説明

遷移金属を用いた化学反応による置換テトラサイクリンの調製方法

【課題】新規置換テトラサイクリン化合物の合成法と該化合物の提供。
【解決手段】テトラサイクリンジアゾニウム塩及びテトラサイクリンのハロゲン化誘導体から選択される反応性テトラサイクリンベース前駆化合物を、パラジウム触媒及び銅触媒から選択される遷移金属触媒の存在下で、π結合を含むアルケン類、置換アルケン類、ビニルモノマー類、芳香族及びヘテロ芳香族化合物などの反応性有機置換基に接触、反応させ、7位及び/又は9位置換テトラサイクリン化合物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属を用いた化学反応による置換テトラサイクリンの調製方法に関する。
関連出願
本出願は1999年9月14日に提出された米国同時係属仮出願第60/154,701号、及び2000年9月12日に提出された米国仮出願、代理人整理番号第PKZ-018-2号に関連し、両出願の内容全体を、引用をもって本願明細書の記載に代える。
【背景技術】
【0002】
テトラサイクリン抗生物質は、殺菌及び/または静菌成分を産生する能力のある微生物の証拠を得るために、世界中の多数の地域から採取した土壌検体を系統的にスクリーニングした結果が直接開発につながった。これら新規化合物の第一号は、1948年にクロルテトラサイクリンという名称で導入された。その二年後、オキシテトラサイクリンが入手可能となった。これらの薬剤の詳細な化学構造が解明され、それらの類似性が確認されたことにより、その分析学的な基礎が1952年に生成された第三号であるテトラサイクリンの生成につながった。1957年までには、初期の組成物に存在した、環の第6位に結合するOH基が存在しないという化学的特徴を有する、新規のテトラサイクリン組成物が調製され、1967年に一般に入手できるようになった。また、ミノサイクリンは1972年までに使用されるようになった。下記の表1に、個々のテトラサイクリン型薬剤の構造を比較する。その際、以下の構造式を参照することとする。
【0003】
【化1】

【0004】
【表1】

【0005】
さらに最近の研究では、多様な治療条件及び投与経路において有効な新規テトラサイクリン抗生組成物の開発、及び1948年に始まる初期に導入されたテトラサイクリン類に同等な、またはさらに有効であると証明される新規のテトラサイクリン類似体の開発に主眼がおかれている。このような開発の代表的なものには、米国特許第3,957,980号、第3,674,859、2,980,584号、第2,990,331号、第3,062,717号、第3,557,280号、第4,018,889号、第4,024,272号、第4,126,680号、第3,454,697号、及び第3,165,531号が含まれる。これらの発行済み特許は、薬理学的に活性なテトラサイクリン及びテトラサイクリン類似体組成物を探索する、多様な範囲にわたる研究の代表例にすぎないことは理解されるであろう。
【0006】
歴史的に、テトラサイクリン類は、初期のテトラサイクリン類の開発及び導入の直後において、化学式や化学的構造が特定されていなかったにもかかわらず、リケッチア、多種のグラム陽性及びグラム陰性細菌、並びに性病性リンパ肉芽種、封入体性結膜炎、及びオウム病の病原因子に対して薬理学的に高い効果があることが判明した。したがって、テトラサイクリン類は広域スペクトル抗生物質として知られるようになった。その後、インビトロにおける抗菌活性、実験的感染における有効性、及び薬理学的特性が確立され、テトラサイクリンは優れた薬剤として、急速に治療用途に広く用いられるようになった。しかし、重症、軽症いずれの疾患にもテトラサイクリン類を広く使用したことが、直接、これら抗生物質に対する耐性を、例えば肺炎球菌及びサルモネラ菌などの感受性の高い片利共生及び病原性細菌種のいずれにも発現させる結果となった。テトラサイクリン耐性生物が増加したために、第一選択抗生物質としてのテトラサイクリン及びテトラサイクリン類似体組成物の使用は全般的に減少した。
【0007】
本発明の概要
本発明は、顕著な抗菌活性を示す置換テトラサイクリン化合物を含む置換テトラサイクリン化合物の生成を可能にする新規化学反応に関連する。ここに開示される方法は、反応性テトラサイクリンベース前駆化合物、反応性有機置換基前駆体、及び遷移金属類または遷移金属触媒を、望ましい有機置換基で置換したテトラサイクリン化合物が形成されるような条件下において利用する。本発明のある実施態様では、置換テトラサイクリン化合物は、アレーンテトラサイクリンジアゾニウム塩などの反応性テトラサイクリンベース前駆化合物と、アルケン類、置換アルケン類、ビニルモノマー類、芳香族及びヘテロ芳香族などの反応性有機置換基前駆体とを、塩化パラジウムなどの遷移金属触媒の存在下、有機置換基で置換されたテトラサイクリン化合物が形成されるような条件下で混合することにより調製してよい。別の実施態様では、置換テトラサイクリン化合物は、反応性テトラサイクリンベース前駆化合物及び遷移金属または遷移金属触媒を含み反応性化学的中間体を形成するようなテトラサイクリン化学錯体と、反応性有機置換基前駆体とを、有機置換基で置換されたテトラサイクリン化合物が形成されるような条件下で接触させることにより調製してよい。
【0008】
別の実施態様では、本発明は、化学的中間体を形成する反応性テトラサイクリンベース前駆化合物及び遷移金属触媒を含み、本発明に有利に用いることができる反応性テトラサイクリン化学錯体に関連する。
【0009】
さらに別の実施態様では、置換テトラサイクリン類似体で、例えば7、9、13位などの望ましい位置に-C-C-結合で置換基(ここではZと表示)を結合させ、その置換基が芳香族またはヘテロ芳香族部分を有する類似体を開示する。置換基は、例えば
【0010】
【化2】

