説明

過電流遮断素子付き端子

【課題】加工費用を低減し、かつ、部品点数を減らすことができる過電流遮断素子付き端子を提供する。
【解決手段】本発明の過電流遮断素子付き端子10は、端子部17及び電線固定部12を有する端子本体11と、過電流遮断素子20とを備える。過電流遮断素子20は、端子本体11に接続される第1のリード線21と、電線30の端末30Aに接続される第2のリード線22とを有する。端子本体11は、第1のリード線21を圧着して接続する素子接続片13を有する。第1のリード線21に素子接続片13を圧着するとともに、電線30の端末30Aと第2のリード線22とを共圧着端子40を圧着し接続することで、端子本体11、過電流遮断素子20および電線30を一体的に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流遮断素子付き端子に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリなどの電源から電装品に至る電流回路においては、電源と電装品とを接続する電線を過電流から保護するための過電流遮断素子を備える端子が用いられることがある。
過電流遮断素子は電源と電装品とを電気的に接続する電線に過電流が流れたときに、過電流を直接検知するか、あるいは過電流により生じる発熱を検知することにより過電流を間接的に検知することにより、電流を遮断する機能を有する。
【0003】
このような過電流遮断素子を備えるものとしては、例えば特許文献1に記載のものなどが知られている。
特許文献1には、バッテリと過電流遮断素子(電子部品)とを接続する端子が、端子装着用のカバーによりプレート本体に装着される構成のバッテリ接続プレートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3990960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に提案されているバッテリ接続プレートにおいては、過電流遮断素子と端子とは半田付けにより接続されるため、加工コストが高いという問題があった。
また、上記特許文献1のバッテリ接続プレートにおいては、バッテリと電子部品を接続するための端子をプレート本体に取り付けるための部材として、端子やプレート本体とは別体のカバーが必要であるので、部品点数が多く、バッテリへの接続に手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、加工費用を低減し、かつ、部品点数を減らすことができる過電流遮断素子付き端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するものとして、本発明は、電源に接続される端子部、及び前記電源と負荷とを電気的に接続する電線が圧着固定される電線固定部を有する端子本体と、前記電線に過電流が流れるとき、あるいは前記電線の温度が設定温度以上になったときに電流を遮断する過電流遮断素子と、を備える過電流遮断素子付き端子であって、前記過電流遮断素子は、前記端子本体に接続される第1のリード線と、前記電線の端末に接続される第2のリード線と、を有し、前記端子本体は、前記第1のリード線を圧着して接続する素子接続片を有し、前記第1のリード線に前記素子接続片を圧着するとともに、前記電線の端末と前記第2のリード線とを共圧着端子を圧着して接続することで、前記端子本体、前記過電流遮断素子および前記電線を一体的に設けたところに特徴を有する。
【0008】
本発明において、過電流遮断素子の第1のリード線は端子本体に設けた素子接続片を圧着することにより端子本体と接続され、過電流遮断素子の第2のリード線と電線の端末とは、共圧着端子を圧着することにより接続される。つまり、本発明によれば、過電流遮断素子と端子本体との接続、電線の端末と過電流遮断素子との接続の際に半田付けは不要なので、加工に要する費用を低減することができる。
【0009】
また、本発明においては、端子本体は、端子部と、電線固定部と、過電流遮断素子と接続される素子接続片を有しており、各部材を圧着して接続することにより、端子本体、過電流遮断素子、および電線を一体的に設けている。つまり、本発明によれば、電源と接続される端子部と、電線を固定するための電線固定部と、過電流遮断素子と接続される素子接続部が1つの部材(端子本体)に設けられており、各部材を圧着・接続することで一体化されているので、部品点数が少なくて済み、電源に接続する作業を簡易なものとすることができる。
【0010】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記端子本体には、前記電線の端末と前記第2のリード線とを接続してなる電線接続部から、前記素子接続片と前記第1のリード線とを接続してなる素子接続部に至る接続部領域に沿って、壁部を設けてもよい。
