説明

遠心脱水装置

【解決手段】 脱水位置Aに搬入された積層状態のケース2は、下側回転機構15と上側回転機構16によって上下から挟持され、かつ2対の保持ピン17によって側方から2箇所の角部を保持される。その状態においてケース2が回転されて脱水される。
ケース2の大きさを変更した場合には、エアクランプ機構44による各可動台41,42の固定状態を解除した後に、各可動台41,42とそれらに支持した保持ピン17を位置調整機構18の可動チャック62によって第1アーム25の長手方向に移動させる。それにより、2対の保持ピン17は変更後のケース2の大きさに対応する位置に停止される。
【効果】 位置調整機構18は上側回転機構16とは別個に設けられているので、小型のサーボモータ33を採用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心脱水装置に関し、より詳しくは、例えば洗浄後のケースやパレットを保持して回転させることにより脱水するようにした遠心脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば折り畳み式のケースを洗浄液(水)で洗浄した後に、ケースを回転体に保持した状態において高速回転させることにより、遠心力で洗浄液をを飛散させて脱水する遠心脱水装置は知られている。こうした従来の遠心脱水装置においては、回転された際の遠心力によってケースが振り飛ばされるのを防止するために、ケースの対角線上の角部等を側方から保持する複数の保持部材が配置されている(例えば特許文献1〜特許文献3)。
ところで、脱水対象となるケース等の物品には各種の大きさのものがあるので、遠心脱水装置としては異なる大きさの物品に兼用できることが要望されている。そして、このような要望に応じるために、上記特許文献1〜特許文献3の遠心脱水装置においては、上記複数の保持部材の固定位置を調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−262024号公報
【特許文献2】特開2009−36466号公報
【特許文献3】特開2009−208839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜特許文献3に開示された脱水装置においては次のような問題点があった。
すなわち、特許文献1の脱水装置においては、高速回転される回転体に保持部材の位置を変更するための位置調整機構を設けているので、回転体の重量および慣性モーメントが増加する。そのため、特許文献1の脱水装置においては、回転体の駆動源となるモータが大型化するとともに、モータに連動して回転体が所要の回転速度に到達するまでに時間か掛かり、かつモータの駆動を停止してから回転体が停止するまでに時間が掛かるという問題点があった。しかも、特許文献1においては、遠心脱水装置全体の強度を高める必要があるため、遠心脱水装置の製造コストが増大するという問題点があった。
次に、特許文献2の遠心脱水装置においては、大小の物品用の2種類の保持部材を備えているだけなので、脱水対象となる物品の大きさが限定されて汎用性が低いという問題があった。
さらに、特許文献3の遠心脱水装置においては、複数の保持部材を回転体に伸縮自在に設けることで大きさが異なる物品に兼用可能であるが、処理対象となる物品の大きさが2種類に限定されるので汎用性が低いという問題点があり、しかも、高速回転時に保持部材が破損するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、請求項1に記載した本発明は、脱水位置において物品の少なくとも下方を支持して回転可能な回転体と、この回転体を回転させる駆動源と、上記回転体に対向して配設されるとともに上記回転体に支持された物品の側部を両側から保持する一対の保持部材とを備えた遠心脱水装置において、
上記一対の保持部材を上記回転体に対して放射方向に移動可能に設け、また、各保持部材を所要時に回転体上で固定する固定手段を設け、さらに、上記一対の保持部材を上記回転体の放射方向に移動させる位置調整機構を、上記回転体と分離させて配設して、上記物品の大きさに応じて上記各保持部材の回転体上における固定位置を変更するようにしたものである。
また、請求項2に記載した本発明は、上記請求項1において、上記回転体は、物品を支持して昇降可能な下側回転体と、上記駆動源に連動して回転される上側回転体とを備え、上記上側回転体は、放射方向に配置された少なくとも1つのアームと、このアームの両端側に該アームの長手方向である上記放射方向に沿って移動可能に設けられた一対の可動台を備え、上記保持部材の一方は上記可動台の一方に鉛直下方に向けて設けられており、上記保持部材の他方は上記可動台の他方に鉛直下方に向けて設けられており、上記物品を支持して上昇された下側回転体と上記上側回転体とによって物品を上下から挟持するとともに、該物品の対角線上となる1対の角部を上記一対の保持部材によって側方から保持し、その状態において上記駆動源によって上側回転体、下側回転体および物品が回転されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
上述した請求項1、2の構成によれば、上記位置調整機構は、回転体とは別個に配置されているので、上記駆動源となるモータとして小型のものを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例を示す正面図。
【図2】図1のII―II線に沿う要部の平面図。
【図3】図2における要部の構成を拡大して示す平面図。
【図4】図1の脱水手段によってケースを上方に支持した状態を示す正面図。
【図5】図1の脱水手段により大きさが異なるケースを保持する際の保持ピンとケースとの位置関係を示す平面図。
【図6】図1における保持ピンを位置調整機構によって移動させる際の作動工程図であり、図6(a)は可動チャックを下降させる工程を示し、図6(b)は可動チャックを原点位置センサまで前進させる工程を示し、図6(c)は可動チャックにより保持ピンを放射方向に移動させる工程を示している。
【図7】図6(a)〜図6(c)の各工程における可動チャックの係合凹部と係合凸部との関係を示す拡大図であり、図7(a)は図6(a)の要部の拡大図、図7(b)は図6(b)の要部の拡大図、さらに図7(c)は図6(c)の要部の拡大図である。
【図8】図1の脱水手段によってケースを保持した際の上側回転機構とケースとの位置関係を示す平面図であり、図8(a)は大型のケースを保持する場合を示し、図8(b)は中型のケースを保持する場合を示し、さらに図8(c)は小型のケースを保持する場合を示している。
【図9】本発明の固定手段に関する第2実施例を示す正面図であり、図9(a)は可動チャックが下降する前の状態を示し、図9(b)は下降された可動チャックが係合爪と係合した状態を示している。
【図10】図9(a)の要部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1ないし図2において1は遠心脱水装置であり、この遠心脱水装置1は、5段に積層された状態のケース2を脱水位置Aにおいて高速回転させることにより、一度に5個のケース2を脱水できるようになっている(図4参照)。
