説明

運転支援装置

【課題】車両に搭載した装置によって信号機が黄色表示になる時間を取得することができ、その情報を用いることでジレンマゾーン問題に対処できる運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両に装備されたカメラで車両前方の画像を撮影して(S30)、画像認識処理を実行し(S40)、画像内の歩行者用信号機が赤信号に変化したことが検出されたら(S70:YES)、車両用信号が黄信号に変わる予想時間を算出し(S80)、さらに車両が交差点の停止線に到達する予想時間を算出し(S100)、両予想時間の比較から、車両用信号機が青信号であるうちに車両が停止線に到達できるか否かを判定する(S110)。青信号であるうちに停止線まで到達できない場合には、運転者にその情報を報知する(S120)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が青色表示の交差点に近づいていくときに、今信号が黄色表示に変わったら交差点手前で停止すべきか、加速して交差点を渡りきるべきか、運転者が判断に悩むジレンマゾーンがあることが知られている。運転者がジレンマゾーンにうまく対処しなければ、急停止の際に後続車両から追突を受けたり、赤色表示で交差点を渡ってしまったりする等の問題が発生する。
【0003】
例えば下記特許文献1では、ジレンマゾーン問題に対処するために、ジレンマゾーンに入ることを事前に予測して、信号機が黄色表示となる前に運転者にその旨を報知する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−357293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上記特許文献1の技術では、信号機が黄色表示に切り替わる時刻の情報を信号機の制御装置から通信で得るとしている。しかし国内(あるいは海外も含めて)の全ての信号機がそのような設備を備える状況は現時点では存在せず、また将来そのような状況が現実化されるかどうかも不確定である。さらに仮に将来そのような状況が現実化されるとしても、その時点までの期間は、そのような装備がないとしてジレンマゾーン問題への対処を考えることが必要である。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、車両に搭載した装置によって信号機が黄色表示になる時間を取得することができ、その情報を用いることでジレンマゾーン問題に対処できる運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係る運転支援装置は、車両に装備されて車両前方の画像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された撮影画像から、前記車両の進行方向に存在する交差点の歩行者用信号機の信号灯の色変化を検出して、前記交差点の車両用信号機が黄色表示に変化する第1予想時間を算出する第1算出手段と、前記車両が前記交差点に到達する第2予想時間を算出する第2算出手段と、前記第1算出手段により算出された前記第1予想時間と、前記第2算出手段により算出された前記第2予想時間と、から前記交差点の車両用信号機が青色表示である間に前記車両が前記交差点に到達するか否かを判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これにより本発明に係る運転支援装置では、車両前方の歩行者用信号機を撮影して、その赤色表示への変化から車両用信号機が黄色表示に変わる第1予想時間を算出し、また車両が交差点に到達する第2予想時間を算出し、両予想時間の比較から、車両用信号機が青色表示である間に交差点に到達できるかを判定する。よって車両に搭載した撮影手段による撮影画像を有効に利用して、車両用信号機が黄色表示に変化する予想時間を求めることができる。したがって信号機から情報を得ることなく、車両に搭載した装備を用いて、車両用信号機が青色表示である間に交差点に到達できるかどうかという、ジレンマゾーン問題に関係する重要な情報を取得することができ、安全運転に貢献する運転支援装置が実現できる。
【0009】
また前記第1算出手段は、歩行者用信号機の線画像であるパターン画像を記憶する記憶部と、前記撮影画像と前記パターン画像との間でマッチング処理を実行して、前記撮影画像内に歩行者用信号機が撮影されているか否かを判定するマッチング手段と、を備えたとしてもよい。
【0010】
これにより予め歩行者用信号機のパターン画像を記憶しておいて、そのパターン画像と撮影画像との間でマッチング処理を実行するので、車両前方の撮影画像から、歩行者用信号機の画像を取得して、この画像から歩行者用信号機の信号灯の色変化を高精度に検出できる。そして高精度に検出した色変化から車両用信号機が黄色表示となる予想時間を算出するので、車両用信号機が青色表示である間に交差点に到達できるかどうかという、ジレンマゾーン問題に関係する重要な情報を高精度に取得することができる。
