは、好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
【0019】
また、本発明でいう遊技台用電磁波遮蔽フイルムが、電磁波遮蔽機能を有するとは、後述するKEC法で測定した電界強度の減衰が10dB以上で、かつ同方法で測定された磁界強度の減衰が10dB以上である事を意味する。そして遊技台用電磁波遮蔽フイルムが、電磁波遮蔽機能を有するためには、金属層として導電性が良い金属を用いることが好ましく、耐久性を考慮すれば経時劣化が生じ難い金属を用いることが好ましい。例えば、金属層を形成する金属として、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を主成分とする方法を挙げることができる。

本発明にかかる金属層の網目状構造の製造方法について、以下に説明する。
【0020】
本発明にかかる金属層の網目状構造は、樹脂フイルム上のほぼ全域に、面内に連続した金属層を形成した後、網目状に加工して形成することが好ましい。
【0021】
本発明において、樹脂フイルム上に面内に連続した金属層を形成する方法として、気相製膜法、メッキ法が挙げられるが、環境上の問題や製膜の安定性の観点から気相製膜法が好ましく用いられる。特に本発明の金属層の網目状構造には気相製膜法を用いて形成することが好ましい。
【0022】
樹脂フイルム上と金属層の間に、接着剤(基材に銅箔を接着するための接着剤)やゼラチン乳剤層(感光性銀塩を用いた場合)を介在させる場合と、金属層を直接樹脂フイルム上に積層する場合があるが、接着剤を用いるとフイルム全体の厚みが増し、乳剤層を用いると網目化加工工程での金属層の密着性が低下するため、本発明にかかる場合は樹脂フイルムと金属層の間には他の層を介さずに、つまり樹脂フイルムと金属層が直接に積層された構成であることが好ましい。

樹脂フイルムと金属層を直接積層した構成とするために、本発明に好ましく用いられる気相製膜法とは、具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着、化学蒸着の中から選ばれる少なくとも1つの方法である。これらの気相製膜法の中でも、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が好ましく用いられる。
【0023】
金属層は複数の金属からなる複数の層で形成されていてもよい。この場合は、気相製膜法として、複数の方法を組み合わせて用いることもできる。例えば、面内に連続した金属層を真空蒸着法、その上に面内に連続した金属層または窒化銅層をスパッタリング法で形成することができる。
【0024】
また、面内に連続した金属層を真空蒸着法で形成し、その後に酸素や窒素などの気体雰囲気中でプラズマを発生させて金属層の表面に窒化銅層を形成することもできる。

網目状構造の金属層と網目状構造の窒化銅層の合計厚みは、上記のようにして樹脂フイルム上に積層される面内に連続した金属層の厚み、及び窒化銅層の厚みを制御することによって調整することができる。樹脂フイルム上に形成された面内に連続した金属層とその上に積層された面内に連続した窒化銅層は、その後に網目状構造に加工されても、ほぼその厚みと同程度の厚みを維持する。
【0025】
面内に連続した金属層を網目状構造とするための方法(網目化加工方法)については、2つの好ましい加工方法が挙げられるが、それらについて以下に説明する。
【0026】
金属層を網目状構造とするための好ましい1つの方法は、金属膜をエッチング法によって網目状に加工する方法である。
【0027】
金属層を網目状構造とするためのもう1つの好ましい方法は、予め基材上に、溶剤に可溶な樹脂を用いて、最終目的とする網目のパターンとは逆パターンを形成し、次いで、樹脂フイルムのパターン形成面に金属層を形成し、溶剤にて逆パターンの樹脂とその上の金属層を除去することによって、金属層の網目構造を形成する方法である。
【0028】
本発明では、金属層を網目状構造とするための方法として、前者のエッチングによるパターン加工方法が特に好ましく用いられる。

本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムは、ヘイズが5%以下であることが好ましい。ヘイズが5%を超えると遊技台の盤面が鮮明に見え難くなることがある。ヘイズの下限は特に限定されないが、現実的な下限は0.1%程度と思われる。ヘイズは、より好ましくは0.5〜4%である。
【0029】
ヘイズには樹脂フイルム自身のヘイズと、金属層が網目状構造であるが故のヘイズがあり、双方を考慮して目的とする遊戯台用電磁波遮蔽フィルムのヘイズを設計する必要がある。
【0030】
樹脂フイルム自身のヘイズは、樹脂内部の粒子による内部ヘイズと、樹脂フイルムに施された易接着等を目的とした表面処理層に含まれる粒子による外部ヘイズがある。本発明に用いる樹脂フイルムは内部ヘイズと外部へイズを合わせた樹脂フイルム自身のヘイズが小さいほど良く、光学フィルターやハードコートフイルムに用いる市販の光学用フイルムであれば、樹脂フイルム自身のヘイズが0.3%以下であり、それらを用いればよい。例えば、東レ(株)製“ルミラー”U48タイプ、東洋紡(株)製A4300タイプが好ましい。
【0031】
金属層の網目状構造に起因するヘイズは、網目を構成する金属層の線幅(ラインと称する)と、線の間隔(ピッチと称する)の組み合わせで設計する。ラインが太いほど、ピッチが狭く網目が密になるほどへイズは大きくなる。計算で設計する事は困難であり、一般的には網目を試作して評価する事の繰り返しで調整する。

