運転支援システム
【課題】車両の走行位置に応じた適切な運転支援が行える運転支援システムを提供すること。
【解決手段】運転支援対象である車両に対し運転支援情報を送信して運転支援を行う運転支援システム1であって、運転支援情報として、道路上の位置に対する運転支援の可否情報、道路上の位置における可能な運転支援内容情報、道路上の位置において運転支援に必要な車両装備情報のうち少なくとも一つを含むものを送信する(S10〜S18)。これにより、道路を走行する車両に対して運転支援が行えるか否か、運転支援可能な支援内容、運転支援可能な装備を備えているか否かを認識させることができる。このため、運転支援対象である車両が道路上の位置に応じて運転支援を受けられるか否かを容易に判断することができる。従って、移動体の走行位置に応じた適切な運転支援を行うことができる。
【解決手段】運転支援対象である車両に対し運転支援情報を送信して運転支援を行う運転支援システム1であって、運転支援情報として、道路上の位置に対する運転支援の可否情報、道路上の位置における可能な運転支援内容情報、道路上の位置において運転支援に必要な車両装備情報のうち少なくとも一つを含むものを送信する(S10〜S18)。これにより、道路を走行する車両に対して運転支援が行えるか否か、運転支援可能な支援内容、運転支援可能な装備を備えているか否かを認識させることができる。このため、運転支援対象である車両が道路上の位置に応じて運転支援を受けられるか否かを容易に判断することができる。従って、移動体の走行位置に応じた適切な運転支援を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などの移動体の運転を支援する運転支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転を支援する運転支援システムとして、例えば特開2003−337993号公報に記載されるように、道路ジオメトリサーバからの道路パラメータに基づいて道路情報を生成し、その道路情報を通信により車両へ送信し、その道路情報に基づいて運転支援を行うものが知られている。この運転支援システムは、道路ジオメトリサーバをインフラ側に設置し道路情報の生成処理などをインフラ側で行うことにより、車両システム側の処理負担を軽減しようとするものである。
【特許文献1】特開2003−337993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような運転支援システムにあっては、実際に運転支援を行うに際し、車両の走行位置に応じた適切な運転支援が行えないという問題点がある。例えば、道路の長さ、曲率など物理的な情報を運転支援情報として運転支援対象となる車両に提供しても、全て地域についてそのような情報が整備できていない場合、情報整備されていない地域を車両が走行している場合には適切な運転支援が行えない。
【0004】
また、上述した運転支援システムにあっては、道路の位置、長さ、曲率など物理的な情報を提供できたとしても、道路の工事、駐車車両の存在など車両の走行の支障となる事象を考慮することができない。このため、このような車両走行に支障が生じた場合に適切な運転支援が行えず、外乱に対するロバスト性が低いものとなる。また、合流車両が多い箇所や右折車両が多い箇所など車線に沿った走行が困難な道路領域に対し適切な運転支援が困難なものとなる。
【0005】
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、車両の走行位置に応じた適切な運転支援が行える運転支援システムを提供することを目的とする。また、道路の交通状況や車両の走行環境に応じて適切な運転支援が行える運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る運転支援システムは、運転支援対象である移動体に対し運転支援情報を送信して運転支援を行う運転支援システムにおいて、前記運転支援情報は、道路上の位置に対する運転支援の可否情報、道路上の位置における可能な運転支援内容情報、道路上の位置において運転支援に必要な車両装備情報のうち少なくとも一つを含むことを特徴。
【0007】
この発明によれば、道路上の位置に対する運転支援の可否情報、道路上の位置における可能な運転支援情報、道路の位置上において運転支援に必要な車両装備情報のうち少なくとも一つを含む運転支援情報を移動体に送信することにより、道路を走行する移動体に対して運転支援が行えるか否か、運転支援可能な支援内容、運転支援可能な装備を備えているか否かを認識させることができる。このため、運転支援対象である移動体が道路上の位置に応じて運転支援を受けられるか否かを容易に判断することができる。従って、移動体の走行位置に応じた適切な運転支援を行うことができる。
【0008】
また本発明に係る運転支援システムにおいて、道路に対し自動運転軌道を設定する自動運転軌道設定手段と、前記道路における移動体の走行軌跡を取得する走行軌跡取得手段と、前記走行軌跡に基づいて前記自動運転軌道を修正して更新する軌道更新手段と、前記運転支援情報として更新された自動運転軌道の情報を運転支援対象である移動体に送信する送信手段とを備えて構成することが好ましい。
【0009】
この発明によれば、道路における移動体の走行軌跡に基づいて自動運転軌道を更新することにより、道路の現実の交通状況に応じて自動運転軌道を修正することができる。このため、道路上の駐車車両などの障害物の存在や事故など突発的な外乱に対しても適切な運転支援を行うことができる。従って、交通状況や移動体の走行環境に応じて適切な運転支援を行うことができる。
【0010】
この場合、前記軌道更新手段は、前記走行軌跡と前記自動運転軌道との乖離度が所定のしきい値以上である場合に、前記走行軌跡を新たな自動運転軌道として設定して更新することが好ましい。
【0011】
また本発明に係る運転支援システムにおいて、道路に対し自動運転軌道を設定する自動運転軌道設定手段と、前記道路の形状に沿った道路軌道と自動運転軌道との乖離度に応じて運転負担量を算出する運転負担算出手段と、前記運転負担量に基づいて前記自動運転軌道を修正して更新する軌道更新手段と、前記運転支援情報として更新された自動運転軌道の情報を運転支援対象である移動体に送信する送信手段とを備えることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、運転負担量に応じて自動運転軌道を更新することにより、運転負担の低い自然な軌道を自動運転軌道とすることができる。このため、円滑な走行による運転支援が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の走行位置に応じた適切な運転支援が行うことができる。また、道路の交通状況や車両の走行環境に応じて適切な運転支援を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に本発明の第一実施形態に係る運転支援システムの構成概要図を示す。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援システム1は、運転支援対象である車両に対し運転支援情報を送信して運転支援を行うであって、例えば路側装置2、車載装置3を備えて構成される。路側装置2と車載装置3は、互いに路車間通信によって通信可能となっている。路側装置2は、車両が走行する道路などに設置される装置であり、例えばインフラ設備が用いられる。路側装置2は、通信部21、軌道設定部22、軌道更新部23及び記録部24を備えている。通信部21、軌道設定部22、軌道更新部23及び記録部24は、相互に信号を入出力できるように構成されている。
【0017】
通信部21は、路車間通信を行う路車間通信機であって、道路に設置され、道路を走行する車両と路車間通信を行う。この通信部21としては、例えば光ビーコン、電波ビーコン又はFM多重放送を用いて路車間通信を行うものが用いられる。通信部21は、運転支援対象となる車両に対し運転支援情報を送信する送信手段として機能する。また、通信部21は、道路を走行する車両から送信される車両の走行軌跡情報を受信し、移動体の走行軌跡取得手段として機能する。
【0018】
車両の走行軌跡情報は、車両が走行した道路及び道路に対する走行位置を示す情報である。ここでいう車両は、運転支援対象となる車両以外の他車を含むものである。例えば、他車が走行した走行軌跡情報を受信することにより、多数の走行軌跡情報を取得することができることとなる。また、走行軌跡情報を提供する車両は、路線バスなど道路を定期的又は定時的に走行する車両であることが好ましい。この場合、走行軌跡情報を定期的に取得することが可能となる。
【0019】
この走行軌跡情報は、車両の走行軌跡を示すものであれば、複数の点を連ねたものでもよいし、ライン状のもの、所定の幅を有する帯状のものなどでもよい。この走行軌跡情報は、例えば通信部21が設置される位置から所定範囲の走行経路の情報であればよい。
【0020】
