説明

遠心ポンプの羽根車支持治具、これを備えているポンプユニット、遠心ポンプの羽根車支持方法

【課題】ケーシングに対して羽根車が非接触で回転する遠心ポンプにおいて、輸送時等における羽根車の損傷を抑える羽根車支持治具を提供する。
【解決手段】ケーシング60の吸込口6からケーシング内に端部が挿通可能な棒部311と、棒部の端部に設けられ、弾性変形することで、その一部である嵌入部318が羽根車10の前シュラウド20と後シュラウド40との間に入り込み、羽根車に対して軸線方向及び径方向に相対移動不能になる第一支持部315と、予め定められた以上の外力が働かない限り、棒部に対して相対移動不能に設けられ、嵌入部が前及び後シュラウドの間に入り込んでいるときにケーシングに接触して、ケーシングと羽根車とが径方向において非接触の状態でケーシングに対して径方向に移動不能になり且つケーシングに対して軸線方向における棒部の相対位置調整が可能な第二支持部材325,350と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸線回りに回転可能な羽根車と、回転軸線を中心とする径方向及び回転軸線が延びている軸線方向に羽根車を相対移動可能に且つ非接触状態で回転可能に収納するケーシングとを備えている遠心ポンプの羽根車支持治具、これを備えているポンプユニット、遠心ポンプの羽根車支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプには、磁気軸受や動圧軸受を有し、ケーシングに対して羽根車が非接触で回転するものがある。このようなポンプでは、ケーシングに対して羽根車が各方向に相対移動可能であるため、例えば、搬送時に、羽根車がケーシング内で相対移動し、そのときの衝撃等により、羽根車やケーシングが損傷するおそれがある。
【0003】
そこで、以下の特許文献1では、ケーシング内で羽根車を一時的に固定する固定部材が開示されている。この特許文献1に開示されている固定部材は、ケーシングの吸込口からケーシング内に入り込む円柱部と、この円柱部の一方の端部に形成され、ケーシングの吸込口を塞ぐキャップ部と、を有している。円柱部は、吸込口からケーシング内に入り込み軸線方向に移動する過程で、円柱部の他方の端部が羽根車に接し、この羽根車を軸線方向においてケーシングの内面に押し付ける。このとき、キャップ部は、吸込口が形成されている吸込管部の軸線方向端部及び外周面に接触して、円柱部がこれ以上ケーシング内に入り込むことを防ぐ。この結果、ケーシングに対する固定部材の相対位置が一意に定まり、ケーシングに対して、固定部材の円柱部に押さえ付けられている羽根車が相対移動不能になる。
【0004】
また、特許文献1では、以下の固定部材も開示している。この固定部材は、ケーシングの吸込口からケーシング内に入り込む棒部と、この棒部の一方の端部に設けられている弾性球状部と、この棒部の他方の端部に設けられている前述のキャップ部とを有している。弾性球状部は、棒部と共に吸込口からケーシング内に入り込み軸線方向に移動する過程で、羽根車内に入り込み、軸線方向で羽根車と相対移動不能になる。この弾性球状部が羽根車内に入り込む際、この羽根車を軸線方向においてケーシングの内面に押し付けることになる。このとき、先に説明した固定部材と同様、キャップ部は、吸込口が形成されている吸込管部の軸線方向端部及び外周面に接触して、弾性球状部がこれ以上軸線方向に移動することを防ぐ。この結果、先に説明した固定部材と同様、ケーシングに対する固定部材の相対位置が一意に定まり、ケーシングに対して、固定部材の弾性球状部が内部に入り込んでいる羽根車が相対移動不能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のいずれの固定部材でも、羽根車がケーシングの内面に押し付けられた状態で、ケーシングに対して羽根車が相対移動不能になるため、ポンプが輸送時に衝撃を受けると、ケーシング内面に羽根車が接した状態で振動等して、ケーシングや羽根車を傷付ける恐れがある、という問題点がある。さらに、上記特許文献1に記載の技術では、ケーシング内で羽根車が一時的に固定されている状態で、ケーシング内に処理流体(例えば、洗浄液)を入れて、この羽根車の表面やケーシング内面を処理しようとしても、ケーシングの内面と羽根車の表面との接触部分に処理流体が行き渡らず、十分な処理ができないという問題点もある。
【0007】
そこで、本発明は、輸送時等において、ポンプが衝撃を受けた場合でも、ケーシング及び羽根車の損傷を防ぐことができ、しかも、羽根車の表面やケーシング内面を処理流体で十分に処理することができる羽根車支持治具、これを備えたポンプユニット、羽根車の支持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための発明に係る遠心ポンプの羽根車支持治具は、
回転軸線回りに回転可能な羽根車と、該回転軸線を中心とする径方向及び該回転軸線が延びている軸線方向に該羽根車を相対移動可能に且つ非接触状態で該回転軸線回りに回転可能に収納するケーシングとを備え、前記ケーシングには、吐出口が形成されていると共に、前記回転軸線の延長線上に吸込口が形成され、前記羽根車は、前記回転軸線を中心として周方向に複数設けられた羽根と、前記吸込口と対向する羽根車入口が形成され複数の該羽根の前記吸込口側である前側を覆う前シュラウドと、複数の該羽根の前記吸込口とは反対側の後側を覆う後シュラウドと、を有している密閉型である、遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記吸込口から前記ケーシング内に端部が挿通可能な棒部材と、前記棒部材の前記端部に設けられ、弾性変形することで、その一部である嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込み、前記羽根車に対して前記軸線方向及び前記径方向に相対移動不能になる第一支持部材と、予め定められた以上の外力が働かない限り、前記棒部材に対して相対移動不能に設けられ、前記第一支持部材の前記嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込んでいるときに前記ケーシングに接触して、該ケーシングと前記羽根車とが前記径方向において非接触の状態で該ケーシングに対して該径方向に移動不能になり且つ前記軸線方向に相対移動が拘束されつつ、該ケーシングに対して該軸線方向における前記棒部材の相対位置調整が可能な第二支持部材と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
当該羽根車支持治具では、ケーシングに対して軸線方向における棒部材の相対位置を調整することで、径方向のみならず軸線方向においても、ケーシングと羽根車との非接触状態を確保することができる。よって、当該羽根車支持治具では、輸送時等において、ポンプが衝撃を受けた場合でも、ケーシング及び羽根車の損傷を防ぐことができ、しかも、羽根車の表面やケーシング内面を広い範囲に渡って処理液で処理することができる。
【0010】
ここで、前記遠心ポンプの羽根車支持治具において、前記第二支持部材は、前記棒部材に設けられ、前記吸込口から前記ケーシング内に入り込んで、前記第一支持材の前記嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込んでいるときに前記ケーシングの内周面に接触する内側第二支持部材を有してもよい。
【0011】
この場合、前記内側第二支持部材には、前記第一支持材の前記嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込み、且つ前記ケーシングと前記羽根車とが前記軸線方向で非接触の状態のときに、前記ケーシングの前記吸込口の縁と該軸線方向で一致する部位に外観上見分けがつくマークが施されていることが好ましい。さらに、この場合、前記内側第二支持部材は、前記棒部材が延びている方向の両端面と該両端面をつなぐ側面と有し、該両端面のうちで前記第一支持部材が設けられている側とは反対側の端面と該側面との角が前記マークを成していることが好ましい。
【0012】
このように、棒材に設けられている内側第二支持部材にマークが施されていると、このマークを見つつ、ケーシングに対して軸線方向における棒部材の相対位置を調整することで、軸線方向においてケーシングと羽根車との非接触状態を確実に実現することができる。
【0013】
また、前記羽根車支持治具において、前記棒部材は、前記内側第二支持部材を基準にして、前記第一支持部材と反対側にも延びていることが好ましい。