本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムは、その反射光について、Lab系におけるL値が19〜29、a値が−3〜1、b値が−3〜1であることが好ましい。本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムの反射光について、L値が19〜29、a値が−3〜1、b値が−3〜1とすることで、反射光のギラツキ感が無く、視認性が良くなるために好ましい。L値が19を下回ると暗く感じ、29を超えると明るすぎて網目が目立つようになることがある。a値及びb値が−3〜1の範囲であると、反射光が青緑色を呈して、金属層の網目状構造が目立ち難くて好ましい。a値が−3〜1の範囲から外れたり、b値が−3〜1の範囲から外れると、金属層の網目状構造が目立ち易くなり、遊技台の盤面の視認性が悪くなることがある。なお、反射光のL値、a値、b値の測定法方は、後述する。
【0032】
一般に金属層の表面は、大気等と反応して時間と共に変色していくが、金属層の表面に対して酸化や窒化などを施すと、反射光の色を調整する事が可能である。そのため、本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムの反射光のL値を19〜29、a値を−3〜1、b値を−3〜1とするための方法は、金属層を酸化したり窒化することで調整することが好ましく、窒化銅層を形成する方法が特に好ましい。

本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムは、窒化銅層を有し、該層が網目状構造であることが好ましい。ここで網目状構造とは、前述の金属層の網目状構造で説明したのと同様である。
【0033】
また窒化銅層は、該層において窒化銅が主成分であることを意味する。そしてここでいう主成分とは、窒化銅層を構成する全ての成分100質量%において、50質量%以上100質量%を占める成分を意味する。そのため窒化銅層は、窒化銅以外の成分を含有することも可能である。
【0034】
本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムに、網目状構造の窒化銅層を形成するための方法は、前述の網目状構造の金属層を形成する方法と同様の方法を用いることができる。
【0035】
また遊技台用電磁波遮蔽フイルム中の窒化銅層の位置は特に限定されず、例えば、樹脂フィルム/窒化銅層/金属層、樹脂フィルム/金属層/窒化銅層、金属層/樹脂フィルム/窒化銅層、樹脂フィルム/金属層/窒化銅層/金属層/窒化銅層などの構成を挙げることができるが、特に好ましくはコストの点で樹脂フィルム/金属層/窒化銅層の構成である。
【0036】
窒化銅の単体の膜は、その反射光のL値が19〜29、a値が−3〜1、b値が−3〜1の範囲を示す。そのため、本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムにおいて、窒化銅層を設けることで、本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムの反射光について、L値を19〜29、a値を−3〜1、b値を−3〜1とすることができるために好ましい。
【0037】
なお、窒化銅層の形成方法は特に限定されないが、網目状構造の金属層として銅を選択した場合には、樹脂フィルム上の金属層の表面を窒素雰囲気でプラズマ処理する方法が、金属層の表面を窒化することができ、窒化銅層/銅層/樹脂フィルムの構成の本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムを容易に得ることができるために、経済性の点で好ましい方法である。

前述の通り金属層とは、金属が積層されてなる状態をいう。そして本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムの網目状構造の金属層を形成する金属の種類は特に限定されないが、網目状構造の金属層は、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を主成分とすることが好ましい。ここで主成分とは、金属層を構成する全ての成分100質量%において、50質量%以上100質量%を占める成分を意味する。金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム、及びクロムは、他の金属と比較して体積抵抗値が低く、電磁波遮蔽機能に必要な低い抵抗値を得ることができる。なお、この群より選ばれる複数の金属を、合金化したり、積層してもかまわない。
【0038】
なお、金属層の好ましい態様は積層した態様である。そして金属層を積層構成とする場合、樹脂フィルム側にニッケルを主成分とする金属層を形成し、その上に銅を主成分とする金属層を形成することが好ましい。そのため、本発明において特に好ましいのは、樹脂フィルム/金属層(ニッケルが主成分)/金属層(銅が主成分)/窒化銅層、とした態様である。
【0039】
金属層を形成する金属として、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を主成分とすることで、KEC法で測定した電界強度の減衰が10dB以上で、かつ同方法で測定された磁界強度の減衰が10dB以上とすることが容易となり、かつ経済的である。

