説明

運転停止時のプロセスガス圧力減衰制御

背圧調整装置は、燃料電池試験ステーション又は燃料電池パワー・モジュールに組み込むことができる。燃料及びオキシダントの各ラインでは、ガス圧力調整器が設けられている。圧力調整器はパイロットガスによって制御され、圧力調整弁及び三方弁によって供給される。三方弁の別のポートは、逆止弁及びニードル弁を通る通気孔を設けている。ニードル弁は、燃料及びオキシダントのパイロットガス・ライン用の両逆止弁に接続されている。通常動作において、パイロットガス圧力は圧力調整弁によって調整され、適切な圧力調整器に供給され、燃料及びオキシダントのそれぞれのガス圧力を制御する。運転停止時に、三方弁は個々の逆止弁を介して圧力調整器をニードル弁に接続する。これにより、燃料ガス及びオキシダントガスの圧力の衰退制御が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転停止時に燃料電池スタックのガス圧力の減衰を制御するためのシステムに関する。詳細には、本発明は、システム停止時にプロセスガス圧力減衰の制御が改善された燃料電池試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料(一般には水素)とオキシダント(一般には空気)を2つの適切な電極及び電解質と接触させることによって起電力を生成する電気化学的装置である。燃料、例えば水素ガスは、第1の電極に導入され、そこで、電解質の存在下で電気化学的に反応し、第1の電極に電子と陽イオンを生成する。電子は、これら電極間に接続された電気回路を通って第1の電極から第2の電極へと循環される。陽イオンは電解質を通って第2の電極に流れる。
【0003】
同時に、オキシダント、即ち酸素や空気は第2の電極に導入され、そこで、オキシダントが電解質及び触媒の存在下で電気化学的に反応し、陰イオンを生成し、電荷回路を通って循環されてきた電子を消費する。陽イオンは、第2の電極で消費される。第2の電極又はカソードで形成される陰イオンは陽イオンと反応して、反応生成物を形成する。第1の電極又はアノードは、燃料電極若しくは酸化電極とも称することができ、第2の電極は、オキシダント電極若しくは還元電極とも称することができる。
【0004】
第1及び第2の各電極における半電池反応は、それぞれ以下の通りである。
【0005】
2_2H++2e- (1)
1/2O2+2H++2e-_2O (2)
【0006】
外部電気回路は、電流を引き出し、燃料電池から電力を取り出す。燃料電池の全反応は、方程式1及び2に示される別々の半電池反応の和によって示されるような電気エネルギーを生成する。水及び熱は反応の代表的な副生成物である。
【0007】
実際には、燃料電池は、単一ユニットとして作動されるのではなく、むしろ直列接続され、上方向に積み重ねられたり、並行して設置されたりする。一組の燃料電池は、燃料電池スタックと称され、通常はハウジングに封入されている。燃料及びオキシダントは、ハウジング内のマニホールドを通って電極に導かれる。燃料電池は、反応物質あるいは冷却媒体のいずれかによって冷却される。燃料電池スタックはまた、カレント・コレクタ、セル間シール及び絶縁体を含み、必要な配管及び計測器は燃料電池スタックの外部に設けられている。燃料電池スタック、ハウジング及び関連したハードウェアは、燃料電池モジュールを構成する。本発明において、「燃料電池」という用語は一般に、単一の燃料電池あるいは少なくとも1つの燃料電池を構成する燃料電池スタックを意味する。
【0008】
燃料電池の性能を試験するために、独立した(スタンドアロン型)燃料電池試験ステーションが通常使用される。燃料電池試験ステーションは、試験中の燃料電池スタックに対する動作条件をシミュレートし、燃料電池の性能を示す種々のパラメータを監視する。たとえば、燃料電池試験ステーションは通常、水素及び空気などの反応物質、ならびに/あるいは冷却媒体を、種々の温度、圧力、流量及び/又は湿度によって燃料電池に供給することができる。燃料電池試験ステーションは、燃料電池の負荷を変化させることもでき、したがって、燃料電池の電圧出力及び/又は電流を変化させることができる。燃料電池試験ステーションは、燃料電池スタック内の個々の電池の電圧、燃料電池内を流れる電流、燃料電池内の種々の地点における電流密度、温度、圧力若しくは湿度を監視する。このような燃料電池試験ステーションは、カナダのオンタリオ州ミシサーガにあるハイドロジェニクス・コーポレーション(Hydrogenics Corporation)、あるいは、その関連子会社である、カナダのブリティッシュ・コロンビア州、バーナビーにあるグリーン・パワー・テクノロジーズ社(Greenlight Power Technologies)から市販されている。その他多くの種類の燃料電池試験ステーションもまた、他の試験ステーション製造業者から入手できる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって提供される背圧調整装置は、
