説明

運動案内装置

【課題】
ブロック本体側の負荷通路及びボール戻し通路とエンドプレート側の方向転換路との接続部における段差の発生を可及的に解消し、移動ブロック内におけるボールの無限循環を一層円滑に行うことが可能な運動案内装置を提供する。
【解決手段】
エンドプレートには、方向転換路の外周側案内面を備えると共に負荷通路及びボール戻し通路の端部開口と対向したボール誘導溝が形成される一方、かかるエンドプレートが装着されるブロック本体の端面には、前記負荷通路の端部開口とボール戻し通路の端部開口との間に位置して前記ボール誘導溝内に挿入される規制プレートが固定され、この規制プレートは、前記エンドプレートのボール誘導溝と非接触に保たれると共に、前記エンドプレートに具備された外周側案内面と対向して前記方向転換路を構成する内周側規制面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールの無限循環路を有する移動ブロックが軌道レールに沿って自在に往復運動を行う運動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の運動案内装置としては、例えば実開平6−58235号公報に開示されるリニアガイド装置が知られている。このリニアガイド装置は、長手方向に沿ってボールの転走溝が形成された軌道レールと、前記転走溝を転動する多数のボールを介して前記軌道レールに組み付けられると共にこれらボールの無限循環路を有する移動ブロックとから構成されており、ボールが移動ブロックと軌道レールとの間で荷重を負荷しながら転動すると共に前記無限循環路内を循環することにより、移動ブロックと軌道レールとが相対的に往復運動を行うことが可能となっている。
【0003】
前記移動ブロックは、ブロック本体と、このブロック本体の移動方向の前後両端に固定されるエンドプレートと、前記ブロック本体の前後両端面に配置されると共に前記エンドプレートによって覆われる半円状のリターンピースとから構成されている。前記ブロック本体は、軌道レールの転走溝に対向する負荷転走溝を有し、この負荷転走溝と軌道レールの転走溝とによってボールが荷重を負荷しながら転走する負荷通路が構成されている。また、前記ブロック本体は前記負荷通路と平行なボール戻し通路を備えており、このボール戻し通路はその内径がボール直径よりも僅かに大きく設定されている。すなわち、ボールはこのボール戻し通路内を無負荷状態で転走する。
【0004】
前記エンドプレート及びリターンピースはボールの方向転換路を構成している。この方向転換路は前記負荷通路の端部開口とボール戻し通路の端部開口とを繋ぐ曲線路であり、前記ブロック本体の両端にこれらエンドプレート及びリターンピースを配置することにより、負荷通路のそれぞれの端部が対応するボール戻し通路のそれぞれの端部と方向転換路によって連結され、前記移動ブロックにボールの無限循環路が完成するようになっている。
【0005】
前記エンドプレートには方向転換路の外周側案内面が、前記リターンピースには方向転換路の内周側案内面がそれぞれ形成されており、これら前記外周側案内面及び内周側案内面は共にボールの転走方向と直交する方向の断面が略半円状に形成されている。このため、エンドプレートの外周側案内面に対してリターンピースの内周側案内面を対向させるようにして両者を組み合わせると、ボール直径よりも僅かに大きな内径の断面円形状の方向転換路が完成する。
【0006】
前記リターンピースはエンドプレートに形成された凹部に嵌合して位置決めされ、リターンピースの内周側案内面がエンドプレートの外周側案内面と対向するようになっている。また、前記リターンピースを嵌合させたエンドプレートをブロック本体の所定位置に対して結合すると、かかるリターンピースがブロック本体に形成された負荷転走溝とボール戻し孔との間に位置し、リターンピースの内周側案内面はその一端においてブロック本体の負荷転走溝と連続する一方、他端においてボール戻し孔の内周面と連続するように構成されている。
【0007】
一方、特開平7−317762号公報に開示される運動案内装置では、前記ブロック本体の端面に対して前記エンドプレートを直接固定するのではなく、前記ブロック本体の端面に対して合成樹脂製のプレート部を予め射出成形し、このプレート部を介して前記エンドプレートがブロック本体に固定されるようになっている。この場合、前記方向転換路を構成する半円状のリターンピースは前記プレート部と共に成形されており、かかるプレート部に対しエンドプレートを装着した際に、エンドプレートに形成された凹部に対してリターンピースが嵌合し、リターンピースの内周側案内面がエンドプレートの外周側案内面と対向するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平6−58235号公報
