説明

運転支援装置

【課題】不必要な回避支援を削減することができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る運転支援装置1は、障害物に関する情報を検出する障害物検出手段と、自車両が障害物の現在位置に最接近するまでの余裕時間を算出する余裕時間算出手段と、余裕時間が経過したときの障害物の将来位置を推定する将来位置推定手段と、自車両が回避すべき回避対象領域を設定する回避対象領域設定手段と、回避対象領域を回避する走行経路を設定する走行経路設定手段と、を備え、回避対象領域設定手段は、将来位置及び将来位置の周辺位置における障害物との衝突リスクポテンシャルを評価し、衝突リスクポテンシャルに基づいて、回避対象領域を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物を回避するための運転支援を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような運転支援装置としては、障害物の現在位置及び将来位置を含む領域を回避するように運転支援の操作量を算出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−253745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記運転支援装置では、障害物の移動を想定して運転支援の操作量が算出されるため、障害物との衝突を効果的に回避することができる。
【0005】
しかしながら、自車両と障害物との距離が大きい場合、即ち自車両が障害物の現在位置に最接近するまでの時間が長い場合には、障害物の移動距離が大きくなり、回避すべき領域が大きくなる。このため、運転支援の操作量が必要以上に大きくなるという問題があった。特に、自車両が障害物の現在位置に最接近するまでの間に、障害物が自車両の進路外まで移動する場合には、本来必要のない回避支援を行ってしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、不必要な回避支援を削減することができる運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る運転支援装置は、障害物に関する情報を検出する障害物検出手段と、自車両が障害物の現在位置に最接近するまでの余裕時間を算出する余裕時間算出手段と、余裕時間が経過したときの障害物の将来位置を推定する将来位置推定手段と、自車両が回避すべき回避対象領域を設定する回避対象領域設定手段と、回避対象領域を回避する走行経路を設定する走行経路設定手段と、を備え、回避対象領域設定手段は、将来位置を含む領域における自車両と障害物との衝突リスクポテンシャルを評価し、衝突リスクポテンシャルに基づいて、回避対象領域を設定することを特徴とする。
【0008】
このような運転支援装置では、余裕時間が経過したときの障害物の将来位置が推定され、将来位置を含む領域における自車両と障害物との衝突リスクポテンシャルのみに基づいて回避対象領域が設定される。そして、設定された回避対象領域を回避する走行経路が設定される。このため、余裕時間が大きく、障害物の移動距離が大きい場合でも、回避対象領域は広くならず、不必要な回避支援が削減される。特に、障害物の移動距離が大きく、回避対象領域が自車両の走行経路から外れている場合には、回避支援を行わない走行経路を選択することができ、不必要な回避支援が大幅に削減される。
【0009】
好ましくは、走行経路設定手段により走行経路を設定した後に、障害物の現在位置に基づいて、将来位置推定手段により推定された将来位置の妥当性を評価する推定結果評価手段と、推定結果評価手段により将来位置が妥当でないと評価された場合に、将来位置を修正する将来位置修正手段と、将来位置修正手段により修正された将来位置に応じて、回避対象領域を修正する回避対象領域修正手段と、回避対象領域修正手段により修正された回避対象領域を回避するように走行経路を修正する走行経路修正手段と、を更に備える。この場合、将来位置の推定結果が妥当でないときに、障害物の将来位置、回避対象領域、及び走行経路が修正され、障害物との衝突をより確実に回避する運転支援が可能となる。
【0010】