【0014】
棒部材が第一支持部材と反対側にも延びていると、この部分を持つことで、ケーシングに対して軸線方向における棒部材の相対位置を容易に調整することができる。
【0015】
また、前記羽根車支持治具において、前記内側第二支持部材には、該内側第二支持部材を基準として前記棒部材が延びている方向の一方の側から他方の側へ通じる通路が形成されていることが好ましい。この場合、前記内側第二支持部材は、前記棒部材を中心として、該棒部材の周方向に間隔をあけて配置され、前記ケーシングの前記内周面に接触可能な複数のケーシング内接部を有し、複数の該ケーシング内接部の相互間が前記通路を成してもよい。
【0016】
このように、通路が形成されていると、内側第二支持部材を基準にして、棒部材が延びている方向の一方の側から他方の側へ処理流体を通すことができる。
【0017】
また、前記羽根車支持治具において、前記第二支持部材は、予め定められた以上の外力が働かない限り、前記棒部材に対して相対移動不能に設けられ、前記吸込口周りの前記ケーシングの外周面に接して、予め定められた以上の外力が働かない限り、前記ケーシングに対して相対移動不能になる外側第二支持部材を有してもよい。
【0018】
また、前記羽根車支持治具において、前記外側第二支持部材には、前記吸込口周りの前記ケーシングの外周面に接しているときに、該ケーシング内と、該ケーシング外であって該外側第二支持部材外との間で流体を流すことができる通路が形成されていることが好ましい。
【0019】
このように通路が形成されていると、ケーシング内と外部との間で、この通路を介して処理流体を出し入れすることができる。
【0020】
また、羽根車支持治具において、前記ケーシングは、筒状を成し、端部の開口が前記吸込口を成す吸込管部を有しており、前記外側第二支持部材は、筒状を成して両端が開口し、一端の開口から前記吸込管部が挿入されると、内周面が該吸込管部の外周面に接して、予め定められた以上の外力が働かない限り、前記ケーシングに相対移動不能になる取付用筒を有してもよい。
【0021】
この場合、前記外側第二支持部材は、二つの管が相互に接続され且つ該管相互が連通しているT字管を有し、該T字管は、該T字管におけるTの横線に相当する管部が、前記取付用筒の他端に内嵌又は外嵌して、該取付用筒に対して相対移動不能になるものであってもよい。
【0022】
このように、T字管を有していると、T字管におけるTの縦線に相当する管部からケーシング内へ、又はケーシング内からこの管部を介して外部へ処理流体を出し入れすることができる。
【0023】
また、前記羽根車支持治具において、前記取付用筒は、透明又は半透明の材料で形成されていることが好ましい。
【0024】
取付用筒が透明又は半透明で形成されていると、ケーシングに対する棒部材の相対位置を目視することができ、棒部材の位置調整を容易に行うことができる。
【0025】
また、前記羽根車支持治具において、前記第一支持部材は、複数の前記羽根の数量と同じ数量の前記嵌入部を有し、複数の該嵌入部が、それぞれ、前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込むと、複数の該羽根のうちの一の羽根に接触して、前記羽根車に対して前記回転軸線回りの周方向に相対移動不能になるものであってもよい。
【0026】
当該羽根車支持治具では、回転軸線回りの周方向における第一支持部材に対する羽根車の相対移動の拘束力を高めることができる。
上記問題点を解決するための発明に係るポンプユニットは、
前記羽根車支持治具と、前記遠心ポンプと、を備えていることを特徴とする。
【0027】
当該ポンプユニットも、前記羽根車支持治具を有しているので、径方向及び軸線方向におけるケーシングと羽根車との非接触状態を確保することができる。
【0028】
また、上記問題点を解決するための発明に係る遠心ポンプの羽根車支持方法は、
回転軸線回りに回転可能な羽根車と、該回転軸線を中心とする径方向及び該回転軸線が延びている軸線方向に該羽根車を相対移動可能に且つ非接触状態で回転可能に収納するケーシングとを備え、前記ケーシングには、吐出口が形成されていると共に、前記回転軸線の延長線上に吸込口が形成され、前記羽根車は、前記回転軸線を中心として周方向に複数設けられた羽根と、前記吸込口と対向する羽根車入口が形成され複数の該羽根の前記吸込口側である前側を覆う前シュラウドと、複数の該羽根の前記吸込口とは反対側の後側を覆う後シュラウドと、を有している密閉型である、遠心ポンプの羽根車支持方法において、
前記吸込口から前記ケーシング内に端部が挿通可能な棒部材と、前記棒部材の前記端部に設けられ、弾性変形することで、その一部である嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込み、前記羽根車に対して前記軸線方向及び前記径方向に相対移動不能になる第一支持部材と、予め定められた以上の外力が働かない限り、前記棒部材に対して相対移動不能に設けられ、前記第一支持部材の前記嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込んでいるときに前記ケーシングに接触して、該ケーシングと前記羽根車とが前記径方向において非接触の状態で該ケーシングに対して該径方向に移動不能になり且つ前記軸線方向に相対移動が拘束されつつ、該ケーシングに対して該軸線方向における前記棒部材の相対位置調整が可能な第二支持部材と、を備えている羽根車支持治具を準備し、
前記棒部材の前記端部側と共に該端部に固定されている前記第一支持部材を弾性変形させて前記吸込口から前記ケーシング内に挿入し、さらに、該第一支持部材を前記羽根車入口から前記羽根車内に挿入して、弾性変形している該第一支持部材の復帰力により前記嵌入部を前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入れ込み、前記第二支持部材を前記ケーシングに対して接触させて、前記ケーシングと前記羽根車とが前記径方向において非接触の状態で該ケーシングに対して該径方向に移動不能にした後、前記ケーシングと前記羽根車とが前記軸線方向において非接触の状態になるよう、該軸線方向における該ケーシングに対する前記棒部材の相対位置を調節する、ことを特徴とする。
【0029】
当該羽根車支持方法では、ケーシングに対して軸線方向における棒部材の相対位置を調整することで、径方向のみならず軸線方向においても、ケーシングと羽根車との非接触状態を確保することができる。よって、当該羽根車支持方法では、輸送時等において、ポンプが衝撃を受けた場合でも、ケーシング及び羽根車の損傷を防ぐことができ、しかも、羽根車の表面やケーシング内面を広い範囲に渡って処理液で処理することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、径方向及び軸線方向におけるケーシングと羽根車との非接触状態を確保することができる。よって、本発明によれば、輸送時等において、ポンプが衝撃を受けた場合でも、ケーシング及び羽根車の損傷を防ぐことができ、しかも、羽根車の表面やケーシング内面を広い範囲に渡って処理液で処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る一実施形態における遠心ポンプ及び駆動装置の平面図である。
【図2】図1におけるII矢視図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】本発明に係る一実施形態における遠心ポンプの断面図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における遠心ポンプ及び駆動装置の縦断面を模式的に描いた模式図である。
【図6】本発明に係る一実施形態における支持治具の分解斜視図である。
【図7】本発明に係る一実施形態における支持治具及び遠心ポンプの断面を模式的に描いた模式図(支持前)である。
【図8】本発明に係る一実施形態における支持治具及び遠心ポンプの断面を模式的に描いた模式図(支持中)である。
【図9】本発明に係る一実施形態における流体口付き取付具を有する支持治具及び遠心ポンプの断面を模式的に描いた模式図(支持中)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るポンプユニットの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