本発明において、樹脂フイルム上に面内に連続した金属層を形成する方法として、気相製膜法、メッキ法が挙げられるが、環境上の問題や製膜の安定性の観点から気相製膜法が好ましく用いられる。特に本発明の金属層の網目構造には気相製膜法を用いて形成することが好ましい。

本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムは、波長500nm〜550nmのいずれかの波長において、光線透過率が70%以上であることが好ましい。波長500nm〜550nmのいずれかの波長における光線透過率が70%以上であると、遊技台の盤面が明るくなり視認性が良くなるので好ましい。また透過率の上限は、樹脂フイルム上に網目状構造の金属層を有した構造上、95%程度である。波長500nm〜550nmのいずれかにおいて、光線透過率を70%以上とするためには、金属層の網目状構造や窒化銅層の網目状構造について、そのライン幅及びピッチを調整することにより可能である。ここでいう光線透過率の測定は、樹脂フィルムに対して両面が非対称な場合(例えば、樹脂フィルムの一方の面のみに金属層を有する場合)であっても、いずれの方向から測定してもよく、いずれかの方向から測定した光線透過率が70%以上であることが好ましい。

本発明の遊技台用電磁波遮蔽フイルムは、遊技台の前面に取り付けられたガラスに貼り合わせることで、遊技台に用いることができる。なお、遊技台としては、例えば、パチンコ機を挙げることができる。

以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、本実施例で作製された各サンプルの評価方法を以下に示す。
【0040】
(1)金属層および窒化銅層の厚み測定
ミクロトームにて、作製したサンプルの断面を切り出し、その断面を電界放射型走査電
子顕微鏡((株)日本電子製JSM−6700F、加速電圧10kV、観察倍率2000
0倍)にて観察し、金属層、窒化銅層のそれぞれの厚みを測定した。測定は、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の5箇所について測定し、平均する。
【0041】
(2)網目状構造のライン幅及びピッチの測定
(株)キーエンス製デジタルマイクロスコープ(VHX−200)を用いて、倍率450倍で表面観察を行った。その測長機能を用いて、金属網目のラインとピッチを測長した。20cm×20cmサイズのサンプル1枚から、任意の10箇所について計測し、平均する。
【0042】
(3)光線透過率の測定
(株)島津製作所製分光光度計(MPC−3100)を用いて、波長500〜550nmの範囲の透過率を測定し、最も透過率の高い波長の透過率を用いた。測定は、金属層に対して樹脂フイルム側から光を入射させて測定した。
【0043】
(4)ヘイズの測定
日本電色工業(株)製の濁度計(NDH2000)を用い、JIS K7361−1(1997年制定)に準拠し測定した。測定は、金属層に対して樹脂フイルム側から光を入射させて測定した。

(5)Lab系におけるL値、a値、b値の測定
コニカミノルタ(株)製の分光測色計(CM-2500d)を用い、JIS Z 8722(2009年改訂)に準拠し測定した。測定は、樹脂フィルムに対して金属層の側から光を入射させて測定した。受光光学系はSCI、光源はC、測定角は2°で測定した。

(6)電磁波遮蔽性(電界強度の減衰、磁界強度の減衰)
KEC法を用い、1GHzの電界強度の減衰と磁界強度の減衰をそれぞれ測定した。KEC法で測定した電界強度の減衰が10dB以上で、かつ同方法で測定された磁界強度の減衰が10dB以上である事が電磁波遮蔽性を有することを意味する。この基準は、遊技台用に適した電磁波遮蔽性という観点で決定したものである。

(7)電磁波遮蔽効果の有無
実施例、比較例において作成したフイルムを、パチンコ台の前面ガラスに両面テープで貼り付け、遊技者側よりパチンコ台に向かい、1GHzの携帯電話機にて呼び出し通話を10回行い、パチンコ台の誤作動が無い場合を○、誤作動を起こした場合を×として判定した。

(実施例1)
以下の要領で網目状構造の金属層を有するフィルムを作製した。
【0044】
ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)U48、厚み100μm)の片面に、スパッタリング法によりニッケル層(厚み0.01μm)を製膜し、その上に真空蒸着法により銅層(厚み2.0μm)を製膜して、ニッケル層と銅層からなる金属層を形成した。続いて、金属層の表面にレジスト層を塗工形成し、正方形の格子状メッシュパターンのマスクを介してレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施し、最後に導電性メッシュ上のレジストを剥離除去して、網目状構造の金属層を有するフィルムを作製した。