【0011】
また前記第1算出手段は、前記マッチング手段によって、前記撮影手段により撮影された画像内に歩行者用信号機が撮影されていると判定された場合に、前記画像内の歩行者用信号機の画像から、その歩行者用信号機の信号灯の色情報を検出する色情報検出手段を備えたとしてもよい。
【0012】
これによりパターン画像と撮影画像との間でマッチング処理を実行して、歩行者用信号機が撮影されていると判定された場合に、歩行者用信号機の画像から信号灯の色情報を検出する。したがってマッチング処理を実行した上で、信号灯の色情報を検出するので、高精度に歩行者用信号機の信号灯の色情報が検出できる。したがって車両用信号機が青色表示である間に交差点に到達できるかどうかという、ジレンマゾーン問題に関係する重要な情報を高精度に取得することができる。
【0013】
また前記色情報検出手段により検出された前記色情報によって、前記歩行者信号機が赤色表示に変化した変化時間を検出する変化時間検出手段を備え、前記第1算出手段は、その変化時間検出手段により検出された前記変化時間に応じて、前記第1予想時間を算出するとしてもよい。
【0014】
これによりマッチング処理を実行した上で検出された歩行者用信号機の信号灯の色情報から、歩行者用信号機が赤色表示に変化した時間を検出し、その情報から車両用信号機が黄色表示に変化する予想時間を算出するので、高精度に取得した歩行者用信号機の変化時間から車両用信号機が黄色表示に変化する時間を予想できる。したがって車両用信号機が青色表示である間に交差点に到達できるかどうかという、ジレンマゾーン問題に関係する重要な情報を高精度に取得することができる。
【0015】
また前記車両の進行方向を基準とした前記交差点の方向を算出する方向算出手段を備え、前記マッチング手段は、前記方向算出手段によって算出された前記交差点の方向に応じて、前記撮影画像内において、前記交差点に前記歩行者用信号機が設置されているならば前記歩行者用信号機が存在する領域を、部分画像として抽出し、その部分画像と前記パターン画像との間でマッチング処理を実行する部分画像マッチング手段を備えたとしてもよい。
【0016】
これにより車両の進行方向に対する交差点の方向を算出して、この情報を基にして、撮影画像中に歩行者用信号機が存在する可能性がある領域のみにマッチング処理を実行するので、不必要な領域へのマッチング処理を省略できて、マッチング処理の効率性が向上する。よって効率的な処理によって、迅速に車両用信号機が青色表示である間に交差点に到達できるかどうかという、ジレンマゾーン問題に関係する重要な情報を取得することができる。
【0017】
また前記第1算出手段は、前記車両と前記交差点との間の距離を算出する距離算出手段と、前記距離算出手段によって算出された前記車両と前記交差点との間の距離に応じて、前記撮影手段により撮影された画像の相対的大きさを補正する補正手段と、を備えたとしてもよい。
【0018】
これにより車両と交差点との距離を算出して、この情報に応じて撮影画像の相対的な大きさを補正するので、車両と交差点との距離が遠いか近いかで撮影画像が異なることで、歩行者用信号灯の色変化の検出の精度が低下することが抑制できる。したがって車両用信号が黄色表示に変わる予想時間を高精度に算出して、この情報から、車両用信号機が青色表示である間に交差点に到達できるかどうかという、ジレンマゾーン問題に関係する重要な情報を高精度に取得することができる。
【0019】
また車両の位置の情報を取得する車両位置取得手段と、交差点の位置の情報を取得する交差点位置取得手段と、車両の速度の情報を取得する速度取得手段と、を備え、前記第2算出手段は、前記車両位置取得手段により取得された車両位置と、前記信号位置取得手段により取得された信号位置と、前記速度取得手段により取得された車両速度と、から前記第2予想時間を算出するとしてもよい。
【0020】
これにより車両位置と、交差点位置と、車速との情報を取得して、これらの情報から車両が交差点に到達する予想時間を算出するので、高精度に交差点到達の予想時間を算出できる。よって高精度な交差点到達の予想時間を用いて、車両用信号機が青色表示である間に交差点に到達できるかどうかという、ジレンマゾーン問題に関係する重要な情報を高精度に取得することができる。
【0021】
また前記判定手段が、前記交差点の車両用信号機が青色表示である間に前記車両は前記交差点に到達しないと判定した場合に、前記交差点での停止を促す情報を運転者に報知する報知手段を備えたとしてもよい。
【0022】
これにより車両用信号機が青色表示である間に交差点に到達できるかどうかという情報を高精度に取得した上で、青色表示である間に交差点に到達できない場合には、その情報を運転者に報知するので、ジレンマゾーン問題に対処できるように運転者を支援する運転支援装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明における運転支援装置の実施例における構成図。
【図2】実施例における制御処理のフローチャート。