【0011】
のように-C-C-結合に隣接する-C=C-結合も含み、ここでR2及びR3はそれぞれ独立して水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、水酸基、シアノ器、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、またはR2及びR3の両方で5から15原子を該環において有する置換または非置換炭素環またはヘテロ環を形成する。
【0012】
ここに開示される方法及び化学中間体は、新規の置換テトラサイクリン型化合物並びにこのような化合物を含む治療方法及び薬学的組成物を可能にするものである。
【0013】
本発明の方法は、反応性中間体(好ましい実施例ではテトラサイクリンアレーンジアゾニウム塩を含む)を望ましい位置に形成し、例えばp結合を有する化合物などの反応性化合物を遷移金属触媒の存在下でその位置に結合させることを含む方法を介して、上述のZ置換基を基本的なテトラサイクリン環構造上に提供することを含む。この反応性中間体はインシチューにおいて形成されてよい。有利な実施態様では、このような置換基はテトラサイクリンの基本環構造のD環上、例えば7位及び/または9位などに提供される。さらに有利な実施態様では、このような置換は13位において行う。このような合成スキームはこれまでにおいてこの分野では新規であり、異なる及び/またはこれまでの複雑な置換基を望ましい位置に直接置換することを有利にすることを可能にする。
【0014】
本発明の化合物は、テトラサイクリン感受性バクテリア及びテトラサイクリン耐性バクテリアの両方を含む感受性の微生物に対して活性である。本発明において特に好ましい化合物の、テトラサイクリン耐性大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、及びE.フェカリス(E.faecalis)株、例えば大腸菌 pHCM1、黄色ブドウ球菌 RN4250 及びE.フェリカス pMV15824などに対する24時間最少発育阻止濃度(MIC)は約10mg/mL以下で、さらに好ましくは約1mg/mL以下である。本発明の好ましい化合物には、テトラサイクリン感受性の大腸菌、黄色ブドウ球菌、及びE.フェカリス株、例えば 大腸菌D31m4、黄色ブドウ球菌 RN450及びE.フェカリス ATCC9790などに対してもこのようなMICを示すものも含まれる。
【0015】
本発明は、細菌、真菌、リケッチア、及び寄生虫などの微生物、並びにこれらの微生物に関連する疾患に対する治療の方法を提供する。この治療方法は一般に、細菌、真菌、及びリケッチアなどの感受性微生物に感染する、またはそれらに感受性を持つ生被験体に、本発明の一種類以上の化合物を治療に有効な量投与することを含む。治療に適切な被験体には、動物、特にヒトなどの哺乳類、または植物が含まれる。
【0016】
本発明の一種類以上の化合物を含む薬学的組成物及び適切な担体も提供する。
【0017】
本発明の詳細な説明
本発明は、後述の定義を参照することによりさらに完全に具体的に説明されるであろう。
【0018】
「テトラサイクリン」または「テトラサイクリン型」という術語は、テトラサイクリン、及びその他のテトラサイクリン系である例えばオキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ケロカルジン、ミノサイクリン、ロリテトラサイクリン、リメサイクリン、サンサイクリン、メタサイクリン、アピサイクリン、クロモサイクリン、グアメサイクリン、メグルサイクリン、メピルサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、エタモサイクリン、ペニモサイクリンなど、さらに発明の背景に記載したナフタセンA-B-C-D環構造を特徴とするその他のテトラサイクリン化合物を含むことを意図する。さらに、ここに記載されるテトラサイクリン環の位置番号は、前述の構造式に記載されたものと同一である。
【0019】
「反応性テトラサイクリンベース前駆化合物」または「RTベース前駆化合物」には、テトラサイクリン環構造の反応性位置である例えば7、9、または13位などを有し、反応性テトラサイクリンベース前駆化合物の置換がここに開示されるように行われる結果置換テトラサイクリン化合物を形成するようなテトラサイクリンが含まれる。RTベース前駆化合物の例には、当業に公知のテトラサイクリン化合物ファミリーからの誘導体が含まれる。このようなテトラサイクリン化合物ファミリーには、ミノサイクリン、ドキシサイクリン及びサンサイクリン化合物が、これらに限定されることなく含まれる。
【0020】
「ミノサイクリンベース前駆化合物」には、ミノサイクリンの骨格構造を有する化合物が含まれることが意図され、その骨格構造には、テトラサイクリンの骨格構造と比べて、ジメチルアミノ基が7位に存在し、6位のメチル基及び水酸基が欠如し、5位の水酸基が欠如しているところが異なる。ミノサイクリンベース前駆化合物の骨格構造を、以下に図示する。
【0021】
【化3】

【0022】
ミノサイクリン前駆化合物は、例えば5位及び6位以外の位置を置換、非置換または誘導してもよいと理解されなければならない。例えば、8位などの骨格構造のその他の位置を置換または非置換し、2位のアミド基などのその他の位置を置換または誘導してもよい。適切な置換基には、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、カルボキサミド基、カルボキシエステル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、炭素環基またはヘテロ環基などの部分、及びそれらの組み合わせが含まれる。その他の置換基は当業者に公知であろう。さらに、前述の化学式中のRは、メチル基以外の、エチル基、プロピル基などの低級アルキル基などの基を表している。反応性ミノサイクリンベース前駆化合物には、9-ジアゾニウムミノサイクリンベース化合物、9-ヨードミノサイクリンベース化合物、9-ブロモミノサイクリンベース化合物、及び9-クロロミノサイクリンベース化合物を、それらに限定されずに含まれている。
【0023】
「ドキシサイクリンベース前駆化合物」には、ドキシサイクリンの骨格構造が含まれることが意図され、その骨格構造には、テトラサイクリンの骨格構造と比べて、6位の水酸基が水素に置換され、5位の水素が水酸基に置換されているところが異なる。ドキシサイクリンベース前駆化合物の骨格構造を、以下に図示する。
【0024】
【化4】