燃料ガスの吸気口と排気口、及びパイロットガス注入口を有する燃料ガス背圧調整器と、
燃料ガス調整パイロットガス供給部と、
燃料ガス逆止弁と、
第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有する燃料ガス三方弁であって、該燃料ガス三方弁が、その第1のポートによって前記調整パイロットガス供給に接続され、第3のポートによって前記燃料ガス背圧調整器に接続され、さらに第2のポートによって燃料ガス逆止弁に接続され、通常状態では、第1及び第3のそれぞれのポート間に流体を連通させ、流体が調整パイロットガス供給から燃料ガス背圧調整器に流動することを可能にし、運転停止状態では、第2及び第3のそれぞれのポート間に流体を連通させ、流体が燃料ガス背圧調整器から燃料ガス逆止弁に流動することを可能にするように動作可能な前記燃料ガス三方弁と、
オキシダントガス用の吸気口と排気口、及びパイロットガス注入を有するオキシダントガス背圧調整器と、
オキシダント調整パイロットガス供給部と、
オキシダントガス逆止弁と、
第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有するオキシダントガス三方弁であって、該オキシダントガス三方弁が、その第1のポートによって前記オキシダント調整パイロットガス供給に接続され、第3のポートによって前記オキシダントガス背圧調整器に接続され、さらに第2のポートによってオキシダントガス逆止弁に接続され、通常状態では、第1及び第3のそれぞれのポート間に流体を連通させ、流体がオキシダント調整パイロットガス供給からオキシダントガス背圧調整器に流動することを可能にし、運転停止状態では、第2及び第3のそれぞれのポート間に流体を連通させ、流体がオキシダントガス背圧調整器からオキシダントガス逆止弁に流動することを可能にするように動作可能な前記オキシダントガス三方弁と、
燃料ガス逆止弁の排気口とオキシダントガス逆止弁の排気口との双方に接続される流量調節弁であって、該流量調節弁が通気孔へガス抜きをして、流量調節弁が、燃料ガス及びオキシダントの各背圧調整器に対するパイロットガスの圧力信号を前記流量調節弁を介して制御された方法で減衰させることによって、各プロセスガスに対し所望の圧力減衰率を規定する、前記流量調節弁と、を含む。
【0010】
各燃料ガス/オキシダント三方弁は、ソレノイドなどの電気作動装置を含むこともでき、あるいは、各々の弁が、その代わりに若しくは同時に手動で操作できるものでもよい。
【0011】
背圧調整装置は好ましくは、燃料ガス/オキシダント三方弁及び燃料ガス/オキシダント圧力調整弁に接続される制御ユニットを含んでいる。
【0012】
流量調節弁は、ニードル弁から構成することができる。
【0013】
背圧調整装置は、燃料電池試験ステーションと結合して使用することができる。
【0014】
あるいはまた、背圧調整装置は、燃料ガスとオキシダントガス用の吸気口、及び燃料ガス背圧調整器の入口とオキシダント背圧調整器の入口に接続される排気口を有する燃料電池スタックを含む燃料電池パワー・モジュールと組み合わせて設けることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のより良い理解のために、さらに発明を実行する方法をより明確に示すために、一例として、本発明の好ましい実施の形態を示す添付図面を参照されたい。
【0016】
まず図1を参照すると、プラント機器が対応して平衡状態にある燃料電池スタックの概略図が示され、総じて参照番号10で示されている。以下で詳述されるように、燃料電池スタックはパワー・モジュールの一部を形成することもあり、あるいはまた、燃料電池試験ステーション内で試験中の燃料電池スタックであってもよい。実際の燃料電池スタックは、番号12で示されている。
