説明

遠隔画像取得システム、及び遠隔画像取得方法

【課題】 危険を伴う作業を行わなくとも、構造物の壁面状態の評価を行うための画像を適切に取得する。
【解決手段】 評価対象となる構造物に対する上昇、又は下降により、構造物の一部を撮像範囲とする評価用画像データを、撮像範囲を変えて取得する撮像装置と、撮像装置による評価用画像データの取得時に、撮像範囲に向けて照明光を照射する照明装置と、撮像装置及び照明装置の駆動制御を行うとともに、撮像装置により取得された評価用画像データを取り込む第1の制御装置と、第1の制御装置との間の無線通信により、撮像装置及び照明装置の駆動制御内容を示す制御情報を第1の制御装置に送信するとともに、第1の制御装置からの評価用画像データを受信する第2の制御装置と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物における壁面状態の評価に使用される画像を遠隔操作により取得するシステム、及び遠隔操作により画像を取得する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダム設備に使用されるサージタンクなどのコンクリート構造物を評価する方法としては、コンクリート構造物の壁面に沿って仮設された足場を利用しながら壁面をスケッチし、壁面に生じるひび割れなどコンクリート構造物の壁面状態の評価を行うことが一般的である。また、デジタルカメラ等により取得された画像を利用した画像計測法により、コンクリート構造物(以下、構造物)の壁面状態を評価することも一般的に行われている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−324232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したサージタンクなどの大型の設備の場合、足場を仮設することが困難な場合もあり、このような場合には、作業者はロープを用いて下降しながら、その壁面をスケッチする、或いはデジタルカメラを用いて壁面を撮像する。このような作業は危険を伴う作業であり、また、構造物の壁面に発生するひび割れなどの壁面状態の評価においては、構造物の環境条件やひび割れの状態などを考慮する必要があることから、壁面状態の評価において個人差が生じてしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するために発明されたものであり、危険を伴う作業を行わなくとも、構造物の壁面状態の評価を行うための画像を適切に取得することができるようにした遠隔画像取得システム及び遠隔画像取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明の遠隔画像取得システムは、評価対象となる構造物に対する上昇、又は下降により、前記構造物の一部を撮像範囲とする評価用画像データを、前記撮像範囲を変えて取得する撮像装置と、前記撮像装置による前記評価用画像データの取得時に、前記撮像範囲に向けて照明光を照射する照明装置と、前記撮像装置及び前記照明装置の駆動制御を行うとともに、前記撮像装置により取得された前記評価用画像データを取り込む第1の制御装置と、前記第1の制御装置との間の無線通信により、前記撮像装置及び前記照明装置の駆動制御内容を示す制御情報を前記第1の制御装置に送信するとともに、前記第1の制御装置からの前記評価用画像データを受信する第2の制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、前記撮像装置、前記照明装置及び前記第1の制御装置を保持する保持部材と、前記保持部材を上昇、又は下降させる昇降装置と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、第2の発明において、前記照明装置は、前記撮像装置の撮像光軸と該照明装置の照明光軸とがなす角度が所定の角度以上となるように、前記保持部材に設けられていることを特徴とする
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれかにおいて、前記照明装置は、前記撮像装置における撮像条件を決定する際に前記構造物に向けて照明光を照射する予備照明と、前記撮像装置による前記評価用画像データの取得時に前記構造物に向けて照明光を照射する本照明とを実行可能であることを特徴とする。