【図3】画像認識処理のフローチャート。
【図4】交差点へ向かう車両を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る運転支援装置1の実施例における装置構成の概略図である。運転支援装置1は自動車車両に搭載されているとし、電子制御装置10(ECU:Electronic Control Unit)と各種機器とを備える。
【0025】
ECU10は、コンピュータの構造を有するとし、各種演算など情報処理のためのCPU11、CPU11の作業領域のための一時記憶の場としてのRAM12、各種プログラムなどを記憶しておくためのROM13、書き込み可能な不揮発性の記憶部であるメモリ14、各種機器との接続のためのインターフェース部15(I/F)を備えて、これらがバスで接続されて情報の受け渡しが可能となっている。なお本実施例におけるECU10は、カーナビゲーションのためのナビECUに、本発明に関わる機器や機能を付加したものであるとすればよい。メモリ14には、後述するように歩行者用信号機の線画像であるパターン画像14aが記憶されている。
【0026】
I/F15に接続された各種機器としては、GPS受信部21、ジャイロセンサ22、車速センサ23、地図情報データベース24(地図情報DB、DB)、カメラ25、ディスプレイ26、スピーカ27を備える。
【0027】
GPS受信部21は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を受信する。ジャイロセンサ22は、車両のロール、ピッチ、ヨー方向の角速度を検出する機能を有するセンサである。検出した角速度を積分することにより車両の方向変化を検出することが可能となる。
【0028】
車速センサ23は、車両の速度を検出するセンサである。車速センサ23は、例えばロータリーエンコーダ等の周知の構成によって、車輪の所定回転角度ごとにパルス信号を発生させ、それを基にして車両の速度を算出する。そしてECU10において車速センサ23で得た車速を積算して車両の走行距離を算出することができるとする。地図情報DB24は、カーナビゲーションで利用される様々な地図情報のデータベースである。地図情報には、交差点の位置情報と、個々の交差点における信号機の有無の情報を含むとすればよい。
【0029】
カメラ25は車両前方の画像を撮影するために装備される。カメラ25は例えばCCDカメラとし、フルカラー画像を撮影する。カメラ25の配置場所は例えば、車室内において車両前方が良好に見渡せる位置であればよい。ディスプレイ26は車両の運転者から見える位置に配置されて、各種情報を表示する。スピーカ27は運転者に各種情報を音声で報知する。
【0030】
上述のとおりECU10はナビECUの機能を有するものであり、GPS受信部21、ジャイロセンサ22、車速センサ23、地図情報DB24を用いて、以下のとおりカーナビゲーション(以下ではナビと略記)の処理を実行する。
【0031】
ECU10によるナビにおける位置算出方法は、主にGPS航法、自律航法、マップマッチング法からなる。このうちGPS航法は、GPS受信部21によってGPS衛星からのGPS信号を受信することによって、地球上での車両の位置(緯度、経度)を算出するものである。
【0032】
自律航法では、上記構成の場合、ジャイロセンサによって車両の方向を求め、車速センサで検出した車速を積分して走行距離を求めることによって車両の位置を算出する。CPU11で、上記GPS航法と自律航法とを組み合わせたハイブリッド航法によって車両位置を算出すればよい。
【0033】
ハイブリッド航法では例えば、最初の位置決定を含めた、時々の数値補正のときにGPS航法を用い、それ以外のときは自律航法によって車両の進行方向及び走行距離を時々刻々算出し、それを積算していくことにより、逐次車両位置を算出していけばよい。ハイブリッド航法を使用することによって、GPS航法ではトンネル内や建築物の陰でGPS衛星からの電波が受信しにくい状況では車両位置の算出が困難である問題点と、自律航法では走行距離を積算していくうちに誤差が累積していき車両位置の精度が低減する問題点とを互いに補うことができるので、高精度に車両位置が算出できる。
【0034】
そして、ハイブリッド航法によって得られた車両位置をマップマッチング法によって修正すればよい。マップマッチング法では、ハイブリッド航法によって得られた車両位置が地図情報DB24が有する地図と照らし合わせて不適切な位置であるとみなされる場合に、地図情報DB24が有する地図に整合させて、より適切な車両位置に修正する。
【0035】
本実施例において、上記構成を用いた運転支援の処理手順が図2、3に示されている。図2、3のフローチャートはプログラム化されてROM13やメモリ14に記憶しておき、CPU11がこれを実行することで自動的に順次処理されるとすればよい。図2、3の処理は、運転者が車両を運転している間、常に実行し続けるとすればよい。
【0036】
