説明

過分極薬剤に対する代謝MR撮像のためのシステム及び方法

【課題】過分極薬剤に対する代謝MR撮像のためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】過分極薬剤に対する代謝MR撮像のための方法は、関心対象物に注入された過分極した薬剤の単一代謝化学種を励起させる工程(128)を含む。励起させた単一代謝化学種からMR信号を収集(130)し、収集したこのMR信号から画像を再構成(140)する。本発明の一態様で提供されるMRI装置は、偏向磁場を印加するようにマグネットのボアの周りに位置決めされた複数の傾斜コイルを有するMRIアセンブリを含む。RF送受信器システム及びRFスイッチは、MR画像を収集させるRF信号をRFコイルアセンブリに対して送受信するようにパルスモジュールによる制御を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的にはMR撮像に関し、さらに詳細には、過分極薬剤に対する代謝MR撮像に関する。
【背景技術】
【0002】
人体組織などの物質を均一な磁場(偏向磁場B)にかけると、組織中のスピンの個々の磁気モーメントはこの偏向磁場と整列しようとして、この周りをラーモアの特性周波数によってランダムな秩序で歳差運動することになる。この物質や組織に、x−y平面内にありラーモア周波数に近い周波数の磁場(励起磁場B)がかけられると、正味の整列モーメント(すなわち、「縦磁化」)Mは、x−y平面内に来るように回転させられ(すなわち、「傾けられ(tipped)」)、正味の横方向磁気モーメントMが生成される。励起信号Bを停止させた後、励起したスピンにより信号が生成され、さらにこの信号を受信し処理して画像を形成することができる。
【0003】
これらの信号を用いて画像を作成する際には、磁場傾斜(G、G及びG)が利用される。典型的には、撮像しようとする領域は、使用する具体的な位置特定方法に従ってこれらの傾斜を変更させている一連の計測サイクルによりスキャンを受ける。受け取ったNMR信号の組は、ディジタル化されると共に、よく知られている多くの再構成技法のうちの1つを用いて画像再構成される。データ収集から再構成までの撮像過程は、患者の快適性及びスループットを向上させるためにできる限り迅速に実施することが望ましい。
【0004】
幾つかの手技及び検査では、空間情報に加えてMR画像にスペクトル情報も表示させることが望ましい。空間情報とスペクトル情報の両方を包含するMR信号を収集しMR画像を再構成するための周知の方法の1つは「化学シフト撮像」(CSI)と呼ばれるものである。CSIは、患者の代謝過程その他の内部過程を監視するために利用されてきており、13Cラベル付けした造影剤及びその代謝産物などの過分極物質の撮像を含む。しかし過分極薬剤の注入後では、撮像が困難なタスクとなる。薬剤の過分極は限られた寿命を有しており、その撮像は迅速に実施しなければならない。例えば過分極した薬剤の典型的なT1寿命はインビボにおいて概ね数分である。さらに、パルスシーケンスのRF励起は過分極を不可逆的に破壊することがある。
【0005】
CSI法は、利用可能な信号対雑音比を制限する(またしたがって、画質を制限する)ような幾つかの欠点を有する。例えばCSIは、過分極させた物質の磁化増大に関する短寿命を考慮するとデータの収集が低速となる傾向がある。さらにCSIでは、撮像対象を多数のRF励起に曝露させるのが典型的である。過分極薬剤の磁化は限られた寿命を有しておりかつCSIシーケンスのRF励起によって破壊されるため、これらの特性は過分極薬剤にとって特に好ましくない。このため、利用可能な磁化をCSI法が完全に利用することができず、これによって信号対雑音比(SNR)が低下する。
【0006】
さらに、心臓撮像や心臓の代謝撮像など極めて高速のデータ収集や周期的なデータ収集が要求されるMR手技では、CSIは16×16マトリックスについて要する時間が15秒間を超える可能性があるためCSIシーケンスによる実施は困難である一方、心臓撮像及び関連する代謝撮像は数心拍数または数秒間以内に完了させるすべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、過分極薬剤のうちのある代謝化学種について、その他周波数における代謝化学種の磁化に影響を及ぼすことなく励起しかつ撮像することが可能なシステム及び方法があることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、上述の欠点を克服したMRのシステム及び方法を提供する。関心対象物に注入された過分極した薬剤のうちの単一の代謝化学種が励起され、励起されたこの単一代謝化学種からのMR信号が収集される。この収集MR信号から画像が再構成される。
