運動諸元推定装置
【課題】複数のセンサが非同期に観測した場合においても目標の運動諸元を推定することができる運動諸元推定装置を提供する。
【解決手段】複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期推定値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略推定値と、の差分により目標の運動諸元の修正量を算出し、収束演算によって差分が収束するまで運動諸元を修正することで基準時刻における目標の運動諸元を推定する。
【解決手段】複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期推定値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略推定値と、の差分により目標の運動諸元の修正量を算出し、収束演算によって差分が収束するまで運動諸元を修正することで基準時刻における目標の運動諸元を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダセンサ等の複数のセンサを用いて、航空機、船舶、車両などの移動体と複数のセンサのうちの任意の2つのセンサの距離差やドップラ周波数差等の観測情報を入力し、これら観測情報に基づいて移動体の真の位置や速度等の運動諸元を推定する運動諸元推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダセンサ等を含む複数のセンサによる目標との距離差やドップラ周波数差の観測結果によって目標の運動諸元を推定する従来の運動諸元推定装置では、一般的に複数のセンサ間で同期して得られた観測情報を用いていた。ここで、同期とは、複数センサ間で目標の観測が同一時刻に行われることを表す。また、非同期とは複数のセンサ間で目標の観測を異なる時刻に行うことを意味する。
【0003】
非特許文献1に開示される従来の運動諸元推定装置について説明する。
ここでは、説明の簡単のため、複数のセンサで構成される観測装置の観測モデルを下記式(1)のように仮定する。
【数1】
ここで、zi,j(t)は時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標との距離差(又は時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標とのドップラ周波数差)の観測値である。hi,j(x(t))は時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標との距離差の真値を表す観測式であり、li,j(x(t))は時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標とのドップラ周波数差の真値を表す観測式である。vi,j(t)は、時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標との距離差の観測誤差(又は時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標とのドップラ周波数差の観測誤差)である。
【0004】
例えば、観測装置によってx−yの2次元直交座標系におけるセンサi及びセンサj間の目標位置との距離差の観測結果が得られたとする。このとき、観測値の真値hi,j(x(t))を下記式(2)及び下記式(4)のように定義する。また、観測装置によってセンサi及びセンサj間の目標位置とのドップラ周波数差の観測結果が得られた場合は、観測値の真値li,j(x(t))は、下記式(3)、下記式(2)及び下記式(5)で定義される。
【数2】
【0005】
なお、si(t),sj(t)は、それぞれ時刻tにおけるセンサi,jの位置ベクトルを表し、si(t)ドット及びsj(t)ドット(以下、出願書類の処理の関係上、読みで表記する)は、それぞれ時刻tにおけるセンサi,jの速度を示している。また、x(t)は、上記式(6)で表される目標の状態ベクトルであり、運動諸元推定装置によって求める運動諸元を表している。
【0006】
上記のような観測モデルの仮定の下、従来の運動諸元推定装置では、以下に示すアルゴリズムで、状態ベクトルの推定を行う。
センサが3つ以上の場合、上記式(2)(又は上記式(3))の方程式が2式以上得られるため、この連立方程式を解くことで状態ベクトルを求めることができる。しかしながら、観測誤差等の影響により、実際には上記式(1)となるため、一意に解が求まらない。そこで、下記のような方法を採用する。
【0007】
先ず、上記式(2)(又は上記式(3))の目標の状態ベクトルに対して適当な初期値を定め、上記式(2)(又は上記式(3))の左辺の初期値を与える。次に、複数のセンサによって実際の距離差(又はドップラ周波数差)の観測値が得られると、上記初期値との誤差信号が得られる。
【0008】
ここで、複数のセンサにより実際の距離差の観測値が得られた場合について説明する。上記式(2)より下記式(7)〜(10)の関係を導き出すことができる。これらより、距離差の真値及びその誤差信号と目標の状態ベクトルの修正量との関係が得られるので、上記式(2)を目標の状態ベクトルの初期値で近似して(下記式(7)参照)、真値への修正量δxアンダーバー(以下、出願書類の処理の関係上、読みで表記する)が決まる。
【数3】
【0009】
上記式(7)を最小二乗法を用いて解くと、修正量δxアンダーバーは下記式(11)で与えられる。これにより、上記式(10)を解く。
【数4】
【0010】
以上の処理を修正量δxアンダーバーが収束するまで繰り返すと、状態ベクトルが推定される。つまり、収束判定と判断された場合、現在の目標の状態ベクトルに修正量を加えたものが目標の状態ベクトルとなる。一方、収束判定とみなされない場合においては、状態ベクトルに修正量を付加し、上述したアルゴリズに従った処理を繰り返す。なお、ドップラ周波数差の観測値が得られた場合についても上述と同様なアルゴリズムを適用することができる。
【0011】
【非特許文献1】K. C. HO: "An Accurate Algebraic Solution for Moving Source Location Using TDOA and FDOA Measurements" IEEE Trans. On Signal Processing, Vol.52, No.9, Sep. 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の運動諸元推定装置では、複数のセンサが同じ時刻に観測した場合を前提として目標の運動諸元を推定している。しかし、実際には観測タイミングのずれや伝送遅延等により複数のセンサ間で観測時刻が異なる場合が多くなることが想定される。従って、従来の運動諸元推定装置では目標の運動諸元の推定が困難となり、後段処理である目標追尾等の処理に移行できないという課題がある。このため、異なる時刻に距離差やドップラ周波数差が得られた場合においても目標の運動諸元を推定できることが望まれていた。
【0013】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数のセンサが非同期に観測した場合においても目標の運動諸元を推定することができる運動諸元推定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る運動諸元推定装置は、目標の運動を観測する複数のセンサを有する受信手段と、受信手段の複数のセンサのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から、該センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値を検出する検出手段と、複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略推定値と、の差分より目標の運動諸元の修正量を算出し、収束演算によって差分が収束するまで運動諸元を修正することで基準時刻における目標の運動諸元を推定する非同期測位手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期推定値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略推定値と、の差分により目標の運動諸元の修正量を算出し、収束演算によって差分が収束するまで運動諸元を修正することで基準時刻における目標の運動諸元を推定するので、複数のセンサが非同期、すなわち異なる時刻で観測した結果からでも目標の運動諸元を推定することができ、該運動諸元を用いて目標を早期に追尾処理等することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による運動諸元推定装置の構成を示す図である。実施の形態1による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差/速度差観測値検出手段(検出手段)2、非同期測位手段4を備える。受信手段1は、センサ11〜1M(Mは、1より大きい整数)を備え、各センサ11〜1Mは、目標とセンサ11〜1Mのうちの任意の2センサ間(図1の例では、センサ11とセンサ12,・・・,センサ1(M−1)とセンサ1M)との距離差やドップラ周波数差を観測する。
【0017】
距離差/速度差観測値検出手段2は、距離差/速度差観測値検出部21〜2N(Nは、M−1の整数)を備える。距離差/速度差観測値検出部21〜2Nは、受信手段1を構成するセンサ11〜1Mから任意の2つのセンサごとにセンサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差の観測結果を検出し、該2センサ間の距離差及びドップラ周波数差から求めた速度差とその観測時刻を出力する。
【0018】
非同期測位手段4は、距離差/速度差観測値検出手段2から出力される、受信手段1における任意の2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差から得られる速度差を入力して、非同期を考慮して目標の状態ベクトルを推定する。また、非同期測位手段4は、図1に示すように、初期状態量設定部41、時刻差算出部421〜42N、距離差/速度差概略値算出部431〜43N、修正量算出部441〜44N、修正状態ベクトル算出部45、及び収束判定部46を備える。
【0019】
初期状態量設定部41は、修正状態ベクトル算出部45により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。時刻差算出部421〜42Nは、初期状態量設定部41により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出する。
【0020】
距離差/速度差概略値算出部431〜43Nは、時刻差算出部421〜42Nにより算出された時刻差及び初期状態量設定部41により設定された基準時刻における目標の初期値(若しくは収束判定部46からの修正量を初期値として)を用いて予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。
【0021】
修正量算出部441〜44Nは、距離差/速度差概略値算出部431〜43Nにより算出された概略値と距離差/速度差観測値検出手段2から得られた観測値との差分を算出し、この差分を用いて目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部45は、修正量算出部441〜44Nから修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。
【0022】
収束判定部46では、修正状態ベクトル算出部45による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差/速度差概略値算出部431〜43Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0023】
本発明による運動諸元推定装置では、非同期に得られた距離差や速度差の観測情報を、予め仮定した運動方程式(例えば、等速直線運動)に当てはめて、基準時刻(目標の運動諸元を推定したい指定時刻)における目標の運動諸元として目標の状態ベクトル(位置、速度等)を推定する。なお、この推定には、例えば最小二乗法を用いる。
【0024】
また、以降の説明では目標の運動モデルを下記式(12)のように仮定する。
但し、tは基準時刻であり、x(t)は基準時刻tにおける目標の運動諸元の真値を表す状態ベクトルである。また、ΔTは、基準時刻tからの時刻差である。
【数5】
【0025】
例えば、目標の基本的な運動を等速直線運動と仮定し、x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合、目標の状態ベクトルx(t)と運動モデルは下記式(13)及び下記式(14)のように定義される。但し、Tはベクトルや行列の転置を示しており、ドットは時間微分を示している。また、In×nはn行n列の単位行列であり、On×nは、n行n列の零行列である。
【数6】
【0026】
次に、上記式(1)と上記式(12)より、2センサ間の目標との距離差について下記式(15)が定義される。
【数7】
【0027】
例えば、図2に示すように目標が航空機である場合、当該目標についてそれぞれ異なる時刻t1〜t3で基準時刻tを含めて計4回の観測で観測値が得られたとすると、上記式(15)より下記式(16)が導出される。なお、時刻tk(k=1〜3)は、下記式(17)より基準時刻tからΔtk前の時刻である。
【数8】
【0028】
上記式(16)より最小二乗法による収束計算を用いて、基準時刻tにおける状態ベクトル(図2中、時刻tにおいて太線の四角と線で表したもの)の推定値を算出する。なお、最小二乗法による収束計算は、例えば非特許文献1に開示される従来の運動諸元推定装置と同様の処理を実施する。
【0029】
次に動作について説明する。
センサ11〜1Mのうちの任意の2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差の観測値は、受信手段1から距離差/速度差観測値検出手段2に出力される。距離差/速度差観測値検出手段2では、受信手段1における任意の2センサによる観測値を距離差/速度差観測値検出部21〜2Nが入力する。図1の例では、受信手段1のセンサ11〜1Mのうち、センサ11及びセンサ12のセンサ出力が距離差/速度差観測値検出部21に入力され、センサ12及びセンサ13のセンサ出力が距離差/速度差観測値検出部22に入力され、同様に2センサの出力が距離差/速度差観測値検出部に逐次入力される。
【0030】
距離差/速度差観測値検出部21〜2Nでは、センサ11〜1Mのうちの2センサからそれぞれ入力した検知結果に基づいて、2センサ間の目標との距離差を検出し、2センサ間の目標とのドップラ周波数差から速度差を求める。この後、距離差/速度差観測値検出部21〜2Nは、2センサ間の目標との距離差及び速度差を、非同期測位手段4内の修正量算出部441〜44Nにそれぞれ出力し、各センサの観測時刻も非同期測位手段4内の時刻差算出部421〜42Nにそれぞれ出力する。
【0031】
非同期測位手段4内の初期状態量設定部41は、基準時刻tを時刻差算出部421〜42Nにそれぞれ出力し、目標の状態ベクトルの初期値x(t)を距離差/速度差概略値算出部431〜43Nにそれぞれ出力する。時刻差算出部421〜42Nは、基準時刻tと観測時刻とを用い、上記式(17)により基準時刻tと観測時刻tkの時刻差Δtkを算出し、距離差/速度差概略値算出部431〜43Nにそれぞれ出力する。
【0032】
距離差/速度差概略値算出部431〜43Nでは、初期状態量設定部41から入力した目標の状態ベクトルx(t)の初期値と時刻差算出部421〜42Nから入力した時刻差を用い、上記式(12)に従ってそれぞれ異なる時刻における目標の状態ベクトルx(t)とセンサi,j間の目標との距離差又は速度差の概略値(上記式(16)のgi,jに相当するもの)とを算出して修正量算出部441〜44Nにそれぞれ出力する。
【0033】
このように、距離差/速度差概略値算出部431〜43Nは、予め仮定した目標の運動方程式である上記式(12)〜(17)に従って、基準時刻tにおける目標の運動諸元の初期値x(t)に対し基準時刻tとの時刻差ΔTを反映させて各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略値(概略推定値)を算出する。
【0034】
修正量算出部441〜44Nでは、距離差/速度差概略値算出部431〜43Nからの概略値gi,jと、距離差/速度差観測値検出部21〜2Nからの観測値zi,j(距離差、速度差の観測値)とを入力し、概略値gi,jと観測値zi,jとの誤差(距離差の誤差Δhi,j、速度差の誤差Δli,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部45では、修正量算出部441〜44Nから異なる時刻における修正量をそれぞれ入力し、最小二乗法による収束計算を施して、目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0035】
収束判定部46では、修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値x(t)の代わりに距離差/速度差概略値算出部431〜43Nの入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満になれば、修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0036】
以上のように、この実施の形態1によれば、目標の運動を観測する複数のセンサ11〜1Mを有する受信手段1と、受信手段1の複数のセンサ11〜1Mのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から該センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値を検出する距離差/速度差観測値検出手段2と、複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略値と、の差分により目標の運動諸元の修正量を算出し、収束演算によって差分が収束するまで運動諸元を修正することで基準時刻における目標の運動諸元を推定する非同期測位手段4とを備えるので、観測タイミングのずれや伝送遅延等により複数のセンサ間で観測時刻が異なり、観測値が非同期になっても、信頼性の高い目標の運動諸元推定が可能である。
【0037】
また、上記実施の形態1では、x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合を示したが、未知数を増やすことで3次元での目標の位置と速度を推定することもできる。この場合は、観測値の数を増やすことで、目標の状態ベクトルを推定できる。
【0038】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図3において、実施の形態2による運動諸元推定装置の基本的な構成は、上記実施の形態1の図1で示したものと同様であるが、非同期測位手段5が距離差/速度差観測値検出部21〜2Nから観測精度を入力する点で異なる。
【0039】
非同期測位手段5の修正状態ベクトル算出部55は、距離差/速度差観測値検出部21〜2Nから入力した観測精度を考慮して、修正量算出部541〜54Nからの修正量に対し最小二乗法を用いて目標の運動諸元を推定する。つまり、修正状態ベクトル算出部55が、状態ベクトルの修正量を算出するにあたり、上記式(11)について距離差及びドップラ周波数差の観測精度を重み付けの項として加える。
【0040】
初期状態量設定部51は、修正状態ベクトル算出部55により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。時刻差算出部521〜52Nは、初期状態量設定部51により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出する。
【0041】
距離差/速度差概略値算出部531〜53Nは、時刻差算出部521〜52Nにより算出された時刻差及び初期状態量設定部51により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部56からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。
【0042】
収束判定部56は、修正状態ベクトル算出部55による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差/速度差概略値算出部531〜53Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
なお、他の構成は、図1と同一又はこれに相当する構成であるので同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
次に動作について説明する。
上記実施の形態1と異なる動作について主に説明する。
修正状態ベクトル算出部55は、修正量算出部541〜54Nから入力した状態ベクトルの修正量と、距離差/速度差観測値検出部21〜2Nから入力した距離差及びドップラ周波数差の観測精度を用い、該観測精度を重み付けした最小二乗法により目標の状態ベクトルの修正量とこれを状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。例えば、下記式(18)のように観測精度Sを重み付けした式に従って目標の状態ベクトルの修正量と修正状態ベクトルを算出する。
【数9】
【0044】
収束判定部56は、修正状態ベクトル算出部55から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標状態ベクトルの初期値x(t)の代わりに距離差/速度差概略値算出部531〜53Nの入力にフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満になれば、修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0045】
以上のように、この実施の形態2によれば、非同期測位手段5が、観測値と概略値(概略推定値)との誤差(差分)に対してセンサ11〜1Mの観測精度を重み付けして目標の運動諸元の修正量を算出するので、観測値が非同期であっても目標の状態ベクトルを推定することができる。また、観測精度を考慮することにより、より信頼性の高い推定を実施することが可能である。
【0046】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図4に示すように、実施の形態3による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差/速度差観測値検出手段2、仮測位/初期値算出手段6及び非同期測位手段7を備える。なお、図4において、図1と同一又はこれに相当する構成要素に同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
仮測位/初期値算出手段6は、初期状態量設定部61、距離差/速度差概略値算出部621,622、修正量算出部631,632、修正状態ベクトル算出部64、及び収束判定部65を備える。初期状態量設定部61は、修正状態ベクトル算出部64が目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際に用いる初期値として目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。
【0048】
距離差/速度差概略値算出部621,622は、初期状態量設定部61によって設定された基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値を用いて(若しくは、収束判定部65からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。修正量算出部631,632は、距離差/速度差概略値算出部621,622により算出された概略値と距離差/速度差観測値検出部21,22から得られた観測値(センサ11,12とセンサ12,13による観測値)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。
【0049】
修正状態ベクトル算出部64は、修正量算出部631,632から修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部65では、修正状態ベクトル算出部64から入力した修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、距離差/速度差概略値算出部621,622に修正状態ベクトルをフィードバックしたり、非同期測位手段7の初期値として修正状態ベクトルを出力する。
【0050】
非同期測位手段7は、時刻差算出部711〜71N、距離差/速度差概略値算出部721〜72N、修正量算出部731〜73N、修正状態ベクトル算出部74及び収束判定部75を備え、仮測位/初期値算出手段6による測位結果を、目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として用い、初期状態量設定部が省略されている以外は上記実施の形態1と同様に動作する。
【0051】
図5は、時刻t3においてセンサ11及びセンサ12、時刻t4においてセンサ12及びセンサ13によって距離差及びドップラ周波数差が得られた場合を示す図である。x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合、実施の形態3では、図5に示すような異なるセンサ組による検知結果の等時間差線(双曲線)の交点を測位し、交点における目標の位置及び速度を非同期測位手段7における目標の状態ベクトルの初期値として設定する。
【0052】
例えば、図5中の破線で示す双曲線は、時刻t3においてセンサ11及びセンサ12から目標へ放射されたレーダ電波(又は音波)が目標で反射してセンサ11及びセンサ12に到達する時刻差を用いて検出された2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差による双曲線(目標とセンサ11及びセンサ12との距離差が一定な等距離差双曲線又は目標とセンサ11及びセンサ12とのドップラ周波数差が一定な等ドップラ周波数差双曲線)である。
【0053】
また、図5中に実線で示す双曲線は、時刻t4においてセンサ12及びセンサ13に反射波が到達する時刻差を用いて検出された2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差による双曲線(センサ12及びセンサ13間の目標との距離差が一定な等距離差双曲線又はセンサ12及びセンサ13間の目標とのドップラ周波数差が一定な等ドップラ周波数差双曲線)である。
【0054】
実施の形態3では、時刻t3においてセンサ11及びセンサ12によって距離差及びドップラ周波数差を観測し、時刻t4においてセンサ12及びセンサ13によって距離差及びドップラ周波数差を観測し、基準時刻として時刻t4を設定して各センサ組の観測値から目標の状態ベクトルを算出することにより、これら双曲線の交点における目標の状態ベクトルを算出し、該状態ベクトルを非同期測位手段7による修正量の算出における初期値として使用する。
【0055】
次に動作について説明する。
仮測位/初期値算出手段6では、初期状態量設定部61により基準時刻及びこの基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値が距離差/速度差概略値算出部621,622に設定される。距離差/速度差概略値算出部621,622では、初期状態量設定部61から入力した目標の状態ベクトルの初期値から目標と各センサ組との距離差及び速度差の概略値を算出して修正量算出部631,632にそれぞれ出力する。
【0056】
修正量算出部631,632では、距離差/速度差概略値算出部621,622からの概略値と距離差/速度差観測値検出部21,22からの観測値(2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差より求めた速度差)を入力し、この概略値と観測値との誤差(距離差の誤差Δhi,j、速度差の誤差Δli,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部64では、修正量算出部631,632からの修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0057】
収束判定部65は、修正状態ベクトル算出部64から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差/速度差概略値算出部621,622の入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。
【0058】
修正量が閾値未満であると、収束判定部65は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部64から入力し、最新観測時刻(図5では時刻t4)における目標の測位結果として非同期測位手段7へ出力する。具体的には、基準時刻として時刻t4を非同期測位手段7の時間差算出部711〜71Nへ出力し、目標の修正状態ベクトルを、非同期測位手段7において目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法で算出する際の初期値として距離差/速度差概略値算出部721〜72Nへ出力する。
【0059】
非同期測位手段7は、仮測位/初期値算出手段6から基準時刻及び目標の状態ベクトルの初期値が設定されると、上記実施の形態1と同様の処理により目標の測位結果を推定する。
【0060】
以上のように、この実施の形態3によれば、仮測位/初期値算出手段6が異なる2つの時刻において異なるセンサ組により観測された観測値に基づいて算出した目標の測位結果を、非同期測位手段7による修正状態ベクトル算出処理の初期値として用いるので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元の推定が可能である。
【0061】
実施の形態4.
