説明

適合実時間ECGトリガー及びその使用

本発明は、心電図(ECG)波形のR波から、このR波の傾きに適合した閾値を使用して、R波の前縁内でトリガーを発生するための方法及び装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年1月12日に出願された米国仮特許出願第60/758,962号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、心電図(ECG)波形のR波から、R波の前縁の傾きの変化に適合した閾値を使用してトリガーを発生するための方法及び装置に関する。本発明は、例えば、大動脈内バルーンポンプ(IABP)をトリガーして大動脈内バルーン(IAB)を制御するのに使用でき、心臓刺激装置又は徐細動器、及びECGモニター等の対話型心臓デバイスをトリガーするのに使用できる。
【背景技術】
【0003】
本願に亘り、様々な公開文献を括弧付きで言及する。これらの文献の詳細は、本明細書の末尾に記載してある。これらの公開文献の開示は、出典を明示することにより、開示された全ての内容が本明細書の開示の一部とされる。
【0004】
心機能が損なわれている対象/患者(subject)は、生体臓器への血液の供給がうまくいっていない場合がある。心臓の圧送作用及び全身の血液の供給は、大動脈内バルーンポンプ(IABP)を使用して大動脈内バルーン(IAB)を制御することによって改善できる。IABPは、心臓病の患者及び心臓手術の患者で使用される(バスケット等の2002年の文献及びメールホーン等の1999年の文献を参照されたい)。
【0005】
各心周期において、心臓の左心室の拍出期の終了時にIABをポンプデバイスで膨張させ、続いて起る拍出期の開始前に収縮させる。バルーン収縮を左心室の拍出に近付けるか或いは拍出と同時に行うことによって、全身の血行動態及び心筋の効率を改善できると教示されている(カーン等の1999年の文献を参照されたい)。IABPを最適に機能させるために、IABを心周期の正しい時間に膨張させ、収縮することが重要である。
【0006】
IABの膨張を制御するための方法及び装置は、例えば、サカモト等の1995年の米国特許第4,692,148号、米国特許第6,258,035号、米国特許第6,569,103号、及び米国特許第6,887,206号、及び米国特許出願第2004/0059183号及び米国特許出願第2005/0148812号に記載されている。
【0007】
IABの収縮は、対象の心臓の心電図(ECG)を使用してトリガーできる(TAオーレー等の2002年の米国特許第4,692,148号、米国特許第4,809,681号、米国特許第6,290,641号、及び米国特許第6,679,829号を参照されたい)。ECGからトリガー心臓を決定するための方法及び装置は、すでに説明されている(例えば米国特許第4,571,547号及び米国特許第5,355,891号)。代表的には、IABの収縮のタイミングは、IABのR波に基づく。トリガーが実時間でR波の振幅の変化及びR波の前縁相中の立ち上がり時間に適合する場合、正確なR波トリガーが必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、心電図(ECG)波形のR波から、R波の傾きに適合した閾値を使用して、R波の前縁内でトリガーを発生するための改良された方法及び装置を提供するという必要を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法は、a)トリガーに対し、予想R波の振幅のパーセンテージである最小閾値を設定する工程と、b)R波の前縁中の連続した小さな期間に亘るR波の傾きを計測する工程であって、傾きが、予想R波よりも大きい周波数を含む波形と対応する場合には、トリガーが発生しないようにする、工程と、c)R波の前縁中、R波に対してトリガーを行うための閾値を調節する工程であって、工程b)で計測した傾きがR波について予想されたよりも大きい場合には最小閾値を増大する、工程と、d)工程b)で計測した傾きにスカラー値を適用し、それより大きいときは信号周波数がR波として認識される上で有効であると考えられない所定の周波数を設定する工程と、e)R波の振幅が閾値に達したとき、R波の前縁内でトリガーを発生させる工程とを含む。
【0010】
本発明の装置は、プロセッシングユニットを含み、このプロセッシングユニットは、a)トリガーに対し、予想R波の振幅のパーセンテージである最小閾値を設定する工程と、b)R波の前縁中の連続した小さな期間に亘るR波の傾きを計測する工程であって、傾きが、予想R波よりも大きい周波数を含む波形と対応する場合には、トリガーが発生しないようにする、工程と、c)R波の前縁中、R波に対してトリガーを行うための閾値を調節する工程であって、工程b)で計測した傾きがR波について予想されたよりも大きい場合には最小閾値を増大する、工程と、d)工程b)で計測した傾きにスカラー値を適用し、それより大きいときは信号周波数がR波として認識される上で有効であると考えられない所定の周波数を設定する工程と、e)R波の振幅が閾値に達したとき、R波の前縁内でトリガーを発生させる工程とを実施する。
