説明

道路橋継目部の排水構造

【課題】プラウ誘導板が設けられた伸縮継手において、舗装に浸透し継手部材の縦板部背面に溜まる雨水を継目の長手方向に排水できるようにする。
【解決手段】継手部材の縦板部背面に道路橋継目の長手方向に延びる導水部材を設け、舗装に浸透してきた雨水を該導水部材に流入させ、道路橋横断勾配に従い低位置側へと排水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋継目部の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、道路橋継目部に設置された幅員方向に延びる伸縮継手が一対の継手部材を備えており、その継手部材が向かい合うように設置された縦板部を有している場合であって、伸縮継手を挟む両側の路面に透水性舗装が施された場合の排水構造について記載されている。その排水構造とは、上記一対の継手部材の縦板部に、相対する貫通孔を形成し、その貫通孔の間を可撓性の連結管で繋ぐことによって、上記継手部材の間を橋軸方向に排水する縦排水路を設け、さらに、道路橋縦断勾配高位置側の継手部材の縦板部の背部に、該縦板部と一定の隙間をあけて横水路構成板を設けることによって、幅員方向に排水する横排水路を設けるというものである。なお、この横水路構成板には水を通すための多数の貫通孔が開けられている。
【0003】
この排水構造によれば、道路橋縦断勾配の高位置側の路面をなす透水性舗装に浸透した雨水は、横水路構成板の貫通孔から横水路に流入し、道路橋縦断勾配高位置側の継手部材の縦板部に開けられた貫通孔から縦排水路に入り、該縦排水路を通って上記縦断勾配低位置側の継手部材の縦板部に開けられた貫通孔から流出し、該継手部材の背部に広がる透水性舗装に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−237806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
北海道のような積雪寒冷地の道路橋では、除雪作業時に除雪車のスノウプラウが継手部材に引っかかり該継手部材及び路面を破損させることが多く、それを防ぐために両方又は片方の継手部材にプラウ誘導板が設置されている。プラウ誘導板は、その前端面が継手部材の縦板部に溶接されており、その上端面は前方へ向かうに従い漸次高くなり、継手部材の上端と同じ高さになるよう形成されている。この形状により、プラウ誘導板は除雪車のスノウプラウを継手部材の上へと誘導する。
【0006】
伸縮継手を挟む両側の路面はコンクリートで形成するのが一般的であるが、プラウ誘導板を設置するような積雪寒冷地では、下層をコンクリートで形成し、その上層をアスファルト舗装で形成することが多い。これは、アスファルト舗装面はタイヤチェーン等によって摩耗しやすいのに対し、コンクリート舗装面ではほとんど摩耗せず、アスファルト舗装面とコンクリート舗装面との境界に段差が生じやすいためである。道路面に段差があると車両走行性が著しく悪化するとともに、スノウプラウがその段差に引っかかることによりコンクリート舗装面が破壊される。これを避けるため、積雪寒冷地では伸縮継手両側の路面にもアスファルト舗装を施している。
【0007】
ところで、伸縮継手を挟む両側の路面に透水性のアスファルト舗装が施された場合、雨水などは、該透水性舗装に浸透し、その下層をなす不透水性のコンクリート上を道路橋縦断勾配に従い低位置側へと流れる。しかし道路橋継目部において、幅員方向に延びる継手部材によりその流れが遮られるため、該継手部材の縦板部背部で水が溜まる。この水が排水されずに溜まった状態が続くと、透水性舗装内でアスファルトと骨材との接着力が著しく減じ、透水性舗装の早期破損を招く。また、冬期にはその溜まった水が凍り、その際の体積膨張によって縦板部背部の透水性舗装に亀裂が生じる。また、伸縮継手が水に触れ続けると、路面凍結防止剤の影響も加わり、部材中の鋼が錆び伸縮継手自体の劣化・破損を招く。
【0008】
