説明

遮光性シート

【課題】 遮熱性および適度の光透過性を有し、軽量、高強度で耐久性に優れた遮光性シートを提供する。
【解決手段】 ポリオレフィン製延伸糸条を織編成してなる織編布の少なくとも片面に屈折率が1.60以上の無機粒子を含有させ、400〜1400nmの波長領域の光を80%〜95%反射させ、且つ、5〜20%透過させてなるポリオレフィンラミネート層を積層することにより、太陽光線から可視光線〜赤外線領域の波長の光が大部分反射され、太陽エネルギーが遮蔽されるので、遮熱効果がよく、且つ、可視光線領域の波長の光が一部透過されるので、得られたシートを農業用ハウス被覆材やテントシートなどに使用すると、ハウス内やテント内が明るくて作業性が向上するという効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光線から赤外線領域の光、例えば、400〜1400nmの波長領域の光を反射させてなる遮光性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
遮光性シートは、従来よりテント用シートや農業用ハウスシートなどに用いられている。テント用シートとしては、レジャー用テントや緊急災害時などに使用される仮設テント、簡易倉庫用テント、ガレージ用テント、アーケード用テント、博覧会のパビリオン用テントなどで使用されている。このテント用シートは、通常、ナイロンやポリエステルの織物にコーテイングを施して防水加工し、軽量化したものなどが使用される。しかしながら、軽量化を目的として薄手にされたものは、太陽光線によるエネルギーを遮蔽する効果がなく、テント内部の温度が上昇して長時間の使用には耐えられないという問題があった。
【0003】
このために、合成樹脂フィルムや織物にアルミニウムなどの金属層を設けて遮熱用シートとして用いる方法が知られているが、太陽エネルギーを遮蔽するために十分な厚みの金属層を設けると可視光線も遮断されてしまい、遮熱性の金属蒸着層を設けたシートを農業用ハウス被覆材や簡易テントシートなどに使用すると、ハウス内やテント内が暗くて作業性に支障があり満足できるものではなかった。このような目的を満足させるために、透光性フィルムの表面に赤外線を遮熱する範囲の厚みにアルミニウム蒸着層を設けた透光遮熱性シートが提案されている(特許文献1及び2)。
しかしながら、透光遮熱性シートをテントシートとして開閉作業を行う際の折り畳みなどに不適でアルミニウム蒸着層が剥離するなどの欠点を有する。
【0004】
【特許文献1】特開平11−36669号公報(2頁)
【特許文献2】特開平11−333978号公報(2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたもので、遮熱性および適度の光透過性を有し、軽量、高強度で耐久性に優れた遮光性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、ポリオレフィン製延伸糸条を織編成してなる織編布の少なくとも片面に屈折率が1.60以上の無機粒子を含有させ、400〜1400nmの波長領域の光を80%以上を反射させてなるポリオレフィンラミネート層を積層したことを特徴とする遮光性シート、に存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の遮光性シートは、ポリオレフィン製延伸糸条を織編成してなる織編布の少なくとも片面に屈折率が1.60以上の無機粒子を含有させ、400〜1400nmの波長領域の光を80%〜95%反射させ、且つ、5〜20%透過させてなるポリオレフィンラミネート層を積層することにより、太陽光線から可視光線〜赤外線領域の波長の光が大部分反射され、太陽エネルギーが遮蔽されるので、遮熱効果がよく、且つ、可視光線領域の波長の光が一部透過されるので、得られたシートを農業用ハウス被覆材やテントシートなどに使用すると、ハウス内やテント内が明るくて作業性が向上するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ポリオレフィン製延伸糸条に用いられるポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、エチレンープロピレンブロック共重合体あるいはランダム共重合体またはそれらの混合物を使用することができる。これらのうちでは、延伸糸状の形成性が容易で、機械的特性に優れた高密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0009】
上記延伸糸条の形態としてはモノフィラメント、マルチフィラメント、フラットヤーン、スプリットヤーンなどいずれも使用できる。これらのうちでは、柔軟性があり成形性にすぐれ、かつ平滑な織編成を形成し易いフラットヤーンが好ましい。延伸糸条の繊度は50〜3000デシテックス(以下、dtと称す。)の範囲であり、好ましくは100〜2000dtの範囲である。