また、好ましくは、回避対象領域設定手段は、複数の障害物が検出された場合に、それぞれの障害物に対応する回避対象領域を設定し、回避対象領域同士が重複する場合に、いずれかの回避対象領域を拡張する。この場合、いずれかの障害物を他の障害物が回避しようとする動きに対応した回避対象領域が得られ、障害物との衝突をより確実に回避する運転支援が可能となる。
【0011】
また、好ましくは、回避対象領域設定手段は、障害物の種類に基づいて衝突リスクポテンシャルを評価する。この場合、障害物の種類ごとに適切な回避対象領域を設定することができる。
【0012】
また、好ましくは、障害物の種類ごとに衝突リスクポテンシャルのパターンを記憶するリスクパターン記憶手段を更に備え、回避対象領域設定手段は、リスクパターン記憶手段に記憶されたパターンのうち、障害物の種類に対応するパターンに基づいて、衝突リスクポテンシャルを評価する。この場合、現実に即した衝突リスクポテンシャルのパターンを記憶しておき、障害物の種類ごとにより適切な回避対象領域を設定することが可能となる。
【0013】
また、好ましくは、回避対象領域設定手段は、障害物の向きに基づいて、衝突リスクポテンシャルを評価する。この場合、障害物の向きに応じてより適切な回避対象領域を設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る運転支援装置によれば、不必要な回避支援を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る運転支援装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態で行われる運転支援手順を示すフローチャートである。
【図3】回避対象領域の例を示す図である。
【図4】走行経路設定の例を示す図である。
【図5】第2実施形態で行われる運転支援手順を示すフローチャートである。
【図6】回避対象領域の修正の例を示す図である。
【図7】第3実施形態で行われる運転支援手順を示すフローチャートである。
【図8】回避対象領域の拡張の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る運転支援装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
まず、本発明に係る運転支援装置の第1実施形態について説明する。図1は、本発明に係る運転支援装置の第1実施形態を示すブロック図である。図1に示すように、運転支援装置1は、障害物検出装置2と、ナビゲーション装置3と、リスクパターンDB4と、障害物位置予測DB5と、操舵角制御装置6と、加減速制御装置7と、ECU(Electronic Control Unit)8と、を備えている。
【0018】
障害物検出装置2は、例えば、車外カメラ、レーダ等により、障害物に関する情報を検出する装置である。ここでは、障害物に関する情報として、障害物の位置、種類、及び向きが検出される。レーダとしては、例えば、レーザレーダやミリ波レーダ等が挙げられる。
【0019】
ナビゲーション装置3は、自車両の周辺地図情報を生成する装置である。ナビゲーション装置3は、例えば、GPS受信機9と地図DB10とを有し、GPS受信機9により取得した自車両の現在位置情報と、地図DB10とを対比することで、自車両の周辺地図情報を生成する。ナビゲーション装置3により生成された周辺地図情報から、例えば、走行中の道路の側壁や路側帯等を検出することができる。この側壁等も、衝突を回避すべき対象であり、障害物の一種として扱い得るものである。従って、ナビゲーション装置3も、障害物検出装置2と共に障害物検出手段として機能し得る。
【0020】
リスクパターンDB4は、障害物の種類ごとに衝突リスクポテンシャルのパターンを記憶したデータベースである。リスクパターンDB4は、例えば車載の記憶装置に構成されている。ここで、衝突リスクポテンシャルとは、自車両と障害物とが衝突する可能性を意味する。衝突リスクポテンシャルのパターンとは、衝突リスクポテンシャルが最も高い位置を基準位置として、基準位置及びその周辺位置における衝突リスクポテンシャルの分布を示すパターンである。障害物が人間である場合に対応するパターンは、例えば、人間の前後方向で大きく、左右方向で小さく設定されている。これは、人間の存在位置のばらつきが、人間が移動し易い前後方向で大きくなると仮定したものである。