軌道設定部22は、道路に対し自動運転軌道を設定する自動運転軌道設定手段として機能するものであり、例えば電子制御ユニットにより構成される。電子制御ユニットは、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。自動運転軌道の設定は、地図データ上の道路に対し自動運転する際の経路として自動運転軌道を設定する処理である。例えば、道路の車線の中央位置に沿った基本軌道を自動運転軌道として設定してもよいし、車両が過去に走行した走行軌道に基づいて自動運転軌道を設定してもよい。
【0021】
軌道更新部23は、車両の走行軌道に基づいて自動運転軌道を修正して更新する軌道更新手段として機能するものであり、例えば電子制御ユニットにより構成される。この軌道更新部23は、例えば、すでに設定されている自動運転軌道と実際に車両が走行した走行軌跡とを比較し、その走行軌道が自動運転軌道に対し所定以上に乖離している場合に走行軌道を新たな自動運転軌道として設定して自動運転軌道の更新を行う。これにより、道路に故障車や駐車車両が停車している場合、障害物が存在している場合など自動運転軌道に沿って走行できない場合に、新たな自動運転軌道に更新することによって適切な運転支援が行える。
【0022】
また、軌道更新部23において、運転負担を考慮して自動運転軌道の更新を行うことが好ましい。例えば、道路の形状に沿った道路軌道と自動運転軌道との乖離度に応じて車両の運転負担量を算出し、その運転負担量に基づいて自動運転軌道を修正して更新することが好ましい。この場合、軌道更新部23は、車両の運転負担量を算出する運転負担算出手段として機能する。このように運転負担を考慮して自動運転軌道の更新することにより、運転負担の低い自然な軌道を自動運転軌道とすることができる。このため、円滑な走行による運転支援が可能となる。
【0023】
記録部24は、自動運転軌道や車両の走行軌道などを記録する記録手段として機能するものであり、例えば、設定されている自動運転軌道の座標データ、車両の走行軌道の座標データを記録保持するデータベースが用いられる。
【0024】
車載装置3は、車両に搭載される装置であって、路側装置2から自動運転軌道情報を含む運転支援情報を受けて車両を自動運転制御するものである。車載装置3は、通信部31、ナビゲーションシステム32、運転制御部33、周囲検知部34、記録部35及び走行駆動部36を備えている。通信部31、ナビゲーションシステム32、運転制御部33、周囲検知部34、記録部35、走行駆動部36は、相互に信号を入出力できるように構成されている。
【0025】
通信部31は、路車間通信を行う路車間通信機であって、車両に搭載され、道路に設置される通信部21と路車間通信を行う。この通信部31としては、例えば光ビーコン、電波ビーコン又はFM多重放送を用いた通信部21と通信可能なものが用いられる。この通信部31は、運転支援情報を受信する受信手段として機能する。受信された運転支援情報は、記録部35に記録保存される。
【0026】
ナビゲーションシステム32は、自車の位置を検出する自車位置検出手段として機能するものであり、例えば、道路の地図データを備え、GPS(Global Positioning System)を用いて位置検出可能なものが用いられる。
【0027】
運転制御部33は、自動運転制御を行う自動運転制御手段として機能するものであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成される電子制御ユニットにより構成される。この運転制御部33は、自動運転軌道に沿って自車が走行するように走行駆動部36に制御信号を出力して自動運転制御を行う。
【0028】
周囲検知部34は、自車の周囲の物体を検知する検出手段であって、例えばミリ波レーダ、レーザレーダ、カメラなどが用いられる。周囲検知部34の検知信号は、運転制御部33に入力される。運転制御部33は、自動運転軌道上に障害物などを存在する場合には、それを回避するように迂回経路を演算したり停車判断するなどして自動運転を実行する。
【0029】
記録部35は、受信した自動運転軌道などを記録する記録手段である。走行駆動部36は、運転制御部33から出力される制御信号に応じて自車を走行動作、制動動作、操舵動作を行うものであって、例えばエンジンECU(Electronic Control Unit)、ブレーキECU、操舵ECUにより構成される。
【0030】
次に、本実施形態に係る運転支援システムの動作について説明する。
【0031】
図2は、本実施形態に係る運転支援システム1における運転支援内容送信処理を示すフローチャートである。この図2に示す制御処理は、例えば路側装置2により所定の周期で繰り返して実行される。
【0032】
まず、図2のS10に示すように、自動運転軌道設定処理が行われる。自動運転軌道設定処理は、車両が自動運転する際の軌道を設定する処理であり、例えば所定範囲の地域の道路における自動運転軌道を設定する。
【0033】
図3に示すように、自動運転軌道Aが道路Bに沿って設定される。この自動運転軌道Aの設定処理は、例えば、道路Bの車線の中央位置に沿って自動運転軌道Aを設定してもよいし、車両が過去に走行した軌道を自動運転軌道Aとして設定してもよい。設定された自動運転軌道Aは、例えばxy座標データとして記録部24に記録される。この自動運転軌道Aは、物理的なレールとして敷設されるわけでないが、車両の自動運転制御における軌道として設定され、ITレールとして用いられる。
【0034】
そして、図2のS12に移行し、運転支援可能領域設定処理が行われる。運転支援可能領域設定処理は、運転支援可能な道路領域を設定する処理である。例えば、自動運転軌道が設定されている道路領域が運転支援可能な領域として設定され、自動運転軌道が設定されていない道路領域が運転支援できない領域として設定される。
【0035】
そして、S14に移行し、運転支援内容設定処理が行われる。運転支援内容設定処理は、道路上の位置ごとに運転支援できる運転支援内容を設定する処理である。例えば、運転支援可能な領域において、自動運転軌道の情報の提供、道路における交通情報の提供など運転支援内容が道路上の位置ごとに設定される。
【0036】
そして、S16に移行し、運転支援装備設定処理が行われる。運転支援装備設定処理は、道路上の位置ごとに運転支援が行える車両の装備を設定する処理である。例えば、運転支援可能な領域において、自動運転軌道の情報の提供を受けるために必要な車両の装備の内容が道路上の位置ごとに設定される。具体的には、自動運転軌道の情報の提供を受けるために必要な車両の装備の内容として電波ビーコンとの通信機能の装備、光ビーコンとの通信機能の装備など装備内容が設定される。
【0037】
そして、S18に移行し、送信処理が行われる。送信処理は、運転支援対象となる車両に対し運転支援情報を送信する処理である。例えば、運転支援情報として、運転支援可能領域の情報、運転支援内容の情報及び運転支援を受けるのに必要な車両装備情報が送信される。また、運転支援可能領域の情報、運転支援内容の情報及び運転支援を受けるのに必要な車両装備情報のうち一部の情報を送信する場合もある。
【0038】
また、この送信処理は、運転支援対象となる車両から送信要求があった場合に、その車両の走行位置に応じて運転支援情報を送信することが好ましい。例えば、車両の走行位置に応じて運転支援可能である否かの情報、運転支援可能であるときに運転支援内容の情報、運転支援を受けるための車両装備の情報の全部又はその一部が送信される。S18の送信処理を終えたら、運転支援内容送信処理の一連の制御処理を終了する。
【0039】
このような運転支援内容送信処理によれば、道路上の位置に対する運転支援の可否情報、道路上の位置における可能な運転支援情報、道路の位置上において運転支援に必要な車両装備情報のうち少なくとも一つを含む運転支援情報を移動体に送信することにより、道路を走行する車両に対して運転支援が行えるか否か、運転支援可能な支援内容、運転支援可能な装備を備えているか否かを認識させることができる。このため、運転支援対象である車両が道路上の位置に応じて運転支援を受けられるか否かを容易に判断することができる。従って、車両の走行位置に応じた適切な運転支援を行うことができる。
【0040】
図4は、本実施形態に係る運転支援システム1における自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。この図4に示す自動運転軌道更新処理は、車両の走行軌跡に基づいて自動運転軌道を修正して更新する処理であり、例えば路側装置2により所定の周期で繰り返して実行される。
【0041】
まず、図4のS20に示すように、走行経路取得処理が行われる。走行経路取得処理は、車両が走行した走行軌跡情報を取得する処理である。例えば、車両との路車間通信により、車両が実際に走行した走行軌跡の情報を受信して取得する。ここで取得する走行軌跡情報は、車両が走行した道路の経路を含み、さらに走行した車線および車線における走行位置を含むものである。この走行軌跡情報は、例えばxy座標データとして取得される。このため、車両が走行した道路及び車線の情報を取得することができ、さらにその車線における走行位置の情報も取得することができる。S20にて取得された走行軌跡のデータは、記録部24に走行軌跡データとして記録される。また、新たな走行軌跡データが記録された場合、所定期間内の過去の走行軌跡データと合わせて、その道路における走行軌跡のデータが算出される。例えば、現在の走行軌跡データを含む所定期間以内のデータを総合した平均の走行軌跡データを算出したり、現在に近いデータほど重み付けを大きくして総合の走行軌跡データを算出したりする。
