説明

遮断弁およびその遮断弁を備えた燃料電池システム

【課題】遮断弁において、小型化、簡素化、及びコスト低減を図り、その遮断弁を備えた燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減を図る。
【解決手段】第1通路31、第2通路、および弁座33が形成された弁本体34と、弁体35と、軸部材36と、軸部材36を保持案内する案内孔37aが弁座33と直角に形成された案内部37と、弁部42aが弁座33と当接する閉鎖位置Aと弁座33から離間する開放位置との間で弁体35を移動させる弁作動装置38と、を備えた遮断弁30において、軸部材36は、閉鎖位置Aと弁部42aが弁座33から僅少距離離間する僅少離間位置との間で弁体35が移動するとき案内孔37aに嵌合して弁体35を揺動可能に案内する第1嵌合部39と弁部42aが弁座33から僅少距離以上離間すると案内孔37aに勘合し揺動を規制して弁体35を案内する第2嵌合部40と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断弁およびその遮断弁を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムに用いられる開閉弁の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図4に示されているように、燃料電池用開閉弁10において、パイロット圧(流体)が第2室40に供給されると、ダイヤフラム36が押圧される。そして弁体52が下降動作し弁体52が有するゴム製のシート部材60が弁座46に着座して、弁閉止状態となり水素の排出が停止される。一方、 パイロット圧(流体)の供給が停止されると、コイルスプリング102の付勢によって弁体52が上昇動作する。これにより燃料電池用開閉弁10が弁開放状態となり、該燃料電池用開閉弁10の内部を水素が流通する。
【0003】
また、燃料電池システム以外の遮断弁の他の一形式として、特許文献2に示されているものが知られている。特許文献2の図1に示されているように、ダイヤフラム式の弁26において弁座24の外側に設けた案内板68により水流を整流し弁26に複雑な方向の力が加わらないようにして弁座24の傾きを抑制しシール性を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−183713号公報
【特許文献2】特開2007−218421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の燃料電池システムの開閉弁は、ダイヤフラム式であるので、弁体52と弁座46との傾きを精度よく制御することは困難である。このため弁体52と一体的に形成される第2円柱部96を設け、第2円柱部96を軸受け部98と嵌合させることによって弁体52と弁座46との傾きを抑制している。しかし第2円柱部96と軸受け部98との関係は設計公差の幅の中で所定の範囲をもつため弁座46と弁座46に当接する弁体52との間の傾きは、その影響を受けてばらつきをもってしまう。このため弁体52と弁座46との間の傾きのうちシール性能が悪くなる方向にばらついた傾き分を吸収しシール性能を満足させるためには、弁体52を大きな力で付勢しゴムのつぶし量を大きくして対応する必要があり、これによって閉弁用のアクチュエータが必須となってしまう。小型化・低コスト化を目的として、アクチュエータを小さくしようとすると、弁体と弁座部分を高精度なものにしなければならず、かえって高コスト化となってしまう。
【0006】
文献2は、流路に案内板68を設けることによって水流を整流し弁体と弁座24との間のシール性を向上させている。しかし、この案内板68は複雑な構造であり高コストの要因となる。
【0007】
本発明は、上述した各問題を解決するためになされたもので、遮断弁において、小型化、簡素化、及びコスト低減を図り、その遮断弁を備えた燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明である遮断弁の構成上の特徴は、第1通路、前記第1通路と連通する第2通路、および前記第1通路と前記第2通路との間に介在し環状に形成された弁座が形成された弁本体と、前記弁座に対して進退移動し、前記弁座と接離可能な環状の弁部が形成された弁体と、前記弁体に前記弁部と直角な軸線方向に突出して一体的に形成された円柱状の軸部材と、前記弁本体に設けられて前記軸部材を内周面で保持案内する案内孔が前記弁座と直角な軸線方向に形成された案内部と、前記弁部が前記弁座と当接する閉鎖位置と前記弁座から離間する開放位置との間で前記弁体を移動させる弁作動装置と、を備えた遮断弁において、前記軸部材は、前記弁部が前記弁座と当接する前記閉鎖位置と前記弁部が前記弁座から僅少距離離間する僅少離間位置との間で前記弁体が移動するとき、前記案内孔に嵌合して前記弁体を揺動可能に案内する第1嵌合部と、前記弁部が前記弁座から前記僅少距離以上離間すると前記案内孔に嵌合し前記揺動を規制して前記弁体を案内する第2嵌合部と、を有することである。
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項2に係る発明である遮断弁の構成上の特徴は、請求項1において、前記第1嵌合部は前記軸部材の先端部に形成され、前記第2嵌合部は前記第1嵌合部から少なくとも前記僅少距離軸線方向に離間して形成され、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間に前記第1および第2嵌合部より小径の小径部が形成されていることである。
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項3に係る発明である燃料電池システムの構成上の特徴は、燃料が供給される燃料流路と酸化剤ガスが供給される酸化剤流路を有する燃料電池と、前記酸化剤流路の前記酸化剤ガスを導入する導入口に前記酸化剤ガスを圧送する圧送装置と、前記圧送装置と前記燃料電池との間に介装され前記圧送装置と前記燃料電池との連通を遮断する第1遮断弁と、前記酸化剤流路からオフガスを導出する導出口を遮断する第2遮断弁と、を備え、前記第1および第2遮断弁として請求項1または請求項2に記載の遮断弁を使用することである。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、弁部が弁座と当接する閉鎖位置と弁部が弁座から僅少距離だけ離間する僅少離間位置との間で弁体が移動するときに、第1嵌合部が案内孔に嵌合して弁体を揺動可能に案内する。これにより設計上の公差によって弁部が弁座に対して所定の角度を有していても弁部は揺動されて弁座に倣い弁座と適切に当接することができるので良好なシール性を確保することができる。