【特許文献2】特開平7−317762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、リターンピースの内周側案内面はボール転走方向と直交する方向に沿った断面が略半円状に形成されているが、例えばボールが方向転換路とブロック本体の負荷通路との間を円滑に往来するためには、かかる内周側案内面と負荷通路を構成するブロック本体の負荷転走溝とが段差なく接続されることが重要である。しかし、リターンピースの内周側案内面の端縁は半円状をなす曲線であり、また、負荷転走溝の端縁も同様にして曲線であることから、直線同士を合致させる場合と異なり、別々に形成された曲線同士を完全に合致させることは困難である。このことは、リターンピースの内周側案内面とブロック本体の負荷転走溝との接続部に限らず、かかる内周側案内面とブロック本体のボール戻し孔との接続部に関しても同じである。
【0010】
また、前述の実開平6−58235号公報の運動案内装置のように、リターンピースをエンドプレートの凹所に嵌合させた後に当該エンドプレートをブロック本体に固定する構造では、ブロック本体に対するエンドプレートの固定が正確に行われないと、リターンピースがブロック本体に対して正確に位置決めされず、この点においても、リターンピースの内周側案内面の端縁を負荷転走溝の端縁と完全に合致させることは困難である。
【0011】
特開平7−317762号公報に開示される運動案内装置の場合、リターンピースがブロック本体に対して直接射出成形されたプレート部に形成されているので、かかるプレート部に対するエンドプレートの固定精度に起因してリターンピースのブロック本体に対する位置決め精度が悪化するということは想定されない。しかし、ブロック本体に対して射出成形された合成樹脂製のプレート部は成形完了後の収縮等に起因して必ずしも寸法精度が高いとは言えず、成形されたリターンピースの内周側案内面の端縁における形状と、ブロック本体の負荷転走溝の端縁における形状とを合致させることは大変難しい。
【0012】
すなわち、これらの理由から従来の運動案内装置では、リターンガイドの内周側案内面とブロック本体の負荷転走溝との接続部では段差が発生し易く、かかる段差を完全に排除することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、ブロック本体側の負荷通路及びボール戻し通路とエンドプレート側の方向転換路との接続部における段差の発生を可及的に解消し、移動ブロック内におけるボールの無限循環を一層円滑に行うことが可能な運動案内装置を提供することにある。
【0014】
すなわち、本発明は、長手方向に沿ってボールの転走溝が形成された軌道レールと、多数のボールを介して前記軌道レールに組み付けられると共に前記ボールの無限循環路を有し、当該軌道レールに沿って移動自在な移動ブロックと、を備えた運動案内装置であり、前記移動ブロックは、前記軌道レールの転走溝と対向してボールの負荷通路を構成する負荷転走溝を有すると共に前記負荷通路と平行なボール戻し通路を有するブロック本体と、このブロック本体の移動方向の前後両端に固定され、かかるブロック本体と協働して前記負荷通路と無負荷通路とを繋ぐボールの方向転換路を構成する一対のエンドプレートとを備えている。
【0015】
そして、前記エンドプレートには、前記方向転換路の外周側案内面を備えると共に前記負荷通路及びボール戻し通路の端部開口と対向したボール誘導溝が形成される一方、かかるエンドプレートが装着される前記ブロック本体の端面には、前記負荷通路の端部開口とボール戻し通路の端部開口との間に位置して前記ボール誘導溝内に挿入される規制プレートが固定されている。この規制プレートは、前記エンドプレートのボール誘導溝と非接触に保たれると共に、前記エンドプレートに具備された外周側案内面と対向して前記方向転換路を構成する内周側規制面を有している。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明によれば、エンドプレートの外周側案内面と協働して方向転換路を構成する規制プレートは前記ブロック本体に固定されており、しかもこの規制プレートはエンドプレートに形成されたボール誘導溝とは非接触なので、ブロック本体に対するエンドプレートの固定精度に影響されることなく、かかる規制プレートをブロック本体の所定位置に精度良く位置決めすることが可能となる。これにより、規制プレートに設けられた内周側規制面をブロック本体の負荷転走溝及びボール戻し孔と段差なく連続させ、移動ブロック内におけるボールの無限循環を円滑化させることが可能となる。