【0042】
そして、S22に移行し、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であるか否かが判断される。例えば、現在設定されている自動運転軌道から実際の走行軌道が乖離した面積の平均値が所定のしきい値以上であるか否かが判断される。
【0043】
図5(a)に示すように、片側二車線の道路Aにおいて合流路A1がある場合、自動運転軌道Bが右側の車線の中央位置に沿って設定されているが、合流しようとする他車M1が左側から迫り出しているため、周囲検知部34により他車M1が検知され、他車M1との接触を避けるように自動運転軌道Bから外れて自動運転による車両走行が行われる。このため、車両の走行軌跡C(C1、C2、…)が自動運転軌道Bから乖離することとなる。このときの自動運転軌道Bから走行軌道Cが乖離した面積Sの平均値が所定のしきい値以上であるか否かが判断される。乖離面積Sは、自動運転軌道Bと走行軌跡Cにより囲まれる領域の面積である。
【0044】
そして、自動運転軌道Bから走行軌道Cが乖離した面積Sの平均値が予め設定されたしきい値以上である場合には、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であると判断される。一方、自動運転軌道Bから走行軌道Cが乖離した面積Sの平均値が予め設定されたしきい値以上でない場合には、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上でないと判断される。
【0045】
なお、S22において、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であるか否かが判断するに際し、現在設定されている自動運転軌道から実際の走行軌道が乖離した面積の平均値が所定のしきい値以上であるか否かを判断する以外の判断処理によって、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であるか否かを判断してもよい。例えば、現在設定されている自動運転軌道から実際の走行軌道が乖離した最大距離の平均値が所定のしきい値以上であるか否かに応じて、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であるか否かを判断してもよい。
【0046】
そして、S22にて車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上でないと判断された場合には、自動運転軌道更新処理の一連の制御処理を終了する。
【0047】
一方、S22にて車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であると判断された場合には、自動運転軌道とは別ルートの走行経路があるか否かが判断される(S24)。例えば、自動運転軌道より実際の走行軌跡に近い別の車線がある場合には別ルートの走行経路があると判断され、自動運転軌道より実際の走行軌跡に近い別の車線がない場合には別ルートの走行経路がないと判断される。
【0048】
S24にて自動運転軌道とは別ルートの走行経路があると判断された場合には、その別ルートの走行経路が新たな自動運転軌道として設定され自動運転軌道が更新される(S26)。新たな自動運転軌道のデータは、記録部24に記録される。
【0049】
一方、S24にて自動運転軌道とは別ルートの走行経路がないと判断された場合には、車両の実際の走行軌跡が新たな自動運転軌道として設定され自動運転軌道が更新される(S28)。新たな自動運転軌道のデータは、記録部24に記録される。なお、別ルートの走行経路がある場合であっても、車両の実際の走行軌跡を新たな自動運転軌道として設定した方が好ましい場合には、実際の走行軌跡を新たな自動運転軌道として設定してもよい。
【0050】
例えば、図5(b)に示すように、隣りに車線がある場合に隣りの車線を自動運転軌道とするのではなく、実際の車両の走行経路に沿って自動運転軌道Bを設定してもよい。すぐ先の交差点で左折するような走行計画がある場合に、円滑な走行が可能となる。
【0051】
また、図5に示すような合流箇所をある場合のみならず、図6に示すように駐車車両M2がある場合に自動運転軌道Bと車両の走行軌跡Cを比較し、車両の実際の走行軌跡Cと自動運転軌道Bとの乖離度がしきい値以上である場合に、自動運転軌道Bを更新処理してもよい。
【0052】
そして、S30に移行し、送信処理が行われる。送信処理は、送信処理は、運転支援対象となる車両に対し運転支援情報を送信する処理であり、ここでは更新された自動運転軌道の情報が運転支援情報として送信される。なお、この送信処理は、運転支援対象となる車両から送信要求があった場合に、その車両の走行位置に応じて運転支援情報を送信してもよい。S30の送信処理を終えたら、自動運転軌道更新処理の一連の制御処理を終了する。
【0053】
このような自動運転軌道更新処理によれば、道路における移動体の走行軌跡に基づいて自動運転軌道を更新することにより、道路の現実の交通状況や走行環境に応じて自動運転軌道を修正することができる。このため、道路上の駐車車両などの障害物の存在や事故など突発的な外乱に対しても適切な運転支援を行うことができる。従って、交通状況や車両の走行環境に応じた適切な運転支援が行える。
【0054】
図7は、本実施形態に係る運転支援システム1における自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。この図7に示す自動運転軌道更新処理は、車両の運転負担量に基づいて自動運転軌道を修正して更新する処理であり、例えば路側装置2により所定の周期で繰り返して実行される。
【0055】
まず、図7のS40に示すように、運転負担量算出処理が行われる。運転負担量算出処理は、車両における運転負担量を算出する処理であり、例えば道路の形状に沿った道路軌道と自動運転軌道との乖離度に応じて運転負担量が算出される。
【0056】
図8(a)に示すように、例えば道路Aの形状に沿った道路軌道Dは、道路Aの中央位置に沿った軌道とされる。この道路軌道Dに沿って自動運転軌道Bが設定されている場合には、操舵動作が少なく運転負担が小さいものとなる。これに対し、図8(b)に示すように、車線の合流、車両M2の駐車、道路工事などがあって、自動運転軌道Bが道路軌道Dから乖離していると、操舵動作が多くなり運転負担が大きいものとなる。
【0057】
運転負担量の算出は、例えば道路軌道Dに対する自動運転軌道Bの乖離率、自動運転の自動化レベル及び走行距離に基づいて行われる。走行経路において、道路軌道Dに対する自動運転軌道Bの乖離率をm、自動運転の自動化レベルをn、走行経路の距離lとすると、運転負担量を示す運転負担指標値Qは、次の式(1)により算出される。
【0058】
Q=l・(1−n)・m …(1)
【0059】
なお、自動化レベルは、運転を自動化できるレベルを示すものであり、0〜1の範囲の正の値が設定され、自動化レベルが高いほど大きな値が設定される。
【0060】
また、運転負担指標値Qは、乖離率m、自動化レベルnなどが異なる複数の経路からなる走行経路については、それぞれの経路の運転負担指標値Pを加算することにより、その走行経路の運転負担指標値Qを算出すればよい。
【0061】
例えば、図9(a)に示すように、P1地点からP3地点まで行く経路として、P2地点を経由する第一経路X1とP2′経路を経由する第二経路X2がある場合、これらの第一経路X1、第二経路X2の運転負担指標値は、それぞれP1地点から経由地までの運転負担指標値を算出し、経由地からP3地点までの運転負担指標値を算出し、それらの運転負担指標値を加算させて算出すればよい。
【0062】
第一経路X1において、P1地点からP2経由地までの経路における乖離率が0.1、自動運転の自動化レベルが0.5、距離が3kmであり、P2経由地からP3地点までの経路における乖離率が0.2、自動運転の自動化レベルが0.9、距離が5kmである場合、第一経路X1の運転負担指標値Q1は、次の式(2)に示すように、P1地点からP2経由地までの経路の運転負担指標値とP2経由地からP3地点までの経路の運転負担指標値を加算して算出される。
【0063】
Q1=3・(1−0.5)・0.1+5・(1−0.9)・0.2=0.17…(2)
【0064】
また、第二経路X1において、P1地点からP2経由地までの経路における乖離率が0.1、自動運転の自動化レベルが0.4、距離が5kmであり、P2経由地からP3地点までの経路における乖離率が0.2、自動運転の自動化レベルが0.6、距離が2kmである場合、第二経路X2の運転負担指標値Q2は、次の式(3)に示すように、P1地点からP2経由地までの経路の運転負担指標値とP2経由地からP3地点までの経路の運転負担指標値を加算して算出される。
【0065】
Q1=5・(1−0.4)・0.1+2・(1−0.6)・0.2=0.46…(3)
【0066】