【0011】
本発明は、R波の前縁中に実時間トリガーを行うことによってR波トリガー状態を進め、トリガー認知を改善し、偽トリガー及び誤トリガーを減少する。
【0012】
本発明の追加の目的は、以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、心電図(ECG)波形のR波から、R波の傾きに適合した閾値を使用して、R波の前縁内でトリガーを発生するための方法及び装置に関する。本発明は、心律動が正常な対象で使用できる。しかしながら、本発明は、不整脈の対象で特に有用である。これは、R波の前縁中にR波を早期に認識できるためである。心不整脈中のR波の認識が早期であればある程、次の心周期前にIABを収縮させるのに長い時間を利用できる。本発明は、人間を対象とする治療又は獣医学で使用できる。
【0014】
本発明の方法は、以下のa)乃至e)の工程を含む。工程a)は、トリガーに対し、最小閾値を設定する工程を含む。最小閾値は、予想R波の振幅のパーセンテージである。R波は、記録されたECG信号の極性に応じたECGベースラインからの電圧の増減を表す。かくして、R波の前縁は、ECGのベースラインから上昇又は下降のいずれかを表す。予想R波の振幅は、代表的には、同じ対象から記録した先行R波に基づいて正規化される。予想R波の振幅を決定する上で、比較的直近に発生したR波を、比較的以前に発生したR波よりも大きく加重する。振幅が小さい人為結果(artifacts) 又はノイズで偽トリガーが生じないようにする上で、最小閾値基準が重要である。最小閾値は、例えば、予想R波の振幅の約1/3乃至約1/2に設定できる。好ましくは、最小閾値は、予想R波の振幅の1/3に設定される。本発明の適合トリガー閾値特徴により、偽トリガー率を増大することなく、比較的低い初期最小閾値を使用して、前縁がゆっくりと変化するR波を比較的良好に検出できる。
【0015】
工程b)は、R波の前縁中の連続した小さな期間に亘るR波の傾きを計測する工程を含む。R波の前縁中、予想R波よりも大きい周波数を含む波形と対応する傾きにより、トリガーの発生を阻止する。個々の期間の持続時間は、例えば、1ms乃至5ms程度である。好ましくは、個々の期間の持続時間は、少なくとも4msである。連続した期間の総持続時間は、例えば16ms乃至40ms程度である。この工程は、観察した傾きの加重平均を使用する工程を含んでいてもよい。この工程では、直近の値に最も大きく加重し、値が古くなるにつれて加重を連続的に小さくする。これは、専ら現存のR波内の値に依拠し、先行R波の値に依拠しない動的な計測及び調節である。好ましくは、30Hz乃至40Hzと等しいか或いはそれより大きい周波数を含む波形と対応する傾きは、トリガーの発生から除外される。本方法は、更に、5Hz乃至10Hzと等しいか或いはそれより小さい周波数を含む波形と対応する傾きをトリガーの発生から除外する工程を含む。
【0016】
工程c)は、R波の前縁中、R波についてトリガーを行うための閾値を調節する工程を含む。この工程では、工程b)で計測した傾きが、R波について予想された傾きよりも大きい場合、最小閾値を増大する。好ましくは、調節した閾値は、予想R波の振幅の最大パーセンテージを越えることができない。更に好ましくは、調節した閾値は、予想R波の振幅の2/3倍を越えることができない。工程a)で設定された最小閾値の基準は、最小閾値を越える前に閾値を調節するため、R波の前縁の幾つかの小さな増分をサンプリングするための時間を可能にするという点で重要である。
【0017】
工程d)は、工程b)で計測した傾きにスカラー値を適用し、それより大きい信号周波数がR波として認識される上で有効であると考えられない周波数を設定する工程を含む。この特徴により、R波の認識を更に改善する。スカラー値は、様々な計算作業を使用して適用できる。好ましい方法は、工程b)で得られた傾きに、工程e)でトリガーを発生する周波数を決定する周波数のスカラー値を乗じる工程を含む。これにより、表1に示すように、選択されたスカラーが許容するよりも大きい周波数に基づくトリガーをなくす。
【0018】
ECGトリガー検出について、周波数の拒絶に及ぼされる周波数スカラーの効果(周波数の単位:Hz
【表1】

【0019】
工程e)は、R波の振幅が閾値に達したとき、R波の前縁内でトリガーを発生させる工程を含む。発生したトリガーを使用し、大動脈内バルーンポンプ(IABP)をトリガーする。詳細には、トリガーを使用し、大動脈内バルーンポンプ(IABP)による大動脈内バルーン(IAB)の収縮をトリガーする。更に、発生したトリガーを使用し、心臓刺激装置又は徐細動器等の、及びECGモニター等の対話型心臓デバイスをトリガーする。