【0017】
当該技術で知られているように、燃料電池スタック12には、プラント構成部品が必然的な平衡状態で設けられ、このスタックの完全動作を保証する。これらは、スタックを作動するために必要な周知の構成部品のすべての細部を示すことを図ることなく、図1に概略的に示されている。周知のように、例えば、吸気口及び排気口の各圧力、スタックに対するガスの温度と湿度、冷却媒体の流量などを制御することが必要である。たとえば、燃料電池スタックは、決して100パーセント効率的ではないので、ある種の冷却、一般には自然の対流冷却、若しくは燃料電池スタック内にポンプで注入される一部の冷却媒体による強制冷却などを行なうことが通常必要である。説明を簡単にするために、いずれの冷却方法の詳細は図1では省略される。
【0018】
図1の細部を参照すると、燃料電池スタック12は、燃料及びオキシダントの各ガスのための吸気口14と、排出された燃料及びオキシダントの各ガスに対応する排気口16が設けられている。吸気口14は、燃料調整ユニット21を介して燃料注入口20に、また、オキシダント調整ユニット23を介してオキシダント注入口22に、それぞれ接続されている。
【0019】
さらに、当該技術では周知のように、燃料及びオキシダント調整ユニット21、23は、これらのガスが圧力、湿度、温度及び流量の適切な条件でスタック12に供給されることを実現するために設けられている。このために、ヒータ及び/又は冷却器、給湿器、ポンプなどは、それぞれの調整ユニット21、23内に設けられることができる。
【0020】
スタック12の排出側において、排気口12は、燃料ガス用の吸気口25とオキシダントガス用の吸気口26を有する、本発明による背圧調整装置24に接続されている。以下で詳述されるように、背圧調整装置24はまた、燃料ガス及びオキシダントガス用のそれぞれの通気孔27、28を有する。パイロットガス供給部30が調整装置24にさらに接続されている。
【0021】
周知のように、プロセスガスの少なくとも一方、又は燃料電池スタックの再循環を行なうことが有利であることが多い。ここで、再循環ライン32はポンプ33を含むように示され、燃料排気口16を、スタック12の燃料吸気口14に接続する。水素などの純燃料が使用される場合、再循環はスタック12内のガスの所望の流量を維持することができるが、一方で、補給用ガスが燃料注入口20から供給されることを要求するだけである(以下で詳述されるように、スタック12を通って燃料経路内に異物及び吸気ガスの蓄積を防止するためにスタックを時々通気させることもまた通常は必要である)。
【0022】
完全性のために、対応する再循環ライン34及びポンプ35は、スタック12のオキシダント側に対して点線で示される。一般に、空気はオキシダントとして使用され、空気がほぼ80パーセントの窒素と、燃料電池スタック12内の反応において何の役割もない不活性ガスから成るので、使用済みオキシダントの再循環に何の利点もない。こうしたわけで、かかる可能性は単に点線で図示される。
【0023】
さらに、制御ユニット36が実際に概略図示されている。こうした制御ユニット36は、一般に各種センサなどに接続され、入力信号を受信し、それに応じて調整ポンプ、弁(バルブ)、その他のスタック23の構成部品、及びプラント機器の対応した平衡状態に対して種々の出力を有する。ここで、制御ユニット36は、燃料及びオキシダント調整ユニット21、23、ポンプ33(存在するならば、同様にポンプ35に接続される)、背圧調整装置24、及びパイロット空気供給部30にそれぞれ接続されている。
【0024】
ところで、一般的な試験状態において、燃料電池スタック12は、単独で、即ち、吸気口14及び排気口16だけで設けられることになる。残りの構成部品のすべてがスタック12を作動するためにプラント機器の必要な平衡性をもたらし、燃料電池試験ステーションの一部になる。上述したように、このことは、通常、冷却剤をスタック12に供給するための設備を含み、さらに図示されないが、スタック12から電力を取り出し、負荷に流し、生成された電力を監視するための手段を含むことになる。一方、完全な燃料電池パワー・モジュールの場合、図1に示される構成要素のすべては、パワー・モジュール内で一体化されることになる。その意図は、パワー・モジュールがスタックの動作のためのプラント機器の必要な平衡性を含むことにより、パワー・モジュールに必要な入力がより簡素化されることである。パワー・モジュールは、適切な圧力及び流量での2つのプロセスガスの供給と、あるいはまた、冷却剤の供給を要求することがある。このパワー・モジュールによって生成される電力に対して接続が行なわれることもある。
