説明

過熱蒸気式焼成機

【解決手段】 過熱蒸気式焼成機は、缶体1内に過熱蒸気を噴射して物品を焼成する焼成ノズル3を備えており、過熱蒸気供給手段8からの過熱蒸気は上記焼成ノズルから缶体内に噴射されて物品を焼成した後、循環通路15から上記過熱蒸気供給手段8に循環されるようになっている。上記缶体内に飽和蒸気を噴射する飽和蒸気噴射ノズル21を設けてあり、飽和蒸気供給手段25からの飽和蒸気は上記飽和蒸気噴射ノズルから缶体内に噴射されて過熱蒸気に補充されて加熱され、加熱された飽和蒸気が循環通路を介して過熱蒸気供給手段に供給されるようになる。
【効果】 過熱蒸気によって加熱された飽和蒸気を過熱蒸気供給手段で加熱しているので、飽和蒸気を循環通路15に直接供給する場合のような急激な温度低下を招くことが無く、エネルギー効率の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの物品に過熱蒸気を吹き付けることにより当該物品を焼成するようにした過熱蒸気式焼成機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過熱蒸気式焼成機として、過熱蒸気式焼成機の缶体内に過熱蒸気を噴射して物品を焼成する焼成ノズルと、この焼成ノズルに過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段とを備えたものが知られている(特許文献1)。
また従来、他の構成の過熱蒸気式焼成機として、上記構成の過熱蒸気式焼成機に循環通路を設けて、焼成ノズルから缶体内に噴射された過熱蒸気を上記循環通路を介して過熱蒸気供給手段に循環させるようにしたものも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3330894号公報
【特許文献2】特開平3−83547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者の過熱蒸気式焼成機においては、単純に焼成ノズルから缶体内に過熱蒸気を噴射するだけなので、エネルギー効率が悪いという欠点がある。
これに対し後者の過熱蒸気式焼成機においては、焼成ノズルから缶体内に噴射された過熱蒸気を循環通路を介して過熱蒸気供給手段に循環させ、この過熱蒸気供給手段で再加熱して再び過熱蒸気として焼成ノズルから缶体内に噴射しているので、前者の過熱蒸気式焼成機よりもエネルギー効率がよいという利点がある。
しかしながら後者の過熱蒸気式焼成機においては、消費された蒸気を補充するために飽和蒸気を上記循環通路に供給していたので、循環される過熱蒸気の大きな温度低下が生じていた。例えば、循環通路を流通する200〜250℃の過熱蒸気に120℃程度の飽和蒸気を供給すると過熱蒸気の温度低下が急激となるので、これを所要の温度まで加熱するのに大きなエネルギーを必要とし、充分にエネルギー効率が良いものではなかった。
本発明はそのような事情に鑑み、よりエネルギー効率に優れた過熱蒸気式焼成機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、過熱蒸気式焼成機の缶体内に過熱蒸気を噴射して物品を焼成する焼成ノズルと、この焼成ノズルに過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段と、上記焼成ノズルから缶体内に噴射された過熱蒸気を上記過熱蒸気供給手段に循環させる循環通路とを備えた過熱蒸気式焼成機において、
上記缶体内に飽和蒸気を噴射する飽和蒸気噴射ノズルと、この飽和蒸気噴射ノズルに飽和蒸気を供給する飽和蒸気供給手段とを設け、上記飽和蒸気噴射ノズルから缶体内に噴射された飽和蒸気を上記循環通路を介して過熱蒸気供給手段に供給するとともに、該過熱蒸気供給手段で加熱して、過熱蒸気として上記焼成ノズルから噴射させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
上記構成を有する本発明においては、飽和蒸気は循環通路に直接供給されるのではなく、飽和蒸気噴射ノズルによって缶体内に供給されるので、該飽和蒸気は、上記焼成ノズルから缶体内に噴射される過熱蒸気と混合して加熱されるようになる。