図6は、この発明の実施の形態4による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図6に示すように、実施の形態4による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差/速度差観測値検出手段2、仮測位/初期値算出手段8及び非同期測位手段7を備える。なお、図6において、図1及び図4と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
仮測位/初期値算出手段8は、初期状態量設定部81、追尾フィルタ部821,822、距離差/速度差概略値算出部831,832、修正量算出部841,842、修正状態ベクトル算出部85、及び収束判定部86を備える。初期状態量設定部81は、修正状態ベクトル算出部85が目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。
【0063】
追尾フィルタ部821,822は、受信手段1内のセンサの組み合わせ(図6の例では、センサ11,12とセンサ12,13)で得られる観測値(距離差及びドップラ周波数差から求めた速度差)を入力し、これより所定時刻におけるセンサ組のセンサ間の目標との距離差やドップラ周波数差から求めた速度差を推定する。距離差/速度差概略値算出部831,832は、初期状態量設定部81により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部86からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った目標の運動諸元の概略値を算出する。
【0064】
修正量算出部841は、距離差/速度差概略値算出部831により算出された目標の運動諸元の概略値と追尾フィルタ部821により得られた観測値(センサ11,12間の目標との距離差及びドップラ周波数差により求まる速度差の推定値)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正量算出部842は、距離差/速度差概略値算出部832により算出された目標の運動諸元の概略値と追尾フィルタ部822により得られた観測値(センサ12,13間の目標との距離差及びドップラ周波数差により求まる速度差の推定値)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。
【0065】
修正状態ベクトル算出部85は、修正量算出部841,842からの修正量が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部86では、修正状態ベクトル算出部85による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差/速度差概略値算出部831,832にフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを非同期測位手段7による修正量算出の初期値として出力する。
【0066】
図7は、時刻t1,t2においてセンサ11とセンサ12により距離差及びドップラ周波数差を観測し、時刻t3においてセンサ12とセンサ13によって距離差及びドップラ周波数差が観測された場合を示す図である。x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合、この実施の形態4では、いずれか一方のセンサ組み合わせで目標を追尾処理(目標との距離差、ドップラ周波数差による速度差を推定)し、他方のセンサ組み合わせにより観測値が得られた時刻に対する予測処理を実施することで時刻の同期を取る。
【0067】
例えば、図7では、時刻t3でセンサ12とセンサ13により距離差及び速度差に関する情報が得られている場合、センサ11とセンサ12の組み合わせにより得られる距離差及び速度差に関する情報について時刻t3における予測処理を実施する。この結果、図7に示すように時刻t3におけるセンサ11,12による観測値の双曲線とセンサ12,13による観測値の双曲線の交点が測位される。実施の形態4では、この交点での目標の状態ベクトルを、非同期測位手段7における修正量算出の初期値とする。
【0068】
次に動作について説明する。
仮測位/初期値算出手段8において、初期状態量設定部81が追尾フィルタ部821,822に基準時刻を設定し、基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値を距離差/速度差概略値算出部831,832に設定する。
【0069】
追尾フィルタ部821は、距離差/速度差観測値検出部21から、センサ11,12の検知結果から得られる観測値(2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差による速度差)及びその観測時刻を入力して、初期状態量設定部81により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差/速度差観測値検出部21から入力した観測値とを用いてある時刻(図7の例では時刻t1,t2)における目標を追尾処理する(センサ11,12間の目標との距離差及び速度差を推定する)。
【0070】
追尾フィルタ部822では、距離差/速度差観測値検出部22から、センサ12,13の検知結果から得られる観測値及びその観測時刻(図7の例では時刻t3)を入力して、初期状態量設定部81に設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差/速度差観測値検出部22から入力した観測値とを用いて時刻t3における目標の追尾処理(2センサ間の目標との距離差及び速度差を推定)する。
【0071】
このように、時刻t3でセンサ12,13により目標との距離差及びドップラ周波数差による速度差が得られている場合、追尾フィルタ部821は、センサ11,12による目標との距離差及びドップラ周波数差による速度差について当該時刻t3における予測処理を実行する。これにより、図7中の一点破線で示すセンサ11,12による観測値の等時間差線と図7中の実線で示すセンサ12,13による観測値の等時間差線との交点が測位される。つまり、センサ12,13により距離差及びドップラ周波数差が得られる、時刻t3におけるセンサ11,12による観測の予測値を得ることで、同一時刻(時刻t3)で目標との距離差及びドップラ周波数差より求まる速度差が得られたとみなして測位処理を実施する。但し、予測処理するセンサの組み合わせは1組以上とする。
【0072】
距離差/速度差概略値算出部831,832は、初期状態量設定部81から入力した目標の状態ベクトルの初期値を用いて各センサ組の2センサ間の目標との距離差及び速度差の概略値を算出して修正量算出部841,842にそれぞれ出力する。
【0073】
修正量算出部841,842では、距離差/速度差概略値算出部831,832からの概略値と追尾フィルタ部821,822から入力した観測値(目標との距離差及びドップラ周波数差より求めた速度差の推定値)を入力し、概略値と観測値の誤差(距離差の誤差Δhi,j、速度差の誤差Δli,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部85では、修正量算出部841,842からの修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0074】
収束判定部86は、修正状態ベクトル算出部85から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差/速度差概略値算出部831,832へフィードバックし、上記処理を繰り返す。
【0075】
修正量が閾値未満であると、収束判定部86は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部85から入力し、図7に示す時刻t3における目標の測位結果として非同期測位手段7へ出力する。具体的には、基準時刻として時刻t3を非同期測位手段7の時間差算出部711〜71Nへ出力し、目標の修正状態ベクトルを、非同期測位手段7において目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法で算出する際の初期値として距離差/速度差概略値算出部721〜72Nへ出力する。
【0076】
非同期測位手段7は、仮測位/初期値算出手段8から基準時刻及び目標の状態ベクトルの初期値が設定されると、上記実施の形態1と同様の処理により目標の測位結果を推定する。
【0077】
以上のように、この実施の形態4によれば、仮測位/初期値算出手段8が、センサ11,12の検知結果から得られた目標との距離差及びドップラ周波数差より求まる速度差を追尾処理し、別の時刻において、異なるセンサ組(センサ12,13)の検知結果から目標との距離差及びドップラ周波数差より求まる速度差が得られる場合、上記追尾結果に基づいてそのセンサ組(センサ12,13)に対する時刻整合を行ってから、目標の位置、速度を算出し、最小二乗法による目標の状態ベクトル算出の初期値として設定するので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元推定が可能である。
【0078】
実施の形態5.
図8は、この発明の実施の形態5による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図8に示すように、実施の形態5による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差/速度差観測値検出手段2及び非同期測位手段9を備える。なお、図8において、図1と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
非同期測位手段9は、初期状態量設定部91、追尾フィルタ部921〜92N、距離差/速度差概略値算出部931〜93N、修正量算出部941〜94N、修正状態ベクトル算出部95、及び収束判定部96を備える。
【0080】
初期状態量設定部91は、修正状態ベクトル算出部95により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。追尾フィルタ部921〜92Nは、受信手段1内のセンサの組み合わせで得られる検知結果に基づいて距離差/速度差観測値検出部21〜2N距離差及びドップラ周波数差を入力し、追尾処理を実施する。
【0081】
距離差/速度差概略値算出部931〜93Nは、初期状態量設定部91により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部96からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。修正量算出部941〜94Nは、距離差/速度差概略値算出部931〜93Nにより算出された概略値と追尾フィルタ部921〜92Nから得られた観測値との差分を用いて目標の状態ベクトルの修正量を算出する。
【0082】
修正状態ベクトル算出部95は、修正量算出部941〜94Nから修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部96では、修正状態ベクトル算出部95による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差/速度差概略値算出部931〜93Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0083】
次に動作について説明する。
初期状態量設定部91は、追尾フィルタ部921〜92Nに基準時刻を設定し、基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値を距離差/速度差概略値算出部931〜93Nに設定する。
【0084】
追尾フィルタ部921〜92Nは、距離差/速度差観測値検出部21〜2Nから、センサ組の検知結果により得られる観測値(目標との距離差及びドップラ周波数差による速度差)及びその観測時刻をそれぞれ入力して、初期状態量設定部91により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差/速度差観測値検出部から入力した観測値とを用いて、目標を追尾処理する(各センサ組のセンサ間の目標との距離差及び速度差を推定する)。
【0085】
追尾フィルタ部921〜92Nのうち、ある追尾フィルタ部は、距離差/速度差観測値検出部から、ある時刻で他の追尾フィルタ部により異なるセンサ組で観測値が得られている場合、初期状態量設定部91に設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差/速度差観測値検出部から入力した観測値とを用いて、当該時刻における目標との距離差及び速度差を予測処理(目標との距離差及び速度差を推定)する。
【0086】
例えば、ある時刻で追尾フィルタ部922〜92Nによってセンサ12,13〜1(N−1),1Nの検知結果で目標との距離差及び速度差が得られる場合、追尾フィルタ部921が該時刻における予測値を得ることで、同一時刻において目標との距離差及びドップラ周波数差により求まる速度差が得られたとみなして測位処理を実施する。但し、予測処理するセンサの組み合わせは1組以上とする。
【0087】
距離差/速度差概略値算出部931〜93Nは、初期状態量設定部91から入力した目標の状態ベクトルの初期値を用いて目標と各センサ組との距離差及び速度差の概略値を算出して修正量算出部941〜94Nにそれぞれ出力する。
【0088】
修正量算出部941〜94Nでは、距離差/速度差概略値算出部931〜93Nからの概略値と追尾フィルタ部921〜92Nから入力した観測値(目標との距離差及び速度差の推定値)を入力し、概略値と観測値の誤差(距離差の誤差Δhi,j、速度差の誤差Δli,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部95では、修正量算出部941〜94Nからの修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0089】
収束判定部96は、修正状態ベクトル算出部95から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差/速度差概略値算出部931〜93Nの入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満であると、収束判定部96は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部95から入力し、目標の測位結果として出力する。
【0090】
以上のように、この実施の形態5によれば、非同期測位手段9が、センサ組の検知結果から得られた目標との距離差及びドップラ周波数差より求まる速度差を追尾処理し、別の時刻において、異なるセンサ組の検知結果から目標との距離差及び速度差が得られる場合、上記追尾結果に基づいてそのセンサ組に対する時刻整合を行ってから、目標の運動諸元を推定するので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元推定が可能である。
【0091】
実施の形態6.
図9は、この発明の実施の形態6による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図9に示すように、実施の形態6による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差/速度差観測値検出手段2及び非同期測位手段10を備える。なお、図9において、図1と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0092】
非同期測位手段10は、初期状態量設定部101、時刻差算出部1021〜102N、距離差/速度差概略値算出部1031〜103N、修正量算出部1041〜104N、修正状態ベクトル算出部105、収束判定部106、及び収束演算カウント部107を備える。収束判定部106及び収束演算カウント部107以外の構成は、上記実施の形態1の図1で示した初期状態量設定部41、時刻差算出部421〜42N、距離差/速度差概略値算出部431〜43N、修正量算出部441〜44N、及び修正状態ベクトル算出部45と同様に動作する。
【0093】
収束判定部106は、収束演算カウント部107が計算回数限界値をカウントするまでの間、修正状態ベクトル算出部105による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差/速度差概略値算出部1031〜103Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0094】
収束演算カウント部107は、収束判定部106により修正状態ベクトルが距離差/速度差概略値算出部1031〜103Nにフィードバックされる度に収束演算回数を、所定の計算回数限界値になるまでカウントする。ここで、計算回数限界値とは、実施の形態6による運動諸元推定装置を実現する計算機の演算性能や検知データ等のサンプリングレートに応じて決定した、最適な演算負荷と推定精度を与える収束演算回数である。
【0095】
次に動作について説明する。
以降では、実施の形態6による運動諸元推定装置に特有な動作について主に説明する。
先ず、収束判定部106が収束演算を行うにあたり、収束演算カウント部107は、カウント値を0に初期化し、カウントの限界値として計算回数限界値を設定する。上記実施の形態1と同様にして、修正状態ベクトル算出部105から修正量が入力されると、収束判定部106は、所定の閾値と該修正量を比較する。このとき、修正量が閾値より大きく収束しなかった場合、収束演算カウント部107は、カウント値を1増やす。
【0096】
計算回数限界値にカウント値が達しても修正量が収束しなかった場合、収束演算カウント部107は、計算終了の信号を収束判定部106に送信する。これにより、収束判定部106は、該計算終了時の修正量を反映させた修正状態ベクトル(修正量を加えた修正状態ベクトル)を目標の測位結果として出力する。なお、カウント値が計算回数限界値に達する前に修正量が収束した場合は、該収束した修正量を加えた修正状態ベクトルを目標の測位結果として出力し、収束演算カウント部107はカウントを停止する。
【0097】
以上のように、この実施の形態6によれば、収束判定部106が、収束演算カウント部107によるカウントが予め定めた計算回数限界値まで達すると、収束演算を終了してその時点での運動諸元推定値を出力するので、修正状態ベクトル算出部105による収束計算の回数が限定されることから、本実施の形態6による運動諸元推定装置の性能を超える演算の実行が抑制され、かつ所定の時間で演算が終了することから収束計算の時間を短縮することができる。
【0098】
なお、上記実施の形態6では、収束演算カウント部107を上記実施の形態1による構成に適用した場合を示したが、上記実施の形態2〜5の構成に適用してもよく、同様の効果を得ることができる。
【0099】
実施の形態7.