【0010】
上記延伸糸条を用いて織編成し織編布を形成する。織編布の織組織としては、平織、綾織、絡み織、模紗織など種々の組織が使用され、一方、編組織としては、経編、緯編など適宜使用される。
経糸および緯糸の打込密度は5〜30本/2.54cmの範囲であり、好ましくは8〜15本/2.54cmの範囲である。また、織編布の目付量は30〜600g/mの範囲であり、好ましくは50〜400g/mの範囲である。
【0011】
本発明において、上記織編布の少なくとも片面、好ましくは、両面に屈折率が1.60以上の無機粒子を含有させ、400〜1400nmの波長領域の光を80%以上を反射させてなるポリオレフィンラミネート層を積層して、遮光性シートを形成することを特徴とするものである。
【0012】
無機粒子としては、その屈折率が1.60以上のもの、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム等の無機酸化物、チタン酸カリウム、チタン酸鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸バリウム等が使用される。
【0013】
上記無機粒子は、平均粒径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜15μmさらに好ましくは1〜10μmに範囲内である。平均粒径が0.3μm未満では、シートの透明性が向上して隠蔽性が以下して光に対する反射率が低下してくるので好ましくない。
【0014】
本発明におけるポリオレフィフィンラミネート層は、上記織編布の少なくとも片面、好ましくは、両面に屈折率が1.60以上の無機粒子を1〜10重量%の範囲、好ましくは3〜8重量%の範囲内を含有させ、400〜1400nmの波長領域の光に対する反射率が80%以上、好ましくは80〜95%の範囲内とし、且つ、上記光に対する透過率が20%以下、好ましくは5〜20%の範囲としたものである。無機粒子としては、酸化アンチモン、特に三酸化アンチモンが好適に使用され、光に対する反射率及び透過率は、酸化アンチモンの含有量により調整される。
なお、反射率、透過率は層全体として測定した数値を意味し、それらの測定は、例えば日立製作所製自動記録分光光度計「U−4000」を用いて測定したものである。
【0015】
上記ラミネート層の積層方法としては、公知の押出ラミネート法、ドライラミネート法、熱圧着ラミネート法などが採用されるが、押出ラミネート法が成形性の点で好ましい。ラミネート層に用いられるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレンなど通常ラミネート法に用いられるポリオレフィンが使用できる。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、エチレンープロピレンブロック共重合体あるいはランダム共重合体またはそれらの混合物を使用することができる。
【0016】
上記ラミネート層の厚みとしては、50μm以上であり、好ましくは50〜400μmの範囲であり、さらに好ましくは80〜300μmの範囲である。
上記ラミネート層の厚みが50μm未満では、得られる積層シートの表面に織編布クロスを形成する延伸糸条の凹凸が表出して平滑性に劣り、また、400μmを超えると重量が増加して比重が軽く軽量である利点が失われるので好ましくない。
【0017】
また、本発明の上記遮光性シートは、屋外で使用されることが多いことから、長期間日光に晒されるために高い耐候性が必要とされている。耐候性を改良する方法としては、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候剤を添加する方法を採用することもできる。
【0018】
紫外線吸収剤の具体例としては、具体的には2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、オクチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2-(2′-ヒドロキシ -5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-5′-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3′-5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤の配合割合は、熱可塑性樹脂に対して0.05〜5重量%の範囲、好ましくは0.1〜1重量%の範囲である
