説明

運動制御システムにおいて終了条件を満たす方法およびシステム

経路計画の終了条件を満たすシステムおよび方法の一実施形態は、経路計画において経過した総時間を追跡しながら(22)、経路計画に関する指令を連続して生成する(21)経路生成器(4)を利用している。この経路生成器は、経路計画の残り時間を計算し、残り時間の長さがサンプル期間全体の長さに満たない場合(23)、その残り時間を経路計画の最終サンプル期間の長さの代用とする(24)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の主題は、一般に、運動制御システムの、連続時間経路計画法によって決定した終了条件を満たすシステムおよび方法に関し、より具体的には、経路計画器に関する。
【背景技術】
【0002】
経路計画器または経路生成器は、一般に、モータを制御するために使用される運動コントローラを備える。経路計画を利用するモータが、製造、組立て、パッケージング、および他の生産能力(capacity)など、様々な工業システムにおいて見受けられる。これらのモータは、典型的には、ドリルビットまたはロボットアームなどの要素の運動を制御する。経路生成器によって、被制御要素の運動が決定される。
【0003】
経路生成器は、様々な運動経路アルゴリズムを離散時間コントローラと共に使用する。離散時間コントローラを連続時間経路計画アルゴリズムと共に使用すると、経路計画の終了条件を満たす課題が生じる。経路計画は、サンプリング期間内ではなく、連続的に決定された運動から構成される。離散時間コントローラは、所定のサンプリング期間でデータを出力することだけに制限されている。上記状況で生じる問題の例は、ある時点で停止させる命令が次のサンプリング期間の前に発生することなど、決定されている運動が終了条件となり得ることである。この問題によって、離散時間コントローラが次のサンプル期間の前に、モータに停止するように指示せず、例えば、運動の制約に反するあまり望ましくない経路を辿るおそれがある。
【0004】
従来の経路生成器には、例えば5ミリ秒ごとの均等なサンプル期間で終了条件に到達するように、減速開始時に初期条件を変更する補償スキームが実装されていた。これは計算的には望ましいが、コントローラに適用するには望ましくない。というのは、その時点で出力に制御不能なステップ変化が導入されるからである。このため、計画した経路に不連続性が生じる。他の既知の時間補償スキームも同様に、計算負荷が著しく増大するため望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5070287号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、連続時間経路計画を離散時間コントローラと共に使用したとき終了条件を満たす、より正確で改善された時間補償スキームが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、経路計画において経過した総時間を追跡しながら、経路計画に関する指令を連続して生成する経路生成器を実装した、経路計画の終了条件を満たすシステムおよび方法である。この経路生成器は、経路計画の残り時間を計算し、残り時間の長さがサンプル期間全体の長さに満たない場合、その残り時間を最終サンプル期間の長さの代用とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態の方法による経路計画を実施した制御システムの概略図である。
【図2】図1の経路計画によって生成した基本運動型の7つのセグメントを示す積重ねグラフである。
【図3】経路計画の終了点付近の加速度および速度対時間を示すグラフである。
【図4】図3の拡大図である。
【図5】経路生成器が経路計画の終了条件を満たすための本発明の一実施形態による方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態は、離散時間コントローラにおいて連続経路計画を実施した経路計画法およびシステムを含む。
【0010】
ここで図1を参照すると、本発明の一実施形態による経路計画用のプログラマブルオートメーションコントローラ(PAC)型運動システム1のブロック図が示されている。PACシステム1は、PACシステム型運動コントローラ9、PACシステム型運動モジュール(PMM)ファイバ端子ブロック5、およびマイクロプロセッササブシステム3からなる(PMM)マザーボード2を含む。PMMマザーボードは、経路生成器4を含むいくつかのサブシステムをさらに含む。経路生成器4は、経路計画専用マイクロプロセッサ3上で実行されるファームウェアサブシステムである。PMMマザーボードの機能を支援する他のファームウェアサブシステムには、PCIバックプレーンなどの通信バス6、および他の関連するハードウェア支援機能が含まれる。
