説明

遮水シートの破損検出システム及び破損検出方法

【課題】汚染土壌を覆って敷設された遮水シートの破損の有無を簡易な構成によってチェックできる遮水シートの破損検出システムを提供する。
【解決手段】汚染土壌11を覆って保護遮水シート13を敷設すると共に、保護土層12を形成して地盤面12aを有効利用できるようにした地盤造成区域10において用いられ、保護遮水シート13の破損の有無を管理する破損検出システムであって、保護遮水シート13を排水勾配Xを持たせて敷設すると共に、保護土層12の部分を、保護遮水シート13から立設する遮水壁15によって複数のブロック16に区画し、各ブロック16の上流側部分に水位観測孔17を設けると共に、下流側部分の遮水壁15に通水孔18を開閉可能に設け、各ブロック16毎に、通水孔18を閉じた状態で水を貯留し、貯留した水の水位が所定時間低下しないことで、当該各ブロック16の保護遮水シート13が破損していないことを確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水シートの破損検出システム及び破損検出方法に関し、特に、廃棄物を含む汚染土壌を地中に封じ込めるために、汚染土壌の上部を覆って敷設された保護遮水シートの破損の有無を管理して、汚染物質が外部に漏出しないようにする遮水シートの破損検出システム及び破損検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場等の廃棄物を含む汚染土壌が地中に埋設された地盤では、汚染土壌によって周囲の環境に悪影響が及ぶのを回避できるように、例えば廃棄物処分場の底面に敷設した遮水シートの破損を検出できるようにしたり、底面に敷設した遮水シートの破損が検出された際に汚水が周囲の地盤に漏出するのを防止するための種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、廃棄物処分場等の廃棄物を含む汚染土壌が地中に埋設された地盤では、地盤面を例えば公園やその他の施設として有効利用しようとする場合、地中に埋設された汚染土壌による影響が生じないようにする対策として、例えば汚染土壌を撤去して、汚染されていない土砂と入れ替える置換工法や、汚染土壌の周囲を遮水性を有する地盤や部材によって囲んで封印することにより、汚染物質が外部に漏出しないようにする封じ込め工法が考えられるが、置換工法は、大掛かりな工事となり、費用が膨大となってしまうことから、封じ込め工法が採用されることが多い。
【0004】
封じ込め工法では、汚染土壌の底部を例えば不透水層や遮水シートによって覆うと共に、汚染土壌の側部を例えば不透水層まで打ち込んだ鋼矢板による鉛直遮水壁や遮水シートによって覆い、さらに汚染土壌の上部を遮水シートによって覆った後、上部の遮水シートの上方に保護土層を形成することにより、この保護土層による地盤面を、例えば公園やその他の施設として有効利用できるようにすることが可能になる。
【特許文献1】特開平6−63526号公報
【特許文献1】特開平10−15517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、封じ込め工法によって、汚染土壌が地中に埋設された地盤の地盤面を公園等として有効利用しようとする場合、汚染土壌の上部を覆う遮水シートに破損が生じると、例えば地盤面に降り注いだ雨水等が破損箇所から汚染土壌の内部に流入すると共に、破損箇所を介して内部の汚染水が流出して、周囲の環境に影響を及ぼすおそれがある。このため、遮水シートの破損の有無を定期的にチェックする必要があると共に、地震の発生時等においても、遮水シートの破損の有無を検査する必要がある。
【0006】
一方、汚染土壌の上部を覆う遮水シートは、汚染土壌の内部の汚染水による水圧が常時負荷された状態にあるものではないため、汚染土壌の底部に敷設された遮水シートの如く、遮水シートに生じる破損の有無を常時綿密に管理する必要はない。従って、底部に敷設された遮水シートに対して開発された上記特許文献1、特許文献2等に記載された従来の破損検出システムや破損検出方法を、汚染土壌の上部を覆って敷設された遮水シートについて適用するのは、設備が大掛かりになると共にコスト高となる。