【0019】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとコハク酸ジエチルの重縮合物等が挙げられる。光安定剤の配合割合は、熱可塑性樹脂にに対して0.05〜5重量%の範囲、さらに好ましくは0.1〜1重量%の範囲である。
【0020】
さらに、上記ラミネート層には、シート表面に滑性を付与するために高級脂肪酸アミドを配合することが望ましい。高級脂肪酸アミドの具体例としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミドや、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミドなどいずれも用いることができる。また、高級脂肪酸アミドに脂肪酸の多価アルコールエステル、金属石けん類、ワックス等を併用すると滑性が長時間持続できるので望ましい。
【0021】
上記高級脂肪酸アミドの配合割合は、ラミネート層に対して500〜5000ppmの範囲で、好ましくは1000〜3000ppmの範囲である。高級脂肪酸アミドの配合量が5000ppmを越えると滑性が過剰となりシートの取扱いが困難となり、500ppm未満では滑性が不十分となり望ましくない。
【0022】
本発明に用いられる上記熱可塑性樹脂には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、無機充填剤、核剤等の通常用いられる添加剤を配合してもよい。
【0023】
実施例1:
高密度ポリエチレン(MFR=0.7g/10分、密度=0.957g/cm、Tm=129℃)を用いて、インフレーション法を用いてフィルム状に押出し、冷却してフィルムを形成した。このフィルムを熱板接触延伸法で延伸倍率9倍で延伸し、繊度2300dtのフラットヤーンを形成した。このフラットヤーンを経緯糸として用い、打込密度を経緯糸として16×20本/インチとし平織の織布を得た。
【0024】
上記織布の表面に、低密度ポリエチレン(MFR=8.0g/10分、密度=0.918g/cm)に、三酸化アンチモン(屈折率:2.10、平均粒径: 2.0μm)3重量%を配合した組成物を用いて押出ラミネート法により厚み150μmのラミネート層を形成した。また、織布の裏面には、低密度ポリエチレン(MFR=8.0g/10分、密度=0.918g/cm)を用いて押出ラミネート法により厚み50μmのラミネート層を積層し、積層シートを得た。この積層シートの目付けは、685g/mであった。
【0025】
得られた積層シートにつき、太陽光線を照射して反射率、透過率を測定した結果、400〜1400nmの波長領域の光の反射率は88%〜93%の範囲であり、該光の透過率は5〜12%の範囲であった。また、外気温度が33℃のとき、積層シート内の温度は35℃であり、遮熱効果は良好であった。なお、反射率、透過率は、日立製作所製自動記録分光光度計「U−4000」を用いて測定したものである。
【0026】
参考例1:
実施例1において、三酸化アンチモンの代わりに酸化チタン(屈折率:2.55、平均粒径:0.10μm)5重量%を用いたこと以外は同様にして行った。その結果、400〜1400nmの波長領域の光の反射率は75%〜50%の範囲であった。
また、外気温度が33℃のとき、積層シート内の温度は38℃であり、遮熱効果は不十分であった
【0027】
比較例1:
実施例1において、三酸化アンチモンを全く添加しなかったこと以外は同様にして行った。その結果、外気温度が33℃のとき、積層シート内の温度は41℃であり、遮熱効果は不十分であった

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン製延伸糸条を織編成してなる織編布の少なくとも片面に屈折率が1.60以上の無機粒子を含有させ、400〜1400nmの波長領域の光を80%以上を反射させてなるポリオレフィンラミネート層を積層したことを特徴とする遮光性シート。
【請求項2】
無機粒子がその平均粒径が0.3〜20μmの範囲である請求項1記載の遮光性シート。
【請求項3】
無機粒子が無機酸化物粒子である請求項1記載の遮光性シート。
【請求項4】
ポリオレフィンラミネート層がラミネート層に対して酸化アンチモンを1〜10重量%の範囲含有させ、400〜1400nmの波長領域の光を80%〜95%反射させ、且つ、5〜20%透過させたものである請求項1記載の遮光性シート。

【公開番号】特開2006−205522(P2006−205522A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20116(P2005−20116)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000234122)萩原工業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】