そして、図7のS42に移行し、自動運転軌道更新処理が行われる。自動運転軌道更新処理は、道路における車両の運転負担量に基づいて自動運転軌道を修正して更新する処理であり、例えば同一の地点まで行く走行経路が複数ある場合に運転負担量の少ない走行経路を自動運転軌道として設定し自動運転軌道を更新する。
【0067】
図9(a)に示すように、P1地点からP3地点まで車両走行する際に、第一経路X1と第二経路X2の二つの経路がある場合、この第一経路X1と第二経路X2のうち運転負担量が少ない経路を自動運転軌道として設定することが好ましい。この場合、運転負担の小さい自然な軌道を自動運転軌道とすることができ、円滑な走行による運転支援が可能となる。従って、図9(a)に示す走行環境においては、運転負担指標値の小さい第一経路X1を自動運転軌道として設定することが好ましい。
【0068】
しかしながら、図9(b)に示すように、第一経路X1のP2地点からP3地点までの経路において道路工事により自動化レベルが0.9から0.1に低下した場合、次の式(4)に示すように、第一経路X1の運転負担指標値が1.05に増加する。
【0069】
Q1=3・(1−0.5)・0.1+5・(1−0.1)・0.2=1.05…(4)
【0070】
このため、第一経路X1の運転負担指標値が第二経路X2の運転負担指標値より大きくなる。この場合、運転負担指標値の小さい第二経路X2を自動運転軌道として設定することが好ましい。従って、運転負担指標値の小さい第二経路X2が新たな自動運転軌道として設定され自動運転軌道が更新される。
【0071】
図10は、自動運転軌道更新処理により自動運転軌道を変更した場合の説明図である。
【0072】
図10(a)に示すように、車線A1の合流、車両M2の駐車、道路工事などがあって、自動運転軌道Bが蛇行するように設定されている場合、操舵動作が多くなり運転負担が大きいものとなる。このような場合、図10(b)に示すように、隣りの車線の道路軌道に沿って自動運転軌道Bが変更され更新される。これにより、操舵動作が少なく運転負担が小さいものとなる。
【0073】
このような自動運転軌道更新処理によれば、運転負担量に応じて自動運転軌道を更新することにより、運転負担の低い自然な軌道を自動運転軌道とすることができる。このため、円滑な走行による運転支援が行える。
【0074】
図11は、本実施形態に係る運転支援システム1における自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。この図11に示す自動運転軌道更新処理は、車両の走行密度に基づいて自動運転軌道を修正して更新する処理であり、例えば路側装置2により所定の周期で繰り返して実行される。
【0075】
まず、図11のS50に示すように、走行密度取得処理が行われる。走行密度取得処理は、車両の走行密度を取得する処理であり、例えば車両との路車間通信により車両の走行経路情報を取得し、車両の走行経路に基づいて車両の走行密度を算出して行われる。車両の走行密度は、所定期間内における走行経路のデータに基づいて算出すればよい。
【0076】
そして、S52に移行し、自動運転軌道のルート決定処理が行われる。自動運転軌道のルート決定処理は、車両の走行密度に基づいて自動運転軌道のルートを決定する処理である。例えば、車両の走行密度の分布を計算し、ある範囲内となる走行密度のエリアの面積が予め設定されるしきい値以上であるか否かを判断し、その走行密度のエリアの面積が予め設定されるしきい値以上である場合には、そのエリアとその近傍の走行密度の高いエリアを結ぶ道路を自動運転軌道として決定する。一方、走行密度のエリアの面積が予め設定されるしきい値以上でない場合には、すでに自動運転軌道となっているものを変更しない。
【0077】
そして、S54に移行し、自動運転軌道設定処理が行われる。自動運転軌道設定処理は、S52にて決定された自動運転軌道を新たな自動運転軌道として設定する処理である。新たな自動運転軌道として設定された自動運転軌道のデータは、記録部24に記録される。
【0078】
そして、S56に移行し、自動運転軌道網に変化があったか否かが判断される。例えば、複数の自動運転軌道からなる自動運転軌道網が変更された否かが判断される。このS56にて自動運転軌道網に変化があったと判断された場合には、自動運転軌道の更新処理が行われ(S58)、その更新された自動運転軌道の情報が運転支援対象となる車両へ送信される(S60)。
【0079】
このような自動運転軌道更新処理によれば、走行密度に応じて自動運転軌道を更新することにより、車両の走行経路を束ねて利便性の高い自動運転軌道を設定することができ、自動運転軌道の周囲に人が集まるように誘導できる。このため、バスなどの大量輸送機関によって効率的な移動が行える。また、このような自動運転軌道更新処理を一定期間継続させて実行すると、住宅や商業地を集約させる方向へ誘導できるので、税制や規制などの強制的な都市計画が不要となる。
【0080】
例えば図12(a)に示すように、自動運転軌道が走行密度に応じて設定されていない場合には、住宅などから駅に向かう車両はそれぞれの経路を利用することとなる。これに対し、図12(b)に示すように、自動運転軌道Bを走行密度に応じて設定して車両の走行経路を束ねることにより、車両の流れが統一化されることとなる。このため、図12(c)に示すように、自動運転軌道Bの周囲に人が集まるようになり、住宅地や商業地を集約させる方向へ誘導することができる。従って、税制や規制などの強制的な都市計画が不要となる。
【0081】
なお、上述した実施形態は本発明に係る運転支援システムの一例を示すものである。本発明に係る運転支援システムは、この実施形態に係る運転支援システムに限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る運転支援システムを変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0082】
例えば、上述した実施形態においては、移動体として車両の運転支援システムについて説明したが、その他の移動体においける運転支援システムに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係る運転支援システムの構成概要図である。
【図2】図1の運転支援システムにおける運転支援内容送信処理を示すフローチャートである。
【図3】図2の運転支援内容送信処理における自動運転軌道設定処理の説明図である。
【図4】図1の運転支援システムの走行軌跡に基づく自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。
【図5】図4の走行軌跡に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【図6】図4の走行軌跡に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【図7】図1の運転支援システムの運転負担に基づく自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。
【図8】図7の運転負担に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【図9】図7の運転負担に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【図10】図7の運転負担に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【図11】図1の運転支援システムの走行密度に基づく自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。
【図12】図11の走行密度に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【符号の説明】
【0084】
1…運転支援システム、2…路側装置、3…車載装置、21…通信部、22…軌道設定部、23…軌道更新部、24…記録部、31…通信部、32…ナビゲーションシステム、33…運転制御部、34…周囲検知部、35…記録部、36…走行駆動部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などの移動体の運転を支援する運転支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転を支援する運転支援システムとして、例えば特開2003−337993号公報に記載されるように、道路ジオメトリサーバからの道路パラメータに基づいて道路情報を生成し、その道路情報を通信により車両へ送信し、その道路情報に基づいて運転支援を行うものが知られている。この運転支援システムは、道路ジオメトリサーバをインフラ側に設置し道路情報の生成処理などをインフラ側で行うことにより、車両システム側の処理負担を軽減しようとするものである。
【特許文献1】特開2003−337993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような運転支援システムにあっては、実際に運転支援を行うに際し、車両の走行位置に応じた適切な運転支援が行えないという問題点がある。例えば、道路の長さ、曲率など物理的な情報を運転支援情報として運転支援対象となる車両に提供しても、全て地域についてそのような情報が整備できていない場合、情報整備されていない地域を車両が走行している場合には適切な運転支援が行えない。