【0009】
したがって本発明の一態様では、MRI装置は、偏向磁場を印加するようにマグネットのボアの周りに位置決めされた複数の傾斜コイルを有するMRIアセンブリを含む。RF送受信器システム及びRFスイッチは、MR画像を収集させるRF信号をRFコイルアセンブリに対して送受信するようにパルスモジュールによる制御を受ける。本MRI装置はさらに、MRIアセンブリと結合させたシステム制御器であって、RFコイルアセンブリに対して関心対象物に注入された過分極した薬剤の単一代謝化学種を励起させるように構成されたシステム制御器を含む。このシステム制御器はRF送受信器システムに対してさらに、励起させたこの単一代謝化学種からMR信号を収集すること、並びにこの収集MR信号から画像を再構成させることを行わせている。
【0010】
本発明の別の態様では、過分極薬剤MR撮像の方法は、関心対象物内に過分極薬剤を注入する工程と、過分極薬剤の第1の代謝化学種を励起する工程と、を含む。本方法はさらに、励起させた該第1の代謝化学種からMR信号を収集する工程と、該収集したMR信号から画像を再構成する工程と、を含む。
【0011】
本発明のまた別の実施形態では、コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータにより実行したときに該コンピュータに対して、パルスシーケンスの複数のフリップ角トレインRFパルスを変調させる命令をその上に保存して有するコンピュータプログラムを含む。この命令はコンピュータに対してさらに、複数の分子からMRデータを収集させると共にこのMRデータから画像を作成させている。
【0012】
別の様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面では、本発明を実施するために目下のところ企図される実施形態を図示している。
【0014】
図1を参照すると、本発明の実施形態を組み込める好ましい磁気共鳴撮像(MRI)システム10の主要コンポーネントを表している。このシステムの動作は、キーボードその他の入力デバイス13、制御パネル14及び表示画面16を含むオペレータコンソール12から制御を受けている。コンソール12は、オペレータが画像の作成及び表示画面16上への画像表示を制御できるようにする単独のコンピュータシステム20と、リンク18を介して連絡している。コンピュータシステム20は、バックプレーン20aを介して互いに連絡している多くのモジュールを含んでいる。これらのモジュールには、画像プロセッサモジュール22、CPUモジュール24、並びに当技術分野でフレームバッファとして知られている画像データアレイを記憶するためのメモリモジュール26が含まれる。コンピュータシステム20は、画像データ及びプログラムを記憶するためにディスク記憶装置28及び着脱可能記憶装置30とリンクしており、さらに高速シリアルリンク34を介して単独のシステム制御部32と連絡している。入力デバイス13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ作動スクリーン、光学読取り棒、音声制御器、あるいは同様な任意の入力デバイスや同等の入力デバイスを含むことができ、また入力デバイス13は対話式幾何学指定のために使用することができる。
【0015】
システム制御部32は、バックプレーン32aにより互いに接続させたモジュールの組を含んでいる。これらのモジュールには、CPUモジュール36や、シリアルリンク40を介してオペレータコンソール12に接続させたパルス発生器モジュール38が含まれる。システム制御部32は、実行すべきスキャンシーケンスを指示するオペレータからのコマンドをこのリンク40を介して受け取っている。パルス発生器モジュール38は、各システムコンポーネントを動作させて所望のスキャンシーケンスを実行させ、発生させるRFパルスのタイミング、強度及び形状、並びにデータ収集ウィンドウのタイミング及び長さを指示するデータを発生させている。パルス発生器モジュール38は、スキャン中に発生させる傾斜パルスのタイミング及び形状を指示するために1組の傾斜増幅器42と接続させている。パルス発生器モジュール38はさらに、生理学的収集制御器44から患者データを受け取ることができ、この生理学的収集制御器44は、患者に装着した電極からのECG信号など患者に接続した異なる多数のセンサからの信号を受け取っている。また最終的には、パルス発生器モジュール38はスキャン室インタフェース回路46と接続されており、スキャン室インタフェース回路46はさらに、患者及びマグネット系の状態に関連付けした様々なセンサからの信号を受け取っている。このスキャン室インタフェース回路46を介して、患者位置決めシステム48はスキャンのために患者を所望の位置に移動させるコマンドを受け取っている。