【0025】
使用中、燃料ガスは、燃料及びオキシダント注入口20、22に供給され、吸気口14における燃料ガスの圧力及び他の条件が調整ユニット21、23によって制御される。しかしながら、かなりの程度まで入力圧力が出力時の圧力、流量などに左右されることもまた、理解されるものである。
【0026】
出力側又は排気側において、背圧調整装置24は、2つのガスの各圧力、さらにこれらガスのガス抜きを調整する。
【0027】
純ガスである燃料ガスにとって、再循環モードで流動され、ライン22を介して再循環されているのが一般的である。次に、調整装置24は一般に、通気孔27をほとんど閉じた状態に維持し、必要に応じて開口させることもできる。これによって、過剰な圧力が生じられないようにする。同時に、不活性ガス及び不純物ガスの蓄積を防止するために、通気孔27は普通、周期的に開放され、こうした蓄積を防止する。
【0028】
空気がオキシダントとして使用されるオキシダント側では、通常は再循環ラインが存在しない。その代わりに、通気孔28はおおよそ連続的に開放し、残留酸素を含む空気からの窒素を一般に含んでいる排気オキシダントガスを大気中に排出する。同時に、調整装置24は、スタック12のオキシダント排気口において所望の背圧を維持する。
【0029】
純オキシダントが使用される場合、スタック12の燃料ガス側と同様に、再循環などを行なうことができる。
【0030】
ところで、燃料電池スタック12を瞬時に停止することが要求される場合、特に、電力故障により燃料電池スタック12を停止することが要求される場合の使用中に問題が生じる。運転停止が時間の制約なしに制御された方法で実行され得る場合、ガス抜きされ、圧力が制御された方法で減少されることを確実にすることは簡単なことである。
【0031】
PEM(プロトン交換膜)型燃料電池スタックから成る燃料電池スタック12では、実際の膜(メンブレン)は非常に薄く、繊細である。したがって、これらの膜を通して実質的に圧力差がないことを確実にすることが必要であり、そうでなければ、こうした膜が破損若しくは破断されることになる。電力が提示され、運転停止が制御された方法で実施された状態では、これは問題ではない。
【0032】
しかしながら、燃料電池試験ステーションや燃料電池パワー・モジュール、又は燃料電池を使用するその他の状況において、突然及び予想もしない電源装置の中断が生じた場合にガス抜きを制御することが望ましい。必然的に、このような構成に関する必要条件は、電力が燃料電池スタック12のガス抜きを制御することが要求されないことである。
【0033】
図2を参照すると、背圧調整装置24が詳細に示されている。プロセスガスの圧力減衰制御システムの2つの個別のプロセスガス経路の1つは、燃料ガス経路であり、もう1つは、オキシダントガス経路である。
【0034】
燃料ガス経路は、燃料ガス吸気口25に接続される燃料ガス背圧調整器40から成る。燃料ガス導管は、燃料ガス(一般には水素ガス)を燃料電池スタック12(図1)から背圧調整装置24に流入させる。燃料ガスは、燃料ガス通気孔又は排気孔27を通ってシステムから排出される。燃料ガス背圧調整器40は、燃料ガス圧力調整弁50から設定点圧力値を受け取る。燃料ガス圧力調整弁は、空気パイロット供給ライン70から給気され、空気パイロット供給ライン内の圧力と同等の若しくはそれより低い設定点圧力を出力する。設定点圧力値は、自動制御装置(例えば、制御ユニット36への接続)を使用して、あるいはまた、手動式燃料ガス圧力調整弁50の手動操作によって設定される。燃料ガス三方弁60、即ち第1のポートA、第2のポートB、及び第3のポートCを有する電磁弁(ソレノイド・バルブ)は、燃料ガス圧力調整弁50及び燃料ガス背圧調整器40間に接続される。三方弁60は通常、ポートB及びCを接続するが、そのソレノイドの動作に応じて、ポートBを閉じ、ポートA及びCを接続させる。背圧調整装置24の通常動作中に、燃料ガス側三方弁60のソレノイドは、第1のポートAを第3のポートCに接続するように作動され、ガスが燃料ガス圧力調整弁50から燃料ガス背圧調整器40に流れるのを可能にする。背圧調整装置24の運転停止又は電力損失の間に、燃料ガス三方弁60はその標準状態(パワー・オフ状態)を取り、第3のポートCは第2のポートBに接続され、ガスが燃料ガス背圧調整器40から燃料ガス逆止弁80に流れるのを可能にする。燃料ガス逆止弁80は比較的低圧で開放し、普通のニードル弁90への流体の流動を可能にし、該ニードル弁は、プロセスガスの圧力減衰制御システム10に対して所望の圧力減衰率を許容するように設定される。