【0017】
また、前記エンドプレートのボール誘導溝はその内部をボールが転動することから、少なくともボールの直径よりも僅かに大きな幅で形成されているが、前記ブロック本体に固定される規制プレートは当該ボール誘導溝に挿入されるものの、当該ボール誘導溝とは非接触であり、規制プレートの厚みはボール誘導溝の幅よりも薄い。このため、規制プレートに形成された内周側規制面はボールの転走方向と直交する方向の幅が狭くなり、ブロック本体の負荷転走溝又はボール戻し孔に対する位置決めが容易となる。この点においても、前記規制プレートに設けられた内周側規制面をブロック本体の負荷転走溝及びボール戻し孔と段差なく連続させ、移動ブロック内におけるボールの無限循環を円滑化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した運動案内装置の第一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】第一実施形態に係る運動案内装置の分解斜視図である。
【図4】第一実施形態に係る運動案内装置の分解斜視図であり、ブロック本体から規制プレートを取り外した状態を示すものである。
【図5】第一実施形態に係る運動案内装置のエンドプレートを示す斜視図である。
【図6】第一実施形態に係る運動案内装置のボール誘導部材を示す斜視図である。
【図7】第一実施形態に係るエンドプレートとボール誘導部材との組合せ状態を示す斜視図である。
【図8】方向転換路内におけるボールと規制プレートとの位置関係を示す断面図である。
【図9】第一実施形態に係るブロック本体の端面に対してボール誘導部材を固定した状態での規制プレートの周辺を示す拡大図である。
【図10】規制プレートの内周側規制面と負荷転走溝との段差を削り取る作業を示す断面図である。
【図11】本発明の第二実施形態の運動案内装置に適用するボール連結体を示す側面図である。
【図12】図11に示したボール連結体の平面図である。
【図13】第二実施形態に係る運動案内装置のブロック本体を示す分解斜視図である。
【図14】第二実施形態のブロック本体に組み付けられるパイプ部材を示す断面図である。
【図15】第二実施形態に係るブロック本体の端面に対してボール誘導部材を固定した状態での規制プレートの周辺を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に沿って本発明の運動案内装置を詳細に説明する。
【0020】
図1及び図2は、本発明を適用した運動案内装置の第一実施形態を示すものである。この運動案内装置は、直線状に形成された長尺な軌道レール1と、転動体としての多数のボール3を介して前記軌道レール1に組み付けられると共にこれらボール3の無限循環路を有する移動ブロック2とから構成されており、ボール3が前記無限循環路内を循環することにより、前記移動ブロック2が軌道レール1に跨るようにして該軌道レール1上を自在に往復運動するように構成されている。
【0021】
前記軌道レール1は断面略矩形状に形成されており、その両側面には凹部10が形成されており、結果として各側面の肩部に突堤11が形成されている。各突堤11の上下にはボールの転走溝12が形成されており、軌道レール全体では4条の転走溝12が形成されている。各転走溝12は軌道レール1の底面に対して45°の角度で傾斜しており、前記突堤11の上側に位置する転走溝12は斜め上方へ45°の角度で面する一方、下側に位置する転走溝12は斜め下方へ45°の角度で面している。また、かかる軌道レール1には長手方向に沿って所定の間隔で固定ボルトの取付け孔13が形成されており、当該軌道レール1を機械装置などに敷設する際に利用される。尚、前記軌道レール1に対する転走溝12の配置、傾斜角度及びその条数は、前記移動ブロック2に必要される負荷能力に応じて適宜変更して差し支えない。
【0022】
一方、前記移動ブロック2は前記軌道レール1の一部を収容する案内溝を有してチャネル状に形成されており、軌道レール1に対してこれに跨がるようにして配置されている。図3の分解斜視図に示すように、この移動ブロック2は、金属製のブロック本体4と、このブロック本体4を挟むようにして当該ブロック本体4の両端面に固定された一対の合成樹脂製エンドプレート5と、前記ブロック本体4と各エンドプレート5の間に配置されるボール誘導部材6とから構成されている。図4に示すように、前記ボール誘導部材6は固定ねじ60によってブロック本体4の端面に対して直接固定され、このボール誘導部材6に覆い被さるようにして前記エンドプレート5がブロック本体4の端面に対して固定される。符号50はエンドプレート5をブロック本体4に対して締結するための取付けボルトである。尚、図3及び図4は前記ブロック本体4に装着される一対のエンドプレート5のうち、一方のエンドプレート5のみを描いたものであり、他方のエンドプレート5は省略している。また、これら図3及び図4はボール3を省略して描いてある。