【0021】
障害物位置予測DB5は、後述する障害物の将来位置の推定結果を記憶しておくデータベースである。推定結果を記憶しておくことで、障害物の将来位置の推定結果と、障害物の実際の移動軌跡と、を対比し、推定結果の妥当性を評価することができる。障害物位置予測DB5は、例えば車載の記憶装置に構成されている。なお、本実施形態では、推定結果の妥当性の評価は行わないので、障害物位置予測DB5はなくてもよい。
【0022】
操舵角制御装置6は、例えば、ステアリングアクチュエータを介し、自車両の操舵角又は操舵トルクを制御する装置である。
【0023】
加減速制御装置7は、例えば、スロットルアクチュエータやブレーキアクチュエータを介し、自車両の始動、停止、及び加減速を制御する装置である。
【0024】
ECU8は、図2に示す手順により、運転支援制御を行う。まず、ECU8は、障害物検出装置2を用い、障害物の現在位置、種類、及び向きを検出する(ステップS1)。
【0025】
続いて、ECU8は、自車両の速度を用い、TTC(Time To Collision)、即ち障害物検出装置2によって検出された障害物の現在位置に自車両が最接近するまでの余裕時間を算出する(ステップS2)。このように、ECU8は、余裕時間算出手段として動作する。
【0026】
TTCを算出すると、障害物の速度ベクトルを推定する(ステップS3)。障害物の速度ベクトルは、例えば、障害物の種類及び向きから推定することができる。例えば、障害物が右方向を向いた人間である場合には、右方向に向いた時速約4〜6km/hの速度ベクトルが推定される。
【0027】
障害物の速度ベクトルを推定すると、TTC及び速度ベクトルを用い、TTC経過後の障害物の将来位置を推定する(ステップS4)。このように、ECU8は、将来位置推定手段として動作する。
【0028】
自車両と障害物との衝突リスクポテンシャルは、上記将来位置で最も高くなると推定される。そこで、上記将来位置を基準に、その周辺位置の衝突リスクポテンシャルの分布を生成する(ステップS5)。即ち、リスクパターンDB4に記憶されたパターンのうち、障害物の種類に対応するパターンを取得し、そのパターンの基準位置を上記将来位置に合わせ、そのパターンの向きを障害物の向きに合わせることで、上記将来位置の周辺位置における衝突リスクポテンシャルの分布を生成する。
【0029】
このように、障害物の種類に基づいて衝突リスクポテンシャルを評価することで、障害物の種類ごとに適切な衝突リスクポテンシャルを設定することができる。また、現実に即した衝突リスクポテンシャルのパターンをリスクパターンDB4に記憶しておき、そのパターンに基づいて衝突リスクポテンシャルの分布を生成することで、現実に即した衝突リスクポテンシャルの分布を生成することができる。更に、障害物の向きにパターンの向きを合わせることで、より適切な衝突リスクポテンシャルの分布を生成することができる。
【0030】
なお、リスクパターンDB4を用いずに、衝突リスクポテンシャルの分布を生成してもよい。例えば、下記式(1)により、衝突リスクポテンシャルの分布を算出することができる。式(1)において、X軸は、障害物の左右方向に平行で、Y軸は、障害物の前後方向に平行とする。また、原点は任意とする。
【数1】


X:任意の点のX座標
Y:任意の点のY座標
Xp:障害物の将来位置のX座標
Yp:障害物の将来位置のY座標
σ:Xpの標準偏差
σ:Ypの標準偏差
【0031】
続いて、衝突リスクポテンシャルの分布に基づいて、回避対象領域(衝突リスクポテンシャルマップ)を設定する(ステップS6)。このように、ECU8は、回避対象領域設定手段として動作する。回避対象領域は、例えば、衝突リスクポテンシャルがある閾値以上となる範囲とされる。
【0032】
図3を参照し、回避対象領域について説明する。図3は、障害物の将来位置11が推定され、将来位置11に対応する回避対象領域(衝突リスクポテンシャルマップ)12が設定された状態を示している。ここでは、障害物は人間であり、図示右方向を向いているものとする。図3(a)は、人間の衝突リスクポテンシャルのパターンが、人間の前後方向で大きく、人間の左右方向で小さく設定されている場合を示している。この場合、回避対象領域12は、将来位置11に対し図示左右方向に延びた形状となる。図3(b)は、人間の衝突リスクポテンシャルのパターンが、人間の前方で大きく、後方及び左右方向で小さく設定されている場合を示している。この場合、回避対象領域12は、将来位置11に対し図示右方向に延びた形状となる。
