説明

運転支援装置

【課題】障害物画像および走行予想進路を視認しやすく表示することができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両後方表示装置10は、ソナー17が障害物20を検出した場合には、進路画像29の表示を停止し、障害物20を検出したことを示す障害物画像30を撮影画像23aに重畳して表示するように演算装置16および描画装置13によってディスプレイ12が制御される。障害物20を検出した場合には、進路画像29を非表示にすることによって走行予想進路がわからなくなるが、車両の進行を妨げる障害物20がある場合には、進路画像29を表示する必要性が低いので、障害物20を検出したことの方が進路画像29を表示することよりも優先すべき事項である。このように優先すべき障害物画像30を表示することによって、障害物画像30を視認しやすくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺状況を表示し、運転者の運転を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両後方の画像を車内のディスプレイに表示し、この画像にステアリングの舵角の状態により変化する予想進路を重畳して表示することによって、車両後退時の運転操作を補助する技術が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
また特許文献1に記載の距離測定システムでは、車両後方の障害物を検出するソナーを備え、障害物を検出すると障害物画像を表示している。障害物画像を表示するに際して、予想進路内にある障害物と予想進路外にある障害物とで、異なる表示となるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−539111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1に記載の技術では、予想進路を示す画像と障害物画像を同時に表示するため、表示画面に2つの画像が重畳して表示される。これによって運転者は、障害物画像または予想進路が見えにくくなり、利便性が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、障害物画像および走行予想進路を視認しやすく表示することができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、車両に搭載され、車両の外界領域を撮影し撮影画像を生成する撮像手段と、
撮像手段によって生成された撮影画像を表示する表示器と、
車両のステアリング角度を検出するステアリング角度検出手段と、
ステアリング角度検出手段によって検出されたステアリング角度に応じた車両の走行予想進路を求める進路演算手段と、
車両の進行を妨げる障害物を検出する障害物検出手段と、
進路演算手段によって求められた走行予想進路を示す進路画像を、撮影画像に重畳して表示器に表示させる表示制御手段と、を含み、
表示制御手段は、障害物検出手段が障害物を検出した場合には、進路画像の表示を停止し、障害物を検出したことを示す障害物画像を撮影画像に重畳して表示するように表示器を制御することを特徴とする運転支援装置である
請求項1に記載の発明に従えば、障害物検出手段が障害物を検出した場合には、進路画像の表示を停止し、障害物を検出したことを示す障害物画像を撮影画像に重畳して表示するように表示制御手段によって表示器が制御される。進路画像の表示を停止(非表示)することによって走行予想進路がわからなくなるが、車両の進行を妨げる障害物がある場合には、進路画像を表示する必要性が低いので、障害物を検出したことの方が進路画像を表示することよりも優先すべき事項である。このように優先度の低い進路画像を非表示にし、優先すべき障害物画像を表示することによって、障害物画像を視認しやすくすることができる。また障害物が検出されるまでは進路画像が表示されるので、運転者は障害物がないことを認識した上で、視認しやすい進路画像に基づいて運転をすることができる。このように本発明によって、障害物画像および進路画像を視認しやすく表示することができる運転支援装置を提供することができる。
【0009】
また請求項2に記載の発明では、進路画像は、撮影画像上において車両の進行方向に延び、車両の車幅に対応した幅を有する帯状の画像であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明に従えば、進路画像は、車両の進行方向に延び、車両の車幅に対応した幅を有する帯状の画像である。車幅に対応した帯状の画像であるので、進行方向の延びただけの線の進路画像よりも、走行予想進路をより認識しやすくなる。帯状の進路画像であると、障害物画像を重畳した場合には進路画像が視認しにくくなるが、本発明では障害物画像を表示する際には進路画像は非表示にするので、視認しにくくなることを防止することができる。これによって進路画像をさらに視認しやすくすることができる。