【0023】
図2に示されるように、前記ブロック本体4は機械装置などの取付け面41が形成された水平部4a、及びこの水平部4aと直交する一対のスカート部4bを備えて断面略チャネル状に形成されている。前記水平部には前記取付け面41及び固定ボルトが螺合するタップ孔42が形成される一方、各スカート部4bの内側にはボール3が転走する負荷転走溝43がそれぞれ形成されている。前記軌道レール1の転走溝12と前記ブロック本体4の負荷転走溝43は互いに対向し、ボール3が移動ブロック2と軌道レール1との間で荷重を負荷しながら転走する負荷通路を構成する。すなわち、ブロック本体4には4条の負荷転走溝43が形成されている。この実施形態において、各負荷転走溝43の長手方向に直交する断面は、ボール3の球面よりも僅かに大きな曲率半径のサーキュラーアーク状をなしているが、その形状は適宜設計変更することができる。また、各スカート部4bには各負荷通路に対応したボール戻し通路44が形成されており、前記負荷通路を転走し終えて荷重から開放されたボール3が負荷通路内とは逆方向に転走するようになっている。
【0024】
尚、図2中において、符号45はブロック本体4のスカート部4bと軌道レール1の側面との間を密封するシール部材である。また、符号46は前記ブロック本体4にねじ止めされた保持器プレートであり、前記移動ブロック2を軌道レール1から抜き取った際に、ボール3が負荷通路から転がり落ちるのを防止している。
【0025】
図5は前記エンドプレート5を示す斜視図であり、かかるエンドプレート5を前記ブロック本体4との当接面側から観察したものである。このエンドプレートにはボール3の方向転換路を構成する複数のボール誘導溝51が形成されている。これらボール誘導溝51はブロック本体4の各負荷転走溝43に対応しており、軌道レール1を取り囲むようにしてエンドプレート5の4ヶ所に形成されている。各ボール誘導溝51は前記ブロック本体4の負荷通路及びボール戻し通路44と対向すべく長孔状の開口を有しており、内部には略U字状に湾曲した外周側案内面52を有している、この外周側案内面52は前記負荷通路とボール戻し通路44との間でボール3を案内し、ボール3の進行方向を180°転換する。この外周側案内面52の前記軌道レール1に面した端部は僅かに切り欠かれて掬い上げ部53が形成されており、軌道レール1の転走溝12に接しながら負荷通路を転走してきたボール3はこの掬い上げ部53に乗り上げるようにして前記ボール誘導溝51内に収容される。
【0026】
一方、図6は前記ボール誘導部材6を示すものである。このボール誘導部材6は前述のように固定ねじ60によってブロック本体4のスカート部4bの端面に固定されるものであり、ブロック本体4に固定されるベースプレート61と、このベースプレート61から垂直に起立した規制プレート62とから構成されている。前記規制プレート62は前記エンドプレート5のボール誘導溝51に挿入され、かかるボール誘導溝51内に形成された外周側案内面52と協働してボール3の方向転換路を構成する。第一実施形態のボール誘導部材6では、前記ベースプレート61に対して一対の規制プレート62を立設させており、1個のボール誘導部材6がエンドプレートに形成された二つのボール誘導溝に対応している。
【0027】
前記規制プレート62は前記ベースプレート61に対して略半円状に突出しており、その外周面は前記方向転換路内におけるボール3の軌道を制限する内周側規制面63となっている。かかる内周側規制面63はボール3の直径よりも僅かに大きな空隙をおいて前記エンドプレート5の外周側案内面52と対向している。そして、エンドプレート5の外周側案内面52と規制プレート62の内周側規制面63とが対向することにより、ボール3を負荷通路とボール戻し通路44との間で案内する方向転換路が完成する。この規制プレート62はその厚みtがエンドプレート5のボール誘導溝51の幅よりも薄く形成されており、規制プレート62をボール誘導溝51内に挿入しても、かかる規制プレート52はボール誘導溝51の内側壁に対して非接触となっている。
【0028】
