説明

運転支援装置

【課題】直前の先行車両が自車と無線通信が可能でなくとも、信号機の通過の可否を判定することが可能な運転支援装置を提供する。
【解決手段】運転支援装置10の通信車速度変動情報処理部45が、車車間通信処理装置24が無線通信により取得した前方通信車101の加速度aと、推定した前方通信車101と自車102との間を走行する車間台数Nとに基づいて自車102の将来の速度Vを予測する。また、交差点通過可否判定部52は、信号情報処理部44が取得した青信号の点灯時間と、通信車速度変動情報処理部45が予測した自車102の将来の速度Vとに基づいて、青信号の点灯時間の経過前に自車102が交差点を通過可能か否かを判定する。このため、直前の車両が無線通信を行えない車両であっても、自車102の将来の速度を予測でき、自車102が交差点を通過可能か否かを判定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関し、特に、無線通信が可能な通信車を用いて信号機の通過の可否を判定する運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
信号機の通過の可否を判定することにより、ドライバーの運転を支援する装置が提案されている。例えば、特許文献1には、自車の直前の前方車両と無線通信を行い、直前の前方車両が交差点から離脱するまでの時間よりも、自車が交差点に到達するまでの時間が短く、直前の前方車両が交差点から離脱した時に信号が青であり、且つ自車が交差点に到達した時に信号が青であるときに、当該交差点を通過可能であると判定する運転支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような技術においては、直前の先行車両が自車と無線通信が可能な車両でなければ、信号機の通過の可否を判定することが不可能であるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に考慮してなされたものであり、その目的は、直前の先行車両が自車と無線通信が可能でなくとも、信号機の通過の可否を判定することが可能な運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車前方を走行する前方通信車の加速度を前方通信車から無線通信により取得する前方通信車加速度取得手段と、前方通信車と自車との間を走行する車両の台数である車間台数を推定する車間台数推定手段と、自車前方の信号機が現時点から通過可能な信号を表示する時間である通過可信号点灯時間を取得する信号機情報取得手段と、前方通信車加速度取得手段が取得した前方通信車の加速度と、車間台数推定手段が推定した車間台数とに基づいて、自車の将来の速度を予測する自車速度予測手段と、信号機情報取得手段が取得した通過可信号点灯時間と、自車速度予測手段が予測した自車の将来の速度とに基づいて、通過可信号点灯時間の経過前に自車が信号機を通過可能か否かを判定する通過判定手段とを備えた運転支援装置である。
【0007】
この構成によれば、自車速度予測手段が、前方通信車加速度取得手段が無線通信により取得した前方通信車の加速度と、車間台数推定手段が推定した前方通信車と自車との間を走行する車両の台数である車間台数とに基づいて自車の将来の速度を予測するため、直前の先行車両が自車と無線通信を行うことができない車両であっても、自車の将来の速度を予測することができる。また、通過判定手段は、信号機情報取得手段が取得した通過可信号点灯時間と、自車速度予測手段が予測した自車の将来の速度とに基づいて、通過可信号点灯時間の経過前に自車が信号機を通過可能か否かを判定するため、直前の先行車両が自車と無線通信を行うことができない車両であっても、自車が信号機を通過可能か否かを判定することができる。
【0008】
この場合、車間台数推定手段は、前方通信車と自車との車間距離に基づいて車間台数を推定することが好適である。
【0009】
この構成によれば、車間台数推定手段は、前方通信車と自車との車間距離に基づいて車間台数を推定するため、比較的に簡単に精度良く車間台数を推定することができる。
【0010】
また、自車速度予測手段は、前方通信車の加速度が所定の上限加速度未満で所定の下限加速度を超えているときは、前方通信車の加速度が大きいほど自車の加速度が大きくなるように、自車の将来の速度を予測し、前方通信車の加速度が下限加速度以下であるときは、自車の加速度が所定の最低加速度となるように自車の将来の速度を予測することが好適である。
【0011】