【0016】
パルス発生器モジュール38が発生させる傾斜波形は、Gx増幅器、Gy増幅器及びGz増幅器を有する傾斜増幅器システム42に加えられる。各傾斜増幅器は、収集した信号の空間エンコードに使用する磁場傾斜を生成させるように全体を番号50で示す傾斜コイルアセンブリ内の物理的に対応する傾斜コイルを励起させている。傾斜磁場コイルアセンブリ50は、偏向マグネット54及び全身用RFコイル56を含むマグネットアセンブリ52の一部を形成している。システム制御部32内の送受信器モジュール58は、RF増幅器60により増幅を受けて送信/受信スイッチ62によりRFコイル56に結合されるようなパルスを発生させている。患者内の励起された原子核が放出して得られた信号は、同じRFコイル56により検知し、送信/受信スイッチ62を介して前置増幅器64に結合させることができる。増幅したMR信号は、送受信器58の受信器部分で復調され、フィルタ処理され、さらにディジタル化される。送信/受信スイッチ62は、パルス発生器モジュール38からの信号により制御し、送信モードではRF増幅器60をコイル56と電気的に接続させ、受信モードでは前置増幅器64をコイル56に接続させている。送信/受信スイッチ62によりさらに、送信モードと受信モードのいずれに関しても単独のRFコイル(例えば、表面コイル)を使用することが可能となる。
【0017】
RFコイル56により取り込まれたMR信号は送受信器モジュール58によりディジタル化され、システム制御部32内のメモリモジュール66に転送される。未処理のk空間データのアレイをメモリモジュール66内に収集し終わると1回のスキャンが完了となる。この未処理のk空間データは、各画像を再構成させるように別々のk空間データアレイの形に配置し直しており、これらの各々は、データをフーリエ変換して画像データのアレイにするように動作するアレイプロセッサ68に入力される。この画像データはシリアルリンク34を介してコンピュータシステム20に送られ、コンピュータシステム20において画像データはディスク記憶装置28内などの記憶装置内に格納される。この画像データは、オペレータコンソール12から受け取ったコマンドに応じて、着脱可能記憶装置30上などの長期記憶内にアーカイブしたり、画像プロセッサ22によりさらに処理してオペレータコンソール12に伝達しディスプレイ16上に表示させたりすることができる。
【0018】
本明細書では、低フリップ角を有するtrueFISP法(true fast imaging with steady precession)パルスシーケンスについて記載している。本明細書で使用する場合、低フリップ角とは15°未満のフリップ角のことである。以下に記載するように、低フリップ角をtrueFISPパルスシーケンスと連係して使用することによって、13Cなどの過分極薬剤の単一代謝産物に関して、その他の代謝産物の磁化に対する悪影響を最小限にしながらの励起及びMRデータ収集が可能となる。これによって、過分極薬剤の磁化の全体を画像作成のために利用することが可能である。すなわち定常状態プロトン撮像において、プロトンの緩和時間は比較的短いため信号はMの概ね25%になる。これに対して、13Cの緩和時間はかなり長いため、以下に示すようにMの100%に近い極大信号をもつ過渡応答に到達することが可能である。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態によるtrueFISPシーケンス70のパルスシーケンス図を表している。trueFISPシーケンス70はフル平衡型定常状態自由歳差運動(steady−state free precession:SSFP)シーケンスである。trueFISPシーケンス70は、読み取り方向すなわち周波数方向の平衡型傾斜72と、RFパルス76、78間に印加される位相方向の平衡型傾斜74と、を含む。読み取り傾斜80の間に、1本のk空間線を満たす1つの信号82が収集される。
【0020】
trueFISPパルスシーケンス70は、その信号82がTR間隔(すなわち、連続するRF励起間の時間)中のスピンの位相累積に依存するという特徴をもつ。完全にオンレゾナンスとしたスピンではこの位相累積はゼロであるが、オフレゾナンスのスピンではこれが非ゼロとなることになる。図3に示すように、定常状態において熱平衡スピンの90°フリップ角をもつtrueFISPパルスシーケンスでは、位相累積が±2n・π(n=0,1,2...)のときに極大信号84が得られており、また位相累積がπ±2n・π(n=0,1,2...)のときに極小信号86が得られる。再構成されたtrueFISP画像内において、これらの信号極小値は暗い縞として視認することができる。オフレゾナンスは、B0磁場の不均一性、すなわち化学シフトに起因することがある。