【0033】
回避対象領域を設定すると、図2に示すように、回避対象領域を回避する走行経路を設定する(ステップS7)。このように、ECU8は、走行経路設定手段として動作する。
【0034】
図4を参照し、回避対象領域を回避する走行経路について説明する。図4は、自車両13の障害物が現在位置14にあり、その将来位置11が推定され、将来位置11に対応する回避対象領域(衝突リスクポテンシャルマップ)12が設定された場合を示している。図4(a)は、回避対象領域12が自車両13の現在の進路15を妨げる場合を示している。この場合、回避対象領域12を回避する走行経路16が設定される。図4(b)は、図4(a)に比べTTCが大きいために、TTC経過までに障害物が大きく移動し、回避対象領域12が自車両13の現在の進路15から外れている場合を示している。この場合、現在の進路15を維持する走行経路16が設定される。このように、TTCが大きく、障害物の移動距離が大きい場合でも、回避対象領域12は広くならず、不必要な回避支援が削減される。特に、図4(b)のような場合には、回避支援を全く行わない走行経路を選択することができ、不必要な回避支援が大幅に削減される。
【0035】
走行経路を設定すると、図2に示すように、走行経路に応じた操舵、加減速等の操作パターンを算出する(ステップS8)。そして、操舵角制御装置6及び加減速制御装置7を用い、運転支援を実行する(ステップS9)。
【0036】
次に、本発明に係る運転支援装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態の構成は第1実施形態と同じであり、ECU8が行う運転支援手順のみが異なる。
【0037】
第2実施形態のECU8は、図5に示す手順により、運転支援制御を行う。まず、第1実施形態と同様に障害物の情報を検出し(ステップS10)、TTCを算出する(ステップS11)。
【0038】
続いて、検出した障害物に対する初回の処理であるかを判定する(ステップS12)。具体的には、障害物位置予測DB5に、将来位置の前回の推定結果が記憶されていない場合に、初回の処理であると判定し、将来位置の前回の推定結果が記憶されている場合に、初回の処理でないと判定する。
【0039】
初回の処理である場合には、第1実施形態と同様に障害物の速度ベクトルを推定し(ステップS13)、TTC経過後の障害物の将来位置を推定し(ステップS14)、推定結果を障害物位置予測DB5に記憶する(ステップS15)。続いて、第1実施形態と同様に、衝突リスクポテンシャルの分布を生成し(ステップS16)、回避対象領域を設定し(ステップS17)、走行経路を設定し(ステップS18)、操作パターンを算出し(ステップS19)、運転支援を実行する(ステップS20)。
【0040】
一方、初回の処理でない場合には、障害物位置予測DB5に記憶された前回の推定結果を用い、前回推定した障害物の将来位置は正しいかどうかを判定する(ステップS21)。このように、ECU8は、推定結果評価手段として動作する。具体的には、前回の処理で検出した障害物の現在位置から、今回の処理で検出した障害物の現在位置へ向かう軌跡が、前回推定した障害物の将来位置へ向かっているかを判定する。上記軌跡が、障害物の将来位置へ向かっている場合には、前回推定した障害物の将来位置は正しいと判定する。上記軌跡が、障害物の将来位置へ向かっていない場合には、前回推定した障害物の将来位置は正しくないと判定する。前回推定した障害物の将来位置は正しいと判定すると、前回の処理で実行を開始した運転支援を継続する(ステップS22)。
【0041】
一方、前回推定した障害物の将来位置は正しくないと判定すると、障害物の速度ベクトルを再度推定する(ステップS23)。ここでは、前回の処理で検出した障害物の現在位置から、今回の処理で検出した障害物の現在位置までのベクトルを、障害物の速度ベクトルとする。続いて、TTC経過後の障害物の将来位置を推定し(ステップS24)、推定結果を障害物位置予測DB5に記憶する(ステップS25)。このように、ECU8は、将来位置修正手段として動作する。
【0042】