【0011】
また請求項3に記載の発明では、撮像手段は、車両後方の外界領域を撮影し、
障害物検出手段は、車両の後退を妨げる障害物を検出することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明に従えば、車両後方の外界領域を撮影した撮影画像に、当該車両後退を妨げる障害物を示す障害物画像を重畳した画像を表示器に表示する。車両後方にある障害物は、運転者によって視認され難い。本発明のような運転支援装置は、障害物を分かり易く伝えられる当該装置の効果の発揮によって、運転者の運転操作を確実に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両後方表示装置10の電気的構成を簡略化して示すブロック図である。
【図2】車両後方表示装置10によって表示される画像の一例を示す図である。
【図3】車両後方表示装置10によって表示される画像の他の例を示す図である。
【図4】演算装置16のよって実行されるフローチャートである。
【図5】第2実施形態における車両の動作とディスプレイ12に表示される画像とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図4を用いて説明する。本発明の運転支援装置は、車両の周辺状況を表示し、運転者がこの画面表示を視認することにより、運転操作を支援することができる。運転支援装置の一実施形態である車両後方表示装置10について説明する。
【0016】
車両後方表示装置10は車両後部の周辺状況を表示し、運転者がこの画面表示を視認することにより、駐車時などの後方移動を支援することができる。車両後方表示装置10における画面表示は、現在の車両後方の実際の画像と、過去の画像信号に基づいて実際の画像と連続するように作成された車両後方の過去の画像と、による合成画像で構成される。これによって運転者に対して、自車の正確な位置を知らせることができる。
【0017】
図1は、車両後方表示装置10の電気的構成を簡略化して示すブロック図である。図2は、車両後方表示装置10によって表示される画像の一例を示す図である。図3は、車両後方表示装置10によって表示される画像の他の例を示す図である。車両後方表示装置10は、車両後方の外界領域を撮像するカメラ11と、画像が表示されるディスプレイ12と、ディスプレイ12に表示する画像を描画する描画装置13と、カメラ11からのアナログ信号をデジタル信号に変換し画像信号として描画装置13に送るデコーダ14と、画像信号を記憶するメモリ15と、ディスプレイ12の画像表示を制御する演算装置16と、障害物を検出するソナー17と、車両移動量検出部18と、車両状態検出部19とを備える。
【0018】
カメラ11は、車両に搭載され、車両の後方領域を撮像して撮影画像23aを生成する撮像手段の一部であって、この後方領域を広範囲に亘って撮像できるよう、たとえば160度程度、又はそれ以上の画角を備えている。カメラ11は、車両の後部バンパーよりも上方に、車両の後方を向けて設置されている。カメラ11の撮影方向の方角は、車両の前後方向に沿っている。また、この撮影方向は、仰角を有し、後方領域の地面側に向けられている。カメラ11は、撮像した後方領域の映像を、アナログ方式の映像送信規格の一つであるNTSC方式で出力する。
【0019】
デコーダ14は、撮像手段の一部であって、カメラ11からのアナログ方式の映像信号(出力信号)を、デジタル方式の情報に変換できる集積回路である。具体的には、デコーダ14は、カメラ11から入力された映像信号を、デジタル方式の画像信号に変換する。このようにデコーダ14で生成された後方画像に基づく画像信号は、描画装置13に連続的に出力される。デコーダ14によって変換された画像信号は、描画装置13を介して、メモリ15および演算装置16に入力される。
【0020】
ソナー17は、車両の後退を妨げる障害物20を検出する障害物検出手段であって、障害物20となる立体物等と自車両との距離も検出する。ソナー17は、例えば超音波センサであって、車両の後部バンパーに、車両の横方向に所定の間隔を開けて並べられている。ソナー17は、超音波の送波および受波する部分が後部バンパーから露出するよう、この後部バンパー内に埋め込まれている。ソナー17は、車両の駐車時にリバースポジションにギアが入り後方に移動していくときに、駐車スペース近傍に設置されている障害物20、たとえばタイヤ止め、縁石、柵、および壁などを検出する。ソナー17は、演算装置16と接続されており、当該演算装置16に作動が制御されている。ソナー17は、演算装置16からの指令に基づいて、車両の後方領域を走査する。ソナー17の検出範囲内に障害物20が存在している場合、障害物20を検出した信号とともに、ソナー17から障害物20までの距離に対応した検出結果が、演算装置16に出力される。