【0011】
PMMファイバ端子ブロック5は、入出力モジュール(I/Oモジュール)7を含むフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)サブシステムを含む。図1には1つのI/Oモジュールしか示されていないが、PACシステムは、複数のI/Oモジュール、例えば、モータと連係するI/Oモジュール、または装置から様々なステータス、警告、もしくは入力信号を受信するI/Oモジュールを含んでもよい。I/Oモジュールは、入出力装置に結合される。
【0012】
PAC運動システムはまた、PMMサーボ制御ボード8を含む。このサーボ制御ボード8は、運動制御モジュール(PMM)内部にホストされたドータボードでよい。サーボ制御ボードは、例えばロボットアームなどの被制御要素の運動コントローラとして機能する。
【0013】
経路生成器4は、経路生成に従事する。経路生成とは、初期位置と目標位置との間において、指令された軌道を実時間で微分すること(derivation)を指す。本発明の一実施形態によれば、経路生成器4は、ユーザが供給した入力指令値に反することなく、初期位置と目標位置との間の最小時間経路を規定する。経路生成器は、指定された運動パラメータに基づいて経路プロファイルを生成する。指定された運動パラメータには、最終位置、最大速度、最大加速度、最大減速度、および指令された加加速度といった指令入力が含まれる。運動の初期条件は、経路生成器の現状態によって規定され、したがって初期位置、初期速度、初期加速度、および初期加加速度が既知の値となる。
【0014】
加加速度は、加速度または加速度傾斜の変化率として定義される。したがって、加加速度は加速度の微分(derivative)であり、平滑な始動が求められる数多くの用途で重要な変数となる。加加速度制御はまた、機械摩耗を低減させるために重要である。加速度、減速度、および速度制約を条件とした、初期位置から最終位置まで一定の加加速度経路を生成する運動方程式が周知である。したがって、上述の既知の値を運動方程式と併せると、未知数を解いて所望の軌道を生成することができる方程式の集合(equation set)が得られる。
【0015】
任意の運動を実施する前に、既知/未知の変数に基づいて相関した運動方程式を解くことができる。この方法は、代数学的にも数式的にも困難ではあるが、ある解決策が得られる。好ましい実施形態では、マイクロプロセッサにより、一定加加速度モードを利用して、経路計画を実時間で計算する。言い換えれば、加加速度を制御変数とし、加速度および速度を最大値とする。
【0016】
本発明の一実施形態では、経路生成器4は、運動を2つのフェーズに分割する2フェーズ軌道生成法を利用している。第1フェーズでは、加速度または減速度を介して、運動が定速に到達するように指令する。第2フェーズでは、経路生成器は、進行中の運動を常に監視して、目標位置または所望の終了条件に到達するために減速を開始しなければならない時点を決定する。2フェーズ軌道生成は、任意の運動の前に実施する。
【0017】
次に、図2を参照すると、2フェーズ法を用いて生成された、共通時間尺度上の時間に対する経路指令のグラフが示されている。図2は、運動が完了するために7つのセグメントが必要となる基本運動をさらに示す。より具体的には、7つのセグメントは、第1フェーズの3つのセグメント、定速セグメント、および第2フェーズの3つのセグメントを含む。図2では、加加速度は各セグメントで一定である。定速セグメントを備えたこの2フェーズ運動は、ポイントツーポイント(point−to−point)運動から生じるものであり、非制御変数は全て最大値に達している。速度、加速度、および減速度は全て、それらの最大値に達している。表1に、各セグメントおよびその特有の側面を示す。
【0018】
【表1】

【0019】
加加速度制御運動を使用することができるが、これは必ずしも必要ではない。本発明の方法は、運動の時間が決定している場合、どのような制御運動も利用することができる。理想的な経路軌道は既知であり、2つのサンプル期間の間のどこかに位置することになる。終了条件を満たすために、経路生成器は、経路計画の終了時間と、運動が運動コントローラに指令されるサンプル期間との差を補償しなければならない。