【0004】
また、上述した運転支援システムにあっては、道路の位置、長さ、曲率など物理的な情報を提供できたとしても、道路の工事、駐車車両の存在など車両の走行の支障となる事象を考慮することができない。このため、このような車両走行に支障が生じた場合に適切な運転支援が行えず、外乱に対するロバスト性が低いものとなる。また、合流車両が多い箇所や右折車両が多い箇所など車線に沿った走行が困難な道路領域に対し適切な運転支援が困難なものとなる。
【0005】
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、車両の走行位置に応じた適切な運転支援が行える運転支援システムを提供することを目的とする。また、道路の交通状況や車両の走行環境に応じて適切な運転支援が行える運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る運転支援システムは、運転支援対象である移動体に対し運転支援情報を送信して運転支援を行う運転支援システムにおいて、前記運転支援情報は、道路上の位置に対する運転支援の可否情報、道路上の位置における可能な運転支援内容情報、道路上の位置において運転支援に必要な車両装備情報のうち少なくとも一つを含むことを特徴。
【0007】
この発明によれば、道路上の位置に対する運転支援の可否情報、道路上の位置における可能な運転支援情報、道路の位置上において運転支援に必要な車両装備情報のうち少なくとも一つを含む運転支援情報を移動体に送信することにより、道路を走行する移動体に対して運転支援が行えるか否か、運転支援可能な支援内容、運転支援可能な装備を備えているか否かを認識させることができる。このため、運転支援対象である移動体が道路上の位置に応じて運転支援を受けられるか否かを容易に判断することができる。従って、移動体の走行位置に応じた適切な運転支援を行うことができる。
【0008】
また本発明に係る運転支援システムにおいて、道路に対し自動運転軌道を設定する自動運転軌道設定手段と、前記道路における移動体の走行軌跡を取得する走行軌跡取得手段と、前記走行軌跡に基づいて前記自動運転軌道を修正して更新する軌道更新手段と、前記運転支援情報として更新された自動運転軌道の情報を運転支援対象である移動体に送信する送信手段とを備えて構成することが好ましい。
【0009】
この発明によれば、道路における移動体の走行軌跡に基づいて自動運転軌道を更新することにより、道路の現実の交通状況に応じて自動運転軌道を修正することができる。このため、道路上の駐車車両などの障害物の存在や事故など突発的な外乱に対しても適切な運転支援を行うことができる。従って、交通状況や移動体の走行環境に応じて適切な運転支援を行うことができる。
【0010】
この場合、前記軌道更新手段は、前記走行軌跡と前記自動運転軌道との乖離度が所定のしきい値以上である場合に、前記走行軌跡を新たな自動運転軌道として設定して更新することが好ましい。
【0011】
また本発明に係る運転支援システムにおいて、道路に対し自動運転軌道を設定する自動運転軌道設定手段と、前記道路の形状に沿った道路軌道と自動運転軌道との乖離度に応じて運転負担量を算出する運転負担算出手段と、前記運転負担量に基づいて前記自動運転軌道を修正して更新する軌道更新手段と、前記運転支援情報として更新された自動運転軌道の情報を運転支援対象である移動体に送信する送信手段とを備えることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、運転負担量に応じて自動運転軌道を更新することにより、運転負担の低い自然な軌道を自動運転軌道とすることができる。このため、円滑な走行による運転支援が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の走行位置に応じた適切な運転支援が行うことができる。また、道路の交通状況や車両の走行環境に応じて適切な運転支援を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に本発明の第一実施形態に係る運転支援システムの構成概要図を示す。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援システム1は、運転支援対象である車両に対し運転支援情報を送信して運転支援を行うであって、例えば路側装置2、車載装置3を備えて構成される。路側装置2と車載装置3は、互いに路車間通信によって通信可能となっている。路側装置2は、車両が走行する道路などに設置される装置であり、例えばインフラ設備が用いられる。路側装置2は、通信部21、軌道設定部22、軌道更新部23及び記録部24を備えている。通信部21、軌道設定部22、軌道更新部23及び記録部24は、相互に信号を入出力できるように構成されている。
【0017】
通信部21は、路車間通信を行う路車間通信機であって、道路に設置され、道路を走行する車両と路車間通信を行う。この通信部21としては、例えば光ビーコン、電波ビーコン又はFM多重放送を用いて路車間通信を行うものが用いられる。通信部21は、運転支援対象となる車両に対し運転支援情報を送信する送信手段として機能する。また、通信部21は、道路を走行する車両から送信される車両の走行軌跡情報を受信し、移動体の走行軌跡取得手段として機能する。
【0018】
車両の走行軌跡情報は、車両が走行した道路及び道路に対する走行位置を示す情報である。ここでいう車両は、運転支援対象となる車両以外の他車を含むものである。例えば、他車が走行した走行軌跡情報を受信することにより、多数の走行軌跡情報を取得することができることとなる。また、走行軌跡情報を提供する車両は、路線バスなど道路を定期的又は定時的に走行する車両であることが好ましい。この場合、走行軌跡情報を定期的に取得することが可能となる。
【0019】
この走行軌跡情報は、車両の走行軌跡を示すものであれば、複数の点を連ねたものでもよいし、ライン状のもの、所定の幅を有する帯状のものなどでもよい。この走行軌跡情報は、例えば通信部21が設置される位置から所定範囲の走行経路の情報であればよい。
【0020】
軌道設定部22は、道路に対し自動運転軌道を設定する自動運転軌道設定手段として機能するものであり、例えば電子制御ユニットにより構成される。電子制御ユニットは、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。自動運転軌道の設定は、地図データ上の道路に対し自動運転する際の経路として自動運転軌道を設定する処理である。例えば、道路の車線の中央位置に沿った基本軌道を自動運転軌道として設定してもよいし、車両が過去に走行した走行軌道に基づいて自動運転軌道を設定してもよい。
【0021】
軌道更新部23は、車両の走行軌道に基づいて自動運転軌道を修正して更新する軌道更新手段として機能するものであり、例えば電子制御ユニットにより構成される。この軌道更新部23は、例えば、すでに設定されている自動運転軌道と実際に車両が走行した走行軌跡とを比較し、その走行軌道が自動運転軌道に対し所定以上に乖離している場合に走行軌道を新たな自動運転軌道として設定して自動運転軌道の更新を行う。これにより、道路に故障車や駐車車両が停車している場合、障害物が存在している場合など自動運転軌道に沿って走行できない場合に、新たな自動運転軌道に更新することによって適切な運転支援が行える。
【0022】
また、軌道更新部23において、運転負担を考慮して自動運転軌道の更新を行うことが好ましい。例えば、道路の形状に沿った道路軌道と自動運転軌道との乖離度に応じて車両の運転負担量を算出し、その運転負担量に基づいて自動運転軌道を修正して更新することが好ましい。この場合、軌道更新部23は、車両の運転負担量を算出する運転負担算出手段として機能する。このように運転負担を考慮して自動運転軌道の更新することにより、運転負担の低い自然な軌道を自動運転軌道とすることができる。このため、円滑な走行による運転支援が可能となる。
【0023】
記録部24は、自動運転軌道や車両の走行軌道などを記録する記録手段として機能するものであり、例えば、設定されている自動運転軌道の座標データ、車両の走行軌道の座標データを記録保持するデータベースが用いられる。
【0024】
車載装置3は、車両に搭載される装置であって、路側装置2から自動運転軌道情報を含む運転支援情報を受けて車両を自動運転制御するものである。車載装置3は、通信部31、ナビゲーションシステム32、運転制御部33、周囲検知部34、記録部35及び走行駆動部36を備えている。通信部31、ナビゲーションシステム32、運転制御部33、周囲検知部34、記録部35、走行駆動部36は、相互に信号を入出力できるように構成されている。
【0025】
通信部31は、路車間通信を行う路車間通信機であって、車両に搭載され、道路に設置される通信部21と路車間通信を行う。この通信部31としては、例えば光ビーコン、電波ビーコン又はFM多重放送を用いた通信部21と通信可能なものが用いられる。この通信部31は、運転支援情報を受信する受信手段として機能する。受信された運転支援情報は、記録部35に記録保存される。