このようなことから、より簡易な構成によって、汚染土壌の上部を覆って敷設された遮水シートの破損の有無をチェックできるようにする新たな破損検出システム及び破損検出方法の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、簡易な構成によって、汚染土壌の上部を覆って敷設された遮水シートの破損の有無をチェックできる遮水シートの破損検出システム及び破損検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、廃棄物を含む汚染土壌を地中に封じ込めるために、該汚染土壌の上部を覆って保護遮水シートを敷設すると共に、該保護遮水シートの上方に透水性土砂材料からなる保護土層を形成し、該保護土層による地盤面を有効利用できるようにした地盤造成区域において用いられ、前記保護遮水シートの破損の有無を管理して汚染土壌から汚染物質が外部に漏出しないようにする遮水シートの破損検出システムであって、前記保護遮水シートを排水勾配を持たせて敷設すると共に、前記保護土層の部分を、前記保護遮水シートから立設する遮水壁によって複数のブロックに区画し、各ブロックの上流側部分に水位観測孔を設けると共に、下流側部分の前記遮水壁の下端部分に通水孔を開閉可能に設けておき、各ブロック毎に、前記通水孔を閉じた状態で水を供給して当該各ブロックに水を貯留し、貯留した水の水位が所定時間低下しないことで、当該各ブロックの保護遮水シートが破損していないことを確認できるようにした遮水シートの破損検出システムを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の遮水シートの破損検出システムによれば、前記保護遮水シートは、上下の面が上層不織布及び下層不織布によって覆われた状態で敷設されることが好ましい。
【0010】
また、本発明の遮水シートの破損検出システムによれば、前記遮水壁は、遮水シートの両面を不織布で覆って構成されるシート材料を用いて形成されることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の遮水シートの破損検出システムによれば、前記保護遮水シートは、所定の勾配を有するように前記汚染土壌の上方に敷き均された基礎砕石層の上面に敷設されることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明の遮水シートの破損検出システムによれば、前記通水孔にブロック貫通管が挿通されると共に、該ブロック貫通管と接続して前記遮水壁の下流側に開閉バルブが設けられ、該開閉バルブを開閉することにより、前記通水孔が開閉されることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記遮水シートの破損検出システムを用いた遮水シートの破損検出方法であって、前記各ブロック毎に、前記通水孔を閉じた状態で水を供給して当該各ブロックに水を貯留し、貯留した水の水位が所定時間低下しないことで、当該各ブロックの保護遮水シートが破損していないことを確認検査する遮水シートの破損検出方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0014】
そして、本発明の遮水シートの破損検出方法によれば、上流側のブロックに水を貯留して保護遮水シートが破損していないことの確認検査を行い、当該上流側のブロックにおける確認検査が終わったら、前記通水孔を開放して貯留された水を下流側のブロックに流下させ、当該下流側のブロックにおいて適宜水を供給補充しつつ水を貯留して、保護遮水シートが破損していないことの確認検査を行うことにより、上流側のブロックから下流側のブロックに向けて各ブロックの保護遮水シートが破損していないことを順次確認するようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の遮水シートの破損検出システム及び破損検出方法によれば、簡易な構成によって、汚染土壌の上部を覆って敷設された遮水シートの破損の有無をチェックすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい一実施形態に係る遮水シートの破損検出システムは、図1に示すように、例えば従来は廃棄物処分場として使用されていた3〜4ha程度の広さの領域を地盤造成区域10として、図2及び図3に示すように、廃棄物を含む汚染土壌11を地中に封じ込めると共に、汚染土壌11の上方に保護土層12を形成することにより、この保護土層12による地盤面12aを例えば公園として有効利用する際に、汚染土壌11の上部を覆って敷設される保護遮水シート13の破損の有無を検出し、破損箇所を介して汚染土壌11の内部の汚染水が流出することにより周囲の環境に影響を及ぼすのを効果的に回避できるようにするために採用されたものである。
【0017】