遠心脱水装置1による脱水処理の対象となる物品は、折り畳み式のケース2である。このケース2は隣接する上流側に配置された図示しない洗浄装置によって洗浄された後に該洗浄装置の搬送コンベヤ3によって遠心脱水装置1の搬送コンベヤ4へ受け渡されてから脱水位置Aへ搬入されるようになっている。
より詳細には、ケース2は大きく拡開された組み立て状態において洗浄装置の搬送コンベヤ3上に供給されるようになっており、該搬送コンベヤ3による搬送過程においてケース2に向けて洗浄液(水)が噴射されることで、ケース2が洗浄されるようになっている。水が噴射されて洗浄されたケース2は、その後の搬送コンベヤ3による搬送過程において小さく折り畳まれた後に、相前後する5個のケース2が5段積みに積層されるようになっており、その積層状態で洗浄装置3の搬送コンベヤ3から遠心脱水装置1の搬送コンベヤ4へ受け渡されるようになっている。
【0009】
本実施例の遠心脱水装置1は、積層状態のケース2を脱水位置Aに搬入し、かつ、そこから脱水処理後のケース2を下流側へ搬出する搬送コンベヤ4と、この搬送コンベヤ4が搬送する積層状態のケース2の停止位置を規制する機内ストッパ5および入口ストッパ6と、搬送コンベヤ4の搬送過程上となる脱水位置Aに設けられて、積層状態のケース2を保持した状態で高速回転させる脱水手段7と、これらの各構成要素の作動を制御する制御手段8とを備えている。
遠心脱水装置1は4本の柱11Aを有する櫓状の固定フレーム11を備えており、その固定フレーム11の左右一対の柱11Aを水平方向に貫通させて搬送コンベヤ4が設けられている。
この搬送コンベヤ4は、モータ12によって同期して走行される左右一対の無端状ベルトからなり、この搬送コンベヤ4の搬送面4Aは水平に維持されるとともに、搬送面4Aの高さは、前述した洗浄装置側の搬送コンベヤ3および下流側に配置された排出コンベヤ13の搬送面と同じ高さに維持されている。
搬送コンベヤ4の駆動源となるモータ12は制御手段8によって作動を制御されるようになっており、所要時に制御手段8によってモータ12が駆動されると搬送コンベヤ4は矢印方向に走行されるようになっている。そのため、前述した洗浄装置の搬送コンベヤ3上から積層状態のケース2が走行中の搬送コンベヤ4上に受け渡されると、該搬送コンベヤ4によってケース2は待機位置Bを経由して脱水位置Aへ搬入され、さらに脱水位置Aから下流側の排出コンベヤ13上に搬出されるようになっている。
図2に示すように、本実施例においては、長方形状のケース2の長辺2C、2Cが搬送コンベヤ4による搬入方向と平行な状態で該ケース2は搬送コンベヤ4によって脱水位置Aへ搬送されるようになっている。
【0010】
本実施例においては、搬送コンベヤ4の搬送過程の略中央部が脱水位置Aとなっており、その脱水位置Aに積層状態のケース2を停止させるために機内ストッパ5が配置されている。また、脱水位置Aよりも上流側となる搬送コンベヤ4の搬送過程が待機位置Bとなっており、その待機位置Bには後続する積層状態のケース2を待機させるための入口ストッパ6が配置されている。
機内ストッパ5は、左右各3対の進退動可能なストッパ5A〜5Cからなり、それら各一対のストッパ5A〜5Cは、大きさが異なる大中小のケース2に応じて使い分けられるようになっている。すなわち、エアシリンダ機構からなる各ストッパ5A〜5Cは制御手段8によって左右各一対単位で進退動されるようになっており、制御手段8が所要時に処理対象となるケース2の大きさに応じて各ストッパ5A〜5Cを進退動させるようになっている。具体的には、大きなケース2を脱水位置Aに停止させる場合には、制御手段8は左右一対のストッパ5Aを同期して搬送コンベヤ4から外れた後退位置から搬送コンベヤ4上となる前進位置まで前進させる。
その状態において、搬送コンベヤ4によって積層状態のケース2が脱水位置Aに搬送されてくると、該ケース2の前面となる短辺2Dが上記前進位置にあるストッパ5A、5Aに当接して停止される。それにより、ケース2は脱水位置Aに搬入されて停止されるとともに、停止されたケース2の中心と脱水手段8によりケース2が回転される際の回転中心Cとが一致するようになっている。
これと同様にして、制御手段8は、脱水対象となるケース2が中型のケース2の場合には左右のストッパ5Bを作動させてそれらを後退位置から前進位置まで前進させるようになっており、さらに、制御手段8は、脱水対象となるケース2が小型のケース2の場合には一対のストッパ5C、5Cを作動させて、それらを後退位置から前進位置まで前進させるようになっている。
このようにして、制御手段8は、脱水対象となるケース2の大きさに応じて上記機内ストッパ5の各ストッパ5A〜5Cを搬送コンベヤ4上の前進位置まで前進させるようになっており、それによって、大きさの異なるケース2が脱水位置Aに正確に停止されるようになっている。なお、上記機内ストッパ5を、搬送方向に沿って移動可能な1つのストッパにより構成して、ケース2の大きさに応じて適宜搬送方向における機内ストッパ5の停止位置を変更するようにしても良い。
【0011】
上述のようにして脱水位置Aに搬入された積層状態のケース2は、後述する脱水手段7の下側回転機構15によって搬送コンベヤ4の搬送面4Aよりも上方まで持ち上げられてから上側回転機構16とによって上下から挟持され、かつ角部2A,2Bを2対の保持ピン17により保持されるようになっており、その状態において回転軸22を回転中心Cとして高速回転されることで脱水処理が施される(図4参照)。そして、回転が停止されて脱水処理が終わると、ケース2が下側回転機構15により下降されることで、両回転機構15,16による保持状態を解放されてから再度搬送コンベヤ4の搬送面4A上に載置されるようになっている。その際には、機内ストッパ5は制御手段8により搬送コンベヤ4の搬送面4Aから外れた後退位置まで後退されており、その後、制御手段8によってモータ12を介して搬送コンベヤ4が走行されることで脱水処理後のケース2は脱水位置Aから下流側へ搬出されて排出コンベヤ13へ受け渡されるようになっている。
【0012】
これに伴い、洗浄装置側の搬送コンベヤ3から搬送コンベヤ4上に後続する積層状態のケース2が受け渡される。この時点においては、制御手段8は、搬入されるケース2の大きさに応じた機内ストッパ5(5A〜5Cのいずれか)を作動させて、それらを前進位置へ前進させている。そのため、新たな積層状態のケース2は機内ストッパ5Aに当接して脱水位置Aに搬入されて停止されるとともに、それに後続する積層状態のケース2が洗浄装置の搬送コンベヤ3から搬送コンベヤ4上に受け渡される。
この時点においては、制御手段8によって入口ストッパ6が作動されて搬送コンベヤ4上となる前進位置まで前進されているので、第2のケース2は入口ストッパ6に当接して待機位置Bに停止される。この入口ストッパ6も上記機内ストッパ5と同様にエアシリンダ機構からなり、制御手段8によってこの入口ストッパ6、6が作動されると搬送コンベヤ4から外れた後退位置と搬送コンベヤ4上となる前進位置とにわたって進退動されるようになっている。