本実施形態のポンプユニットは、図5に示すように、磁気カップリング遠心ポンプ100(以下、単に遠心ポンプという)と、この遠心ポンプ100を駆動させる駆動装置200と、を備えている。遠心ポンプ100は、密閉型の羽根車10と、この羽根車10を回転軸線A回りに回転可能に覆うポンプケーシング60と、を備えている。
【0034】
さらに、本実施形態のポンプユニットは、図7及び図9に示すように、ポンプケーシング60に対して羽根車10の相対移動を規制する羽根車支持治具300(以下、単に支持治具という)を備えている。
【0035】
図1〜図4に示すように、ポンプケーシング60には、流体を吐出するための吐出口(図1及び図2参照)7が形成されていると共に、回転軸線Aの延長線上に流体を吸い込むための吸込口6が形成されている。なお、以下では、回転軸線Aが延びている軸線方向Daで、ポンプケーシング60の吸込口6側を前側、その反対側を後側とする。また、回転軸線Aに垂直な方向の径方向で、回転軸線Aに近づく向き側を内側、回転軸線Aから遠ざかる向き側を外側とする。
【0036】
羽根車10は、回転軸線Aを中心として設けられた複数の羽根11と、複数の羽根11の前側を覆う前シュラウド20と、複数の羽根11の後側を覆う後シュラウド40と、を有している。この羽根車10は、以上のように、複数の羽根11の前後が前シュラウド20及び後シュラウド40により覆われることにより、密閉型の羽根車を成している。羽根車10の複数の羽根11、前シュラウド20、後シュラウド40は、互いに接合されている。なお、本実施形態の羽根車10の羽根11は、3つである。但し、羽根11はこれに限定されるものではなく、4つ以上であってもよい。
【0037】
前シュラウド20は、回転軸線Aを中心として円筒状を成す入口筒部21と、入口筒部21の後端に設けられ、複数の羽根11の前側を覆う前側板部31と、を有している。入口筒部21の軸線方向Daの前側には開口が形成されており、この開口がポンプケーシング60の吸込口6と対向する羽根車入口12を成す。入口筒部21と前側板部31との境には、後シュラウド40側に向かって軸線方向Daに伸びる凸部29が形成されている。また、後シュラウド40は、複数の羽根11の後側を覆う後側板部41と、後側板部41に後端に設けられ、回転軸線Aを中心として円柱状の軸部51と、を有している。
【0038】
前シュラウド20の前側板部31及び後シュラウド40の後側板部41は、軸線方向Daから見た形状がいずれも回転軸線Aを中心とした円形である。前側板部31と後側板部41とは、軸線方向Daに離れており、これら前側板部31と後側板部41との間に複数の羽根11が固定されている。前側板部31と後側板部41との間であって径方向の外縁は、羽根車出口13を成している。入口筒部21内、及び前側板部31と後側板部41との間であって複数の羽根11の相互間は、羽根車内流路Prを形成している。
【0039】
後シュラウド40の軸部51には、軸線方向Daに回転軸線A上を貫通し、軸部51の後端面53とポンプケーシング60との間と羽根車内流路Prとを連通させる貫通孔56が形成されている。この軸部51には、その外周面52と貫通孔56の内周面との間の位置に、永久磁石で形成された複数の従動磁石19が埋め込まれている。
【0040】
ポンプケーシング60は、羽根車10の前シュラウド20を覆うポンプ前ケーシング61と、羽根車10の後シュラウド40を覆うポンプ後ケーシング81とを有している。
【0041】
ポンプ前ケーシング61は、吸込ホースが接続される略円筒状の吸込管部62と、吸込管部62の後端から後側に向って次第に内径が拡径されている拡径管部65と、拡径管部65の後端に設けられ前シュラウド20の入口筒部21の外周面22と間隔を開けて対向する内周面68が形成されている前軸受形成部67と、前軸受形成部67の後端に設けられ前シュラウド20の前側板部31を覆う前ケーシング本体部71と、を有している。
【0042】
吸込管部62の前端は開口しており、この開口がポンプケーシング60の吸込口6を成している。
【0043】
前ケーシング本体部71は、前軸受形成部67の後端から外側に広がり、前シュラウド20の前側板部31の前面32と軸線方向Daに間隔をあけて対向する平板リング状の前面対向部72と、回転軸線Aを中心として略円筒状を成し、前面対向部72の外周縁から後側に延びる前本体筒部75と、を有している。前本体筒部75の内周面76の回転軸線Aに対して垂直な断面での形状は、ボリュート形状を成している。この前本体筒部75の内周面76は、前シュラウド20の前側板部31の外周縁と間隔をあけて対向している。
【0044】
ポンプ後ケーシング81は、前ケーシング本体部71の後端に設けられ後シュラウド40の後側板部41を覆う後ケーシング本体部91と、後ケーシング本体部91に設けられ後シュラウド40の軸部51の外周面52と間隔をあけて対向する内周面83が形成されている後軸受形成部82と、後軸受形成部82の後端に設けられ後シュラウド40の軸部51と軸線方向Daに間隔をあけて対向する平板円形の後壁板部85と、を有している。
【0045】
後ケーシング本体部91は、回転軸線Aを中心として略円筒状を成し、前ケーシング本体部71の後端から後側に延びる後本体筒部92と、後本体筒部92の後端から内側に広がり、後シュラウド40の後側板部41の後面42と軸線方向Daに間隔をあけて対向する平板リング状の後面対向部95と、を有している。この後面対向部95の内縁に、ここから後方に延在するよう後軸受形成部82が設けられている。
【0046】
ポンプケーシング60は、図1及び図2に示すように、吐出ホースが接続される略円筒状の吐出管部9を有している。略円筒状の吐出管部9の軸Adは、回転軸線Aに対して垂直な面に平行である。また、この吐出管部9は、その軸Adを通る平面で前後方向に二分割されており、一方が接続管前割部78として、ポンプ前ケーシング61の前本体筒部75に設けられており、他方が接続管後割部98として、ポンプ後ケーシング81の後本体筒部92に設けられている。この吐出管部9の外側端は開口しており、この開口がポンプケーシング60の吐出口7を成している。
【0047】
ポンプ前ケーシング61及びポンプ後ケーシング81は、それぞれ、樹脂による一体成形品である。ポンプ前ケーシング61とポンプ後ケーシング81とは、接着剤により接合されている。
【0048】
駆動装置200は、図3及び図5に示すように、回転する出力軸211を有するモータ210と、有底円筒状を成すカップ220と、カップ220の内周側に固定されている複数の駆動磁石219と、モータ210及びカップ220を覆う駆動装置ケーシング230と、駆動装置ケーシング230に装着された遠心ポンプ100の装着を維持するためのロック部材250と、を備えている。
【0049】
カップ220は、例えば、強磁性材であるSS400等の炭素鋼で形成され、複数の駆動磁石219のヨークとしての役目を担っている。このカップ220は、円筒状のカップ円筒部221と、このカップ円筒部221の一方の開口を塞ぐ平板円形のモータ接続部225とを有している。モータ接続部225上であって、カップ円筒部221の軸の延長線上には、モータ210の出力軸211が固定されている。カップ円筒部221の内周側には、前述したように複数の駆動磁石219が固定されている。この駆動磁石219は、永久磁石であり、例えば、Nd(ネオジウム)磁石である。
【0050】
カップ円筒部221の内径は、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の外径よりも大きい。また、カップ円筒部221の軸から各駆動磁石219の内面までの半径方向の距離の2倍の長さ(以下、磁石配列径とする)は、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の外径よりも大きい。
【0051】
駆動装置ケーシング230は、有底円筒状のケーシング本体231と、ケーシング本体231の開口を塞ぐキャップ241と、を有している。
【0052】
ケーシング本体231は、例えば、常磁性材であるAl(アルミニウム)合金で形成されている。ケーシング本体231は、内径がカップ220の外径及びモータ210の外径よりも大きい円筒状のケーシング円筒部232と、ケーシング円筒部232の一方の開口を塞ぐ平板円形のケーシング底部235と、を有している。
【0053】
モータ210は、このケーシング本体231内に入れられ、ケーシング底部235にネジ等で固定されている。ケーシング円筒部232の外周の一部は、径方向に凹凸形状を成し、凸部が放熱フィン233を形成している。また、ケーシング円筒部232の他の一部には、モータ210の電源ケーブルを通すための電源ケーブル板234を構成している。