【0021】
しかし図4に示すように、trueFISPシーケンス70(図2参照)のフリップ角が低フリップ角(例えば、1°)に設定されている場合、図3の場合と反対の結果が得られる。フリップ角を1°に設定すると、位相累積がπ±2n・π(n=0,1,2...)のときには極大信号88が、また位相累積が±2n・π(n=0,1,2...)のときには極小信号90が得られる。したがって信号88は、図3に示した信号について信号極小値が見出される場所である同じ位置にある位相シフト範囲から得られる。
【0022】
図5は、低フリップ角1°に設定したtrueFISPシーケンス70(図2参照)に関する縦磁化92(Mz)を表している。縦磁化92の受ける影響は励起バンド94の外部で最小となる。このため、過分極した物質を用いた用途においてその他の代謝産物からの磁化が保全されることになる。励起バンド94の位置は、RFパルスの位相サイクルを変化させることによって位相=±πから任意の位置まで移動させることができる。励起プロフィールの幅は、1°のフリップ角では概ね0.15°の位相累積である。TR=2msであれば、0.15°の位相累積は13Cについて1.5Tで概ね12Hzのスペクトル幅(すなわち、0.75ppm)と解釈される。フリップ角を変更することによってさらに励起プロフィールの幅を修正することができる。
【0023】
図6は、本発明の一実施形態によるRFパルス振幅変調包絡線96を表している。RFパルス振幅変調包絡線96は、trueFISPシーケンス70(図2参照)のフリップ角を図4の信号を収集するように設定するための一定の変調包絡線である。図4に関して上で検討したのと同様に図6に示すように、trueFISPシーケンス70(図2参照)のフリップ角は、総フリップ角を90°〜180°の範囲とした一定の低いフリップ角(例えば、1°など)に設定されることがある。しかしこの低フリップ角は1°より大きくすることや小さくすることがあることが企図される。
【0024】
過分極スピンの挙動は熱平衡にあるスピンの挙動と異なっている。過渡フェーズの後で、熱平衡スピンはその信号(横方向磁化)が典型的にはMの20%〜50%において平準化された定常状態に到達する。しかしスピンが過分極されておりその緩和時間がスキャンの所要時間と比べて長いときは、定常状態に到達しない。この場合には、RFパルスが開始位置からz軸に沿ってxy面まで下がることによってその磁化が徐々に傾けられることになる。
【0025】
図7は、1TR当たりの位相シフト及びRFパルス数の関数とした過分極スピンからのtrueFISP信号98を表している。trueFISP信号98はフリップ角1°を用いて収集しており、またその磁化は第1のパルス前ではz軸と整列している。trueFISP信号98はさらに、TR=2.5ms、T=30s、及びT=2sを用いて収集している。極大信号100(すなわち、第90番目のRFパルスの後の信号)はMに等しいことが理解できよう。したがって、低フリップ角であっても過分極信号の全体を利用することができる。
【0026】
図8は、本発明の別の実施形態によるパルスシーケンス変調包絡線102を表している。パルスシーケンス変調包絡線102は、trueFISPシーケンス70のフリップ角(図2参照)が総フリップ角が90°〜180°の範囲となるような設定に対応したガウス形状の変調包絡線である。好ましい一実施形態では、極大値パルス105は5°と15°の間のフリップ角を有する。
【0027】
図9は、図8のパルスシーケンス変調包絡線102に従ったパルスシーケンスを表している。RFパルス104はガウス形状変調包絡線102に従って変調を受けており、さらにまた位相傾斜パルス106、読み取り傾斜パルス108、及びスライスエンコード傾斜パルス110が決定されている。
【0028】
図8に示したガウス形状変調包絡線102以外に、その他の変調包絡線形状も可能であることが企図される。例えば図10は、sinc関数の形状を有するRFパルス変調包絡線112を表している。図11は、図10のパルスシーケンス変調包絡線112に従ったパルスシーケンスを表している。RFパルス113は、総フリップ角が90°〜180°の範囲となるようにsinc関数変調包絡線112の形状に従って変調を受けている。好ましい一実施形態では、極大値パルス114は5°と15°の間のフリップ角を有する。
【0029】