【0008】
第5の発明は、第4の発明において、前記撮像装置は、前記評価用画像データを取得する第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置に設けられたファインダ部の後方に配置され、該ファインダ部を介して視認される画像を取得する第2の撮像装置と、から構成されていることを特徴とする。
【0009】
第6の発明は、第5の発明において、前記第1の制御装置は、前記評価用画像データの他に、前記第2の撮像装置により取得された画像データを取り込むとともに、前記取り込んだ画像データを前記第2の制御装置に送信し、前記第2の制御装置は、前記第1制御情報の他に、前記第2の撮像装置における駆動制御内容を示す第2制御情報を前記第1の制御装置に向けて送信することを特徴とする。
【0010】
第7の発明は、第4〜第6の発明において、前記第2の制御装置は、前記評価用画像データ、又は前記第2の撮像装置により取得された画像データを用いた画像表示を行う画像表示部を備えていることを特徴とする。
【0011】
第8の発明は、第4〜第7の発明において、前記第2の制御装置は、前記第2の撮像装置において取得された画像データから輝度値を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された輝度値に基づいて、前記照明手段における本照明時の照射量を決定する照射量決定手段と、を備え、前記第2の制御装置は、前記本照明時の照射量を、前記第1制御情報の一つとして前記第2の制御装置に送信することを特徴とする。
【0012】
第9の発明は、第8の発明において、前記第2の制御装置は、複数の輝度値と、該輝度値のそれぞれに対応付けられた発光量とからなるテーブルデータを備え、前記発光量決定手段は、前算出された輝度値と前記テーブルデータとから、前記照明手段における本照明時の発光量を決定することを特徴とする。
【0013】
第10の発明の遠隔画像取得方法は、評価対象となる構造物を撮像する撮像装置を前記構造物に対して所定量上昇、又は下降させる移動工程と、前記上昇又は下降された前記撮像装置により前記構造物の一部を撮像範囲とした評価用画像データを取得する撮像工程と、取得された前記評価用画像データを、前記撮像装置を駆動制御する第1の制御装置に取り込む画像取込工程と、前記第1の制御装置に取り込まれた前記評価用画像データを、該第1の制御装置との間で無線通信可能な第2の制御装置に送信する送信工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
第12の発明は、第11の発明において、前記照明工程は、前記構造物に向けて予備照明を行う予備照明工程と、前記撮像装置における前記評価用画像データの取得時の本照明を行う本照明工程と、から構成されるとともに、前記撮像工程は、前記予備照明が行われたときの画像データを取得する予備撮像工程と、前記画像データに基づいて前記本照明工程時の照射量を決定する照射量決定工程と、前記本撮像時の撮像条件を決定する条件決定工程と、をさらに含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、構造物の壁面を撮像する作業をロープやゴンドラなどを用いずに行うことができるので、作業者に危険を伴う作業をさせることなく、構造物の壁面状態を評価する際に用いる画像を安全に取得できる。また、撮像に用いるデジタルカメラの初期設定のみを設定しておけばよいことから、得られた画像から正確に構造物の壁面状態を計測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の遠隔画像取得システムの概略図を示す。遠隔画像取得システム10は、例えばダム設備として設けられたサージタンク等、コンクリート構造物(以下、構造物と称する)15の画像を取得する際に用いられる。この遠隔画像取得システム10は、操作用のパーソナルコンピュータ(以下、操作用PCと称する)20、撮像ユニット21とを備えている。
【0017】