【0035】
オキシダントガス経路は燃料電池経路に対応し、オキシダントガス吸気口26に接続されるオキシダントガス背圧調整器42から成る。オキシダントガス吸気口26は、オキシダントガスが燃料電池スタック12(図1)から背圧調整装置24に流れるのを可能にする。オキシダントガスは、オキシダントガス通気孔28を介してシステムから排出される。オキシダントガス背圧調整器42は、オキシダントガス圧力調整弁55から設定点圧力値を受け取る。このオキシダントガス圧力調整弁は空気パイロット供給ライン75から給気され(該ラインは、空気パイロット供給ライン70と共通であってもよく、両者はパイロット空気供給部30に接続される)、パイロット空気供給ラインの圧力と同等若しくはそれより低い設定点圧力を出力する。設定点圧力値は、自動制御装置(例えば、制御ユニット36への接続)を使用して、あるいはまた、手動式オキシダントガス圧力調整弁55の手動操作によって設定される。オキシダントガス三方弁65、即ち、第1のポートA、第2のポートB及び第3のポートCを有する電磁弁は、オキシダントガス圧力調整弁55及びオキシダントガス背圧調整器42間に接続される。燃料側にある三方電磁弁60のように、電磁弁65は、ポートB及びCが接続され、ポートAが閉鎖されている通常位置を有し、電磁弁が作動されている間は、ポートA及びCが接続され、ポートBが閉鎖されている。背圧調整装置24の通常動作中は、オキシダントガス三方弁65は、第1のポートAを第3のポートCに接続するように設定され、ガスがオキシダントガス圧力調整弁55からオキシダントガス背圧調整器42に流れるのを可能にする。背圧調整装置24の運転停止又は電力損失の間に、オキシダントガス三方弁65は、第3のポートCが第2のポートBに接続され、ガスがオキシダントガス背圧調整器42からオキシダントガス逆止弁85に流れるのを可能にする、通常状態(パワー・オフ状態)を取る。オキシダントガス逆止弁85は、比較的低圧で開放し、ガスが共通のニードル弁90に、その後、通気孔若しくは排気孔100に流れるのを可能にする。
【0036】
これらの弁50、55、60、65、80、85及び90は、プロセスガス圧力衰退制御システムを構成する。弁90がニードル弁として示され説明されているが、絞り効果をもたらし、例えば圧力の変化率や流量のいずれかに対する制御、ガス抜きの制御を行なうのに適切な流量調節弁であれば任意のものを使用できることは理解されるだろう。
【0037】
装置24及び特に弁80、85、90の動作は、図3を参照して説明する。図3を参照すると、時間(t)経過にわたっての圧力減衰(p)が2本の曲線、即ち、実線と破線で図示される図が示されている。実線は概して燃料電池スタック12のアノード(燃料)側の圧力を表わし、破線は概して燃料電池スタックのカソード(オキシダント)側の圧力を表わす。通常動作において、陽極圧力は概して、陰極圧力よりいくらか高く維持され、オキシダントガスが陽極側に漏出し、結果として爆発危険性を回避する。同時に、圧力差は電池のメンブレン上の許容圧力負荷の範囲内になるように十分小さい。これらの曲線は一例としてのみ示されるべきであり、実際の圧力衰退は、運転停止時のプロセス・パラメータの実際の状態によって異なることになる。陽極側及び陰極側の相対圧力は、当然ながら、図3に一例として示されたものと異なることがある。
【0038】
プロセスガス圧力衰退制御システムの1つの望ましい特徴は、運転停止時に燃料電池12スタックの陽極側及び陰極側間の大きな圧力差を回避することである。このことが有利である理由は、大きな圧力差により、燃料電池スタック12の個々の燃料電池(図示せず)のメンブレン(図示せず)が変形する可能性があり、これがメンブレンに対し永久的な損傷をもたらすこともあり、例えば、ピンホールがメンブレンの一方の面から他方の面にプロセスガスを漏出させることになるからである。
【0039】