【0020】
本発明は、更に、心電図(ECG)のR波から、R波の前縁内のR波の傾きに適合した閾値を使用してトリガーを発生するための装置を提供する。この装置はプロセッシングユニットを含み、このプロセッシングユニットは、
a)トリガーについての最小閾値を設定する。最小閾値は、予想R波の振幅のパーセンテージである。
b)R波の前縁中の連続した小さな期間に亘るR波の傾きを計測する工程であって、前記傾きが予想R波よりも大きい周波数を含む波形と対応する場合には、トリガーの発生を阻止する工程と、
c)R波の前縁中、R波に対して、トリガーを行うための閾値を調節する工程であって、工程b)で計測した傾きがR波について予想されたよりも大きい場合に最小閾値を増大する工程と、
d)工程b)で計測した傾きにスカラー値を乗じ、それ以上では信号周波数がR波として認識される上で有効であると考えられない周波数を設定する工程と、
e)R波の振幅が閾値に達したとき、R波の前縁内でトリガーを発生させる工程とを実行する。
【0021】
好ましくは、装置は、更に、対象の心電図(ECG)からの入力と、対象の動脈圧(AP)からの入力と、対象の心電図(ECG)から及び/又は対象の動脈圧から、対象の心不整脈を検出するためのプロセッシングユニットとを含む。好ましくは、装置は、IABP、詳細にはIABの収縮をトリガーする出力を更に含む。装置は、心臓刺激装置や徐細動器等の対話型心臓デバイスをトリガーする出力、及び/又はECGモニターへの出力を含んでいてもよい。
【0022】
方法又はプロセッシングユニットは、更に、トリガーを発生するため、工程b)で連続した期間に亘って計測したR波の振幅の変化の回数が、同じ変化方向で最小であることを必要とする。予想R波よりも高い周波数でトリガーが起らないようにするのを補助するため、同じ方向に移動するセグメントの数を最小にすることを必要とする。このチェックは、R波の前縁の第1期間で開始され、ひとたび振幅の基準が満たされた後、トリガーの発生を遅延しないように、トリガーを予め有効にする。
【0023】
方法又はプロセッシングユニットは、トリガーを発生するため、更に、工程b)で個々の期間に亘って計測されたR波の振幅の変化が、先行期間について計測した振幅の変化に関して最小の変化であることを必要とする。
【0024】
方法又はプロセッシングユニットは、更に、R波について予想された比較的高い範囲内に所定の周波数成分を持つECG信号が存在する状態で、トリガーを行うための閾値を増大する工程を含む。ECGの周波数範囲は、通常は、約10Hz乃至30Hzである。トリガーを行うための閾値は、例えば、周波数成分が25Hz乃至30HzのECG信号が存在する状態で増大できる。例えば、R波をトリガーするための閾値は、閾値の2/3よりも小さいノイズが誤ってR波と呼ばれることがないように、R波の周波数と一致する信号が存在する状態で増大できるが、それでも、閾値を越えた場合、真のR波が認識される。これは、周波数スカラー乗数を予想R波の上範囲内にあるように所定の値に合わせて設定することによって行うことができる。
【0025】
別の改良は、ターゲット値を得るため、ECGの振幅が得られるようにECGの波形の振幅を正規化することである。これにより、受け取られた信号の強さについてスケールを合わせることを必要としないトリガー係数及びフィンガ係数についての所定の閾値組が可能になる。
【0026】
トリガーについて閾値をチェックする期間を特定できる。例えば、期間は、限定された期間、例えば16ms乃至40msの期間であってもよい。更に、トリガーについての閾値を、例えば16ms、20ms、24ms、28ms、32ms、及び40msの間隔で振り返ってチェックしてもよい。これらの特定の期間は、トリガーを発生できる周波数を決定するのを補助する。
【0027】
方法又はプロセッシングユニットは、更に、工程e)でトリガーを発生した後、特定の期間内に第2のトリガーを発生できない。この期間は、例えば約280msに設定されてもよい。
【0028】
本発明を以下の実験的詳細のセクションに例示する。これは、本発明の理解を補助するために記載するものであって、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0029】
実験的詳細
解決されるべき問題点
ECGのQRSセグメントについて生じる様々な形態を認識する上で問題がある。目的は、R波の前縁で実時間で確実にトリガーすることである。ECGは、通常は、周波数範囲が10Hz乃至30Hzである。ECGのR波の傾き及び上昇時間は、係数5又はそれ以上異なる。R波の前縁の上昇時間は16ms乃至100msである。最も低速のR波を検出するように設定されたトリガー閾値は、比較的速いECG形態のECG T波及びP波の検出で終わる。かくして、様々なECG形態について実時間で調節する適合トリガー閾値を提供する必要がある。