図4には交差点に向かう車両30が示されている。車両30の進行方向には交差点があり、その交差点には車両用信号機32、歩行者用信号機31、横断歩道が設置されている。横断歩道の手前には車両用信号機32が赤色表示のときに車両30が停止するべき停止線33が標示されている。歩行者用信号機31には、青色表示のための信号灯31a、赤色表示のための信号灯31bが、車両用信号機32には、青色表示のための信号灯32a、黄色表示のための信号灯32b、赤色表示のための信号灯32cが備えられている。
【0037】
図2の処理ではまずS10で、車両30の現在位置と進行方向を算出する。上述のとおり、本発明はECU10によって時々刻々カーナビゲーションの処理を実行しつつ、それと平行して本発明に係る運転支援の処理を実行すればよい。したがってS10では、ナビの方で時々刻々行われている、GPS受信部21、ジャイロセンサ22、車速センサ23、DB24を用いて、GPS航法、自律航法、地図マッチング法を組み合わせて実行して算出した車両位置及び進行方向の情報を取得すればよい。
【0038】
次にS20では、交差点位置の情報を取得する。ここでの交差点の位置とは、例えば交差点中心の位置とすればよい。本発明ではDB24には、交差点の位置情報、及び個々の交差点における信号機32の有無が記憶されている。S20では、DB24のこれらの情報と、S10で求めた車両30の現在位置と進行方向とから、車両30が現在接近しつつあり、かつ信号機32がある交差点(以下では次の交差点と呼称する)を算出し、その交差点の位置情報を取得する。
【0039】
手順S30ではカメラ25によって、車両前方の画像を撮影する。これにより次の交差点が写されたフルカラー画像が撮影される。カメラ25による撮影は、手順S30を実行するたびに画像を撮影してもよく、S30とは関係なく所定の周期で撮影していき、S30では直近の画像を取得するとしてもよい。
【0040】
次にS40では、S30で撮影された画像に対して画像認識処理を実行する。画像認識処理を施す前のオリジナルのフルカラー画像は、例えばメモリ14に記憶しておく。
【0041】
S40の画像認識処理の詳細は図3に示されている。図3の画像認識処理ではまずS200で、S10で取得された車両30の進行方向の情報から、車両30の進行方向を基準とした(あるいはカメラ25の撮影方向を基準とした)交差点の方向を算出し、交差点に歩行者用信号31が設置されているならば撮影画像内のどの領域に歩行者用信号31の画像が存在するはずであるかをCPU11で算出し、その領域を部分画像として取り出す。これにより撮影画像のうち不要な部分を解析対象から外すので、パターンマッチング処理の効率性が向上する。
【0042】
その際、図4に示したとおり、歩行者用信号機31が設置されている場合、それは車両30の前方の左右両側にあるので、画像認識処理の精度を向上させるために、左右両側における歩行者用信号機31があるはずの2つの領域をともに部分画像として抽出してもよい。
【0043】
次にS210で、例えばフルカラー画像をグレイスケール画像(濃淡画像)へと変換したうえでエッジ強調処理を実行する。この目的のために例えば、グレイスケール画像に対してソーベルフィルタ等のエッジ強調フィルタを施せばよい。
【0044】
次にS220で、エッジが強調された画像の各点を所定の閾値以上と未満とで2値化して、エッジだけが抽出された線画像を取得する。S220で求めた線画像に対して、後述するS240でパターンマッチングを実行するが、その際に車両30と歩行者用信号機31との間の距離が一定ではないので、線画像とパターン画像とでサイズの不一致が問題となる可能性がある。
【0045】
そこでS230では、S210で求めた線画像に対して相対的な画像サイズの補正を行う。具体的には、S10で求めた車両30の位置と、S20で求めた交差点の位置とから、車両30と交差点との間の距離を算出する。そして、この距離が大きい程、S220で求めた線画像の相対的なサイズを拡大する。
【0046】
ここで相対的な画像サイズの補正とは、S220で求めた線画像と、パターン画像14とのサイズを相対的に補正するとの意味である。すなわち線画像の相対的なサイズを拡大(縮小)することは、線画像のサイズを拡大(縮小)することでもよく、パターン画像14のサイズを縮小(拡大)することでもよく、これら両操作の組合せでもよい。このように画像の相対的サイズの補正を施すことによって、両画像のサイズが揃うのでパターンマッチングの精度が向上する。
【0047】
次にS240では、S230でサイズ補正された線画像と、予めメモリ14(あるいはROM13)に記憶しておいた歩行者用信号機の線画像(パターン画像)14aとの間で、パターンマッチングを実行する。パターンマッチングの方法としては、正規化相関法等を用いればよい。正規化相関法を用いる場合、S220で得られた線画像とパターン画像14aとから正規化相関係数を算出して、その数値が所定の閾値よりも大きい場合には、S220で得られた線画像とパターン画像14aとは類似性が高く、S220で得られた線画像は歩行者用信号機であると判定すればよい。
【0048】