前方通信車の加速度が所定の上限加速度未満で下限加速度を超える範囲の場合は、前方通信車の加速度に合わせた加速度となるため、この構成では、自車速度予測手段は、前方通信車の加速度が所定の上限加速度未満で所定の下限加速度を超えているときは、前方通信車の加速度が大きいほど自車の加速度が大きくなるように、自車の将来の速度を予測する。また、前方通信車の加速度が下限加速度以下と小さいときは、自車は同様の小さい加速度で加速することが考えられるため、自車速度予測手段は、前方通信車の加速度が下限加速度以下であるときは、自車の加速度が所定の最低加速度となるように自車の将来の速度を予測する。これにより、前方通信車の加速度に応じて適切に自車の将来の速度を予測することができる。
【0012】
また、自車速度予測手段は、車間台数が所定の閾値未満でないときは、車間台数が多いほど自車の加速度が小さくなるように、自車の将来の速度を予測することが好適である。
【0013】
車間台数が所定の閾値未満でないほど交通量の密度が高いときは、自車は前方の車両に影響を受ける。そのため、自車速度予測手段は、車間台数が所定の閾値未満でないときは、車間台数が多いほど自車の加速度が小さくなるように、自車の将来の速度を予測することにより、交通量の密度に応じて適切に自車の将来の速度を予測することができる。
【0014】
また、自車の現時点での位置から信号機までの距離を取得する距離取得手段と、距離取得手段が取得した距離と、自車速度予測手段が予測した自車の将来の速度とから、自車が現時点から信号機に到達するまでにかかる時間である到達時間を算出する到達時間算出手段とをさらに備え、通過判定手段は、信号機情報取得手段が取得した通過可信号点灯時間と、到達時間算出手段が算出した到達時間とを比較することによって、通過可信号点灯時間の経過前に自車が信号機を通過可能か否かを判定することが好適である。
【0015】
この構成によれば、距離取得手段が、自車の現時点での位置から信号機までの距離を取得し、到達時間算出手段が、距離取得手段が取得した距離と、自車速度予測手段が予測した自車の将来の速度とから、自車が現時点から信号機に到達するまでにかかる時間である到達時間を算出し、通過判定手段は、信号機情報取得手段が取得した通過可信号点灯時間と、到達時間算出手段が算出した到達時間とを比較することによって、通過可信号点灯時間の経過前に自車が信号機を通過可能か否かを判定するため、確実に自車が信号機を通過可能か否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の運転支援装置によれば、直前の先行車両が自車と無線通信が可能でなくとも、信号機の通過の可否を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る運転支援装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る運転支援装置の全体的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施形態に係る運転支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施形態に係る運転支援装置が適用される状況を示す平面図である。
【図5】自車の予測速度パターンを算出する動作を示すフローチャートである。
【図6】前方車両の速度と自車の予測速度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る運転支援装置を説明する。本実施形態の運転支援装置は自動車に搭載され、信号機のある交差点の通過の可否の判定等の運転支援を行うための装置である。図1に示すように、本実施形態の運転支援装置10は、周辺監視センサ12、車両センサ14、バックカメラ16、ナビゲーションシステム18、通信機類20、各種アクチュエータ60及び視聴覚表示装置70が演算処理部30に接続されている。
【0019】
周辺監視センサ12は、先行車と自車との車間距離を計測するためのものである。また、周辺監視センサ12は、自車の周辺に存在する障害物を認識するためのものである。周辺監視センサ12は、具体的には、ミリ波レーダー、レーザーレーダー及びステレオカメラ等から構成される。
【0020】
車両センサ14は、自車の車速、加速度(減速度)、ヨーレート、ステアリング角、ブレーキペダル踏量、アクセルペダル踏量を検出するためのものである。車両センサは、具体的には、車速センサ等の各値を検出するセンサからなる。
【0021】
バックカメラ16は、自車の後方の状況を撮像するためのものである。バックカメラ16は、ナビゲーションシステム18と連動して、自車が駐車する場合等の後退時にナビゲーションシステムの表示画面に自車の後方の状況を表示する。
【0022】