【0026】
ナビゲーションシステム32は、自車の位置を検出する自車位置検出手段として機能するものであり、例えば、道路の地図データを備え、GPS(Global Positioning System)を用いて位置検出可能なものが用いられる。
【0027】
運転制御部33は、自動運転制御を行う自動運転制御手段として機能するものであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成される電子制御ユニットにより構成される。この運転制御部33は、自動運転軌道に沿って自車が走行するように走行駆動部36に制御信号を出力して自動運転制御を行う。
【0028】
周囲検知部34は、自車の周囲の物体を検知する検出手段であって、例えばミリ波レーダ、レーザレーダ、カメラなどが用いられる。周囲検知部34の検知信号は、運転制御部33に入力される。運転制御部33は、自動運転軌道上に障害物などを存在する場合には、それを回避するように迂回経路を演算したり停車判断するなどして自動運転を実行する。
【0029】
記録部35は、受信した自動運転軌道などを記録する記録手段である。走行駆動部36は、運転制御部33から出力される制御信号に応じて自車を走行動作、制動動作、操舵動作を行うものであって、例えばエンジンECU(Electronic Control Unit)、ブレーキECU、操舵ECUにより構成される。
【0030】
次に、本実施形態に係る運転支援システムの動作について説明する。
【0031】
図2は、本実施形態に係る運転支援システム1における運転支援内容送信処理を示すフローチャートである。この図2に示す制御処理は、例えば路側装置2により所定の周期で繰り返して実行される。
【0032】
まず、図2のS10に示すように、自動運転軌道設定処理が行われる。自動運転軌道設定処理は、車両が自動運転する際の軌道を設定する処理であり、例えば所定範囲の地域の道路における自動運転軌道を設定する。
【0033】
図3に示すように、自動運転軌道Aが道路Bに沿って設定される。この自動運転軌道Aの設定処理は、例えば、道路Bの車線の中央位置に沿って自動運転軌道Aを設定してもよいし、車両が過去に走行した軌道を自動運転軌道Aとして設定してもよい。設定された自動運転軌道Aは、例えばxy座標データとして記録部24に記録される。この自動運転軌道Aは、物理的なレールとして敷設されるわけでないが、車両の自動運転制御における軌道として設定され、ITレールとして用いられる。
【0034】
そして、図2のS12に移行し、運転支援可能領域設定処理が行われる。運転支援可能領域設定処理は、運転支援可能な道路領域を設定する処理である。例えば、自動運転軌道が設定されている道路領域が運転支援可能な領域として設定され、自動運転軌道が設定されていない道路領域が運転支援できない領域として設定される。
【0035】
そして、S14に移行し、運転支援内容設定処理が行われる。運転支援内容設定処理は、道路上の位置ごとに運転支援できる運転支援内容を設定する処理である。例えば、運転支援可能な領域において、自動運転軌道の情報の提供、道路における交通情報の提供など運転支援内容が道路上の位置ごとに設定される。
【0036】
そして、S16に移行し、運転支援装備設定処理が行われる。運転支援装備設定処理は、道路上の位置ごとに運転支援が行える車両の装備を設定する処理である。例えば、運転支援可能な領域において、自動運転軌道の情報の提供を受けるために必要な車両の装備の内容が道路上の位置ごとに設定される。具体的には、自動運転軌道の情報の提供を受けるために必要な車両の装備の内容として電波ビーコンとの通信機能の装備、光ビーコンとの通信機能の装備など装備内容が設定される。
【0037】
そして、S18に移行し、送信処理が行われる。送信処理は、運転支援対象となる車両に対し運転支援情報を送信する処理である。例えば、運転支援情報として、運転支援可能領域の情報、運転支援内容の情報及び運転支援を受けるのに必要な車両装備情報が送信される。また、運転支援可能領域の情報、運転支援内容の情報及び運転支援を受けるのに必要な車両装備情報のうち一部の情報を送信する場合もある。
【0038】
また、この送信処理は、運転支援対象となる車両から送信要求があった場合に、その車両の走行位置に応じて運転支援情報を送信することが好ましい。例えば、車両の走行位置に応じて運転支援可能である否かの情報、運転支援可能であるときに運転支援内容の情報、運転支援を受けるための車両装備の情報の全部又はその一部が送信される。S18の送信処理を終えたら、運転支援内容送信処理の一連の制御処理を終了する。
【0039】
このような運転支援内容送信処理によれば、道路上の位置に対する運転支援の可否情報、道路上の位置における可能な運転支援情報、道路の位置上において運転支援に必要な車両装備情報のうち少なくとも一つを含む運転支援情報を移動体に送信することにより、道路を走行する車両に対して運転支援が行えるか否か、運転支援可能な支援内容、運転支援可能な装備を備えているか否かを認識させることができる。このため、運転支援対象である車両が道路上の位置に応じて運転支援を受けられるか否かを容易に判断することができる。従って、車両の走行位置に応じた適切な運転支援を行うことができる。
【0040】
図4は、本実施形態に係る運転支援システム1における自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。この図4に示す自動運転軌道更新処理は、車両の走行軌跡に基づいて自動運転軌道を修正して更新する処理であり、例えば路側装置2により所定の周期で繰り返して実行される。
【0041】
まず、図4のS20に示すように、走行経路取得処理が行われる。走行経路取得処理は、車両が走行した走行軌跡情報を取得する処理である。例えば、車両との路車間通信により、車両が実際に走行した走行軌跡の情報を受信して取得する。ここで取得する走行軌跡情報は、車両が走行した道路の経路を含み、さらに走行した車線および車線における走行位置を含むものである。この走行軌跡情報は、例えばxy座標データとして取得される。このため、車両が走行した道路及び車線の情報を取得することができ、さらにその車線における走行位置の情報も取得することができる。S20にて取得された走行軌跡のデータは、記録部24に走行軌跡データとして記録される。また、新たな走行軌跡データが記録された場合、所定期間内の過去の走行軌跡データと合わせて、その道路における走行軌跡のデータが算出される。例えば、現在の走行軌跡データを含む所定期間以内のデータを総合した平均の走行軌跡データを算出したり、現在に近いデータほど重み付けを大きくして総合の走行軌跡データを算出したりする。
【0042】
そして、S22に移行し、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であるか否かが判断される。例えば、現在設定されている自動運転軌道から実際の走行軌道が乖離した面積の平均値が所定のしきい値以上であるか否かが判断される。
【0043】
図5(a)に示すように、片側二車線の道路Aにおいて合流路A1がある場合、自動運転軌道Bが右側の車線の中央位置に沿って設定されているが、合流しようとする他車M1が左側から迫り出しているため、周囲検知部34により他車M1が検知され、他車M1との接触を避けるように自動運転軌道Bから外れて自動運転による車両走行が行われる。このため、車両の走行軌跡C(C1、C2、…)が自動運転軌道Bから乖離することとなる。このときの自動運転軌道Bから走行軌道Cが乖離した面積Sの平均値が所定のしきい値以上であるか否かが判断される。乖離面積Sは、自動運転軌道Bと走行軌跡Cにより囲まれる領域の面積である。
【0044】
そして、自動運転軌道Bから走行軌道Cが乖離した面積Sの平均値が予め設定されたしきい値以上である場合には、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であると判断される。一方、自動運転軌道Bから走行軌道Cが乖離した面積Sの平均値が予め設定されたしきい値以上でない場合には、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上でないと判断される。
【0045】
なお、S22において、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であるか否かが判断するに際し、現在設定されている自動運転軌道から実際の走行軌道が乖離した面積の平均値が所定のしきい値以上であるか否かを判断する以外の判断処理によって、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であるか否かを判断してもよい。例えば、現在設定されている自動運転軌道から実際の走行軌道が乖離した最大距離の平均値が所定のしきい値以上であるか否かに応じて、車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であるか否かを判断してもよい。
【0046】