図10は、この発明の実施の形態7による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図10に示すように、実施の形態7による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差観測値検出手段2a及び非同期測位手段12aを備える。なお、図10において、図1と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0100】
距離差観測値検出手段2aは、距離差観測値検出部111〜11N(Nは、M−1の整数)を備える。距離差観測値検出部111〜11Nは、受信手段1を構成するセンサ11〜1Mから2つのセンサごとに2センサ間の目標との距離差を検出し、該2センサ間の距離差とその観測時刻を出力する。
【0101】
実施の形態7によるセンサ11〜1Mとしては、例えば目標へ放射したレーダ電波の反射電波が到達する時刻差から目標との距離差を算出するレーダセンサ等が考えられる。なお、上記式(3)に示すようにドップラ周波数差を算出する際にも目標の位置の初期値が必要であるが、目標の位置は、上記式(2)に示すように目標との距離差の観測値が必要である。そこで、本実施の形態7では、ドップラ周波数差を算出せず、任意の2センサ間の目標との距離差のみを用いて目標の状態ベクトルを推定することで演算処理の簡略化を図っている。
【0102】
非同期測位手段12aは、距離差観測値検出手段2aから出力される、受信手段1における任意の2センサ間の目標との距離差を入力し、非同期を考慮して目標の状態ベクトルを推定する。また、非同期測位手段12aは、図10に示すように初期状態量設定部121、時刻差算出部1221〜122N、距離差概略値算出部1231〜123N、修正量算出部1241〜124N、修正状態ベクトル算出部125、及び収束判定部126を備える。
【0103】
初期状態量設定部121は、修正状態ベクトル算出部125により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。時刻差算出部1221〜122Nは、初期状態量設定部121により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出する。
【0104】
距離差概略値算出部1231〜123Nは、時刻差算出部1221〜122Nにより算出された時刻差及び初期状態量設定部121により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部126からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。
【0105】
修正量算出部1241〜124Nは、距離差概略値算出部1231〜123Nにより算出された概略値と距離差観測値検出手段2aから得られた観測値との差分を算出し、この差分を用いて算出した修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部125は、修正量算出部1241〜124Nから修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。
【0106】
収束判定部126では、修正状態ベクトル算出部125による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1231〜123Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0107】
次に動作について説明する。
センサ11〜1Mのうちの任意の2センサ間の目標との距離差の観測値は、受信手段1から距離差観測値検出手段2aに出力される。距離差観測値検出手段2aでは、受信手段1における任意の2センサによる観測値を距離差観測値検出部111〜11Nが入力する。図10の例では、受信手段1のセンサ11〜1Mのうち、センサ11及びセンサ12のセンサ出力が距離差観測値検出部111に入力され、センサ12及びセンサ13のセンサ出力が距離差観測値検出部112に入力され、同様に2センサの出力が距離差観測値検出部に逐次入力される。
【0108】
距離差観測値検出部111〜11Nでは、センサ11〜1Mのうちの2センサからそれぞれ入力した検知結果に基づいて、2センサ間の目標との距離差を検出する。この後、距離差観測値検出部111〜11Nは、2センサ間の目標との距離差を、非同期測位手段12a内の修正量算出部1231〜123Nにそれぞれ出力し、各センサの観測時刻も非同期測位手段12a内の時刻差算出部1221〜122Nにそれぞれ出力する。
【0109】
非同期測位手段12a内の初期状態量設定部121は、基準時刻tを時刻差算出部1221〜122Nにそれぞれ出力し、目標の状態ベクトルの初期値x(t)を距離差概略値算出部1231〜123Nにそれぞれ出力する。時刻差算出部1221〜122Nは、基準時刻tと観測時刻とを用い、上記式(17)により基準時刻tと観測時刻tkの時刻差Δtkを算出し、距離差概略値算出部1231〜123Nにそれぞれ出力する。
【0110】
距離差概略値算出部1231〜123Nでは、初期状態量設定部121から入力した目標の状態ベクトルx(t)の初期値と時刻差算出部1221〜122Nから入力した時刻差を用い、上記式(12)に従ってそれぞれ異なる時刻における目標の状態ベクトルx(t)(目標の位置、速度等)とセンサi,jとの距離差の概略値gi,jを算出して修正量算出部1241〜124Nにそれぞれ出力する(上記式(16)のgi,jに相当するもの)。
【0111】
修正量算出部1241〜124Nは、距離差概略値算出部1231〜123Nからの概略値gi,jと、距離差観測値検出部111〜11Nからの観測値zi,j(距離差の観測値)とを入力し、概略値gi,jと観測値zi,jとの誤差(距離差の誤差Δhi,j)を算出し、この誤差を用いて算出した修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部125では、修正量算出部1241〜124Nから修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトル(該修正量を加えた状態ベクトル)を出力する。
【0112】
収束判定部126では、修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値x(t)の代わりに距離差概略値算出部1231〜123Nの入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満になれば、修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0113】
以上のように、この実施の形態7によれば、センサ11〜1Mから任意の2センサ間の目標との距離差の観測値のみを入力し、該距離差に基づいて目標の状態ベクトルを推定するので、ドップラ周波数差が得られない場合であっても目標の運動諸元を推定することができる。これにより、ドップラ周波数差を得るための演算処理も省略することができ、簡易な構成で上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0114】
実施の形態8.
図11は、この発明の実施の形態8による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図11に示すように、実施の形態8による運動諸元推定装置の基本的な構成は、上記実施の形態7の図10に示したものと同様であるが、非同期測位手段13aが距離差観測値検出部111〜11Nから観測精度を入力する点で異なる。
【0115】
非同期測位手段13a内の修正状態ベクトル算出部135は、距離差観測値検出部111〜11Nからの観測精度を考慮して修正量算出部1341〜134Nからの修正量に対して最小二乗法を用いて目標の運動諸元を推定する。つまり、修正状態ベクトル算出部135が、状態ベクトルの修正量を算出するにあたり、上記式(11)について距離差の観測精度を重み付けの項として加える。
【0116】
初期状態量設定部131は、修正状態ベクトル算出部135により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。時刻差算出部1321〜132Nは、初期状態量設定部131により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出する。
【0117】
距離差概略値算出部1331〜133Nは、時刻差算出部1321〜132Nにより算出された時刻差及び初期状態量設定部131により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部136からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。
【0118】
収束判定部136では、修正状態ベクトル算出部135による修正量が閾値より大きい場合、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1331〜133Nに出力し、修正量が閾値より小さい場合、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。なお、他の構成は、図10と同一又はこれに相当する構成であるので同一符号を付して説明を省略する。
【0119】
次に動作について説明する。
上記実施の形態7と異なる動作について主に説明する。
修正状態ベクトル算出部135は、修正量算出部1341〜134Nから入力した状態ベクトルの修正量と、距離差観測値検出部1331〜133Nから入力した距離差の観測精度を用い、該距離差の観測精度を重み付けした最小二乗法により目標の状態ベクトルの修正量とこれを状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。例えば、上記式(18)のように観測精度Sを重み付けした式に従って目標の状態ベクトルの修正量と修正状態ベクトルを算出する。
【0120】
収束判定部136は、修正状態ベクトル算出部135から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標状態ベクトルの初期値x(t)の代わりに距離差概略値算出部1331〜133Nの入力にフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満になれば、修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0121】
以上のように、この実施の形態8によれば、観測値が非同期であっても目標の状態ベクトルを推定することができる。また、観測情報として任意の2センサ間の目標との距離差のみでよいことから、上記実施の形態7と同様にドップラ周波数差が得られないセンサであっても目標の運動諸元を推定することができる。これにより、ドップラ周波数差を得るための演算処理も省略することができ、簡易な構成で上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、距離差の観測精度を考慮することにより、より信頼性の高い推定を実施することが可能である。
【0122】
実施の形態9.
図12は、この発明の実施の形態9による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図12に示すように、実施の形態9による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差観測値検出手段2a、仮測位/初期値算出手段14a及び非同期測位手段15aを備える。なお、図12において、図10と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0123】
仮測位/初期値算出手段14aは、初期状態量設定部141、距離差概略値算出部1421,1422、修正量算出部1431,1432、修正状態ベクトル算出部144、収束判定部145、メモリ146及び初期値算出部147を備える。初期状態量設定部141は、修正状態ベクトル算出部144が目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際に用いる初期値として目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。
【0124】
距離差概略値算出部1421,1422は、初期状態量設定部141により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部145からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。修正量算出部1431,1432は、距離差概略値算出部1421,1422により算出された概略値と距離差観測値検出部111,112から得られた観測値(センサ11,12とセンサ12,13による観測値)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。
【0125】
修正状態ベクトル算出部144は、修正量算出部1431,1432から修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部145では、修正状態ベクトル算出部144による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1421,1422にフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルをメモリ146に出力する。
【0126】
メモリ146は、収束判定部145で収束したものと判定された目標の測位結果(目標の状態ベクトル)を記憶する。初期値算出部147は、下記式(19)及び下記式(20)で表される異なる2つの時刻t1,t2における測位結果である目標の位置x(t1)ハット,x(t2)ハット(出願書類の処理の関係上、読みで表記する)から下記式(21)に従って初期速度xドット(出願書類の処理の関係上、読みで表記する)を得る。この最新時刻における目標の測位結果を非同期測位手段15aへの初期値として出力する。
【数10】
【0127】
非同期測位手段15aは、時刻差算出部1511〜151N、距離差概略値算出部1521〜152N、修正量算出部1531〜153N、修正状態ベクトル算出部154、及び収束判定部155を備え、仮測位/初期値算出手段14aによる測位結果を、目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として用い、初期状態量設定部が省略されている以外は上記実施の形態8と同様に動作する。
【0128】
図13は、時刻t1においてセンサ11及びセンサ12、時刻t2においてセンサ12及びセンサ13、時刻t3においてセンサ11及びセンサ12、時刻t4においてセンサ12及びセンサ13によって距離差が得られた場合を示す図である。x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合、実施の形態9では、図13に示すような異なるセンサ組による検知結果の等時間差線(双曲線)の交点を測位し、交点における目標の位置及び速度を非同期測位手段15aにおける目標の状態ベクトルの初期値として設定する。
【0129】
例えば、図13中の破線で示す双曲線は、時刻t1,t3において目標へ放射されたレーダ電波が目標で反射してセンサ11及びセンサ12に到達する時刻差を用いて検出された2センサ間の目標との距離差による双曲線(目標とのセンサ11及びセンサ12間の距離差が一定な等距離差双曲線)である。また、図13中に実線で示す双曲線は、時刻t2,t4においてセンサ12及びセンサ13に反射電波が到達する時刻差を用いて検出された2センサ間の目標との距離差による双曲線(目標とのセンサ12及びセンサ13間の距離差が一定な等距離差双曲線)である。
【0130】
実施の形態9では、時刻t1,t3においてセンサ11及びセンサ12によって距離差を観測し、時刻t2,t4においてセンサ12及びセンサ13によって距離差を観測し、基準時刻として時刻t2,t4を設定して各センサ組の観測値から目標の状態ベクトルを算出することにより、これら双曲線の交点における目標の状態ベクトルを算出し、該状態ベクトルを非同期測位手段15aによる修正量の算出における初期値として使用する。
【0131】
次に動作について説明する。
仮測位/初期値算出手段14aでは、初期状態量設定部141により基準時刻及びこの基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値が距離差概略値算出部1421,1422に設定される。距離差概略値算出部1421,1422では、初期状態量設定部141から入力した目標の状態ベクトルの初期値から各センサ組の2センサ間の目標との距離差の概略値を算出して修正量算出部1431,1432にそれぞれ出力する。
【0132】
修正量算出部1431,1432では、距離差概略値算出部1421,1422からの概略値と距離差観測値検出部111,112からの観測値(2センサ間の目標との距離差)を入力し、この概略値と観測値との誤差(距離差の誤差Δhi,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部144では、修正量算出部1431,1432から修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0133】
収束判定部145は、修正状態ベクトル算出部144から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差概略値算出部1421,1422の入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。
【0134】
修正量が閾値未満であると、収束判定部145は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部144から入力し、最新観測時刻(図13では、時間的に近い時刻t1,t2のときは時刻t2であり、時刻t3,t4のときは時刻t4)における目標の測位結果としてメモリ146に逐次出力して値を保持させる。
【0135】
初期値算出部147は、上記式(19),(20)により2つの時刻t2,t4における測位結果である目標の位置x(t2)ハット,x(t4)ハットを定義し、これらを上記式(21)に代入することで目標の初期速度xドットを得る。この最新時刻における目標の測位結果を非同期測位手段15aへの初期値として出力する。具体的には、基準時刻として時刻t4を非同期測位手段15aの時間差算出部1511〜151Nへ出力し、目標の修正状態ベクトルを、非同期測位手段15aにおける目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際の初期値として距離差概略値算出部1521〜152Nへ出力する。
【0136】
非同期測位手段15aは、仮測位/初期値算出手段14aから基準時刻及び目標の状態ベクトルの初期値が設定されると、上記実施の形態7と同様の処理により目標の測位結果を推定する。
【0137】
以上のように、この実施の形態9によれば、仮測位/初期値算出手段14aが異なる2つの時刻において異なるセンサ組により観測された該2センサ間の目標との距離差に基づいて算出した目標の測位結果を、非同期測位手段15aによる修正状態ベクトル算出処理の初期値として用いるので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元の推定が可能である。また、観測情報として任意の2センサ間の目標との距離差のみでよいことから、上記実施の形態7と同様にドップラ周波数差が得られないセンサであっても目標の運動諸元を推定することができる。
【0138】
実施の形態10.
図14は、この発明の実施の形態10による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図14に示すように、実施の形態10による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差観測値検出手段2a、仮測位/初期値算出手段16a及び非同期測位手段15aを備える。なお、図14において、図1、図6及び図10と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0139】
仮測位/初期値算出手段16aは、初期状態量設定部161、追尾フィルタ部1621,1622、距離差概略値算出部1631,1632、修正量算出部1641,1642、修正状態ベクトル算出部165、収束判定部166、メモリ167、及び初期値算出部168を備える。初期状態量設定部161は、修正状態ベクトル算出部165が目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。
【0140】
追尾フィルタ部1621,1622は、受信手段1内のセンサの組み合わせ(図14の例では、センサ11,12とセンサ12,13)で得られる観測値(距離差)を入力し、これより所定時刻におけるセンサ組の2センサ間の目標との距離差を推定する。距離差概略値算出部1631,1632は、初期状態量設定部161により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部166からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った目標の運動諸元の概略値を算出する。
【0141】
修正量算出部1641は、距離差概略値算出部1631により算出された目標の運動諸元の概略値と追尾フィルタ部1621により得られた推定値(センサ11,12間の目標との距離差)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正量算出部1642は、距離差概略値算出部1632により算出された目標の運動諸元の概略値と追尾フィルタ部1622によって得られた推定値(センサ12,13間の目標との距離差)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。
【0142】
修正状態ベクトル算出部165は、修正量算出部1641,1642から修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部166では、修正状態ベクトル算出部165による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1631,1632にフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルをメモリ167に出力する。
【0143】
メモリ167は、収束判定部166で収束したものと判定された目標の測位結果(目標の状態ベクトル)を記憶する。初期値算出部168は、上記式(19)及び上記式(20)で表される異なる2つの時刻における測位結果である目標の位置から上記式(21)に従って目標の初期速度を得る。この最新時刻における目標の測位結果を非同期測位手段15aへの初期値として出力する。
【0144】
図15は、時刻t1,t2においてセンサ11とセンサ12により距離差を観測し、時刻t3,t4においてセンサ12とセンサ13によって距離差が観測された場合を示す図である。x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合、実施の形態10では、いずれか一方のセンサ組み合わせで得られる目標を追尾処理(目標との距離差を推定)し、他方のセンサ組み合わせにより距離差が得られる時刻に対する予測処理を実施することで時刻の同期を取る。
【0145】
例えば、図15では、時刻t3でセンサ12とセンサ13により距離差が得られた場合、センサ11とセンサ12の組み合わせによる距離差を時刻t3,t4において予測処理を実施する。この結果、図15に示すように時刻t3におけるセンサ11,12による観測値の双曲線(実線)とセンサ12,13による観測値の双曲線(一点破線)の交点が測位される。また、時刻t4におけるセンサ11,12による観測値の双曲線(実線)とセンサ12,13による観測値の双曲線(一点破線)の交点が測位される。実施の形態10では、これらの交点での目標の状態ベクトルを、非同期測位手段15aにおける修正量算出の初期値とする。
【0146】
次に動作について説明する。
仮測位/初期値算出手段16aにおいて、初期状態量設定部161が追尾フィルタ部1621,1622に基準時刻を設定し、基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値を距離差概略値算出部1631,1632に設定する。
【0147】
追尾フィルタ部1621は、距離差観測値検出部111から、センサ11,12の検知結果によって得られる観測値(目標との距離差)及びその観測時刻を入力して、初期状態量設定部161により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差観測値検出部111から入力した観測値を用いて、ある時刻(図15では時刻t1,t2)における目標を追尾処理する(センサ11,12間の目標との距離差を推定する)。
【0148】
追尾フィルタ部1622では、距離差観測値検出部112から、センサ12,13の検知結果から得られる観測値及びその観測時刻を入力して、初期状態量設定部161に設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差観測値検出部112から入力した観測値とを用いて、目標の追尾処理(2センサ間の目標との距離差を推定)する。
【0149】
このように、時刻t3でセンサ12,13により目標との距離差が得られている場合、追尾フィルタ部1621は、センサ11,12による目標との距離差について時刻t3における予測処理を実行する。これにより、図15中の一点破線で示すセンサ11,12による観測値の等時間差線と図15中の実線で示すセンサ12,13による観測値の等時間差線との交点が測位される。つまり、センサ12,13により距離差が得られる時刻t3,t4におけるセンサ11,12による観測の予測値を得ることで、同一時刻(時刻t3,t4)で目標との距離差が得られたとみなして測位処理を実施する。但し、予測処理するセンサの組み合わせは1組以上とする。
【0150】
距離差概略値算出部1631,1632は、初期状態量設定部161から入力した目標の状態ベクトルの初期値を用いて目標との各センサ組の2センサ間の距離差の概略値を算出して修正量算出部1641,1642にそれぞれ出力する。
【0151】
修正量算出部1641,1642では、距離差概略値算出部1631,1632からの概略値と追尾フィルタ部1621,1622から入力した推定値(2センサ間の目標との距離差)を入力し、概略値と観測値の誤差(距離差の誤差Δhi,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部165では、修正量算出部1641,1642から修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0152】
収束判定部166は、修正状態ベクトル算出部165から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差概略値算出部1631,1632の入力へフィードバックして上記処理を繰り返す。
【0153】
修正量が閾値未満であると、収束判定部166は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部165から入力し、図15に示す時刻t3,t4における目標の測位結果としてメモリ167に逐次出力して値を保持させる。
【0154】
初期値算出部168は、上記式(19),(20)により2つの時刻t3,t4における測位結果である目標の位置x(t3)ハット,x(t4)ハットを定義し、これらを上記式(21)に代入することで目標の初期速度xドットを得る。この最新時刻における目標の測位結果を非同期測位手段15aへの初期値として出力する。具体的には、基準時刻として時刻t4を非同期測位手段15aの時間差算出部1511〜151Nへ出力し、目標の修正状態ベクトルを、非同期測位手段15aにおける目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際の初期値として距離差概略値算出部1521〜152Nへ出力する。
【0155】
非同期測位手段15aは、仮測位/初期値算出手段16aから基準時刻及び目標の状態ベクトルの初期値が設定されると、上記実施の形態7と同様の処理により目標の測位結果を推定する。
【0156】
以上のように、この実施の形態10によれば、仮測位/初期値算出手段16aが、センサ11,12の検知結果から得られた目標との距離差を追尾処理し、別の時刻において、異なるセンサ組(センサ12,13)の検知結果から目標との距離差が得られる場合、上記追尾結果に基づいてそのセンサ組(センサ12,13)に対する時刻整合を行ってから、目標の位置、速度を算出し、最小二乗法による目標の状態ベクトル算出の初期値として設定するので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元推定が可能である。また、観測情報として任意の2センサ間の目標との距離差のみでよいことから、上記実施の形態7と同様にドップラ周波数差が得られないセンサであっても目標の運動諸元を推定することができる。
【0157】
実施の形態11.