【0025】
ドキシサイクリン前駆化合物は、例えば7位、8位及び/または9位などを置換、非置換または誘導することもできると理解されなければならない。例えば、8位などの骨格構造のその他の位置を置換または非置換し、5位の水酸基または2位のアミド基などのその他の位置を置換または誘導してもよい。適切な置換基には、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、カルボキサミド基、カルボキシエステル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、炭素環基またはヘテロ環基などの部分、及びそれらの組み合わせが含まれる。その他の置換基は当業者に公知であろう。さらに、前述の化学式のRは、メチル基以外の、エチル基、プロピル基などの低級アルキル基などの基を表している。反応性ドキシサイクリンベース前駆化合物には、7-及び/または9-ジアゾニウムドキシサイクリンベース化合物、7-及び/または9-ヨードドキシサイクリンベース化合物、7-及び/または9-ブロモドキシサイクリンベース化合物、及び7-及び/または9-クロロドキシサイクリンベース化合物を、それらに限定されずに含まれている。
【0026】
「サンサイクリンベース前駆化合物」には、サンサイクリンの骨格構造を有する化合物が含まれることが意図され、その骨格構造には、テトラサイクリンの骨格構造と比べて、6位のメチル基が水素に置換され水酸基が水素に置換されているところが異なる。サンサイクリンベース前駆化合物の骨格構造を、以下に図示する。
【0027】
【化5】

【0028】
サンサイクリン前駆化合物は、例えば7位、8位及び/または9位などを置換、非置換または誘導することもできると理解されなければならない。例えば、8位などの骨格構造のその他の位置を置換または非置換し、2位のアミド基などのその他の位置を置換または誘導してもよい。適切な置換基には、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、カルボキサミド基、カルボキシエステル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、炭素環基またはヘテロ環基などの部分、及びそれらの組み合わせが含まれる。その他の置換基は当業者に公知であろう。反応性サンサイクリンベース前駆化合物には、7-及び/または9-ジアゾニウムサンサイクリンベース化合物、7-及び/または9-ヨードサンサイクリンベース化合物、7-及び/または9-ブロモサンサイクリンベース化合物、及び7-及び/または9-クロロサンサイクリンベース化合物を、それらに限定されずに含まれている。好ましい実施態様では、反応性テトラサイクリンベース前駆化合物はアレーンテトラサイクリンジアゾニウム塩、及び交互にヨード誘導化テトラサイクリン化合物または二重結合を有し例えば13位でボロン酸誘導体と反応するテトラサイクリン化合物である。ある実施例では、反応性テトラサイクリンベース前駆化合物及び遷移金属触媒は、当業に知られる技術を介して新規テトラサイクリン類を生成するために有用な反応性化学中間体を形成する(例えばその内容を本願明細書に引用したものとするHegedus, Transition Metals in the Synthesis of Complex Organic Molecules, University Science Books, Mill Valley, CA, 1994を参照)。反応性化学中間体は、好ましくはインシチューにおいて反応性有機置換基前駆体を用いて形成する。
【0029】
「遷移金属触媒」とは、当業に公知の術語で、例えば原子番号21から29、39から47、57から79、及び89以上の元素を含む遷移金属及び遷移金属を含む触媒を含む。例示的な遷移金属触媒には、CuCl2、銅 (I)トリフレート、塩化銅チオフェン、塩化パラジウム (II)、酢酸パラジウム、Pd(PPh3)4、Pd(AsPh3)4、PdCl2(PhCN)2、PdCl2(Ph3P)2、Pd2(dba)3-CHCl3 (“dba”=ジベンジルアセトン)などの有機パラジウム触媒、及びそれらの組み合わせが含まれる。その他の遷移金属触媒には、ロージウム(例えば酢酸ロージウム(II)及びRh6(CO)16)、鉄、イリジウム、クロム、ジルコニウム、及びニッケルなどの金属を含有するものが含まれる。当業者は、既存の文献(例えばその内容を本願明細書に引用したものとするLipshutz, B.H. Org. React. 1992, 41:135を参照)に基づいて、必要な反応を行うために適切な遷移金属触媒を選択することができるであろう。
【0030】
「反応性有機置換基前駆体」には、ここに開示される反応性テトラサイクリンベース前駆化合物への付加が可能な反応基を有する有機置換基が含まれる。好ましくは、反応性有機置換基前駆体は、少なくとも一つの反応基を含む。ある実施態様では、反応性有機置換基前駆体には、メチレン化合物、アリールボロン酸類、活性芳香族環類及び非置換及び置換オレフィン類及びアルキン類、ニトリル類、アセチレン類、置換アセチレン類、アリールエチレン類、スチレン類、共役ジエン類、イソプレン類、ビニルエーテル類、a,b-不飽和アルデヒド及びケトン、アリールビニル及びアリールイソプレニルケトン類、ヨードアルケン類及びヨードアレーン類、キノン類、a,b-不飽和酸類並びにそれらの誘導体などの、p結合種が含まれてよい。
【0031】
「反応性有機置換基前駆体」には、反応性中間体と反応して必要なテトラサイクリン類似体を形成する化合物(インシチューにおいて形成されてもよい)も含まれる。例えば、反応性中間体を交換金属反応させて、トリブチルスズ化合物及び二有機銅酸リチウムなど他の有機金属錯体と反応させて多種の類似体を形成させてもよい(例えばその内容を本願明細書に引用したものとする Kalanin, Synthesis, 1992, 413; Sawamuru, Chem. Rev. 1992, 92:857; Negeishi, Acct. Chem. Res., 1982, 15:340を参照)。その他の前駆体には、遷移金属含有中間体と反応性がある結合を有する化合物を含む、遷移金属触媒反応に適切な前駆体が含まれる。このような前駆体には、例えばハロゲン基、水酸基、トリフレート基、チオール基、アミノ基を有する化合物が含まれる。反応性有機置換基前駆体が反応性化学中間体に結合する、または会合するような、分子内反応も含まれる(Hegedus、同上、参照)。
【0032】
本発明の化合物には7位置換テトラサイクリン類似体、9位置換テトラサイクリン類似体、及び13位置換テトラサイクリン類似体が含まれる。これらの化合物は一般化学式、
【0033】
【化6】