【0021】
車両移動量検出部18は、車両が移動した距離を車輪の回転数から検出し、そのときの車両の回転方向をステアリング角から検出し、検出した移動量を示す信号を演算装置16に送信する。これらの移動量および回転量は、画像を俯瞰変換し、その過去の画像と現在の画像をマッチングして演算することから求めてもよい。
【0022】
車両状態検出部19は、車両の様々な状態を示す検出信号を受信するが、ここでは少なくとも、トランスミッションのシフト位置を示す信号を受信し、演算装置16に送信する機能を有する。また車両状態検出部19は、ステアリング角度検出手段として機能し、車両のステアリング角度を検出して、ステアリング角度に基づく信号を演算装置16に送信する。ステアリング角度を検出する方法は、たとえばメカニカルな複数のギアを備え、各ギアの回転数に基づいて自車両のステアリングの操舵角であるステアリング角度を検出する方法があり、他の方法として、赤外線およびレーザを利用してステアリング角度を検出する方法などがある。
【0023】
メモリ15には、不揮発性の半導体メモリの一種であるフラッシュメモリが用いられている。メモリ15には、障害物を検出したことを示す障害物画像30を画像上に描画するために要する画像信号が予め記憶されている。障害物画像30は、ソナー17の検出範囲を模擬した扇状の画像である。またメモリ15は、描画装置13と通信を行うようになっている。メモリ15は、描画装置13からの求めに応じて、この障害物画像30に基づく画像信号を描画装置13に取得させる。
【0024】
またメモリ15は、デコーダ14から送られる画像信号を保存する記憶手段であり、カメラ11によって撮影された過去の画像信号を履歴データとして記憶する。またメモリ15には、車両の移動とともに後述する演算装置16による演算結果が保存され、蓄積される。
【0025】
またメモリ15には、予め車両の後部画像21に基づく画像信号を記憶している。車両の後部画像21は、撮影画像23aに対して正確な位置関係となるように描画された画像である。メモリ15に予め記憶されている車両の後部画像21は、車両の後部バンパー等を含む画像であり、ここでは一例として、車両上方の所定位置に設定された所定の視点から見たときのコンピュータグラフィックスによって作成された画像(以下、車両のCG21ともいう)を用いる。
【0026】
演算装置16は、車両移動量検出部18、車両状態検出部19および描画装置13からの信号等を受信して所定の演算を実行し、その演算結果に基づく画像信号を描画装置13に出力する制御装置である。演算装置16は、図示はしないが、演算プログラム等が記憶されるロム(Read-Only Memory:略称ROM)と、演算の作業領域として機能するラム(Random Access Memory:略称RAM)と、を備えている。
【0027】
演算装置16は、メモリ15に記憶されているデコーダ14から送られた画像信号を読み込み、後述する白線検出方法によって路面表示物等(ここでは駐車枠としての白線)の存在を検出する。
【0028】
演算装置16は、検出された白線の座標に基づくデータを履歴データとしてメモリ15に保存させる。演算装置16による履歴データを用いた路上物体または路面表示物の検出方法は、様々な方法を採用することができる。演算装置16は、路面表示物の一例である駐車枠としての白線を検出する場合には、たとえば車両の移動とともにメモリ15に保存された過去画像に基づく画像信号から、明度分布を作成することにより白線の存在を検出する。
【0029】
また演算装置16は、車両状態検出部19からのステアリング角度に基づいて、ステアリング角度に応じた車両の走行予想進路を求める進路演算手段としても機能する。走行予想進路とは、自車両の車幅に対応する左右一対の軌跡であって、例えば自車両の進行方向側の左右輪(本実施形態の例では左右の後輪)の予想轍であってもよいし、自車両の車幅に沿った左右一対の軌跡であってもよい。走行予想進路の求め方については、周知の方法を用いて求める構成とすればよい。たとえば低速時(たとえば10km/h以下)に自車両後方の車軸の延長線上に存在する旋回中心O、およびステアリング角度θとホイールベースLとした場合にR=L/tanθという関係式により導かれる旋回半径Rをもとに、ステアリング角度に応じた走行予想進路を逐次求める構成とすればよい。