図2に戻って次にS50では、S40による画像認識の結果、進行方向に存在する次の交差点における歩行者用信号の画像が検出できたかどうかが判断される。上述のとおりS230で歩行者用信号の画像が検出できた場合(S50:YES)はS60へ進み、検出できなかった場合(S50:NO)はS10へ戻って、車両位置や交差点位置の検出や画像撮影を繰り返す。
【0049】
S60へ進んだ場合は次の交差点における歩行者用信号の画像が検出できた場合なので、S60では、検出された歩行者用信号の画像における信号灯の色を検出する。この処理では、パターンマッチングによって歩行者用信号機31の画像だと判断された線画像のオリジナルのフルカラー画像における、赤色表示の表示灯31bがあるはずの領域、青色表示の表示灯31aがあるはずの領域内の1点、あるいは複数点の色情報を取得する。複数点の場合は、例えば多数決等の決定法で色を決定してもよい。
【0050】
この色情報から歩行者用信号機31が現在、青色表示点灯中か、赤色表示点灯中か、青色表示点滅中か、を判定する。青色表示が点滅している場合、撮影の瞬間が青色表示が消灯している期間に含まれる可能性がある。したがって青色も赤色も検出されない場合には、青色表示が点滅している期間であると判定するように設定すればよい。
【0051】
また色情報の検出によって青色が検出された場合、現在青色表示が点灯中なのか、それとも点滅しているのか、の判定が現時点の画像1枚のみからは判定できない。そこでS30で撮影した画像は、現時点から所定枚数過去の画像を、例えばメモリ14に記憶しておくようにすればよい。そして過去の画像と組み合わせて、現在青色表示が点灯中なのか、点滅しているのか、の判定を実行するように設定すればよい。
【0052】
S70では、S60で検出された信号灯の色が赤、つまりであるか否かを判定する。赤色表示の場合(S70:YES)はS50へ進み、赤色表示でない場合(S70:NO)は再びS10へ戻って、歩行者用信号が赤色表示になるまで上記手順を繰り返す。
【0053】
S80では車両用信号機32が黄色表示になる予想時間を算出する。上述のとおり図2の処理では、S70で肯定判断とならない間はS10からS70の処理を繰り返すので、S80へ進んだ場合は、歩行者用信号機31が赤色表示に変化した時点であるとみなすことができる。
【0054】
S80では、歩行者用信号機31が赤色表示に変わった時間に、歩行者用信号機31が赤色表示に変わる時間から車両用信号機32が黄色表示に変わる時間までの予想時間を加算することによって、車両用信号機32が黄色表示に変わる予想時間を算出する。ここで、歩行者用信号機31が赤色表示に変わる時間から車両用信号機32が黄色表示に変わる時間までの予想時間は、例えば、この予想時間の統計的な平均値を予め求めておいて、この数値を用いればよい。
【0055】
S90では車速を検出する。これは車速センサ23により計測すればよい。S100では車両30が停止線33に到達する予想時間を算出する。具体的には、S20で求めた交差点位置から停止線33の位置を算出し、そしてS10で求めた車両30の現在位置と、停止線33の位置とから停止線33までの距離を算出し、さらに停止線33までの距離をS90で求めた車速で除算する。
【0056】
これにより停止線33に到達する予想時間が算出される。なお、S20で求めた交差点位置から停止線33の位置を算出する手順においては、例えば、交差点位置(交差点中心位置)と停止線位置との間の平均的な位置関係を予め求めておいてメモリ14に記憶しておき、この情報を用いればよい。
【0057】
S110では車両用信号が青色表示である間に車両が停止線33まで到達することができるか否かを判断する。具体的には、S100で求めた停止線到達予想時間よりも、S80で求めた黄色表示開始予想時間の方が後の場合は、青色表示である間に車両が停止線33まで到達することができると判断する。
【0058】
逆にS100で求めた停止線到達予想時間よりも、S80で求めた黄色表示開始予想時間の方が先の場合は、青色表示である間に車両が停止線33まで到達しないと判断する。青色表示である間に車両が停止線33まで到達すると判断される場合(S110:YES)は図2の処理を終了し、到達しないと判断される場合(S110:NO)はS120へ進む。
【0059】
S120では、次の信号での停止を促すメッセージを運転者に報知する。次の信号での停止を促すメッセージとしては、「このまま進むと次の交差点に達する前に黄色信号に変わります」といった内容や、もっと直接的に「次の信号で停止してください」と運転者に停止を要求する内容等とすればよい。報知方法は、ディスプレイ26への文字による表示や、スピーカ27からの音声による報知や、これらの組合せとすればよい。
【0060】
上記実施例において、S30の手順が撮影手段を構成する。S80の手順が第1算出手段を構成する。S100の手順が第2算出手段を構成する。S110の手順が判定手段を構成する。メモリ14が記憶部を構成する。S240の手順がマッチング手段を構成する。S60の手順が色情報検出手段を構成する。S70の手順が変化時間検出手段を構成する。S10の手順が方向算出手段を構成する。