により示され、ここで、Z1、Z2、及びZ3は個別にHまたは
【0034】
化2であり、R2及びR3は水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、またはR2及びR3の両方で5から15原子を有する置換されたまたは置換されていない炭素環またはヘテロ環を形成し、R1はHまたはOHである。
【0035】
別の実施態様では、R2は水素であり、R3
【化7】


であり、ここでR4は水素、シアノ基、またはC1-C5アルコキシ基である。別の実施態様では、R1及びR2の両方で5から15原子を有する置換されたまたは置換されていない炭素環またはヘテロ環を該環において形成し、その環は好ましくはC5からC8までの共役または非共役の芳香族環系であってよい。
【0036】
Zに入る適切な置換基には、
【化8】


が含まれる。
【0037】
別の態様では、本発明は置換テトラサイクリン化合物、望ましくは7、9、または13位置換化合物の調製方法も提供し、別の態様では、この方法により調製されたテトラサイクリン化合物を提供する。その化合物は後述のスキームに一般化して記載されたとおりに調製することができる。スキームの考察において、各種置換基は前に定義したものと同一で、RはR2及びR3を含む。また、例示の目的のみのために、ドキシサイクリンを「ベース」テトラサイクリン化合物と表現するが、多様なテトラサイクリン化合物を同様に用いることができることは理解されるであろう。例えば、7、9、及び/または13位を適切に置換したベーステトラサイクリン化合物は、オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ケロカルジン、ミノサイクリン、ロリテトラサイクリン、リメサイクリン、サンサイクリン、メタサイクリン、アピサイクリン、クロモサイクリン、グアメサイクリン、メグルサイクリン、メピルサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、エタモサイクリン、ペニモサイクリン、及び合成途中におけるそれらの中間体などであってよい。
【0038】
本発明のテトラサイクリン化合物は、以下のスキームに概説される方法によって容易に調製することができる。スキームIは、化学式1に示される、臨床で有用なドキシサイクリンという名称のテトラサイクリン抗生物質を開始化合物として調製することができる、テトラサイクリン化合物の調製を示す。6-(置換基)-5-ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン (1, R2=CH3, ドキシサイクリン)またはその鋼酸塩を適切な溶媒としての例えばH2SO4 などの濃酸に溶解し、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムなどのニトロ化剤と反応させて7及び9-ニトロテトラサイクリン誘導体(2, 3)を生成することができることが明らかになっている。これらの化合物を様々な技術により分離させるが、好ましい方法は、メタノール勾配をつけたリン酸緩衝エチレンジアミンテトラ酢酸、ナトリウム塩(EDTA)、またはアセトニトリル勾配をつけた0.1%トリフルオロ酢酸のいずれかを含む二成分勾配系を用いたC18逆相シリカゲルによる分取HPLCである。この単離化合物は、遷移金属触媒を用いた水素、酸化白金、または炭素担持パラジウムなどの一般的な還元剤を用いてアミン官能基に容易に還元され、7-NH2および9-NH2テトラサイクリン(4, 5)をよい収率で生成する。代替的に、7-NH2テトラサイクリン(ドキシサイクリン)は、7-(N,Nジカルボキシベンジルオキシヒドラジノ)テトラサイクリンの還元的アルキル化により調製することができる(例えばその内容を本願明細書に引用したものとする米国特許第3,483,251号に詳述される)。
【0039】
アニリノ官能基を有する化合物は、亜硝酸(HONO)または硝酸ブチルなどの有機剤とジアゾ化反応させると、ジアゾニウム塩(塩酸塩またはテトラフルオロボロン酸塩など)(6, 7)をほぼ定量的に容易に生成する。この反応性テトラサイクリンベース前駆化合物(6, 7)の適切なジアゾニウム塩を、さらに有機パラジウム触媒及び種と化学的に錯体形成させると、テトラサイクリン反応中間体と第一選択の反応性有機置換基前駆体の間に炭素−炭素結合を形成させることができる。テトラサイクリンの7及び9位置換位誘導体を生成するために、CuCl2などの遷移金属触媒(ミーアウィン(Meerwin)反応)、及び塩化パラジウム、酢酸パラジウム、またはその他の前述の触媒などのパラジウム触媒、中でも好ましくは酢酸パラジウムが用いられる。反応は一般に、微量の鋼酸(HCl, 0.1%)を加えたDMSO、水、及びアルコールなどの極性溶媒中で行われ、置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族構造、アルキル構造、アルケニル構造、またはアルキニル構造と反応させて望ましい置換化合物を生成する。反応を行うために非極性溶媒を用いることもある。