また検出したステアリング角度および図示しない車輪速センサで検出した自車両の速度に基づいて自車両最外周の軌跡円弧を算出し、算出した軌跡円弧を、自車両の左後角部と右後角部との各々、もしくは自車両の左後輪と右後輪との各々を通るように配置することによって求める構成としてもよい。さらに、検出したステアリング角度および車輪速センサで検出した自車両の速度に基づいて自車両最外周の軌跡円弧および自車両最内周の軌跡円弧をそれぞれ算出することによって求める構成としてもよい。なお、走行予想進路は、検出したステアリング角度、車輪速センサで検出した自車両の速度、および図示しないヨーレートセンサで検出した自車両のヨーレートに基づいて求める構成としてもよい。
【0030】
描画装置13は、画像処理を行うプロセッサ、画像処理に用いられるプログラム等が格納されたROM、および演算の作業領域として機能するRAMを有しており、ディスプレイ12に表示される画像を描画する。描画装置13からの画像信号は、ディスプレイ12に連続的に出力される。描画装置13は、演算装置16と通信し、シフトレバーの位置がリバース位置にあるという情報を演算装置16から取得した場合には、履歴表示領域22および後方画像表示領域23を有する画像を描画する。後方画像表示領域23は、デコーダ14から連続的に出力される撮影画像23aを表示するための領域である。履歴表示領域22は、後方画像表示領域23に隣接し過去の履歴データを用いて作成された画像を表示するための領域である。
【0031】
描画装置13は、車両後方の撮影画像23a(生画像)を後方画像表示領域23に配置するようにディスプレイ12に出力し、さらに履歴データから抽出された車両後部周辺の路上物体または路面表示物と後部画像21とを履歴表示領域22に重畳してディスプレイ12に出力する。したがって描画装置13は、履歴表示領域22の画像と、後方画像表示領域23の画像とを合成する処理を経て、隣接する2つの領域の画像を一体にして、一体にした画像に基づく画像信号をディスプレイ12に出力する。
【0032】
ここで、路上物体は、ソナー17で検出した他車両、壁および歩行者などであり、路面表示物とは、車両が後方移動しようとするスペースに形成されている溝、段差、縁石などの障害物20、および白線等の駐車スペースを示す駐車枠等であって、車両後方周辺の目印となり得るものである。また、履歴表示領域22には、車両の車軸部分24の位置および車輪25の少なくとも一方が表示されていることが好ましい。図2および図3に示すように、後方画像表示領域23は画面上方に配置され、履歴表示領域22は後方画像表示領域23に隣接して画面下方に配置される。
【0033】
次に、履歴表示領域22に描画される画像に関して説明する。描画装置13は、後方画像表示領域23の撮影画像23aの歪みを履歴表示領域22の画像に与え、抽出された路上物体または路面表示物を、後方画像表示領域23に表示されている路上物体または路面表示物28に対して連続して表示されるように履歴表示領域22に描画する。
【0034】
描画装置13は、予めメモリ15に記憶された車両のCG21に基づく画像信号を読み出し、履歴表示領域22に前述の所定の視点からみた後部画像21を描画する。この描画の際には、車両のCG21に対して、後方画像表示領域23の撮影画像23aの歪みと同様の歪みを与え、敢えて車両のCG21を歪ませて描画する。また描画装置13は、メモリ15に保存した白線26(路面表示物28等)に基づく画像信号を読み出し、履歴表示領域22に、所定の視点からみた白線26を描画する。この描画では、車両のCG21と同じ位置の所定の視点で公知の視点変換を行い、さらに、白線26に対して後方画像表示領域23の撮影画像23aの歪みと同様の歪みを与え、車両のCG21と同様に敢えて歪ませた白線26を描画する。
【0035】
このようにして図2に示すように、後方画像表示領域23の白線26を含む撮影画像23aと、履歴表示領域22の白線27とが2つの領域の境界部において連続して表示されるようになる。このとき履歴表示領域22の白線27は、後方画像表示領域23の白線26に対して後方画像表示領域23との境界位置でほぼ同じ太さ、同じ色彩で描画され、一致するように表示される。換言すれば、カメラ11の視野外に消えている車体周囲の白線27と、現在撮影されている車両後方の白線26とが、ディスプレイ12上に一体的に表示されるようになる。このように、運転者に対して、自車の正確な位置確認にとって有効な目印(白線27)を表した過去の画像と、現在の画像とをその境界部を明確に表示しつつ、一つの画像として違和感なく見せることができる。したがって、運転者は、車体、車体周囲に描画した路面表示物28、および現在の後方画像の位置関係を明確かつ正確に把握することができる。