図12〜14は、RFフリップ角の振幅変調が異なるtrueFISPシーケンスに関する周波数選別性を表している。図12〜14に示した信号115、116、118のそれぞれは、ハイエンドな臨床MRスキャナ上での13C撮像に関して可能な最短TRについて表すことを前提とした2.5msの反復時間(TR)に関して計算したものである。TRをさらに短くできれば、図12〜14の励起はさらに広い周波数レンジをカバーすることになる。さらに、位相エンコードが96ステップでありかつ総フリップ角が120°であるシーケンスに関して計算を実施している。図12〜14に示した信号応答は、48個のRFパルスの後(すなわち、k空間の中心)において線形位相エンコードスキームを用いて表している。
【0030】
図12は、1.3°のフリップ角において一定のRF振幅とすると、妥当に均一な信号強度に関する使用可能周波数レンジは1.5Tにおいて概ね5Hz(すなわち、概ね1/3ppm)であることを表している。図13は、ガウス振幅変調では、妥当に均一な信号強度に関する使用可能周波数レンジは図12に示した使用可能周波数レンジの概ね2倍であることを表している。図14は、sinc関数変調では、妥当に均一な信号強度に関する使用可能周波数レンジは1.5Tにおいて概ね30Hz(すなわち、概ね2ppm)であることを表している。
【0031】
図14に示すように、単一過分極薬剤代謝産物に対する撮像は、関心対象のその他の代謝産物が励起周波数レンジから十分な距離離れていれば、追加のシム処置を要することなく可能となる。さらに図12〜14に示した励起プロフィールの最適化は、k空間内の位置に関して変調プロフィールを調整することによって(例えば、k空間中心の通過と一致しないように変調プロフィールの極大値を調整することによって)実現することができる。
【0032】
ここで図15を参照すると、本発明の一実施形態による過分極薬剤撮像技法120を表している。技法120はブロック122において、修正型trueFISPパルスシーケンスのRFパルスシーケンスに関する低フリップ角変調スキームの決定で開始される。低フリップ角変調スキームの決定は、その決定を上述のような所望の周波数選別性に基づかせること、並びにシム処置すなわちB均一性に基づかせることを含む。低フリップ角変調スキームは、一定振幅包絡線、ガウス変調包絡線、sinc変調包絡線、その他に基づく。さらに、低フリップ角変調スキームの決定は、過分極造影剤に関する検討を含むことがある。好ましい一実施形態ではその過分極造影剤は13C原子核を含むが、14N、31P、19F及び23Naの原子核や別のNMR関連原子核などの別の過分極造影剤が使用されることもあることが企図される。
【0033】
ブロック122における低フリップ角変調スキームの決定に続いて、ブロック124において過分極造影剤の単一代謝化学種を励起するために修正型trueFISPパルスシーケンスの励起プロフィールが調整される。例えば、過分極13Cピルビン酸塩が撮像対象内に注入されることがあり、また13C炭酸水素塩原子核を励起するように励起プロフィールが調整されることがある。次いでブロック126において、過分極造影剤が撮像対象内に導入される。次にブロック128において、修正型trueFISPパルスシーケンスが所望の代謝化学種を励起させる。この励起は、薬剤の組織内への潅流が可能となるように(すなわち、薬剤が診断対象の臓器まで到達できるように)薬剤の導入後ある指定の時間だけ遅延させることがある。別法として、遅延期間は造影剤が代謝を受ける時間量に対応させることがある。次いでブロック130において、励起させた代謝化学種から信号が収集される。
【0034】
次いでブロック132において技法120は、信号を収集するために別の代謝化学種を励起すべきか否かを判定する。諾134であれば、ブロック136において別の代謝産物の原子核を励起するように励起プロフィールが調整される。所望であれば、ある代謝産物に関する変調スキームを別の代謝産物に関する変調スキームと区別するようにRFパルスシーケンスの変調スキームが調整されることもある。次いで技法120は、ブロック128及び130において上述したようなその他の代謝産物からの信号について励起及び収集を行う。否138であれば、ブロック140において収集した信号データに関してMR画像が再構成される。好ましい一実施形態では、収集した各代謝産物ごとに1枚の画像が再構成される。しかし、収集したすべての代謝産物に対して1枚の合成画像が再構成されることがあることも企図される。
【0035】