このようなボール誘導部材6は例えば金属板に対して曲げ加工あるいは鍛造加工を施して製作されている。また、前記ベースプレート61には、このボール誘導部材6をブロック本体4に固定する固定ねじ60の貫通孔64が設けられると共に、前記エンドプレート5をブロック本体4に固定する取付けボルト50の貫通孔65が設けられている。尚、前記ボール誘導部材6は金属製に限られるものではなく、合成樹脂材料を成形したものてあっても差し支えない。
【0029】
図7は前記エンドプレート5とボール誘導部材6を組み合わせた状態を示す斜視図である。図5に示されるように、エンドプレート5には一対のボール誘導部材6のベースプレート61との干渉を避けるための収容溝54が二ヶ所に形成されている。このため、図7に示すようにボール誘導部材6を一対のエンドプレート5と組み合わせると、各ボール誘導部材6がエンドプレート5に対して突出することなく収容され、かかるエンドプレート5をブロック本体4の端面に対して固定することができる。実際には、各ボール誘導部材6をブロック本体4の端面に固定した後にエンドプレート5をブロック本体4に固定しており、ボール誘導部材6をブロック本体4に固定することなく図7のようにエンドプレート5と組み合わせることはない。前記エンドプレート5に形成された収容溝54はボール誘導部材6のベースプレート61よりも若干大きめに形成されており、ブロック本体4に固定されたボール誘導部材6の上から前記エンドプレート5を当該ブロック本体4に固定したとしても、ボール誘導部材6及びエンドプレート5の夫々がブロック本体4に対して個別に位置決めされるようになっている。
【0030】
そして、エンドプレート5とボール誘導部材6をこのように組み合わせることで、エンドプレート5の外周側案内面52と規制プレート62の内周側規制面63とが対向し、ブロック本体4の負荷通路とボール戻し通路44とを繋ぐ方向転換路7が完成する。また、これらエンドプレート5とボール誘導部材6をブロック本体に固定することにより、ブロック本体4の負荷通路とボール戻し通路44とが方向転換路7によって連結され、前記移動ブロック2にボール3の無限循環路が完成することになる。
【0031】
図8はブロック本体4に対してボール誘導部材6及びエンドプレート5を固定して完成した方向転換路7を示す断面図であり、かかる方向転換路7をボール3の転走方向と直交する方向に沿って切断したものである。前述のようにボール誘導部材6の規制プレート62はその厚みがエンドプレート5のボール誘導溝51の幅よりも薄いので、かかる規制プレート62はボール誘導溝51の内側壁55には接触しておらず、規制プレート62の両側にはボール誘導溝51の内側壁55との間に空間が形成されている。このような空間が存在しても、方向転換路7内のボール3はエンドプレート5の外周側案内面52及び規制プレート62の内周側規制面63によってその転走軌道を規制されているので、方向転換路7内においてボール3の整列状態が乱れることはない。すなわち、前記内周側規制面63の幅がボール誘導溝51の幅に対して極端に小さい場合でも、方向転換路7内におけるボール3の転走に関して何ら支障はなく、かかる意味において規制プレート62の内周側規制面63は方向転換路7内の各ボール3が点接触を生じる程度のものであれば良い。
【0032】
また、前記規制プレート62の両側に形成された空間はグリース等の潤滑剤の貯留スペースとして利用することができ、無限循環路内を転走するボール3をより一層良好に循環することが可能である。この点からも、前記規制プレート62の厚みはエンドプレート5のボール誘導溝51の幅よりも極端に薄くて差し支えない。
【0033】
図9は、ブロック本体4の端面に対してボール誘導部材6を固定した状態での規制プレート62の周辺を示す拡大図である。ボール誘導部材6をブロック本体4の端面に固定した状態では、ボール誘導部材6の規制プレート62がブロック本体4の負荷通路40の端部開口とボール戻し通路44の端部開口との間に位置しており、前記規制プレート62に形成された内周側規制面63が負荷転走溝43の端部及びボール戻し通路44の端部とそれぞれ合致している。
【0034】
図9中における一点鎖線は前記エンドプレート5に形成されたボール誘導溝51を示している。この図から判るように、前記ボール誘導溝51の幅wはその内部をボール3が転走することから当該ボール3の直径よりも僅かに大きな溝幅を有しているが、前記規制プレート62の厚みtはボール誘導溝51の溝幅wよりも狭く設定されている。このように、規制プレート62の厚みtをエンドプレート5のボール誘導溝51の溝幅wに比べて小さく設定することで、規制プレート62に形成された内周側規制面63と負荷転走溝43の端部とが接している領域は小さくなり、その分だけ当該内周側規制面63を段差なく負荷転走溝43の端部に合致させることが容易となる。このことは、ボール戻し通路44の端部に対する内周側規制面63の位置合わせについても同じである。