操作用PC20は、無線通信を用いて撮像ユニット21を遠隔操作する他に、撮像ユニット21との間でデータの送受信を行う。操作用PC20と撮像ユニット21との間で送受信されるデータとしては、撮像ユニット21によって取得されたモニタリング用の動画像データ(以下、動画像データ)MIや、評価用の画像データ(以下、画像データ)PIの他、撮像ユニット21を駆動させる際の制御指示コマンドや、画像データPIの取得時の撮像条件(露出条件や、照明装置における照明光の光量)等の制御情報が挙げられる。なお、動画像データMIは、画像データPIを取得する際の撮像範囲を確認する際に取得されるデータであり、画像データPIは、周知の画像計測法を用いた評価用プログラムを実行する際の画像データとして用いられる。この操作用PC20はキャプチャー機能を備えており、このキャプチャー機能を用いて、上述した動画像データMIや画像データPIの表示を行うことができる。
【0018】
撮像ユニット21は、クレーン25により吊り下げられる。周知のように、クレーン25は、ウインチ26と吊りアーム27とを備えている。ウインチ26は、ワイヤー28を巻き取るドラムを備えており、このウインチ26を駆動させることでドラムが回転し、繰り出されたワイヤー28を巻き取る、又は巻き取られたワイヤー28が繰り出される。ワイヤー28を巻き取ることで撮像ユニット21が上昇し、ワイヤー28を繰り出すことで撮像ユニット21が下降する。本実施形態では、撮像ユニット21を所定量下降させた後、評価用の画像データPIを取得するものとして説明する。なお、この撮像ユニット21の下降においては、後述する下降前における画像取得用カメラ36の撮像範囲(図4中二点鎖線で示す領域39)の下端部と、下降後における画像取得用カメラ36の撮像範囲(図4中点線で示す領域39’)の上端部とが重なるように撮像ユニット21を下降させる。
【0019】
吊りアーム27は、ワイヤー28の一端側に取り付けられた撮像ユニット21を吊り下げる。この吊りアーム27は、例えば固定具を介して構造物15に固定され、後述する画像取得用カメラ36と構造物15の壁面15aとの距離Lを一定距離に保ったまま、画像取得用カメラ36を吊り下げる。なお、本実施形態においては、クレーン25の操作は、作業者によって行われるものとする。なお、画像取得用カメラ36と構造物15の壁面15aとの距離Lは、30〜70mの間で設定される。
【0020】
図2に示すように、撮像ユニット21は、ゴンドラ30を介してワイヤー28に取り付けられる。この撮像ユニット21は、中継用のパーソナルコンピュータ(以下、中継用PCと称する)35、画像取得用カメラ36、照明装置37及びバッテリー38から構成される。中継用PC35は、画像取得用カメラ36及び照明装置37の駆動制御を行う。これら駆動制御は、操作側PC20から送信された制御情報に基づいて行われる。なお、バッテリー38は、中継用PC35、画像取得用カメラ36及び照明装置37のそれぞれに接続され、これら装置に給電を行う。
【0021】
画像取得用カメラ36は、構造物15の壁面15aの画像を取得するために設けられている。この画像取得用カメラ36は、例えば縦3m×横5mの範囲を撮像範囲としている。なお、画像の評価時に、構造物15の壁面15aに発生する0.5mm以上のひび割れを識別する必要があることから、この画像取得用カメラ36としては、1000万画素以上の解像度を有するデジタルカメラが用いられる。つまり、画像の1ピクセルに相当する実際の長さは2.5mmとなり、この1ピクセルにおける濃淡情報から、ひび割れの有無が識別される。また、この画像取得用カメラ36に用いられる望遠レンズとしては、28〜70mmのズーム倍率で切り換えることが可能なものが用いられる。なお、画像データPIにおいては、構造物15の壁面15aに生じるひび割れなど、構造物15の壁面状態を評価するための画像データであることから、この画像取得用カメラ36の初期設定においては、輪郭強調を行わない設定となる。
【0022】
図3に示すように、画像取得用カメラ36の背面には、モニタリング用カメラ40が設けられている。このモニタリング用カメラ40は、画像取得用カメラ36の撮像範囲と同一の撮像範囲からなる動画像データMIを取得する。なお、図3においては、モニタリング用カメラ40と画像取得用カメラ36とを分離して示している。このモニタリング用カメラ40は、画像取得用カメラ36に設けられたファインダ部36aを介して動画像データMIを取得する。なお、ファインダ部36aは、画像取得用カメラ36の撮像範囲39を視認できることから、このモニタリング用カメラ40における撮像範囲は、画像取得用カメラ36における撮像範囲となる。なお、このモニタリング用カメラ40は、画像取得用カメラにおける撮像範囲を確認する、或いは、撮像範囲39における輝度を算出するためのものであることから、このモニタリング用カメラの解像度は、画像取得用カメラ36の解像度より劣るものであって良い。