【0030】
本発明の一つの目的は、周波数が通常の範囲よりも高く、R波の前縁と考えられるのに十分な傾き及び振幅を持つ信号についてトリガーがなされないようにすることである。本発明の別の目的は、次の心周期が発生したときをIABPが決定できるように、ECGのR波の前縁をできるだけ早く認識する必要に基づく。この必要のため、従来のフィルタリング技術を用いることができない。これは、従来のフィルタリング技術が、信号に大きな伝送遅延を生じ、そのためにR波の開始の認識が遅れるためである。
【0031】
結果及び議論
本発明を、現在使用されているIABPデバイス(アロウインターナショナル社のオートキャット(オートキャット(AUTOCAT)は登録商標である)に組み込んだ。アメリカ心臓学会(AHA)ECGデータベース(42テープ)のサブセットに対する試験において、本発明により、本発明を組み込まなかったIABPの態様と比較してR波トリガーにおける以下の改良がなされた。誤トリガーのパーセンテージが40%減少し、偽トリガーのパーセンテージが90%減少した。かくして、本発明は、広範なR波を良好に検出すると同時に、偽検出の発生を減少する。
【0032】
図1乃至図5に示すように、本明細書中に開示した結果及び装置は、通常のECG及び広いECG信号の期間中、並びに電気装置からの60Hzのノイズの期間中、及び骨格筋からの筋電図(EMG)ノイズ中、R波の前縁で正しいトリガーを提供する。図1は、様々なECG形態中のR波トリガーを示す。図の右側に示す広幅のECG形状は、早発心室収縮中に生じる。図2は、ECG信号のノイズレベルの変化に、R波トリガーについての閾値を迅速に適合する方法を示す。図3及び図4は、電気装置からのピックアップから生じるような60HzのノイズでECG信号が汚染された場合の期間中の正しいR波トリガーを示す。図5は、閾値レベルを上昇することによって、R波トリガーについての閾値を、骨格筋からの筋電図(EMG)ノイズに能動的に適合し、偽トリガーが発生しないようにすることを示す。
【0033】
本発明の適合トリガー閾値を使用することにより、比較的低い初期閾値を使用でき、これにより広い又は低速のR波を検出でき、偽トリガー率を高めない。更に、ノイズ及び人為結果がバイポーラ又はランダムであるが、上文中に説明したR波トリガーがユニポーラトリガー認識に基づく傾向があるため、ノイズ免除が改善される。本発明は、信号の遅延をもたらす従来の信号のフィルタリングを必要とせず、ECGで確実にトリガーする。これは、不整脈が発生した場合、ECGからIABPを迅速に且つ正確にトリガーするとき、特に有利である。
【0034】
参考文献
「心臓手術における大動脈内バルーンポンプ」胸郭手術年鑑74(4):1276−87(2002年)バスケットRJ、ジャリWA、メイトランドA、ヒルシュGM、
「患者における新規な大動脈内バルーンカウンタパルスタイミング法の血行動態的効果(多センタ評価)」米国心臓学会誌137:1129−6(1999年)カーンM、アグレF、カラッシオーロE、バッハR、デノヒューT、ラソーダD、オーマンM、シュニッツラーR、キングD、オーレーW、グレイゼルJ、
「30年臨床大動脈内バルーンポンプ詳細」胸郭心臓手術47補遺2:298−303(1999年)、メールホーンU、クローナーA、デヴィヴィエER
「不整脈に応答する大動脈内バルーンポンプ(アルゴリズムの開発及び実行)」心臓血管学51(5)483−7(2002年)オーレーWJ、ニグローニP、ウィリアムスJ、ハミルトンR、
「心房細動の患者における大動脈内バルーンポンプの新規なアルゴリズム」ASAIO誌41:79−83(1995年)サカモトT、アライH、トシユキM、スズキA
1986年2月18日にデイに付与された「人為結果に対して感度を落した、ECG信号のR波等の生理学的信号用の適合信号検出システム」という表題の米国特許第4,571,547号、
1987年9月8日にカントロヴィッツ等に付与された「大動脈内バルーンポンプ装置及びその使用方法」という標題の米国特許第4,692,148号、
1989年3月7日にカントロヴィッツ等に付与された「大動脈内バルーンポンプを制御するための心電図計測方法」という表題の米国特許第4,809,681号、
1994年10月18日にウォーターリッジ等に付与された「ECGアナライザー」という表題の米国特許第5,355,891号、
2001年7月10日にホスケル等に付与された「心周期の特徴点を決定するためのデバイス」という表題の米国特許第6,258,035号、
2001年9月18日にニグローニ等に付与された「大動脈内バルーン収縮タイミングを心電図に基づいて自動的に変化させる大動脈内バルーンポンプ」という表題の米国特許第6,290,641号、