図16は、この発明の実施の形態11による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図16に示すように、実施の形態11による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差観測値検出手段2a及び非同期測位手段17aを備える。なお、図16において、図1、図8及び図10と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0158】
非同期測位手段17aは、初期状態量設定部171、追尾フィルタ部1721〜172N、距離差概略値算出部1731〜173N、修正量算出部1741〜174N、修正状態ベクトル算出部175、及び収束判定部176を備える。
【0159】
初期状態量設定部171は、修正状態ベクトル算出部175により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。追尾フィルタ部1721〜172Nは、受信手段1内のセンサの組み合わせで得られる距離差を入力し、追尾処理を実施する。
【0160】
距離差概略値算出部1731〜173Nは、初期状態量設定部171により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部176からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。
【0161】
修正量算出部1741は、距離差概略値算出部1731により算出された概略値と追尾フィルタ部172から得られた観測値(センサ11,12による観測値)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正量算出部1742〜174Nは、距離差概略値算出部1732〜173Nにより算出された概略値と距離差観測値検出部112〜11Nから得られた観測値との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。
【0162】
修正状態ベクトル算出部175は、修正量算出部1741〜174Nから修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部176では、修正状態ベクトル算出部175による修正量が閾値より大きい場合、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1731〜173Nに出力し、修正量が閾値より小さい場合、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0163】
次に動作について説明する。
初期状態量設定部171は、追尾フィルタ部1721〜172Nに基準時刻を設定し、基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値を距離差概略値算出部1731〜173Nに設定する。
【0164】
追尾フィルタ部1721〜172Nは、距離差観測値検出部111〜11Nから、センサ組の検知結果により得られる観測値(2センサ間の目標との距離差)及びその観測時刻をそれぞれ入力して、初期状態量設定部171により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差観測値検出部から入力した観測値とを用いて、目標を追尾処理する(各センサ組の2センサ間の目標との距離差を推定する)。
【0165】
追尾フィルタ部1721〜172Nのうち、ある追尾フィルタ部は、距離差観測値検出部から、ある時刻で他の追尾フィルタ部により異なるセンサ組で観測値が得られている場合、初期状態量設定部171に設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差観測値検出部から入力した観測値とを用いて、当該時刻における目標との距離差を予測処理(2センサ間の目標との距離差を推定)する。
【0166】
例えば、ある時刻で追尾フィルタ部1722〜172Nによってセンサ12,13〜1(N−1),1Nの検知結果で目標との距離差が得られている場合、追尾フィルタ部1721が該時刻における予測値を得ることで、同一時刻において目標との距離差が得られたとみなして測位処理を実施する。但し、予測処理するセンサの組み合わせは1組以上とする。
【0167】
距離差概略値算出部1731〜173Nは、初期状態量設定部171から入力した目標の状態ベクトルの初期値を用いて目標と各センサ組との距離差の概略値を算出して修正量算出部1741〜174Nにそれぞれ出力する。
【0168】
修正量算出部1741〜174Nでは、距離差概略値算出部1731〜173Nからの概略値と追尾フィルタ部1721〜172Nから入力した推定値(目標との距離差)を入力し、概略値と観測値の誤差(距離差の誤差Δhi,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部175では、修正量算出部1741〜174Nから修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0169】
収束判定部176は、修正状態ベクトル算出部175から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差概略値算出部1731〜173Nの入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満であると、収束判定部176は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部175から入力して目標の測位結果として出力する。
【0170】
以上のように、この実施の形態11によれば、非同期測位手段17aが、センサ組の検知結果から得られた目標との距離差を追尾処理し、別の時刻において、異なるセンサ組の検知結果から目標との距離差が得られる場合、上記追尾結果に基づいてそのセンサ組に対する時刻整合を行ってから、目標の運動諸元を推定するので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元の推定が可能である。また、観測情報として任意の2センサ間の目標との距離差のみでよいことから、上記実施の形態7と同様にドップラ周波数差が得られないセンサであっても目標の運動諸元を推定することができる。
【0171】
実施の形態12.
図17は、この発明の実施の形態12による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図17に示すように、実施の形態12による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差観測値検出手段2a及び非同期測位手段18aを備える。なお、図17において、図1、図9及び図10と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0172】
非同期測位手段18aは、初期状態量設定部181、時刻差算出部1821〜182N、距離差概略値算出部1831〜183N、修正量算出部1841〜184N、修正状態ベクトル算出部185、収束判定部186、及び収束演算カウント部187を備える。収束判定部186及び収束演算カウント部187以外の構成は、上記実施の形態7の図10で示した初期状態量設定部121、時刻差算出部1221〜122N、距離差概略値算出部1231〜123N、修正量算出部1241〜124N、及び修正状態ベクトル算出部125と同様に動作する。
【0173】
収束判定部186は、収束演算カウント部187が計算回数限界値をカウントするまでの間、修正状態ベクトル算出部185による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1831〜183Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0174】
収束演算カウント部187は、収束判定部186により修正状態ベクトルが距離差概略値算出部1831〜183Nにフィードバックされる度に収束演算回数を、所定の計算回数限界値になるまで計数する。ここで、計算回数限界値とは、実施の形態12による運動諸元推定装置を実現する計算機の演算性能や検知データ等のサンプリングレートに応じて決定した、最適な演算負荷と推定精度を与える収束演算回数である。
【0175】
次に動作について説明する。
以降では、本実施の形態12による運動諸元推定装置に特有な動作を主に説明する。
先ず、収束判定部186が収束演算を行うにあたり、収束演算カウント部187は、カウント値を0に初期化し、カウントの限界値として計算回数限界値を設定する。上記実施の形態1と同様にして、修正状態ベクトル算出部185から修正量が入力されると、収束判定部186は、所定の閾値と該修正量を比較する。このとき、修正量が閾値より大きく収束しなかった場合、収束演算カウント部187は、カウント値を1増やす。
【0176】
計算回数限界値にカウント値が達しても修正量が収束しなかった場合、収束演算カウント部187は、計算終了の信号を収束判定部186に送信する。これにより、収束判定部186は、該計算終了時の修正量を反映させた修正状態ベクトル(修正量を加えた修正状態ベクトル)を目標の測位結果として出力する。なお、カウント値が計算回数限界値に達する前に修正量が収束した場合は、該収束した修正量を加えた修正状態ベクトルを目標の測位結果として出力し、収束演算カウント部187はカウントを停止する。
【0177】
以上のように、この実施の形態12によれば、収束判定部186が、収束演算カウント部187が収束演算の回数をカウントし、予め定めた計算回数限界値に達しても修正量が収束しない場合、その時点の修正量を反映させた修正状態ベクトルを目標の測位結果とするので、修正状態ベクトル算出部185による収束計算の回数が限定されることから、本実施の形態12による運動諸元推定装置の性能を超える演算の実行が抑制され、かつ所定の時間で演算が終了することから収束計算の時間を短縮することができる。また、観測情報として任意の2センサ間の目標との距離差のみでよいことから、上記実施の形態7と同様にドップラ周波数差が得られないセンサであっても目標の運動諸元を推定できる。
【0178】
なお、上記実施の形態12では、収束演算カウント部187を上記実施の形態7による構成に適用した場合を示したが、上記実施の形態8〜11の構成に適用してもよく、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】この発明の実施の形態1による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図2】航空機等の目標について基準時刻t〜t3までに4回の観測値が得られた場合を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態2による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態3による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図5】時刻t3にセンサ11,12、時刻t4にセンサ12,13により距離差及びドップラ周波数差が得られた場合を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態4による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図7】時刻t1,t2にセンサ11,12、時刻t3にセンサ12,13により距離差及びドップラ周波数差が得られた場合を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態5による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態6による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態7による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態8による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態9による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図13】時刻t1にセンサ11,12、時刻t2にセンサ12,13、時刻t3にセンサ11,12、時刻t4にセンサ12,13により距離差が得られた場合を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態10による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図15】時刻t1,t2にセンサ11,12、時刻t3,t4にセンサ12,13により距離差が得られた場合を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態11による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態12による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0180】
1 受信手段、2 距離差/速度差観測値検出手段、2a 距離差観測値検出手段(検出手段)、4,5,7,9,10,12a,13a,15a,17a,18a 非同期測位手段、8,14a,16a 仮測位/初期値算出手段、11〜1M センサ、21〜2N 距離差/速度差観測値検出部、41,61,81,91,141,161,181 初期状態量設定部、421〜42N,521〜52N,711〜71N,1021〜102N,1221〜122N,1321〜132N,1511〜151N,1821〜182N 時刻差算出部、431〜43N,531〜53N,721〜72N,831,832,931〜93N,1031〜103N,1231〜123N 距離差/速度差概算値算出部、1331〜133N,1421,1422,1521〜152N,1631,1632,1731〜173N,1831〜183N 距離差概算値算出部、441〜44N,541〜54N,731〜73N,841,842,941〜94N,1041〜104N,1241〜124N,1341〜134N,1431,1432,1531〜153N,1641,1642,1741〜174N,1841〜184N 修正量算出部、45,55,64,74,85,95,106,125,135,144,154,165,175,185 修正状態ベクトル算出部、46,56,65,75,86,96,126,136,145,155,166,176,186 収束判定部、821,822,921〜92N,1621,1622,1721〜172N 追尾フィルタ部、107,187 収束演算カウント部、111〜11N 距離差観測値検出部、146,167 メモリ、147,168,171 初期値算出部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダセンサ等の複数のセンサを用いて、航空機、船舶、車両などの移動体と複数のセンサのうちの任意の2つのセンサの距離差やドップラ周波数差等の観測情報を入力し、これら観測情報に基づいて移動体の真の位置や速度等の運動諸元を推定する運動諸元推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダセンサ等を含む複数のセンサによる目標との距離差やドップラ周波数差の観測結果によって目標の運動諸元を推定する従来の運動諸元推定装置では、一般的に複数のセンサ間で同期して得られた観測情報を用いていた。ここで、同期とは、複数センサ間で目標の観測が同一時刻に行われることを表す。また、非同期とは複数のセンサ間で目標の観測を異なる時刻に行うことを意味する。
【0003】
非特許文献1に開示される従来の運動諸元推定装置について説明する。
ここでは、説明の簡単のため、複数のセンサで構成される観測装置の観測モデルを下記式(1)のように仮定する。
【数1】
ここで、zi,j(t)は時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標との距離差(又は時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標とのドップラ周波数差)の観測値である。hi,j(x(t))は時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標との距離差の真値を表す観測式であり、li,j(x(t))は時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標とのドップラ周波数差の真値を表す観測式である。vi,j(t)は、時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標との距離差の観測誤差(又は時刻tにおけるセンサi及びセンサj間の目標とのドップラ周波数差の観測誤差)である。
【0004】
例えば、観測装置によってx−yの2次元直交座標系におけるセンサi及びセンサj間の目標位置との距離差の観測結果が得られたとする。このとき、観測値の真値hi,j(x(t))を下記式(2)及び下記式(4)のように定義する。また、観測装置によってセンサi及びセンサj間の目標位置とのドップラ周波数差の観測結果が得られた場合は、観測値の真値li,j(x(t))は、下記式(3)、下記式(2)及び下記式(5)で定義される。
【数2】
【0005】
なお、si(t),sj(t)は、それぞれ時刻tにおけるセンサi,jの位置ベクトルを表し、si(t)ドット及びsj(t)ドット(以下、出願書類の処理の関係上、読みで表記する)は、それぞれ時刻tにおけるセンサi,jの速度を示している。また、x(t)は、上記式(6)で表される目標の状態ベクトルであり、運動諸元推定装置によって求める運動諸元を表している。
【0006】
上記のような観測モデルの仮定の下、従来の運動諸元推定装置では、以下に示すアルゴリズムで、状態ベクトルの推定を行う。
センサが3つ以上の場合、上記式(2)(又は上記式(3))の方程式が2式以上得られるため、この連立方程式を解くことで状態ベクトルを求めることができる。しかしながら、観測誤差等の影響により、実際には上記式(1)となるため、一意に解が求まらない。そこで、下記のような方法を採用する。
【0007】
先ず、上記式(2)(又は上記式(3))の目標の状態ベクトルに対して適当な初期値を定め、上記式(2)(又は上記式(3))の左辺の初期値を与える。次に、複数のセンサによって実際の距離差(又はドップラ周波数差)の観測値が得られると、上記初期値との誤差信号が得られる。
【0008】
ここで、複数のセンサにより実際の距離差の観測値が得られた場合について説明する。上記式(2)より下記式(7)〜(10)の関係を導き出すことができる。これらより、距離差の真値及びその誤差信号と目標の状態ベクトルの修正量との関係が得られるので、上記式(2)を目標の状態ベクトルの初期値で近似して(下記式(7)参照)、真値への修正量δxアンダーバー(以下、出願書類の処理の関係上、読みで表記する)が決まる。
【数3】
【0009】
上記式(7)を最小二乗法を用いて解くと、修正量δxアンダーバーは下記式(11)で与えられる。これにより、上記式(10)を解く。
【数4】
【0010】
以上の処理を修正量δxアンダーバーが収束するまで繰り返すと、状態ベクトルが推定される。つまり、収束判定と判断された場合、現在の目標の状態ベクトルに修正量を加えたものが目標の状態ベクトルとなる。一方、収束判定とみなされない場合においては、状態ベクトルに修正量を付加し、上述したアルゴリズに従った処理を繰り返す。なお、ドップラ周波数差の観測値が得られた場合についても上述と同様なアルゴリズムを適用することができる。
【0011】
【非特許文献1】K. C. HO: "An Accurate Algebraic Solution for Moving Source Location Using TDOA and FDOA Measurements" IEEE Trans. On Signal Processing, Vol.52, No.9, Sep. 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の運動諸元推定装置では、複数のセンサが同じ時刻に観測した場合を前提として目標の運動諸元を推定している。しかし、実際には観測タイミングのずれや伝送遅延等により複数のセンサ間で観測時刻が異なる場合が多くなることが想定される。従って、従来の運動諸元推定装置では目標の運動諸元の推定が困難となり、後段処理である目標追尾等の処理に移行できないという課題がある。このため、異なる時刻に距離差やドップラ周波数差が得られた場合においても目標の運動諸元を推定できることが望まれていた。
【0013】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数のセンサが非同期に観測した場合においても目標の運動諸元を推定することができる運動諸元推定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る運動諸元推定装置は、目標の運動を観測する複数のセンサを有する受信手段と、受信手段の複数のセンサのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から、該センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値を検出する検出手段と、複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略推定値と、の差分より目標の運動諸元の修正量を算出し、収束演算によって差分が収束するまで運動諸元を修正することで基準時刻における目標の運動諸元を推定する非同期測位手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期推定値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略推定値と、の差分により目標の運動諸元の修正量を算出し、収束演算によって差分が収束するまで運動諸元を修正することで基準時刻における目標の運動諸元を推定するので、複数のセンサが非同期、すなわち異なる時刻で観測した結果からでも目標の運動諸元を推定することができ、該運動諸元を用いて目標を早期に追尾処理等することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による運動諸元推定装置の構成を示す図である。実施の形態1による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差/速度差観測値検出手段(検出手段)2、非同期測位手段4を備える。受信手段1は、センサ11〜1M(Mは、1より大きい整数)を備え、各センサ11〜1Mは、目標とセンサ11〜1Mのうちの任意の2センサ間(図1の例では、センサ11とセンサ12,・・・,センサ1(M−1)とセンサ1M)との距離差やドップラ周波数差を観測する。
【0017】
距離差/速度差観測値検出手段2は、距離差/速度差観測値検出部21〜2N(Nは、M−1の整数)を備える。距離差/速度差観測値検出部21〜2Nは、受信手段1を構成するセンサ11〜1Mから任意の2つのセンサごとにセンサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差の観測結果を検出し、該2センサ間の距離差及びドップラ周波数差から求めた速度差とその観測時刻を出力する。
【0018】
非同期測位手段4は、距離差/速度差観測値検出手段2から出力される、受信手段1における任意の2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差から得られる速度差を入力して、非同期を考慮して目標の状態ベクトルを推定する。また、非同期測位手段4は、図1に示すように、初期状態量設定部41、時刻差算出部421〜42N、距離差/速度差概略値算出部431〜43N、修正量算出部441〜44N、修正状態ベクトル算出部45、及び収束判定部46を備える。
【0019】
初期状態量設定部41は、修正状態ベクトル算出部45により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。時刻差算出部421〜42Nは、初期状態量設定部41により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出する。
【0020】
距離差/速度差概略値算出部431〜43Nは、時刻差算出部421〜42Nにより算出された時刻差及び初期状態量設定部41により設定された基準時刻における目標の初期値(若しくは収束判定部46からの修正量を初期値として)を用いて予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。
【0021】
修正量算出部441〜44Nは、距離差/速度差概略値算出部431〜43Nにより算出された概略値と距離差/速度差観測値検出手段2から得られた観測値との差分を算出し、この差分を用いて目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部45は、修正量算出部441〜44Nから修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。
【0022】
収束判定部46では、修正状態ベクトル算出部45による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差/速度差概略値算出部431〜43Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0023】
本発明による運動諸元推定装置では、非同期に得られた距離差や速度差の観測情報を、予め仮定した運動方程式(例えば、等速直線運動)に当てはめて、基準時刻(目標の運動諸元を推定したい指定時刻)における目標の運動諸元として目標の状態ベクトル(位置、速度等)を推定する。なお、この推定には、例えば最小二乗法を用いる。
【0024】
また、以降の説明では目標の運動モデルを下記式(12)のように仮定する。
但し、tは基準時刻であり、x(t)は基準時刻tにおける目標の運動諸元の真値を表す状態ベクトルである。また、ΔTは、基準時刻tからの時刻差である。
【数5】
【0025】