これに対して特許文献1に記載された発明では、積雪寒冷地の伸縮継手に対しては、プラウ誘導板が設けられているために横水路構成板を設置することが困難であり、また、横水路構成板と縦板部によって形成される横水路が路面上に間隙を生じさせるため、除雪車のスノウプラウがこの間隙に引っかかり、横水路構成板及び伸縮継手を破損させるという問題があった。さらに、車両がこの間隙を通過する際にはタイヤが衝撃を受けるため振動・騒音が発生すること、この横水路の上部が開口しているため土砂が詰まりやすく土砂の除去などの保守管理が必要となることなどの問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明は上記課題を解決すべく、プラウ誘導板が設けられた伸縮継手において、舗装に浸透し継手部材の縦板部背部に溜まる雨水を道路橋継目の長手方向に排水できるようにしたものである。
【0010】
すなわち、この出願の発明は、道路橋の伸縮継手を構成するように道路橋継目部に設置され、互いに向かい合い継目長手方向に延びる縦板部を有する一対の継手部材と、
上記縦板部の背部に設けられ、且つ道路橋の継目長手方向に間隔をおいて配置された、除雪車のスノウプラウを上記伸縮継手の上を通過するように誘導するプラウ誘導板と、
上記縦板部の背部に打設された後打ちコンクリートと、
上記縦板部の背部において、上記後打ちコンクリートの上に設けられ、路面を形成する舗装と、
上記後打ちコンクリートと上記舗装の境界部に配置され、上記縦板部の背面に沿って道路橋継目の長手方向に延び、上記舗装から浸透する水を流入させ道路橋の端部へと導く導水部材とを備えてなり、
上記導水部材が路面下に埋設されていることを特徴とする。
【0011】
従って本発明によれば、プラウ誘導板が設置された伸縮継手の継手部材背部の舗装に浸透した雨水は、該継手部材の縦板部背面に設置された導水部材に流れ込み、導水部材内を道路橋横断勾配に従い低位置側へと流れる。従って、雨水は継手部材背部に溜まることなく排水されるため、該継手部材背部の舗装や伸縮継手の劣化・損傷を防ぐことができる。また、導水部材を路面下に埋設しているため、プラウ誘導板の前端を継手部材の背面に接続でき、スノウプラウを継手部材の上へと滑らかに誘導できる。また、路面に間隙を設ける必要がないので、土砂による該排水路の詰まり、車両通行時の振動・騒音を防ぐことができる。
【0012】
なお、好ましい実施形態では、導水部材はプラウ誘導板を貫通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、プラウ誘導板が設置された伸縮継手の継手部材背部の舗装に浸透した雨水は、該継手部材の縦板部背面に設置された導水部材に流れ込み、導水部材内を道路橋横断勾配に従い低位置側へと流れるため、継手部材背部で溜まる雨水を排水できる。しかも、導水部材を埋設しているため、プラウ誘導板の機能は損なわれない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る門型の伸縮継手をもつ道路橋の継目部における縦断面図である。
【図2】同形態の後打ちコンクリートが打設される前の道路橋継目部の上方から見た平面図である。
【図3】同形態の排水パイプ継目部を示す、一部断面にした斜視図である。
【図4】本発明の実施形態2に係るT型の伸縮継手をもつ道路橋の継目部における縦断面図である。
【図5】同形態の後打ちコンクリートが打設される前の路橋継目部の上方から見た平面図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る発明の要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
<実施形態1>
本実施形態は図1〜図3に示す。
【0017】
図1に示すように1は道路橋本体、2は道路橋本体1のなす遊間、3は遊間2の上方に設置された伸縮継手であり、4は導水部材となる排水パイプである。伸縮継手3の車両進行方向手前側には、除雪車のスノウプラウが伸縮継手3の上を通るように誘導するプラウ誘導板5が設置され、反対側には車両通行時に伸縮継手3にかかる輪荷重を分散させるためのリブプレート6が設置されている。道路橋本体1の相対する端部には、伸縮継手3、プラウ誘導板5及びリブプレート6を設置するための切欠断部7が形成されており、切欠断部7には伸縮継手3、プラウ誘導板5及びリブプレート6の設置後、後打ちコンクリート8が打設されている。さらに後打ちコンクリート8の上には透水性舗装9が設けられており、路面をなしている。
【0018】