【0012】
また、弁部が弁座から僅少距離以上離間すると第2嵌合部が案内孔に勘合して弁体の揺動を規制する。このように弁体は僅少離間位置から開放位置までの間においては、揺動されることなく所定の位置に安定して保持される。そのため弁部を弁座と当接させるために移動させ、弁部が僅少離間位置に達し第2嵌合部が案内孔から外れるときにも、弁部は弁座の近傍に位置している。これにより僅少離間位置から閉鎖位置までの間で、弁体が第1嵌合部のみによって案内孔に案内され揺動可能な状態で弁部が弁座に倣っても弁座から外れることはなく確実に弁座に当接することができるので良好にシール性を確保することができる。このように簡易な構成によって遮断弁の小型化、簡素化、及びコスト低減を図ることができる。
【0013】
上記のように構成した請求項2に係る発明によれば、請求項1において、第1嵌合部と第2嵌合部は少なくとも僅少距離だけ離間して配置され、第1嵌合部と第2嵌合部との間には第1嵌合部、及び第2嵌合部よりも小径の小径部が設けられている。このように少なくとも閉鎖位置と僅少離間位置との間の長さを有する小径部が設けられるので第1嵌合部は閉鎖位置と僅少離間位置との間において小径部によって動きを阻害されずに確実に揺動できる。そして弁部が僅少離間位置を越えると第2嵌合部が案内孔に嵌合される。これにより僅少離間位置と開放位置との間においては、十分な長さの小径部を介して設けられた第1嵌合部と、第2嵌合部とによって嵌合長さが長くなったのと同様の効果が得られ、これにより弁部の揺動を適切に規制することができる。このように小径部が介在されて僅少距離以上離間した第1嵌合部と第2嵌合部とが状態に応じてそれぞれ案内孔に嵌合するという簡素で低コストな構造によって良好なシール性能を得ることができる。
【0014】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、燃料電池の酸化剤流路の導入口とその導入口に酸化剤ガスを圧送する圧送装置との間に、第1遮断弁として請求項1または請求項2に記載の遮断弁が介装されている。また、燃料電池の酸化剤流路の導出口には、請求項1または請求項2に記載の遮断弁が接続されている。これにより、燃料電池システムの停止運転の際に、確実に、第1および第2遮断弁を閉弁することができ、延いては燃料電池の酸化剤流路を確実に密封することができる。このように、小型化、簡素化、コスト低減を図ることができる遮断弁を備えることで、燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減、及び信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による遮断弁および燃料電池システムの第1の実施形態の概要を示す概要図である。
【図2】図1に示す遮断弁の閉弁状態(閉鎖位置A)を示す断面図である。
【図3】図1に示す遮断弁の僅少距離開弁状態(僅少離間位置B)を示す断面図である。
【図4】図1に示す遮断弁の開弁状態(開放位置C)を示す断面図である。
【図5】図1に示す遮断弁の弁体が傾いて弁座と当接した状態を示す図である。
【図6】図5に示す傾いた遮断弁の弁体が弁座に着座した状態を示す図である。
【図7】従来の遮断弁と本発明に係る遮断弁のシール性能を比較した実験結果を示す図である。
【図8】第2の実施形態の遮断弁を示す断面図である。
【図9】第3の実施形態の遮断弁を示す断面図である。
【図10】第4の実施形態の遮断弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による遮断弁およびその遮断弁を備えた燃料電池システムの第1の実施形態について説明する。図1はこの燃料電池システムの概要図である。この燃料電池システムは、燃料電池10、圧送装置21、本発明に係る第1および第2遮断弁22、23、調圧弁16、および制御装置24を備えている。なお、第1および第2遮断弁22、23はともに同じ構造を有する遮断弁30である。よって以後、第1および第2遮断弁22、23のそれぞれの構成等の説明については遮断弁30を用いて説明する。
【0017】
燃料電池10は、燃料が供給される燃料流路11と酸化剤ガスが供給される酸化剤流路12とを有している。燃料流路11は、燃料極に燃料を供給するものであり、酸化剤流路12は、酸化剤極に酸化剤ガスを供給するものである。燃料極と酸化剤極との間には図略の電解質膜が介装されている。本第1の実施形態では、燃料は水素ガスであり、酸化剤ガスは空気である。燃料電池10は、水素ガスと空気が化学反応して発電するものである。
【0018】
圧送装置21は、燃料電池10の酸化剤流路12に空気を圧送するものである。圧送装置21は、制御装置24からの駆動指令によって駆動されて空気を圧送し、制御装置24からの駆動停止指令によって駆動が停止されて空気の圧送を停止する。なお、駆動が停止されると、圧送装置21の吐出口は大気に開放される。そして本第1の実施形態では、圧送装置21はコンプレッサである。
【0019】
燃料電池10の酸化剤流路12に酸化剤ガスを導入する導入口12aは、酸化剤供給管25を介して圧送装置21の吐出口に接続されている。酸化剤供給管25の途中には、酸化剤供給管25を開閉する第1遮断弁22(遮断弁30)が設けられている。圧送装置21の吐出口は、第1遮断弁22の第1通路31の入出口31aに連通して接続しており、燃料電池10の導入口12aは、第1遮断弁22の第2通路32の入出口32aに連通して接続している。
【0020】