このような構成とすると、電線接続部から素子接続部に至る接続部領域に配置される、電線接続部、過電流遮断素子および素子接続部を保護することができるとともに、端子本体の剛性を高めることができる。
【0011】
上記構成において、前記壁部に、当該壁部を補強する補強リブを設けてもよい。このような構成とすると端子本体の剛性を更に高めることができる。
【0012】
上記構成において、前記端子部を前記壁部から延出して形成してもよい。このような構成とすると、端子部と過電流遮断素子との間には壁部が配置され、壁部が電源と過電流遮断素子との位置ずれを吸収する寸法吸収部として機能するので好ましい。
【0013】
前記電線固定部を、当該電線固定部に圧着固定される前記電線の破損を防止する保護構造としてもよい。
電線を圧着固定する電線固定部の端部が、圧着の際に電線に食い込むなどにより電線の被覆を破損すると、電線固定部の端部が電線の被覆を貫通して導体に接触して、電線と過電流遮断素子との短絡が発生することがある。電線と過電流遮断素子との短絡が発生すると、検知すべき電流が過電流遮断素子を流れなくなったり、過電流遮断素子を流れる検知すべき電の量が減少するため、過電流遮断素子を設置することによる効果(過電流遮断効果)が十分に得られなくなる。
そこで、上記のような構成とすると、電線固定部による電線の破損を防止することができるので、過電流遮断素子と電線との短絡を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加工費用を低減し、かつ、部品点数を減らすことができる過電流遮断素子付き端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の過電流遮断素子付き端子の上面図
【図2】電線および第1のリード線を圧着する前の過電流遮断素子付き端子の斜視図
【図3】過電流遮断素子付き端子を素子接続部側から見た正面図
【図4】過電流遮断素子を接続する前の端子本体の上面図
【図5】電線および第1のリード線を圧着する前の実施形態2の過電流遮断素子付き端子の斜視図
【図6】実施形態3の過電流遮断素子付き端子の上面図
【図7】図6の要部拡大図
【図8】他の実施形態(2)で説明する過電流遮断素子付き端子の電線固定部を示した上面図
【図9】他の実施形態(2)で説明する図8とは別の形態の電線固定部を示した上面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4によって説明する。本実施形態の過電流遮断素子付き端子10は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などのバッテリ(電源に相当、図示せず)とECU(Electronic Control Unit、負荷に相当、図示せず)とを接続する端子10として使用される。
本実施形態の過電流遮断素子付き端子10(以下「端子10」という)においては、図1に示すように、端子本体11、過電流遮断素子20、および電線30とが一体的に設けられている。
【0017】
電線30は、銅などの導電性金属からなる多数の撚り線31と、当該撚り線31を被覆する絶縁被覆32と、を有し、端末30Aにおいては、図2に示すように絶縁被覆32を剥離することより撚り線31が露出している。電線30の端末30Aは、過電流遮断素子20の第2のリード線22と接続され、電線30の端末30Aよりも後方(図2の左上方向)の、絶縁被覆32により撚り線31が被覆されている部分は、一対の電線30圧着片12A,12Aを圧着することにより固定される。電線30が電線圧着片12A,12Aにより固定される部分は電線固定部12である(図1を参照)。
【0018】
本実施形態において、電線30は電圧検知線として用いられ、電線30に過電流が流れたり、電線30の温度が設定温度以上になると、過電流遮断素子20により電流が遮断されるようになっている。
【0019】
過電流遮断素子20の具体例としては、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子などが挙げられる。過電流遮断素子20の図1に示す右側の端部には、第1のリード線21が取り付けられ、図示左側の端部には第2のリード線22が取り付けられている。第1のリード線21は端子本体11の素子接続片13,13を圧着することにより接続され、第2のリード線22は電線30の端末30Aと共圧着端子40により圧着接続される。第1のリード線21と素子接続片13,13とを接続してなる部分は素子接続部24であり、電線30の端末30Aが第2のリード線22と接続されてなる部分は電線接続部23である。
【0020】