【0035】
以上のように構成された運動案内装置によれば、エンドプレート5の外周側案内面52と協働してボール3の方向転換路を構成する規制プレート62がブロック本体4に固定されており、しかも当該規制プレート62は前記外周側案内面52が形成されたエンドプレート5のボール誘導動溝51とは非接触なので、ブロック本体4の負荷転走溝43及びボール戻し通路44に対する規制プレート62の位置合わせがエンドプレート5の成形精度、エンドプレート5のブロック本体4に対する固定精度に影響を受けることがなく、かかる規制プレート62に具備された内周側規制面63を精度良くブロック本体4の負荷転走溝43及びボール戻し通路44に対して接続することが可能となる。
【0036】
また、前記規制プレートの厚みtをエンドプレート5のボール誘導溝51の溝幅wに比べて小さく設定したことにより、かかる規制プレート62に具備された内周側規制面63をブロック本体4の負荷転走溝43の端部及びボール戻し通路44の端部に対して段差なく位置合わせすることが容易となり、移動ブロック2の組み立て作業の容易化を図りつつも、無限循環路内におけるボール3の循環の円滑化を達成することが可能となる。
【0037】
更に、前記規制プレート62はブロック本体4に固定されるベースプレート61から垂直に起立しているので、かかるベースプレート61をブロック本体4に対してねじ止め、あるいは溶接等によって強固に固定すれば、規制プレート62はブロック本体4と一体化する。これにより、前記エンドプレート5に対して外力が作用した場合であっても、規制プレート62に形成された内周側規制面63が負荷転走溝43及びボール戻し通路44に対して位置ずれを生じることはない。
【0038】
また、前記ボール誘導部材6を金属製とすれば、かかるボール誘導部材6をブロック本体4に固定した後に当該ブロック本体4の負荷転走溝43を研削加工することにより、前記規制プレート62に形成された内周側規制面63と負荷転走溝43を一層滑らかに連続させることも可能である。すなわち、図10に示すように、規制プレート62をブロック本体4の負荷転走溝43とボール戻し通路44との間の所定位置に固定した後、高速回転する研削砥石47によって前記負荷転走溝43の研削加工を行えば、前記負荷転走溝43の端部と接する内周側規制面63の端部に対しても連続した研削加工が施され、内周側規制面63と負荷転走溝43とを一層滑らかに連続させることができる。また、ブロック本体4のボール戻し通路44についても、図10に示すようにエンドミル48をボール戻し通路44に挿入して、内周側規制面63とボール戻し通路44の接続部を削ることにより、内周側規制面63とボール戻し通路44とを一層滑らかに連続させることができる。
【0039】
前述のように、前記ボール誘導部材6は合成樹脂材料から成形することも可能であるが、その場合には金属製のブロック本体4に合成樹脂製のボール誘導部材6を固定することになり、ボール誘導部材6をブロック本体4に固定した後に当該ブロック本体4の負荷転走溝43を研削加工すると、合成樹脂製の規制プレート62と金属製のブロック本体とを同時に研削加工することになる。このため、ボール誘導部材を金属製とする場合に比べて、研削加工の加工パラメータは設定が難しくなる。
【0040】
図11乃至図15は本発明の運動案内装置の第二実施形態に関するものである。
【0041】
第一実施形態の運動案内装置ではボール3を移動ブロック2の無限循環路に対してそのまま組み込んでいたが、この第二実施形態の運動案内装置においては、前記ボール3を図11及び図12に示すような連結体ベルト30に配列した状態で無限循環路に組み込んでいる。この連結体ベルト30は、各ボール3間に配置される複数の間座部31と、これら間座部31を連結する案内ベルト32とから構成され、合成樹脂の射出成形によって製作されている。各間座部31にはボール3の球面に近似した曲率の球面座33が設けられており、ボール3の左右に位置する一対の間座部31の間にボール3を配置することにより、これら間座部31の球面座33がボール3を抱え込んでいる。これにより、ボール3を回転可能な状態で連結体ベルト30に保持することが可能となっている。従って、移動ブロック2が軌道レール1に沿って運動すると、ボール3が転動しながら無限循環路内を循環し、これに伴って前記連結体ベルト30も無限循環路内を循環することになる。
【0042】