通常動作において、燃料ガス逆止弁80及びオキシダントガス逆止弁85がともに閉鎖されているが、これは、三方弁60及び65のそれぞれの第2のポートBに過剰圧力が存在しないからである。さらに、第2のポートと、第1若しくは第3のポート(A及びC)との間に流体は連通しない。本発明によるプロセスガス圧力衰退制御システムは、気付かれておらず、スタックの動作に影響を及ぼさないという意味で、燃料電池スタックに対して、あるいは燃料電池試験システムが存在する場合、この試験システム全体に対して、[透明]である。
【0040】
燃料電池試験システムの運転停止時に、燃料電池スタック内のプロセスガスの緩やかな圧力減衰を、燃料電池スタックの陽極側の圧力を陰極側の圧力と同等に維持する圧力減衰と結合させることが望ましい。このことは、本発明によるプロセスガス圧力減衰制御システムにおける、共通のニードル弁90に接続された2つの逆止弁80、85の相互作用によって達成される。燃料ガス導管30及びオキシダントガス導管35における各圧力の一方が他方より高い場合、たとえば図2に示すようにp1が高圧、即ち燃料ガス圧である場合、燃料ガス側逆止弁80は、高圧p1が燃料側逆止弁に存在するから開放することになる。この圧力はまた、オキシダントガス側逆止弁85の排気口にも存在し、その結果閉鎖されたままである(p1はこの時点でp2より大きく、オキシダントガス側逆止弁の吸気口に存在する)。したがって、大部分の圧力が時間t0から調節可能ニードル弁90内を流出し始めて、通気孔100から出ることになる。(例において)陽極側の圧力が減少し、陰極側の圧力(p2から開始)と同等になると、オキシダントガス側逆止弁85はまた、時間t1において、オキシダントガス背圧調整器42からの計器用空気のニードル弁90への流体の連通を行なうように開放することになる。
【0041】
(例に示すように)陰極側の圧力が陽極側の圧力より速く減少する場合、オキシダントガス側逆止弁は、状況が運転停止直後の上記した状況と同様であることから閉じることになり、陽極圧力は、陰極圧力に再び「追いつく」まで減少することが可能とされ、両逆止弁が時間t2で再び開放することになる。同様に、陽極側の圧力が陰極側の圧力よりも早く減少する場合、燃料ガス側逆止弁は閉じることになり、陰極圧力は、陽極圧力に再び「追いつく」まで減少することが可能とされ、両逆止弁が時間t3で再び開放することになる。(例に示すように)陰極側の圧力が陽極側の圧力より速く減少する場合、オキシダントガス側逆止弁は、状況が運転停止直後の上記した状況と同様であることから閉じることになり、陽極圧力は、陰極圧力に再び「追いつく」まで減少することが可能とされ、両逆止弁が再び開放することになる。ガス圧減衰制御動作は、時間tfで終了することになり、このとき陽極側及び陰極側のいずれの圧力が低すぎて、いずれの逆止弁を開放できない。この圧力平衡又は均等化は、過剰な圧力差が電池膜を損傷することを防止するために要求される所望の特徴である。
【0042】
本明細書中に記載され説明された好ましい実施の形態に対し、添付した請求の範囲に範囲が定義されている本発明から逸脱することなく、種々の変形例が当業者によって実施されることはさらに理解すべきである。特に、本発明は、単一電池、電池スタック、又は燃料ガスとオキシダントガスの供給部を有する完全なパワー・モジュールの形式で、いかなる燃料電池にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明による、プラント機器が対応して平衡状態にある燃料電池スタックの概略図である。
【図2】図2は、本発明による背圧制御装置の概略図である。
【図3】図3は、このシステムの圧力減衰特性を示す線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスの吸気口と排気口、及びパイロットガス注入口を有する燃料ガス背圧調整器と、
燃料ガス調整パイロットガス供給部と、
燃料ガス逆止弁と、
第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有する燃料ガス三方弁であって、該燃料ガス三方弁が、その第1のポートによって前記調整パイロットガス供給に接続され、第3のポートによって前記燃料ガス背圧調整器に接続され、さらに第2のポートによって燃料ガス逆止弁に接続され、通常状態では、第1及び第3のそれぞれのポート間に流体を連通させ、流体が調整パイロットガス供給から燃料ガス背圧調整器に流動することを可能にし、運転停止状態では、第2及び第3のそれぞれのポート間に流体を連通させ、流体が燃料ガス背圧調整器から燃料ガス逆止弁に流動することを可能にするように動作可能な前記燃料ガス三方弁と、