例えば、目標の基本的な運動を等速直線運動と仮定し、x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合、目標の状態ベクトルx(t)と運動モデルは下記式(13)及び下記式(14)のように定義される。但し、Tはベクトルや行列の転置を示しており、ドットは時間微分を示している。また、In×nはn行n列の単位行列であり、On×nは、n行n列の零行列である。
【数6】
【0026】
次に、上記式(1)と上記式(12)より、2センサ間の目標との距離差について下記式(15)が定義される。
【数7】
【0027】
例えば、図2に示すように目標が航空機である場合、当該目標についてそれぞれ異なる時刻t1〜t3で基準時刻tを含めて計4回の観測で観測値が得られたとすると、上記式(15)より下記式(16)が導出される。なお、時刻tk(k=1〜3)は、下記式(17)より基準時刻tからΔtk前の時刻である。
【数8】
【0028】
上記式(16)より最小二乗法による収束計算を用いて、基準時刻tにおける状態ベクトル(図2中、時刻tにおいて太線の四角と線で表したもの)の推定値を算出する。なお、最小二乗法による収束計算は、例えば非特許文献1に開示される従来の運動諸元推定装置と同様の処理を実施する。
【0029】
次に動作について説明する。
センサ11〜1Mのうちの任意の2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差の観測値は、受信手段1から距離差/速度差観測値検出手段2に出力される。距離差/速度差観測値検出手段2では、受信手段1における任意の2センサによる観測値を距離差/速度差観測値検出部21〜2Nが入力する。図1の例では、受信手段1のセンサ11〜1Mのうち、センサ11及びセンサ12のセンサ出力が距離差/速度差観測値検出部21に入力され、センサ12及びセンサ13のセンサ出力が距離差/速度差観測値検出部22に入力され、同様に2センサの出力が距離差/速度差観測値検出部に逐次入力される。
【0030】
距離差/速度差観測値検出部21〜2Nでは、センサ11〜1Mのうちの2センサからそれぞれ入力した検知結果に基づいて、2センサ間の目標との距離差を検出し、2センサ間の目標とのドップラ周波数差から速度差を求める。この後、距離差/速度差観測値検出部21〜2Nは、2センサ間の目標との距離差及び速度差を、非同期測位手段4内の修正量算出部441〜44Nにそれぞれ出力し、各センサの観測時刻も非同期測位手段4内の時刻差算出部421〜42Nにそれぞれ出力する。
【0031】
非同期測位手段4内の初期状態量設定部41は、基準時刻tを時刻差算出部421〜42Nにそれぞれ出力し、目標の状態ベクトルの初期値x(t)を距離差/速度差概略値算出部431〜43Nにそれぞれ出力する。時刻差算出部421〜42Nは、基準時刻tと観測時刻とを用い、上記式(17)により基準時刻tと観測時刻tkの時刻差Δtkを算出し、距離差/速度差概略値算出部431〜43Nにそれぞれ出力する。
【0032】
距離差/速度差概略値算出部431〜43Nでは、初期状態量設定部41から入力した目標の状態ベクトルx(t)の初期値と時刻差算出部421〜42Nから入力した時刻差を用い、上記式(12)に従ってそれぞれ異なる時刻における目標の状態ベクトルx(t)とセンサi,j間の目標との距離差又は速度差の概略値(上記式(16)のgi,jに相当するもの)とを算出して修正量算出部441〜44Nにそれぞれ出力する。
【0033】
このように、距離差/速度差概略値算出部431〜43Nは、予め仮定した目標の運動方程式である上記式(12)〜(17)に従って、基準時刻tにおける目標の運動諸元の初期値x(t)に対し基準時刻tとの時刻差ΔTを反映させて各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略値(概略推定値)を算出する。
【0034】
修正量算出部441〜44Nでは、距離差/速度差概略値算出部431〜43Nからの概略値gi,jと、距離差/速度差観測値検出部21〜2Nからの観測値zi,j(距離差、速度差の観測値)とを入力し、概略値gi,jと観測値zi,jとの誤差(距離差の誤差Δhi,j、速度差の誤差Δli,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部45では、修正量算出部441〜44Nから異なる時刻における修正量をそれぞれ入力し、最小二乗法による収束計算を施して、目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0035】
収束判定部46では、修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値x(t)の代わりに距離差/速度差概略値算出部431〜43Nの入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満になれば、修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0036】
以上のように、この実施の形態1によれば、目標の運動を観測する複数のセンサ11〜1Mを有する受信手段1と、受信手段1の複数のセンサ11〜1Mのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から該センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値を検出する距離差/速度差観測値検出手段2と、複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略値と、の差分により目標の運動諸元の修正量を算出し、収束演算によって差分が収束するまで運動諸元を修正することで基準時刻における目標の運動諸元を推定する非同期測位手段4とを備えるので、観測タイミングのずれや伝送遅延等により複数のセンサ間で観測時刻が異なり、観測値が非同期になっても、信頼性の高い目標の運動諸元推定が可能である。
【0037】
また、上記実施の形態1では、x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合を示したが、未知数を増やすことで3次元での目標の位置と速度を推定することもできる。この場合は、観測値の数を増やすことで、目標の状態ベクトルを推定できる。
【0038】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図3において、実施の形態2による運動諸元推定装置の基本的な構成は、上記実施の形態1の図1で示したものと同様であるが、非同期測位手段5が距離差/速度差観測値検出部21〜2Nから観測精度を入力する点で異なる。
【0039】
非同期測位手段5の修正状態ベクトル算出部55は、距離差/速度差観測値検出部21〜2Nから入力した観測精度を考慮して、修正量算出部541〜54Nからの修正量に対し最小二乗法を用いて目標の運動諸元を推定する。つまり、修正状態ベクトル算出部55が、状態ベクトルの修正量を算出するにあたり、上記式(11)について距離差及びドップラ周波数差の観測精度を重み付けの項として加える。
【0040】
初期状態量設定部51は、修正状態ベクトル算出部55により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。時刻差算出部521〜52Nは、初期状態量設定部51により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出する。
【0041】
距離差/速度差概略値算出部531〜53Nは、時刻差算出部521〜52Nにより算出された時刻差及び初期状態量設定部51により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部56からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。
【0042】
収束判定部56は、修正状態ベクトル算出部55による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差/速度差概略値算出部531〜53Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
なお、他の構成は、図1と同一又はこれに相当する構成であるので同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
次に動作について説明する。
上記実施の形態1と異なる動作について主に説明する。
修正状態ベクトル算出部55は、修正量算出部541〜54Nから入力した状態ベクトルの修正量と、距離差/速度差観測値検出部21〜2Nから入力した距離差及びドップラ周波数差の観測精度を用い、該観測精度を重み付けした最小二乗法により目標の状態ベクトルの修正量とこれを状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。例えば、下記式(18)のように観測精度Sを重み付けした式に従って目標の状態ベクトルの修正量と修正状態ベクトルを算出する。
【数9】
【0044】
収束判定部56は、修正状態ベクトル算出部55から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標状態ベクトルの初期値x(t)の代わりに距離差/速度差概略値算出部531〜53Nの入力にフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満になれば、修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0045】
以上のように、この実施の形態2によれば、非同期測位手段5が、観測値と概略値(概略推定値)との誤差(差分)に対してセンサ11〜1Mの観測精度を重み付けして目標の運動諸元の修正量を算出するので、観測値が非同期であっても目標の状態ベクトルを推定することができる。また、観測精度を考慮することにより、より信頼性の高い推定を実施することが可能である。
【0046】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図4に示すように、実施の形態3による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差/速度差観測値検出手段2、仮測位/初期値算出手段6及び非同期測位手段7を備える。なお、図4において、図1と同一又はこれに相当する構成要素に同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
仮測位/初期値算出手段6は、初期状態量設定部61、距離差/速度差概略値算出部621,622、修正量算出部631,632、修正状態ベクトル算出部64、及び収束判定部65を備える。初期状態量設定部61は、修正状態ベクトル算出部64が目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際に用いる初期値として目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。
【0048】
距離差/速度差概略値算出部621,622は、初期状態量設定部61によって設定された基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値を用いて(若しくは、収束判定部65からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。修正量算出部631,632は、距離差/速度差概略値算出部621,622により算出された概略値と距離差/速度差観測値検出部21,22から得られた観測値(センサ11,12とセンサ12,13による観測値)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。
【0049】
修正状態ベクトル算出部64は、修正量算出部631,632から修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部65では、修正状態ベクトル算出部64から入力した修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、距離差/速度差概略値算出部621,622に修正状態ベクトルをフィードバックしたり、非同期測位手段7の初期値として修正状態ベクトルを出力する。
【0050】
非同期測位手段7は、時刻差算出部711〜71N、距離差/速度差概略値算出部721〜72N、修正量算出部731〜73N、修正状態ベクトル算出部74及び収束判定部75を備え、仮測位/初期値算出手段6による測位結果を、目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として用い、初期状態量設定部が省略されている以外は上記実施の形態1と同様に動作する。
【0051】
図5は、時刻t3においてセンサ11及びセンサ12、時刻t4においてセンサ12及びセンサ13によって距離差及びドップラ周波数差が得られた場合を示す図である。x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合、実施の形態3では、図5に示すような異なるセンサ組による検知結果の等時間差線(双曲線)の交点を測位し、交点における目標の位置及び速度を非同期測位手段7における目標の状態ベクトルの初期値として設定する。
【0052】
例えば、図5中の破線で示す双曲線は、時刻t3においてセンサ11及びセンサ12から目標へ放射されたレーダ電波(又は音波)が目標で反射してセンサ11及びセンサ12に到達する時刻差を用いて検出された2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差による双曲線(目標とセンサ11及びセンサ12との距離差が一定な等距離差双曲線又は目標とセンサ11及びセンサ12とのドップラ周波数差が一定な等ドップラ周波数差双曲線)である。
【0053】
また、図5中に実線で示す双曲線は、時刻t4においてセンサ12及びセンサ13に反射波が到達する時刻差を用いて検出された2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差による双曲線(センサ12及びセンサ13間の目標との距離差が一定な等距離差双曲線又はセンサ12及びセンサ13間の目標とのドップラ周波数差が一定な等ドップラ周波数差双曲線)である。
【0054】
実施の形態3では、時刻t3においてセンサ11及びセンサ12によって距離差及びドップラ周波数差を観測し、時刻t4においてセンサ12及びセンサ13によって距離差及びドップラ周波数差を観測し、基準時刻として時刻t4を設定して各センサ組の観測値から目標の状態ベクトルを算出することにより、これら双曲線の交点における目標の状態ベクトルを算出し、該状態ベクトルを非同期測位手段7による修正量の算出における初期値として使用する。
【0055】
次に動作について説明する。
仮測位/初期値算出手段6では、初期状態量設定部61により基準時刻及びこの基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値が距離差/速度差概略値算出部621,622に設定される。距離差/速度差概略値算出部621,622では、初期状態量設定部61から入力した目標の状態ベクトルの初期値から目標と各センサ組との距離差及び速度差の概略値を算出して修正量算出部631,632にそれぞれ出力する。
【0056】
修正量算出部631,632では、距離差/速度差概略値算出部621,622からの概略値と距離差/速度差観測値検出部21,22からの観測値(2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差より求めた速度差)を入力し、この概略値と観測値との誤差(距離差の誤差Δhi,j、速度差の誤差Δli,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部64では、修正量算出部631,632からの修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0057】
収束判定部65は、修正状態ベクトル算出部64から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差/速度差概略値算出部621,622の入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。
【0058】
修正量が閾値未満であると、収束判定部65は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部64から入力し、最新観測時刻(図5では時刻t4)における目標の測位結果として非同期測位手段7へ出力する。具体的には、基準時刻として時刻t4を非同期測位手段7の時間差算出部711〜71Nへ出力し、目標の修正状態ベクトルを、非同期測位手段7において目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法で算出する際の初期値として距離差/速度差概略値算出部721〜72Nへ出力する。
【0059】
非同期測位手段7は、仮測位/初期値算出手段6から基準時刻及び目標の状態ベクトルの初期値が設定されると、上記実施の形態1と同様の処理により目標の測位結果を推定する。
【0060】
以上のように、この実施の形態3によれば、仮測位/初期値算出手段6が異なる2つの時刻において異なるセンサ組により観測された観測値に基づいて算出した目標の測位結果を、非同期測位手段7による修正状態ベクトル算出処理の初期値として用いるので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元の推定が可能である。
【0061】
実施の形態4.
図6は、この発明の実施の形態4による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図6に示すように、実施の形態4による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差/速度差観測値検出手段2、仮測位/初期値算出手段8及び非同期測位手段7を備える。なお、図6において、図1及び図4と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
仮測位/初期値算出手段8は、初期状態量設定部81、追尾フィルタ部821,822、距離差/速度差概略値算出部831,832、修正量算出部841,842、修正状態ベクトル算出部85、及び収束判定部86を備える。初期状態量設定部81は、修正状態ベクトル算出部85が目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。
【0063】
追尾フィルタ部821,822は、受信手段1内のセンサの組み合わせ(図6の例では、センサ11,12とセンサ12,13)で得られる観測値(距離差及びドップラ周波数差から求めた速度差)を入力し、これより所定時刻におけるセンサ組のセンサ間の目標との距離差やドップラ周波数差から求めた速度差を推定する。距離差/速度差概略値算出部831,832は、初期状態量設定部81により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部86からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った目標の運動諸元の概略値を算出する。
【0064】
修正量算出部841は、距離差/速度差概略値算出部831により算出された目標の運動諸元の概略値と追尾フィルタ部821により得られた観測値(センサ11,12間の目標との距離差及びドップラ周波数差により求まる速度差の推定値)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正量算出部842は、距離差/速度差概略値算出部832により算出された目標の運動諸元の概略値と追尾フィルタ部822により得られた観測値(センサ12,13間の目標との距離差及びドップラ周波数差により求まる速度差の推定値)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。
【0065】
修正状態ベクトル算出部85は、修正量算出部841,842からの修正量が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部86では、修正状態ベクトル算出部85による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差/速度差概略値算出部831,832にフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを非同期測位手段7による修正量算出の初期値として出力する。
【0066】
図7は、時刻t1,t2においてセンサ11とセンサ12により距離差及びドップラ周波数差を観測し、時刻t3においてセンサ12とセンサ13によって距離差及びドップラ周波数差が観測された場合を示す図である。x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合、この実施の形態4では、いずれか一方のセンサ組み合わせで目標を追尾処理(目標との距離差、ドップラ周波数差による速度差を推定)し、他方のセンサ組み合わせにより観測値が得られた時刻に対する予測処理を実施することで時刻の同期を取る。
【0067】
例えば、図7では、時刻t3でセンサ12とセンサ13により距離差及び速度差に関する情報が得られている場合、センサ11とセンサ12の組み合わせにより得られる距離差及び速度差に関する情報について時刻t3における予測処理を実施する。この結果、図7に示すように時刻t3におけるセンサ11,12による観測値の双曲線とセンサ12,13による観測値の双曲線の交点が測位される。実施の形態4では、この交点での目標の状態ベクトルを、非同期測位手段7における修正量算出の初期値とする。
【0068】
次に動作について説明する。
仮測位/初期値算出手段8において、初期状態量設定部81が追尾フィルタ部821,822に基準時刻を設定し、基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値を距離差/速度差概略値算出部831,832に設定する。
【0069】
追尾フィルタ部821は、距離差/速度差観測値検出部21から、センサ11,12の検知結果から得られる観測値(2センサ間の目標との距離差及びドップラ周波数差による速度差)及びその観測時刻を入力して、初期状態量設定部81により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差/速度差観測値検出部21から入力した観測値とを用いてある時刻(図7の例では時刻t1,t2)における目標を追尾処理する(センサ11,12間の目標との距離差及び速度差を推定する)。
【0070】
追尾フィルタ部822では、距離差/速度差観測値検出部22から、センサ12,13の検知結果から得られる観測値及びその観測時刻(図7の例では時刻t3)を入力して、初期状態量設定部81に設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差/速度差観測値検出部22から入力した観測値とを用いて時刻t3における目標の追尾処理(2センサ間の目標との距離差及び速度差を推定)する。
【0071】
このように、時刻t3でセンサ12,13により目標との距離差及びドップラ周波数差による速度差が得られている場合、追尾フィルタ部821は、センサ11,12による目標との距離差及びドップラ周波数差による速度差について当該時刻t3における予測処理を実行する。これにより、図7中の一点破線で示すセンサ11,12による観測値の等時間差線と図7中の実線で示すセンサ12,13による観測値の等時間差線との交点が測位される。つまり、センサ12,13により距離差及びドップラ周波数差が得られる、時刻t3におけるセンサ11,12による観測の予測値を得ることで、同一時刻(時刻t3)で目標との距離差及びドップラ周波数差より求まる速度差が得られたとみなして測位処理を実施する。但し、予測処理するセンサの組み合わせは1組以上とする。
【0072】
距離差/速度差概略値算出部831,832は、初期状態量設定部81から入力した目標の状態ベクトルの初期値を用いて各センサ組の2センサ間の目標との距離差及び速度差の概略値を算出して修正量算出部841,842にそれぞれ出力する。
【0073】
修正量算出部841,842では、距離差/速度差概略値算出部831,832からの概略値と追尾フィルタ部821,822から入力した観測値(目標との距離差及びドップラ周波数差より求めた速度差の推定値)を入力し、概略値と観測値の誤差(距離差の誤差Δhi,j、速度差の誤差Δli,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部85では、修正量算出部841,842からの修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0074】
収束判定部86は、修正状態ベクトル算出部85から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差/速度差概略値算出部831,832へフィードバックし、上記処理を繰り返す。
【0075】
修正量が閾値未満であると、収束判定部86は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部85から入力し、図7に示す時刻t3における目標の測位結果として非同期測位手段7へ出力する。具体的には、基準時刻として時刻t3を非同期測位手段7の時間差算出部711〜71Nへ出力し、目標の修正状態ベクトルを、非同期測位手段7において目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法で算出する際の初期値として距離差/速度差概略値算出部721〜72Nへ出力する。
【0076】
非同期測位手段7は、仮測位/初期値算出手段8から基準時刻及び目標の状態ベクトルの初期値が設定されると、上記実施の形態1と同様の処理により目標の測位結果を推定する。
【0077】
以上のように、この実施の形態4によれば、仮測位/初期値算出手段8が、センサ11,12の検知結果から得られた目標との距離差及びドップラ周波数差より求まる速度差を追尾処理し、別の時刻において、異なるセンサ組(センサ12,13)の検知結果から目標との距離差及びドップラ周波数差より求まる速度差が得られる場合、上記追尾結果に基づいてそのセンサ組(センサ12,13)に対する時刻整合を行ってから、目標の位置、速度を算出し、最小二乗法による目標の状態ベクトル算出の初期値として設定するので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元推定が可能である。
【0078】
実施の形態5.