すなわち、本実施形態では、地盤造成区域10は、投入された廃棄物を含む汚染土壌11の底部が例えば不透水層によって覆われると共に(図示せず。)、汚染土壌11の側部が、例えば不透水層まで2.5m以上の根入長で打ち込まれ、且つ継手部にポリウレタン樹脂製の膨潤性止水材が充填された鋼矢板による鉛直遮水壁14によって覆われている。また、本実施形態では、汚染土壌11の上部を覆って保護遮水シート13が敷設されることにより、不透水層、鉛直遮水壁14、及び保護遮水シート13によって全体を覆われて、汚染土壌11が地中に封じ込められている。本実施形態の遮水シートの破損検出システムは、簡易な構成によって、汚染土壌11の上部を覆って敷設された保護遮水シート13の破損の有無を効率良くチェックすることができるようにするものである。なお、本実施形態では、鉛直遮水壁14の上端部と保護遮水シート13との接合は、例えば嵩コンクリート34を介在させたボルト結合35によって、水密に行われるようになっている(図2参照)。
【0018】
そして、本実施形態の遮水シートの破損検出システムは、図1〜図3に示すように、廃棄物を含む汚染土壌を地中11に封じ込めるために、この汚染土壌11の上部を覆って保護遮水シート13を敷設すると共に、保護遮水シート13の上方に透水性土砂材料からなる保護土層12を形成し、この保護土層12による地盤面12aを有効利用できるようにした地盤造成区域10において用いられ、保護遮水シート13の破損の有無を管理して汚染土壌11から汚染物質が外部に漏出しないようにする破損検出システムであって、保護遮水シート13を排水勾配Xを持たせて敷設すると共に、保護土層12の部分を、保護遮水シート13から立設する遮水壁15によって複数のブロック16に区画し、各ブロック16の上流側部分に水位観測孔17を設けると共に、下流側部分の遮水壁15の下端部分に通水孔18を開閉可能に設けておき、各ブロック16毎に、通水孔18を閉じた状態で水を供給して当該各ブロック16に水を貯留し、貯留した水の水位が所定時間低下しないことで、当該各ブロック16の保護遮水シート13が破損していないことを確認できるようにしたものである。
【0019】
また、本実施形態では、保護遮水シート13は、上下の面が上層不織布19a及び下層不織布19bによって覆われた状態で敷設されており(図5参照)、遮水壁15は、遮水シート20の両面を不織布21で覆って構成されるシート材料22を用いて形成されている(図4参照)。
【0020】
さらに、本実施形態では、通水孔18にブロック貫通管29が挿通されると共に、このブロック貫通管29と接続して遮水壁15の下流側に開閉バルブ30が設けられ、この開閉バルブ30を開閉することにより、通水孔18が開閉されるようになっている。
【0021】
本実施形態では、保護遮水シート13は、廃棄物処分場に敷設される遮水シートとして公知の、例えば軟質の合成樹脂系、或いはゴム系のシート材料からなる例えば1.0〜2.0mm程度の厚さの保護シートを用いることができる。より具体的には、例えばポリプロピレンからなる、厚さが1.5mm程度のシート材料を好ましく用いることができる。また保護遮水シート13は、1枚のシート材料で地盤造成区域10の全体を覆うことは困難であることから、施工に適した所定の大きさの単位遮水シートを、敷設作業現場において、例えば熱溶着や接着剤を介した圧着により、その端部を重ね合わせて接合一体しつつ、例えば1%程度の傾斜の排水勾配Xを備えるように敷設されることになる。
【0022】
ここで、本実施形態では、地盤造成区域10は、当該地盤造成区域10の中央部分を横断するようにして設けられた尾根部23(図1参照)を境として、第1排水区24aと、第2排水区24bとに2分割されている。第1排水区24aでは、地盤造成区域10の南西の角部分に向かって排水勾配Xが設けられていると共に、第2排水区24bでは、地盤造成区域10の北東の角部分に向かって排水勾配Xが設けられている。また各排水区24a,24bの排水勾配Xによって流下してきた保護土層12の内部の水は、例えば地盤造成区域10の南西の角部分や北東の角部分において、例えば最下流部分のブロック16’に設けられたブロック貫通管29を下流側に延設させることにより形成した接続管36を介して、地盤造成区域10の外側に設けられた雨水排水暗渠25に流入する(図2参照)。流入した水は、この雨水排水暗渠25を介して、地盤造成区域10の南側や北側に設けられた雨水貯留施設26に向けて流下してゆくことになる(図1参照)。
【0023】
また、本実施形態では、保護遮水シート13は、例えば1%程度の傾斜の所定の勾配を有するように汚染土壌11の上方に敷き均された基礎砕石層27の上面に沿って敷設されることにより(図2、図3参照)、排水勾配Xを備えることになる。すなわち、本実施形態では、基礎砕石層27は、汚染土壌11の上方に、例えば150〜300mm程度の厚さで設けられ、ブルドーザーやその他の各種の転圧機を用いて、所定の勾配を有する平坦な転圧面を保護遮水シート13の敷設面として容易に形成することが可能である。またこれによって、基礎砕石層27の上面に沿って敷設される保護遮水シート13に、所定の排水勾配Xを容易に付与することが可能になる。