(実施例2)
ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)U48、厚み100μm)の片面に、スパッタリング法によりニッケル層(厚み0.01μm)を製膜し、その上に真空蒸着法により銅層(厚み2.0μm)を製膜して、ニッケル層と銅層からなる金属層を形成した。
【0045】
更に金属層の上に、スパッタリング法により窒化銅(厚み0.04μm)を製膜して窒化銅層を形成した。続いて、上記の窒化銅層の表面にレジスト層を塗工形成し、正方形の格子状メッシュパターンのマスクを介してレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施し、最後に導電性メッシュ上のレジストを剥離除去して、網目状構造の金属層を有するフィルムを作製した。

(実施例3)
ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)U48、厚み100μm)の片面に、スパッタリング法によりニッケル層(厚み0.01μm)を製膜し、その上に真空蒸着法により銅層(厚み2.0μm)を製膜して、ニッケル層と銅層からなる金属層を形成した。
【0046】
更に金属層の上に、スパッタリング法により窒化銅(厚み0.04μm)を製膜して窒化銅層を形成した。続いて、上記の窒化銅層の表面にレジスト層を塗工形成し、正方形の格子状メッシュパターンのマスクを介してレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施し、最後に導電性メッシュ上のレジストを剥離除去して、網目状構造の金属層を有するフィルムを作製した。

(実施例4)
ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)U48、厚み100μm)の片面に、スパッタリング法によりニッケル層(厚み0.01μm)を製膜し、その上に真空蒸着法により銅層(厚み1.5μm)を製膜して、ニッケル層と銅層からなる金属層(a)を形成した。
【0047】
更に金属層の上に、スパッタリング法により窒化銅(厚み0.04μm)を製膜して窒化銅層を形成した。続いて、上記の窒化銅層の表面にレジスト層を塗工形成し、正方形の格子状メッシュパターンのマスクを介してレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施し、最後に導電性メッシュ上のレジストを剥離除去して、網目状構造の金属層を有するフィルムを作製した。

(実施例5)
ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)U48、厚み100μm)の片面に、スパッタリング法によりニッケル層(厚み0.01μm)を製膜し、その上に真空蒸着法により銅層(厚み1.5μm)を製膜して、ニッケル層と銅層からなる金属層を形成した。
【0048】
更に、スパッタリング法により窒化銅(厚み0.04μm)を製膜して窒化銅層を形成した。更に窒化銅層の上に、真空蒸着法により銅層(厚み2.0μm)を製膜した。更にスパッタリング法により窒化銅(厚み0.04μm)を製膜して窒化銅層を形成した。続いて、上記の窒化銅層の表面にレジスト層を塗工形成し、正方形の格子状メッシュパターンのマスクを介してレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施し、最後に導電性メッシュ上のレジストを剥離除去して、網目状構造の金属層を有するフィルムを作製した。

(比較例1)
ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)U48、厚み100μm)を用いた。
【0049】
【表1】

【0050】
<評価>
上記のようにして作製したフィルムについて、それぞれの評価を行った。その結果を表1に示す。
【0051】
表1の結果から、本発明の実施例1〜5のフィルムは、いずれも携帯電話を用いた遊技台の電磁波遮蔽効果において、パチンコ台は誤作動を生じなかった。
【0052】
しかしながら、比較例1および2は、携帯電話を用いた遊技台の電磁波遮蔽効果において、パチンコ台の誤作動が生じてしまった。
【0053】
図1は携帯電話を用いた遊技台の電磁波遮蔽効果の評価を実施したパチンコ台の外観を示す図である。パチンコ台の遊技台の前面にガラス板1が取り付けられいる。
【0054】
図2は本発明のフイルムをパチンコ台のガラス板に貼り付けた状態を示す。実施例および比較例に用いたフイルム2は、遊技台の内側を向くようにガラス面1に貼り付けた。
【符号の説明】
【0055】
1 パチンコ台のガラス板
2 パチンコ台のガラス板の内側に貼り付けたフイルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フイルム上に金属層を有し、該金属層が網目状構造であり、該金属層の厚みが3μm以下であることを特徴とする、遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
【請求項2】
ヘイズが5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
【請求項3】
反射光について、Lab系におけるL値が19〜29、a値が−3〜1、b値が−3〜1であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
【請求項4】
窒化銅層を有し、該層が網目状構造であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
【請求項5】
金属層が、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を主成分とする、請求項1〜4のいずれかに記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
【請求項6】
波長500nm〜550nmのいずれかの波長において、光線透過率が70%以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の遊技台用電磁波遮蔽フイルムを用いた遊技台。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−110335(P2013−110335A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255731(P2011−255731)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(391057421)東レKPフィルム株式会社 (5)
【Fターム(参考)】