【0020】
例えば、図3を参照すると、サンプル経路計画の終了点付近の加速度および速度対時間のグラフが示されている。図3に示す時間値は単なる例示にすぎず、本発明を限定するものではない。加速度対時間を表すグラフは、加加速度ゼロの一定減速度セグメントを示し、約141.1から141.4マイクロ秒の間で一定減速度が与えられている。このセグメントは、所望の終了条件に到達するように減速率を低減させる加加速度を指令する必要がある場合に終了する。一定加加速度セグメントが、141.4マイクロ秒の後に開始しており、ここでは指定された加加速度を利用して減速率の低下10を制御している。このセグメントは、運動が所望の終了条件に到達すると終了する。tは、経路計画のサンプル期間終了点を表す。さらに、速度対時間を表すグラフは、経路計画の終了点付近で、運動速度15が1秒当たりゼロメートルに近接していく様子を示している。この例では、終了条件となるには、運動が141.4から141.5マイクロ秒の間で停止する必要がある。位置対時間を表すグラフは、停止点における被制御要素の位置を示している。
【0021】
次に図4を参照すると、図3のグラフの拡大図が示されている。図4に示す時間値は単なる例示にすぎず、本発明を限定するものではない。図4は、運動が、サンプル期間の間のその停止点に到達する様子を示している。1マイクロ秒のサンプル期間(複数可)を使用しているが、他のサンプル時間も同様に使用することができる。グラフ35は、運動が141.492から141.493マイクロ秒の間の141.492マイクロ秒付近で所望の終了条件に到達した後、加速度が0m/sに近接していく様子を示している。tは、経路計画の残り時間を表し、tは、経路計画のサンプル期間終了点を表す。さらに、速度対時間を表すグラフは、経路計画30の終了点付近で、運動の速度が0m/sに近接していく様子を示している。位置対時間を表すグラフは、停止点26における被制御要素の位置を示している。
【0022】
次に、図5を参照すると、経路生成器によって、上述のものを含めて、任意の連続経路計画アルゴリズムから導出される経路計画の終了条件を満たす方法20が示されている。経路生成器は、経路が実時間で終了条件に到達することになる所望の時間を計算する。この経路生成器は、指令を被制御要素に出力するタイミングを調節するために使用する離散時間コントローラの離散サンプリング期間による制約を受けない。この経路生成器は、経路に関する運動指令を生成し、離散時間コントローラが、その指令を出力する(21)。経路生成器は、経路計画において経過した総時間を追跡し(22)、経路計画の残り時間を計算する。残り時間が、サンプル期間全体の時間に満たない場合(23)、経路生成器は、残り時間の長さを、経路計画アルゴリズムのサンプル期間全体の時間長さの代用とする(24)。経路生成器は、残り時間を最後のサンプル期間として処理することにより最終値を計算することによって経路計画の終了条件を満たし、したがって、離散時間コントローラが被制御要素に対して終了条件指令を出力することになる(25)。さらに、上述の方法によって計算した最終値を、運動の終了条件と照合する。この照合によって、運動が首尾よく完了したか、また、全ての計算が終了条件に関して正確であったか検証する。
【0023】
本明細書に記載し、添付の図に示す運動制御システムの終了条件を満たす方法およびシステムは、単なる例示にすぎない。本開示には本発明のいくつかの実施形態しか詳細には記載していないが、本開示を検討した当業者には、添付の特許請求の範囲に記載の主題の新規な教示および利点から実質的に逸脱せずに多くの修正形態(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状、および比率、パラメータ値、取付け配置、材料の使用、向きなどの変形形態)が可能であることが容易に理解されよう。したがって、かかる修正形態は全て、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内に含まれるものである。いかなる工程または方法ステップの順序またはシーケンスも、代替実施形態に従って変えること、または並べ直すことができる。特許請求の範囲では、いかなるミーンズプラスファンクション項も、記載の機能を実施するものとして本明細書に記載の構造、さらには構造的な均等物だけでなく同等の構造をも対象とするものである。添付の特許請求の範囲に示す本発明の実施形態の趣旨から逸脱することなく、好ましい実施形態、および他の例示的実施形態の設計、動作条件、および構成に関して他の置換え、修正、変形、および省略を行うことができる。したがって、本発明の技術範囲は、上述の実施形態だけでなく、添付の特許請求の範囲に含まれる全てのものを包含する。