オキシダントガス用の吸気口と排気口、及びパイロットガス注入を有するオキシダントガス背圧調整器と、
オキシダント調整パイロットガス供給部と、
オキシダントガス逆止弁と、
第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有するオキシダントガス三方弁であって、該オキシダントガス三方弁が、その第1のポートによって前記オキシダント調整パイロットガス供給に接続され、第3のポートによって前記オキシダントガス背圧調整器に接続され、さらに第2のポートによってオキシダントガス逆止弁に接続され、通常状態では、第1及び第3のそれぞれのポート間に流体を連通させ、流体がオキシダント調整パイロットガス供給からオキシダントガス背圧調整器に流動することを可能にし、運転停止状態では、第2及び第3のそれぞれのポート間に流体を連通させ、流体がオキシダントガス背圧調整器からオキシダントガス逆止弁に流動することを可能にするように動作可能な前記オキシダントガス三方弁と、
燃料ガス逆止弁の排気口とオキシダントガス逆止弁の排気口との双方に接続される流量調節弁であって、該流量調節弁が通気孔へガス抜きをして、流量調節弁が、燃料ガス及びオキシダントの各背圧調整器に対するパイロットガスの圧力信号を前記流量調節弁を介して制御された方法で減衰させることによって、各プロセスガスに対し所望の圧力減衰率を規定する、前記流量調節弁と、
を含む、背圧調整装置。
【請求項2】
燃料ガス三方弁及びオキシダント三方弁の各々が電気作動装置を含む、請求項1に記載の背圧調整装置。
【請求項3】
燃料ガス圧力調整弁及びオキシダント圧力調整弁の各々が手動で操作可能である、請求項1に記載の背圧調整装置。
【請求項4】
燃料ガス背圧調整弁及びオキシダント背圧調整弁の各々がソレノイド作動装置を含む、請求項2に記載の背圧調整装置。
【請求項5】
燃料ガス及びオキシダントの各三方弁、ならびに燃料ガス及びオキシダントの各圧力調整弁に接続されている制御ユニットを含む、請求項4に記載の背圧調整装置。
【請求項6】
前記流量調節弁がニードル弁を含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の背圧調整装置。
【請求項7】
前記燃料ガス調整パイロットガス供給部が、燃料ガス圧力調整弁を介して接続されるパイロットガス供給用の吸気口を含み、前記オキシダント調整パイロットガス供給部が、オキシダント圧力調整弁を介して接続されるパイロットガス供給用の吸気口を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の背圧調整装置。
【請求項8】
燃料電池試験ステーションと結合されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の背圧調整装置。
【請求項9】
燃料ガスとオキシダントガス用の吸気口、及び燃料ガス背圧調整器の吸気口とオキシダント背圧調整器の吸気口に接続される排気口を有する、燃料電池スタックを備える燃料電池パワー・モジュールと結合されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の背圧調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−515726(P2007−515726A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545862(P2006−545862)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002170
【国際公開番号】WO2005/062148
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504169094)グリーンライト パワー テクノロジーズ、インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】GREENLIGHT POWER TECHNOLOGIES,INC.
【住所又は居所原語表記】4242 Phillips Avenue,Unit C,Burnaby,British Columbia,V5A 2X2 CANADA
【Fターム(参考)】