通信機類20には、光ビーコンアンテナ21、光ビーコン受信機22、車車間通信アンテナ23、車車間通信処理装置24及びGPSアンテナ25が含まれる。光ビーコンアンテナ21及び光ビーコン受信機22は、路側の光ビーコン送信機から、信号機における各種の信号の表示時間に関する情報や、道路の渋滞等の交通状況に関する情報を受信するためのものである。
【0023】
車車間通信アンテナ23及び車車間通信処理装置24は、無線通信が可能な自車の後方を走行する後方通信車に対して、主に自車の加速度等の走行状況に関する情報を送信する。車車間通信アンテナ23及び車車間通信処理装置24は、無線通信が可能な自車の前方を走行する前方通信車から、主に前方通信車の加速度等の走行状況に関する情報を受信する。
【0024】
GPSアンテナは、GPS(Global Positioning System)を用い、自車が走行している位置を測定するためのものである。
【0025】
演算処理部30は、情報処理部40と判定処理部50とを有している。情報処理部40は、道路線形情報処理部41、信号情報処理部44及び通信車速度変動情報処理部45を含んでいる。
【0026】
道路線形情報処理部41は、距離演算部42と経路組立部43とを含んでいる。距離演算部42は、光ビーコンアンテナ21、光ビーコン受信機22及びGPSアンテナ25等の通信機類20とからの情報に基づき信号機のある交差点の位置までの距離を算出する。経路組立部43は、車両センサ14等のセンサ類とGPSアンテナ25等の通信機類20とからの情報に基づき、信号機のある交差点に右左折専用レーンが存在するか否か、道路のカーブ形状、交差点の大きさ等を判定する。これにより、通信車速度変動情報処理部45が、交差点を通過する際の通信車両の将来の速度変動を予測し、自車の速度を予測することが可能となる。
【0027】
信号情報処理部44は、光ビーコンアンテナ21及び光ビーコン受信機22から受信した情報に基づき、信号機が何秒後に赤信号に変わるのか、現在通過可能な信号が通常の青信号から赤信号に変化するのか、現在通過可能な矢灯器の信号から赤信号に変化するのかといった情報を処理する。
【0028】
通信車速度変動情報処理部45は、道路形状、交差点形状、信号機の信号変化、交通密度、交通流の流れ方及び前方通信車の速度変動が自車の速度にどのような影響を与えるかを予測する。
【0029】
判定処理部50は、交通流予測処理部51及び交差点通過可否判定部52を含む。交通流予測処理部51は、光ビーコンアンテナ21、光ビーコン受信機22及びGPSアンテナ25等の通信機類20とからの情報に基づき、自車及び前方通信車周囲の交通流の状況を予測する。交差点通過可否判定部52は、交通流予測処理部51が予測した交通流の状況と、距離演算部42が演算した交差点までの距離と、通信車速度変動情報処理部45が予測した自車の将来の速度と、信号機情報処理部43が取得した信号機の点灯時間に関する情報とに基づいて、交差点の通過の可否を判定する。
【0030】
各種アクチュエータ60は、交差点通過可否判定部52が判定した交差点の通過の可否に応じて、アクセル量あるいはブレーキ量を制御したり、アクセルペダル及びブレーキペダルに所定の反力を加えて、ドライバーに安全な運転操作を促す。視聴覚表示装置70は、交差点通過可否判定部52が判定した交差点の通過の可否に応じて、ディスプレイによる画像表示並びにスピーカ及びブザー等による音声表示を用いて、ドライバーに安全な運転操作を誘導する。
【0031】
以下、本実施形態の運転支援装置10の動作について説明する。まず、動作の概略から説明する。図2に示すように、本実施形態の運転支援装置10は、無線通信により前方通信車の速度変動(加速度)に関する情報を取得する(S11)。運転支援装置10は、前方通信車の速度の変動を予測する(S12)。運転支援装置10は、前方通信車と自車との車両間を走行する車両の台数である車間台数を予測する(S13)。運転支援装置10は、通信車の速度変動と車間台数とから自車の速度変動への影響を予測する(S14)。これにより予測される自車の将来の速度により、本実施形態の運転支援装置10は、信号機のある交差点の通過の可否を判定し、ドライバーへの運転支援を行う。
【0032】
以下、動作の詳細について説明する。図3に示すように、運転支援装置10の車車間通信処理装置24は、自車の前方を走行する無線通信可能な前方通信車から、当該前方通信車の加速度、速度、走行方向等の情報を入手する(S21)。以下の説明では、図4に示すように、前方通信車101が、信号機520が設置された道路500を走行し、前方通信車の後方に自車(後方通信車)102が走行している状況を想定する。前方通信車101と後方通信車102との間には、一般車200が数台走行している。