そして、過熱蒸気に混合されて加熱された飽和蒸気が上記循環通路を介して過熱蒸気供給手段で所要温度の過熱蒸気に加熱されるので、従来のような急激な温度低下を招くことが無く、エネルギー効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例を示す正面図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】過熱蒸気の循環回路を示す回路図
【図4】飽和蒸気の循環回路を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例に基づいて本発明を説明すると、図1、図2において、過熱蒸気式焼成機の缶体1内にこれを貫通して金網製多孔質コンベヤなどからなる搬送手段2を設けてあり、この搬送手段2によって食品などの物品(図示せず)を缶体1の入口1aからその内部に搬入するとともに、缶体1内を移動させて該缶体1の出口1bから外部に搬出することができるようにしてある。
上記缶体1内の搬送方向中央部位置には、所要の範囲に亘って搬送手段2の上下に焼成ノズル3を設けてあり、上下の焼成ノズル3から物品に向けてそれぞれ過熱蒸気を噴射することにより、該物品を焼成することができるようにしてある。
本実施例では、各焼成ノズル3は水平面内で平行に配置した多数のパイプ4を備えており、各パイプ4に形成した多数の貫通孔(図示せず)から過熱蒸気を噴射することができるようにしてある。
【0009】
図3に示すように、各焼成ノズル3に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段8はブロワ9とヒータ10とを備えており、ヒータ10によって所要温度に加熱された過熱蒸気は配管11を介して缶体1の側面の上下に設けたチャンバ12にそれぞれ供給されるようになっている。
各チャンバ12は、図1、図2に示すように搬送手段2の上下位置において、物品の搬送方向に沿って所要の範囲に亘って設けてあり、上記多数のパイプ4の末端部はそれぞれチャンバ12内に連通させている。
したがって上記チャンバ12に供給された過熱蒸気は、各パイプ4内を流通して各パイプ4に形成した上述の貫通孔から上記缶体1内に噴射されて、物品を焼成するようになる。
【0010】
上記焼成ノズル3のパイプ4から缶体1内に噴射された過熱蒸気は、図3に示すように、循環通路15を介して上記過熱蒸気供給手段8のブロワ9に循環され、該過熱蒸気供給手段8のヒータ10によって再び所要の温度に加熱されて、上記焼成ノズル3のパイプ4から缶体1内に噴射されるようになっている。
なお、上記缶体1内には図示しない温度検出手段を設けてあり、缶体1内の温度に応じて上記ヒータ10を制御することにより、循環されてきた過熱蒸気を所要の温度に加熱することができるようにしてある。
図1、図2に示すように、上記循環通路15は缶体1の上面に接続された2本の配管16a、16bを備えており、一方の配管16aは、焼成ノズル3を設けた範囲のうちで、搬送手段2の搬送方向上流側となる位置に配置してあり、また他方の配管16bは、焼成ノズル3を設けた範囲のうちで、搬送方向下流側となる位置に配置してある。
そして2つの配管16a、16bを流通する過熱蒸気は、1つに合流されてから上記過熱蒸気供給手段8のブロワ9に循環されるようになっている。
図示実施例では2つの配管16a、16bを1つに合流させて上記過熱蒸気供給手段8に還流させるようにしているが、配管16a、16b毎に別個に過熱蒸気供給手段8、8を設けて、それぞれの過熱蒸気供給手段8、8により循環されてきた過熱蒸気をそれぞれ別個の温度に加熱して、別個の焼成ノズル3から物品に向けて噴射させるようにしてもよい。
【0011】
次に図1、図2に示すように、上記過熱蒸気供給手段8に蒸気を補充するために、缶体1内に飽和蒸気を噴射する飽和蒸気噴射ノズル21を設けてある。本実施例では飽和蒸気噴射ノズル21は、上記焼成ノズル2に隣接させてそれよりも入口1a側と出口1b側とのそれぞれに、かつ搬送手段2の上下に設けてある。