このような連結体ベルト30を移動ブロック2の無限循環路に組み込む場合、ブロック本体4のボール戻し通路44の内周面には前記連結体ベルト30の案内ベルト32を収容する空間を設ける必要が生じる。このため、図13に示すように、ブロック本体4には前記ボール戻し通路44の形成位置に対して当該ボール戻し通路44よりも内径の大きなパイプ装着孔49を設け、このパイプ装着孔49に対して合成樹脂製のパイプ部材8を嵌合させている。尚、エンドプレート5、ボール誘導部材6等のその他の構成は前述の第一実施形態と同じなので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0043】
前記パイプ部材8は長手方向に垂直な断面が略半円状に形成された第一パイプ半体8a及び第二パイプ半体8bを組み合わせて構成されており、これら第一パイプ半体8aと第二パイプ半体8bとが互いに突き合わせた状態で前記ブロック本体4のパイプ装着孔に挿入されている。図13では前記第一パイプ半体8aと第二パイプ半体8bが略同一の長さに形成されているが、実際には前記第一パイプ半体8aが第二パイプ半体8bよりもわずかに長尺に形成されており、パイプ部材8をブロック本体4のパイプ装着孔49に嵌合させると、第一パイプ半体8aの両端のみが前記パイプ装着孔49から突出するように構成されている。そして、前記パイプ装着孔49から突出した第一パイプ半体8aの先端は前記エンドプレート5のボール誘導溝51に嵌合し、これによってパイプ部材8に対するエンドプレート5の位置決めがなされるようになっている。
【0044】
図14は前記パイプ部材8を長手方向と直交する方向で切断した断面図であり、第一パイプ半体8aと第二パイプ半体8bとを組み合わせた状態を示している。第一パイプ半体8aにはボール3の直径よりも僅かに大きな内径の半円状の外側案内溝80が形成される一方、第二パイプ半体8bには第一パイプ半体8aの外側案内溝80よりも大きな内径の内側案内溝81が設けられており、第一パイプ半体8aと第二パイプ半体8bとを組み合わせると、ボール3が通過可能なボール戻し通路82が完成するようになっている。従って、このパイプ部材8をブロック本体4に設けたパイプ装着孔49に嵌合させることにより、かかるブロック本体4に対してボール戻し通路82を具備させることが可能となっている。
【0045】
前記パイプ部材8の内壁には互いに対向する位置に前記連結体ベルト30の案内ベルト32を突き当てて案内するための一対の段部83が長手方向に沿って形成されており、これら段部83は第一パイプ半体8aに設けられている。また、前記第二パイプ半体8bの内側案内溝81の中央には長手方向に沿って支持突条84が形成されており、ボール3はこの支持突条84と前記外側案内溝80によってボール戻し通路82内における軌道を制限されている。この支持突条84の幅は前記ボール誘導部材6の規制プレート62の厚みtと合致している。
【0046】
このようなパイプ部材8は前記ブロック本体4のパイプ装着孔49に嵌合され、この嵌合作業の後に図6に示す前記ボール誘導部材6がブロック本体4の端面に対して固定される。図15は前記ブロック本体4の端面におけるボール誘導部材6と前記パイプ部材8との関係を示す拡大図である。この第二実施形態において、ボール誘導部材6をブロック本体4の端面に固定した状態では、ボール誘導部材6の規制プレート62がブロック本体4の負荷通路40の端部開口とボール戻し通路82の端部開口との間に位置しており、前記規制プレート62に形成された内周側規制面63が負荷転走溝43の端部とそれぞれ合致している。
【0047】
ここで、前記規制プレート62はパイプ部材8のボール戻し通路82に僅かに突出しており、その突出量は第二パイプ半体8bに形成された支持突条84の高さと合致している。すなわち、前記ブロック本体4に対してパイプ部材8を装着し、更にボール誘導部材6をブロック本体4の端面に対して固定した状態では、規制プレート62の内周側規制面63と第二パイプ半体8bの支持突条84の先端面とが合致し、ボール戻し通路82から方向転換路にかけて連続したボール3の案内面が形成されるようになっている。
【0048】
そして、この第二実施形態においても、ボール誘導部材の規制プレート62の厚みtをエンドプレート5のボール誘導溝51の溝幅wに比べて小さく設定することで、規制プレート62に形成された内周側規制面63と負荷転走溝43の端部とが接している領域は小さくなり、その分だけ当該内周側規制面63を段差なく負荷転走溝43の端部に合致させることが容易となる。
【0049】
また、前記パイプ部材の内部でのボールの軌道を制限する支持突条を当該パイプ部材に設け、かかる支持突条と前記規制プレートの内周側規制面とを合致させるように構成したので、ボール戻し通路82の端部と内周側規制面63とが接している領域は小さくなり、ボール戻し通路82に対しても前記内周側規制面63を段差なく合致させることが容易となる。