そして、S22にて車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上でないと判断された場合には、自動運転軌道更新処理の一連の制御処理を終了する。
【0047】
一方、S22にて車両の実際の走行軌跡と自動運転軌道との乖離度がしきい値以上であると判断された場合には、自動運転軌道とは別ルートの走行経路があるか否かが判断される(S24)。例えば、自動運転軌道より実際の走行軌跡に近い別の車線がある場合には別ルートの走行経路があると判断され、自動運転軌道より実際の走行軌跡に近い別の車線がない場合には別ルートの走行経路がないと判断される。
【0048】
S24にて自動運転軌道とは別ルートの走行経路があると判断された場合には、その別ルートの走行経路が新たな自動運転軌道として設定され自動運転軌道が更新される(S26)。新たな自動運転軌道のデータは、記録部24に記録される。
【0049】
一方、S24にて自動運転軌道とは別ルートの走行経路がないと判断された場合には、車両の実際の走行軌跡が新たな自動運転軌道として設定され自動運転軌道が更新される(S28)。新たな自動運転軌道のデータは、記録部24に記録される。なお、別ルートの走行経路がある場合であっても、車両の実際の走行軌跡を新たな自動運転軌道として設定した方が好ましい場合には、実際の走行軌跡を新たな自動運転軌道として設定してもよい。
【0050】
例えば、図5(b)に示すように、隣りに車線がある場合に隣りの車線を自動運転軌道とするのではなく、実際の車両の走行経路に沿って自動運転軌道Bを設定してもよい。すぐ先の交差点で左折するような走行計画がある場合に、円滑な走行が可能となる。
【0051】
また、図5に示すような合流箇所をある場合のみならず、図6に示すように駐車車両M2がある場合に自動運転軌道Bと車両の走行軌跡Cを比較し、車両の実際の走行軌跡Cと自動運転軌道Bとの乖離度がしきい値以上である場合に、自動運転軌道Bを更新処理してもよい。
【0052】
そして、S30に移行し、送信処理が行われる。送信処理は、送信処理は、運転支援対象となる車両に対し運転支援情報を送信する処理であり、ここでは更新された自動運転軌道の情報が運転支援情報として送信される。なお、この送信処理は、運転支援対象となる車両から送信要求があった場合に、その車両の走行位置に応じて運転支援情報を送信してもよい。S30の送信処理を終えたら、自動運転軌道更新処理の一連の制御処理を終了する。
【0053】
このような自動運転軌道更新処理によれば、道路における移動体の走行軌跡に基づいて自動運転軌道を更新することにより、道路の現実の交通状況や走行環境に応じて自動運転軌道を修正することができる。このため、道路上の駐車車両などの障害物の存在や事故など突発的な外乱に対しても適切な運転支援を行うことができる。従って、交通状況や車両の走行環境に応じた適切な運転支援が行える。
【0054】
図7は、本実施形態に係る運転支援システム1における自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。この図7に示す自動運転軌道更新処理は、車両の運転負担量に基づいて自動運転軌道を修正して更新する処理であり、例えば路側装置2により所定の周期で繰り返して実行される。
【0055】
まず、図7のS40に示すように、運転負担量算出処理が行われる。運転負担量算出処理は、車両における運転負担量を算出する処理であり、例えば道路の形状に沿った道路軌道と自動運転軌道との乖離度に応じて運転負担量が算出される。
【0056】
図8(a)に示すように、例えば道路Aの形状に沿った道路軌道Dは、道路Aの中央位置に沿った軌道とされる。この道路軌道Dに沿って自動運転軌道Bが設定されている場合には、操舵動作が少なく運転負担が小さいものとなる。これに対し、図8(b)に示すように、車線の合流、車両M2の駐車、道路工事などがあって、自動運転軌道Bが道路軌道Dから乖離していると、操舵動作が多くなり運転負担が大きいものとなる。
【0057】
運転負担量の算出は、例えば道路軌道Dに対する自動運転軌道Bの乖離率、自動運転の自動化レベル及び走行距離に基づいて行われる。走行経路において、道路軌道Dに対する自動運転軌道Bの乖離率をm、自動運転の自動化レベルをn、走行経路の距離lとすると、運転負担量を示す運転負担指標値Qは、次の式(1)により算出される。
【0058】
Q=l・(1−n)・m …(1)
【0059】
なお、自動化レベルは、運転を自動化できるレベルを示すものであり、0〜1の範囲の正の値が設定され、自動化レベルが高いほど大きな値が設定される。
【0060】
また、運転負担指標値Qは、乖離率m、自動化レベルnなどが異なる複数の経路からなる走行経路については、それぞれの経路の運転負担指標値Pを加算することにより、その走行経路の運転負担指標値Qを算出すればよい。
【0061】
例えば、図9(a)に示すように、P1地点からP3地点まで行く経路として、P2地点を経由する第一経路X1とP2′経路を経由する第二経路X2がある場合、これらの第一経路X1、第二経路X2の運転負担指標値は、それぞれP1地点から経由地までの運転負担指標値を算出し、経由地からP3地点までの運転負担指標値を算出し、それらの運転負担指標値を加算させて算出すればよい。
【0062】
第一経路X1において、P1地点からP2経由地までの経路における乖離率が0.1、自動運転の自動化レベルが0.5、距離が3kmであり、P2経由地からP3地点までの経路における乖離率が0.2、自動運転の自動化レベルが0.9、距離が5kmである場合、第一経路X1の運転負担指標値Q1は、次の式(2)に示すように、P1地点からP2経由地までの経路の運転負担指標値とP2経由地からP3地点までの経路の運転負担指標値を加算して算出される。
【0063】
Q1=3・(1−0.5)・0.1+5・(1−0.9)・0.2=0.17…(2)
【0064】
また、第二経路X1において、P1地点からP2経由地までの経路における乖離率が0.1、自動運転の自動化レベルが0.4、距離が5kmであり、P2経由地からP3地点までの経路における乖離率が0.2、自動運転の自動化レベルが0.6、距離が2kmである場合、第二経路X2の運転負担指標値Q2は、次の式(3)に示すように、P1地点からP2経由地までの経路の運転負担指標値とP2経由地からP3地点までの経路の運転負担指標値を加算して算出される。
【0065】
Q1=5・(1−0.4)・0.1+2・(1−0.6)・0.2=0.46…(3)
【0066】
そして、図7のS42に移行し、自動運転軌道更新処理が行われる。自動運転軌道更新処理は、道路における車両の運転負担量に基づいて自動運転軌道を修正して更新する処理であり、例えば同一の地点まで行く走行経路が複数ある場合に運転負担量の少ない走行経路を自動運転軌道として設定し自動運転軌道を更新する。
【0067】
図9(a)に示すように、P1地点からP3地点まで車両走行する際に、第一経路X1と第二経路X2の二つの経路がある場合、この第一経路X1と第二経路X2のうち運転負担量が少ない経路を自動運転軌道として設定することが好ましい。この場合、運転負担の小さい自然な軌道を自動運転軌道とすることができ、円滑な走行による運転支援が可能となる。従って、図9(a)に示す走行環境においては、運転負担指標値の小さい第一経路X1を自動運転軌道として設定することが好ましい。
【0068】
しかしながら、図9(b)に示すように、第一経路X1のP2地点からP3地点までの経路において道路工事により自動化レベルが0.9から0.1に低下した場合、次の式(4)に示すように、第一経路X1の運転負担指標値が1.05に増加する。
【0069】
Q1=3・(1−0.5)・0.1+5・(1−0.1)・0.2=1.05…(4)
【0070】
このため、第一経路X1の運転負担指標値が第二経路X2の運転負担指標値より大きくなる。この場合、運転負担指標値の小さい第二経路X2を自動運転軌道として設定することが好ましい。従って、運転負担指標値の小さい第二経路X2が新たな自動運転軌道として設定され自動運転軌道が更新される。
【0071】
図10は、自動運転軌道更新処理により自動運転軌道を変更した場合の説明図である。
【0072】
図10(a)に示すように、車線A1の合流、車両M2の駐車、道路工事などがあって、自動運転軌道Bが蛇行するように設定されている場合、操舵動作が多くなり運転負担が大きいものとなる。このような場合、図10(b)に示すように、隣りの車線の道路軌道に沿って自動運転軌道Bが変更され更新される。これにより、操舵動作が少なく運転負担が小さいものとなる。
【0073】
このような自動運転軌道更新処理によれば、運転負担量に応じて自動運転軌道を更新することにより、運転負担の低い自然な軌道を自動運転軌道とすることができる。このため、円滑な走行による運転支援が行える。
【0074】
図11は、本実施形態に係る運転支援システム1における自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。この図11に示す自動運転軌道更新処理は、車両の走行密度に基づいて自動運転軌道を修正して更新する処理であり、例えば路側装置2により所定の周期で繰り返して実行される。
【0075】