【0024】
さらに、本実施形態では、基礎砕石層27の内部に、汚染土壌11に近接する下層部分に配置されて、間隙水圧制御管28が設けられている。間隙水圧制御管28は、例えばφ100mm程度の厚肉塩化ビニル製の有孔管からなり、保護遮水シート13の排水勾配Xと同様の勾配を有するように配設される。間隙水圧制御管28は、例えば汚染土壌11の内部の地下水が上昇した際の排水設備として機能し、汚染土壌11の内部の水を適宜流入させる。この間隙水圧制御管28を介して、流入した水を雨水排水暗渠25に排出することができるようになっている(図2参照)。また間隙水圧制御管28が設けられていることにより、地震時等における汚染土壌11の液状化を効果的に防止することができるようになっている。
【0025】
基礎砕石層27の上面に沿って敷設される保護遮水シート13は、上述のように、例えばポリプロピレン製のシート材料からなり、上下の面が上層不織布19a及び下層不織布19bによって覆われた状態で敷設される。ここで、上層不織布19a及び下層不織布19bとしては、例えば土木工事用に用いられる公知の各種の不織布を用いることができ、各々例えば10mm程度の厚さで設けられる。上層不織布19a及び下層不織布19bによって保護遮水シート13の上下の面が覆われていることにより、保護遮水シート13を効果的に保護して、例えば突起物等との接触によって保護遮水シート13が破損するのを回避することが可能になる。
【0026】
また、本実施形態の破損検出システムよって保護遮水シート13に破損箇所が存在すると判断された際に、上層不織布19aや下層不織布19bを基材として、例えば水位観測孔17から公知の各種の流動性に優れた注入固化材を修復材として注入し、上層不織布19aや下層不織布19bに浸透させることにより、保護土層12を掘削することなく破損箇所を補修することが可能になる。なお、上層不織布19aや下層不織布19bは、予め保護遮水シート13に一体として接合しておき、保護遮水シート13と共に基礎砕石層27の上面に沿って敷設することもできる。
【0027】
保護遮水シート13の上方に形成される保護土層12は、透水性土砂材料として、例えば砂質土や礫質土を、公知の各種の方法によって敷均し転圧することにより、例えば500mm程度の厚さで造成される。本実施形態では、保護土層12は、その表面が、保護遮水シート13の排水勾配Xと同様の勾配を備えると共に、地盤造成区域10の略全体に亘って略一定の厚さとなるように形成される。また保護土層12には、第1排水区24aや第2排水区24bを複数のブロック16に区画する遮水壁15や、水位観測孔17、ブロック貫通管29、開閉バルブ30等が埋設配置される。
【0028】
本実施形態では、遮水壁15は、遮水シート20の両面を不織布21で覆って構成されるシート材料22を用いて形成されている。遮水シート20は、保護遮水シート13と同様の、例えばポリプロピレンからなる厚さが1.5mm程度の保護シートを用いて形成される。また保護遮水シート13と同様に、両面に不織布21が予め一体として接合されたシート材料22として施工される。遮水シート20を保護遮水シート13に水密に接合すると共に、ブロック16の角部分において交差する他の遮水壁15の遮水シート20と水密に接合した状態で、シート材料22が例えば保護遮水シート13から450mm程度の高さで立設することにより、各ブロック16の四方を囲む遮水壁15を形成する。またシート材料22による遮水壁15は、地盤面12aとの間に50mm程度の被り厚さ残して保護土層12に埋設される。
【0029】
これによって、地盤造成区域10の第1排水区24a及び第2排水区24bは、遮水壁15により縦横に仕切られて整列配置された、例えば一辺の長さが30m程度、面積が1000m2程度の大きさの複数のブロック16に区画されることになる。
【0030】
各ブロック16の上流側部分に設けられる水位観測孔17は、例えばφ100mm程度の厚肉塩化ビニル製の有孔管からなり、下端開口面を保護遮水シート13の上に載置すると共に、保護土層12を貫通して上端開口面を地盤面12aに開口させて、立設した状態で保護土層12に埋設される。この水位観測孔17を介して、各ブロック16の保護土層12に適宜注水することができるようになっている。また、この水位観測孔17の内部を水位を観測して、各ブロック16の保護土層12内の水位の変化を把握することができるようになっている。さらに、上述のように、保護遮水シート13に破損箇所が存在すると判断された際に、この水位観測孔17を介して、上層不織布19aや下層不織布19bに流動性に優れた注入固化材を注入することができるようになっている。なお、水位観測孔17の上端開口面には、開閉蓋31が着脱可能に取り付けられる。