【0023】
このモニタリング用カメラ40によって取得される動画像データMIは、中継用PC35を介して操作用PC20に送信され、操作用PC20においてモニタリングされる。これにより、作業者は、このモニタリング用カメラ40によって取得された画像を見ながら(モニタリングしながら)、構造物15の壁面15aの画像を取得する作業を進めることができる。なお、画像取得用カメラ36がスルー画像を外部出力できる機能を備えているのであれば、このモニタリング用カメラ40を設ける必要はない。
【0024】
照明装置37は、構造物15の壁面15aに向けて照明光を照射することで、ひび割れが生じる箇所と、ひび割れが生じていない箇所とで陰影を生じさせる。図4に示すように、照明装置37は、照射される照明光の光軸L1と画像取得用カメラ36の撮像光軸L2とが同軸とならないように、つまり、照明光の光軸L1と撮像光軸L2とが所定の角度θ以上となるように、ゴンドラ30に設置される。このように、照明装置37を画像取得用カメラ36に対して設置することで、構造物15の壁面15aに発生するひび割れ等、構造物15の壁面において陰影が生じた構造物15の壁面状態を画像取得用カメラ36によって撮像することが可能となる。なお、所定の角度θとは、3°以上であることが好ましい。なお、ここで示す陰影とは、ひび割れが生じた箇所と、生じていない箇所とで生じる濃淡のことである。
【0025】
この照明装置37は、画像データPIを取得する際に、構造物15の壁面15aに向けて照明光を照射する本照明と、モニタリング時に構造物15の壁面15aに向けて照明光を照射する予備照明とを実行することが可能である。なお、予備照明を行うことで、作業者は、モニタリング時に操作側PC20にて表示される画像において、上述した陰影が生じているか否かを確認することができる。この予備照明時にモニタリング用カメラによって撮像された動画像データMIを用いて本照明時における照明光の光量が決定される。なお、本照明と予備照明とは、同一の照明装置で行ってもよいし、異なる照明装置で行うことも可能である。例えば異なる照明装置で行う場合や、単一の照明装置内に複数の照射部を備えている場合には、複数の照明装置における光軸、又は複数の照射部の光軸がそれぞれ同軸となるように配置すればよい。
【0026】
図5は、遠隔画像取得システム10の構成を示す機能ブロック図である。操作用PC20は、CPU50、ストレージ51、操作部52、表示部53及び操作側送受信部54を備え、これらがバス55を介して接続される。CPU50は、不図示の制御プログラムを実行することによって、操作側PC20を統括的に制御する。CPU50は、ストレージ51に格納された画像取得プログラム56を実行することで、輝度算出部57、発光量決定部58として機能する。CPU50は、これら機能を実行しながら、制御情報を中継用PC35に向けて送信する。
【0027】
輝度算出部57は、モニタリング用カメラ40にて取得された動画像データMIから1フレーム分の画像データを抜き出した後、この画像データを用いて輝度値を算出する。なお、画像データを用いた輝度値の算出は、周知であることから、ここでは、その詳細については省略する。
【0028】
発光量決定部58は、輝度算出部57によって算出された輝度値から、本照明時の照明光の発光量を決定する。なお、発光量を決定する方法としては、輝度値とストレージ51に格納された光量データテーブル59とを用いて決定する方法が挙げられる。なお、光量データテーブル59は、複数の異なる値からなる発光量と、それら発光量に対して割り振られる輝度値の範囲とからなるデータテーブルである。
【0029】
ストレージ51は、上述した画像取得プログラム55や、光量データテーブル59が格納される他、中継用PC35から送信された動画像データMIや画像データPIが格納される。操作部52は、例えばマウスや、キーボードなど、操作用PC20における入力操作を行うものである。また、表示部53は、動画像データMIや、画像データPIを用いた画像表示が行われる。操作側送受信部54は、中継側PC35に設けられた中継側送受信部69との間でデータを送受信する。この操作側送受信部54はとしては、例えば高速通信可能な無線LANが用いられる。
【0030】