燃料電池10の酸化剤流路12から酸化剤オフガスを導出する導出口12bは、オフガス排出管26を介して大気に開放されている。オフガス排出管26の途中には、オフガス排出管26を開閉する第2遮断弁23(遮断弁30)が設けられている。燃料電池10の導出口12bは、調圧弁16を介して第2遮断弁23の第2通路32の入出口32aに連通して接続しており、第2遮断弁23の入出口31aは大気に開放されている。なお、本実施形態においては第1遮断弁22と第2遮断弁23とを同じ方向に配置して使用した。このため第2遮断弁23においては酸化剤オフガスを入出口32aから導入し入出口31aから排出する形となった。このように遮断弁30は入出口31a、及び入出口32aのいずれからガスを導入しても使用可能である。
【0021】
第2遮断弁23と燃料電池10の導出口12bとの間に介装される調圧弁16は制御装置24に電気的に接続され、酸化剤流路12を開閉し酸化剤オフガスの通過量を制御することにより燃料電池10内の酸化剤ガスの圧力制御を行なう。調圧弁16は、各種の動力により駆動可能に構成することができ、例えば、モータ、ソレノイドなどを用いることができる。
【0022】
圧送装置21と第1遮断弁22との間の酸化剤供給管25からは圧縮空気バイパス管27が分岐され、オフガス排出管26の第2遮断弁23の下流側に接続されている。圧縮空気バイパス管27の途中には、圧縮空気バイパス管27を開閉する開閉弁27aが設けられている。開閉弁27aは、制御装置24からの指示に従って開閉制御され、酸化剤供給管25を通って燃料電池10に供給される酸化剤ガスの流量の制御を行なうものである。開閉弁27aは、各種の動力により駆動可能に構成することができ、例えば、モータ、ソレノイドなどを用いることができる。
【0023】
次に第1の実施形態において第1遮断弁22、及び第2遮断弁23である本発明に係る遮断弁30について主に図2、図3、図4に基づいて説明する。図2は、後述する遮断弁30の弁部42aが後述する弁座33と当接して閉弁状態にある閉鎖位置Aを示し、図3は遮断弁30の弁部42aが弁座33から僅少距離だけ離間している状態である僅少離間位置Bを示している。また図4は、遮断弁30の弁部42aが弁座33から僅少離間位置Bよりもさらに離間している状態である開放位置Cを示している。なお、僅少離間位置B及び開放位置Cについては後に詳述する。
【0024】
遮断弁30は、弁体35と、弁本体34と、弁作動装置であるコイルばね38と、弁体35と一体的に形成された軸部材36と、弁本体34と一体的に形成され軸部材36を案内孔37aで保持案内する案内部37と、軸部材36に形成された第1嵌合部39、第2嵌合部40、及び第1嵌合部39と第2嵌合部40との間に形成された小径部47とを有している。
【0025】
弁体35は、円筒外周壁41aと底壁41bとを備えカップ状に形成された基部41と、底壁41bから円筒外周壁41aの軸線と同軸に図2において下方に段付きで突設される円柱部35aと、円柱部35aの段付きの外周面に一体成型によって設けられた弁部基材42と、を有している。弁部基材42は円柱部35aと同軸に形成され、円柱部35aの下面よりも所定量だけ突出して環状に形成された弁部42aを有している。弁部42aの断面形状は凸状であり、弁部42aは本第1の実施形態においてはゴム製(例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム))である。
【0026】
なお、第1の実施形態においては弁部基材42の材料としてEPDMを使用したがこれに限らない。遮断弁30内を通過させる流体の種類、及び許容遮断量(透過量)等に応じて、適宜変更すればよく、例えばNBR(ニトリルゴム)やFKM(フッ素ゴム)等を使用することができる。
【0027】
円柱部35aは基部41の底壁41bと軸線中心部で連結されており、軸線中心部での連結部以外の円柱部35aと底壁41bとの間には後述するダイヤフラム43が進入するための所定の隙間が形成されている。
【0028】
基部41の円筒外周壁41aの外周、及び底壁41bの中心部を除く下面には弾性材(例えば、基布入りゴム:材質EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム))によって形成されたダイヤフラム43が接着材等によって貼付されている。底壁41b下面においてダイヤフラム43は前述した円柱部35aと底壁41bとの間に形成された隙間に進入し円柱部35aと底壁41bとによって挟持されている。
【0029】
ダイヤフラム43は図2において円筒外周壁41aの上端近傍で外周方向に円環状に延在し外縁部には環状のシール部43aを備えている。そしてシール部43aは後述する弁本体34を構成する通路部材44のフランジ44bに形成された溝44cに配設されている。通路部材44の上方からは、下方が開口するカップ形状を呈した蓋部材45が取付けられる。これによって蓋部材45のフランジ45aと通路部材44のフランジ44b(溝44c)とがダイヤフラム43のシール部43aを挟持して潰しシール部43aの内周側と外周側とを気密に分離する。
【0030】
弁本体34は、前述した通路部材44と、通路部材44と一体的に固定される前述した蓋部材45と、を有している。そして通路部材44は第1通路31、第2通路32、及び第1通路31と第2通路32との間に介在し環状に形成された弁座33とを備えている。
【0031】
第1通路31は、第1遮断弁22においては圧送装置21から圧送された酸化剤ガスが導入される通路であり、第2遮断弁23においては燃料電池10の導出口12bから調圧弁16を介して排出された酸化剤オフガスが第2遮断弁23内の弁座33と弁部42aとの間を通過後に流動する酸化剤オフガスの排出側の通路である。
【0032】
図2に示すように、第1通路31は、通路部材44の内部に形成され、通路部材44の内部空間が、基部41に貼付されるダイヤフラム43と、弁部基材42とによって区画されて形成されている。
【0033】
通路部材44は図2における左方に、第1遮断弁22においては圧送装置21、また第2遮断弁23においては大気に開放されているオフガス排出管26と接続を行なう連結フランジ44dを有している。また通路部材44の底壁44eには、弁部42aと同軸で、かつ弁部42aの円環外径よりも径小に形成される貫通孔44fが設けられている。そして底壁44eの上面で貫通孔44fの外周縁には遮断弁30が閉弁状態(閉鎖位置A)となるときに弁部42aが当接する弁座33が良好な平面度を有して形成されている。弁座33は第1通路31と後述する第2通路32との間に介在し、第1通路31と第2通路32とを分離している。