【0033】
運転支援装置10の信号情報処理部44は光ビーコン受信機22より、路側の光ビーコン送信機からの信号機520の各種信号の点灯時間に関する情報を取得する(S22)。また、運転支援装置10の道路線形情報処理部40の特に経路組立部43は、光ビーコン受信機22及びGPSアンテナ25より、道路線形に関する情報を取得する(S23)。
【0034】
運転支援装置10の通信車速度変動情報処理部45は、前方通信車101の速度変動に対する自車102の速度変動を予測する(S24)。通信車速度変動情報処理部45は、例えば、自車102の前方を発進した車両の発進の時期から、自車102の発進する時期の遅れ時間を算出する。この発進遅れ時間は、前方通信車101と自車102との間の車間台数を予め推定し、一般的な1台当りの発進遅れ時間を用いて算出する。
【0035】
また、通信車速度変動情報処理部45は、例えば発進した前方通信車101の速度変動のパターンにより、自車102の速度変動のパターンを推定し、交差点通過までの時間を算出する。通信車速度変動情報処理部45は、前方通信車101の現在の速度変動のパターンから自車102の将来の速度変動のパターンを予測する。また、通信車速度変動情報処理部45は、前方通信車101の現在の速度変動のパターンから、道路形状、車両の直進、右左折、矢灯器の存在等を判定し、自車102の将来の速度変動のパターンを予測する。
【0036】
運転支援装置10の判定処理部51の特に交差点通過可否判定部52は、自車102が交差点を通過できるか否かを判定する(S25)。交差点通過可否判定部52は、距離演算部42が演算した交差点までの距離と、通信車速度変動情報処理部45が予測した自車102の将来の速度とから、自車102が交差点に到達するまでの到達時間を算出する。交差点通過可否判定部52は、算出した到達時間と、信号機520の青信号の残り点灯時間とを比較することにより、交差点の通過の可否を判定する。
【0037】
交差点を通過できると判定されるときは(S25)、各種アクチュエータ60は交差点を通過させる走行制御を行ない、視聴覚表示装置70はドライバーに交差点を通過できる旨の表示を行う(S26)。交差点を通過できないと判定されるときは(S25)、各種アクチュエータ60は交差点手前で停車させる走行制御を行ない、視聴覚表示装置70はドライバーに交差点を通過できない旨の表示を行う(S27)。
【0038】
以下、前方通信車101の速度変動が自車の将来の速度に及ぼす影響を予測する技術について詳述する。前方通信車101の加速度が小さいほど、後方通信車である自車102の加速は緩やかになる。自車102への影響として、発進遅れ時間τ[s]、加速度の影響定数K及び交通密度kに応じた信頼度係数αとした場合に、前方通信車101の速度変動(加速度)a(t)とすると、自車102の予測発進速度V(t)は、下式(1)のようになる。
(t)=K×a(t−τ)×Δt+V(t−Δt)±α (1)
【0039】
ここで、発進遅れ時間τは、自車102が発進するまでは、一般的な遅れ時間をしようする。加速度の影響係数Kは、主に前方通信車101の加速度a(t)及び交通密度kによって決まるものである。交通密度kは発進遅れ時間τにも関連する。
【0040】
前方通信車101の加速度a(t)の自車102の加速度への影響としては、前方通信車101の加速度a(t)が非常に大きい場合は、自車102の加速は影響を受けない。前方通信車101の加速度a(t)が小さい場合は、自車102は前方通信車101と同様の加速度で加速する。前方通信車101の加速度a(t)が通常領域の場合は、前方通信車101の加速度a(t)が小さくなるにしたがって、自車102の加速度も減少する。
【0041】
交通密度kの自車102の加速度への影響としては、交通密度kが低く、自車102の直前の車両との車間距離が広いときは、自車102の加速度への影響が少ない。一方、交通密度kが高く、自車102の直前の車両との車間距離が狭いときは、自車102の加速度への影響が多い。
【0042】
そこで、本実施形態では図5に示すように、前方通信車101の加速度aが所定の上限値未満であり(S31)、交通密度kが所定の下限値未満でないときは(S33)、通信車速度変動情報処理部45は、交通密度kに応じた信頼度係数αを設定する(S34)。信頼度係数αは交通密度kが大きいほど大きくなる係数とする。通信車速度変動情報処理部45は、前方通信車101の加速度a及び交通密度kに応じた影響係数Kを設定する(S35)。影響係数Kは、前方通信車101の加速度aが大きく、交通密度kが小さいほど大きくなる係数とする。
【0043】