中継用PC35は、CPU65、ストレージ66、操作部67、表示部68及び中継側送受信部69を備え、これらがバス70を介して接続されている。CPU65は、操作側PC20から送信された制御情報を用いて、ストレージ66から読み出された撮像制御プログラム71を実行することで、画像取得用カメラ36、モニタリング用カメラ40及び照明装置37を駆動制御する。
【0031】
ストレージ66には、上述した撮像制御プログラム71の他に、モニタリング用カメラ40により取得された動画像データMIや、画像取得用カメラ36によって取得された画像データPIが格納される。I/Oポート75は、画像取得用カメラ36、モニタリング用カメラ40及び照明装置37を有線により、中継用PC35に接続するために設けられている。中継側送受信部69は、上述した操作側送受信部54との間で、データの送受信を行う。中継側送受信部69としては、例えば高速通信可能な無線LANが用いられる。
【0032】
次に、遠隔操作により画像を取得する手順について、図6のフローチャートに基づいて説明する。ステップS101は、クレーン25によって吊り下げられた撮像ユニット21を移動させる工程である。このステップS101の工程においては、作業者は、操作用PC20を操作して、照明装置37に予備照明を行わせるとともに、モニタリング用カメラ40に動画像データMIを取得させる。モニタリング用カメラ40によって取得された動画像データMIは、中継用PC35に出力される。中継用PC35は、入力される動画像データMIをストレージ71に格納した後、動画像データMIを操作用PC20へ送信する。
【0033】
操作用PC20においては、受信された動画像データMIをストレージ51に格納しながら、格納される動画像データMIを用いた画像を表示部53に表示する。操作用PC20を操作する作業者は、操作用PC20の表示部53に表示される画像をモニタリングしながら、クレーン25を操作する作業者に撮像ユニット21を下降させる旨の指示を行う。そして、表示部53に表示される画像の撮像範囲が意図する撮像範囲となる場合に、操作用PC20を操作する作業者は、クレーン25を操作する作業者に対して撮像ユニット21の下降を停止させる指示を行う。なお、例えば撮像範囲39が縦3m×横5mとなる場合には、ステップS101においては、撮像ユニット20を3m弱下降させる。
【0034】
ステップS102は、画像取得用カメラ36における撮像条件を設定する工程である。ステップS101の工程の後も、モニタリング用カメラ40によって動画像データMIを取得していることから、中継用PC35から操作用PC20に向けて動画像データMIを受信している。この動画像データMIに基づいて、撮像条件となる露出設定や、照明装置37の発光量の設定を行う。この撮像条件のうち、照明装置37の発光量の設定について、以下で説明する。CPU50は、動画像データMIから1フレーム分の画像データを取り出した後、取り出した画像データの輝度値を算出する。この算出の後、CPU50は、ストレージ51から光量データテーブル59を読み出して、算出された輝度値に基づいた発光量を決定する。そして、決定された発光量と、露出設定とを画像取得時の撮像条件として、図示しないメモリに一時記憶される。
【0035】
ステップS103は、画像データPIの取得工程である。ステップS102において、撮像条件が設定されることから、CPU50は、この設定された撮像条件と撮像開始を示す撮像開始コマンドとを制御情報としてまとめ、操作側送受信部54を介して中継側送受信部69に送信する。
【0036】
中継側送受信部69において制御情報が受信されると、中継側PC35のCPU65は、受信された制御情報に基づいて画像取得用カメラ36を駆動制御して、画像データPIを取得する。制御情報には、照明装置37の発光量を示すデータを有していることから、この画像データPIを取得する際には、制御情報に基づいた発光量の本照明が行われる。なお、このステップS103の工程においては、照明装置37による予備照明は停止される。このステップS103の工程において撮像された画像データPIは、中継用PC35に取り込まれた後、中継用PC35から操作用PC20に送信され、操作用PC20のストレージ51に格納される。
【0037】