本実施例においては、上述したようにして制御手段8が搬送コンベヤ4と両ストッパ5,6の作動を制御することにより、積層状態のケース2は待機位置Bを経由して脱水位置Aに搬入され、その後、該脱水位置Aにおいて脱水処理が終わったケース2は脱水位置Aから下流側の排出コンベヤ13上に排出されるようになっている。
さらに、本実施例においては、脱水位置Aに最初のケース2が搬入され、かつ後続する第2のケース2が待機位置Bに停止された状態となると、洗浄装置の搬送コンベヤ3の下流側端部に配置された第2待機ストッパ14が制御手段8により搬送コンベヤ3上となる前進位置へ前進されるので、第3のケース2は洗浄装置の搬送コンベヤ3上に強制的に停止されるようになっている。
【0013】
しかして、脱水手段7は、脱水位置Aにおける下方側に配設されてケース2を支持して回転可能な下側回転機構15と、脱水位置Aにおける上方側に配設されてケース2を上方側から押えるとともに該ケース2の角部2A、2Bを側方から2対の保持ピン17によって保持して回転させる上側回転機構16と、この上側回転機構16が備える2対の保持ピン17の放射方向における停止位置を変更する位置調整機構18と、上下の両回転機構15、16によって保持されたケース2の周囲を囲繞するカバー21とを備えている。上記下側回転機構15、上側回転機構16および位置調整機構18の作動は制御手段8によって制御されるようになっている。
図1および図4に示すように、本実施例の脱水手段7は、下側回転機構15によって搬送コンベヤ4の搬送面4Aよりも上方側の上昇位置へケース2を押し上げた状態において、両回転機構15,16によって積層状態のケース2を上下から挟持し、かつ上側回転機構16の2対の保持ピン17によってケース2の角部2A,2Bを側方から保持するようになっている。その状態で、両回転機構15,16とそれらによって保持されたケース2を鉛直方向の回転軸22を回転中心Cとして高速回転させるようになっている。それによって、ケース2に付着した水は遠心力によって飛散して、ケース2の脱水処理が施される。両回転機構15、16によって回転されるケース2はカバー21によって囲繞されているので、ケース2が高速回転される際に周囲に向けて飛び散る水はカバー21の内面に付着してから下方に流下するので、カバー21の外部へ水が飛散しないようになっている。
【0014】
下側回転機構15は、固定ベース19に鉛直上方に向けて配置されたシリンダ機構23と、このシリンダ機構23のピストンロッド23Aの上端部にボールベアリングを介して水平に取り付けられた回転板24とを備えている。シリンダ機構23は、制御手段8によって作動を制御されるようになっており、シリンダ機構23が非作動の状態においては、ピストンロッド23Aは図1に示した下降端に位置している。その状態では、回転板24は搬送コンベヤ4の搬送面4Aよりも少し低い高さに支持されている。
このようにピストンロッド23Aおよび回転板24が下降端に位置している状態において、前述したように搬送コンベヤ4によって積層状態のケース2が搬入されて脱水ストッパ5によって脱水位置Aに停止される。脱水位置Aにケース2が搬入されると、最下段のケース2の隣接下方位置に回転板24が位置する(図1の状態)。
そして、この状態から制御手段8がシリンダ機構23を作動させると、該シリンダ機構23のピストンロッド23Aが上昇端まで上昇されるので、その上昇過程において回転板24によって積層状態のケース2が支持された後に搬送コンベヤ4の搬送面4Aよりも上方となる上昇端位置まで上昇されるようになっている(図4参照)。
【0015】
これにより、ケース2を支持した回転板24と上側回転機構16側の第1アーム25および第2アーム26A,26Bとによって積層状態の5段のケース2が上下から挟持されるとともに、5段全てのケース2における対角線上となる2箇所の角部2A、2Bが各一対の保持ピン17間に挿入される。そのため、角部2A,2Bとその隣接位置となる全ケース2の長辺2Cと短辺2Dが各一対の保持ピン17によって側方から保持される(図1の想像線、図2および図4参照)。
この保持状態において、回転板24とそれに支持された積層状態のケース2および両アーム25,26A、26Bが、鉛直方向の回転軸22を回転中心Cとして一方向に回転されることで、ケース2の脱水処理が行われるようになっている。
そして、ケース2の回転が停止された後に制御手段8によってシリンダ機構23の作動されてピストンロッド23Aが下降されるので、回転板24が上昇端位置から下降端位置まで下降する。その過程において、最下段のケース2が搬送コンベヤ4の搬送面4Aに支持されるとともに、回転板24はケース2から離隔して搬送面4Aよりも下方の下降端位置に停止する。つまり、搬送コンベヤ4の搬送面4Aに積層状態のケース2が再度支持される。
このように制御手段8により下側回転機構15のシリンダ機構23を昇降させることにより、回転板24によってケース2が支持されて搬送コンベヤ4の搬送面4Aよりも上方の上昇端位置に支持されるとともに、上昇された回転板24は下降端位置まで下降されることで、洗浄処理後のケース2は再度搬送コンベヤ4上に支持されるようになっている。
【0016】
次に、上側回転機構16は、固定フレーム11の天井11Bを貫通させて鉛直方向に軸支された回転軸22と、この回転軸22の下端部に連結された枠状回転体31と、この枠状回転体31の枠部材28に水平に連結された直線状の第1アーム25と、枠状回転体31の枠部材28に第1アーム25と位置をずらして水平に連結された第2アーム26A,26Bと、上記第1アーム25の両端の位置にそれぞれ支持された各一対の保持ピン17と、タイミングベルト32を介して上記回転軸22および上記各構成部材を一体的に回転させるサーボモータ33とを備えている。
回転軸22の上部外周にはプーリ34が取り付けてあり、このプーリ34とサーボモータ33の駆動軸のプーリ35とにわたってタイミングベルト32が掛け渡されている。サーボモータ33の作動は制御手段8によって制御されるようになっている。
前述したようにケース2を下側回転機構15の回転板24によって支持して上昇端位置まで上昇させると、最上段のケース2の上面が両アーム25、26A,26Bの底面および枠部材28の底面と当接する。つまり、下方側の回転板24と、上方側の両アーム25、26A,26Bおよび枠部材28とによって積層状態のケース2が上下から挟持されるようになっている(図4参照)。
【0017】
回転軸22の軸心と上記下側回転機構15の回転板24の中心は、鉛直方向において同一直線上に位置させてあり、したがって、図4に示すように、下側回転機構15と上側回転機構16とによって保持されたケース2は、回転軸22の軸心および回転板24の中心を回転中心Cとして回転されるようになっている。
枠状回転体31は、下方側に位置する正方形の枠部材28と、上方側に位置する円板状部材29と、それら両部材を連結する4本の円柱部材30とによって構成されている。枠部材28と円板状部材29は、両部材の中心が一致するように上記4本の円柱部材30によって一体に連結されている。