【0031】
各ブロック16の下流側部分の遮水壁15に開口形成された通水孔18に挿通されるブロック貫通管29は、例えばφ100mm程度の厚肉塩化ビニル製の有孔管からなる。ブロック貫通管29は、これの外周面を通水孔18の開口縁部に水密に接合した状態で、上流側のブロック16の下流側部分と、下流側のブロック16の上流側部分とに跨って配設される。またブロック貫通管29は、例えば300mm程度の長さで上流側のブロック16に突出配置されると共に、全体として800mm程度の長さで保護遮水シート13の上面に沿って設置される。
【0032】
ブロック貫通管29の下流側のブロック16に配される部分には、開閉バルブ30が取り付けられており、この開閉バルブ30を開閉することによって、通水孔18を適宜開閉することができるようになっている。なお、ブロック貫通管29は、通水孔18が開口形成された遮水壁15と開閉バルブ30との間の部分が、周面の小孔が閉塞された無孔部分29aとなっている。これによって、開閉バルブ30を閉塞した際に、上流側のブロック16に貯留された水が、ブロック貫通管29の周面の小孔を介して下流側のブロック16に流入しないようになっている。
【0033】
なお、本実施形態では、有孔管からなる間隙水圧制御管28、水位観測孔17、及びブロック貫通管29は、これらの外周面をフィルター材(図示せず。)で覆った状態で地中に埋設されることにより、周面の小孔の目詰りを効果的に防止できるようになっている。
【0034】
ブロック貫通管29と接続して遮水壁15の下流側に設けられる開閉バルブ30は、例えば水道管等に取り付けて用いられる公知の各種のバルブ装置を用いることができる。開閉バルブ30は、遮水壁15を挟んだ下流側のブロック16においてブロック貫通管29に接続される。また開閉バルブ30は、下端開口面を保護遮水シート13の上に載置すると共に、保護土層12を貫通して上端開口面を地盤面12aに開口して設けられたマンホール33の内部に収容された状態で、保護土層12に埋設される。なお、マンホール33の上端開口面には、開閉蓋32が着脱可能に取り付けられる。
【0035】
そして、上述の構成を備える本実施形態の遮水シートの破損検出システムでは、以下のような検出方法によって、保護遮水シート13が破損していないことを容易に確認することができる。すなわち、各ブロック16毎に、通水孔18を閉じた状態で水を供給して当該各ブロック16に水を貯留し、貯留した水の水位が例えば数時間〜半日程度の所定時間経過しても低下しないことで、当該各ブロックの保護遮水シートが破損していないことを確実に確認することが可能になる。
【0036】
また、本実施形態では、各排水区24a,24bにおいて、上流側のブロック16に水を貯留して保護遮水シート13が破損していないことの確認検査を行い、当該上流側のブロック16における確認検査が終わったら、開閉バルブ30の開閉操作により通水孔18を開放して貯留された水を下流側のブロック16に流下させ、当該下流側のブロック16において適宜水を供給補充しつつ水を貯留して、保護遮水シート13が破損していないことの確認検査を行うことができる。これによって、上流側のブロック16から下流側のブロックに向けて、各ブロック16の保護遮水シート13が破損していないことを、順次効率良く確認することが可能になる。
【0037】
これらによって、本実施形態によれば、簡易な構成によって、汚染土壌11の上部を覆って敷設された保護遮水シート13の破損の有無を容易且つ確実にチェックすることが可能になる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、各ブロックへの水の供給は、水位観測孔を介して行う必要は必ずしもなく、保護土層の地盤面から直接行うこともできる。また、各ブロックの下流側部分の遮水壁に開口形成した通水孔を開閉する手段は、開閉バルブである必要は必ずしもなく、その他の種々の開閉手段を採用することができる。さらに、遮水壁は、遮水シートの両面を不織布で覆って構成されるシート材料を用いて形成する必要は必ずしもなく、その他の種々の構成の遮水壁によって、地盤造成区域を複数のブロックに区画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る遮水シートの破損検出システムが採用された地盤造成区域を説明する略示平面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る遮水シートの破損検出システムの構成を説明する略示断面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る遮水シートの破損検出システムの構成を説明する略示断面図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係る遮水シートの破損検出システムの構成を説明する図3のA−Aに沿った断面図である。