2003年5月27日にホクセル等に付与された「心周期における特徴点を決定するためのデバイス」という表題の米国特許第6,569,103号、
2004年1月20日にニグローニ等に付与された「大動脈内バルーン収縮タイミングを心電図に基づいて自動的に変化させる大動脈内バルーンポンプ」という表題の米国特許第6,678,829号、
2005年3月3日にホクセル等に付与された「心周期における特徴点を決定するためのデバイス」という表題の米国特許第6,887,206号、
2004年3月25日にヤンセン等に付与された「心臓補助デバイスを制御するための装置」という表題の米国特許公開第2004/0059183号、
2005年7月7日にニグローニ等に付与された「大動脈内バルーンポンプ治療のタイミング」という表題の米国特許公開第2005/0148812号。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、様々なECG形態中のR波トリガーを示す図であり、図1乃至図5の上パネルは、上から下まで、シミュレートしたECG、4msの期間に亘るECGの傾き、及び長さフィルタ即ちR波トリガー用の適合閾値を示す。下パネルは、上から下まで、トリガーの発生、及び32ms、24ms、及び16msの期間に亘るECGの高さを示す。この図は、適合閾値が、R波の傾き又は形態の変化中、R波トリガーについての閾値を調節せきるということを例示する。図1乃至図5の時間の目盛りは、秒単位である。
【図2】図2は、ノイズレベルの変化中のR波トリガーを示す図であり、この図は、R波トリガー用の閾値を、ECG信号のノイズレベルの変化に迅速に適合する方法を示す。ECGの高さのチェックが行われる期間(下パネル)は、R波について予想されるよりも高い信号周波数がトリガー基準に適合しないようにする。
【図3】図3は、ECGの60サイクルのノイズの導入中のR波トリガーを示す図であり、閾値は、実時間中に閾値レベルを増大することにより、60サイクルのノイズに対して積極的に適合する。ECGの高さのチェックが行われる期間は、R波の範囲外の周波数がトリガーを発生しないようにする。
【図4】図4は、ECGの変調60サイクルのノイズ中のR波トリガーを示す図であり、閾値が、60サイクルのノイズの振幅の変化に迅速に適合する。
【図5】図5は、ECGでの骨格筋ノイズ中のR波トリガーを示す図であり、閾値は、閾値レベルを上昇することにより、骨格筋からの筋電図(EMG)ノイズに対して積極的に適合し、偽トリガーの発生を阻止する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図(ECG)波形のR波から、R波の傾きに適合した閾値を使用して、R波の前縁内でトリガーを発生する方法において、
a)前記トリガーに対し、予想R波の振幅のパーセンテージである最小閾値を設定する工程と、
b)前記R波の前記前縁中の連続した小さな期間に亘る前記R波の傾きを計測する工程であって、前記予想R波よりも大きい周波数から成る波形と対応する傾きが、トリガーの発生を防止する、工程と、
c)前記R波の前記前縁中、前記R波に対する前記トリガーのための前記閾値を調節する工程であって、前記工程b)で計測された前記傾きが前記R波について予想されたものよりも大きい場合には最小閾値が増大される、工程と、
d)前記工程b)で計測された前記傾きにスカラー値を適用し、それより上では信号周波数がR波として認識される上で有効であると考えられない周波数を設定する工程と、
e)前記R波の前記振幅が前記閾値に達したとき、前記R波の前記前縁内でトリガーを発生させる工程と、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記予想R波の前記振幅が、同じ測定対象から記録された先行R波に基づいて正規化される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記予想R波の前記振幅を決定する上で、より最近に発生したR波を、より以前に発生したR波よりも大きく加重する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
工程a)の前記最小閾値は、前記予想R波の前記振幅の1/3倍に設定される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
工程a)の前記最小閾値は、前記予想R波の前記振幅の1/2倍に設定される、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
工程b)における個々の期間の持続時間は、1ms乃至5msである、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