図8は、この発明の実施の形態5による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図8に示すように、実施の形態5による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差/速度差観測値検出手段2及び非同期測位手段9を備える。なお、図8において、図1と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
非同期測位手段9は、初期状態量設定部91、追尾フィルタ部921〜92N、距離差/速度差概略値算出部931〜93N、修正量算出部941〜94N、修正状態ベクトル算出部95、及び収束判定部96を備える。
【0080】
初期状態量設定部91は、修正状態ベクトル算出部95により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。追尾フィルタ部921〜92Nは、受信手段1内のセンサの組み合わせで得られる検知結果に基づいて距離差/速度差観測値検出部21〜2N距離差及びドップラ周波数差を入力し、追尾処理を実施する。
【0081】
距離差/速度差概略値算出部931〜93Nは、初期状態量設定部91により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部96からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。修正量算出部941〜94Nは、距離差/速度差概略値算出部931〜93Nにより算出された概略値と追尾フィルタ部921〜92Nから得られた観測値との差分を用いて目標の状態ベクトルの修正量を算出する。
【0082】
修正状態ベクトル算出部95は、修正量算出部941〜94Nから修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部96では、修正状態ベクトル算出部95による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差/速度差概略値算出部931〜93Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0083】
次に動作について説明する。
初期状態量設定部91は、追尾フィルタ部921〜92Nに基準時刻を設定し、基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値を距離差/速度差概略値算出部931〜93Nに設定する。
【0084】
追尾フィルタ部921〜92Nは、距離差/速度差観測値検出部21〜2Nから、センサ組の検知結果により得られる観測値(目標との距離差及びドップラ周波数差による速度差)及びその観測時刻をそれぞれ入力して、初期状態量設定部91により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差/速度差観測値検出部から入力した観測値とを用いて、目標を追尾処理する(各センサ組のセンサ間の目標との距離差及び速度差を推定する)。
【0085】
追尾フィルタ部921〜92Nのうち、ある追尾フィルタ部は、距離差/速度差観測値検出部から、ある時刻で他の追尾フィルタ部により異なるセンサ組で観測値が得られている場合、初期状態量設定部91に設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差/速度差観測値検出部から入力した観測値とを用いて、当該時刻における目標との距離差及び速度差を予測処理(目標との距離差及び速度差を推定)する。
【0086】
例えば、ある時刻で追尾フィルタ部922〜92Nによってセンサ12,13〜1(N−1),1Nの検知結果で目標との距離差及び速度差が得られる場合、追尾フィルタ部921が該時刻における予測値を得ることで、同一時刻において目標との距離差及びドップラ周波数差により求まる速度差が得られたとみなして測位処理を実施する。但し、予測処理するセンサの組み合わせは1組以上とする。
【0087】
距離差/速度差概略値算出部931〜93Nは、初期状態量設定部91から入力した目標の状態ベクトルの初期値を用いて目標と各センサ組との距離差及び速度差の概略値を算出して修正量算出部941〜94Nにそれぞれ出力する。
【0088】
修正量算出部941〜94Nでは、距離差/速度差概略値算出部931〜93Nからの概略値と追尾フィルタ部921〜92Nから入力した観測値(目標との距離差及び速度差の推定値)を入力し、概略値と観測値の誤差(距離差の誤差Δhi,j、速度差の誤差Δli,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部95では、修正量算出部941〜94Nからの修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0089】
収束判定部96は、修正状態ベクトル算出部95から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差/速度差概略値算出部931〜93Nの入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満であると、収束判定部96は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部95から入力し、目標の測位結果として出力する。
【0090】
以上のように、この実施の形態5によれば、非同期測位手段9が、センサ組の検知結果から得られた目標との距離差及びドップラ周波数差より求まる速度差を追尾処理し、別の時刻において、異なるセンサ組の検知結果から目標との距離差及び速度差が得られる場合、上記追尾結果に基づいてそのセンサ組に対する時刻整合を行ってから、目標の運動諸元を推定するので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元推定が可能である。
【0091】
実施の形態6.
図9は、この発明の実施の形態6による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図9に示すように、実施の形態6による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差/速度差観測値検出手段2及び非同期測位手段10を備える。なお、図9において、図1と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0092】
非同期測位手段10は、初期状態量設定部101、時刻差算出部1021〜102N、距離差/速度差概略値算出部1031〜103N、修正量算出部1041〜104N、修正状態ベクトル算出部105、収束判定部106、及び収束演算カウント部107を備える。収束判定部106及び収束演算カウント部107以外の構成は、上記実施の形態1の図1で示した初期状態量設定部41、時刻差算出部421〜42N、距離差/速度差概略値算出部431〜43N、修正量算出部441〜44N、及び修正状態ベクトル算出部45と同様に動作する。
【0093】
収束判定部106は、収束演算カウント部107が計算回数限界値をカウントするまでの間、修正状態ベクトル算出部105による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差/速度差概略値算出部1031〜103Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0094】
収束演算カウント部107は、収束判定部106により修正状態ベクトルが距離差/速度差概略値算出部1031〜103Nにフィードバックされる度に収束演算回数を、所定の計算回数限界値になるまでカウントする。ここで、計算回数限界値とは、実施の形態6による運動諸元推定装置を実現する計算機の演算性能や検知データ等のサンプリングレートに応じて決定した、最適な演算負荷と推定精度を与える収束演算回数である。
【0095】
次に動作について説明する。
以降では、実施の形態6による運動諸元推定装置に特有な動作について主に説明する。
先ず、収束判定部106が収束演算を行うにあたり、収束演算カウント部107は、カウント値を0に初期化し、カウントの限界値として計算回数限界値を設定する。上記実施の形態1と同様にして、修正状態ベクトル算出部105から修正量が入力されると、収束判定部106は、所定の閾値と該修正量を比較する。このとき、修正量が閾値より大きく収束しなかった場合、収束演算カウント部107は、カウント値を1増やす。
【0096】
計算回数限界値にカウント値が達しても修正量が収束しなかった場合、収束演算カウント部107は、計算終了の信号を収束判定部106に送信する。これにより、収束判定部106は、該計算終了時の修正量を反映させた修正状態ベクトル(修正量を加えた修正状態ベクトル)を目標の測位結果として出力する。なお、カウント値が計算回数限界値に達する前に修正量が収束した場合は、該収束した修正量を加えた修正状態ベクトルを目標の測位結果として出力し、収束演算カウント部107はカウントを停止する。
【0097】
以上のように、この実施の形態6によれば、収束判定部106が、収束演算カウント部107によるカウントが予め定めた計算回数限界値まで達すると、収束演算を終了してその時点での運動諸元推定値を出力するので、修正状態ベクトル算出部105による収束計算の回数が限定されることから、本実施の形態6による運動諸元推定装置の性能を超える演算の実行が抑制され、かつ所定の時間で演算が終了することから収束計算の時間を短縮することができる。
【0098】
なお、上記実施の形態6では、収束演算カウント部107を上記実施の形態1による構成に適用した場合を示したが、上記実施の形態2〜5の構成に適用してもよく、同様の効果を得ることができる。
【0099】
実施の形態7.
図10は、この発明の実施の形態7による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図10に示すように、実施の形態7による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差観測値検出手段2a及び非同期測位手段12aを備える。なお、図10において、図1と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0100】
距離差観測値検出手段2aは、距離差観測値検出部111〜11N(Nは、M−1の整数)を備える。距離差観測値検出部111〜11Nは、受信手段1を構成するセンサ11〜1Mから2つのセンサごとに2センサ間の目標との距離差を検出し、該2センサ間の距離差とその観測時刻を出力する。
【0101】
実施の形態7によるセンサ11〜1Mとしては、例えば目標へ放射したレーダ電波の反射電波が到達する時刻差から目標との距離差を算出するレーダセンサ等が考えられる。なお、上記式(3)に示すようにドップラ周波数差を算出する際にも目標の位置の初期値が必要であるが、目標の位置は、上記式(2)に示すように目標との距離差の観測値が必要である。そこで、本実施の形態7では、ドップラ周波数差を算出せず、任意の2センサ間の目標との距離差のみを用いて目標の状態ベクトルを推定することで演算処理の簡略化を図っている。
【0102】
非同期測位手段12aは、距離差観測値検出手段2aから出力される、受信手段1における任意の2センサ間の目標との距離差を入力し、非同期を考慮して目標の状態ベクトルを推定する。また、非同期測位手段12aは、図10に示すように初期状態量設定部121、時刻差算出部1221〜122N、距離差概略値算出部1231〜123N、修正量算出部1241〜124N、修正状態ベクトル算出部125、及び収束判定部126を備える。
【0103】
初期状態量設定部121は、修正状態ベクトル算出部125により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。時刻差算出部1221〜122Nは、初期状態量設定部121により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出する。
【0104】
距離差概略値算出部1231〜123Nは、時刻差算出部1221〜122Nにより算出された時刻差及び初期状態量設定部121により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部126からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。
【0105】
修正量算出部1241〜124Nは、距離差概略値算出部1231〜123Nにより算出された概略値と距離差観測値検出手段2aから得られた観測値との差分を算出し、この差分を用いて算出した修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部125は、修正量算出部1241〜124Nから修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。
【0106】
収束判定部126では、修正状態ベクトル算出部125による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1231〜123Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0107】
次に動作について説明する。
センサ11〜1Mのうちの任意の2センサ間の目標との距離差の観測値は、受信手段1から距離差観測値検出手段2aに出力される。距離差観測値検出手段2aでは、受信手段1における任意の2センサによる観測値を距離差観測値検出部111〜11Nが入力する。図10の例では、受信手段1のセンサ11〜1Mのうち、センサ11及びセンサ12のセンサ出力が距離差観測値検出部111に入力され、センサ12及びセンサ13のセンサ出力が距離差観測値検出部112に入力され、同様に2センサの出力が距離差観測値検出部に逐次入力される。
【0108】
距離差観測値検出部111〜11Nでは、センサ11〜1Mのうちの2センサからそれぞれ入力した検知結果に基づいて、2センサ間の目標との距離差を検出する。この後、距離差観測値検出部111〜11Nは、2センサ間の目標との距離差を、非同期測位手段12a内の修正量算出部1231〜123Nにそれぞれ出力し、各センサの観測時刻も非同期測位手段12a内の時刻差算出部1221〜122Nにそれぞれ出力する。
【0109】
非同期測位手段12a内の初期状態量設定部121は、基準時刻tを時刻差算出部1221〜122Nにそれぞれ出力し、目標の状態ベクトルの初期値x(t)を距離差概略値算出部1231〜123Nにそれぞれ出力する。時刻差算出部1221〜122Nは、基準時刻tと観測時刻とを用い、上記式(17)により基準時刻tと観測時刻tkの時刻差Δtkを算出し、距離差概略値算出部1231〜123Nにそれぞれ出力する。
【0110】
距離差概略値算出部1231〜123Nでは、初期状態量設定部121から入力した目標の状態ベクトルx(t)の初期値と時刻差算出部1221〜122Nから入力した時刻差を用い、上記式(12)に従ってそれぞれ異なる時刻における目標の状態ベクトルx(t)(目標の位置、速度等)とセンサi,jとの距離差の概略値gi,jを算出して修正量算出部1241〜124Nにそれぞれ出力する(上記式(16)のgi,jに相当するもの)。
【0111】
修正量算出部1241〜124Nは、距離差概略値算出部1231〜123Nからの概略値gi,jと、距離差観測値検出部111〜11Nからの観測値zi,j(距離差の観測値)とを入力し、概略値gi,jと観測値zi,jとの誤差(距離差の誤差Δhi,j)を算出し、この誤差を用いて算出した修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部125では、修正量算出部1241〜124Nから修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトル(該修正量を加えた状態ベクトル)を出力する。
【0112】
収束判定部126では、修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値x(t)の代わりに距離差概略値算出部1231〜123Nの入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満になれば、修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0113】
以上のように、この実施の形態7によれば、センサ11〜1Mから任意の2センサ間の目標との距離差の観測値のみを入力し、該距離差に基づいて目標の状態ベクトルを推定するので、ドップラ周波数差が得られない場合であっても目標の運動諸元を推定することができる。これにより、ドップラ周波数差を得るための演算処理も省略することができ、簡易な構成で上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0114】
実施の形態8.
図11は、この発明の実施の形態8による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図11に示すように、実施の形態8による運動諸元推定装置の基本的な構成は、上記実施の形態7の図10に示したものと同様であるが、非同期測位手段13aが距離差観測値検出部111〜11Nから観測精度を入力する点で異なる。
【0115】
非同期測位手段13a内の修正状態ベクトル算出部135は、距離差観測値検出部111〜11Nからの観測精度を考慮して修正量算出部1341〜134Nからの修正量に対して最小二乗法を用いて目標の運動諸元を推定する。つまり、修正状態ベクトル算出部135が、状態ベクトルの修正量を算出するにあたり、上記式(11)について距離差の観測精度を重み付けの項として加える。
【0116】
初期状態量設定部131は、修正状態ベクトル算出部135により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。時刻差算出部1321〜132Nは、初期状態量設定部131により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出する。
【0117】
距離差概略値算出部1331〜133Nは、時刻差算出部1321〜132Nにより算出された時刻差及び初期状態量設定部131により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部136からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。
【0118】
収束判定部136では、修正状態ベクトル算出部135による修正量が閾値より大きい場合、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1331〜133Nに出力し、修正量が閾値より小さい場合、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。なお、他の構成は、図10と同一又はこれに相当する構成であるので同一符号を付して説明を省略する。
【0119】
次に動作について説明する。
上記実施の形態7と異なる動作について主に説明する。
修正状態ベクトル算出部135は、修正量算出部1341〜134Nから入力した状態ベクトルの修正量と、距離差観測値検出部1331〜133Nから入力した距離差の観測精度を用い、該距離差の観測精度を重み付けした最小二乗法により目標の状態ベクトルの修正量とこれを状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。例えば、上記式(18)のように観測精度Sを重み付けした式に従って目標の状態ベクトルの修正量と修正状態ベクトルを算出する。
【0120】
収束判定部136は、修正状態ベクトル算出部135から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標状態ベクトルの初期値x(t)の代わりに距離差概略値算出部1331〜133Nの入力にフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満になれば、修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0121】
以上のように、この実施の形態8によれば、観測値が非同期であっても目標の状態ベクトルを推定することができる。また、観測情報として任意の2センサ間の目標との距離差のみでよいことから、上記実施の形態7と同様にドップラ周波数差が得られないセンサであっても目標の運動諸元を推定することができる。これにより、ドップラ周波数差を得るための演算処理も省略することができ、簡易な構成で上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、距離差の観測精度を考慮することにより、より信頼性の高い推定を実施することが可能である。
【0122】
実施の形態9.