【0054】
キャップ241は、例えば、エンジニアリングプラスチック等の樹脂で形成されている。このキャップ241は、有底円筒状を成しポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82及び後壁板部85が内側に嵌まり込むポンプ嵌合部242と、有底円筒状のポンプ嵌合部242の開口縁から外側に広がり平板リング状を成すポンプ受け部244と、ポンプ受け部244の外周縁に形成されケーシング本体231の開口縁部と係合する係合部246と、を有している。なお、このキャップ241は、遠心ポンプ100が装着される装着部を構成している。
【0055】
有底円筒状のポンプ嵌合部242の内径は、ポンプケーシング60の後軸受形成部82の外径と実質的に同じである。よって、キャップ241のポンプ嵌合部242内に、ポンプケーシング60の後軸受形成部82を嵌めることができる。また、このポンプ嵌合部242は、その外径がカップ円筒部221の内径及び前述の磁石配列径よりも小さく、有底円筒状のカップ220内に、このカップ220に固定されている駆動磁石219と非接触状態で入り込んでいる。
【0056】
次に、以上で説明した遠心ポンプ100及び駆動装置200の動作について説明する。
【0057】
遠心ポンプ100を駆動させる際には、オペレータは、まず、遠心ポンプ100の吸込管部62に吸込ホースを接続すると共に、吐出管部9に吐出ホースを接続する。
【0058】
次に、ポンプケーシング60の後軸受形成部82を駆動装置ケーシング230のキャップ241のポンプ嵌合部242内に嵌め込んで、遠心ポンプ100を駆動装置200に取り付ける。この際、ポンプケーシング60の後面対向部95とキャップ241のポンプ受け部244とが接する。次に、ロック部材250により、ポンプケーシング60を駆動装置ケーシング230に固定する。
【0059】
ポンプユニットは、この状態で、遠心ポンプ100の軸部51内に埋め込まれている従動磁石19と、駆動装置200のカップ220に固定されている駆動磁石219とが、径方向で非接触状態で対向し、両磁石が磁気結合している。また、モータ210の出力軸211は、遠心ポンプ100の回転軸線Aの延長線上に位置している。
【0060】
なお、以上では、吸込ホースや吐出ホースの接続後に、遠心ポンプ100を駆動装置200に取り付けているが、遠心ポンプ100の取付後に、吸込ホースや吐出ホースの接続を行ってもよい。
【0061】
次に、駆動装置200のモータ210に電力を供給して、このモータ210の出力軸211を回転させ、この出力軸211に固定されているカップ220及びカップ220に固定されている複数の駆動磁石219を回転させる。駆動装置200の駆動磁石219が回転すると、この駆動磁石219と磁気結合している遠心ポンプ100の従動磁石19も、駆動磁石219の回転に伴って、回転軸線A回りに回転する。遠心ポンプ100の従動磁石19は、羽根車10の軸部51内に埋め込まれている。このため、駆動装置200の駆動磁石219が回転すると、この従動磁石19と共に羽根車10は、ポンプケーシング60内で回転軸線A回りに回転する。
【0062】
ポンプケーシング60内で羽根車10が回転し始めると、図5に示すように、ポンプケーシング60の吸込口6からポンプケーシング60内に流体が吸い込まれる。ポンプケーシング60内に吸い込まれた流体は、羽根車入口12から羽根車10内の羽根車内流路Prに入る。
【0063】
羽根車流路Pr内に入った流体は、回転する複数の羽根11から遠心力を受けて、羽根車出口13から流出した後、ポンプケーシング60の吐出口7から吐出する。
【0064】
羽根車出口13から流出した流体の一部は、ポンプ前ケーシング61の前面対向部72の内面73と前シュラウド20の前側板部31の前面32との間から、ポンプ前ケーシング61の前軸受形成部67の内周面68と前シュラウド20の入口筒部21の外周面22との間を経て、ポンプ前ケーシング61の拡径管部65内に戻る。そして、再び、羽根車入口12から羽根車内流路Prに入る。
【0065】
また、羽根車出口13から流出した流体の他の一部は、ポンプ後ケーシング81の後面対向部95の内面96と後シュラウド40の後側板部41の後面42との間から、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の内周面83と後シュラウド40の軸部51の外周面52との間、ポンプ後ケーシング81の後壁板部85の内面86と後シュラウド40の軸部51の後端面53との間、さらに、後シュラウド40の貫通孔56を経て、羽根車内流路Prに戻る。
【0066】
ポンプ前ケーシング61の前軸受形成部67の内周面68の母線と前シュラウド20の入口筒部21の外周面22の母線とは、互いに平行である。言い換えると、前軸受形成部67の内周面68と入口筒部21の外周面22との間隔は、軸線方向Daにおいて一定である。また、ポンプ前ケーシング61の前軸受形成部67の内周面68、及び前シュラウド20の入口筒部21の外周面22の回転軸線Aに対して垂直な断面形状は、いずれも円である。このため、前軸受形成部67の内周面68と入口筒部21の外周面22とは、それぞれ、動圧ラジアル軸受面を成し、内周面68と外周面22との間を流れる流体が潤滑流体として機能する。よって、羽根車10は、羽根車10の入口筒部21の部分がポンプケーシング60により、径方向に非接触で回転可能に支持される。なお、羽根車10の回転開始時等、羽根車10の回転数が低いときには、前軸受形成部67の内周面68の一部と入口筒部21の外周面22の一部とは、互いに接触しており、羽根車10の回転数が所定回転数以上になると、内周面68と外周面22との間に働く流体の動圧により、内周面68に対して入口筒部21が浮上して、前述したように、羽根車10の入口筒部21が内周面68により非接触で回転可能に支持される。
【0067】
また、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の内周面83の母線と後シュラウド40の軸部51の外周面52の母線とは、互いに平行である。言い換えると、後軸受形成部82の内周面83と軸部51の外周面52との間隔は、軸線方向Daにおいて一定である。また、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の内周面83、及び後シュラウド40の軸部51の外周面52の回転軸線Aに垂直な断面形状は、いずれも円である。このため、後軸受形成部82の内周面83と軸部51の外周面52とは、それぞれ、動圧ラジアル軸受面を成し、内周面83と外周面52との間を流れる流体が潤滑流体として機能する。よって、羽根車10は、羽根車10の軸部51の部分がポンプケーシング60により、径方向に非接触で回転可能に支持される。なお、羽根車10の軸部51も、入口筒部21と同様、羽根車10の回転数が低いときには、後軸受形成部82の内周面83の一部と軸部51の外周面52の一部とは、互いに接触しており、羽根車10の回転数が所定回転数以上になると、内周面83と外周面52との間に働く流体の動圧により、内周面83に対して軸部51が浮上して、羽根車10の軸部51が内周面83により非接触で回転可能に支持される。
【0068】
本実施形態では、ポンプケーシング60に対する羽根車10の軸線方向Daの位置は、羽根車10内の従動磁石19と駆動装置200の駆動磁石219との間の磁気結合力により、保持されている。磁気結合力により保持されている羽根車10の軸線方向Daの位置は、軸線方向Daで互いに対向する羽根車10の面とポンプケーシング60の面とが互いに接触しない位置である。すなわち、本実施形態では、羽根車10は、軸線方向Daに関しても、非接触で回転可能に支持されている。
【0069】
以上のように、本実施形態において、回転中の羽根車10は、ポンプケーシング60に対して非接触状態である。但し、この羽根車10は、ポンプケーシング60に対して、この内部で径方向及び軸線方向Daに相対移動可能であるため、羽根車10が回転していないとき、前述したように、ポンプケーシング60の内面に接触することになる。
【0070】
ところで、本実施形態の遠心ポンプ100では、ポンプケーシング60に対して羽根車10が相対移動可能であるため、例えば、搬送時に、羽根車10がポンプケーシング60内で相対移動し、そのときの衝撃等により、羽根車10やポンプケーシング60が損傷するおそれがある。そこで、本実施形態のポンプユニットは、前述したように、ポンプケーシング60に対して羽根車10の相対移動を規制する支持治具300を備えている。
【0071】
支持治具300は、図6及び図7に示すように、羽根車10に対して相対移動不能に取り付けられる支持具310と、この支持具310をポンプケーシング60に対して相対移動不能に取り付ける取付具(外側第二支持部材)350と、を有している。
【0072】
支持具310は、円柱状の棒部(棒部材)311と、この棒部311の端部に設けられている第一支持部315(第一支持部材)と、この棒部311の長手方向の途中に設けられている内側第二支持部(内側第二支持部材)325と、を有している。
【0073】
円柱状の棒部311の外径は、ポンプケーシング60の吸込管部62の最小内径及び羽根車10の入口筒部21の最小内径よりも小さい。このため、この棒部311は、ポンプケーシング60の吸込管部62内及び羽根車10の入口筒部21内に挿入可能である。
【0074】
第一支持部315は、棒部311の端部からその径方向に張り出している張出部316と、この張出部316の端部から棒部311の長手方向に沿った方向に伸びている板バネ部317と、この板バネ部317の端部から棒部311の径方向外側に突出している嵌入部318と、を有している。これら張出部316、板バネ部317、嵌入部318は、それぞれ、1つずつで組を成し、第一支持部315は、この組を、羽根車10の羽根11の枚数と同じ数、つまり3つ有している。
【0075】
第一支持部315の各板バネ部317がそれぞれ自然状態の際、各嵌入部318のそれぞれの径方向外側端を通る円の径は、ポンプケーシング60の吸込管部62の最小内径及び羽根車10の入口筒部21の最小内径よりも大きい。このため、この第一支持部315が棒部311と共に、ポンプケーシング60の吸込管部62内及び羽根車10の入口筒部21内を通る際には、各板バネ部317がそれぞれ径方向内側に弾性変形して、この第一支持部315の各嵌入部318のそれぞれの径方向外側端を通る円の径は、ポンプケーシング60の吸込管部62の内径及び羽根車10の入口筒部21の内径よりも小さくなる。
【0076】
棒部311の長手方向における各嵌入部318の寸法は、羽根車10の前シュラウド20の凸部29と後シュラウド40の後側板部41との間の軸線方向Daの寸法と実質的に同じである。このため、嵌入部318が前シュラウド20の凸部29と後シュラウド40の後側板部41との間に入り込むと、この嵌入部318は羽根車10に対して軸線方向Daに相対移動不能になる。
【0077】
内側第二支持部325は、棒部311の周方向に間隔をあけて配置され、ポンプケーシング60の内周面にそれぞれが接触可能な複数のケーシング内接部326を有している。なお、本実施形態の内側第二支持部325は、ケーシング内接部326を3つ有しているが、4つ以上有してもよい。
【0078】
以上で説明した棒部311、第一支持部315及び内側第二支持部325は、樹脂で一体成型され、支持具310を形成している。但し、棒部311、第一支持部315及び内側第二支持部325は、樹脂で一体成型しなくてもよく、例えば、棒部311を金属で形成し、第一支持部315をプラスチック等で形成し、内側第二支持部325をゴム等で形成し、これら相互を接着剤で接合することで、支持具310を形成するようにしてもよい。
【0079】
取付具(外側第二支持部材)350は、円筒状の取付チューブ(取付用筒)351と、取付チューブ351の一方の開口を塞ぐ円柱状のチューブ栓355と、を有している。
【0080】
取付チューブ351の内径は、ポンプケーシング60の吸込管部62の最大外径よりもやや小さい。このため、取付チューブ351内に吸込管部62を一旦押し込むと、取付チューブ351とポンプケーシング60とは、軸線方向Da、径方向、回転軸線Aを中心とする周方向に関して、基本的に相対移動不能になる。ここで、各方向に関して基本的に相対移動不能とは、遠心ポンプ100が輸送時に振動しても、また、この遠心ポンプ100に何らかの物が接触した程度の外力が加わっても、取付チューブ351とポンプケーシング60とは各方向に関して相対移動不能であるという意味である。なお、以下において、基本的に相対移動不能とはこの意味で使用する。但し、吸込管部62から引き抜く強い外力が取付チューブ351に加われば、取付チューブ351は吸込管部62から引き抜かれ、周方向の強い外力が取付チューブ351に加われば、吸込管部62を中心として取付チューブ351は回転する。
【0081】
この取付チューブ351の内周面には、外周面側に凹み、且つ円筒状の取付チューブ351の一方の端面から他方の端面まで延びる流体通路352が形成されている。また、この取付チューブ351は、透明又は半透明な材料で形成されており、外部から取付チューブ351の孔の中の状態を目視することができる。
【0082】
円柱状のチューブ栓355は、一方の端面から他方の端面に貫通する棒孔356が形成されている。このチューブ栓355の外径は、取付チューブ351の内径よりやや大きく、このチューブ栓355を取付チューブ351の孔に押し込むと、両者は各方向に関して基本的に相対移動不能になる。また、棒孔356の内径は、棒部311の外径よりもやや小さく、棒部311を棒孔356に押し込むと、各方向に関して基本的に移動不能になる。
【0083】
次に、以上で説明した支持具310及び取付具350を用いた羽根車10の支持手順について説明する。
【0084】
まず、支持具310の棒部311の端部を持って、この棒部311の他方の端部に設けられている第一支持部315を、ポンプケーシング60の吸込口6からポンプケーシング60内に押し込み、さらに、羽根車10の羽根車入口12から羽根車10内に押し込む。この過程で、第一支持部315の各板バネ部317は、前述したように、それぞれ径方向内側に弾性変形する。このため、第一支持部315の各嵌入部318は、これらの板バネ部317の復帰力により、それぞれ径方向外側に付勢される。
【0085】
第一支持部315をさらに押し込み、軸線方向Daで、羽根車10の前シュラウド20の凸部29と後シュラウド40の後側板部41との間の位置に第一支持部315の嵌入部318が至ると、図8に示すように、径方向外側に付勢されている嵌入部318は径方向外側に移動して、前シュラウド20の凸部29と後シュラウド40の後側板部41との間に入り込む。嵌入部318が前シュラウド20の凸部29と後シュラウド40の後側板部41との間に入り込むと、この嵌入部318は、前シュラウド20の凸部29と後シュラウド40の後側板部41とに接すると共に、羽根11にも接する。また、第一支持部315の各板バネ部317の一部も、それぞれ、前シュラウド20の入口筒部21の内面に接する。
【0086】
この結果、羽根車10は、軸線方向Da及び径方向Drに関して、支持具310の第一支持部315に対して基本的に相対移動不能になる。また、羽根車10は、回転軸線Aを中心とする周方向に関して、第一支持部315に対して相対移動が規制される。
【0087】
また、この際、支持具310の内側第二支持部325も、ポンプケーシング60の吸込管部62内に入り込んで、内側第二支持部325の各ケーシング内接部326が吸込管部62の内周面に接している。このため、ポンプケーシング60は、径方向Drで羽根車10と非接触な状態で、この径方向Drに関し内側第二支持部325に対して相対移動不能になっている。
【0088】
よって、この時点で、支持具310の第一支持部315と羽根車10が各方向に関し相対移動不能になっており、且つ、支持具310の内側第二支持部325とポンプケーシング60が径方向Drに関し相対移動不能になっているため、羽根車10は、ポンプケーシング60に対して、径方向Drで非接触な状態で、この径方向Drに関して基本的に相対移動不能になっている。
【0089】
また、この時点で、内側第二支持部325の各ケーシング内接部326が吸込管部62の内周面に接している関係上、ケーシング内接部326と吸込管部62の内周面との間に働く摩擦力により、軸線方向Da、及び、回転軸線Aを中心とする周方向に関しても、ポンプケーシング60は、内側第二支持部325に対して相対移動が拘束される。但し、本実施形態では、内側第二支持部325の各ケーシング内接部326の径方向外側端を通る円の径サイズや、各ケーシング内接部326の材質等の関係上、ケーシング内接部326と吸込管部62の内周面との間に働く摩擦力は小さい。このため、本実施形態では、ポンプケーシング60は、内側第二支持部325に対して軸線方向Da及び周方向に関し相対移動が拘束されるものの、遠心ポンプ100が輸送時に振動したり、また、この遠心ポンプ100に何らかの物が接触した程度の外力が加わると、内側第二支持部325に対して軸線方向Da及び周方向に移動してしまう。すなわち、本実施形態では、軸線方向Da及び周方向に関し、内側第二支持部325に対するポンプケーシング60の相対移動の拘束力は極めて小さく、ポンプケーシング60は支持具310の内側第二支持部325に対して基本的に相対移動不能になってはいない。
【0090】
次に、取付チューブ351の孔にチューブ栓355を押し込む。続いて、このチューブ栓355の棒孔356に支持具310の棒部311を差し込む。そして、取付チューブ351及びチューブ栓355で構成される取付具350を支持具310の棒部311に対して、この棒部311の長手方向に相対移動させ、取付チューブ351の孔にポンプケーシング60の吸込管部62を押し込む。
【0091】
取付チューブ351の孔にポンプケーシング60の吸込管部62が押し込まれ、取付チューブ351に対してポンプケーシング60が各方向に関して基本的に相対移動不能になると、支持具310の棒部311とポンプケーシング60は、各方向に関して基本的に相対移動不能になる。よって、この時点で、既に、支持具310の第一支持部315と羽根車10が各方向に関して基本的に相対移動不能になっている関係上、ポンプケーシング60と羽根車10とは、各方向に関して基本的に相対移動不能になっている。
【0092】
最後に、支持具310の棒部311のうちで、外部に露出している部分を握って、取付具350及びポンプケーシング60に対して支持具310を軸線方向Daに移動させることで、軸線方向Daでポンプケーシング60と羽根車10とが非接触状態になるよう、支持具310に対して基本的に相対移動不能になっている羽根車10を軸線方向Daに移動させる。言い換えると、ポンプケーシング60に対して、このポンプケーシング60に接触している内側第二支持部325を軸線方向Daに関し相対位置調整して、軸線方向Daでポンプケーシング60と羽根車10とを確実に非接触状態にする。
【0093】
軸線方向Daでポンプケーシング60と羽根車10とを確実に非接触状態になるとき、軸線方向Daで、内側第二支持部325の角329の位置とポンプケーシング60の吸込口6縁の位置とが軸線方向Daで一致するよう、内側第二支持部325は棒部311に固定されている。このため、透明又は半透明な取付チューブ351を介して、ポンプケーシング60の吸込口6を見つつ、内側第二支持部325の角329をマークとして、軸線方向Daで、このマークの位置とポンプケーシング60の吸込口6縁の位置とが軸線方向Daで一致するように、内側第二支持部325の位置を調整することで、軸線方向Daでポンプケーシング60と羽根車10とを確実に非接触状態にすることができる。
【0094】
なお、内側第二支持部325の角329とは、棒部311の長手方向における内側第二支持部325の両端面のうちで第一支持部315と反対側の端面と、内側第二支持部325の各ケーシング内接部326の径方向外側面との角329のことである。また、ここでは、この角329をマークとしているが、例えば、内側第二支持部325の各ケーシング内接部326の径方向外側面に、溝を形成し、これをマークとしてもよいし、塗料等でマークを描いてもよい。
【0095】
以上で、ポンプケーシング60と羽根車10とは、軸線方向Da及び径方向Drにおいて非接触状態で、軸線方向Da、径方向Dr及び周方向で基本的に相対移動不能になる。このため、本実施形態では、遠心ポンプ100が輸送時に振動しても、また、この遠心ポンプ100に何らかの物が接触した程度の外力が加わっても、ポンプケーシング60と羽根車10とは非接触状態を維持し続け、ポンプケーシング60及び羽根車10の損傷を防ぐことができる。
【0096】
また、本実施形態では、支持治具300の使用により、ポンプケーシング60と羽根車10との非接触状態を維持することができるため、ポンプケーシング60内に、例えば、クリーニングエアー、洗浄液、コーティング用液等の処理流体を入れて、ポンプケーシング60の内面や羽根車10の表面の広い範囲にわたって処理することができる。
【0097】
以上で説明した支持治具300を使用した状態で、ポンプケーシング60内に前述の処理流体を入れる場合、図8に示すように、ポンプケーシング60の吐出口7から処理流体を入れる。この処理流体の一部は、ポンプケーシング60の内面と羽根車10の外面との間を通って、ポンプケーシング60の吸込管部62内に流入する。また、処理流体の一部は、羽根車10の貫通孔56等を経て羽根車10内に流入した後、支持具310の第一支持部315における3つの張出部316の相互間を経て、羽根車入口12から羽根車10外に流出して、ポンプケーシング60の吸込管部62内に至る。この吸込管部62に至った処理流体は、内側第二支持部325の3つのケーシング内接部326の相互間を通路として通り、ポンプケーシング60外であって、取付具350の取付チューブ351内に流入する。そして、この処理流体は、取付チューブ351の流体通路352を経て、取付チューブ351外に流出する。
【0098】
この際、羽根車10はポンプケーシング60に対して回転軸線Aを中心とした周方向にも基本的に相対移動不能になっているため、ポンプケーシング60内に処理流体が流入しても、羽根車10は回転しない。
【0099】
なお、以上の説明では、取扱者が取付チューブ351の孔にチューブ栓355を押し込むことにしているが、取付チューブ351の孔にチューブ栓355を押し込んだ状態で、両者を予め接着しておいてもよい。また、以上の説明では、支持具310の第一支持部315をポンプケーシング60内に入れた後、支持具310の棒部311を取付具350の棒孔356に差し込むことにしているが、支持具310の棒部311を取付具350の棒孔356に差し込んだ後、支持具310の第一支持部315をポンプケーシング60内に入れてもよい。
【0100】
さらに、以上の説明した支持治具300は、外側第二支持部材としての取付具350を含んでいるが、この取付具350はなくてもよい。この場合、ポンプケーシング60と支持具310とが各方向で基本的に相対移動不能になる必要が生じるため、支持具310における内側第二支持部325の各ケーシング内接部326の径方向外側端を通る円の径サイズを若干大きくする、各ケーシング内接部326をゴム等で形成する等で、ケーシング内接部326とポンプケーシング60の内周面との間に働く摩擦力を大きくし、ポンプケーシング60と支持具310とが各方向で基本的に相対移動不能にできるようにする必要がある。また、以上の説明した支持治具300は、内側第二支持部325を含んでいるが、この内側第二支持部325はなくてもよい。
【0101】
ところで、以上の説明では、処理流体をポンプケーシング60の内面等を処理する場合、吐出口7から処理流体を入れているが、処理流体を吸込口6から入れることも可能である。この場合、支持治具300の取付具として、先に説明した取付具350に代えて、図9に示す流体口付き取付具350aを用いる。
【0102】
この流体口付き取付具350aは、円筒状の取付チューブ351aと、T字管360と、T字管360の一開口を塞ぐ円柱状の管栓355aと、を有している。
【0103】
取付チューブ351aは、基本的に、先に説明した取付具350の取付チューブ351と同じである。但し、この取付チューブ351aの内周面には流体通路が形成されていない。なお、流体口付き取付具350aの取付チューブとして、先に説明した取付具350の取付チューブ351を用いてもよい。T字管360は、円筒状の直管361と、円筒且つ直管状の分岐管365とを有する。このT字管360において、直管361の一方の端部に、分岐管365の長手方向の中央部が直管361と分岐管365との間で連通可能に接合されている。T字管360における分岐管365の外径は、取付チューブ351aの内径よりやや大きく、この分岐管365を取付チューブ351aの孔に差し込むと、両者は各方向に関して基本的に相対移動不能になる。また、T字管360における分岐管365の内径は、支持具310の棒部311の外径よりも大きい。このため、分岐管365内に棒部311を挿通させることができると共に、分岐管365内に棒部311を挿通させたとき、分岐管365の内周面と棒部311の外周面との間に隙間が形成される。
【0104】
円柱状の管栓355aは、一方の端面から他方の端面に貫通する棒孔356aが形成されている。この管栓355aの外径は、T字管360における分岐管365の内径よりやや大きく、この管栓355aを分岐管365の孔に押し込むと、両者は各方向に関して基本的に相対移動不能になる。また、棒孔356aの内径は、棒部311の外径よりもやや小さく、棒部311を棒孔356aに押し込むと、各方向に関して基本的に移動不能になる。
【0105】
次に、以上で説明した流体口付き取付具350a、及び先に説明した支持具310を用いた羽根車10の支持手順について説明する。
【0106】
まず、先に説明した取付具350を用いた場合と同様に、支持具310の棒部311の端部を持って、この棒部311の他方の端部に設けられている第一支持部315を、ポンプケーシング60の吸込口6からポンプケーシング60内に押し込み、さらに、羽根車10の羽根車入口12から羽根車10内に押し込む。この操作により、第一支持部315の嵌入部318が羽根車10の前シュラウド20の凸部29と後シュラウド40の後側板部41との間に入り込む。また、支持具310の内側第二支持部325も、ポンプケーシング60の吸込管部62内に入り込んで、内側第二支持部325の各ケーシング内接部326が吸込管部62の内周面に接する。
【0107】
この結果、支持具310の第一支持部315と羽根車10が各方向に関し相対移動不能になり、さらに、支持具310の内側第二支持部325とポンプケーシング60が径方向Drに関し相対移動不能になる。
【0108】
次に、T字管360における分岐管365の一方の開口366に管栓355aを押し込み、分岐管365の他方の端部367を取付チューブ351aの孔に押し込む。続いて、分岐管365の開口366に押し込まれた管栓355aの棒孔356aに支持具310の棒部311を差し込む。そして、取付チューブ351a、T字管360及び管栓355aで構成される流体口付き取付具350aを支持具310の棒部311に対して、この棒部311の長手方向に相対移動させ、取付チューブ351aの孔にポンプケーシング60の吸込管部62を押し込む。
【0109】
取付チューブ351aの孔にポンプケーシング60の吸込管部62が押し込まれ、取付チューブ351aに対してポンプケーシング60が各方向に関して基本的に相対移動不能になると、支持具310の棒部311とポンプケーシング60は、各方向に関して基本的に相対移動不能になる。よって、この時点で、既に、支持具310の第一支持部315と羽根車10が各方向に関して基本的に相対移動不能になっている関係上、ポンプケーシング60と羽根車10とは、各方向に関して基本的に相対移動不能になっている。
【0110】
最後に、先に説明した取付具350を用いた場合と同様に、支持具310の棒部311のうちで、外部に露出している部分を握って、取付具350及びポンプケーシング60に対して支持具310を軸線方向Daに移動させることで、軸線方向Daでポンプケーシング60と羽根車10とを確実に非接触状態にする。
【0111】
以上で、ポンプケーシング60と羽根車10とは、軸線方向Da及び径方向Drにおいて非接触状態で、軸線方向Da、径方向Dr及び周方向で基本的に相対移動不能になる。このため、この流体口付き取付具350aを用いた場合も、先に説明した取付具350を用いた場合と同様、遠心ポンプ100が輸送時に振動しても、また、この遠心ポンプ100に何らかの物が接触した程度の外力が加わっても、ポンプケーシング60と羽根車10とは非接触状態を維持し続け、ポンプケーシング60及び羽根車10の損傷を防ぐことができる。
【0112】
ポンプケーシング60内に処理流体を入れる場合、T字管360の直管361の開口362から処理流体を入れる。この処理流体は、T字管360の直管361、T字管360の分岐管365、取付チューブ351aを通って、ポンプケーシング60の吸込口6からポンプケーシング60内に流入する。この処理流体は、ポンプケーシング60の吸込管部62内に位置している内側第二支持部325の3つのケーシング内接部326の相互間を通路として通り、ポンプケーシング60内の羽根車10近傍に至る。この処理流体の一部は、ポンプケーシング60の内面と羽根車10の外面との間を通って、ポンプケーシング60の吐出口7から外部に流出する。また、この処理流体の他の一部は、羽根車入口12から羽根車10内に流入し、支持具310の第一支持部315における3つの張出部316の相互間、さらに、羽根車10の貫通孔56等を経て羽根車10外に流入した後、ポンプケーシング60の吐出口7から外部に流出する。
【0113】
なお、流体口付き取付具350a、及び先に説明した支持具310を用いて、ポンプケーシング60内に処理流体を入れる場合、ポンプケーシング60の吐出口7からポンプケーシング60内に処理流体を入れることも可能である。この場合、処理流体は、吸込口6からポンプケーシング60外に流出し、取付チューブ351a、T字管360を経て外部に流出する。
【0114】
また、以上の説明では、取扱者がT字管360における分岐管365の開口366に管栓355aを押し込み、分岐管365の端部367を取付チューブ351aの孔に押し込むことにしているが、T字管360における分岐管365の開口366に管栓355aを押し込んだ状態で両者を予め接着しておき、さらに、分岐管365の端部367を取付チューブ351aの孔に押し込んだ状態で両者を予め接着しておいてもよい。また、以上の説明でも、支持具310の第一支持部315をポンプケーシング60内に入れた後、支持具310の棒部311を流体口付き取付具350aの棒孔356aに差し込むことにしているが、支持具310の棒部311を流体口付き取付具350aの棒孔356aに差し込んだ後、支持具310の第一支持部315をポンプケーシング60内に入れてもよい。
【0115】
なお、以上の実施形態は、遠心ポンプの一例として、動圧軸受型の遠心ポンプを例示したが、ポンプケーシングに対して羽根車が軸線方向Da及び径方向Drに相対移動可能な遠心ポンプであれば如何なる遠心ポンプに本発明を適用してもよく、例えば、磁気軸受型の遠心ポンプや、動圧軸受及び磁気軸受の併用型の遠心ポンプに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0116】
6:吸込口、7:吐出口、9:吐出管部、10:羽根車、11:羽根、12:羽根車入口、13:羽根車出口、19:従動磁石、20:前シュラウド、21:入口筒部、31:前側板部、40:後シュラウド、41:後側板部、51:軸部、56:貫通孔、60:ポンプケーシング、61:ポンプ前ケーシング、62:吸込管部、81:ポンプ後ケーシング、100:遠心ポンプ、200:駆動装置、210:モータ、211:出力軸、219:駆動磁石、220:カップ、230:駆動装置ケーシング、300:支持治具、310:支持具、315:第一支持部(第一支持部材)、317:板バネ部、318:嵌入部、325:内側第二支持部(内側第二支持部材)、326:ケーシング外接部、350,350a:取付具(外側第二支持部材)、351,351a:取付チューブ(取付用筒)、356:チューブ栓、356a:管栓、360:T字管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに回転可能な羽根車と、該回転軸線を中心とする径方向及び該回転軸線が延びている軸線方向に該羽根車を相対移動可能に且つ非接触状態で該回転軸線回りに回転可能に収納するケーシングとを備え、
前記ケーシングには、吐出口が形成されていると共に、前記回転軸線の延長線上に吸込口が形成され、
前記羽根車は、前記回転軸線を中心として周方向に複数設けられた羽根と、前記吸込口と対向する羽根車入口が形成され複数の該羽根の前記吸込口側である前側を覆う前シュラウドと、複数の該羽根の前記吸込口とは反対側の後側を覆う後シュラウドと、を有している密閉型である、遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記吸込口から前記ケーシング内に端部が挿通可能な棒部材と、
前記棒部材の前記端部に設けられ、弾性変形することで、その一部である嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込み、前記羽根車に対して前記軸線方向及び前記径方向に相対移動不能になる第一支持部材と、
予め定められた以上の外力が働かない限り、前記棒部材に対して相対移動不能に設けられ、前記第一支持部材の前記嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込んでいるときに前記ケーシングに接触して、該ケーシングと前記羽根車とが前記径方向において非接触の状態で該ケーシングに対して該径方向に移動不能になり且つ前記軸線方向に相対移動が拘束されつつ、該ケーシングに対して該軸線方向における前記棒部材の相対位置調整が可能な第二支持部材と、
を備えていることを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記第二支持部材は、前記棒部材に設けられ、前記吸込口から前記ケーシング内に入り込んで、前記第一支持材の前記嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込んでいるときに前記ケーシングの内周面に接触する内側第二支持部材を有する、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項3】
請求項2に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記内側第二支持部材には、前記第一支持材の前記嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込み、且つ前記ケーシングと前記羽根車とが前記軸線方向で非接触の状態のときに、前記ケーシングの前記吸込口の縁と該軸線方向で一致する部位に外観上見分けがつくマークが施されている、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項4】
請求項3に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記内側第二支持部材は、前記棒部材が延びている方向の両端面と該両端面をつなぐ側面と有し、該両端面のうちで前記第一支持部材が設けられている側とは反対側の端面と該側面との角が前記マークを成す、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記棒部材は、前記内側第二支持部材を基準にして、前記第一支持部材と反対側にも延びている、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記内側第二支持部材には、該内側第二支持部材を基準として前記棒部材が延びている方向の一方の側から他方の側へ通じる通路が形成されている、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項7】
請求項6に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記内側第二支持部材は、前記棒部材を中心として、該棒部材の周方向に間隔をあけて配置され、前記ケーシングの前記内周面に接触可能な複数のケーシング内接部を有し、複数の該ケーシング内接部の相互間が前記通路を成す、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記第二支持部材は、予め定められた以上の外力が働かない限り、前記棒部材に対して相対移動不能に設けられ、前記吸込口周りの前記ケーシングの外周面に接して、予め定められた以上の外力が働かない限り、前記ケーシングに対して相対移動不能になる外側第二支持部材を有する、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項9】
請求項8に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記外側第二支持部材には、前記吸込口周りの前記ケーシングの外周面に接しているときに、該ケーシング内と、該ケーシング外であって該外側第二支持部材外との間で流体を流すことができる通路が形成されている、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記ケーシングは、筒状を成し、端部の開口が前記吸込口を成す吸込管部を有しており、
前記外側第二支持部材は、筒状を成して両端が開口し、一端の開口から前記吸込管部が挿入されると、内周面が該吸込管部の外周面に接して、予め定められた以上の外力が働かない限り、前記ケーシングに相対移動不能になる取付用筒を有する、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項11】
請求項10に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記外側第二支持部材は、二つの管が相互に接続され且つ該管相互が連通しているT字管を有し、該T字管は、該T字管におけるTの横線に相当する管部が、前記取付用筒の他端に内嵌又は外嵌して、該取付用筒に対して相対移動不能になる、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記取付用筒は、透明又は半透明の材料で形成されている、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の遠心ポンプの羽根車支持治具において、
前記第一支持部材は、複数の前記羽根の数量と同じ数量の前記嵌入部を有し、複数の該嵌入部が、それぞれ、前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込むと、複数の該羽根のうちの一の羽根に接触して、前記羽根車に対して前記回転軸線回りの周方向に相対移動不能になる、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持治具。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の羽根車支持治具と、
前記遠心ポンプと、
を備えていることを特徴とするポンプユニット。
【請求項15】
回転軸線回りに回転可能な羽根車と、該回転軸線を中心とする径方向及び該回転軸線が延びている軸線方向に該羽根車を相対移動可能に且つ非接触状態で回転可能に収納するケーシングとを備え、
前記ケーシングには、吐出口が形成されていると共に、前記回転軸線の延長線上に吸込口が形成され、
前記羽根車は、前記回転軸線を中心として周方向に複数設けられた羽根と、前記吸込口と対向する羽根車入口が形成され複数の該羽根の前記吸込口側である前側を覆う前シュラウドと、複数の該羽根の前記吸込口とは反対側の後側を覆う後シュラウドと、を有している密閉型である、遠心ポンプの羽根車支持方法において、
前記吸込口から前記ケーシング内に端部が挿通可能な棒部材と、
前記棒部材の前記端部に設けられ、弾性変形することで、その一部である嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込み、前記羽根車に対して前記軸線方向及び前記径方向に相対移動不能になる第一支持部材と、
予め定められた以上の外力が働かない限り、前記棒部材に対して相対移動不能に設けられ、前記第一支持部材の前記嵌入部が前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入り込んでいるときに前記ケーシングに接触して、該ケーシングと前記羽根車とが前記径方向において非接触の状態で該ケーシングに対して該径方向に移動不能になり且つ前記軸線方向に相対移動が拘束されつつ、該ケーシングに対して該軸線方向における前記棒部材の相対位置調整が可能な第二支持部材と、を備えている羽根車支持治具を準備し、
前記棒部材の前記端部側と共に該端部に固定されている前記第一支持部材を弾性変形させて前記吸込口から前記ケーシング内に挿入し、さらに、該第一支持部材を前記羽根車入口から前記羽根車内に挿入して、弾性変形している該第一支持部材の復帰力により前記嵌入部を前記前シュラウドと前記後シュラウドとの間に入れ込み、
前記第二支持部材を前記ケーシングに対して接触させて、前記ケーシングと前記羽根車とが前記径方向において非接触の状態で該ケーシングに対して該径方向に移動不能にした後、前記ケーシングと前記羽根車とが前記軸線方向において非接触の状態になるよう、該軸線方向における該ケーシングに対する前記棒部材の相対位置を調節する、
ことを特徴とする遠心ポンプの羽根車支持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−92064(P2013−92064A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233062(P2011−233062)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】