【0040】
ハロゲン化パラジウム及びハロゲン化銅などのハロゲン化遷移金属は、アレーンジアゾニウム塩と反応して、さらに反応可能な錯体を形成することが知られている。ハロゲン化遷移金属は触媒として、炭素構造(二重結合及びp結合を有するその他の構造)に電子不足窒素ジアゾニウム反応基を付加するラジカル酸化還元反応を経て、炭素−炭素結合の形成を促進する。例えば、反応系の適切なアルケンが反応性配位錯体を形成する場合、パラジウム触媒により炭素−炭素結合が容易に形成される。この後、炭素シグマ結合挿入が生じて、三成分錯体が形成される。パラジウムのような触媒は、例えばb水素化物脱離反応により炭素−炭素共有結合が形成されることで、循環及び再生される。この条件を用いて、アルケンまたはアクリル酸エステルなどのp-結合系を有する分子構造または二重結合を有する数多くのその他の化合物を、たとえばテトラサイクリンアレーンジアゾニウム塩などの反応性テトラサイクリンベース前駆化合物を用いて、容易にアリール化することができる。交換金属反応及び例えば一酸化炭素などの挿入反応などのその他の遷移金属を触媒とする反応も考慮される(遷移金属を触媒とする反応の例として、Hegedus、同上、参照)。
【0041】
炭素−炭素結合形成の均一触媒は、パラジウム錯体と適切な反応性物質を用いれば可能である。D環内の反応性ジアゾニウム官能基を生成するためにはドキシサイクリンまたはミノサイクリンなどのテトラサイクリンが用いられるが、反応性付加物は構造的に多様な化学種から得ることができる。したがって、テトラサイクリンアレーンジアゾニウム塩など、つまり例えばテトラサイクリン分子の7位及び9位に反応性官能基を有する反応性テトラサイクリンベース前駆化合物を、アルケン類、置換アルケン類、ビニルモノマー類、芳香族及びヘテロ芳香族反応性化合物(置換または非置換)と適切な遷移金属触媒の存在下で同様に反応させ、7-(置換基)及び9-(置換基)テトラサイクリン(8, 9, スキームI)を収率よく生成することができる。例えば7位置換テトラサイクリン9-ジアゾニウム塩(スキームII)を、ミノサイクリンをニトロ化して9-NO2誘導体(11)を生成し、次いで触媒還元反応により9-NH2誘導体を生成してからジアゾ化するという一連の反応により生成し、それをオレフィン類及び反応性生成物などの二重結合化合物並びに試薬と反応させて、化学式(II)のミノサイクリン誘導体を生成してもよい(14, スキームII)。
【0042】
ある実施態様では、化学式I及びIIの反応生成物を、さらに誘導してスキームIII−VIIに示すような試薬と反応させることにより、他の方法では容易に得られないようなその他の化合物を合成するための中間体として作用させてもよい。化学式Iの9-アルケニル置換ドキシサイクリン(8, 9)の9-アルケニル基を、炭素担持白金またはパラジウム触媒を用いて低圧水素下において水素化し、ドキシサイクリンの9-アルケニル誘導体を合成してもよい(15, 16, スキームIII)。同様に、ミノサイクリンの9-アルケニル誘導体(14)も、スキームIV(17)に示すように、触媒水素化法を用いてアルキル誘導体に還元してもよい。
【0043】
化学式I(スキームI及びIII)のドキシサイクリンの7または9誘導体を、無水フッ化水素またはメタンスルホン酸などの強酸、またはトリフルオロメタンスルホン酸に溶解してカルボン酸と反応させ、7位及び9位置換ドキシサイクリンの5-エステル誘導体(18, 19, スキームV)を生成してもよい。
【0044】
化学式I(スキームI, III, 及びV)のドキシサイクリンの7または9誘導体をホルムアルデヒド及び適切な塩基(ピロリジン)と反応させてマンニッヒ塩基付加生成物を生成することにより、7または9誘導体からマンニッヒ塩基誘導体(20, 21, スキームVI)を形成してもよい。
【0045】
化学式II(14, スキームII)のミノサイクリンの7または9誘導体をホルムアルデヒド及び適切な塩基(ピロリジン)と反応させてマンニッヒ塩基付加生成物を生成することにより、9誘導体からマンニッヒ塩基誘導体(22, スキームVII)を形成してもよい。
【0046】
スキームIで生成されるテトラサイクリンジアゾニウム反応性官能基も、酢酸パラジウムなどの遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素のアルコール溶液と反応させ、7-及び9-カルボン酸誘導体(23, 24)を収率よく生成してよく、これらの誘導体は容易にエステル化されて9位テトラサイクリンエステルを生成する(25, 26, スキームVIII)。