以後、新たに推定した障害物の将来位置を基準として衝突リスクポテンシャルの分布を生成し(ステップS26)、回避対象領域を設定し(ステップS27)、走行経路を設定し(ステップS28)、操作パターンを算出し(ステップS29)、運転支援を実行する(ステップS30)。このように、ECU8は、回避対象領域修正手段及び走行経路修正手段として動作する。
【0043】
図6を参照し、前回推定した障害物の将来位置が正しくないと判定された場合の処理を説明する。図6は、前回の処理で検出した障害物の現在位置14aから、今回の処理で検出した障害物の現在位置14bへ向かう軌跡が、前回推定した障害物の将来位置11aに向かっていない状況を示している。将来位置11aに対しては、回避対象領域12aが設定されている。この状況では、前回検出した現在位置14aから、今回検出した現在位置14bへ向かうベクトル17が、障害物の速度ベクトルであると推定される。そして、このベクトル17と現在位置14bとに基づいて、障害物の将来位置11bが推定され、将来位置11bを基準として回避対象領域12bが設定される。
【0044】
このように、第2実施形態では、障害物の将来位置の推定結果が妥当でない場合に、障害物の将来位置、回避対象領域、及び走行経路が修正され、障害物との衝突をより確実に回避する運転支援が可能となる。
【0045】
次に、本発明に係る運転支援装置の第3実施形態について説明する。第3実施形態の構成も、第1実施形態と同じであり、ECU8が行う運転支援手順のみが異なる。
【0046】
第3実施形態のECU8は、図7に示す手順により、運転支援制御を行う。まず、第1実施形態と同様に障害物の情報を検出する。更に、第3実施形態では、ナビゲーション装置3を用い、自車両が走行している道路の側壁や路側帯等に関する情報を検出する(ステップS31)。このように、第3実施形態では、障害物検出装置2及びECU8は、移動可能な動的障害物を検出する動的障害物検出手段として機能し、ナビゲーション装置3及びECU8は、移動しない静的障害物を検出する静的障害物検出手段として機能する。
【0047】
続いて、情報が検出された障害物の全てについて、第1実施形態と同様にTTCを算出し(ステップS32)、障害物の速度ベクトルを推定し(ステップS33)、TTC経過後の障害物の将来位置を推定し(ステップS34)、衝突リスクポテンシャルの分布を生成し(ステップS35)、回避対象領域を設定する(ステップS36)。
【0048】
続いて、障害物は一つかどうかを判定する(ステップS37)。障害物が一つである場合には、第1実施形態と同様に走行経路を設定し(ステップS38)、操作パターンを算出し(ステップS39)、運転支援を実行する(ステップS40)。
【0049】
一方、障害物が一つでない場合には、各障害物の回避対象領域同士が重複しているかどうかを判定する(ステップS41)。回避対象領域同士が重複していない場合には、ステップS38に戻る。回避対象領域同士が重複している場合には、いずれかの回避対象領域を拡張し(ステップS42)、ステップS38に移る。特に、本実施形態では、障害物検出装置2により検出された動的障害物の回避対象領域と、ナビゲーション装置3により検出された静的障害物の回避対象領域と、が重複している場合に、ナビゲーション装置3により検出された静的障害物の回避対象領域を拡張する。
【0050】
図8を参照し、回避対象領域を拡張する処理を説明する。図8は、障害物検出装置2により歩行者の現在位置14が検出され、ナビゲーション装置3により道路の側壁の現在位置18が検出されている状況を示している。また、図8では、歩行者の将来位置11が推定され、将来位置11を基準に回避対象領域12が設定されている。更に、側壁の回避対象領域19aが設定され、回避対象領域12と回避対象領域19aとは重複している。この状況では、側壁の回避対象領域19aが、回避対象領域19bに拡張される。
【0051】
このように、本実施形態では、歩行者が側壁に近づくと、側壁との衝突を回避し、側壁に沿って歩くことに対応した回避対象領域が得られる。即ち、いずれかの障害物を他の障害物が回避しようとする動きに対応した回避対象領域が得られ、障害物との衝突をより確実に回避する運転支援が可能となる。また、動的障害物の回避対象領域と静的障害物の回避対象領域とが重複している場合には、静的障害物を動的障害物が回避しようとする動きに対応した回避対象領域が得られ、障害物との衝突をより確実に回避する運転支援が可能となる。