自車102の加速度が所定の下限値未満であるときは(S36)、通信車速度変動情報処理部45は、予測される自車102の速度パターンの最低加速度の速度パターンを使用する(S37)。一方、自車102の加速度が所定の下限値以上であるときは(S36)、通信車速度変動情報処理部45は、上式(1)の速度パターンを使用する(S38)。なお、前方通信車101の加速度aが所定の上限値以上であるときや(S31)、交通密度kが所定の下限値未満であるときは(S33)、通信車速度変動情報処理部45は、自車102の速度を予測不能とする(S32)。
【0044】
図6に示すように、前方通信車101の速度Vに対して、自車102の速度Vは、信頼度係数αの範囲内でV+αとV−αとの間の値と予測される。前方通信車101の加速度が所定の下限値未満であって、予測される自車102の加速度が所定の下限値未満となるときは、予測される自車102の速度はVaminとされる。
【0045】
上記交通密度kの推定のためには、前方通信車101と自車102との間の車間台数を推定する必要がある。そこで、通信車速度変動情報処理部45は、信号機520の前で停車するまでに車間台数を推定しておく。この車間台数の推定は、例えば、下式(2)により推定することができる。なお、下式(2)における「一般的な車間時間」とは、一般的な交通状況において通常想定される車間時間をいう。「一般的な車間時間」は、例えば、通信車両の車両速度や道路種別に依存して変更するようにしてもよく、固定値としても良い。
車間台数N=(通信車間の車間時間/一般的な車間時間)−1 (2)
【0046】
車間台数を推定できない場合は、情報処理センターや光ビーコン受信機22等の路車間通信や車車間通信処理装置24等を利用し、外部から車間台数を取得しても良い。また、自車102のナビゲーションシステム18から入手したり、蓄積されたデータを利用しても良い。また、交差点ごとに特徴のある場合は、交差点ごとの交通密度kや影響係数Kに関する情報を上記と同様の手段により入手しても良い。
【0047】
本実施形態によれば、運転支援装置10の通信車速度変動情報処理部45が、車車間通信処理装置24が無線通信により取得した前方通信車101の加速度aと、推定した前方通信車101と自車102との間を走行する車間台数Nとに基づいて自車102の将来の速度Vを予測するため、直前の先行車両が自車102と無線通信を行うことができない車両であっても、自車102の将来の速度を予測することができる。また、交差点通過可否判定部52は、信号情報処理部44が取得した青信号の点灯時間と、通信車速度変動情報処理部45が予測した自車102の将来の速度Vとに基づいて、青信号の点灯時間の経過前に自車102が交差点を通過可能か否かを判定するため、直前の先行車両が自車102と無線通信を行うことができない車両であっても、自車102が交差点を通過可能か否かを判定することができる。
【0048】
また、通信車速度変動情報処理部45は、前方通信車101と自車102との車間距離(車間時間)に基づいて車間台数Nを推定するため、比較的に簡単に精度良く車間台数を推定することができる。
【0049】
また、前方通信車101の加速度aが所定の上限加速度未満で下限加速度を超える範囲の場合は、前方通信車の加速度に合わせた加速度となるため、本実施形態では、通信車速度変動情報処理部45は、前方通信車101の加速度aが所定の上限加速度未満で所定の下限加速度を超えているときは、前方通信車101の加速度aが大きいほど自車の加速度が大きくなるように、自車の将来の速度Vを予測する。また、前方通信車101の加速度aが下限加速度以下と小さいときは、自車102は同様の小さい加速度で加速することが考えられるため、通信車速度変動情報処理部45は、前方通信車101の加速度aが下限加速度以下であるときは、自車102の加速度が所定の最低加速度となるように自車の将来の速度Vを予測する。これにより、前方通信車101の加速度に応じて適切に自車102の将来の速度を予測することができる。
【0050】
また、車間台数Nが所定の閾値未満でないほど交通密度kが高いときは、自車102は前方の車両に影響を受ける。そのため、通信車速度変動情報処理部45は、車間台数N(交通密度k)が所定の閾値未満でないときは、車間台数Nが多いほど自車102の加速度が小さくなるように、自車102の将来の速度Vを予測することにより、交通密度kに応じて適切に自車の将来の速度を予測することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、距離演算部42が、自車102の現時点での位置から信号機520までの距離を取得し、通信車速度変動情報処理部45が、距離演算部42が取得した距離と、通信車速度変動情報処理部45が予測した自車102の将来の速度Vとから、自車102が現時点から信号機520に到達するまでにかかる時間である到達時間を算出し、交差点通過可否判定部52は、信号情報処理部44が取得した青信号の残り点灯時間と、算出した到達時間とを比較することによって、青信号の残り点灯時間の経過前に自車102が信号機520を通過可能か否かを判定するため、確実に自車102が信号機520を通過可能か否かを判定することができる。