工程b)における個々の期間の持続時間は、少なくとも4msである、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
工程b)における連続した期間の総持続時間は、16ms乃至40msである、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
主に周波数が40Hzと等しいか或いはそれより大きい波形と対応する傾きが、トリガーの発生から除外される、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
主に周波数が30Hzと等しいか或いはそれより大きい波形と対応する傾きが、トリガーの発生から除外される、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
調節された閾値は、前記予想R波の前記振幅の最大パーセンテージを越えることができない、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
調節された閾値は、前記予想R波の前記振幅の2/3を越えることができない、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、更に、
主に周波数が5Hzと等しいか或いはそれより小さい波形と対応する傾きをトリガーの発生から除外する工程を含む、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、更に、
主に周波数が10Hzと等しいか或いはそれより小さい波形と対応する傾きをトリガーの発生から除外する工程を含む、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、更に、
工程b)で連続した期間に亘って計測した前記R波の振幅の変化の最小数が、トリガーを発生させるために同じ変化方向であることを要求する工程を含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、更に、
工程b)で、ある期間に亘って計測した前記R波の振幅の変化が、トリガーを発生させるために先行の期間に亘って計測した振幅の変化に関して最小であることを要求する工程を含む、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、更に、
前記R波について予想された、より高い範囲における周波数成分を持つECG信号の存在において前記トリガーのための閾値を増大する工程を含む、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、更に、
工程e)で発生させた前記トリガーによって大動脈内バルーンポンプ(IABP)をトリガーする工程を含む、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、更に、
工程e)で発生させた前記トリガーによって大動脈内バルーンポンプ(IABP)によって大動脈内バルーン(IAB)の収縮をトリガーする工程を含む、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、更に、
工程e)で発生させた前記トリガーによって心臓デバイスをトリガーする工程を含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
前記心臓デバイスは、心臓刺激装置、徐細動器、又はECGモニターである、方法。
【請求項22】
心電図(ECG)波形のR波から、前記R波の傾きに適合した閾値を使用して、前記R波の前縁内でトリガーを発生させるための装置において、前記装置はプロセッシングユニットを含み、前記プロセッシングユニットは、
a)前記トリガーに対し、予想R波の振幅のパーセンテージである最小閾値を設定する工程と、
b)前記R波の前記前縁中の連続した小さな期間に亘る前記R波の傾きを計測する工程であって、前記予想R波よりも大きい周波数から成る波形と対応する傾きが、トリガーの発生を防止する、工程と、
c)前記R波の前記前縁中、前記R波に対する前記トリガーのための前記閾値を調節する工程であって、前記工程b)で計測された前記傾きが前記R波について予想されたものよりも大きい場合には最小閾値が増大される、工程と、
d)前記工程b)で計測された前記傾きにスカラー値を適用し、それより上では信号周波数がR波として認識される上で有効であると考えられない周波数を設定する工程と、
e)前記R波の前記振幅が前記閾値に達したとき、前記R波の前記前縁内でトリガーを発生させる工程と、を実施する、装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置において、