ステップS104は、画像データPIの取得を終了するか否かを判定する工程である。画像データPIの取得を終了すると判定した場合(ステップS104の工程でYesとなる場合)、画像データPIの取得が終了する。この場合、クレーン25を次の位置に移動させた後、上述した手順で画像データPIを取得していく。なお、クレーン25が同一位置で撮像された複数の画像データPIは、1つの画像データとなるように合成され、上述した評価用プログラムによって評価される。
【0038】
一方、画像データPIの取得を終了しないと判定した場合(ステップS104の工程でNoとなる場合)、ステップS101に戻る。これにより、構造物15の壁面15aの画像を取得する処理を、作業者がロープやゴンドラに乗りながら撮像していく危険な作業を行う必要が無くなり、安全に構造物15の壁面15aの画像を取得することができる。
【0039】
本実施形態では、モニタリング用カメラ40によって構造物15の壁面15aの動画像データMIを取得しながら撮像ユニット21を下降させているが、これに限定する必要はなく、撮像ユニット21を所定量下降させた後の微調整を行う際に、モニタリング用カメラ40による動画像データの取得を行うことも可能である。
【0040】
本実施形態では、ダム設備のサージタンク等のコンクリート構造物の画像を取得する場合を想定しているが、これに限定される必要はなく、例えばガスタンク、石油タンクなど、コンクリート構造物以外の構造物に本発明を用いることができる。
【0041】
本実施形態では、クレーン25の動作は作業者により駆動制御させているが、例えばクレーン25の駆動制御をPCにより操作することも可能である。つまり、クレーンとPC(クレーン制御用PC)とを接続し、クレーン制御用PCと操作用PCとの間でデータの送受信を行えるようにすればよい。クレーンの駆動制御を操作用PCにて行うことで、クレーンによって撮像ユニットを予め設定された移動量で移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を用いた遠隔画像取得システムの一例を示す概略図である。
【図2】撮像ユニットの構成を示す斜視図である。
【図3】画像取得用カメラとモニタリング用カメラとの構成を示す斜視図である。
【図4】照明装置と、デジタルカメラとの配置関係を示す図である。
【図5】遠隔画像取得システムの電気的構成を示す機能ブロック図である。
【図6】遠隔操作により、画像を取得する手順について示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10…遠隔画像取得システム、15…構造物、20…操作側PC、21…撮像ユニット、25…クレーン、35…中継用PC、36…画像取得用カメラ、37…照明装置、40…モニタリング用カメラ、50…CPU、57…輝度算出部、58…発光量決定部、59…光量データテーブル、80…データ通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象となる構造物に対する上昇、又は下降により、前記構造物の一部を撮像範囲とする評価用画像データを、前記撮像範囲を変えて取得する撮像装置と、
前記撮像装置による前記評価用画像データの取得時に、前記撮像範囲に向けて照明光を照射する照明装置と、
前記撮像装置及び前記照明装置の駆動制御を行うとともに、前記撮像装置により取得された前記評価用画像データを取り込む第1の制御装置と、
前記第1の制御装置との間の無線通信により、前記撮像装置及び前記照明装置の駆動制御内容を示す制御情報を前記第1の制御装置に送信するとともに、前記第1の制御装置からの前記評価用画像データを受信する第2の制御装置と、
を備えたことを特徴とする遠隔画像取得システム。
【請求項2】
請求項1記載の遠隔画像取得システムにおいて、
前記撮像装置、前記照明装置及び前記第1の制御装置を保持する保持部材と、
前記保持部材を上昇、又は下降させる昇降装置と、
を備えていることを特徴とする遠隔画像取得システム。
【請求項3】
請求項2記載の遠隔画像取得システムにおいて、
前記照明装置は、前記撮像装置の撮像光軸と該照明装置の照明光軸とがなす角度が所定の角度以上となるように、前記保持部材に設けられていることを特徴とする遠隔画像取得システム。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の遠隔画像取得システムにおいて、
前記照明装置は、前記撮像装置における撮像条件を決定する際に前記構造物に向けて照明光を照射する予備照明と、前記撮像装置による前記評価用画像データの取得時に前記構造物に向けて照明光を照射する本照明とを実行可能であることを特徴とする遠隔画像取得システム。