【0036】
また描画装置13は、演算装置16によって演算された走行予想進路に基づく進路画像29を、後方画像表示領域23の撮影画像23aに重畳して表示するように制御する。進路画像29は、撮影画像23a上で車両の後退方向に延び、車両の車幅に対応した幅を有する帯状の画像である。
【0037】
ディスプレイ12は、たとえば液晶ディスプレイで構成され、ハンドルの前方、またはダッシュボードの中央部に配置された車両の計器表示盤の一部に配置される。また、ディスプレイ12は、ダッシュボードのフロントガラスに近い側に配置してもよい。この構成によれば、運転者は、視線をハンドル寄りの手前に向けることなく、車両前方を見るような楽な状態で、後方画像を視認することができる。また、ディスプレイ12は、ダッシュボード上であって車幅方向中央部に起立した姿勢で配置してもよく、カーナビゲーション装置の液晶ディスプレイ上に配置するようにしてもよい。
【0038】
ディスプレイ12は、描画装置13からの画像信号を取得し、運転者が視認できるよう表示する。ディスプレイ12には描画装置13から連続的に画像信号が出力されているので、ディスプレイ12は画像を連続的に表示する。これによりディスプレイ12は、運転者に後方領域の状況を動画として表示することができる。
【0039】
次に、後方駐車時の車両後方表示装置10の動作について図4を用いて説明する。図4は、演算装置16によって実行されるフローチャートである。図4のフローチャートは、車両後方表示装置10の作動を制御する制御装置である演算装置16によって実行される。
【0040】
図4のフローチャートは、演算装置16に電源が投入されるとスタートし、ステップ1に移る。ステップ1では、ディスプレイ12に車両後方画像以外の通常時の画像が表示するように描画装置13を制御し、ステップ2に移る。車両後方画像以外の通常時の画像は、たとえば地図画像、経路を案内する画像およびオーディオの状況を示す画像などである。
【0041】
ステップ2では、車両状態検出部19でトランスミッションのシフト位置がリバースポジションである信号を受信したか否かを判定し、リバースポジションを示す信号を受信するまでステップ2を繰り返す。ステップ2でリバースポジションを示す信号を受信すれば、ステップ3に移る。
【0042】
ステップ3では、ステップ2で車両が後方移動する信号を受信してから、履歴表示領域22および後方画像表示領域23に所定の画像を描画するように描画装置13を制御し、ステップ4に移る。したがってステップ3にて、ディスプレイ12にはリアルタイムの後方画像表示領域23に表示される撮影画像23aとこの画像と連続的に描画された履歴表示領域22に表示される画像とが継続して表示される(図2参照)。
【0043】
ステップ4では、後方画像表示領域23の撮影画像23aに重畳して車両の予想進路線を示す進路画像29を描画するように制御し、ステップ5に移る。予想進路線は、車幅およびハンドルの舵角に基づき、後退する車両の走行軌跡を予想した指標である。進路画像29は、理解を容易にするため図2で斜線を施して示す領域であり、予想進路線に沿って帯状に、路面色とは異なる色で半透明で描画されており、運転者は容易に判別可能である。また進路画像29は、遠近法によって、その帯状の幅が後退方向に車両50から離れるにつれて、小さくなる。
【0044】
ステップ5では、ソナー17によって障害物20が検出されたか否かを判定し、障害物20を検出した場合には、ステップ6に移り、検出していない場合には、ステップ8に移る。またステップ5では、障害物20の有無ではなく、障害物20と車両との距離が所定距離以下になったか否かを判断してもよい。
【0045】
ステップ6では、ソナー17によって障害物20が検出されるか、検出される障害物20との距離が所定距離以下になったので、ディスプレイ12の画面を広域画像から狭域画像に切り替える(たとえば、図2の広域画像から図3の狭域画像への画面表示の切り替え)ようにし、さらに進路画像29を描画せずに進路画像29の表示を停止し(進路画像29を非表示)、障害物画像30を表示するように描画装置13を制御し、ステップ7に移る。したがってディスプレイ12の後方画像表示領域23には、進路画像29がなく障害物画像30を表示した狭域画像が表示される。このような狭域画像(拡大画像)は、撮影画像23aの一部を切り出し、切り出した画像を拡大表示することによって描画装置13が作成している。
【0046】
ステップ7では、リバースポジションのシフト位置が解除(OFF)されたか否かを判定し、解除された場合には、ステップ1に戻り、解除されていない場合には、ステップ6に戻る。したがってシフト位置が解除(OFF)されるまで、ステップ6による処理が繰返され、障害物画像30が狭域画像に表示される。