前記装置は、測定対象の前記心電図(ECG)からの入力を含む、装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置において、
前記装置は、前記対象の動脈圧からの入力を含む、装置。
【請求項25】
請求項22に記載の装置において、
前記装置は、対象の心電図(ECG)及び/又は対象の動脈圧から心不整脈を検出するためのプロセッシングユニットを含む、装置。
【請求項26】
請求項22に記載の装置において、
前記予想R波の前記振幅を、前記ECGにて先行するR波に基づいて正規化する、装置。
【請求項27】
請求項26に記載の装置において、
前記予想R波の前記振幅を決定する上で、より最近に発生したR波を、より以前に発生したR波よりも大きく加重する、装置。
【請求項28】
請求項22に記載の装置において、
工程a)における前記最小閾値が、前記予想R波の前記振幅の1/3倍に設定される、装置。
【請求項29】
請求項22に記載の装置において、
工程a)における前記最小閾値が、前記予想R波の前記振幅の1/2倍に設定される、装置。
【請求項30】
請求項22に記載の装置において、
工程b)における個々の期間の持続時間は、1ms乃至5msである、装置。
【請求項31】
請求項22に記載の装置において、
工程b)における個々の期間の持続時間は、少なくとも4msである、装置。
【請求項32】
請求項22に記載の装置において、
工程b)における連続した期間の総持続時間は、16ms乃至40msである、装置。
【請求項33】
請求項22に記載の装置において、
主に周波数が40Hzと等しいか或いはそれより大きい波形と対応する傾きが、トリガーの発生から除外される、装置。
【請求項34】
請求項22に記載の装置において、
主に周波数が30Hzと等しいか或いはそれより大きい波形と対応する傾きが、トリガーの発生から除外される、装置。
【請求項35】
請求項22に記載の装置において、
調節された閾値は、前記予想R波の前記振幅の最大パーセンテージを越えることができない、装置。
【請求項36】
請求項22に記載の装置において、
調節された閾値は、前記予想R波の前記振幅の2/3を越えることができない、装置。
【請求項37】
請求項22に記載の装置において、
前記プロセッシングユニットは、主に周波数が5Hzと等しいか或いはそれより小さい波形と対応する傾きをトリガーの発生から除外する、装置。
【請求項38】
請求項22に記載の装置において、
前記プロセッシングユニットは、主に周波数が10Hzと等しいか或いはそれより小さい波形と対応する傾きをトリガーの発生から除外する、装置。
【請求項39】
請求項22に記載の装置において、
前記プロセッシングユニットは、工程b)で連続した期間に亘って計測された前記R波の振幅の変化の最小数が、トリガーを発生するために同じ変化方向であることを要求する、装置。
【請求項40】
請求項22に記載の装置において、
前記プロセッシングユニットは、工程b)で、ある期間に亘って計測された前記R波の振幅の変化が、トリガーを発生するために先行の期間に亘って計測された振幅の変化に関して最小であることを要求する、装置。
【請求項41】
請求項22に記載の装置において、
前記プロセッシングユニットは、前記R波について予想された、より高い範囲における周波数成分を持つECG信号の存在において前記トリガーのための閾値を増大する、装置。
【請求項42】
請求項22に記載の装置において、
大動脈内バルーンポンプ(IABP)をトリガーする出力を含む、装置。
【請求項43】
請求項22に記載の装置において、
大動脈内バルーンポンプ(IABP)によって大動脈内バルーン(IAB)の収縮をトリガーする出力を含む、装置。
【請求項44】
請求項22に記載の装置において、
前記装置は、大動脈内バルーンポンプコンソールシステムに組み込まれる、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−523483(P2009−523483A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550312(P2008−550312)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/046441
【国際公開番号】WO2007/087014
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(502047224)アロウ・インターナショナル・インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】ARROW INTERNATIONAL, INC.
【住所又は居所原語表記】2400 Bernville Road, Reading, PA 19605, U.S.A.
【Fターム(参考)】