【0034】
そして底壁44eの下面には貫通孔44fと同軸に円筒部44gが固定され、円筒部44gの図略の端部には第1遮断弁22においては燃料電池10の導入口12aに連結される酸化剤供給管25が、また、第2遮断弁23においては燃料電池10の排出口12bと調圧弁16を介して連結されるオフガス排出管26が連結するためのフランジ(図略)が形成されている。
【0035】
第2通路32は、第1遮断弁22においては、弁部42aと弁座33との間とを通過した酸化剤ガスの通路であり、また第2遮断弁23においては、燃料電池10の排出口12bから調圧弁16を介して排出された酸化剤オフガスの導入通路である。
【0036】
第2通路32は通路部材44の内部空間、及び円筒部44gの内部空間が弁体35を構成する円柱部35aの下面と弁部基材42の弁部42a内周側面とによって区画されて形成されている。
【0037】
弁作動装置は、弁部42aが弁座33と当接する閉鎖位置Aと弁部42aが弁座33から離間する開放位置Cとの間で弁体35を移動させるためのものであり、第1の実施形態においてはコイルばね38である。
【0038】
コイルばね38は蓋部材45と、弁体35を構成する基部41の底壁41bとの間に縮接され、弁体35を弁座33方向に付勢している。このようにコイルばね38は、弁体35を所定の付勢力で付勢することによって開放位置Cまで開弁された弁体35を閉鎖位置Aに移動させるとともに、弁部42aを弁座33に押圧して第1通路31から第2通路32に、または第2通路32から第1通路31に流体が漏洩しないように閉止する。
【0039】
なお、コイルばね38は、第1遮断弁22においては、圧送装置21から比較的高い圧力の酸化剤ガスが供給されるため、圧送装置21からの高い圧送圧力に応じた付勢力の大きなコイルばね38が配設されている。また、第2遮断弁23においては、酸化剤ガスが燃料電池10によって消費されるので圧力が減少し、該圧力減少した酸化剤オフガスが第2遮断弁23に供給されるので低下した圧力に応じた付勢力が小さなコイルばね38が配設されている。
【0040】
軸部材36は円柱形状を呈し、弁体35を構成する基部41の底壁41bと一体的に形成され、底壁41bの上面の軸心に沿って上方に突出している。軸部材36の軸線は弁部42aの凸状の先端部によって形成される仮想平面に対して直角になるように形成されている。
【0041】
案内部37は円筒形状を呈し、案内孔37aを内部に有して弁本体34を構成する蓋部材45の天壁45bの下面から、弁本体34を構成する弁座33平面に対して軸線が直角になるように垂下している。
【0042】
案内孔37aには軸方向に移動する軸部材36が進入し、案内孔37aの内周面が軸部材36に形成される第1嵌合部39、及び第2嵌合部40の外周面と嵌合して軸部材36を保持案内している。また案内孔37aの底面(図2において上方)には軸部材36の上方の空気を逃がすための空気孔46が外気と連通して貫設されている。ただし空気孔46は、軸部材36がスムーズに移動可能であれば設けなくてもよい。また案内孔37a入口部にはR部が設けられており後述する第2嵌合部40がスムーズに案内孔37aに進入できるように構成されている。これにより、軸部材36の第1嵌合部39、及び第2嵌合部40が案内孔37aに進入するとき、図2に示すように案内孔37aの入口部のR部終点から案内孔37aと第1嵌合部39、及び第2嵌合部40との嵌合が開始される。
【0043】
次に軸部材36に形成される第1嵌合部39、第2嵌合部40、及び第1嵌合部39と第2嵌合部40との間に設けられる小径部47について説明する。第1嵌合部39は、弁部42aが弁座33と当接する閉鎖位置Aと弁部42aが弁座33から僅少距離だけ離間する後に詳述する僅少離間位置Bとの間で弁体35(弁部42a)が進退移動するとき、第1嵌合部39のみで案内部37の案内孔37aに嵌合して弁体35を揺動(傾き)可能に案内するものである。このため、第1嵌合部39は軸部材36の先端部に軸部材36の軸線と同軸で円板状に形成され、案内孔37aの内周面との間に所定の隙間を有し軸線方向の長さが比較的短くなるように形成されている。そして第1嵌合部39の下方である第2嵌合部40との間には第1嵌合部39、及び第2嵌合部40の外径よりも小径に形成された小径部47が形成されている。
【0044】
このように、軸線方向の長さが短い第1嵌合部39のみで軸部材36(弁体35)が支持されると、長い嵌合部で支持した軸部材の場合と比較して軸部材36には大きな揺動(傾き)が許容される。そして、このとき第1嵌合部39と第2嵌合部40との間には小径部47が介在しているため、軸部材36が第1嵌合部39の嵌合によって揺動しても小径部47が揺動を阻害することはない。これにより閉鎖位置Aと、僅少離間位置Bとの間において弁体35の弁部42aは比較的大きく弁座33近傍を軸線方向、及び軸線と直交する方向に移動することができる。これにより弁部42aは弁座33と傾きを有して当接しても、当接後に弁部42aが揺動されて弁座33に倣い、適切に弁座33と当接することができるので良好なシール性能を得ることができる。
【0045】
第2嵌合部40は、弁部42aが僅少離間位置Bを越えて開弁するときに、案内孔37aと嵌合することによって第1嵌合部39と共同で長い嵌合部を形成し弁体35の揺動を規制するものである。よって第2嵌合部40は、僅少離間位置Bにおいて案内孔37aとの嵌合が開始されるように構成されている。これにより第2嵌合部40と第1嵌合部39との間の距離は少なくとも僅少離間位置Bと閉鎖位置Aとの間の距離だけ軸線方向に離間して形成される。なお、本実施形態においては第2嵌合部40の外径は第1嵌合部39と同じ径で形成されている。しかし、第2嵌合部40の外径は、第1嵌合部39の外径と同径である必要はなく、制御したい軸部材36の傾きの大きさに応じて第2嵌合部40の外径を第1嵌合部39の外径より大きくしたり、小さくしたりしてもよい。
【0046】