【0052】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、ミリ波レーダ等を用いて自車の直前の車両の挙動を検知して運転支援を行なうことも考えられる。この場合、直前の車両だけではなく、無線通信により前方通信車の速度変動に関する情報を取得することで、直前の車両の速度変動の予測やシステムの制度や信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0053】
10…運転支援装置、12…周辺監視センサ、14…車両センサ、16…バックカメラ、18…ナビゲーションシステム、20…通信機類、21…光ビーコンアンテナ、22…光ビーコン受信機、23…車車間通信アンテナ、24…車車間通信処理装置、25…GPSアンテナ、30…演算処理部、40…情報処理部、41…道路線形情報処理部、42…距離演算部、43…経路組立部、44…信号情報処理部、45…通信車速度変動情報処理部、50…判定処理部、51…交通流予測処理部、52…交差点通過可否判定部、60…各種アクチュエータ、70…視聴覚表示装置、101…前方通信車、102…自車、200…一般車、500…道路、520…信号機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車前方を走行する前方通信車の加速度を前記前方通信車から無線通信により取得する前方通信車加速度取得手段と、
前記前方通信車と前記自車との間を走行する車両の台数である車間台数を推定する車間台数推定手段と、
前記自車前方の信号機が現時点から通過可能な信号を表示する時間である通過可信号点灯時間を取得する信号機情報取得手段と、
前記前方通信車加速度取得手段が取得した前記前方通信車の前記加速度と、前記車間台数推定手段が推定した前記車間台数とに基づいて、前記自車の将来の速度を予測する自車速度予測手段と、
前記信号機情報取得手段が取得した前記通過可信号点灯時間と、前記自車速度予測手段が予測した前記自車の将来の速度とに基づいて、前記通過可信号点灯時間の経過前に前記自車が前記信号機を通過可能か否かを判定する通過判定手段と、
を備えた運転支援装置。
【請求項2】
前記車間台数推定手段は、前記前方通信車と前記自車との車間距離に基づいて前記車間台数を推定する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記自車速度予測手段は、
前記前方通信車の前記加速度が所定の上限加速度未満で所定の下限加速度を超えているときは、前記前方通信車の加速度が大きいほど前記自車の加速度が大きくなるように、前記自車の将来の前記速度を予測し、
前記前方通信車の前記加速度が前記下限加速度以下であるときは、前記自車の加速度が所定の最低加速度となるように前記自車の将来の前記速度を予測する、請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記自車速度予測手段は、前記車間台数が所定の閾値未満でないときは、前記車間台数が多いほど前記自車の加速度が小さくなるように、前記自車の将来の前記速度を予測する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記自車の現時点での位置から前記信号機までの距離を取得する距離取得手段と、
前記距離取得手段が取得した前記距離と、前記自車速度予測手段が予測した前記自車の将来の前記速度とから、前記自車が現時点から前記信号機に到達するまでにかかる時間である到達時間を算出する到達時間算出手段と、
をさらに備え、
前記通過判定手段は、前記信号機情報取得手段が取得した前記通過可信号点灯時間と、前記到達時間算出手段が算出した前記到達時間とを比較することによって、前記通過可信号点灯時間の経過前に前記自車が前記信号機を通過可能か否かを判定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−103078(P2011−103078A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258114(P2009−258114)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】