端子本体11は、全体としては、図2に示すように箱型の形状をなしている。端子本体11の底部14(図3における下側に配される部分)には、図2に示すように、電線30を圧着し固定する一対の電線圧着片12A,12Aと、過電流遮断素子20の第1のリード線21を圧着する一対の素子接続片13,13とが設けられている。端子本体11の底部14においては、図1に示すように、電線固定部12から連なる一部の領域14A(図1に示す左側の端部を含む領域、第1の領域14Aという)と、素子接続部24から連なる一部の領域14B(図1に示す右側の端部を含む領域、第2の領域14Bという)との間の、過電流遮断素子20が配置される素子領域14Cは、切り欠かれている。
【0021】
端子本体11には、底部14に対して略垂直に切り立つ一対の壁部15,15が設けられている。本実施形態において、壁部15,15は、図1に示すように、電線接続部23から素子接続部24に至る接続部領域14Dを含み、接続部領域14Dよりも図1における左右に広い領域14Eに沿って設けられている。領域14Eを壁部形成領域14Eという。一対の壁部15,15には、それぞれ、その長手方向に沿って形成された補強リブ16が2本ずつ設けられている。
【0022】
さらに、端子本体11には、図3における右側の壁部15Aから幅方向に延出された部分を、当該壁部15Aに対して略垂直をなすように曲げることにより、端子部17が設けられている。端子部17には電源に設けた電源端子が挿通される端子挿通孔が設けられている。以下、図3における右側の壁部15Aを端子側壁部15Aとする。
【0023】
次に、本実施形態の端子10の製造方法について説明する。
まず、金属板にプレス加工と曲げ加工を施すことにより、図4に示す形状の端子本体11を作製する。次に、過電流遮断素子20の第1のリード線21に、端子本体11の素子接続片13,13を圧着して接続する。次に過電流遮断素子20の第2のリード線22と電線30の端末30Aとを共圧着端子40で共圧着して接続する。次に、電線30に端子本体11の電線圧着片12A,12Aを圧着して固定すると、本実施形態の端子10が得られる。
【0024】
次に本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態において、過電流遮断素子20の第1のリード線21は端子本体11に設けた素子接続片13,13を圧着することにより端子本体11と接続され、過電流遮断素子20の第2のリード線22と電線30の端末30Aとは、共圧着端子40を圧着することにより接続される。つまり、本実施形態によれば、過電流遮断素子20と端子本体11との接続、電線30の端末30Aと過電流遮断素子20との接続の際に半田付けは不要なので、加工に要する費用を低減することができる。
【0025】
また、本実施形態においては、端子本体11は、端子部17、電線固定部12、および過電流遮断素子20と接続される素子接続片13,13を有しており、各部材を圧着して接続することにより、端子本体11、過電流遮断素子20、および電線30を一体的に設けている。つまり、本実施形態によれば、電源と接続される端子部17と、電線30を固定するための電線固定部12と、過電流遮断素子20と接続される素子接続部24が1つの部材である端子本体11に設けられており、各部材を圧着・接続することで一体化されているので、部品点数が少なくて済み、電源に接続する作業を簡易なものとすることができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、端子本体11の電線接続部23から素子接続部24に至る接続部領域14Dを含む壁部形成領域14Eに沿って壁部15,15が設けられているから、この壁部形成領域14Eに配置される、電線接続部23、過電流遮断素子20および素子接続部24を保護することができ、かつ端子本体11の剛性を高めることができる。特に本実施形態では、壁部15,15に補強リブ16を設けたから、端子本体11の剛性を更に高めることができる。
【0027】
また本実施形態によれば、端子部17を端子側壁部15Aから底部14の幅方向に延出して形成したから、端子部17と過電流遮断素子20との間には端子側壁部15Aが配置され、端子側壁部15Aが電源と過電流遮断素子20との位置ずれを吸収する寸法吸収部として機能する。また、このような構成によれば、底部14の長手方向において省スペースである。
【0028】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図5によって説明する。本実施形態は、端子部17の位置が実施形態1と相違する。上記実施形態1と同様の構成部位については同一符号を付して重複する記載は省略する。
本実施形態では、端子部17が端子本体11の底部14であって、素子接続片13,13(素子接続部24)から連なる第2の領域14Bから底部14の長手方向に延出された第3の領域14Fに設けられている。
本実施形態によれば、端子部17が底部14から長手方向に延出された第3の領域14Fに設けられているから、底部14の幅方向において省スペースである。その他の構成や作用効果は実施形態1と概ね同様である。