また本第1の実施形態においては第1嵌合部39と第2嵌合部40との間の距離は僅少離間位置Bと閉鎖位置Aとの間の距離を越えて設定している。これにより第2嵌合部40が案内孔37aに嵌合した後には第1嵌合部39と第2嵌合部40とによって形成されるより長い嵌合部によって精度よく揺動が抑制できる。
【0047】
ここで、僅少離間位置Bについて、図2乃至図4に基づいて詳細に説明する。例えば僅少離間位置Bを越える開放位置Cにおいても、弁部42aが弁座33に対して設計上の公差範囲内においても発生してしまう所定の傾きを有する場合がある。このような状態で弁部42aが僅少離間位置B方向に接近し、さらに僅少離間位置Bを越えると、第2嵌合部40が案内孔37aから外れ、弁部42aは第1嵌合部39のみの嵌合によって大きな揺動が許容されるようになる。これにより僅少離間位置Bと閉鎖位置Aとの間の距離が大きすぎると弁部42は閉鎖位置Aまでの間に大きく揺動されて弁座33から外れてしまい、弁座33に良好に当接できず、弁座33に倣ってもシール性能を満足できない虞がある。
【0048】
また、僅少離間位置Bと閉鎖位置Aとの間の距離が小さいと、軸部材36が揺動しながら移動できる弁部42aと弁座33との間の範囲が小さくなる。このため、それまで第1嵌合部39、及び第2嵌合部40によって揺動(傾き)、及び弁座33に対しての傾きを規制されていた軸部材36の弁部42aは、第2嵌合部40が案内孔37aから外れても弁座33までの距離が近いため大きく揺動されることなく弁座33に良好に当接させることができる。しかし、このとき第2嵌合部40は案内孔37aから外れた直後であるため第2嵌合部40の近傍には案内孔37aの内周面が位置している。これにより弁座33に当接させた一点を支点として弁部42aの先端全周を弁座33に当接させる方向に回転させると第2嵌合部40の第1嵌合部39側の端部が案内孔37aの内周面と当接し弁部42aの回転を阻害して弁部42aが弁座33に当接できない虞がある。
【0049】
以上のように案内孔37aから第2嵌合部40の嵌合が外れる位置によってはシールできない場合が発生する。そこでそのようなシールできない場合を除外するために第2嵌合部40の嵌合が外れる位置を予め規定する必要がある。僅少離間位置Bはそのようなシールできない場合を除外するためのものであり、本発明においては閉鎖位置Aからの距離によって規定している。
【0050】
そして、本第1の実施形態においては、弁部42aが弁座33に対して設計上の公差の範囲で傾きを有した状態においても僅少離間位置Bでは弁部42aと弁座33とは接触せず、若干の隙間を有しているように設定している。
【0051】
開放位置Cとは弁部42aが弁座33から僅少離間位置Bよりも離間した状態をいい、開放位置Cにおいては、第2嵌合部40が案内孔37aに進入して嵌合し、第1嵌合部39、及び第2嵌合部40によって軸部材36の弁部42aの揺動、及び弁座33に対しての傾きを規制している。
【0052】
次に、このように構成された燃料電池システムの作動について説明する。燃料電池システムが起動され通常運転が開始されると圧送装置21が駆動されて酸化剤ガスが第1遮断弁22の第1通路31の入出口31aを介して圧送される。このとき弁体35はコイルばね38によって弁座33方向に付勢され弁部42aが弁座33と当接し、第1通路31と第2通路32とを遮断している。
【0053】
このときの軸部材36に設けられた第1嵌合部39、及び第2嵌合部40と案内孔37aとの位置関係は図2に示す通りであり、第1嵌合部39のみが案内孔37aに嵌合している。
【0054】
そして圧送される酸化剤ガスの圧力が上昇し、弁体35を弁体35の移動方向である上方に付勢する力がコイルばね38の付勢力を越えると弁部42aが弁座33から離間して開弁する。
【0055】
そして、図3に示す僅少離間位置Bを通過して図4に示す開放位置Cに到達する。本発明においては僅少離間位置Bにおいて第2嵌合部40が案内孔37aに進入を開始する。
【0056】
そして、弁体35が僅少離間位置Bを越えて上方に移動すると第2嵌合部40が案内孔37aと嵌合する。このように第1嵌合部39と、第2嵌合部40とによって軸部材36の軸の揺動が良好に規制されている。
【0057】
このようにして弁体35が上方に移動し、弁部42aと弁座33との間の開口面積が大きくなり、所定流量の酸化剤ガスが燃料電池10の導入口12aを介して酸化剤流路12に供給される。
【0058】
また、このような作動状態において、燃料電池10に供給する酸化剤ガスの流量調整は、酸化剤供給管25から分岐された圧縮空気バイパス管27に設けられた開閉弁27aを、制御装置24によって開閉させ、酸化剤ガスをオフガス排出管26から排出することによって行なう。また、燃料電池10の酸化剤流路12内圧力は、導出口12bの下流側に設けられた調圧弁16の開閉によって調整している。
【0059】
このように所定の圧力、及び流量に制御された燃料電池10の酸化剤極の酸化剤ガスと、水素極に供給された所定の圧力の水素とが、電解質膜を介して反応し発電する。そして燃料電池10で消費されずに残った酸化剤ガスは燃料電池10の導出口12bから酸化剤オフガスとして導出される。また第1の実施形態においては導出口12bの下流側に調圧弁16を介して本発明に係る第2制御弁23が設けられている。
【0060】
第2制御弁23の第2通路32には調圧弁16から排出された酸化剤オフガスが導入されている。このとき酸化剤オフガスの圧力は燃料電池10の導入口12aに圧送された酸化剤ガスの圧力よりも低い。これにより低い圧力に見合った小さな付勢力を有するコイルばね38の付勢力を越えて酸化剤オフガスの圧力が弁体35を上方に付勢したとき、第1制御弁22と同様の作動によって弁体35が弁座33から離間して開弁し、酸化剤オフガスを第1通路31からオフガス排出管26に流し大気に開放する。
【0061】
次に、燃料電池システムの運転が停止される場合か、または酸化剤ガス、及び酸化剤オフガスの供給圧力が設定値を下回った場合の作動について説明する。なお、遮断弁の動作は同様であるので燃料電池システムの運転が停止される場合について説明する。
【0062】
