説明

遠心ポンプ

【課題】流体に含まれる鉄粉等の異物によりハウジングの内面が傷付けられることを防止する。
【解決手段】後面シュラウド15の後方に磁気従動部6が設けられた羽根車2と、羽根車2を収納するハウジング3と、磁気従動部6を囲むようにハウジング3に設けられて、磁気従動部6を磁気により回転駆動する磁気駆動部25を備える。ハウジング3は、羽根車2の磁気従動部6を収納する合成樹脂製のローター室7を有し、ローター室7の内面に非磁性で鉄よりも硬い金属板48が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロータマグネットが設けられた羽根車と、ロータマグネットに磁気吸引力を及ぼすことにより羽根車を回転させるステータを備えた磁気結合ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−49496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のポンプにあっては、羽根車から外周側に吐出された流体が羽根車の後側に回り込む場合がある。この流体には異物として鉄粉等の強磁性体が含まれている場合があり、この異物はロータマグネットの磁力やステータで発生する磁界の影響を受けて、ロータマグネットの外周面やこれに対向するハウジングの内面に吸着する可能性がある。そして、このようにロータマグネットの外周面やこれに対向するハウジングの内面に異物が吸着した状態で羽根車が回転すると、異物によりハウジングの内面が傷付けられる恐れがある。また、場合によっては、前記傷付いた箇所から流体が漏れ出す恐れもある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、流体に含まれる鉄粉等の異物によりハウジングの内面が傷付けられることを防止できる遠心ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の遠心ポンプは、後面シュラウドの後方に磁気従動部が設けられた羽根車と、この羽根車を収納するハウジングと、前記磁気従動部を囲むように前記ハウジングに設けられて、前記磁気従動部を磁気により回転駆動する磁気駆動部を備え、前記ハウジングは、前記羽根車の磁気従動部を収納する合成樹脂製の収納部を有し、この収納部の内面に非磁性で鉄よりも硬い金属板が設けられたことを特徴とする。
【0007】
また、前記金属板が前記収納部の内面において前記磁気従動部の後端部に対応する箇所にのみ設けられることが好ましい。
【0008】
また、前記収納部が前記金属板と一体成形されることが好ましい。
【0009】
また、本発明の他の遠心ポンプは、後面シュラウドの後方に磁気従動部が設けられた羽根車と、この羽根車を収納するハウジングと、前記磁気従動部を囲むように前記ハウジングに設けられて、前記磁気従動部を磁気により回転駆動する磁気駆動部を備え、前記ハウジングは、合成樹脂製で前記羽根車の磁気従動部を収納する収納部を有し、この収納部の内面において前記磁気従動部の前端部に対応する箇所に突部が設けられたことを特徴とする。
【0010】
また、前記ハウジングは合成樹脂製の分離板を備え、この分離板は、前方に開口すると共に後端が底部で閉塞された有底筒状の前記収納部と、この収納部の前縁部から径外方向に突出したフランジ部を有し、前記突部が、前記分離板に沿って前記収納部の内周面から前記フランジ部の前面にまで至る板状の部材で構成されることが好ましい。
【0011】
また、本発明の更に他の遠心ポンプは、羽根部の後方を覆う後面シュラウドの後方に磁気従動部が設けられた羽根車と、この羽根車を収納するハウジングと、前記磁気従動部を囲むように前記ハウジングに設けられて、前記磁気従動部を磁気により回転駆動する磁気駆動部を備え、前記ハウジングは、前記羽根車の磁気従動部を収納する合成樹脂製の収納部を有し、前記磁気従動部に、前記収納部の内側における前記磁気従動部の外周側の流体を前方に送る第二羽根部が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、流体に含まれる鉄粉等の異物によりハウジングの内面が傷付けられることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態の遠心ポンプの断面図である。
【図2】第二実施形態の遠心ポンプの断面図である。
【図3】第三実施形態の遠心ポンプの断面図である。
【図4】第四実施形態の遠心ポンプの断面図である。
【図5】第五実施形態の遠心ポンプの断面図である。
【図6】第六実施形態の遠心ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、羽根車2の回転軸方向を前後方向と規定し、当該回転軸方向における吸込口11側を前側と規定して説明する。
【0015】
(第一実施形態)