図16は、2°の一定フリップ角で収集したブタ心臓に対する例示的なインビボtrueFISP画像を表している。過分極させた13Cピルビン酸塩が静脈注入されると共に、ピルビン酸塩の共鳴周波数から160Hz離れている13C炭酸水素塩の共鳴周波数に合わせてその励起プロフィールを調整して画像が収集される。図16は、炭酸水素塩共鳴の周りにおいて9Hz周波数の離間により収集した連続する5枚の画像を加え合わせた像を表している。
【0036】
したがって本発明の一実施形態では、MRI装置は、偏向磁場を印加するようにマグネットのボアの周りに位置決めされた複数の傾斜コイルを有するMRIアセンブリを含む。RF送受信器システム及びRFスイッチは、MR画像を収集させるRF信号をRFコイルアセンブリに対して送受信するようにパルスモジュールによる制御を受ける。本MRI装置はさらに、MRIアセンブリと結合させたシステム制御器であって、RFコイルアセンブリに対して関心対象物に注入された過分極した薬剤の単一代謝化学種を励起させるように構成されたシステム制御器を含む。このシステム制御器はRF送受信器システムに対してさらに、励起させたこの単一代謝化学種からMR信号を収集すること、並びにこの収集MR信号から画像を再構成させることを行わせている。
【0037】
本発明の別の実施形態では、過分極薬剤MR撮像の方法は、関心対象物内に過分極薬剤を注入する工程と、過分極薬剤の第1の代謝化学種を励起する工程と、を含む。本方法はさらに、励起させた該第1の代謝化学種からMR信号を収集する工程と、該収集したMR信号から画像を再構成する工程と、を含む。
【0038】
本発明のまた別の実施形態では、コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータにより実行したときに該コンピュータに対して、パルスシーケンスの複数のフリップ角トレインRFパルスを変調させる命令をその上に保存して有するコンピュータプログラムを含む。この命令はコンピュータに対してさらに、複数の分子からMRデータを収集させると共にMRデータから画像を作成させている。
【0039】
本発明を好ましい実施形態に関して記載してきたが、明示的に記述した以外に等価、代替及び修正が可能であり、これらも添付の特許請求の範囲の域内にあることを理解されたい。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態と共に使用するためのMR撮像システムのブロック概要図である。
【図2】スライス傾斜を省略したtrueFISPシーケンスのパルスシーケンス図である。
【図3】図2のtrueFISPシーケンスの信号を一定のフリップ角90°をもつ連続する2つのRFパルス間の位相累積の関数として表したグラフである。
【図4】図2のtrueFISPシーケンスの信号を一定のフリップ角1°をもつ連続する2つのRFパルス間の位相累積の関数として表したグラフである。
【図5】図2のtrueFISPシーケンスの縦磁化を一定のフリップ角1°をもつ連続する2つのRFパルス間の位相累積の関数として表したグラフである。
【図6】本発明の一実施形態によるRFパルス振幅の変調包絡線を表した図である。
【図7】過分極スピンからのtrueFISP信号を1TR当たりの位相シフト及びRFパルス数の関数として表したグラフである。
【図8】本発明の一実施形態によるRFパルス振幅の別の変調包絡線を表した図である。
【図9】本発明の一実施形態による図8のパルスシーケンス変調包絡線を組み込んでいるパルスシーケンス図である。
【図10】本発明の一実施形態によるRFパルス振幅の別の変調包絡線を表した図である。
【図11】本発明の一実施形態による図10のパルスシーケンス変調包絡線を組み込んでいるパルスシーケンス図である。
【図12】本発明の一実施形態によるRFパルスの一定振幅を組み込んでいるtrueFISPシーケンスの周波数選別性のグラフである。
【図13】本発明の一実施形態によるRFパルス振幅のガウス変調包絡線を組み込んでいるtrueFISPシーケンスの周波数選別性のグラフである。
【図14】本発明の一実施形態によるRFパルス振幅のsinc変調包絡線を組み込んでいるtrueFISPシーケンスの周波数選別性のグラフである。
【図15】本発明の一実施形態による技法の各ステップを表した流れ図である。
【図16】本発明の一実施形態に従って収集した例示的な画像である。
【符号の説明】
【0041】
10 好ましいMRシステム
12 オペレータコンソール
13 キーボードその他の入力デバイス
14 制御パネル
16 表示画面
18 リンク
20 単独のコンピュータシステム
20a バックプレーン
22 画像プロセッサモジュール
24 CPUモジュール
26 メモリモジュール
28 ディスク記憶装置
30 テープ駆動装置
32 単独のシステム制御部
32a バックプレーン
34 高速シリアルリンク