燃料電池システムの運転が停止されると、制御装置24の指令によって圧送装置21の駆動が停止され、酸化剤ガスの圧送が停止されて圧送装置21に連結される酸化剤供給管25内を大気圧とする。そして第1遮断弁22の第1通路31内が大気圧となるため、弁体35を上方に付勢しなくなる。これにより開放位置Cにある弁体35がコイルばね38によって弁座33の方向に付勢され移動を開始する。なお、このとき弁体35が有する弁部42aは弁座33に対して設計上の公差の範囲で所定の傾きを有しているとする。
【0063】
次に、このときの弁体35の作動について詳細に説明する。運転停止前の燃料電池システムの運転時においては、開放位置Cにある弁体35は図4に示す状態である。このとき弁体35と一体的に形成される軸部材36の第1嵌合部39、及び第2嵌合部40はともに案内部37の案内孔37aに嵌合されている。これにより軸部材36(弁体35)は第1嵌合部39から第2嵌合部40までのトータルの長さと、案内孔37aの内周面との間の隙間分に応じて、案内孔37aの軸線に対する傾きが精度よく規制されている。これにより軸部材36(弁体35)は案内孔37aと直角に形成されている弁座33との間の直角が保持されている。
【0064】
そして燃料電池システムの運転が停止されると前述の通り第1遮断弁22の第1通路31内が大気圧となり、軸部材36(弁体35)はコイルばね38によって弁座33の方向に付勢され移動を開始する。弁部42aが開放位置Cを移動中には第1嵌合部39、及び第2嵌合部40が案内孔37aに嵌合されるので、前述のとおり弁部42aは弁座33に対して設計上の公差の範囲内で所定の傾きを有した状態で精度よく揺動が規制されている。
【0065】
次に図3に示す弁部42aが僅少離間位置Bを通過するときには、第2嵌合部40が案内孔37aから外れ、第1嵌合部39のみが案内孔37aに嵌合される状態となる。そして、第2嵌合部40が案内孔37aから外れた時点においては、軸部材36の弁部42aは、弁座33との間に若干の隙間のみが設けられるように設定されているので、さらに弁座33に向かって移動しても大きく揺動されることなく弁部42aの一点を弁座33に良好に当接させることができる(図5参照)。
【0066】
また、このように僅少離間位置Bにおいては弁部42aと弁座33とは接触せず、若干の隙間を有している。これにより若干の隙間分を弁部42aが弁座33方向に移動している間に、第2嵌合部40も案内孔37aから若干の隙間分だけ離間する(逃げる)。これにより図5に示すように弁部42aが、弁座33と当接し、該当接した一点を支点として弁部42aの先端全周を弁座33に当接させる方向に回転させても、第2嵌合部40の第1嵌合部39側の端部が案内孔37aの内周面と当接して弁部42aの回転を阻害することはない。これによって弁部42aは、図6に示すように確実に弁座33に当接して閉鎖位置Aを実現し良好に流体をシールすることができる。
【0067】
図7は従来の遮断弁、および本発明に係る遮断弁30の弁体の傾き角度に対する弁部と弁座との間からの漏れ量についての比較実験結果である。なお、ここでいう従来技術とは、本発明において案内孔37aに係合した軸部材36の第1嵌合部39及び第2嵌合部40を分離せず、1つの嵌合部のみによって軸部材(弁体)の傾きを制御するものである。つまり従来技術においては弁部が弁座に当接されても軸部材の傾きは修正されず、弁部は設計上許容される範囲内の傾きを保持したまま弁座に当接されるものである。
【0068】
また、図7の本発明における弁体35の傾きとは、軸部材36が第1嵌合部39のみによって嵌合されている閉鎖位置Aから僅少離間位置Bまでの間の傾きのことではなく、第1嵌合部39及び第2嵌合部40によって嵌合されている僅少離間位置Bから開放位置Cまでの間の傾きをいう。
【0069】
従来の遮断弁の結果は黒丸で示し、本発明に係る遮断弁30の結果は菱形で示している。図7の横軸は弁体の傾き角度であり、縦軸は、前後差圧を1kPaとした時の弁座と当接する弁部からの漏れ量を示している。図7を見てわかるように、従来の遮断弁においては弁体の傾きが0.5度を若干超えたあたりから漏れ量が増大しており、この0.5度を若干超えたあたりが漏れの発生角度(理論値)であると判定できる。
【0070】
しかし本発明品においては従来の遮断弁において漏れ量が増大した0.5度を若干超えたあたりでは全く漏れは発生していない。そして2.0度に近づくとようやく漏れの発生が確認でき、漏れ発生角度(理論値)は図に示す位置であると判定できる。このように従来技術品に対し本発明の遮断弁30のシール性能は明らかに向上しており、効果があることがわかる。なお、図7における弁体の傾き角度、及び漏れ量の具体的な数値については、所定の実験条件における一結果であって、特別な意味を持つものではない。
【0071】
また、本第1の実施形態においては、弁体35の弁部42aにゴムを用いたがこれに限らず金属によって形成してもよい。
【0072】
上述した説明から明らかなように、本第1の実施形態においては、弁部42aが弁座33と当接する閉鎖位置Aと弁部42aが弁座33から僅少距離だけ離間する僅少離間位置Bとの間で弁体35が移動するときに、第1嵌合部39が案内孔37aに嵌合して弁体35を揺動可能に案内する。このとき第1嵌合部39と第2嵌合部40との間には第1嵌合部39、及び第2嵌合部40よりも小径の小径部47が設けられている。よって第1嵌合部39は揺動を阻害されることなく確実に揺動することができる。これにより設計上の公差によって弁部42aが弁座33に対して所定の角度を有していても弁部42aは揺動されて弁座に倣い弁座33と適切に当接することができるので良好なシール性を確保することができる。
【0073】
また、弁部42aが弁座33から僅少距離以上離間すると第2嵌合部40が案内孔37aに勘合して弁体35の揺動を規制する。このように弁体35は僅少離間位置Bから開放位置Cまでの間においては、揺動されることなく所定の位置に安定して保持される。そのため弁部42aを弁座33と当接させるために弁座33に向かって移動させ、弁部42aが僅少離間位置Bに達して第2嵌合部40が案内孔37aから外れるときにも、弁部42aは弁座33の近傍に位置している。これにより僅少離間位置Bから閉鎖位置Aまでの間で、弁体35が第1嵌合部39のみによって案内孔37aに案内され揺動可能な状態で弁部42aが弁座33に倣っても弁部42aが弁座33から外れてしまうことはない。よって弁部42aは良好に弁座33に当接することができるので好適にシール性を確保することができる。このように簡易で低コストな構造によって良好なシール性能を有する遮断弁の小型化、簡素化、及びコスト低減を図ることができる。