【0061】
S200、S240の手順が部分画像マッチング手段を構成する。S10、S20の手順が距離算出手段を構成する。S230の手順が補正手段を構成する。S10の手順が車両位置取得手段を構成する。S20の手順が交差点位置取得手段を構成する。S40の手順が速度取得手段を構成する。S120の手順が報知手段を構成する。
【符号の説明】
【0062】
1 運転支援装置
10 ECU
21 GPS受信部
22 ジャイロセンサ
23 車速センサ
24 地図情報データベース
25 カメラ
26 ディスプレイ
27 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装備されて車両前方の画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された撮影画像から、前記車両の進行方向に存在する交差点の歩行者用信号機の信号灯の色変化を検出して、前記交差点の車両用信号機が黄色表示に変化する第1予想時間を算出する第1算出手段と、
前記車両が前記交差点に到達する第2予想時間を算出する第2算出手段と、
前記第1算出手段により算出された前記第1予想時間と、前記第2算出手段により算出された前記第2予想時間と、から前記交差点の車両用信号機が青色表示である間に前記車両が前記交差点に到達するか否かを判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記第1算出手段は、
歩行者用信号機の線画像であるパターン画像を記憶する記憶部と、
前記撮影画像と前記パターン画像との間でマッチング処理を実行して、前記撮影画像内に歩行者用信号機が撮影されているか否かを判定するマッチング手段と、
を備えた請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記第1算出手段は、前記マッチング手段によって、前記撮影手段により撮影された画像内に歩行者用信号機が撮影されていると判定された場合に、前記画像内の歩行者用信号機の画像から、その歩行者用信号機の信号灯の色情報を検出する色情報検出手段を備えた請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記色情報検出手段により検出された前記色情報によって、前記歩行者信号機が赤色表示に変化した変化時間を検出する変化時間検出手段を備え、
前記第1算出手段は、その変化時間検出手段により検出された前記変化時間に応じて、前記第1予想時間を算出する請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記車両の進行方向を基準とした前記交差点の方向を算出する方向算出手段を備え、
前記マッチング手段は、前記方向算出手段によって算出された前記交差点の方向に応じて、前記撮影画像内において、前記交差点に前記歩行者用信号機が設置されているならば前記歩行者用信号機が存在する領域を、部分画像として抽出し、その部分画像と前記パターン画像との間でマッチング処理を実行する部分画像マッチング手段を備えた請求項2乃至4のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記第1算出手段は、
前記車両と前記交差点との間の距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段によって算出された前記車両と前記交差点との間の距離に応じて、前記撮影手段により撮影された画像の相対的大きさを補正する補正手段と、
を備えた請求項1乃至5のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項7】
車両の位置の情報を取得する車両位置取得手段と、
交差点の位置の情報を取得する交差点位置取得手段と、
車両の速度の情報を取得する速度取得手段と、
を備え、
前記第2算出手段は、前記車両位置取得手段により取得された車両位置と、前記信号位置取得手段により取得された信号位置と、前記速度取得手段により取得された車両速度と、から前記第2予想時間を算出する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記判定手段が、前記交差点の車両用信号機が青色表示である間に前記車両は前記交差点に到達しないと判定した場合に、前記交差点での停止を促す情報を運転者に報知する報知手段を備えた請求項1乃至7のいずれか1項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−225075(P2010−225075A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74145(P2009−74145)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】