まず、図11のS50に示すように、走行密度取得処理が行われる。走行密度取得処理は、車両の走行密度を取得する処理であり、例えば車両との路車間通信により車両の走行経路情報を取得し、車両の走行経路に基づいて車両の走行密度を算出して行われる。車両の走行密度は、所定期間内における走行経路のデータに基づいて算出すればよい。
【0076】
そして、S52に移行し、自動運転軌道のルート決定処理が行われる。自動運転軌道のルート決定処理は、車両の走行密度に基づいて自動運転軌道のルートを決定する処理である。例えば、車両の走行密度の分布を計算し、ある範囲内となる走行密度のエリアの面積が予め設定されるしきい値以上であるか否かを判断し、その走行密度のエリアの面積が予め設定されるしきい値以上である場合には、そのエリアとその近傍の走行密度の高いエリアを結ぶ道路を自動運転軌道として決定する。一方、走行密度のエリアの面積が予め設定されるしきい値以上でない場合には、すでに自動運転軌道となっているものを変更しない。
【0077】
そして、S54に移行し、自動運転軌道設定処理が行われる。自動運転軌道設定処理は、S52にて決定された自動運転軌道を新たな自動運転軌道として設定する処理である。新たな自動運転軌道として設定された自動運転軌道のデータは、記録部24に記録される。
【0078】
そして、S56に移行し、自動運転軌道網に変化があったか否かが判断される。例えば、複数の自動運転軌道からなる自動運転軌道網が変更された否かが判断される。このS56にて自動運転軌道網に変化があったと判断された場合には、自動運転軌道の更新処理が行われ(S58)、その更新された自動運転軌道の情報が運転支援対象となる車両へ送信される(S60)。
【0079】
このような自動運転軌道更新処理によれば、走行密度に応じて自動運転軌道を更新することにより、車両の走行経路を束ねて利便性の高い自動運転軌道を設定することができ、自動運転軌道の周囲に人が集まるように誘導できる。このため、バスなどの大量輸送機関によって効率的な移動が行える。また、このような自動運転軌道更新処理を一定期間継続させて実行すると、住宅や商業地を集約させる方向へ誘導できるので、税制や規制などの強制的な都市計画が不要となる。
【0080】
例えば図12(a)に示すように、自動運転軌道が走行密度に応じて設定されていない場合には、住宅などから駅に向かう車両はそれぞれの経路を利用することとなる。これに対し、図12(b)に示すように、自動運転軌道Bを走行密度に応じて設定して車両の走行経路を束ねることにより、車両の流れが統一化されることとなる。このため、図12(c)に示すように、自動運転軌道Bの周囲に人が集まるようになり、住宅地や商業地を集約させる方向へ誘導することができる。従って、税制や規制などの強制的な都市計画が不要となる。
【0081】
なお、上述した実施形態は本発明に係る運転支援システムの一例を示すものである。本発明に係る運転支援システムは、この実施形態に係る運転支援システムに限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る運転支援システムを変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0082】
例えば、上述した実施形態においては、移動体として車両の運転支援システムについて説明したが、その他の移動体においける運転支援システムに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係る運転支援システムの構成概要図である。
【図2】図1の運転支援システムにおける運転支援内容送信処理を示すフローチャートである。
【図3】図2の運転支援内容送信処理における自動運転軌道設定処理の説明図である。
【図4】図1の運転支援システムの走行軌跡に基づく自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。
【図5】図4の走行軌跡に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【図6】図4の走行軌跡に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【図7】図1の運転支援システムの運転負担に基づく自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。
【図8】図7の運転負担に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【図9】図7の運転負担に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【図10】図7の運転負担に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【図11】図1の運転支援システムの走行密度に基づく自動運転軌道更新処理を示すフローチャートである。
【図12】図11の走行密度に基づく自動運転軌道更新処理の説明図である。
【符号の説明】
【0084】
1…運転支援システム、2…路側装置、3…車載装置、21…通信部、22…軌道設定部、23…軌道更新部、24…記録部、31…通信部、32…ナビゲーションシステム、33…運転制御部、34…周囲検知部、35…記録部、36…走行駆動部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転支援対象である移動体に対し運転支援情報を送信して運転支援を行う運転支援システムにおいて、
前記運転支援情報は、道路上の位置に対する運転支援の可否情報、道路上の位置における可能な運転支援内容情報、道路上の位置において運転支援に必要な車両装備情報のうち少なくとも一つを含むこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
道路に対し自動運転軌道を設定する自動運転軌道設定手段と、
前記道路における移動体の走行軌跡を取得する走行軌跡取得手段と、
前記走行軌跡に基づいて前記自動運転軌道を修正して更新する軌道更新手段と、
前記運転支援情報として更新された自動運転軌道の情報を運転支援対象である移動体に送信する送信手段と、
を備えた請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記軌道更新手段は、前記走行軌跡と前記自動運転軌道との乖離度が所定のしきい値以上である場合に、前記走行軌跡を新たな自動運転軌道として設定して更新する請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
道路に対し自動運転軌道を設定する自動運転軌道設定手段と、
前記道路の形状に沿った道路軌道と自動運転軌道との乖離度に応じて運転負担量を算出する運転負担算出手段と、
前記運転負担量に基づいて前記自動運転軌道を修正して更新する軌道更新手段と、
前記運転支援情報として更新された自動運転軌道の情報を運転支援対象である移動体に送信する送信手段と、
を備えた請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項1】
運転支援対象である移動体に対し運転支援情報を送信して運転支援を行う運転支援システムにおいて、
前記運転支援情報は、道路上の位置に対する運転支援の可否情報、道路上の位置における可能な運転支援内容情報、道路上の位置において運転支援に必要な車両装備情報のうち少なくとも一つを含むこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
道路に対し自動運転軌道を設定する自動運転軌道設定手段と、
前記道路における移動体の走行軌跡を取得する走行軌跡取得手段と、
前記走行軌跡に基づいて前記自動運転軌道を修正して更新する軌道更新手段と、
前記運転支援情報として更新された自動運転軌道の情報を運転支援対象である移動体に送信する送信手段と、
を備えた請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記軌道更新手段は、前記走行軌跡と前記自動運転軌道との乖離度が所定のしきい値以上である場合に、前記走行軌跡を新たな自動運転軌道として設定して更新する請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
道路に対し自動運転軌道を設定する自動運転軌道設定手段と、
前記道路の形状に沿った道路軌道と自動運転軌道との乖離度に応じて運転負担量を算出する運転負担算出手段と、
前記運転負担量に基づいて前記自動運転軌道を修正して更新する軌道更新手段と、
前記運転支援情報として更新された自動運転軌道の情報を運転支援対象である移動体に送信する送信手段と、
を備えた請求項1に記載の運転支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−3174(P2010−3174A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162390(P2008−162390)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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