【0047】
スキームIIで生成されるミノサイクリンジアゾニウム反応性官能基も、酢酸パラジウムなどの遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素のアルコール溶液と反応させ、7-及び9-カルボン酸誘導体(2)を収率よく生成してよく、これらの誘導体は容易にエステル化されて9位ミノサイクリンカルボン酸エステルを生成する(28, スキームIX)。
【0048】
ジアゾニウム官能基を経由した7及び9アミノテトラサイクリンについては、他の反応も可能である。テトラサイクリンアレーンジアゾニウム塩も、アセトアセテートのエステルなどの活性メチレン化合物、およびその誘導体、活性芳香族環及び非置換及び置換オレフィン類、アセチレン類、置換アセチレン類、アリールエチレン類、スチレン類、共役ジエン類、イソプレン類、ビニルエーテル類、a,b-不飽和アルデヒド類及びケトン類、アリールビニル及びアリールイソプレニルケトン類、キノン類、a,b-不飽和酸及びその誘導体と反応する。多重結合化合物はすべて、アレーンジアゾニウム塩及び求核種と容易に結合する。
【0049】
7位並びに7及び9位反応性テトラサイクリンベース前駆化合物(スキームXに示すテトラサイクリンのハロゲン化誘導体)も、テトラサイクリンの7及び9誘導体を産生する。ヨウ素化、臭素化、または塩素化による芳香族置換反応では、例えばHlavka, J.J., et al., J. Am. Chem. Soc., 84, 1961, 1426-1430などに記載される反応により、収率よくドキシサイクリン(29, 30)またはサンサイクリン(31, 32)の7及び9ハロゲン誘導体を生成する。テトラサイクリンの7位及び9位ハロゲン化誘導体を、塩化銅チオフェンなどの遷移金属触媒を用いてN-メチルピロリジンオン中でヨードアルケン類またはヨードアレーン類とさらに結合させ、よい収率でドキシサイクリンの7位または9位誘導体(33, 34)またはドキシサイクリンの7位または9位誘導体(35, 36)を生成してよい。
【0050】
テトラサイクリンの13位誘導体は、フェニルボロン酸とメタサイクリン(37)(スキームXI)の環外二重結合とをメタノールなどのアルコール類中で塩化パラジウムまたはその他の遷移金属触媒の存在下で反応させ、メタサイクリンの13-フェニル誘導体(38)をよい収率で生成してから調製してよい。
【0051】
以下の合成スキームは本発明を具体化するものである。
スキームI 7-(置換基)-6-メチル-6-デオキシ 5-ヒドロキシ テトラサイクリン 及び 9-(置換基)-6-メチル-6-デオキシ 5-ヒドロキシ テトラサイクリン
スキーム II 9-(置換基) ミノサイクリン
スキーム III 7-(アルキル置換基)-6-メチル-6-デオキシ 5-ヒドロキシテトラサイクリン 及び 9-(アルキル置換基)-6-メチル-6-デオキシ5-ヒドロキシテトラサイクリン
スキーム IV 9-(アルキル置換基) ミノサイクリン
スキーム V 7-(アルキルまたはアリール置換基)-6-メチル-6-デオキシ5-アシルオキシテトラサイクリン 及び 9-(アルキルまたはアリール置換基)-6-メチル-6-デオキシ 5-アシルオキシテトラサイクリン
スキーム VI 7-(アルキルまたはアリール置換基)-6-メチル-6-デオキシ 5-ヒドキシテトラサイクリン 及び 9-(アルキルまたはアリール置換基)-6-メチル-6-デオキシ 5-ヒドロキシ 2-(カルボキサミド置換基) テトラサイクリン
スキーム VII 9-(アルキル置換基)- 2-(カルボキサミド置換基) ミノサイクリン
スキーム VIII 7-(カルボキシまたはカルボキシエステル)-6-メチル-6-デオキシ 5-ヒドキシテトラサイクリン 及び 9-(カルボキシまたはカルボキシエステル)-6-メチル-6-デオキシ 5-ヒドロキシ 2-(カルボキサミド置換基) テトラサイクリン
スキーム IX 9-( カルボキシまたはカルボキシエステル) ミノサイクリン
スキーム X 7-(アルケニルまたはアリール)-6-メチル-6-デオキシ 5-ヒドキシテトラサイクリン 及び 9-(アルケニル または アリール)-6-メチル-6-デオキシ 5-ヒドロキシテトラサイクリン、X 9-(アルケニル または アリール)-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリン 及び 9-(アルケニルまたはアリール)-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリン
スキーム XI 13-(置換基)-6-メチレン-5-ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン
【0052】
【化9】