【0052】
なお、図8では、動的障害物として歩行者が検出され、静的障害物として道路の側壁が検出された場合を例示したが、これに限られない。例えば、動的障害物として歩行者と車両とが検出され、歩行者の回避対象領域と車両の回避対象領域とが重複している場合が考えられる。このような場合には、ECU8は、例えば、歩行者の回避対象領域と、車両の回避対象領域と、の双方を拡張してもよい。即ち、動的障害物同士で回避対象領域が重複している場合には、双方の回避対象領域を拡張してもよい。この場合、動的障害物同士が互いに回避しあう動きに対応した回避対象領域が得られ、障害物との衝突をより確実に回避する運転支援が可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1…運転支援装置、2…障害物検出装置(障害物検出手段)、3…ナビゲーション装置(障害物検出手段)、4…リスクパターンDB、5…障害物位置予測DB(推定結果評価手段)、8…ECU(障害物検出手段、余裕時間算出手段、将来位置推定手段、回避対象領域設定手段、走行経路設定手段、推定結果評価手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物に関する情報を検出する障害物検出手段と、
自車両が前記障害物の現在位置に最接近するまでの余裕時間を算出する余裕時間算出手段と、
前記余裕時間が経過したときの前記障害物の将来位置を推定する将来位置推定手段と、
前記自車両が回避すべき回避対象領域を設定する回避対象領域設定手段と、
前記回避対象領域を回避する走行経路を設定する走行経路設定手段と、を備え、
前記回避対象領域設定手段は、前記将来位置を含む領域における前記自車両と前記障害物との衝突リスクポテンシャルを評価し、前記衝突リスクポテンシャルに基づいて前記回避対象領域を設定することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記走行経路設定手段により前記走行経路を設定した後に、前記障害物の現在位置に基づいて、前記将来位置推定手段により推定された前記将来位置の妥当性を評価する推定結果評価手段と、
前記推定結果評価手段により前記将来位置が妥当でないと評価された場合に、前記将来位置を修正する将来位置修正手段と、
前記将来位置修正手段により修正された前記将来位置に応じて、前記回避対象領域を修正する回避対象領域修正手段と、
前記回避対象領域修正手段により修正された前記回避対象領域を回避するように前記走行経路を修正する走行経路修正手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記回避対象領域設定手段は、複数の前記障害物が検出された場合に、それぞれの前記障害物に対応する前記回避対象領域を設定し、前記回避対象領域同士が重複する場合に、いずれかの前記回避対象領域を拡張することを特徴とする請求項1又は2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記回避対象領域設定手段は、前記障害物の種類に基づいて前記衝突リスクポテンシャルを評価することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記障害物の種類ごとに前記衝突リスクポテンシャルのパターンを記憶するリスクパターン記憶手段を更に備え、
前記回避対象領域設定手段は、前記リスクパターン記憶手段に記憶された前記パターンのうち、前記障害物の種類に対応する前記パターンに基づいて、前記衝突リスクポテンシャルを評価することを特徴とする請求項4記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記回避対象領域設定手段は、前記障害物の向きに基づいて、前記衝突リスクポテンシャルを評価することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−173786(P2012−173786A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32216(P2011−32216)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】