36 CPUモジュール
38 パルス発生器モジュール
40 シリアルリンク
42 傾斜増幅器組
44 生理学的収集制御器
46 スキャン室インタフェース回路
48 対象位置決めシステム
50 傾斜コイルアセンブリ
52 マグネットアセンブリ
54 偏向マグネット
56 全身用RFコイル
58 送受信器モジュール
60 RF増幅器
62 送信/受信スイッチ
64 前置増幅器
66 メモリモジュール
68 アレイプロセッサ
70 trueFISPシーケンス
72 平衡型傾斜
74 平衡型傾斜
76 RFパルス
78 RFパルス
80 読み取り傾斜
82 信号
84 極大信号
86 極小信号
88 極大信号
90 極小信号
92 縦磁化
94 狭い励起バンド
96 パルスシーケンス変調包絡線
98 trueFISP信号
100 極大信号
102 パルスシーケンス変調包絡線
104 RFパルス
105 極大値パルス
106 位相傾斜パルス
108 読み取り傾斜パルス
110 スライスエンコード傾斜パルス
112 パルスシーケンス変調包絡線
114 信号
116 信号
118 信号
120 技法
122 低フリップ角変調スキームを決定する
124 励起プロフィールを調整する
126 過分極造影剤を導入する
128 所望の代謝化学種を励起する
130 信号を収集する
132 別の代謝化学種を励起するか?
134 諾
136 励起プロフィール/変調スキームを調整する
138 否
140 データを処理してMR画像を再構成する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏向磁場を印加するようにマグネット(54)のボアの周りに位置決めされた複数の傾斜コイル(56)を有する磁気共鳴撮像(MRI)アセンブリ(10)、並びにMR画像を収集させるRF信号をRFコイルアセンブリに送信するようにパルスモジュール(38)による制御を受けるRF送受信器システム(58)及びRFスイッチ(62)と、
前記MRIアセンブリ(10)と結合させたシステム制御器(32)であって、
前記RFコイルアセンブリ(50)に対して関心対象物に注入された過分極した薬剤の単一代謝化学種を励起させること(128)、
RF送受信器システム(58)に対して前記励起させた単一代謝化学種からMR信号を収集させること(130)、
収集したMR信号から画像を画像再構成すること(140)、
を行わせるように構成されたシステム制御器(32)と、
を備えるMRI装置。
【請求項2】
コンピュータに対して単一代謝化学種を励起(128)させる前記命令は、コンピュータに対して低フリップ角RFパルストレイン(104、113)を有するtrueFISP(定常歳差運動による真正高速撮像)パルスシーケンス(70)を前記単一代謝化学種に印加させる命令を含む、請求項1に記載のMRI装置。
【請求項3】
前記低フリップ角RFパルストレインは一定の振幅を有するRFパルスを含む、請求項2に記載のMRI装置。
【請求項4】
前記RFパルスは2度以下のフリップ角を有する、請求項3に記載のMRI装置。
【請求項5】
RFコイルアセンブリ(50)に対して単一代謝化学種を励起(128)させる前記命令はさらに、RFコイルアセンブリ(50)に対して振幅が変動するパルス変調スキーム(102、112)を前記低フリップ角RFパルストレイン(104、113)に印加させる命令を含む、請求項2に記載のMRI装置。
【請求項6】
前記振幅変動性のパルス変調スキーム(102)はガウス変調スキームである、請求項5に記載のMRI装置。
【請求項7】
前記振幅変動性のパルス変調スキーム(112)はsinc関数変調スキームである、請求項5に記載のMRI装置。
【請求項8】
前記システム制御器(32)はさらに、前記振幅変動性のパルス変調スキームをその極大値がk空間中心の通過と一致するように調整するように構成されている、請求項5に記載のMRI装置。
【請求項9】
前記システム制御器(32)はさらに、前記振幅変動性のパルス変調スキームをその極大値がk空間オフセットの通過と一致するように調整するように構成されている、請求項5に記載のMRI装置。
【請求項10】
前記過分極薬剤は13Cを含む、請求項1に記載のMRI装置。

【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−168132(P2008−168132A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2682(P2008−2682)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】