そして、上記回転軸22の下端部は、枠状回転体31の円板状部材の上面中央部に連結されており、枠状回転体31の枠部材28に第1アーム25と第2アーム26A、26Bが連結されている。なお、図4においては、煩雑さを避けるために第2アーム26A、26Bの表示を省略している。
図2に示すように、第2アーム26A、26Bは、枠部材28における対向する各辺の中央部に所定角度(例えば45°)傾斜させて取り付けられており、それにより各第2アーム26Aと26Bは、枠状回転体31が回転する際に相互に180度位相がずれた位置に位置する。これら第2アーム26A,26Bの底面は、枠部材28の底面と同じ高さで水平に維持されており、また、第2アーム26A,26Bが外方へ向けて伸びる長さは、ケース2の対角線上の2つの角部2A,2Bを超える長さに設定されている。
【0018】
枠部材28における他の二辺にわたって、それらと直交させて、かつ回転中心Cを通るように直線状の第1アーム25が連結されている。第1アーム25の長さは、脱水対象となる最大のケース2の対角線の長さよりも少し長い寸法に設定されている。そのため、第1アーム25は枠状回転体31の放射方向に伸びており、しかも、第1アーム25の底面の高さは、枠部材28の底面および上記第2アーム26A,26Bの底面と同じ高さに設定されている。つまり、第1アーム25の底面と上記第2アーム26A,26Bの底面および枠部材28の底面は、水平な同一平面上に位置している。
そのため、前述したように下側回転機構15によって積層状態のケース2が上昇端位置まで上昇されると、最上段のケース2の上面が両アーム25、26A,26Bの底面および枠部材28の底面と当接し、それによって、積層状態の5段のケース2は下側回転機構15の回転板24と上側回転機構16の両アーム25、26A,26Bおよび枠部材28とによって保持されるようになっている。
【0019】
第1アーム25は回転中心Cから放射方向に伸びており、この第1アーム25の上面には、長手方向の略全域にわたって角柱状をした直線のガイドレール36が固定されている。このガイドレール36の一端側に第1可動台41の底部のガイド溝が摺動自在に係合されており、ガイドレール36の他端側に第2可動台42の底部のガイド溝が摺動自在に係合されている。これにより、第1可動台41と第可動台42は、ガイドレール36に沿って第1アーム25の長手方向に移動できるようになっている。
第1可動台41の上面には、第1アーム25の長手方向と60度の角度をなすように板状支持部材43が水平に連結されており、第2可動台42の上面にも、第1アーム25の長手方向と60度の角度をなすように板状支持部材43が水平に連結されている。つまり、回転方向において180度位相をずらした位置に、第1可動台41の板状支持部材43と第2可動台42の板状支持部材43が相互に対向するように配置されている。なお、本実施例においては、上記板状支持部材43が第1アーム25となす角度は60度に設定されているが、脱水処理の対象となるケース2の形状に応じて上記角度を適宜変更しても良い。
【0020】
上記両方の板状支持部材43の両端部には、鉛直下方に向けて上記一対の保持ピン17が連結されており、両板状部材43の上面の中央部には、鉛直上方に向けて突出する係合凸部43Aが形成されている。
各保持ピン17は丸棒状に形成されており、保持ピン17の長さは5段に積層されたケース2の最上段から最下段までの長さと同じか、少し長い寸法に設定されている。各板状支持部材43に連結した各一対の保持ピン17は、第1アーム25の一端側と他端側とで相互に対向した状態で離隔しているので、図2に示すように、積層状態の5段のケース2における対角線上の角部2A、2Bとそれに隣接する長辺2Cと短辺2Dに各一対の保持ピン17が略隙間なく当接できるようになっている。
本実施例では、板状支持部材43を第1アーム25の長手方向に対して60°傾斜させて配置してあるので、左右一対の保持ピン17を結ぶ仮想の直線も第1アーム25に対して60°傾斜した状態となっている。このように構成することで、ケース2が長方形の場合、ケース2の大きさに応じて保持ピン17の位置を第1アーム25の長手方向の所要位置へ移動させるに当たって、図5に示すように、各ケース2の大きさに対応して回転方向の位相を調整する際の調整角度Xを小さく抑制できるようになっている。
なお、ケース2が正方形の場合には、第1アーム25の長手方向に対して板状支持部材43を直交させて配置すればよい。その場合には、回転中心から各保持ピン17までの距離が等しくなるように配置すれば本実施例と同様の効果を得ることができる。このように、各種の形状のケース2に対応するために、上記板状支持部材43の第1アーム25への取付け角度を変更可能としても良い。
【0021】
このように、各板状支持部材43に左右一対の保持ピン17を設けてあり、各板状支持部材43と保持ピン17はガイドレール36に沿って第1アーム25の長手方向に沿って、すなわち回転中心Cに対して放射方向に移動できるようになっている。そのように第1アーム25の一端と他端に移動可能に配置された各板状支持部材43と各一対の保持ピン17は、位置調整機構18によって第1アーム25およびガイドレール36の長手方向に沿って移動されて放射方向における停止位置を変更されるようになっている。
本実施例においては、各一対の保持ピン17を第1アーム25の長手方向における所要位置に固定するために、各可動台41、42における相互に対向する端部にそれぞれエアクランプ機構44を一体に設けている。固定手段としての各エアクランプ機構44は、図3に示すように、ガイドレール36の上面および両側面を囲繞して配置されたケーシング45を備えており、このケーシング45内のガイドレール36を挟んだ左右の空間部に一対の楔46が配置されるとともに、各楔46,46の傾斜面と係合する2枚一組のブレーキパッド47,47が配置されている。また、各楔46の背面とそれに対向するケーシング45の内壁とにわたってそれぞればね48が弾装されているので、楔46の傾斜面は各組のブレーキパッド47、47に強く噛み込むようになっている。
ケーシング45内における各楔46を挟んで各ばね48と反対側の空間部は、それぞれ圧力室51、51となっており、これら両圧力室51,51は導管52を介して圧縮空気供給源としてのポンプ53と連通させている。導管52の途中には電磁切換弁54が配置されており、この電磁切換弁54の作動は制御手段8によって制御されるようになっている。
【0022】
電磁切換弁54は、両圧力室51を大気と連通させる第1位置(図3の状態)と、圧力室51とポンプ53とを連通させる第2位置とに交互に切り換え可能となっており、制御手段8は、所要時に上記電磁切換弁54を第1位置と第2位置とに切り換えるようになっている。電磁切換弁54が第1位置にあるときには、導管52を介して両圧力室51に大気が導入されるので、各ばね48の弾発力によって両方の楔46はブレーキパッド47に気密を保持して強く噛み込むようになっている。そのため、左右のブレーキパッド47によってガイドレール36の両側面が強く挟持されるので、その状態では、第1可動台41、第2可動台42とそれらに設けられた2対の保持ピン17は、第1アーム25に対して固定された固定状態となる。