【符号の説明】
【0024】
1 プログラマブルオートメーションコントローラ(PAC)型運動システム
2 (PMM)マザーボード
3 マイクロプロセッササブシステム
4 経路生成器
5 (PMM)ファイバ端子ブロック
6 通信バス
7 I/Oモジュール
8 PMMサーボ制御ボード
9 PACシステム型運動コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路生成器を利用して、経路計画の終了条件を満たす方法であって、
前記経路生成器から経路計画上の運動に関する制御指令を出力すること、
前記経路計画上の前記運動が完了する残り時間を計算すること、
残り時間がサンプル期間の長さに満たないか判定すること、および
残り時間がサンプル期間に満たない場合、前記残り時間を、サンプル期間の長さの代用とすることを含む、方法。
【請求項2】
経路生成器を利用して、経路計画の終了条件を満たす方法であって、
前記経路生成器から経路計画上の運動に関する制御指令を出力すること、
前記経路計画上の前記運動が完了する残り時間を計算すること、
残り時間がサンプル期間の長さに満たないか判定すること、
残り時間がサンプル期間に満たない場合、前記残り時間を、サンプル期間の長さの代用とすることによって、最終値を計算すること、および
前記最終値を、前記運動の終了条件と照合することを含む、方法。
【請求項3】
経路計画の終了条件を満たすシステムであって、
経路計画に関する指令を生成する経路生成器を備え、
前記経路計画上の運動が完了する残り時間を計算すること、
残り時間がサンプル期間の長さに満たないか判定すること、
残り時間の長さがサンプル期間に満たない場合、前記残り時間を、サンプル期間の長さの代用とすることを含む、システム。
【請求項4】
前記経路生成器が、マイクロプロセッサのファームウェアサブシステムであり、
前記経路生成器サブシステムが、経路計画専用であることを特徴とする請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは、経路計画の終了条件を満たすオートメーションコントローラであって、
フィールドプログラマブルゲートアレイサブシステムを備えるファイバ端子ブロックと、
少なくとも1つの入出力モジュールと、
サーボコントローラと、
経路生成器と、を備えることを特徴とする請求項3記載のシステム。
【請求項6】
経路計画の終了条件を満たすシステムであって、
経路計画に関する指令を生成する経路生成器を備え、
前記経路計画上の運動が完了する残り時間を計算すること、
残り時間がサンプル期間の長さに満たないか判定すること、
残り時間がサンプル期間に満たない場合、前記残り時間を、サンプル期間の長さの代用とすることによって、最終値を計算すること、および
前記最終値を、前記運動の終了条件と照合することを含む、システム。
【請求項7】
経路計画の終了条件を満たすマイクロプロセッサであって、
前記経路計画上の運動が完了する残り時間を計算するように構成された、経路計画に関する指令を生成する経路生成器を備え、
残り時間がサンプル期間の長さに満たないか判定すること、および
残り時間の長さが前記サンプル期間に満たない場合、前記残り時間を、前記サンプル期間の長さの代用とすることを含む、マクロプロセッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−501293(P2011−501293A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530001(P2010−530001)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/073135
【国際公開番号】WO2009/055123
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(503445320)ジーイー・インテリジェント・プラットフォームズ・インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】