【0074】
また、本第1の実施形態においては、燃料電池10の酸化剤流路12の導入口12aとその導入口12aに酸化剤ガスを圧送する圧送装置12との間に、第1遮断弁22であるシール性に優れた遮断弁30が介装されている。また、燃料電池10の酸化剤流路12の導出口12bにも、調圧弁16を介して第2遮断弁23である遮断弁30が接続されている。これにより、燃料電池システムの停止運転の際に、確実に、第1および第2遮断弁22、23(遮断弁30)を閉弁することができ、延いては燃料電池10の酸化剤流路12を確実に密封することができる。このように、小型化、簡素化、コスト低減を図ることができる遮断弁30を備えることで、燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減、及び信頼性の向上を図ることができる。また、燃料電池システムの停止中に、第1および第2遮断弁22、23を遮断することで、燃料電池の酸化剤流路12を密封することができ気密性が保たれるので、外部からの空気の流入は抑制され、燃料電池のカーボン劣化を抑制できる。
【0075】
次に、図8に示す第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の遮断弁50は第1の実施形態の遮断弁30に対し、軸部材51のみが異なるので、変更点のみを説明し、同様部分については説明を省略する。また同様の構成については同じ符号を付し説明する。
【0076】
第2の実施形態に係る遮断弁50の軸部材51は球R形状を呈した第1嵌合部52と1嵌合部52の直径と同径の軸部によって形成された第2嵌合部53とを有している。第1嵌合部52は、弁部42aが弁座33と当接する閉鎖位置Aと弁部42aが弁座33から僅少距離だけ離間する僅少離間位置Bとの間で弁体35(弁部42a)が移動するとき、第1嵌合部52のみで案内部37の案内孔37aに嵌合して弁体35を揺動(傾き)可能に案内する。
【0077】
第1嵌合部52は、球R形状であるので第1嵌合部52と案内孔37aとの間の隙間は第1嵌合部52の球R形状に沿って連続的に変化して充分確保され、これによって第1の実施形態と同様の揺動の効果が得られる。
【0078】
そして、弁体35が僅少離間位置Bを越えると第2嵌合部53が案内孔37aに嵌合して弁体35の揺動を規制する。このように第2の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0079】
なお、第2の実施形態においては球R形状の図8における上方に図に示す突部(2点鎖線)が形成されていてもよい。つまり第1嵌合部52は軸部材51の端部に形成される必要はない。
【0080】
次に図9に示す第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態の遮断弁30に代えて電動モータ付の遮断弁60を使用するものである。第1の実施形態と異なる部材のみ説明し、同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
【0081】
遮断弁60は、弁体65と、弁本体64と、弁作動装置であるコイルばね68、および電動モータ59と、弁体65と一体的に形成された軸部材66と、弁本体64と一体的に形成され軸部材66を案内孔67aで保持案内する案内部67と、軸部材66に形成された第1嵌合部69、および第2嵌合部70と、を有している。
【0082】
弁体65は、キノコ状に形成された基部65bと、基部65bに設けられた環状の弁部65aと、軸部材66とを有している。
【0083】
弁本体64は、通路部材71と、通路部材71に形成される第1通路61と、第2通路62と、第1通路61と第2通路62との間に介在し環状に形成された弁座63とを有している。
【0084】
弁作動装置は、後述する弁部65aが弁座63と当接する閉鎖位置Aと弁部65aが弁座63から離間する開放位置(図略)との間で弁体65を移動させるためのものであり、第3の実施形態においては電動モータ59とコイルばね68とによって構成されている。
【0085】
コイルばね68は弁体65を電動モータ59側に付勢している。そして電動モータ59は押動部59aを往復動させ、弁体65を図9において下方に付勢して移動させるとともに、押動部59aを上方に移動させることによりコイルばね68によって弁体65の弁部63を弁座63に押圧させ流体をシールする。
【0086】
軸部材66は円柱形状を呈し、弁体65を構成する基部65bと一体的に形成され、基部65bの上面中心から上方に突出している。軸部材66の軸線は弁部65a平面に対して直角になるように形成されている。
【0087】
案内部67は弁本体64を構成する通路部材71に設けられ、案内部67の案内孔67aは、弁本体64を構成する弁座63平面に対して軸線が直角になるように貫通している。
【0088】
案内孔67aには軸方向に進退移動する軸部材66が進入し案内孔67aの内周面と、軸部材66が有する第1嵌合部69、及び第2嵌合部70の外周面との間で軸部材66を保持案内している。
【0089】
第1嵌合部69は、軸部材66の外周部にリング状で、且つ軸線方向に短く形成されている。そして弁部65aが弁座63と当接する閉鎖位置Aと弁部65aが弁座63から僅少距離だけ離間する僅少離間位置(図略)との間を弁体65(弁部65a)が移動するとき、第1嵌合部69のみで案内部67の案内孔67aに嵌合して弁体65を揺動可能に案内する。
【0090】
そして弁部65aが僅少離間位置よりも弁座63から離間する開放位置(図略)に移動すると、図9に示す第2嵌合部70が案内孔67aに進入する。これによって第1嵌合部69と第2嵌合部70とが一つの長い嵌合部を形成して軸部材66は揺動を規制される。また第1嵌合部69と第2嵌合部70との間には円柱状の小径部72とテーパ形状の小径部73とを有している。これにより第1嵌合部69は揺動を阻害されることなく確実に揺動できる。このように構成された遮断弁60によっても第1の実施形態と同様の効果が期待できる。