【0053】
【化10】

【0054】
【化11】

【0055】
【化12】

【0056】
【化13】

【0057】
【化14】

【0058】
【化15】

【0059】
【化16】

【0060】
【化17】

【0061】
【化18】

【0062】
【化19】

【0063】
本発明の化合物は細菌、真菌、リケッチア、及び寄生虫などの感受性微生物、及びテトラサイクリン感受性細菌及びテトラサイクリン耐性細菌を含む微生物に関連する疾患に対して活性である。本発明において特に好ましい化合物は、テトラサイクリン耐性大腸菌、黄色ブドウ球菌、及びE.フェカリス株、例えば大腸菌pHCM1、黄色ブドウ球菌RN4250、及びE.フェカリス pMV158などに対する、24時間最少発育阻止濃度(MIC)が約10mg/mL以下で、さらに好ましくは約1mg/mL以下である。本発明の好ましい化合物は、テトラサイクリン感受性の大腸菌、黄色ブドウ球菌、及びE.フェカリス株、例えば大腸菌 D31m4、黄色ブドウ球菌RN450及びE.フェカリス ATCC9790などに対しても、このようなMICを示すものを含む。前述のように、本発明は微生物感染症及び関連疾患に対する治療方法を提供し、一般にこれらの方法には、治療に有効な量の本発明の一種類以上の化合物を動物または植物、一般には哺乳類、好ましくはヒトなどの霊長類であってよい被験体に投与することが含まれるであろう。
【0064】
本発明の治療方法では、本発明の一種類以上の化合物のみを被験体に投与してもよく、またはさらに一般的には、本発明の化合物を従来の賦形剤、すなわち非経口、経口、またはその他の望ましい投与形態に適しており活性化合物と有害反応を起こさずそのレシピエントに対しても有害ではない薬学的に許容の有機または無機担体物質と混合した薬学的組成物の一部として投与されるであろう。適切な薬学的に許容の担体には、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール類、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペトロエトラル脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれる。薬学製剤は滅菌され、必要であれば潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に作用する塩、緩衝液、着色剤、及び着香及び/または芳香剤など、活性化合物と有害反応を起こさない補助剤と混合してもよい。
【0065】
少なくとも多数の本発明の化合物は、例えば塩酸塩、硫酸塩、ヘミ硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩など、薬学的に許容の有機または無機酸塩などとして、プロトン化、または水溶性状で、被験体に適切に投与されてよい。また、本発明の化合物に適切な酸性基が存在する場合、アンモニウム塩、または有機アミン塩、またはアルカリ金属またはカリウム、カルシウムまたはナトリウム塩などのアルカリ土類金属塩などの有機または無機塩基の薬学的に許容の塩を用いることもできる。
【0066】
治療用化合物は、本発明に従って被験体に各種の経路により投与されてよい。局所(経皮、口腔または舌下を含む)及び非経口(腹腔内、皮下、静脈内、皮内、または筋肉内注射を含む)が一般に好ましい。
【0067】
非経口投与の場合、特に適切なのは溶剤で、好ましくは油性または水性溶液及び懸濁液、乳液、または座薬などの挿入剤である。治療用化合物はて、一般に注射剤に用いられる滅菌生理食塩水または5%生食デキストロース溶液などの液体担体に分散させるなどして、複数回量または1回量フォーマットに滅菌状態で調剤されるであろう。
【0068】
経腸投与の場合、特に適切なのはタルク及び/または糖担体結合剤などを有する錠剤、糖剤またはカプセル剤で、好ましい担体は、ラクトース及び/またはコーンスターチ及び/またはバレイショスターチである。シロップ剤またはエリキシル剤などは、甘味賦形剤が用いられる場合に使用される。徐放組成物は、マイクロカプセルまたは多重コーティングなどによる差次分解コーティングを用いて活性成分を保護する場合などに調剤することができる。
【0069】
局所投与の場合には、治療用化合物は、ゲル、軟膏剤、ローション剤またはクリーム剤などの薬学的に不活性な局所担体に適切に混合することができる。このような局所担体には、水、グリセロール、アルコール、プロピレングリコール、脂肪アルコール、トリグリセリド、脂肪酸エステル、または鉱物油が含まれる。局所担体として可能性がある他の担体には、液状ワセリン、イソプロピルパルミテート、ポリエチレングリコール、エタノール95%、モノラウリン酸ポリエチレン5%水溶液、及びラウリル硫酸ナトリウム5%水溶液などがある。さらに、抗酸化剤、湿潤剤、及び粘度安定剤なども必要であれば加えてよい。
【0070】
ヒトの治療に加えて、本発明の治療方法は、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、雌ウシ、及びブタなどの家畜、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び七面鳥などの家禽、ウマ、並びにイヌ及びネコなどのペットの治療など、獣医学的にも重要な用途を有する。
【0071】
特定の治療法に用いられる活性化合物の実際に好ましい量は、使用される個別の化合物、調剤される個別の組成物、使用状態、及び投与の個別部位などにより異なるであろう。当業者は、特定の投与プロトコルにおける投与の最適速度を、前述のガイドラインにしたがって行われる従来の投与量決定試験を用いて容易に確認することができる。
【0072】
一般に、本発明の治療用化合物は、既存のテトラサイクリン療法において用いられる投与量を被験体に投与することができる。例えば、Physicians' Desk Reference を参照されたい。例えば、本発明の一種類以上の化合物の適切な有効投与量は、一日にレシピエントの体重1kgに対して0.01から100mgの範囲内であり、好ましくは一日にレシピエントの体重1kgに対して0.1から50mgの範囲内であり、さらに好ましくは一日にレシピエントの体重1kgに対して1から20mgの範囲内であるだろう。望ましい用量を、適切には一日に一回投与するか、または例えば一日に2から5回に分けるなど適切な間隔を置くかもしくはその他の適切なスケジュールで数回に分けて投与する。
【0073】
テトラサイクリンの一般的な投与に関しては、通常の使用環境における有効性を確保するために、通常、従来知られている使用上の注意が払われなければならないことも理解されるであろう。特に、インビボにおいてヒト及び動物の治療用に用いられる場合には、施行者は既知の禁忌または毒性を避けるために、すべてにおいて十分な注意を払わなければならない。従って、既知の有害反応である消化管の不快感及び炎症、腎毒、過敏性反応、血液の変容、並びにアルミニウム、カルシウム、及びマグネシウムイオンを介した吸収障害については、従来の方法によってしかるべく考慮しなければならない。
【0074】
生物学的活性
インビトロにおける評価方法
本発明に従って生成された各種化合物は、インビトロにおける抗菌活性を以下のように評価された。18時間経過時点における適温における最少発育阻止濃度、つまり細菌の増殖を阻止する薬物の最少濃度は、Lブロスまたはミュラー-ヒントンブロスを用いたブロス希釈法により測定する。ミュラー-ヒントンブロスを適切に陽イオン調節し、Waitz, J.A., National Commission for Clinical Laboratory Standards Document M7-A2, vol.10, no. 8, pp.13-20, 2nd edition, Villanova, PA (1990)に記載されるようなすべての細菌学的方法を行った。検査した生物は、テトラサイクリンを排出することができるかまたはリボソーム保護機序により耐性が付与されているテトラサイクリン感受性またはテトラサイクリン耐性のグラム陽性またはグラム陰性の細菌種である。臨床用に用いられた株は、薬物排出またはリボソーム保護機序によるテトラサイクリン感受性またはテトラサイクリン耐性のものである。
【0075】
【表2】