図1に示される第一実施形態の遠心ポンプ1は、外郭を構成するハウジング3と、ハウジング3に収納された羽根車2を備えている。羽根車2の前部にはポンプ部4が設けられており、羽根車2の後部には磁気従動部6が設けられている。
【0016】
ハウジング3は、前方に開口するローター室7が形成された駆動ブロック9と、後方に開口するポンプ室5が形成されたケーシング8で構成されている。
【0017】
駆動ブロック9はケーシング8の後方に位置している。駆動ブロック9のローター室7はケーシング8のポンプ室5に通じており、ローター室7とポンプ室5で羽根車2全体を収納する収納室18が構成されている。
【0018】
駆動ブロック9は、分離板24、磁気駆動部25、制御部33、及び外郭をなすモールド樹脂34を有している。
【0019】
分離板24は合成樹脂製であって、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂によって形成されている。分離板24は前方に開口する容器状に形成されており、前面が開口すると共に後面が底部50により閉塞された有底円筒状の収納部26と、収納部26の前縁部から径外方向に突出したフランジ部27で構成されている。収納部26の内側はローター室7になっている。収納部26の周壁部28と底部50とでなす後コーナー部39は外方に突となる断面弧状に形成されている。フランジ部27は周壁部28の周方向全長に亘って形成されており、収納部26の周壁部28とフランジ部27とでなす前コーナー部49は内方に突となる断面弧状に形成されている。
【0020】
収納部26の底部50中央には前方に向けて突出する後固定部35が形成されており、後固定部35には、羽根車2を回転自在に支持するセラミックス製の軸23の後端部が固定されている。
【0021】
磁気駆動部25は、電磁鋼板で形成されたステーターコア31と、電気的な絶縁を図りながらステーターコア31に巻き付けられたコイル32を有するステーターであって、収納部26の周壁部28を囲んでいる。
【0022】
制御部33は磁気駆動部25を制御する制御基板であって、分離板24及び磁気駆動部25の後方に位置している。制御部33は磁気駆動部25のコイル32に電気的に接続されている。制御部33により磁気駆動部25のコイル32に通電がなされると、磁気駆動部25では羽根車2の磁気従動部6を回転させる磁界が発生する。
【0023】
モールド樹脂34は不飽和ポリエステル樹脂によって形成されている。モールド樹脂34は、分離板24の外側に位置し、分離板24、磁気駆動部25、及び制御部33を一体的に包含している。
【0024】
羽根車2は、磁気従動部6がローター室7に収納されており、ポンプ部4がポンプ室5に収納されている。磁気従動部6は、合成樹脂製のローター部20と、ローター部20の外周側に設けられたマグネット部19と、ローター部20の中心部に設けられた軸受け21で構成されている。ローター部20はポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂製であり、マグネット部19はフェライト製であり、軸受け21はカーボン製である。
【0025】
ローター部20は、前後方向に貫通する筒状の軸受固定部22と、軸受固定部22を囲むマグネット固定部36を有している。
【0026】
軸受固定部22は、後部の小径部45と、前部の大径部46を備えており、大径部46よりも直径の小さい小径部45の内側には軸受け21が挿入固定されている。軸受け21には軸23が挿通され、軸23により羽根車2は前後軸回り方向に回転自在に支持されている。
【0027】
マグネット固定部36は円筒状に形成されており、マグネット固定部36の内周面の前縁部は軸受固定部22の大径部46に一体に接続されている。マグネット固定部36の外周面にはマグネット収納溝40が形成されている。マグネット収納溝40には、マグネット固定部36の前後両端の外周面と略面一となるように、非磁性ステンレスによって形成されたマグネットカバー38により被覆されたマグネット部19が収納され、固定されている。このローター部20の外周部に設けられたマグネット部19は磁気駆動部25の内側に位置しており、マグネット部19と磁気駆動部25の間には、分離板24の収納部26の周壁部28が配置されている。なお、前記マグネットカバー38は省略可能である。
【0028】
磁気従動部6の前方に位置するポンプ部4は、羽根車2の周方向に複数設けられた羽根部13と、各羽根部13の後側を覆う後面シュラウド15と、各羽根部13の前側を覆う前面シュラウド14で構成されている。
【0029】
円板状に形成された後面シュラウド15の中央部には前後に貫通する孔41が形成されている。後面シュラウド15の孔41の周縁部には、軸受固定部22の大径部46の前縁部が一体に接続されている。後面シュラウド15及びローター部20は、マグネット部19、マグネットカバー38、及び軸受け21をインサートして一体に成形される。なお、図示例では、マグネット固定部36が後面シュラウド15の後方に隙間を介して位置しているが、マグネット固定部36の前端が後面シュラウド15に接続されてもよい。
【0030】
円板状に形成された前面シュラウド14の中央部には、前後方向に貫通する吸入口部16が形成されている。前面シュラウド14の外周縁と後面シュラウド15の外周縁は、羽根車2のラジアル方向において同位置に配置されている。前面シュラウド14の外周縁部と後面シュラウド15の外周縁部の間には隙間が形成されている。この隙間は両シュラウド14,15間において隣り合う羽根部13の間に形成された流路52を介して吸入口部16に通じており、この隙間によりポンプ部4の吐出部17が構成されている。
【0031】
各羽根部13の前端は前面シュラウド14の後面に一体に接続されており、各羽根部13と前面シュラウド14は一体に成形されている。各羽根部13の後端は後面シュラウド15の前面に取り付けられている。
【0032】
各羽根部13は、羽根車2の回転時において、吸入口部16を介して前記流路52に導入された流体(本実施例では液体)に対してラジアル方向の圧力を加える。これにより、吸入口部16から流路52に供給された流体は羽根車2の外周側に送られ、吐出部17からポンプ部4の外周側に吐出される。
【0033】
ケーシング8は合成樹脂製であって、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂によって形成されている。図1のように、ケーシング8は後方に開口する容器状に形成されている。ケーシング8は、ポンプ室5の内周面を構成する外周壁部43を有しており、外周壁部43の後縁には、径外方向に突出する鍔部30が周方向の全長に亘って形成されている。鍔部30はフランジ部27の前面外周端部に当接され、ローター室7の前側はケーシング8によって覆われている。ケーシング8の鍔部30は、複数のねじにより駆動ブロック9のフランジ部27を含む外周部に取り付けられている。また、ケーシング8には、収納室18の中央部に位置する前固定部42が設けられており、前固定部42には軸23の前端部が固定されている。なお、図1中符号59,60は、軸受け21にかかるスラスト方向の荷重を受ける軸受板である。
【0034】
ケーシング8の中央部には、前方に突出する筒状の吸込口11が形成されており、吸込口11は羽根車2の吸入口部16に対向している。ケーシング8の外周壁部43には外方に突出する筒状の吐出口12が形成されており、吐出口12はポンプ室5の外周部の周方向の一部に通じている。
【0035】
遠心ポンプ1の駆動は、制御部33によってコイル32に通電することにより行われる。コイル32に電流が流れると、磁気駆動部25において磁界が発生する。すると、磁気駆動部25に対して羽根車2が有するマグネット部19が吸引・反発して磁気従動部6が軸23を中心に回転し、これによりポンプ部4が前後軸回りに回転する。そして、このようにポンプ部4が回転すると、吸込口11から吸入口部16を介してポンプ部4の流路52に導入された流体が、吐出部17からポンプ部4の外周側に吐出され、この後、吐出口12を経て遠心ポンプ1の外部に吐出される。
【0036】
ケーシング8の外周壁部43は、分離板24の周壁部28よりも外側に位置しており、ポンプ室5の外周部はローター室7よりも径外方向に膨出しており、この膨出部分には分離板24のフランジ部27の内周部の前面が臨んでいる。また、同膨出部分には磁気従動部6よりも径外方向に突出したポンプ部4の外周端部が位置し、この外周端部の後面(後面シュラウド15の後面)はフランジ部27の内周部の前面近傍に配置されている。このため、遠心ポンプ1の駆動時においてポンプ部4の吐出部17から吐出された流体は、後面シュラウド15の後側に回り込み難く、ポンプ部4から吐出された殆どの流体が吐出口12から吐出されるようになっている。
【0037】
また、後面シュラウド15の外周端部と分離板24の前コーナー部49の間には、ポンプ部4の回転を許容するために僅かな隙間44が形成されている。このため、遠心ポンプ1の駆動時においては、ポンプ部4の吐出部17から吐出された流体のうちの一部が、ケーシング8の外周壁部43に当たった後、隙間44に回り込み、隙間44を介して後面シュラウド15後方のポンプ室5に至る。そして、この流体は、磁気従動部6の後方を回り込んだ後、軸受け21と軸23の間に至り、続いてポンプ部4の流路52に戻される。このように吐出部17から吐出された流体のうちの一部が軸受け21と軸23の間に至るようになっているので、軸23の回転を潤滑にすることができる。
【0038】
ところで、前記ローター室7に供給される流体に鉄粉等の強磁性体である異物が含まれていると、ローター室7の内面を構成する分離板24の収納部26が当該異物により傷付けられる恐れがある。これを改善するため、本実施形態では、図1のように収納部26の内面に非磁性で鉄よりも硬い金属板48が設けられている。
【0039】
金属板48は、収納部26の内面に沿うように非磁性のステンレス鋼により略容器状に形成されており、前方に開口する有底円筒状の筒状部61と、筒状部61の前縁から外方に突出する鍔状部56で構成されている。筒状部61と鍔状部56でなすコーナー部分63は断面弧状に形成され、また、筒状部61の底部中央には孔62が形成されている。
【0040】
金属板48は、孔62に後固定部35を通して筒状部61を収納部26の内面に沿わせ、鍔状部56をフランジ部27の前面に沿わせ、且つ、コーナー部分63を前コーナー部49に沿わせた状態で、分離板24に取り付けられる。
【0041】
このように、収納部26の内面に鉄よりも硬い金属板48を設けることで、金属板48によって収納部26の内面を保護することができる。このため、ポンプ部4の吐出部17から吐出された鉄粉等を含む流体の一部が隙間44を介してローター室7に至ったとしても、この流体に含まれる鉄粉等の異物により収納部26の内面が傷付けられることを防止できる。また、金属板48は非磁性であるので、磁気駆動部25により生じる磁界に影響を与え難く、磁気従動部6を効率良く駆動できる。また、容器状の金属板48を容器状の分離板24に嵌め込むことで容易に金属板48を設けることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、吐出部17から吐出された流体の一部を軸受け21と軸23の間を通じてポンプ部4に戻るようにしたが、吐出部17から吐出された流体の一部は、ローター室7に積極的に送る必要はない。
【0043】
(第二実施形態)
次に第二実施形態について説明する。なお、以下の第二実施形態の説明では、第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0044】
図2に示す本実施形態の遠心ポンプ1は、金属板48が収納部26の内面において磁気従動部6の後端部に対応する箇所にのみ設けられている。
【0045】
金属板48は、前後が開口した円筒状の筒状部61と、筒状部61の後縁から内方に突出した内鍔部64で構成されている。筒状部61と内鍔部64とでなすコーナー部分65は断面弧状に形成されている。
【0046】
金属板48は、筒状部61を周壁部28の内周面に沿わせ、内鍔部64を分離板24の底部50の前面に沿わせ、且つ、コーナー部分65を後コーナー部39に沿わせた状態で、分離板24に取り付けられている。
【0047】
このように、金属板48が収納部26の内面において磁気従動部6の後端部に対応する箇所にのみ設けられると、磁気駆動部25によって生じる磁界の影響によって金属板48に渦電流が生じることを防止でき、磁気従動部6を効率良く駆動することができる。
【0048】
また、ローター室7において、特に磁気従動部6の後端部に対応する箇所は、前記隙間44からポンプ室5に流入した流体の流れの向きが収納部26の底部50によって内向きに変えられる箇所であり、流体に含まれる鉄粉等の異物が溜まりやすい箇所と言える。従って、ローター室7の内面において磁気従動部6の後端部に対応する箇所は鉄粉等の異物により傷付きやすい箇所と言える。しかし、本実施形態では、ローター室7の内面において磁気従動部6の後端部に対応する箇所を金属板48により保護し、当該箇所が異物により傷付けられることを適切に防止できる。
【0049】
(第三実施形態)
次に第三実施形態について説明する。なお、以下の第三実施形態の説明では、第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0050】
図3に示す本実施形態の遠心ポンプ1は、収納部26を有する分離板24が金属板48と一体成形されている。
【0051】
本実施形態の金属板48は円筒状に形成されており、分離板24において磁気従動部6のマグネット部19に対応する箇所である周壁部28にのみ設けられている。
【0052】
金属板48は分離板24を成形する金型に挿入されて分離板24と一体的に設けられる。つまり、分離板24及び金属板48はインサート成形品によって構成されている。金属板48は内周面がローター室7内側に露出して周壁部28の他の内周面と面一となるように分離板24に設けられている。このため、分離板24の周壁部28の内周面を成型するための金型を支障なく前方に抜くことができる。
【0053】
本実施形態では、収納部26が金属板48と一体成形される。このため、金属板48は、成形時において収縮した分離板24を構成する合成樹脂から金属板48を狭める方向の圧力を受けるようになり、これにより、金属板48をローター室7の内面部に強固に取り付けることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、金属板48を分離板24の周壁部28にのみ設けたが、これに限定されるものではない。例えば、金属板48を第一実施形態のように分離板24の内面の略全体に亘って設けてもよいし、第二実施形態のように磁気従動部6の後端部に対応する箇所にのみ設けてもよい。また、金属板48を後述する第四実施形態のようにローター室7の内周面において磁気従動部6の前端部に対応する箇所にのみ設けてもよい。また、金属板48を後述する第五実施形態のように、分離板24の周壁部28の前端部から前コーナー部49を経てフランジ部27に至る範囲に設けてもよい。
【0055】
(第四実施形態)
次に第四実施形態について説明する。なお、以下の第四実施形態の説明では、第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0056】
図4に示す本実施形態の遠心ポンプ1は、金属板48を収納部26の内面において磁気従動部6の前端部に対応する箇所にのみ設けている。
【0057】
金属板48は円筒状に形成されており、分離板24の周壁部28の内周面に取り付けられている。金属板48は、周壁部28の内周面よりも金属板48の厚み分だけ内方に突出しており、この金属板48により突部53が構成されている。
【0058】
このように本実施形態の金属板48は、マグネット部19の前端部及びマグネット固定部36の前端部に対応する箇所に設けられ、収納部26の内面から突出する突部53を構成している。この構成により、金属板48とこれに対向する磁気従動部6の外周面の間に形成される隙間54は、周壁部28の他の内周面と磁気従動部6の外周面の間に形成される隙間よりも小さくなる。このため、ポンプ部4の吐出部17から吐出された流体がポンプ室5側に流れる量を金属板48によって抑えることができ、これにより流体に含まれる鉄粉等の異物により収納部26の内面が傷付けられることを防止できる。また、本実施形態では、突部53が鉄よりも硬い金属板48で構成されているので、ローター室7側に入り込む流体に含まれる異物により、収納部26の内面において磁気従動部6の前端部に対応する箇所が傷付けられることを防止できる。また、金属板48は非磁性であるので、磁気駆動部25により生じる磁界に影響を与え難く、磁気従動部6を効率良く駆動できる。
【0059】
(第五実施形態)
次に第五実施形態について説明する。なお、以下の第五実施形態の説明では、第四実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0060】
図5に示す本実施形態の遠心ポンプ1は、金属板48が分離板24の周壁部28の前端部から前コーナー部49を経てフランジ部27に至る範囲に設けられている。金属板48は、円筒状部55と、円筒状部55の前縁から外方に突出する鍔状部56で構成されている。円筒状部55と鍔状部56とでなすコーナー部分57は断面弧状に形成されている。
【0061】
金属板48は、円筒状部55を周壁部28の内周面の前端部に沿わせ、コーナー部分57を前コーナー部49の内面に沿わせ、鍔状部56をフランジ部27の前面に沿わせた状態で、分離板24に取り付けられている。このように取り付けられた金属板48により、分離板24から突出する突部53が構成されている。
【0062】
このように突部53を収納部26の内面からフランジ部27の前面にまで亘る板状の金属板48で構成することで、金属板48を分離板24に取り付けやすくなる。また、金属板48の鍔状部56によって分離板24のフランジ部27を保護することができる。
【0063】
なお、本実施形態及び第四実施形態では、突部53を金属板48で構成したが、突部53をその他の板状の部材で構成してもよい。例えば突部53を分離板24と一体に形成することが挙げられる。
【0064】
(第六実施形態)
次に第六実施形態について説明する。なお、以下の第六実施形態の説明では、第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0065】
本実施形態の遠心ポンプ1は金属板48を備えておらず、図6に示す羽根車2を備えている。この羽根車2の磁気従動部6には、収納部26の内側における磁気従動部6の外周側の流体を前方に送る第二羽根部67が設けられている。
【0066】
第二羽根部67が形成された磁気従動部6は、ローター部20の円筒状のマグネット固定部36の前縁部が後面シュラウド15に接続されている。円筒状のマグネット固定部36の内周面には、軸受固定部22に代えて、前後に貫通する孔を有する軸受固定部69が形成されている。図示は省略するが、軸受固定部69の内側の孔には軸23が挿通され固定される。
【0067】
円筒状のマグネット固定部36の前部内側の空間70は後面シュラウド15の中央部に形成された孔75を介してポンプ部4の流路52に通じている。マグネット固定部36の後部内側の空間71は、軸受固定部69を挟んで空間70の後方に位置している。空間71は、マグネット固定部36に形成された第一連通孔72を介して空間70に連通している。また、マグネット固定部36の前端部には、マグネット固定部36の外周側の空間73と空間71を連通させる第二連通孔74が形成されている。
【0068】
第二羽根部67はマグネット固定部36の後端面に周方向に複数形成されている。この第二羽根部67は、羽根車2の回転時において、空間70内の流体を第一連通孔72を介して空間71に流入させる。そして、この流体は第二羽根部67の外周側に吐出され、この後、周壁部28の内周面とこれに対向する磁気従動部6の間に形成された空間、空間73、及び第二連通孔74を順に通った後、空間70に戻る。
【0069】
なお、空間70はポンプ部4の流路52に通じているが、マグネット固定部36には第二連通孔74が形成されているため、後面シュラウド15の孔75付近では負圧が生じ難い。このため、鉄粉等を含む流体が空間70側に供給される流量は少なく、これにより後面シュラウド15の孔75から鉄粉等を含む流体が空間70を介してローター室7側に多量に供給されることが防止されている。
【0070】
本実施形態では、前記循環流を生じさせる第二羽根部67を設けることで、ローター室7の磁気従動部6の外周側において流体を前方に送ることができる。この流体の流れは、前記吐出部17から隙間44を介してローター室7に流入する流体の流れと逆方向となる。このため、前記吐出部17から隙間44を介してポンプ室5に流入する流体の量を抑えることができ、この結果、鉄粉等の異物によりローター室7の内面が傷付けられることを防止できる。
【0071】
なお、本実施形態の遠心ポンプ1には、第一〜第五実施形態の金属板48を設けてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 遠心ポンプ
2 羽根車
3 ハウジング
6 磁気従動部
7 ローター室
15 後面シュラウド
24 分離板
25 磁気駆動部
48 金属板
53 突部
67 第二羽根部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後面シュラウドの後方に磁気従動部が設けられた羽根車と、この羽根車を収納するハウジングと、前記磁気従動部を囲むように前記ハウジングに設けられて、前記磁気従動部を磁気により回転駆動する磁気駆動部を備え、前記ハウジングは、前記羽根車の磁気従動部を収納する合成樹脂製の収納部を有し、この収納部の内面に非磁性で鉄よりも硬い金属板が設けられたことを特徴とする遠心ポンプ。
【請求項2】
前記金属板が前記収納部の内面において前記磁気従動部の後端部に対応する箇所にのみ設けられたことを特徴とする請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項3】
前記収納部が前記金属板と一体成形されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠心ポンプ。
【請求項4】
後面シュラウドの後方に磁気従動部が設けられた羽根車と、この羽根車を収納するハウジングと、前記磁気従動部を囲むように前記ハウジングに設けられて、前記磁気従動部を磁気により回転駆動する磁気駆動部を備え、前記ハウジングは、合成樹脂製で前記羽根車の磁気従動部を収納する収納部を有し、この収納部の内面において前記磁気従動部の前端部に対応する箇所に突部が設けられたことを特徴とする遠心ポンプ。
【請求項5】
前記ハウジングは合成樹脂製の分離板を備え、この分離板は、前方に開口すると共に後端が底部で閉塞された有底筒状の前記収納部と、この収納部の前縁部から径外方向に突出したフランジ部を有し、前記突部が、前記分離板に沿って前記収納部の内周面から前記フランジ部の前面にまで至る板状の部材で構成されたことを特徴とする請求項4に記載の遠心ポンプ。
【請求項6】
羽根部の後方を覆う後面シュラウドの後方に磁気従動部が設けられた羽根車と、この羽根車を収納するハウジングと、前記磁気従動部を囲むように前記ハウジングに設けられて、前記磁気従動部を磁気により回転駆動する磁気駆動部を備え、前記ハウジングは、前記羽根車の磁気従動部を収納する合成樹脂製の収納部を有し、前記磁気従動部に、前記収納部の内側における前記磁気従動部の外周側の流体を前方に送る第二羽根部が設けられたことを特徴とする遠心ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−202320(P2012−202320A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68384(P2011−68384)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】