【0091】
次に図10に示す第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の遮断弁80は、第3の実施形態の遮断弁60に対して軸部材の形状のみ異なる。よって異なる部分のみ説明し、同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
【0092】
第4の実施形態に係る遮断弁80の軸部材86の第1嵌合部78は、 弁部65aが弁座63と当接する閉鎖位置Aと弁部65aが弁座63から僅少距離だけ離間する僅少離間位置(図略)との間で移動するときに第1嵌合部78のみで案内部67の案内孔67aに嵌合して弁体65を揺動可能に案内するものである。第1嵌合部78の形状は図8に示す第2の実施形態の軸部材51の第1嵌合部52のように球R形状を有している。これによって第1嵌合部78と案内孔67aとの間の隙間は第1嵌合部78の球R形状に沿って連続的に変化し、これによって揺動するのに充分な大きさの隙間が得られ軸部材66が揺動可能に保持案内される。これによって第1嵌合部78によって第2の実施形態と同様の揺動の効果が得られる。
【0093】
そして弁部65aが僅少離間位置よりも弁座63から離間する開放位置に移動すると図10に示す第2嵌合部79(2点鎖線の上方)が案内孔67aに進入する。これによって第1嵌合部78と第2嵌合部79とが一つの長い嵌合部を形成して軸部材86は揺動を規制される。このように構成された遮断弁80によっても第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0094】
なお、本実施形態においては第1通路31、61側を流通気体である酸化剤ガスの入力側としたが、これに限らず、第2通路32、62側を酸化剤ガスの入力側とし第1通路31、61側を出力側としてもよい。これによっても同様の効果が得られる。
【0095】
また、本実施形態を適用する燃料電池システム1は、燃料電池自動車(FCHV)、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両に搭載することができるが、もちろん車両のみならず各種移動体(例えば、船舶や飛行機、ロボットなど)や定置型電源にも適用可能である。
【0096】
また、本発明に係る遮断弁30は燃料電池の燃料流路11の導入口、及び導出口を遮断するために導入口の上流側、及び導出口の下流側に設けてもよい。さらに酸化剤流路12の導出口12b下流に設ける調圧弁として使用してもよい。
【0097】
さらに、本実施形態においては、遮断弁30を燃料電池システム1に設けたが、これに限らず、気体を確実に閉止するための各種機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
10…燃料電池、11…燃料流路、12…酸化剤流路、12a…導入口、12b…導出口、21…圧送装置(コンプレッサ)、22、23…第1および第2遮断弁、24…制御装置、25…酸化剤供給管、26…オフガス排出管、27…圧縮空気バイパス管、27a…開閉弁、30、50、60、80…遮断弁、31、61…第1通路、32、62…第2通路、33、63…弁座、34、64…弁本体、35、65…弁体、36、51、66、86…軸部材、37、54、67…案内部、37a、54a、67a…案内孔、38、68…弁作動装置(コイルばね)、39、52、69、78…第1嵌合部、40、53、70、79…第2嵌合部、41、65b…基部、42…弁部基材、42a、65a…弁部、43…ダイヤフラム、47、72、73…小径部、59…弁作動装置(電動モータ)、A…閉鎖位置、B…僅少離間位置、C…開放位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通路、前記第1通路と連通する第2通路、および前記第1通路と前記第2通路との間に介在し環状に形成された弁座が形成された弁本体と、
前記弁座に対して進退移動し、前記弁座と接離可能な環状の弁部が形成された弁体と、
前記弁体に前記弁部と直角な軸線方向に突出して一体的に形成された円柱状の軸部材と、
前記弁本体に設けられて前記軸部材を内周面で保持案内する案内孔が前記弁座と直角な軸線方向に形成された案内部と、
前記弁部が前記弁座と当接する閉鎖位置と前記弁座から離間する開放位置との間で前記弁体を移動させる弁作動装置と、
を備えた遮断弁において、
前記軸部材は、
前記弁部が前記弁座と当接する前記閉鎖位置と前記弁部が前記弁座から僅少距離離間する僅少離間位置との間で前記弁体が移動するとき、前記案内孔に嵌合して前記弁体を揺動可能に案内する第1嵌合部と、
前記弁部が前記弁座から前記僅少距離以上離間すると前記案内孔に嵌合し前記揺動を規制して前記弁体を案内する第2嵌合部と、
を有することを特徴とする遮断弁。
【請求項2】
請求項1において、前記第1嵌合部は前記軸部材の先端部に形成され、前記第2嵌合部は前記第1嵌合部から少なくとも前記僅少距離軸線方向に離間して形成され、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間に前記第1および第2嵌合部より小径の小径部が形成されていることを特徴とする遮断弁。
【請求項3】
燃料が供給される燃料流路と酸化剤ガスが供給される酸化剤流路を有する燃料電池と、
前記酸化剤流路の前記酸化剤ガスを導入する導入口に前記酸化剤ガスを圧送する圧送装置と、
前記圧送装置と前記燃料電池との間に介装され前記圧送装置と前記燃料電池との連通を遮断する第1遮断弁と、
前記酸化剤流路からオフガスを導出する導出口を遮断する第2遮断弁と、を備え、
前記第1および第2遮断弁として請求項1または請求項2に記載の遮断弁を使用することを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−72807(P2012−72807A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216857(P2010−216857)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】