図12は、この発明の実施の形態9による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図12に示すように、実施の形態9による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差観測値検出手段2a、仮測位/初期値算出手段14a及び非同期測位手段15aを備える。なお、図12において、図10と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0123】
仮測位/初期値算出手段14aは、初期状態量設定部141、距離差概略値算出部1421,1422、修正量算出部1431,1432、修正状態ベクトル算出部144、収束判定部145、メモリ146及び初期値算出部147を備える。初期状態量設定部141は、修正状態ベクトル算出部144が目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際に用いる初期値として目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。
【0124】
距離差概略値算出部1421,1422は、初期状態量設定部141により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部145からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。修正量算出部1431,1432は、距離差概略値算出部1421,1422により算出された概略値と距離差観測値検出部111,112から得られた観測値(センサ11,12とセンサ12,13による観測値)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。
【0125】
修正状態ベクトル算出部144は、修正量算出部1431,1432から修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部145では、修正状態ベクトル算出部144による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1421,1422にフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルをメモリ146に出力する。
【0126】
メモリ146は、収束判定部145で収束したものと判定された目標の測位結果(目標の状態ベクトル)を記憶する。初期値算出部147は、下記式(19)及び下記式(20)で表される異なる2つの時刻t1,t2における測位結果である目標の位置x(t1)ハット,x(t2)ハット(出願書類の処理の関係上、読みで表記する)から下記式(21)に従って初期速度xドット(出願書類の処理の関係上、読みで表記する)を得る。この最新時刻における目標の測位結果を非同期測位手段15aへの初期値として出力する。
【数10】
【0127】
非同期測位手段15aは、時刻差算出部1511〜151N、距離差概略値算出部1521〜152N、修正量算出部1531〜153N、修正状態ベクトル算出部154、及び収束判定部155を備え、仮測位/初期値算出手段14aによる測位結果を、目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として用い、初期状態量設定部が省略されている以外は上記実施の形態8と同様に動作する。
【0128】
図13は、時刻t1においてセンサ11及びセンサ12、時刻t2においてセンサ12及びセンサ13、時刻t3においてセンサ11及びセンサ12、時刻t4においてセンサ12及びセンサ13によって距離差が得られた場合を示す図である。x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合、実施の形態9では、図13に示すような異なるセンサ組による検知結果の等時間差線(双曲線)の交点を測位し、交点における目標の位置及び速度を非同期測位手段15aにおける目標の状態ベクトルの初期値として設定する。
【0129】
例えば、図13中の破線で示す双曲線は、時刻t1,t3において目標へ放射されたレーダ電波が目標で反射してセンサ11及びセンサ12に到達する時刻差を用いて検出された2センサ間の目標との距離差による双曲線(目標とのセンサ11及びセンサ12間の距離差が一定な等距離差双曲線)である。また、図13中に実線で示す双曲線は、時刻t2,t4においてセンサ12及びセンサ13に反射電波が到達する時刻差を用いて検出された2センサ間の目標との距離差による双曲線(目標とのセンサ12及びセンサ13間の距離差が一定な等距離差双曲線)である。
【0130】
実施の形態9では、時刻t1,t3においてセンサ11及びセンサ12によって距離差を観測し、時刻t2,t4においてセンサ12及びセンサ13によって距離差を観測し、基準時刻として時刻t2,t4を設定して各センサ組の観測値から目標の状態ベクトルを算出することにより、これら双曲線の交点における目標の状態ベクトルを算出し、該状態ベクトルを非同期測位手段15aによる修正量の算出における初期値として使用する。
【0131】
次に動作について説明する。
仮測位/初期値算出手段14aでは、初期状態量設定部141により基準時刻及びこの基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値が距離差概略値算出部1421,1422に設定される。距離差概略値算出部1421,1422では、初期状態量設定部141から入力した目標の状態ベクトルの初期値から各センサ組の2センサ間の目標との距離差の概略値を算出して修正量算出部1431,1432にそれぞれ出力する。
【0132】
修正量算出部1431,1432では、距離差概略値算出部1421,1422からの概略値と距離差観測値検出部111,112からの観測値(2センサ間の目標との距離差)を入力し、この概略値と観測値との誤差(距離差の誤差Δhi,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部144では、修正量算出部1431,1432から修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0133】
収束判定部145は、修正状態ベクトル算出部144から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差概略値算出部1421,1422の入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。
【0134】
修正量が閾値未満であると、収束判定部145は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部144から入力し、最新観測時刻(図13では、時間的に近い時刻t1,t2のときは時刻t2であり、時刻t3,t4のときは時刻t4)における目標の測位結果としてメモリ146に逐次出力して値を保持させる。
【0135】
初期値算出部147は、上記式(19),(20)により2つの時刻t2,t4における測位結果である目標の位置x(t2)ハット,x(t4)ハットを定義し、これらを上記式(21)に代入することで目標の初期速度xドットを得る。この最新時刻における目標の測位結果を非同期測位手段15aへの初期値として出力する。具体的には、基準時刻として時刻t4を非同期測位手段15aの時間差算出部1511〜151Nへ出力し、目標の修正状態ベクトルを、非同期測位手段15aにおける目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際の初期値として距離差概略値算出部1521〜152Nへ出力する。
【0136】
非同期測位手段15aは、仮測位/初期値算出手段14aから基準時刻及び目標の状態ベクトルの初期値が設定されると、上記実施の形態7と同様の処理により目標の測位結果を推定する。
【0137】
以上のように、この実施の形態9によれば、仮測位/初期値算出手段14aが異なる2つの時刻において異なるセンサ組により観測された該2センサ間の目標との距離差に基づいて算出した目標の測位結果を、非同期測位手段15aによる修正状態ベクトル算出処理の初期値として用いるので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元の推定が可能である。また、観測情報として任意の2センサ間の目標との距離差のみでよいことから、上記実施の形態7と同様にドップラ周波数差が得られないセンサであっても目標の運動諸元を推定することができる。
【0138】
実施の形態10.
図14は、この発明の実施の形態10による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図14に示すように、実施の形態10による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差観測値検出手段2a、仮測位/初期値算出手段16a及び非同期測位手段15aを備える。なお、図14において、図1、図6及び図10と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0139】
仮測位/初期値算出手段16aは、初期状態量設定部161、追尾フィルタ部1621,1622、距離差概略値算出部1631,1632、修正量算出部1641,1642、修正状態ベクトル算出部165、収束判定部166、メモリ167、及び初期値算出部168を備える。初期状態量設定部161は、修正状態ベクトル算出部165が目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。
【0140】
追尾フィルタ部1621,1622は、受信手段1内のセンサの組み合わせ(図14の例では、センサ11,12とセンサ12,13)で得られる観測値(距離差)を入力し、これより所定時刻におけるセンサ組の2センサ間の目標との距離差を推定する。距離差概略値算出部1631,1632は、初期状態量設定部161により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部166からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った目標の運動諸元の概略値を算出する。
【0141】
修正量算出部1641は、距離差概略値算出部1631により算出された目標の運動諸元の概略値と追尾フィルタ部1621により得られた推定値(センサ11,12間の目標との距離差)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正量算出部1642は、距離差概略値算出部1632により算出された目標の運動諸元の概略値と追尾フィルタ部1622によって得られた推定値(センサ12,13間の目標との距離差)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。
【0142】
修正状態ベクトル算出部165は、修正量算出部1641,1642から修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部166では、修正状態ベクトル算出部165による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1631,1632にフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルをメモリ167に出力する。
【0143】
メモリ167は、収束判定部166で収束したものと判定された目標の測位結果(目標の状態ベクトル)を記憶する。初期値算出部168は、上記式(19)及び上記式(20)で表される異なる2つの時刻における測位結果である目標の位置から上記式(21)に従って目標の初期速度を得る。この最新時刻における目標の測位結果を非同期測位手段15aへの初期値として出力する。
【0144】
図15は、時刻t1,t2においてセンサ11とセンサ12により距離差を観測し、時刻t3,t4においてセンサ12とセンサ13によって距離差が観測された場合を示す図である。x−yの2次元直交座標系における目標の位置と速度を推定する場合、実施の形態10では、いずれか一方のセンサ組み合わせで得られる目標を追尾処理(目標との距離差を推定)し、他方のセンサ組み合わせにより距離差が得られる時刻に対する予測処理を実施することで時刻の同期を取る。
【0145】
例えば、図15では、時刻t3でセンサ12とセンサ13により距離差が得られた場合、センサ11とセンサ12の組み合わせによる距離差を時刻t3,t4において予測処理を実施する。この結果、図15に示すように時刻t3におけるセンサ11,12による観測値の双曲線(実線)とセンサ12,13による観測値の双曲線(一点破線)の交点が測位される。また、時刻t4におけるセンサ11,12による観測値の双曲線(実線)とセンサ12,13による観測値の双曲線(一点破線)の交点が測位される。実施の形態10では、これらの交点での目標の状態ベクトルを、非同期測位手段15aにおける修正量算出の初期値とする。
【0146】
次に動作について説明する。
仮測位/初期値算出手段16aにおいて、初期状態量設定部161が追尾フィルタ部1621,1622に基準時刻を設定し、基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値を距離差概略値算出部1631,1632に設定する。
【0147】
追尾フィルタ部1621は、距離差観測値検出部111から、センサ11,12の検知結果によって得られる観測値(目標との距離差)及びその観測時刻を入力して、初期状態量設定部161により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差観測値検出部111から入力した観測値を用いて、ある時刻(図15では時刻t1,t2)における目標を追尾処理する(センサ11,12間の目標との距離差を推定する)。
【0148】
追尾フィルタ部1622では、距離差観測値検出部112から、センサ12,13の検知結果から得られる観測値及びその観測時刻を入力して、初期状態量設定部161に設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差観測値検出部112から入力した観測値とを用いて、目標の追尾処理(2センサ間の目標との距離差を推定)する。
【0149】
このように、時刻t3でセンサ12,13により目標との距離差が得られている場合、追尾フィルタ部1621は、センサ11,12による目標との距離差について時刻t3における予測処理を実行する。これにより、図15中の一点破線で示すセンサ11,12による観測値の等時間差線と図15中の実線で示すセンサ12,13による観測値の等時間差線との交点が測位される。つまり、センサ12,13により距離差が得られる時刻t3,t4におけるセンサ11,12による観測の予測値を得ることで、同一時刻(時刻t3,t4)で目標との距離差が得られたとみなして測位処理を実施する。但し、予測処理するセンサの組み合わせは1組以上とする。
【0150】
距離差概略値算出部1631,1632は、初期状態量設定部161から入力した目標の状態ベクトルの初期値を用いて目標との各センサ組の2センサ間の距離差の概略値を算出して修正量算出部1641,1642にそれぞれ出力する。
【0151】
修正量算出部1641,1642では、距離差概略値算出部1631,1632からの概略値と追尾フィルタ部1621,1622から入力した推定値(2センサ間の目標との距離差)を入力し、概略値と観測値の誤差(距離差の誤差Δhi,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部165では、修正量算出部1641,1642から修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0152】
収束判定部166は、修正状態ベクトル算出部165から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差概略値算出部1631,1632の入力へフィードバックして上記処理を繰り返す。
【0153】
修正量が閾値未満であると、収束判定部166は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部165から入力し、図15に示す時刻t3,t4における目標の測位結果としてメモリ167に逐次出力して値を保持させる。
【0154】
初期値算出部168は、上記式(19),(20)により2つの時刻t3,t4における測位結果である目標の位置x(t3)ハット,x(t4)ハットを定義し、これらを上記式(21)に代入することで目標の初期速度xドットを得る。この最新時刻における目標の測位結果を非同期測位手段15aへの初期値として出力する。具体的には、基準時刻として時刻t4を非同期測位手段15aの時間差算出部1511〜151Nへ出力し、目標の修正状態ベクトルを、非同期測位手段15aにおける目標の状態ベクトルの修正量を最小二乗法により算出する際の初期値として距離差概略値算出部1521〜152Nへ出力する。
【0155】
非同期測位手段15aは、仮測位/初期値算出手段16aから基準時刻及び目標の状態ベクトルの初期値が設定されると、上記実施の形態7と同様の処理により目標の測位結果を推定する。
【0156】
以上のように、この実施の形態10によれば、仮測位/初期値算出手段16aが、センサ11,12の検知結果から得られた目標との距離差を追尾処理し、別の時刻において、異なるセンサ組(センサ12,13)の検知結果から目標との距離差が得られる場合、上記追尾結果に基づいてそのセンサ組(センサ12,13)に対する時刻整合を行ってから、目標の位置、速度を算出し、最小二乗法による目標の状態ベクトル算出の初期値として設定するので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元推定が可能である。また、観測情報として任意の2センサ間の目標との距離差のみでよいことから、上記実施の形態7と同様にドップラ周波数差が得られないセンサであっても目標の運動諸元を推定することができる。
【0157】
実施の形態11.
図16は、この発明の実施の形態11による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図16に示すように、実施の形態11による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差観測値検出手段2a及び非同期測位手段17aを備える。なお、図16において、図1、図8及び図10と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0158】
非同期測位手段17aは、初期状態量設定部171、追尾フィルタ部1721〜172N、距離差概略値算出部1731〜173N、修正量算出部1741〜174N、修正状態ベクトル算出部175、及び収束判定部176を備える。
【0159】
初期状態量設定部171は、修正状態ベクトル算出部175により目標の状態ベクトル修正量を最小二乗法で算出する際に用いる初期値として、目標の状態ベクトルの適当な初期値及び目標の運動諸元を推定すべき基準時刻を設定する。追尾フィルタ部1721〜172Nは、受信手段1内のセンサの組み合わせで得られる距離差を入力し、追尾処理を実施する。
【0160】
距離差概略値算出部1731〜173Nは、初期状態量設定部171により設定された基準時刻における目標の初期値を用いて(若しくは、収束判定部176からの修正量を初期値として用いて)、予め仮定した運動方程式に沿った概略値を算出する。
【0161】
修正量算出部1741は、距離差概略値算出部1731により算出された概略値と追尾フィルタ部172から得られた観測値(センサ11,12による観測値)との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正量算出部1742〜174Nは、距離差概略値算出部1732〜173Nにより算出された概略値と距離差観測値検出部112〜11Nから得られた観測値との差分を算出し、この差分を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。
【0162】
修正状態ベクトル算出部175は、修正量算出部1741〜174Nから修正量を入力し、上記差分が収束するまで最小二乗法を用いて目標の状態ベクトルを修正する。収束判定部176では、修正状態ベクトル算出部175による修正量が閾値より大きい場合、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1731〜173Nに出力し、修正量が閾値より小さい場合、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0163】
次に動作について説明する。
初期状態量設定部171は、追尾フィルタ部1721〜172Nに基準時刻を設定し、基準時刻における目標の状態ベクトルの初期値を距離差概略値算出部1731〜173Nに設定する。
【0164】
追尾フィルタ部1721〜172Nは、距離差観測値検出部111〜11Nから、センサ組の検知結果により得られる観測値(2センサ間の目標との距離差)及びその観測時刻をそれぞれ入力して、初期状態量設定部171により設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差観測値検出部から入力した観測値とを用いて、目標を追尾処理する(各センサ組の2センサ間の目標との距離差を推定する)。
【0165】
追尾フィルタ部1721〜172Nのうち、ある追尾フィルタ部は、距離差観測値検出部から、ある時刻で他の追尾フィルタ部により異なるセンサ組で観測値が得られている場合、初期状態量設定部171に設定された基準時刻と観測時刻との時刻差を算出し、この時刻差と距離差観測値検出部から入力した観測値とを用いて、当該時刻における目標との距離差を予測処理(2センサ間の目標との距離差を推定)する。
【0166】
例えば、ある時刻で追尾フィルタ部1722〜172Nによってセンサ12,13〜1(N−1),1Nの検知結果で目標との距離差が得られている場合、追尾フィルタ部1721が該時刻における予測値を得ることで、同一時刻において目標との距離差が得られたとみなして測位処理を実施する。但し、予測処理するセンサの組み合わせは1組以上とする。
【0167】
距離差概略値算出部1731〜173Nは、初期状態量設定部171から入力した目標の状態ベクトルの初期値を用いて目標と各センサ組との距離差の概略値を算出して修正量算出部1741〜174Nにそれぞれ出力する。
【0168】
修正量算出部1741〜174Nでは、距離差概略値算出部1731〜173Nからの概略値と追尾フィルタ部1721〜172Nから入力した推定値(目標との距離差)を入力し、概略値と観測値の誤差(距離差の誤差Δhi,j)を算出し、この誤差を用いて算出した目標の状態ベクトルの修正量を出力する。修正状態ベクトル算出部175では、修正量算出部1741〜174Nから修正量を入力し、最小二乗法による収束計算を施して目標の状態ベクトルの修正量と該修正量を状態ベクトルに反映させた修正状態ベクトルを出力する。
【0169】
収束判定部176は、修正状態ベクトル算出部175から修正状態ベクトルとその修正量を入力し、修正量が閾値以上であれば、修正状態ベクトルを目標の状態ベクトルの初期値の代わりに距離差概略値算出部1731〜173Nの入力へフィードバックし、上記処理を繰り返す。修正量が閾値未満であると、収束判定部176は、該修正量を反映させた目標の状態ベクトル(目標の位置、速度等)を修正状態ベクトル算出部175から入力して目標の測位結果として出力する。
【0170】
以上のように、この実施の形態11によれば、非同期測位手段17aが、センサ組の検知結果から得られた目標との距離差を追尾処理し、別の時刻において、異なるセンサ組の検知結果から目標との距離差が得られる場合、上記追尾結果に基づいてそのセンサ組に対する時刻整合を行ってから、目標の運動諸元を推定するので、異なる時刻の観測値をあたかも同時刻で観測された結果とみなすことができ、観測値が非同期であっても信頼性の高い目標の運動諸元の推定が可能である。また、観測情報として任意の2センサ間の目標との距離差のみでよいことから、上記実施の形態7と同様にドップラ周波数差が得られないセンサであっても目標の運動諸元を推定することができる。
【0171】
実施の形態12.