他方、その固定状態から制御手段8が所要時に上記電磁切換弁54を第2位置に切り換えると、導管52を介して圧力室51内にポンプ53から圧縮空気が供給されるので、該圧縮空気によって各ばね48が圧縮される。そのため、楔46の傾斜面がブレーキパッド47から僅かに離隔することで、ブレーキパッド47によるガイドレール36の挟持状態が解除されて、両可動台41,42と2対の保持ピン17の第1アーム25に対する固定状態か解除される。従って、この状態においては、両可動台41、42とそれに保持した2対の保持ピン17はガイドレール36に沿って第1アーム25の長手方向に移動可能となる。
【0023】
本実施例においては、固定手段としてのエアクランプ機構44による固定状態が解除された状態において、位置調整機構18の係合凹部62Aを各可動台41,42における係合凸部43Aに順次係合させてから進退動させるようになっている。それによって、第1可動台41、第2可動台42に支持した2対の保持ピン17を第1アーム25の長手方向に沿ってケース2の大きさに応じた所要位置へ移動させるようになっている。
【0024】
脱水手段7の下側回転機構15および上側回転機構16は以上のように構成されており、脱水位置Aに搬入された積層状態のケース2が下側回転機構15の回転板24によって上昇端位置まで上昇されると、ケース2の最上段のものが上側回転機構16の両アーム25、26A,26Bおよび枠部材28と当接するとともに、予め第1アーム25の長手方向所要位置に固定された状態の2対の保持ピン17が、ケース2における対角線上の角部2A,2Bとそれに隣接する長辺2Cと短辺2Dに当接する。
つまり、積層状態の5段のケース2は、上記回転板24と上記両アーム25、26A,26Bおよび枠部材28とによって上下から挟持され、かつ、対角線上の角部2A、2Bを側方から2対の保持ピン17により保持される。その両回転機構15,16による保持状態において制御手段8によりサーボモータ33を介して回転軸22が回転されるので、枠状回転体31、両アーム25、26と2対の保持ピン17およびケース2が一体となって回転軸22を回転中心Cとして図2の時計方向に回転されるので、積層状態の5段のケース2が脱水されるようになっている。
【0025】
前述したように、本実施例では、ケース2の長辺2Cがケース2の搬入方向と平行となるようにして、脱水位置Aに積層状態のケース2が搬入されて機内ストッパ5によって停止されるようになっている(図2参照)。
そして、本実施例においては、脱水位置Aにケース2が搬入された時点において、上側回転機構16の第1アーム25が脱水位置Aに搬入されたケース2における一方の対角線の上方位置に停止するように、制御手段8はサーボモータ33による回転角度を調整するようにしている。
つまり、脱水位置Aに搬入されたケース2の対角線上の2つの角部2A、2Bに各一対の保持ピン17間に挿入されるように、下側回転機構15によってケース2が上昇される前の時点で、制御手段8は、第1アーム25の回転方向における停止位置の位相を調整するようにしている。そのために、本実施例においては、回転軸22によって回転される際の第1アーム25の位置を検出する位置検出手段55を、第1アーム25の移動軌跡の上方位置に設けている。
位置検出手段55が第1アーム25を検出した際の検出信号は制御手段8に伝達されるようになっており、制御手段8は位置検出手段55からの検出信号を基にして、第1アーム25が脱水位置Aに搬入されるケース2の一方の対角線の上方位置となるように、サーボモータ33の回転量を決定して枠状回転体31および両アーム25、26A,26Bを所要角度だけ回転させる。
これにより、図2に示すように、第1アーム25に支持した2対の保持ピン17がケース2の対角線上の角部2A,2Bと係合可能な上方位置に停止される。その状態において、前述したように下側回転機構15の回転板24に支持されたケース2が上昇端位置まで上昇されることにより、2対の保持ピン17の間にケース2の角部2A,2Bが挿入されると同時にそれらに隣接する長辺2C、短辺2Dが左右一対の保持ピン17と当接する(図4参照)。したがって、ケース2の角部2A、2Bが対向位置ある2対の保持ピン17によって側方から保持される。
【0026】
本実施例は、ケース2の大きさに対応して各一対の保持ピン17の第1アーム25上における固定位置を変更できることが特徴である。つまり、上記固定手段としてのエアクランプ機構44による両可動台41,42の固定状態を解除し、その固定解除状態において位置調整機構18が備える可動チャック62の係合凹部62Aを両可動台41、42側の係合凸部43Aに順次係合させてから各可動台41,42を第1アーム25の長手方向に沿って移動させるようになっている。
図1に示すように、位置調整機構18は、固定フレーム11の天井11Bに鉛直下方に向けて配置されたエアシリンダ機構57と、このエアシリンダ機構57のピストンロッド57Aの下端部に連結されて水平に支持された支持部材58と、この支持部材58の底面側に上記回転中心Cから放射方向に配置されたねじ軸61と、このねじ軸61を上方部のめねじ部に螺合貫通させた可動チャック62と、上記ねじ軸61を正逆に回転させるサーボモータ63とを備えている。
【0027】
可動チャック62の下端部には、上記両可動台41,42側の係合凸部43Aと係合可能な係合凹部62Aが形成されている。
エアシリンダ機構57およびサーボモータ63の作動は、制御手段8によって制御されるようになっている。上記上側回転機構16の回転軸22が回転される際、つまり両回転機構15、16によるケース2の脱水処理中においてはエアシリンダ機構57は停止されている。そのエアシリンダ機構57の停止状態では、可動チャック62の係合凹部62Aは、図1に示すように、両可動台41,42側の係合凸部43Aと係合しない上方位置に支持されている。
他方、脱水手段7によるケース2の脱水処理が一旦終了して回転軸22が停止された後に、脱水処理の対象となるケース2の大きさが変更された際には、制御手段8によってエアシリンダ機構57が作動されて、そのピストンロッド57Aが下降端位置まで下降されるようになっている。その状態では、可動チャック62の係合凹部62Aが各可動台41,42側の係合凸部43Aと係合可能な高さに支持されるようになっている(図6(a)の状態)。
【0028】
また、制御手段8がサーボモータ63を所要量だけ正逆に回転させることにより、ねじ軸61が正逆に回転されるので、可動チャック62はねじ軸61の長手方向に沿って移動されるようになっている。ここで、ねじ軸61の長手方向は、回転軸22によって回転される上記第1アーム25の長手方向、つまり回転中心Cの放射方向と一致している。そのため、第1アーム25の両端のいずれかをねじ軸61の下方側で停止させると、各可動台41,42側のいずれかの係合凸部43Aがねじ軸61の下方側に停止するようになっている。