伸縮継手3は一対の継手部材10からなる。両継手部材10は各々が継目長手方向に延びる縦板部11と、その上端に設けられた横板部12を備えてなる。両継手部材10は、縦板部11が互いに橋軸方向に向かい合わせになるよう設けられており、各々の横板部12は互いに相手方に向かい合って突出し、その先端は互いに隙間13を存して噛み合う歯形に形成されている。
【0019】
プラウ誘導板5はその前端面が縦板部11に結合されており、板面を垂直にして橋軸方向に延びている。プラウ誘導板5の上面は前端に向かう従い漸次高くなるよう傾斜しており、上面の最前端は横板部12と同じ高さになっている。縦板部11に結合するプラウ誘導板5の前端面には、後打ちコンクリート8と透水性舗装9との境界にあたる位置に切欠部14が形成されている。また、プラウ誘導板5には貫通孔15が形成されており、この貫通孔15には通し筋16が通されている。通し筋16は他の補強筋に接続され、道路橋本体1に固定されている。なお、各図では他の補強筋を省略して図示している。図2に示すように、プラウ誘導板5は道路橋継目の長手方向に間隔をおいて配置されており、通し筋16は複数のプラウ誘導板5を貫通して道路橋継目の長手方向に延びている。
【0020】
リブプレート6はその前端面が縦板部11に結合されており、板面を垂直にして橋軸方向に延びている。リブプレート6の上面は後打ちコンクリート8の上面と同じ高さになっている。縦板部11に結合するリブプレート6の前端面の上の角には、切欠部17が形成されている。また、リブプレート6には貫通孔18が形成されており、この貫通孔18にはプラウ誘導板5の貫通孔15と同様に通し筋16が通されている。図2に示すように、リブプレート6は道路橋継目の長手方向に間隔をおいて配置されており、通し筋16は複数のリブプレート6を貫通し道路橋継目の長手方向に延びている。
【0021】
排水パイプ4は、図1に示すように、プラウ誘導板5の切欠部14又はリブプレート6の切欠部17に嵌合するように、縦板部11の背面に溶接されているため、後打ちコンクリート8と透水性舗装9との境界部に設けられている。また、図2に示すように、排水パイプ4は道路橋継目の長手方向に延びるように設けられており、その下流端は道路橋端部において排水桝に接続されている。
【0022】
図3に示すように、継手部材10の継目19において、排水パイプ4は継目20を有している。継金具21は断面がコの字型をしており、その前端面は縦板部11に接続している。継目20に対してその側方から、継金具21を隣り合う2本の排水パイプ4に嵌め合わせることによって、排水パイプ4は繋がれている。これにより、切欠断部7に後打ちコンクリート8を排水パイプ4の上面と同じ高さまで打設するとき、排水パイプ4の継目20が後打ちコンクリート8によって塞がれてしまうことがない。また、排水パイプ4には少なくともその上面に多数の貫通孔22が形成されており、その貫通孔22を通って、透水性舗装9に浸透した雨水が排水パイプ4の中へと流入する。
【0023】
横板部12の下には防塵材23が設置され、横板部の隙間13から土砂等が進入するのを防いでいる。防塵材23の下には、内部保護板24が設置され、さらにその下に設置された弾性シール材25の耐久性を増す働きをしている。この弾性シール材25は高弾性バックアップ材26によって固定されている。27は可撓性を有する樋であり、縦板部11に支持され、つり下げられている。
【0024】
従って、以上のような排水パイプ4を設けられた伸縮継手3であれば、透水性舗装9に浸透し、透水性舗装9と後打ちコンクリート8との境界を道路橋縦断勾配に従い低位置側へ流れ、継手部材10の背部にまで浸透した雨水は、縦板部11の背面に取り付けられた排水パイプ4の貫通孔22から排水パイプ4内に流れ込み、排水パイプ4内を道路橋横断勾配に従い低位置側へ流れ、道路橋端部の排水桝に流れ込む。従って、プラウ誘導板5が設けられた伸縮継手3であっても、透水性舗装9に浸透した雨水が継手部材10の背部に溜まることがなくなる。しかも、プラウ誘導板の機能は損なわれない。
【0025】
<実施形態2>
本実施形態は図4及び図5に示す。
【0026】
本実施形態は実施形態1と同様の形態であって、継手部材10が、その両側が側方へ突出した凸部と相対的に凹んだ凹部が長手方向に交互に並ぶ波形になるよう形成されている両歯形の横板部28を有していることを特徴とする。
【0027】
従って、以上のような両歯形の横板部28を有する継手部材10から構成される伸縮継手3であっても、排水パイプ4は、プラウ誘導板5の機能を損なうことなく、透水性舗装9に浸透した雨水を排水することができる。
【0028】
<実施形態3>
本実施形態は図6に示す。
【0029】
本実施形態は実施形態1と同様の形態であって、導水部材として導水テープ29がプラウ誘導板5の切欠部14を貫通して設けられていることを特徴とする。
【0030】
プラウ誘導板5の切欠部14は、後打ちコンクリート8と透水性舗装9との境界に、後打ちコンクリート8の上に位置するように形成されている。
【0031】
導水テープ29は、不織布等による多孔質構造を有するテープである。導水テープ29は多孔質構造が引き起こす毛細管現象により、透水性舗装9から浸透してきた水を吸水することができる。2本の導水テープ29が、切欠部14を通りプラウ誘導板5を貫通して、幅員方向に延びており、そのうちの1本は後打ちコンクリート8の表面に貼り付けて設置され、もう1本は縦板部11の背面に貼り付けて設置されている。導水テープ29の下流端は道路橋端部において排水桝に接続されている。
【0032】
また、プラウ誘導板5の代わりにリブプレート6を配置した場合には、リブプレート6に切欠部を形成せず、リブプレート6の上端面と同じ高さまで打設された後打ちコンクリート8の表面に、上記導水テープ29を配置すればよい。
【0033】
なお、導水テープ29は後打ちコンクリート8の表面あるいは縦板部11の背面のどちらか一方にのみ配置されてもよい。
【0034】
従って、以上のような導水テープ29による導水部材で構成された排水構造であっても、透水性舗装9に浸透し、透水性舗装9と後打ちコンクリート8との境界を道路橋縦断勾配に従い低位置側へ流れ、継手部材10の背部にまで浸透した雨水は、切欠部14を通って設けられた導水テープ29に吸引され、導水テープ29により道路橋横断勾配の低位置側へと導かれて、道路橋端部の排水桝に導出される。
【0035】
従って、プラウ誘導板5が設けられた伸縮継手3であっても、透水性舗装9に浸透した雨水が継手部材10の背部に溜まることがなくなる。しかも、プラウ誘導板の機能は損なわれない。
【0036】
なお、本発明はプラウ誘導板5を継手部材10の両側に設置する場合にも適用することができる。また、プラウ誘導板5及びリブレート6を設けない道路橋継目部にも適用することができる。本発明は伸縮継手3の形式は問わず、縦板部11はジグザグに曲折して道路橋継目の長手方向に延びる波板であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
3 伸縮継手
4 導水部材
5 プラウ誘導板
8 後打ちコンクリート
9 舗装
10 継手部材
11 縦板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路橋の伸縮継手を構成するように道路橋継目部に設置され、互いに向かい合い継目長手方向に延びる縦板部を有する一対の継手部材と、
上記縦板部の背部に設けられ、且つ道路橋の継目長手方向に間隔をおいて配置された、除雪車のスノウプラウを上記伸縮継手の上を通過するように誘導するプラウ誘導板と、
上記縦板部の背部に打設された後打ちコンクリートと、
上記縦板部の背部において、上記後打ちコンクリートの上に設けられ、路面を形成する舗装と、
上記後打ちコンクリートと上記舗装の境界部に配置され、上記縦板部の背面に沿って道路橋継目の長手方向に延び、上記舗装から浸透する水を流入させ道路橋の端部へと導く導水部材とを備えてなり、
上記導水部材が路面下に埋設されていることを特徴とする道路橋継目部の排水構造。
【請求項2】
請求項1において、
上記導水部材が上記プラウ誘導板を貫通していることを特徴とする道路橋継目部の排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−122339(P2011−122339A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280395(P2009−280395)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(397006508)中外道路株式会社 (4)
【出願人】(500174328)中大実業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】