各飽和蒸気噴射ノズル21は、それぞれ直方体形状の函体22と、各函体22の搬送手段2に対向する面に形成した多数の貫通孔とを備えており、各貫通孔から搬送手段2に向けて飽和蒸気を噴射することができるようにしてある。この飽和蒸気噴射ノズル21から噴射される飽和蒸気によって、上記過熱蒸気供給手段8に蒸気を補充することができ、また缶体1内に導入される空気を遮断して該函体1内の酸素濃度を低酸素濃度に維持することができるようにしてある。
【0012】
図4に示すように、上記飽和蒸気噴射ノズル21に飽和蒸気を供給する飽和蒸気供給手段25はボイラ26を備えており、このボイラ26で発生させた飽和蒸気を配管27を介して上記各飽和蒸気噴射ノズル21に供給することができるようにしてある。
上記配管27の途中には、上記飽和蒸気噴射ノズル21から噴射される飽和蒸気量を調整する調整手段としての電磁開閉弁28を設けてあり、制御装置31によって該電磁開閉弁28の開閉量を制御することにより上記飽和蒸気噴射ノズル21から噴射される飽和蒸気の供給量を制御することができるようにしてある。
【0013】
図1に示すように、上記缶体1内の上部中央部に、つまり焼成ノズル3を設けた範囲の中央部上方位置に、該缶体1内に存在する酸素の濃度を検出する酸素濃度検出手段32を設けてあり、この酸素濃度検出手段32からの信号を上記制御装置31に入力するようにしてある。
上記制御装置31は、図4に示すように、上記酸素濃度検出手段32から入力される測定酸素濃度と予め定めた所定の適正範囲の基準酸素濃度とを比較する比較部31aと、該比較部31aで比較した結果、測定酸素濃度が基準酸素濃度よりも高いか低いかを判定する判定部31bと、該判定部31bで判定した結果、測定酸素濃度が基準酸素濃度よりも高い場合に上記電磁開閉弁28を開く指令と、測定酸素濃度が基準酸素濃度よりも低い場合に上記電磁開閉弁28を閉じる指令とを出力する指令部31cとを備えている。
【0014】
さらに本実施例では、上記缶体1内において、入口1a側の飽和蒸気噴射ノズル21の上流側に入口室33を配置し、出口1b側の飽和蒸気噴射ノズル21の下流側に出口室34を配置している。
上記入口室33と出口室34にはそれぞれ缶体1の上面に接続した配管33a、34aを連通させてあり、上記焼成ノズル3や飽和蒸気噴射ノズル21から噴射されて入口室33や出口室34に漏洩してきた過熱蒸気や飽和蒸気を、上記配管33a、34a並びに入口1aや出口1bから缶体1の外部へ洩れ出るようにしている。
なお、上記各配管33a、34aに吸引手段を接続して、上記入口室33や出口室34内を強制的に排気することも可能である。
【0015】
以上の構成において、上記過熱蒸気供給手段8のブロワ9によって給送される過熱蒸気はヒータ10によって加熱されて所定の温度の過熱蒸気となり、配管11を介して焼成ノズル3から缶体1内に噴射される。缶体1内に噴射された過熱蒸気は、搬送手段2によって搬送されている物品を焼成した後、循環通路15を介して上記過熱蒸気供給手段8のブロワ9に循環され、再び過熱蒸気供給手段8のヒータ10によって所要の温度に加熱されるようになる。
他方、飽和蒸気供給手段25のボイラ26によって発生された飽和蒸気は、開放された電磁開閉弁28および配管27を介して飽和蒸気噴射ノズル21から缶体1内に噴射される。缶体1内に噴射された飽和蒸気の一部は、焼成ノズル3から缶体1内に噴射された過熱蒸気に補充混合されて該過熱蒸気によって加熱された後、上記循環通路15を介して上記過熱蒸気供給手段8のブロワ9に循環されるようになる。
【0016】
このように本実施例においては、飽和蒸気は循環通路15に直接供給されるのではなく、飽和蒸気噴射ノズル21から缶体1内に供給されるので、該飽和蒸気は上記焼成ノズル3から缶体1内に噴射された過熱蒸気と混合して加熱されるようになる。したがって、飽和蒸気を循環通路15に直接供給した場合のように過熱蒸気の急激な温度低下を招くことが無く、エネルギー効率の向上を図ることができる。
【0017】