上記位置検出手段55は固定フレーム11の天井11Bに吊り下げて設けられており、制御手段8は、第1アーム25をケース2の搬入方向と平行となる位置に停止させる際にも、上記位置検出手段55による検出結果を利用するようにしている。つまり、第1アーム25上における両可動台41,42および保持ピン17の停止位置を変更する際に、サーボモータ33によって回転軸22、各アーム25、26A,26Bおよび保持ピン17が回転されると、第1アーム25の一端上に固定した反射鏡から位置検出手段55に反射光が検出されるようになっている。このように、位置検出手段55の検出信号が制御手段8に入力されると、制御手段8はサーボモータ33の作動を停止させる。それによって、枠状回転体31に設けられた第1アーム25がケース2の搬入方向と平行な状態で停止するので、両可動台41、42側のいずれかの係合凸部43Aが位置調整機構18のねじ軸61の下方側に停止するようになっている。
【0029】
そのように第1アーム25と両可動台41,42が停止された状態において、制御手段7がサーボモータ63を所要量だけ回転させることで、可動チャック62を上記停止状態にある例えば一方の第1可動台41の係合凸部43Aの真上に停止させることができる。そして、その状態から制御手段8がエアシリンダ機構57を作動させると、支持部材58、ねじ軸61および可動チャック62が所要量だけ下降されるので、可動チャック62の係合凹部62Aが係合凸部43Aに係合する(図6(A)参照)。
その状態で、かつ、両可動台41、42のエアクランプ機構44による固定が解除された状態において、制御手段8がサーボモータ63を正逆に回転させるとねじ軸63が回転されるので、可動チャック62を介して第1可動台41がガイドレール36に沿って第1アーム25の長手方向に移動される。つまり、第1可動台41とそれに支持した一対の保持ピン17が第1アーム25の長手方向に移動されるようになっている。
【0030】
ここで、図6(a)のように係合凸部43Aと係合凹部62Aとを係合させた際には、図7(a)に拡大して示すように、両部材間に遊びが生じている。そこで、この遊びを考慮して、本実施例では、両可動台41、42とそれらに支持した保持ピン17の第1アーム25上での停止位置を移動させる際に、係合凹部62Aと係合凸部43Aとの間の遊びによる保持ピン17の停止位置のばらつきを解消できるようにしている。
より詳細には、ねじ軸61の先端部が軸支された支持部材58の一端に原点位置センサ64が配置されており、移動されてきた可動チャック62の基部がそれに当接すると、原点位置センサ64から制御手段8に原点信号が伝達されるようになっている(図6(b)の状態)。つまり、上述したように先ず第1可動台41の係合凸部43Aに可動チャック62の係合凹部62Aを係合させた状態(図6(a)の状態)から制御手段7はサーボモータ62によりねじ軸61を所要量だけ正転させる。それにより、可動チャック62の基部が原点位置センサ64に当接し、該原点位置センサ64から制御手段8へ原点信号が伝達されると、その時点で制御手段7はサーボモータ63を一旦停止させてねじ軸61の回転を停止させる(図6(b)参照)。これにより、図7(b)に拡大して示すように、係合凸部43Aの外周部が対向する係合凹部62Aの内面と当接して、両部材の遊び(隙間)が解消される。
【0031】
制御手段8は、この時点を原点として、そこからケース2の大きさに対応する所要量だけサーボモータ63を逆転させてねじ軸61を逆転させる。このように、本実施例においては、原点位置センサ64を用いて係合凹部62Aと係合凸部43Aの間の遊びを解消するようになっている。それにより、ケース2の大きさに応じた所要の移動距離だけ先ず第1可動台41とそれに支持した一対の保持ピン17を第1アーム25の長手方向に沿って正確に移動させる(図6(c)、図7(c)参照)。
そしてこの後、制御手段8はエアシリンダ機構57を基の上昇位置まで後退させるので、可動チャック62、ねじ軸61および支持部材58が図1に示した基の上昇位置に支持されて、可動チャック62の係合凹部62Aは係合凸部43Aから離隔した上方側に支持される。これにより第1可動台41とそれに支持された保持ピン17の第1アーム25上における停止位置が、変更後のケース2の大きさに対応する位置に変更されたことになる。
そして、この後、第1可動台41及びその保持ピン17は、該第1可動台41のエアクランプ機構44によって第1アーム25に固定されるようになっている。
【0032】
両可動台41,42に対して位置調整機構18は1つだけしか配置されていないので、前述したようにして、先ず第1可動台41とそれに支持した保持ピン17の第1アーム25上の停止位置を変更したら、次に第2可動台42を位置調整機構18の下方まで移動させて、それに支持した保持ピン17の第1アーム25上における停止位置の変更を行うようにしている。
つまり、第1可動台41の位置調整後に、制御手段8はサーボモータ33を回転させてから位置検出手段55の検出信号が伝達されるとサーボモータ33を停止させる。それにより、第1アーム25が回転中心Cを中心として180度回転されて停止されるので、第1アーム25に支持された第2可動台42が位置調整機構18のねじ軸61の下方位置に停止する。すると、上述したように第1可動台41の場合と同様に、位置調整機構18によって第2可動台42とそれに支持された保持ピン17がケース2の大きさに応じた第1アーム25上の位置まで移動されるようになっている。
【0033】
以上の構成に基づく、遠心脱水装置1の脱水手段7によるケース2の脱水処理を説明する。
先ず、脱水処理を開始する前に、処理対象となるのが大型のケース2の場合には、その大きさに応じた第1アーム25上の停止位置に両可動台41、42および保持ピン17がエアシリンダ機構44によって予め固定されている。また、位置調整機構18のエアシリンダ機構57は上昇されており、したがって、可動チャック62の係合凹部62Aは係合凸部43Aと係合しない上方に支持されている。また、下側回転機構15のシリンダ機構23は作動されていないので、回転板24は搬送コンベヤ4の搬送面4Aよりも下方の下降端位置に支持されている。
この状態から走行中の搬送コンベヤ4によってケース2が脱水位置Aに搬入されて前進位置にある機内ストッパ5(5A)に当接して停止されると、制御手段8はモータ12を停止させて搬送コンベヤ4を停止させる一方、機内ストッパ5(5A)を前進位置から後退位置まで後退させる。
積層状態のケース2は、その前面となる短辺2Dが機内ストッパ5に当接して脱水位置Aにされることにより、ケース2の中心と回転軸22による回転中心Cとが一致するとともに、ケース2の長辺2C,2Cは搬入方向と平行な状態で搬送コンベヤ4上に支持される。また、この図2に示す状態では、予めケース2の角部2A,2Bと対応する上方側に2対の保持ピン17が位置している。
【0034】
このように脱水位置Aに積層状態のケース2が搬入されると、制御手段8は下側回転機構15のシリンダ機構23を作動させるので、ケース2は回転板24に支持されて上昇端位置まで上昇される。これにより、ケース2は回転板24と上側回転機構16の両アーム25,26A,26Bおよび枠部材28によって挟持されるとともに、ケース2の角部2A、2Bおよびその隣接位置の長辺2C,短辺2Dが2対の保持ピン17によって側方から保持される(図2、図4参照)。