【請求項5】
請求項4記載の遠隔画像取得システムにおいて、
前記撮像装置は、
前記評価用画像データを取得する第1の撮像装置と、
前記第1の撮像装置に設けられたファインダ部の後方に配置され、該ファインダ部を介して視認される画像を取得する第2の撮像装置と、から構成されていることを特徴とする遠隔画像取得システム。
【請求項6】
請求項5記載の遠隔画像取得システムにおいて、
前記第1の制御装置は、前記評価用画像データの他に、前記第2の撮像装置により取得された画像データを取り込むとともに、前記取り込んだ画像データを前記第2の制御装置に送信し、
前記第2の制御装置は、前記第1制御情報の他に、前記第2の撮像装置における駆動制御内容を示す第2制御情報を前記第1の制御装置に向けて送信することを特徴とする遠隔画像取得システム。
【請求項7】
請求項4〜6いずれか1項に記載の遠隔画像取得システムにおいて、
前記第2の制御装置は、前記評価用画像データ、又は前記第2の撮像装置により取得された画像データを用いた画像表示を行う画像表示部を備えていることを特徴とする遠隔画像取得システム。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の遠隔画像取得システムにおいて、
前記第2の制御装置は、
前記第2の撮像装置において取得された画像データから輝度値を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された輝度値に基づいて、前記照明手段における本照明時の照射量を決定する照射量決定手段と、を備え、
前記第2の制御装置は、前記本照明時の照射量を、前記第1制御情報の一つとして前記第2の制御装置に送信することを特徴とする遠隔画像取得システム。
【請求項9】
請求項8記載の遠隔画像取得システムにおいて、
前記第2の制御装置は、複数の輝度値と、該輝度値のそれぞれに対応付けられた発光量とからなるテーブルデータを備え、
前記発光量決定手段は、前算出された輝度値と前記テーブルデータとから、前記照明手段における本照明時の発光量を決定することを特徴とする遠隔画像取得システム。
【請求項10】
評価対象となる構造物を撮像する撮像装置を前記構造物に対して所定量上昇、又は下降させる移動工程と、
前記上昇又は下降された前記撮像装置により前記構造物の一部を撮像範囲とした評価用画像データを取得する撮像工程と、
取得された前記評価用画像データを、前記撮像装置を駆動制御する第1の制御装置に取り込む画像取込工程と、
前記第1の制御装置に取り込まれた前記評価用画像データを、該第1の制御装置との間で無線通信可能な第2の制御装置に送信する送信工程と、
を備えたことを特徴とする遠隔画像取得方法。
【請求項11】
請求項10記載の遠隔画像取得方法において、
少なくとも前記撮像範囲に向けて照明光を照射する照明工程を備え、
前記撮像工程は、前記照明工程により照明された構造物の評価領域を撮像範囲として撮像することを特徴とする遠隔画像取得方法。
【請求項12】
請求項11記載の遠隔画像取得方法において、
前記照明工程は、
前記構造物に向けて予備照明を行う予備照明工程と、
前記撮像装置における前記評価用画像データの取得時の本照明を行う本照明工程と、
から構成されるとともに、
前記撮像工程は、
前記予備照明が行われたときの画像データを取得する予備撮像工程と、
前記画像データに基づいて前記本照明工程時の照射量を決定する照射量決定工程と、
前記本撮像時の撮像条件を決定する条件決定工程と、
をさらに含んでいることを特徴とする遠隔画像取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−257831(P2009−257831A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104716(P2008−104716)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(592217093)株式会社ニコンシステム (102)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(591151808)株式会社環境総合テクノス (23)
【Fターム(参考)】