【0050】
加えて、ボール3の無限循環の更なる円滑化のために、合成樹脂製のパイプ部材8と金属製のボール誘導部材6との継ぎ目、より具体的には第二パイプ半体8bの支持突条84と規制プレート62の内周側規制面63との接続部を図10に示した例と同様にしてエンドミルで切削する場合であっても、削り取る領域の幅は規制プレート62の厚みtであり、異質なパイプ部材8とボール誘導部材6とを精度良く切削することが可能となる。
【0051】
尚、前述した第一実施形態及び第二実施形態では転動体としてボールを使用した例を説明したが、本発明は転動体としてローラを使用した運動案内装置であっても適用可能である。
【0052】
また、前述した第一実施形態及び第二実施形態では軌道レール1が直線状に形成された運動案内装置を説明したが、かかる軌道レールが一定曲率の円弧状に形成された運動案内装置であっても本発明を適用可能である。
【0053】
更に、前述した第一実施形態及び第二実施形態では、軌道レールを固定ボルトによって他の機械装置に敷設するタイプの運動案内装置を説明したが、かかる軌道レールはその両端あるいは一端を他の機械装置に対して固定支持するタイプの運動案内装置、例えばボールスプライン装置であっても差し支えない。その場合、前記軌道レールはスプライン軸に置き換えて理解することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…軌道レール、2…移動ブロック、3…ボール(転動体)、4…ブロック本体、5…エンドプレート、6…ボール誘導部材、44…ボール戻し通路、51…ボール誘導溝、52…外周側案内面、62…規制プレート、63…内周側規制面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って転動体の転走溝が形成された軌道レールと、多数の転動体を介して前記軌道レールに組み付けられると共に前記転動体の無限循環路を有し、当該軌道レールに沿って移動自在な移動ブロックと、を備え、
前記移動ブロックは、前記軌道レールの転走溝と対向して転動体の負荷通路を構成する負荷転走溝を有すると共に前記負荷通路と平行な転動体戻し通路を有するブロック本体と、このブロック本体の移動方向の前後両端に固定され、かかるブロック本体と協働して前記負荷通路と無負荷通路とを繋ぐ転動体の方向転換路を構成する一対のエンドプレートとを備え、
前記エンドプレートには、前記方向転換路の外周側案内面を備えると共に前記負荷通路及び転動体戻し通路の端部開口と対向した転動体誘導溝が形成される一方、
かかるエンドプレートが装着される前記ブロック本体の端面には、前記負荷通路の端部開口と転動体戻し通路の端部開口との間に位置して前記転動体誘導溝内に挿入される規制プレートが固定され、
この規制プレートは、前記エンドプレートの転動体誘導溝と非接触に保たれると共に、前記エンドプレートに具備された外周側案内面と対向して前記方向転換路を構成する内周側規制面を有していることを特徴とする運動案内装置。
【請求項2】
前記規制プレートの厚みは前記エンドプレートの転動体誘導溝の幅よりも薄く形成され、前記方向転換路内を転走する転動体は前記内周側規制面に対して点接触していることを特徴とする請求項1記載の運動案内装置。
【請求項3】
前記規制プレートはブロック本体の端面に固定されるベースプレートから垂直に起立していることを特徴とする請求項1記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記ブロック本体には前記転動体戻し通路を構成するパイプ部材が装着され、かかるパイプ部材の内周面には長手方向に沿って突条が形成される一方、当該パイプ部材の開口端においては前記突条の先端面と前記規制プレートの内周側規制面とが連続していることを特徴とする請求項1記載の運動案内装置。
【請求項5】
前記ブロック本体及び規制プレートは金属製であり、かかるブロック本体の負荷転走溝の端部と前記規制プレートの内周側規制面に対して連続した研削加工が施されていることを特徴とする請求項1又は請求項4記載の運動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−82879(P2012−82879A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228123(P2010−228123)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】