【0047】
ステップ8では、ソナー17によって検出される障害物20との距離が所定距離以下になっていないので、リバースポジションのシフト位置が解除(OFF)されたか否かを判定し、解除された場合には、ステップ1に戻り、解除されていない場合には、ステップ3に戻る。したがって引き続き画像処理(ステップ3)を実行することにより、車両の移動量に応じて、リアルタイムの後方画像表示領域23の撮影画像23aに対して連続的につながって表示される履歴表示領域22の画像を描画し、描画した画像をディスプレイ12上の履歴表示領域22に出力し続ける。
【0048】
したがってステップ7またはステップ8にて、リバースポジションのシフト位置が解除されたと判定されるまで、ディスプレイ12にはリアルタイムの後方画像表示領域23の撮影画像23aとこの画像と連続的に描画された履歴表示領域22の画像と障害物画像30または進路画像29が継続して表示される。駐車が完了するとイグニッションスイッチがOFFされるので、演算装置16への電源OFFとともに本フローチャートは終了する。
【0049】
このように演算装置16は、シフトレバーの位置がリバース位置に切り替えられたという信号を車両状態検出部19から取得すると、ソナー17を作動させ、障害物20の検出を開始させるとともに、障害物20がソナー17によって検出された場合、障害物画像30を表示し、進路画像29を非表示にするように描画装置13を制御する。
【0050】
以上説明したように本実施形態の車両後方表示装置10は、障害物検出手段であるソナー17が障害物20を検出した場合には、進路画像29を表示を停止し、障害物20を検出したことを示す障害物画像30を撮影画像23aに重畳して表示するように表示制御手段である演算装置16および描画装置13によって表示器であるディスプレイ12が制御される。進路画像29を非表示にすることによって走行予想進路がわからなくなるが、車両の進行を妨げる障害物20がある場合には、進路画像29を表示する必要性が低いので、障害物20を検出したことの方が進路画像29を表示することよりも優先すべき事項である。このように優先度の低い進路画像29を非表示にし、優先すべき障害物画像30を表示することによって、障害物画像30を視認しやすくすることができる。また障害物20が検出されるまでは進路画像29が表示されるので、運転者は障害物20がないことを認識した上で、視認しやすい進路画像29に基づいて運転をすることができる。このように本実施形態の車両後方表示装置10によって、障害物画像30および進路画像29を視認しやすく表示することができる運転支援装置を提供することができる。
【0051】
さらに本実施形態では、進路画像29は、撮影画像23a上において車両の進行方向である後退方向に延び、車両の車幅に対応した幅を有する帯状の画像である。車幅に対応した帯状の画像であるので、後退方向の延びた単なる線だけの進路画像よりも、走行予想進路をより認識しやすくなる。帯状の進路画像29であると、障害物画像30を重畳した場合には進路画像29が視認しにくくなるが、本実施形態では障害物画像30を表示する際には進路画像29は非表示にするので、視認しにくくなることを防止することができる。これによって進路画像29をさらに視認しやすくすることができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図5を用いて説明する。図5は、第2実施形態における車両の動作とディスプレイ12に表示される画像とを示す図である。本実施形態では、ディスプレイ12に表示される画像が第1実施形態とは異なる。
【0053】
図5に示すように、本実施形態では、カメラ11の画像を単に表示するのではなく、車両後退時に、車両50の4方に設けられたカメラ(図示せず)が撮影し生成した画像を座標変換することにより、車両50の上方に想定される仮想視点から見た鳥瞰図画像40を生成して表示する。図5では、仮想線で示す長方形領域41内の画像が、その長方形領域41の長辺がディスプレイ12の上下方向に沿った状態でディスプレイ12に表示される。演算装置16は、車両50の四方の4つのカメラおよびデコーダ14が生成した画像をそれぞれ幾何変換によって鳥瞰図画像40に変換し、4つの画像を合成して車両50の全周の鳥瞰図画像40をディスプレイ12に表示させている。これによって車両50の全周の状況を上空から見た映像として運転者に提示することができる。
【0054】