【図5】保護遮水シートが敷設された部分の層構成を説明する部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 地盤造成区域
11 汚染土壌
12 保護土層
12a 保護土層による地盤面
13 保護遮水シート
14 鉛直遮水壁
15 遮水壁
16 ブロック
17 水位観測孔
18 通水孔
19a 上層不織布
19b 下層不織布
20 遮水シート
21 不織布
22 シート材料
23 尾根部
24a 第1排水区
24b 第2排水区
25 雨水排水暗渠
26 雨水貯留施設
27 基礎砕石層
28 間隙水圧制御管
29 ブロック貫通管
29a ブロック貫通管の無孔部分
30 開閉バルブ
X 排水勾配

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を含む汚染土壌を地中に封じ込めるために、該汚染土壌の上部を覆って保護遮水シートを敷設すると共に、該保護遮水シートの上方に透水性土砂材料からなる保護土層を形成し、該保護土層による地盤面を有効利用できるようにした地盤造成区域において用いられ、前記保護遮水シートの破損の有無を管理して汚染土壌から汚染物質が外部に漏出しないようにする遮水シートの破損検出システムであって、
前記保護遮水シートを排水勾配を持たせて敷設すると共に、前記保護土層の部分を、前記保護遮水シートから立設する遮水壁によって複数のブロックに区画し、
各ブロックの上流側部分に水位観測孔を設けると共に、下流側部分の前記遮水壁の下端部分に通水孔を開閉可能に設けておき、
各ブロック毎に、前記通水孔を閉じた状態で水を供給して当該各ブロックに水を貯留し、貯留した水の水位が所定時間低下しないことで、当該各ブロックの保護遮水シートが破損していないことを確認できるようにした遮水シートの破損検出システム。
【請求項2】
前記保護遮水シートは、上下の面が上層不織布及び下層不織布によって覆われた状態で敷設される請求項1に記載の遮水シートの破損検出システム。
【請求項3】
前記遮水壁は、遮水シートの両面を不織布で覆って構成されるシート材料を用いて形成される請求項1又は2に記載の遮水シートの破損検出システム。
【請求項4】
前記保護遮水シートは、所定の勾配を有するように前記汚染土壌の上方に敷き均された基礎砕石層の上面に敷設される請求項1〜3のいずれかに記載の遮水シートの破損検出システム。
【請求項5】
前記通水孔にブロック貫通管が挿通されると共に、該ブロック貫通管と接続して前記遮水壁の下流側に開閉バルブが設けられ、該開閉バルブを開閉することにより、前記通水孔が開閉される請求項1〜4のいずれかに記載の遮水シートの破損検出システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の遮水シートの破損検出システムを用いた遮水シートの破損検出方法であって、前記各ブロック毎に、前記通水孔を閉じた状態で水を供給して当該各ブロックに水を貯留し、貯留した水の水位が所定時間低下しないことで、当該各ブロックの保護遮水シートが破損していないことを確認検査する遮水シートの破損検出方法。
【請求項7】
上流側のブロックに水を貯留して保護遮水シートが破損していないことの確認検査を行い、当該上流側のブロックにおける確認検査が終わったら、前記通水孔を開放して貯留された水を下流側のブロックに流下させ、当該下流側のブロックにおいて適宜水を供給補充しつつ水を貯留して、保護遮水シートが破損していないことの確認検査を行うことにより、上流側のブロックから下流側のブロックに向けて各ブロックの保護遮水シートが破損していないことを順次確認する請求項6に記載の遮水シートの破損検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−69044(P2009−69044A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239002(P2007−239002)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】