この状態において制御手段8によりサーボモータ33が一方向に回転されるので、枠状回転体31、両アーム25、26A,26B、回転体24およびケース2が高速回転されて、該ケース2に脱水処理が施される。なお、その際に飛散する水はカバー21の内面によって受けられて、下方へ流下するようになっている。そして、所要時間だけサーボモータ33を介してケース2が高速回転されたら、制御手段8はサーボモータ33の作動を停止させる。これにより、脱水位置Aにおいて一度に5個のケース2の脱水処理が終了する。
この脱水処理の後には、制御手段8によって下側回転機構15のシリンダ機構23の作動がされて、そのピストンロッド23Aが下降されるので、回転板24およびそれに支持されたケース2は下降し、ケース2は搬送コンベヤ4の搬送面4Aに再度支持される一方、回転板24は搬送コンベヤ4の搬送面4Aより下方側で停止する。
このあと搬送コンベヤ4が走行されるので、脱水処理の終了したケース2は脱水位置Aから下流側の排出コンベヤ13上へ排出される。
【0035】
ここで、脱水手段7によって脱水処理するケース2の大きさを小型のものに変更する場合には、両可動台41,42とそれに支持した各一対の保持ピン17の第1アーム25上における停止位置を変更する必要がある。
この場合には、上述したように、制御手段8はサーボモータ33を所要量だけ回転させて、上側回転機構16の第1アーム25がケース2の搬入方向と一致するように停止させる。これにより、第1可動台41が位置調整手段18の下方側に停止する。
この後、制御手段8は、図3に示した電磁切換弁54を第1位置から第2位置に切り換えるので、エアクランプ機構44による両可動台41,42の第1アーム25に対する固定状態が解除される。
この後、前述したように、位置調整機構18の可動チャック62がサーボモータ63の回転に伴って第1可動台41の上方まで移動された後に、エアシリンダ機構57によって下降されるので、可動チャック62の係合凹部62Aが第1可動台41の係合凸部43Aに係合する(図6(a)参照)。
【0036】
この後、サーボモータ63が正転されることに伴って可動チャック62の基部が原点位置センサ64に当接してサーボモータ63の回転が停止されるとともに、原点位置センサ64から制御手段8へ原点信号が伝達される(図6(b)参照)。これにより、図7(b)に示すように、係合凸部43Aの外周部が対向する係合凹部62Aの内面と当接して、両部材の遊びが解消される。
そして、制御手段8は、この時点を原点として、そこから変更後のケース2の大きさに対応する所要量だけサーボモータ63を逆転させてねじ軸61を逆転させる。それにより、ケース2の大きさに応じた所要の移動距離だけ先ず第1可動台41とそれらに支持した各一対の保持ピン17を第1アーム25の長手方向に沿って正確な移動距離だけ移動される(図6(c)、図7(c)参照)。
【0037】
この後、制御手段8はエアシリンダ機構57を基の上昇位置まで後退させるので、可動チャック62、ねじ軸61および支持部材58が基の上昇位置に支持されて、可動チャック62の係合凹部62Aは係合凸部43Aから離隔した上方側に支持される。この後、制御手段8は、電磁切換弁54を第2位置から第1位置に切り換えるので、第1可動台41及びその保持ピン17はエアクランプ機構44によって第1アーム25に固定される。
つまり、これにより第1可動台41とそれに支持された保持ピン17の第1アーム25上における停止位置が、変更後のケース2の大きさに対応する位置に変更されたことになる。
【0038】
このようにして、第1可動台41とそれに支持した保持ピン17の第1アーム25上の停止位置を位置調整機構18によって変更したら、次に制御手段8はサーボモータ33により枠状回転体31、両アーム25,26A,26Bを180度回転させるので、第2可動台42が位置調整機構18の下方に停止する。すると、制御手段8は、前述した第1可動台41の場合の第1アーム25上での位置調整機構18による位置調整作動の場合と同様にして、第2可動台42とそれに支持された保持ピン17も変更後のケース2の大きさに応じた第1アーム25上の位置まで移動させるとともに、エアシリンダ機構44によって第2可動台42と保持ピン17を第1アーム25に固定する。
【0039】
以上のようにして、脱水処理対象となるケース2の大きさを変更した場合には、それに適合するように第1アーム25に支持した各一対の支持ピン17の停止位置を位置調整機構18によって調整する。
この位置調整機構18による支持ピン17の位置調整直後の状態では、第1アーム25はケース2の搬入方向と平行となっているので、この後、制御手段8はーボモータ33を所要量だけ回転させることで、第1アーム25をケース2の対角線上の位置に停止させるとともに、2対の保持ピン17をケース2の角部2A,2Bと対応する位置に停止させる(図8(a)〜図8(c)参照)。
なお、図5に示すように、ケース2の大きさによって脱水位置Aに搬入された際のケース2の対角線の位置は変動するので、ケース2の大きさの違いに応じて上記サーボモータ33による第1アーム25の回転方向の位相の調整角度Xを変更するようにしている。それにより、脱水位置Aに搬入されたケース2の対角線上に第1アーム25が位置するとともに、角部2A,2Bと対応する上方位置に各一対の保持ピン17が支持されるようになっている。
【0040】
以上のようにして、変更後のケース2の大きさに応じて、位置調整機構18によって脱水手段7の第1アーム25に支持された両可動台41,42とそれに支持した保持ピン17の停止位置を変更するようになっている。
この後は、新たなケース2が搬送コンベヤ4と機内ストッパ5によって脱水位置Aに搬入されるので、前述した脱水手段7による脱水処理と同様にして、新たなケース2が脱水手段7の両機構15,16によって保持された状態で高速回転されることで、脱水処理がなされるようになっている。
【0041】
以上のように、本実施例の遠心脱水装置1においては、第1アーム25の長手方向に沿って、つまり上側回転機構16の放射方向に2対の保持ピン17は移動可能となっており、各保持ピン17の第1アーム25上における停止位置は、上側回転機構16とは別個に配置された位置調整機構18によって変更されるようになっている。そのため、保持ピンの位置を調整する位置調整構を回転体に設けていた上記従来技術と比較すると、本実施例の遠心脱水装置1においては、上側回転機構16の構成が小型・軽量化される。そのため、本実施例によれば、枠状回転体31、両アーム25,26A,26B等を回転させるためのサーボモータ33を従来よりも小型化することができる。また、上側回転機構16およびそれを支持する固定フレーム11も小型化することができ、ひいては、遠心脱水装置1全体を従来よりも小型化して、製造コストを低減させることができる。
また、本実施例の遠心脱水装置1においては、ケース2の大きさに適合するように無段階で2対の保持ピン17の第1アーム25上の停止位置を変更することができるので、汎用性が高い遠心脱水装置1を提供することができる。