ところで、上記電磁開閉弁28を閉じている状態では、飽和蒸気が飽和蒸気噴射ノズル21から缶体1内に噴射されることはなく、この状態であっても、上記焼成ノズル3から缶体1内に噴射された過熱蒸気によって物品を焼成することができるが、その焼成領域に外部の空気が侵入し易くなる。そして焼成領域に外部の空気が侵入すると、焼成領域の酸素濃度が高くなるので、物品の焼成の品質が悪くなる。
これを防止するためには、過熱蒸気の噴射領域と噴射量とを大きくすればよいが、エネルギー効率は低下する。
他方、上記電磁開閉弁28を開放している状態では、飽和蒸気は飽和蒸気噴射ノズル21から缶体1内に連続的に噴射されているので、この状態では、上記焼成焼成領域に外部の空気が侵入しにくくなる。したがってこの状態では、上記焼成領域の酸素濃度は低酸素濃度に維持されるようになり、従来既に知られているように、上記焼成領域を低酸素濃度に維持することによって物品を良好に焼成することができる。
【0018】
しかしながら、飽和蒸気噴射ノズル21から飽和蒸気を缶体1内に常に噴射し続けることは、エネルギー効率の観点からは好ましくない。
しかるに本実施例においては、缶体1内に存在する酸素の濃度を検出する酸素濃度検出手段32を設けてあり、この酸素濃度検出手段32からの信号によって缶体1内の測定酸素濃度が基準酸素濃度よりも高い場合に上記電磁開閉弁28を開き、測定酸素濃度が基準酸素濃度よりも低い場合に上記電磁開閉弁28を閉じるようにしているので、上記焼成領域の酸素濃度を低酸素濃度に維持しながら、可及的に飽和蒸気の噴射量を低減してエネルギー効率の改善を図ることが可能となる。
【0019】
なお、上記実施例では飽和蒸気噴射ノズル21を缶体1の入口1aと出口1bとの両方に設けているが、いずれか一方だけでもよく、また缶体1の中央上部や中央側部などの物品の焼成を行う領域に設けてもよい。
さらに上記酸素濃度検出手段32を省略して、飽和蒸気を所定時間毎に所定量ずつ供給するようにしてもよく、この場合には飽和蒸気の供給量を検出できる流量計を設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0020】
1 缶体 1a 入口
1b 出口 2 搬送手段
3 焼成ノズル 8 過熱蒸気供給手段
9 ブロワ 10 ヒータ
15 循環通路 21 飽和蒸気噴射ノズル
25 飽和蒸気供給手段 26 ボイラ
28 電磁開閉弁(調製手段) 31 制御手段
32 酸素濃度検出手段 33 入口室
34 出口室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱蒸気式焼成機の缶体内に過熱蒸気を噴射して物品を焼成する焼成ノズルと、この焼成ノズルに過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段と、上記焼成ノズルから缶体内に噴射された過熱蒸気を上記過熱蒸気供給手段に循環させる循環通路とを備えた過熱蒸気式焼成機において、
上記缶体内に飽和蒸気を噴射する飽和蒸気噴射ノズルと、この飽和蒸気噴射ノズルに飽和蒸気を供給する飽和蒸気供給手段とを設け、上記飽和蒸気噴射ノズルから缶体内に噴射された飽和蒸気を上記循環通路を介して過熱蒸気供給手段に供給するとともに、該過熱蒸気供給手段で加熱して、過熱蒸気として上記焼成ノズルから噴射させることを特徴とする過熱蒸気式焼成機。
【請求項2】
上記物品は上記缶体内に設けられた搬送手段により該缶体の入口から搬入されて該缶体の出口から搬出されるようになっており、上記飽和蒸気噴射ノズルは、上記缶体の入口および/または出口に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の過熱蒸気式焼成機。
【請求項3】
上記缶体内に存在する酸素の濃度を検出する酸素濃度検出手段と、上記飽和蒸気噴射ノズルから噴射される飽和蒸気量を調整する調整手段と、上記酸素濃度検出手段からの検出値により調整手段を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の過熱蒸気式焼成機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate