説明

道路補修自走作業車

【課題】作業者の移動に伴って、自動的に作業者に追従走行させることができる道路補修自走作業車を提供する。
【解決手段】車体フレーム12のフェンス28に第1〜第6超音波センサ29A〜29Fを設ける。車体フレーム12の前方に存在する作業者Pに各センサ29A〜29Fから超音波を照射し、反射された超音波を受信し、この信号に基づいて制御装置により作業車11と作業者Pとの間の速度ベクトル及び回転角速度Wを演算する。前記速度ベクトルV(a)及び回転角速度Wに基づいて、車体フレーム12と作業者Pとの間の距離が基準距離となるように、かつ作業者Pが車体フレーム12の基準方位H上に位置するように、後車輪14A,14Bの回転をそれぞれ制御し、作業者Pの移動に応じて作業車11を追従走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトの道路補修自走作業車に係り、詳しくは作業者の移動に伴って自動的に追従走行させることができる道路補修自走作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトの舗装道路に生じた亀裂を補修する作業車は、手押し式となっている。作業車の車体に搭載されたプロパンガスボンベから供給されるガスをガスコンロによって燃焼させることにより、貯留タンクに収容されたアスファルトを加熱溶融する。そして、貯留タンク内の溶融アスファルトを供給パイプの先端に設けた注入ノズルから舗装道路の亀裂に充填して補修する。特許文献1には、注入ノズルは備えていないが手押し式の道路補修用台車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−167605号公報(要約書参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の舗装道路の補修作業車は、手押し式であるため、供給パイプの先端に設けた注入ノズルを把持して補修作業を行う作業者と、補修作業車を移動させる作業者との二人が必要になる。このため、舗装道路の補修作業のコストが高くなるという問題があった。
【0005】
又、アスファルトを貯留する貯留タンクをガスコンロによって加熱するようになっていたので、風が強い日には、ガスコンロの火が消えてしまうこともあり、道路の補修作業の能率が低下するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、作業者の移動に伴って、自動的に作業者に追従走行することができる道路補修自走作業車を提供することにある。
本発明の別の目的は、上記目的に加えて、貯留タンクを加熱する加熱手段の気象条件による停止を防止して、補修作業の能率を向上することができる道路補修自走作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車体と、その前方の作業者との間の前後方向距離を検出する距離検出手段と、作業者の方位を検出する方位検出手段と、前記距離検出手段によって検出された前後方向距離が記憶媒体に予め設定された基準距離となるように車体を前後進させる前後進手段と、前記方位検出手段によって検出された方位が記憶媒体に予め設定された基準方位となるように調整する方位調整手段と、前記前後進手段及び方位調整手段を制御する制御手段とを備えていることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記距離検出手段及び方位検出手段は、複数の超音波センサ又はレーザレンジファインダであって、各超音波センサ又はレーザレンジファインダによって検出された信号に基づいて、車体から作業者までの速度ベクトル及び回転角速度を演算し、この速度ベクトル及び回転角速度に基づいて、前記前後進手段及び前記方位調整手段が作動されるように構成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記複数の超音波センサ又はレーザレンジファインダは、車体の旋回中心を中心とする円弧軌跡上に等ピッチで配列されていることを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記距離検出手段は、車体と作業者との間に架橋された操作紐の車体側における前記基準方位に対する垂直方向の傾斜角を検出する第1角度検出器であり、前記方位検出手段は、前記基準方位に対する前記操作紐の水平方向の傾斜角を検出する第2角度検出器であり、前記前後進手段は、前記第1角度検出器からの検出信号に基づいて、操作紐の傾斜角が予め設定された基準傾斜角となるように作動され、前記方位調整手段は、第2角度検出器によって検出された傾斜角を零度にするように構成されていることを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記車体には電気ヒータが搭載され、該電気ヒータの上面にアスファルトを貯留する貯留タンクが装設され、前記電気ヒータ及び左右の走行用駆動輪のモータを制御する制御装置が装設されていることを要旨とする。
【0012】
(作用)
この発明は、距離検出手段によって、車体と、その前方に存在する作業者との間の前後方向距離が検出されるとともに、方位検出手段によって、作業者の方位が検出される。前記距離検出手段によって検出された前後方向距離が予め設定された基準距離となるように、前後進手段によって、車体が前後進される。又、前記方位検出手段によって検出された方位が予め設定された基準方位となるように方位調整手段によって方位が調整される。このため、作業者の移動に伴って、作業車が自動的に追従して走行するように制御される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明によれば、作業者の移動に伴って、作業車を自動的に作業者に追従走行させることができ、道路の補修作業能率を向上することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、貯留タンクの加熱を電気ヒータにより行うことができるので、アスファルトの加熱溶融を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の道路補修作業車を具体化した実施形態を示す右側面図。
【図2】作業車の背面図。
【図3】作業車の一部省略平面図。
【図4】作業車の走行を制御する制御システムのブロック回路図。
【図5】第1〜第6超音波センサの機能の説明図。
【図6】第1〜第6超音波センサの機能の説明図。
【図7】第1〜第6超音波センサの機能の説明図。
【図8】この発明の別の実施形態を示す道路補修作業車の略体側面図。
【図9】道路補修作業車の略体平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の道路補修作業車を具体化した一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、道路補修作業車11の車体フレーム12の前側には、垂直軸線の周りで水平方向に旋回可能なキャスターよりなる前車輪13が備えられている。車体フレーム12の後側には、走行用の左右一対の後車輪14A,14Bが備えられている。前記後車輪14A,14Bは、正逆回転可能なサーボモータM1,M2によってそれぞれ独立して積極回転されるようになっている。前記車体フレーム12の下部には、前記サーボモータM1,M2を駆動するためのバッテリーBが搭載されている。
【0017】
前記車体フレーム12の上部には、電気ヒータとしてのIHヒータ15が配設され、該IHヒータ15の加熱板の上面には、アスファルトを貯留する貯留タンク16が装設されている。図2に示すように、前記車体フレーム12の中段には、前記貯留タンク16内のアスファルトを外部に導出するためのポンプ17が配設されている。前記貯留タンク16に設けた吐出フランジ18には、手動操作用の開閉バルブ19を介して導出パイプ20が接続され、該導出パイプ20の先端は、前記ポンプ17の吸入口に接続されている。前記ポンプ17の吐出口には、供給パイプ21の基端部が接続され、該供給パイプ21の先端部には、溶融状態のアスファルトを道路の亀裂に注入するための注入ノズル22が接続されている。前記車体フレーム12の中段には、前記ポンプ17を駆動するためのモータ23及びベルト伝動機構を含む駆動機構24が配設されている。
【0018】
図1に示すように、前記車体フレーム12には、フェンス28が装着されている。このフェンス28の前側は、図3に示すように円弧状となっていて、この円弧状のフェンス28に、距離検出手段及び方位検出手段を構成する第1〜第6超音波センサ29A〜29Fが取り付けられている。各センサ29A〜29Fは、図5に示すように、等ピッチで円弧軌跡上に配列されている。各センサ29A〜29Fは、所定の領域に向かって超音波を発信する発振部(図示略)が設けられるとともに、作業者Pに照射されて反射された超音波を受信する受信部(図示略)が設けられている。
【0019】
第1〜第6超音波センサ29A〜29Fによって、後述するように、作業車11と、その前方の作業者Pとの間の前後方向距離が検出されるようになっている。又、後述するように、作業車11の進行方向の基準方位Hに対する作業者の実際の方位が検出されるようになっている。この実施形態においては、前記基準方位Hは、図3に示すように、作業車11の前後方向に指向する中心軸線Kに設定されている。
【0020】
次に、図1〜図4に基づいて、前記第1〜第6超音波センサ29A〜29Fによって検出された検出信号に基づいて、作業車11と作業者Pとの間の前後方向距離を基準距離に保持するとともに、作業者Pの方位を作業車11の基準方位Hに調整するための制御システムについて説明する。
【0021】
図1に示すように、前記車体フレーム12の中段位置には、制御手段としての制御装置31が装着されている。この制御装置31の内部には、図4に示すように、CPU32が配設され、該CPU32には、制御動作のプログラムを予め記憶した記憶媒体としてのリードオンリーメモリ(ROM)33が接続されるとともに、各種のデータを記憶するための記憶媒体としてのランダムアクセスメモリ(RAM)34が接続されている。記憶媒体として、RAM34以外に例えば、ハードディスク等を用いてもよい。
【0022】
前記CPU32には前記第1〜第6超音波センサ29A〜29Fが接続されるとともに、図示しない駆動回路を介して前記サーボモータM1,M2が接続されている。前記CPU32には、第1〜第6超音波センサ29A〜29Fからの検出信号及びROM33に記憶されたプログラムに基づいて、後述する各種の演算等を行うための機能が付与されている。
【0023】
この実施形態においては、前記後車輪14A,14B、サーボモータM1,M2及び制御装置31等によって、作業車11を前進又は後進させるための前後進手段及び作業車11の方位を調整するための方位調整手段が構成されている。
【0024】
図示しないが、前記作業車11から離隔した位置には、該作業車11のIHヒータ15及びモータ23の制御を行うための制御台車(図示略)が設けられている。該制御台車には、発電機から電力線を介して電力が供給されるようになっている。前記制御台車には、パンタグラフ方式の伸縮機構が備えられ、該伸縮機構に敷設されたリード線を通して、前記作業車11の制御装置31と、制御台車が接続されている。前記電力線は伸縮機構を介して前記IHヒータ15、モータ23及び制御装置31等に電力を供給するようになっている。
【0025】
次に、前記のように構成した作業車11の動作について説明する。
図1に示すIHヒータ15の起動スイッチをオンすることによって、貯留タンク16の内部に貯留されているアスファルトがIHヒータ15によって加熱されて溶融状態となる。この状態で、作業者Pが開閉バルブ19を開放するとともに、供給パイプ21の先端に設けられた注入ノズル22を把持して、注入ノズル22の近傍に設けられたモータ23起動用のスイッチ(図示略)がオンされると、該モータ23が起動されて、ポンプ17が駆動され、貯留タンク16内に貯留されている溶融状態のアスファルトがポンプ17によって汲み上げられて、導出パイプ20及び供給パイプ21を介して注入ノズル22に供給される。該ノズル22から排出された溶融アスファルトは舗装道路の亀裂に注入され、補修作業が行われる。
【0026】
次に、制御装置31によって行われる作業者Pの移動に伴って作業車11を追従走行させる制御方法について説明する。
作業車11の独立二輪駆動型の左右の後車輪14A,14Bの回転角速度をωr,ωlとし、図3に示すように、車輪半径をR、両後車輪14A,14Bの間の距離をTとする。又、作業車11の中心Oを両後車輪14A,14Bの回転軸線E上の中心と設定する。作業車11の中心Oにおける並進速度V[ m/sec] 及び回転角速度W[ rad/sec] は、制御装置31のCPU32によって次の(1)(2)式、又は(3)式で求められる。
【0027】
【数1】

【0028】
【数2】

【0029】
【数3】

一方、(1)式及び(2)式より、後車輪14A,14Bの回転角速度ωr,ωlを並進速度V及び回転角速度Wで記述すると、次の(4)式及び(5)式となる。
【0030】
【数4】

【0031】
【数5】

従って、作業車11の並進速度Vと、回転角速度Wとを指令値とし、後車輪14A,14Bの回転角速度ωr,ωlを制御装置31のCPU32によってそれぞれ演算し、該回転角速度ωr,ωlによりサーボモータM1,M2を制御することにより、作業車11の走行(軌道)を制御することができる。
【0032】
次に、図5〜図7に基づいて、前記第1〜第6超音波センサ29A〜29Fによって検出された検出信号に基づいて、前述の(4)式及び(5)式の並進速度V及び回転角速度Wに代入される並進速度V及び回転角速度WをCPU32によって演算する方法について説明する。
【0033】
図5及び図6に示すように、第1〜第6超音波センサ29A〜29Fによって検出される作業車11と、作業者Pとの実測距離をD(i)(t)[ m] 、作業車11と作業者Pとの基準距離をd[ m] とする。k,kを定数、V(a)を速度ベクトルとする。又、速度ベクトルV(a)の向きを、φ[ rad] 、大きさをV(t)[ m/sec] とする。
【0034】
図5に示すように、第1〜第6超音波センサ29A〜29Fは、作業車11の中心Oを中心とする半径s[ m] の円弧軌跡上に配設され、各センサ29A〜29Fの座標位置(作業車11の中心O)に関するx軸方向成分をS(i)、y軸方向成分をS(i)、第1〜第6超音波センサ29A〜29Fのx軸方向に対する設置角度をθ(i)[ rad] と定義する。なお、「i」は第1〜第6超音波センサ29A〜29Fのいずれか一つを意味する。
【0035】
前記x軸方向成分S(i)及びy軸方向成分S(i)は(6)式及び(7)式で表される。
【0036】
【数6】

【0037】
【数7】

又、基準距離の位置(初期位置:図5の二点鎖線)からの作業者Pまでの距離d(i)(t)[ m] は、次の(8)式で表される。
【0038】
【数8】

一方、図6より速度ベクトルV(a)は、v(t)と、v(t)の2つの成分に分割される。ここで、x軸方向及びy軸方向の速度ベクトル成分v(t),v(t)は、センサ29A〜29Fの個数をn(本実施形態では6個)とすると、次の(9)式及び(10)式で演算されるものとする。
【0039】
【数9】

【0040】
【数10】

従って、速度ベクトルV(a)の大きさV(t)[ m/sec] は、次の(11)式で算出される。
【0041】
【数11】

又、速度ベクトルV(a)の向きφ(t)は、次の(12)式によって求められる。
【0042】
【数12】

回転角速度W(t)は、次の(13)式によって求められる。
【0043】
【数13】

以上のように、前述した(4)式及び(5)式における並進速度V及び回転角速度Wとして、CPU32によって(11)式及び(13)式で演算された並進速度V及び回転角速度Wを指令値として代入することによって、2つの後車輪14A,14Bの回転角速度ωl,ωrが演算される。そして、これらの回転角速度ωr,ωlに基づいて、サーボモータM1,M2が制御され、作業車11の追従走行が制御される。図7に示すように、作業車11と作業者Pとの距離が基準距離d[ m] よりも小さくなった場合には、速度ベクトルV(a)が逆方向を向くので、作業車11は、後退される。このようにして、作業車11と作業者Pの間の実測距離D(i)(t)[ m] が基準距離d[ m] となるように、かつ作業車11に対する作業者Pの実測方位が基準方位HとなるようにサーボモータM1,M2の回転がそれぞれ制御される。
【0044】
上記実施形態の作業車11によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記第1実施形態では、作業車11のフェンス28に第1〜第6超音波センサ29A〜29Fを設け、各センサ29A〜29Fによって検出された検出信号を図4に示す制御装置31のCPU32に送信し、CPU32によって、図6に示すように、作業車11と作業者Pとの間の実測距離D(i)(t)[ m] 及び実測方位を速度ベクトルV(a)及び回転角速度Wとして演算する。そして、これらの速度ベクトルV(a)及び回転角速度Wに基づいて2つの後車輪14A,14Bの回転角速度ωr,ωlを演算することにより作業車11を走行するようにした。このため、作業者Pが補修作用のため前方に移動しても、作業車11と作業者Pとの距離が基準距離d[ m] となるように、かつ作業車11の実測方位が基準方位Hとなるように、二つの後車輪14A,14Bの回転が制御される。このため、作業者Pは道路のアスファルトによる補修作業を能率的に行うことができる。
【0045】
(2)上記第1実施形態では、作業車11の中心Oを中心とする円弧軌跡上に位置するように、第1〜第6超音波センサ29A〜29Fを等ピッチで配設し、各センサ29A〜29Fの検出信号に基づいて、x軸方向の速度ベクトル成分v(t)及びy軸方向の速度ベクトル成分v(t)を演算するようにした。このため、作業車11の中心Oを座標基準とする前述した各種の演算式を単純化することができる。又、超音波センサの検出範囲を広くして、速度ベクトルV(a)及び回転角速度Wの演算を適正に行うことができ、検出精度を向上することができる。
【0046】
次に、図8及び図9に基づいて、この発明の舗装道路補修作業車11の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態においては、図8に示すように、作業車11の車体フレーム12に操作紐41の一端が連結され、操作紐41の他端が作業者Pに架橋されている。前記車体フレーム12には操作紐41の基準方位H(水平線)に対する垂直方向の第1傾斜角度θを検出するためのポテンショメータよりなる第1角度検出器42が設けられている。又、図9に示すように、車体フレーム12には、基準方位Hに対する水平方向の第2傾斜角度φを検出するためのポテンショメータよりなる第2角度検出器43が設けられている。そして、第1及び第2角度検出器42,43によって、前記第1傾斜角度θ及び第2傾斜角度φを検出し、得られた傾斜角度θ,φに比例ゲインk,kを乗じた値を速度ベクトルV(a)、回転角速度Wとする。速度ベクトルV(a)及び回転角速度Wは、次の(14)式及び(15)式によって演算される。
【0047】
【数14】

【0048】
【数15】

作業車11の後車輪14A,14Bの回転角速度ωr,ωlは、次の(16)式及び(17)式によって演算される。
【0049】
【数16】

【0050】
【数17】

但し、K=1/R、K=T/2とする。
【0051】
さらに、回転角速度ωr,ωlは、次の(18)式及び(19)式のように整理することができる。但し、f=K、f=K
【0052】
【数18】

【0053】
【数19】

この実施形態では、図8に示すように、操作紐41の基準角度θを45°としている。この場合、作業車11と作業者Pとの実測距離をL、基準角度θにおける操作紐41の曲率半径rとすると、基準距離lは次の(20)式で表される。又、実測距離Lは(21)式で表される。
【0054】
【数20】

【0055】
【数21】

作業車11と作業者Pの間の基準距離lは、次の(22)式で調整することができる。
【0056】
【数22】

前述した第2の実施形態においては、第1及び第2角度検出器42,43によって、操作紐41の基準方位Hに対する垂直方向の傾斜角度θ及び水平方向の傾斜角度φをそれぞれ検出する。そして、この検出された第1及び第2傾斜角度θ,φを前述した(18)式及び(19)式の第1傾斜角度θ及び第2傾斜角度φに代入することにより、後車輪14A,14Bの回転角速度ωr,ωlを演算することができる。この結果、第1傾斜角度θが基準角度θになるように、かつ第2傾斜角度φが零(基準方位H)となるようにサーボモータM1,M2の回転がそれぞれ制御される。従って、作業者Pの移動に伴って作業車11が追従走行され、道路の補修作業能率を向上することができる。
【0057】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、図3に示すように、両後車輪14A,14Bの回転軸線Eの中心Oを作業車11の中心Oとしたが、これを前方にオフセットしてもよい。この場合には、オフセット量を考慮して、前述した各式が設定される。
【0058】
・超音波センサを2個〜5個、或いは7個〜10個用いてもよい。
・第1〜第6超音波センサ29A〜29Fに代えて、複数のレーザレンジファインダを用いて、速度ベクトルV(a)及び回転角速度Wを演算するようにしてもよい。
【0059】
・前記実施形態では、外部電力を用いて、作業車11を作動するようにしたが、前記車体フレーム12に発電機或いは燃料電池を搭載して、作業車11を作動するようにしてもよい。
【0060】
・IHヒータ15に代えて、ガスコンロを用いても良い。
【符号の説明】
【0061】
H…基準方位、l…基準距離、P…作業者、V…並進速度、V(a)…速度ベクトル、W,ωl,ωr…回転角速度、11…作業車、14A,14B…後車輪、16…貯留タンク、23…モータ、31…制御装置、41…操作紐、42…第1角度検出器、43…第2角度検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、その前方の作業者との間の前後方向距離を検出する距離検出手段と、
作業者の方位を検出する方位検出手段と、
前記距離検出手段によって検出された前後方向距離が記憶媒体に予め設定された基準距離となるように車体を前後進させる前後進手段と、
前記方位検出手段によって検出された方位が記憶媒体に予め設定された基準方位となるように調整する方位調整手段と、
前記前後進手段及び方位調整手段を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする道路補修自走作業車。
【請求項2】
請求項1において、前記距離検出手段及び方位検出手段は、複数の超音波センサ又はレーザレンジファインダであって、各超音波センサ又はレーザレンジファインダによって検出された信号に基づいて、車体から作業者までの速度ベクトル及び回転角速度を演算し、この速度ベクトル及び回転角速度に基づいて、前記前後進手段及び前記方位調整手段が作動されるように構成されていることを特徴とする道路補修自走作業車。
【請求項3】
請求項2において、前記複数の超音波センサ又はレーザレンジファインダは、車体の旋回中心を中心とする円弧軌跡上に等ピッチで配列されていることを特徴とする道路補修自走作業車。
【請求項4】
請求項1において、前記距離検出手段は、車体と作業者との間に架橋された操作紐の車体側における前記基準方位に対する垂直方向の傾斜角を検出する第1角度検出器であり、前記方位検出手段は、前記基準方位に対する前記操作紐の水平方向の傾斜角を検出する第2角度検出器であり、前記前後進手段は、前記第1角度検出器からの検出信号に基づいて、操作紐の傾斜角が予め設定された基準傾斜角となるように作動され、前記方位調整手段は、第2角度検出器によって検出された傾斜角を零度にするように構成されていることを特徴とする道路補修自走作業車。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記車体には電気ヒータが搭載され、該電気ヒータの上面にアスファルトを貯留する貯留タンクが装設され、前記電気ヒータ及び左右の走行用駆動輪のモータを制御する制御装置が装設されていることを特徴とする道路補修自走作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−169055(P2011−169055A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35272(P2010−35272)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(304000836)学校法人 名古屋電気学園 (22)
【出願人】(392001391)株式会社市川工務店 (6)
【Fターム(参考)】