【0042】
次に、図9ないし図10は、両可動台41(42)とそれを第1アーム25に固定するための固定手段に関する第2実施例を示したものである。上述した第1実施例においては、両可動台41,42を第1アーム25に固定するための固定手段としてエアクランプ機構44を設けていたが、この第2実施例においては、エアクランプ機構44の代わりにラチェット板71と係合爪72を用いている。
すなわち、第1アーム25における端部の上面に、ガイドレール36に沿ってラチェット板71を取り付けてあり、他方、各可動台41(42)の端部に係合爪72を水平方向の支持軸73を介して揺動可能に取り付けている。係止爪72における下部は2つに分岐されており、それらの箇所が爪部72Aとなっている。
係合爪72の上方部72Bと対向させて、各可動台41(42)の上面には鉛直上方に向けて板状部材74が固定されており、上方部72Bと板状部材74との間にばね75が弾装されている。このばね75の弾発力によって係合爪72の爪部72Aがラチェット板71の係合凹部に係合するようになっており、その係合状態では係合爪72の上方部72Bは板状部材74とともに鉛直上方に支持されている。つまり、それら両部材によって上記第1実施例の係合凸部43Aに相当する係合凸部が構成されている。
また、この第2実施例においては、上記第1実施例の板状支持部材43を省略してあるので、その代わりに各可動台41(42)の側部には、両側の外部に向けて突出した一対の支持部41A,41Bが形成されており、一対の保持ピン17はそれら支持部41A,41Bに連結されている。
また、係合爪72の上端部は傾斜面となっており、それに対応して可動チャック62における係合凹部62Aの一方の内壁も傾斜面となっている。
その他の構成は上記第1実施例と同じであり、第1実施例と対応する部材には同一部材番号を付している。
【0043】
このような構成の第2実施例においては、位置調整機構18の可動チャック62が上方から下降されて、その係合凹部62Aが係合凸部としての板状部材74と係合爪72の上方部72Bに係合すると、ばね75が圧縮されて係合爪72が揺動されるので爪部72Aとラチェット板71の凹部との係合状態が解除される。つまり、各可動台41(42)と保持ピン17は第1アーム25に沿って移動可能となる。
そのように固定状態が解除されてから位置調整機構18の可動チャック62を介して各可動台41(42)と保持ピン17を第1アーム25に沿って所要量だけ移動させた後に可動チャック62を上昇させて両部材との係合状態を解除する。すると、ばね75によって係合爪72の爪部72Aがラチェット板71の凹部と係合し、その位置において各可動台41(42)と保持ピン17が第1アーム25に対して固定されるようになっている。固定手段としてこのような構成を有する第2実施例であっても、上述した第1実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
なお、この第2実施例の構成において、上記第1実施例で示したエアクランプ機構44を併設しても良い。そのような構成によれば、より一層、各可動台41(42)を第1アーム25に固定することができ、安全性も向上することになる。
【0044】
また、上述した各実施例においては、遠心脱水装置1の脱水処理の対象として折り畳み式のケース2を想定しているが、脱水処理の対象となる物品としてはパレットや非組み立て式の箱型容器等であっても良い。
また、上記実施例においては、積層状態の5段のケース2を脱水処理する場合を説明しているが、これは例示であって、ケース2の積層数は上記実施例に限られるものではない。
また、上述した各実施例においては、位置調整機構18を1つだけ設けることが前提となっているが、回転方向において相互に180度ずれた位置に位置調整機構18を2台配置するようにしても良い。そのように構成することで、両可動台41,42の保持ピン17の位置を同期して変更することが可能になり、したがって、ケース2の大きさを変更した際の保持ピン17の位置調整に要する時間を短縮することができる。
さらに、上述した実施例における上側回転機構15と下側回転機構16の配置を上下逆に配置しても良い。そのような構成であっても、上述した実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
さらに、上述した実施例においては、両可動台41、42に左右一対の丸棒状の保持ピン17、17を設けているが、各一対の丸棒状の保持ピン17、17の代わりに、ケース2の角部2A、2Bに合せてL字形をした単一の保持部材を両各可動台41、42に設けても良い。
【符号の説明】
【0045】
1‥遠心脱水装置 2‥ケース(物品)
7‥脱水手段 15‥下側回転機構
16‥上側回転機構 18‥位置調整機構
24‥回転板 25‥第1アーム
26A、26B‥第2アーム 31‥枠状回転体
33‥サーボモータ(駆動源) 44‥エアクランプ機構(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水位置において物品の少なくとも下方を支持して回転可能な回転体と、この回転体を回転させる駆動源と、上記回転体に対向して配設されるとともに上記回転体に支持された物品の側部を両側から保持する一対の保持部材とを備えた遠心脱水装置において、
上記一対の保持部材を上記回転体に対して放射方向に移動可能に設け、また、各保持部材を所要時に回転体上で固定する固定手段を設け、さらに、上記一対の保持部材を上記回転体の放射方向に移動させる位置調整機構を、上記回転体と分離させて配設して、
上記物品の大きさに応じて上記各保持部材の回転体上における固定位置を変更するようにしたことを特徴とする遠心脱水装置。
【請求項2】
上記回転体は、物品を支持して昇降可能な下側回転体と、上記駆動源に連動して回転される上側回転体とを備え、
上記上側回転体は、放射方向に配置された少なくとも1つのアームと、このアームの両端側に該アームの長手方向である上記放射方向に沿って移動可能に設けられた一対の可動台を備え、
上記保持部材の一方は上記可動台の一方に鉛直下方に向けて設けられており、上記保持部材の他方は上記可動台の他方に鉛直下方に向けて設けられており、
上記物品を支持して上昇された下側回転体と上記上側回転体とによって物品を上下から挟持するとともに、該物品の対角線上となる1対の角部を上記一対の保持部材によって側方から保持し、その状態において上記駆動源によって上側回転体、下側回転体および物品が回転されることを特徴とする請求項1に記載の遠心脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−185487(P2011−185487A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49191(P2010−49191)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(393028357)シブヤマシナリー株式会社 (77)
【Fターム(参考)】