図5に示すように、演算装置16は、車両50の駐車時における白線26へのアプローチおよび切り戻しのときには鳥瞰図画像40に進路画像29を重畳し、障害物20(図5で斜線を施して示す)を検出した場合には、進路画像29を非表示にし、障害物画像30を表示するように描画装置13を制御している。このような鳥瞰図画像40をディスプレイ12に表示する場合であっても、障害物画像30を非表示にすることによって、前述の第1実施形態と同様の作用および効果を達成することができる。
【0055】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0056】
前述の第1実施形態では、運転支援装置の一例として車両後方表示装置10を説明しているが、この形態に限定されるものではない。例えば、駐車等のスペースに向けて車両前方から前進する場合に、車両周辺として車両の前方領域が表示される形態の運転支援装置であってもよい。
【0057】
前述の第1実施形態では、駐車時にディスプレイ12に表示される画像は、1つのカメラ11によって撮像される画像であるが、第2実施形態のように複数のカメラによって撮像した画像を組み合わせて表示するようにしてもよい。撮像手段としての構成は、カメラ11に限定されるものではなく、種々の撮像手段を用いることができる。
【0058】
前述の第1実施形態では、画像を表示する表示器として液晶ディスプレイ12を例に説明したが、液晶ディスプレイ12に限るものではなく、カメラ11による画像を表示可能なものであればよく、たとえば、有機電解発光(Electroluminescence:略称EL)パネルおよびプラズマパネル等を用いてもよい。
【0059】
前述の第1実施形態では、進路画像29は帯状の画像であるが、このような画像に限るものではなく、線だけで表示してもよく、マークだけで表示してもよい。また進路画像29は、帯状ではあるが、その幅は一定であってもよく、また帯状の色彩も半透明でなく、非透明の色彩を施しても良い。また障害物画像30は、第1実施形態ではソナー17の検出範囲を模擬した画像であるが、このような画像に限るものではなく、障害物20を表示するために画面全体を赤くする障害物画像であってもよく、障害物20そのものを模擬した画像であってもよい。
【0060】
前述の第1実施形態では、車両が後退するときに、自動的に車両の後方を表示する車両後方表示装置10であったが、自動的に表示する構成に限るものではなく、運転者が操作するスイッチ、たとえばハザードスイッチによって車両の後方を表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…車両後方表示装置(運転支援装置)
11…カメラ(撮像手段)
12…ディスプレイ(表示器)
13…描画装置(表示制御手段)
14…デコーダ(撮像手段)
15…メモリ
16…演算装置(表示制御手段、進路演算手段)
17…ソナー(障害物検出手段)
18…車両移動量検出部
19…車両状態検出部(ステアリング角度検出手段)
20…障害物
23a…撮影画像
29…進路画像
30…障害物画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の外界領域を撮影し撮影画像を生成する撮像手段と、
前記撮像手段によって生成された撮影画像を表示する表示器と、
前記車両のステアリング角度を検出するステアリング角度検出手段と、
前記ステアリング角度検出手段によって検出された前記ステアリング角度に応じた前記車両の走行予想進路を求める進路演算手段と、
前記車両の進行を妨げる障害物を検出する障害物検出手段と、
前記進路演算手段によって求められた前記走行予想進路を示す進路画像を、前記撮影画像に重畳して前記表示器に表示させる表示制御手段と、を含み、
前記表示制御手段は、前記障害物検出手段が前記障害物を検出した場合には、前記進路画像の表示を停止し、前記障害物を検出したことを示す障害物画像を前記撮影画像に重畳して表示するように前記表示器を制御することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記進路画像は、前記撮影画像上において前記車両の進行方向に延び、前記車両の車幅に対応した幅を有する帯状の画像であることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、前記車両後方の外界領域を撮影し、
前記障害物検出手段は、前記車両の後退を妨げる前記障害物を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−23505(P2012−23505A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159032(P2010−159032)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】