図17は、この発明の実施の形態12による運動諸元推定装置の構成を示す図である。図17に示すように、実施の形態12による運動諸元推定装置は、受信手段1、距離差観測値検出手段2a及び非同期測位手段18aを備える。なお、図17において、図1、図9及び図10と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0172】
非同期測位手段18aは、初期状態量設定部181、時刻差算出部1821〜182N、距離差概略値算出部1831〜183N、修正量算出部1841〜184N、修正状態ベクトル算出部185、収束判定部186、及び収束演算カウント部187を備える。収束判定部186及び収束演算カウント部187以外の構成は、上記実施の形態7の図10で示した初期状態量設定部121、時刻差算出部1221〜122N、距離差概略値算出部1231〜123N、修正量算出部1241〜124N、及び修正状態ベクトル算出部125と同様に動作する。
【0173】
収束判定部186は、収束演算カウント部187が計算回数限界値をカウントするまでの間、修正状態ベクトル算出部185による修正量と所定の閾値との比較結果に応じて、修正状態ベクトルを距離差概略値算出部1831〜183Nにフィードバックしたり、収束計算を終了して修正状態ベクトルを測位結果として出力する。
【0174】
収束演算カウント部187は、収束判定部186により修正状態ベクトルが距離差概略値算出部1831〜183Nにフィードバックされる度に収束演算回数を、所定の計算回数限界値になるまで計数する。ここで、計算回数限界値とは、実施の形態12による運動諸元推定装置を実現する計算機の演算性能や検知データ等のサンプリングレートに応じて決定した、最適な演算負荷と推定精度を与える収束演算回数である。
【0175】
次に動作について説明する。
以降では、本実施の形態12による運動諸元推定装置に特有な動作を主に説明する。
先ず、収束判定部186が収束演算を行うにあたり、収束演算カウント部187は、カウント値を0に初期化し、カウントの限界値として計算回数限界値を設定する。上記実施の形態1と同様にして、修正状態ベクトル算出部185から修正量が入力されると、収束判定部186は、所定の閾値と該修正量を比較する。このとき、修正量が閾値より大きく収束しなかった場合、収束演算カウント部187は、カウント値を1増やす。
【0176】
計算回数限界値にカウント値が達しても修正量が収束しなかった場合、収束演算カウント部187は、計算終了の信号を収束判定部186に送信する。これにより、収束判定部186は、該計算終了時の修正量を反映させた修正状態ベクトル(修正量を加えた修正状態ベクトル)を目標の測位結果として出力する。なお、カウント値が計算回数限界値に達する前に修正量が収束した場合は、該収束した修正量を加えた修正状態ベクトルを目標の測位結果として出力し、収束演算カウント部187はカウントを停止する。
【0177】
以上のように、この実施の形態12によれば、収束判定部186が、収束演算カウント部187が収束演算の回数をカウントし、予め定めた計算回数限界値に達しても修正量が収束しない場合、その時点の修正量を反映させた修正状態ベクトルを目標の測位結果とするので、修正状態ベクトル算出部185による収束計算の回数が限定されることから、本実施の形態12による運動諸元推定装置の性能を超える演算の実行が抑制され、かつ所定の時間で演算が終了することから収束計算の時間を短縮することができる。また、観測情報として任意の2センサ間の目標との距離差のみでよいことから、上記実施の形態7と同様にドップラ周波数差が得られないセンサであっても目標の運動諸元を推定できる。
【0178】
なお、上記実施の形態12では、収束演算カウント部187を上記実施の形態7による構成に適用した場合を示したが、上記実施の形態8〜11の構成に適用してもよく、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】この発明の実施の形態1による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図2】航空機等の目標について基準時刻t〜t3までに4回の観測値が得られた場合を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態2による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態3による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図5】時刻t3にセンサ11,12、時刻t4にセンサ12,13により距離差及びドップラ周波数差が得られた場合を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態4による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図7】時刻t1,t2にセンサ11,12、時刻t3にセンサ12,13により距離差及びドップラ周波数差が得られた場合を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態5による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態6による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態7による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態8による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態9による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図13】時刻t1にセンサ11,12、時刻t2にセンサ12,13、時刻t3にセンサ11,12、時刻t4にセンサ12,13により距離差が得られた場合を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態10による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図15】時刻t1,t2にセンサ11,12、時刻t3,t4にセンサ12,13により距離差が得られた場合を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態11による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態12による運動諸元推定装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0180】
1 受信手段、2 距離差/速度差観測値検出手段、2a 距離差観測値検出手段(検出手段)、4,5,7,9,10,12a,13a,15a,17a,18a 非同期測位手段、8,14a,16a 仮測位/初期値算出手段、11〜1M センサ、21〜2N 距離差/速度差観測値検出部、41,61,81,91,141,161,181 初期状態量設定部、421〜42N,521〜52N,711〜71N,1021〜102N,1221〜122N,1321〜132N,1511〜151N,1821〜182N 時刻差算出部、431〜43N,531〜53N,721〜72N,831,832,931〜93N,1031〜103N,1231〜123N 距離差/速度差概算値算出部、1331〜133N,1421,1422,1521〜152N,1631,1632,1731〜173N,1831〜183N 距離差概算値算出部、441〜44N,541〜54N,731〜73N,841,842,941〜94N,1041〜104N,1241〜124N,1341〜134N,1431,1432,1531〜153N,1641,1642,1741〜174N,1841〜184N 修正量算出部、45,55,64,74,85,95,106,125,135,144,154,165,175,185 修正状態ベクトル算出部、46,56,65,75,86,96,126,136,145,155,166,176,186 収束判定部、821,822,921〜92N,1621,1622,1721〜172N 追尾フィルタ部、107,187 収束演算カウント部、111〜11N 距離差観測値検出部、146,167 メモリ、147,168,171 初期値算出部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標の運動を観測する複数のセンサを有する受信手段と、
前記受信手段の複数のセンサのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から、該センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値を検出する検出手段と、
複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した前記各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略推定値と、の差分より目標の運動諸元の修正量を算出し、収束演算によって差分が収束するまで運動諸元を修正することで前記基準時刻における目標の運動諸元を推定する非同期測位手段とを備えた運動諸元推定装置。
【請求項2】
非同期測位手段は、観測値と概略推定値との差分より目標の運動諸元の修正量を最小二乗法によって算出し、収束演算によって差分が収束するまで目標の運動諸元を修正することで基準時刻における目標の運動諸元を推定することを特徴とする請求項1記載の運動諸元推定装置。
【請求項3】
非同期測位手段は、観測値と概略推定値との差分に対してセンサの観測精度を重み付けして目標の運動諸元の修正量を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の運動諸元推定装置。
【請求項4】
複数のセンサのうち第1のセンサ対による観測結果から検出される該第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差を追尾処理すると共に、前記第1のセンサ対とは異なる第2のセンサ対による同一時刻での観測結果から該第2のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差が検出された場合、前記追尾処理結果から前記第2のセンサ対による観測時刻での前記第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差を予測処理する追尾フィルタ部を備え、
非同期測位手段は、前記追尾フィルタ部の予測処理により同一時刻の観測に模擬された前記第1及び前記第2のセンサ対におけるセンサ間の目標との距離差及び速度差を観測値として収束演算を行い、基準時刻における目標の運動諸元を推定することを特徴とする請求項1記載の運動諸元推定装置。
【請求項5】
複数のセンサ対の異なる各時刻での観測結果から得られた各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値を同一時刻で観測したものと仮定して測位を行い、前記時刻における目標の運動諸元の値を、非同期測位手段の収束演算で使用する基準時刻における目標の運動諸元の初期値として設定する仮測位/初期値算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の運動諸元推定装置。
【請求項6】
複数のセンサのうち第1のセンサ対による観測結果から検出される該第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差を追尾処理すると共に、前記第1のセンサ対とは異なる第2のセンサ対による同一時刻での観測結果から該第2のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差が検出された場合、前記追尾処理結果から前記第2のセンサ対による観測時刻での前記第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差を予測処理する追尾フィルタ部を備え、
仮測位/初期値算出手段は、前記追尾フィルタ部の予測処理により同一時刻の観測に模擬された前記第1及び前記第2のセンサ対におけるセンサ間の目標との距離差及び速度差を観測値として収束演算を行い、推定した基準時刻における目標の運動諸元を、非同期測位手段の収束演算で使用する基準時刻における目標の運動諸元の初期値として設定することを特徴とする請求項5記載の運動諸元推定装置。
【請求項7】
検出手段は、受信手段の複数のセンサのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から該センサ対のセンサ間の目標との距離差の観測値を検出し、
非同期測位手段は、複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した前記各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差の概略推定値と、の差分について収束演算を行い、前記基準時刻における目標の運動諸元を推定することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の運動諸元推定装置。
【請求項8】
検出手段は、受信手段の複数のセンサのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から該センサ対のセンサ間の目標との距離差の観測値を検出し、
追尾フィルタ部は、前記複数のセンサのうち第1のセンサ対による観測結果から検出される該第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差を追尾処理すると共に、前記第1のセンサ対とは異なる第2のセンサ対による同一時刻での観測結果から該第2のセンサ対のセンサ間の目標との距離差が検出された場合、前記追尾処理結果から前記第2のセンサ対による観測時刻での前記第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差を予測処理し、
非同期測位手段は、前記追尾フィルタ部の予測処理により同一時刻の観測に模擬された前記第1及び前記第2のセンサ対におけるセンサ間の目標との距離差を観測値として収束演算を行い、基準時刻における目標の運動諸元を推定することを特徴とする請求項4記載の運動諸元推定装置。
【請求項9】
仮測位/初期値算出手段は、複数のセンサ対の異なる各時刻での観測結果から得られた各センサ対のセンサ間の目標との距離差の観測値を同一時刻で観測したものと仮定して測位を行い、前記時刻における目標の運動諸元の値を、非同期測位手段の収束演算に使用する基準時刻における目標の運動諸元の初期値として設定することを特徴とする請求項5記載の運動諸元推定装置。
【請求項10】
検出手段は、受信手段の複数のセンサのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から該センサ対のセンサ間の目標との距離差の観測値を検出し、
追尾フィルタ部は、前記複数のセンサのうち第1のセンサ対による観測結果から検出される該第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差を追尾処理すると共に、前記第1のセンサ対とは異なる第2のセンサ対による同一時刻での観測結果から該第2のセンサ対のセンサ間の目標との距離差が検出された場合、前記追尾処理結果から前記第2のセンサ対による観測時刻での前記第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差を予測処理し、
仮測位/初期値算出手段は、前記追尾フィルタ部の予測処理により同一時刻の観測に模擬された前記第1及び前記第2のセンサ対におけるセンサ間の目標との距離差を観測値として収束演算を行い、推定した基準時刻における目標の運動諸元を、非同期測位手段の収束演算に使用する基準時刻における目標の運動諸元の初期値として設定することを特徴とする請求項9記載の運動諸元推定装置。
【請求項11】
収束演算の回数を所定の限度回数までカウントする収束演算カウント部を備え、
非同期測位手段は、前記収束演算カウント部によるカウントが限度回数まで達すると、収束演算を終了してその時点での運動諸元推定値を出力することを特徴とする請求項1から請求項10のうちのいずれか1項記載の運動諸元推定装置。
【請求項1】
目標の運動を観測する複数のセンサを有する受信手段と、
前記受信手段の複数のセンサのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から、該センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値を検出する検出手段と、
複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した前記各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の概略推定値と、の差分より目標の運動諸元の修正量を算出し、収束演算によって差分が収束するまで運動諸元を修正することで前記基準時刻における目標の運動諸元を推定する非同期測位手段とを備えた運動諸元推定装置。
【請求項2】
非同期測位手段は、観測値と概略推定値との差分より目標の運動諸元の修正量を最小二乗法によって算出し、収束演算によって差分が収束するまで目標の運動諸元を修正することで基準時刻における目標の運動諸元を推定することを特徴とする請求項1記載の運動諸元推定装置。
【請求項3】
非同期測位手段は、観測値と概略推定値との差分に対してセンサの観測精度を重み付けして目標の運動諸元の修正量を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の運動諸元推定装置。
【請求項4】
複数のセンサのうち第1のセンサ対による観測結果から検出される該第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差を追尾処理すると共に、前記第1のセンサ対とは異なる第2のセンサ対による同一時刻での観測結果から該第2のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差が検出された場合、前記追尾処理結果から前記第2のセンサ対による観測時刻での前記第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差を予測処理する追尾フィルタ部を備え、
非同期測位手段は、前記追尾フィルタ部の予測処理により同一時刻の観測に模擬された前記第1及び前記第2のセンサ対におけるセンサ間の目標との距離差及び速度差を観測値として収束演算を行い、基準時刻における目標の運動諸元を推定することを特徴とする請求項1記載の運動諸元推定装置。
【請求項5】
複数のセンサ対の異なる各時刻での観測結果から得られた各センサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差の観測値を同一時刻で観測したものと仮定して測位を行い、前記時刻における目標の運動諸元の値を、非同期測位手段の収束演算で使用する基準時刻における目標の運動諸元の初期値として設定する仮測位/初期値算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の運動諸元推定装置。
【請求項6】
複数のセンサのうち第1のセンサ対による観測結果から検出される該第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差を追尾処理すると共に、前記第1のセンサ対とは異なる第2のセンサ対による同一時刻での観測結果から該第2のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差が検出された場合、前記追尾処理結果から前記第2のセンサ対による観測時刻での前記第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差及び速度差を予測処理する追尾フィルタ部を備え、
仮測位/初期値算出手段は、前記追尾フィルタ部の予測処理により同一時刻の観測に模擬された前記第1及び前記第2のセンサ対におけるセンサ間の目標との距離差及び速度差を観測値として収束演算を行い、推定した基準時刻における目標の運動諸元を、非同期測位手段の収束演算で使用する基準時刻における目標の運動諸元の初期値として設定することを特徴とする請求項5記載の運動諸元推定装置。
【請求項7】
検出手段は、受信手段の複数のセンサのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から該センサ対のセンサ間の目標との距離差の観測値を検出し、
非同期測位手段は、複数のセンサ対による異なる各時刻での観測結果から検出された各センサ対のセンサ間の目標との距離差の観測値と、予め仮定した目標の運動方程式に従い基準時刻における目標の運動諸元の初期値に対し該基準時刻との時刻差を反映させて算出した前記各時刻での各センサ対のセンサ間の目標との距離差の概略推定値と、の差分について収束演算を行い、前記基準時刻における目標の運動諸元を推定することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の運動諸元推定装置。
【請求項8】
検出手段は、受信手段の複数のセンサのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から該センサ対のセンサ間の目標との距離差の観測値を検出し、
追尾フィルタ部は、前記複数のセンサのうち第1のセンサ対による観測結果から検出される該第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差を追尾処理すると共に、前記第1のセンサ対とは異なる第2のセンサ対による同一時刻での観測結果から該第2のセンサ対のセンサ間の目標との距離差が検出された場合、前記追尾処理結果から前記第2のセンサ対による観測時刻での前記第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差を予測処理し、
非同期測位手段は、前記追尾フィルタ部の予測処理により同一時刻の観測に模擬された前記第1及び前記第2のセンサ対におけるセンサ間の目標との距離差を観測値として収束演算を行い、基準時刻における目標の運動諸元を推定することを特徴とする請求項4記載の運動諸元推定装置。
【請求項9】
仮測位/初期値算出手段は、複数のセンサ対の異なる各時刻での観測結果から得られた各センサ対のセンサ間の目標との距離差の観測値を同一時刻で観測したものと仮定して測位を行い、前記時刻における目標の運動諸元の値を、非同期測位手段の収束演算に使用する基準時刻における目標の運動諸元の初期値として設定することを特徴とする請求項5記載の運動諸元推定装置。
【請求項10】
検出手段は、受信手段の複数のセンサのうち任意のセンサ対による同一時刻での観測結果から該センサ対のセンサ間の目標との距離差の観測値を検出し、
追尾フィルタ部は、前記複数のセンサのうち第1のセンサ対による観測結果から検出される該第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差を追尾処理すると共に、前記第1のセンサ対とは異なる第2のセンサ対による同一時刻での観測結果から該第2のセンサ対のセンサ間の目標との距離差が検出された場合、前記追尾処理結果から前記第2のセンサ対による観測時刻での前記第1のセンサ対のセンサ間の目標との距離差を予測処理し、
仮測位/初期値算出手段は、前記追尾フィルタ部の予測処理により同一時刻の観測に模擬された前記第1及び前記第2のセンサ対におけるセンサ間の目標との距離差を観測値として収束演算を行い、推定した基準時刻における目標の運動諸元を、非同期測位手段の収束演算に使用する基準時刻における目標の運動諸元の初期値として設定することを特徴とする請求項9記載の運動諸元推定装置。
【請求項11】
収束演算の回数を所定の限度回数までカウントする収束演算カウント部を備え、
非同期測位手段は、前記収束演算カウント部によるカウントが限度回数まで達すると、収束演算を終了してその時点での運動諸元推定値を出力することを特徴とする請求項1から請求項10のうちのいずれか1項記載の運動諸元推定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−203095(P2008−203095A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39713(P2007−39713)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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