【0029】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図6および図7によって説明する。本実施形態の磁電変換素子付き端子10は、電線固定部12の構造が実施形態1と相違する。上記実施形態1と同様の構成部位については同一符号を付して重複する記載は省略する。
本実施形態において、電線固定部12は、図6および図7に示すように、台形状をなす一対の電線圧着片50A,50Aを備える。2つの電線圧着片50A,50Aは、互いに重なりあわないように配され、かつ、2つの電線圧着片50A,50Aは、電線30の絶縁被覆32に食い込まないように圧着され、これにより電線30の破損が防止される(本発明の保護構造50に相当)。
実施形態によれば、電線固定部12は電線30の破損を防止する保護構造50とされるので、過電流遮断素子20と電線30との短絡を防止することができる。
その他の構成や作用効果は実施形態1と概ね同様である。
【0030】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態においては、壁部に補強リブを設けたものを示したが、補強リブを備えない壁部を設けてもよいし、補強リブを1本または3本以上設けたものであってもよい。
(2)上記実施形態3においては、台形状の電線圧着片50A,50Aを備えるものを示したが、電線の破損を防止する保護構造50はこれに限定されない。
例えば、図8に示すように、電線30に圧着した際にその一部が重なるような一対の電線圧着片50A,50Aを設けて電線30の破損を防止する構造としてもよい。図8に示す形態において、電線圧着片50Aは方形状をなし、電線30の表面に沿って巻きつけられる。
また図9に示すように、電線30に樹脂または金属製の保護チューブ50Bを取り付けた後に、この保護チューブ50Bの上から、実施形態1の電線圧着片12Aと同様な形態の電線圧着片12A,12Aを圧着固定するような構造としてもよい。図9に示す形態のものでは、電線圧着片の形状に関係なく、電線の破損を防止することができる。例えば圧着片の形状は、図7、8に示す形状でも良い。
【符号の説明】
【0031】
10…過電流遮断素子付き端子
11…端子本体
12…電線固定部
12A…電線圧着片
13…素子接続片
14D…接続部領域
15…壁部
16…補強リブ
17…端子部
20…過電流遮断素子
21…第1のリード線
22…第2のリード線
23…電線接続部
24…素子接続部
30…電線
30A…端末
31…撚り線
32…絶縁被覆
40…共圧着端子
50…保護構造
50A…電線圧着片
50B…保護チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続される端子部、及び前記電源と負荷とを電気的に接続する電線が圧着固定される電線固定部を有する端子本体と、前記電線に過電流が流れるとき、あるいは前記電線の温度が設定温度以上になったときに電流を遮断する過電流遮断素子と、を備える過電流遮断素子付き端子であって、
前記過電流遮断素子は、前記端子本体に接続される第1のリード線と、前記電線の端末に接続される第2のリード線と、を有し、
前記端子本体は、前記第1のリード線を圧着して接続する素子接続片を有し、
前記第1のリード線に前記素子接続片を圧着するとともに、前記電線の端末と前記第2のリード線とを共圧着端子を圧着して接続することで、前記端子本体、前記過電流遮断素子および前記電線を一体的に設けたことを特徴とする過電流遮断素子付き端子。
【請求項2】
前記端子本体には、前記電線の端末と前記第2のリード線とを接続してなる電線接続部から、前記素子接続片と前記第1のリード線とを接続してなる素子接続部に至る接続部領域に沿って、壁部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の過電流遮断素子付き端子。
【請求項3】
前記壁部に、当該壁部を補強する補強リブを設けたことを特徴とする請求項2に記載の過電流遮断素子付き端子。
【請求項4】
前記端子部を前記壁部から延出して形成したことを特徴とする請求項2または3に記載の過電流遮断素子付き端子。
【請求項5】
前記電線固定部を、当該電線固定部に圧着固定される前記電線の破損を防止する保護構造としたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の過電流遮断素子付き端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−181488(P2011−181488A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129990(P2010−129990)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】