【0076】
【表3】

【実施例】
【0077】
実験
本発明の化合物は前述のスキームIからIXに示された通り、及び/または後述の通りに調製されてよい。
【0078】
スキームIでは、ドキシサイクリンを冷濃硫酸に溶解し、硝酸カリウム1当量を加える。1から3時間、反応温度を0から5℃の範囲に維持し、化学式IVの7-及び9-ニトロ-6-置換基-5-ヒドロキシテトラサイクリンを生成する。この中間体は適切な化学反応的な官能性を有し、PtO2または水素及びパラジウムまたは白金触媒など広範囲の還元剤と反応し、一般化学式IVの化合物を生成することができる。7及び9アミノ誘導体のジアゾニウム塩は、硝酸塩(硝酸ナトリウム、または硝酸ブチルなど)と未精製の中間体を作用させて生成する。
【0079】
例1
[4S-(4a,12aa)]-9-(ニトロ)-4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-3,5,10,12,12a-ペンタヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-2-ナフタセンカルボキサミド
塩酸ドキシサイクリン1.0gを濃塩酸10mLに溶解した氷冷溶液に、硝酸カリウム0.231gを加えた。その反応物を大気圧下で1時間撹拌した。次いでその混合物を氷150gに注ぎ、得られた固体をn-ブタノールで抽出し、黄緑色固体状の望ましい生成物を0.9g得た。
【0080】
MS(FAB): m/z 490 (M+H)
1H NMR (CD3OD): d 7.50(d,1H,J=8.07Hz,H-8); 6.86(d,1H,J=8.07Hz,H-7); 4.44(bs,1H,H-4); 3.62(dd,1H, J=11.42 ; 8.35 Hz,H-5); 2.95(bs,6H, NMe2); 2.81(d,1H,J=11.45Hz, H-4a); 2.71(dq, 1H, J=12.41; 6.5 Hz, H-6); 2.53(dd,1H, J=12.23;8.20 Hz, H-5a); 1.51(d, 3H, J=6.78 Hz, CH3)
【0081】
例2
[4S-(4a,12aa)]-9-(アミノ)-4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-3,5,10,12,12a-ペンタヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-2-ナフタセンカルボキサミド
200mL水素化ビンに、例1の生成物1.0g、メタノール40mL、濃塩酸1mL、及び10%炭素担持パラジウム100mgを加える。水素化機器を用いて、その混合物に水素30psiを3時間かける。触媒を濾過して除去し、濾液を乾燥させて黄色固体状のジヒドロ塩化物0.9gを得る。
【0082】
MS(FAB): m/z 460 (M+H)
1H NMR (CD3OD): d 7.54(d,1H,J=8.08Hz,H-8); 6.88(d,1H,J=8.08Hz,H-7); 5.16(dd, J=10.44;7.94 Hz, H-5); 4.44(bs,1H,H-4); 3.74(d, 1H, J=2.07 Hz, H-4); 3.04(bs,6H, NMe2); 2.90(dd,1H,J=7.94;2.07 Hz, H-4a); 2.72(dq, 1H, J=12.31; 6.56 Hz, H-6); 2.61(dd,1H, J=12.31;10.44 Hz, H-5a); 2.54(q, 2H, J=7.48 Hz, CH2-C); 1.44(bs, 9H, CMe3); 1.29(d, 3H, J=6.56 Hz, CH3); 1.20(t, 3H, J=7.48 Hz, C-CH3)
【0083】
例3
[4S-(4a,12aa)]-9-(ジアゾニウム)-4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-3,5,10,12,12a-ペンタヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-2-ナフタセンカルボキサミド
10mLの丸底フラスコに例2の生成物100mgを入れ、0.1Nメタノール塩酸塩4mLに溶解させた。その溶液を0℃に冷却し、硝酸ブチル35mlを撹拌しながら加えた。1時間後、鮮赤色の混合物を冷無水ジエチルエーテル100mLに滴下して加えた。この生成物を濾過して収集し、エーテルで洗浄し、真空デシケータ中で乾燥させて、橙色固体状のジアゾニウム塩73mgを得た。
【0084】
MS(FAB): m/z 472 (M+H)
1H NMR (CD3OD): d 7.55(d,1H,J=8.08Hz,H-8); 6.86(d,1H,J=8.08Hz,H-7); 5.13(dd, J=10.44;7.94 Hz, H-5); 4.41(bs,1H,H-4); 3.72(d, 1H, J=2.07 Hz, H-4); 3.04(bs,6H, NCH3); 2.90(dd,1H,J=7.94;2.07 Hz, H-4a); 2.70(dq, 1H, J=12.31; 6.56 Hz, H-6); 2.61(dd,1H, J=12.31;10.44 Hz, H-5a); 2.2(m, 6H, J=7.48 Hz, アセチル); 1.44(bs, 9H, C(CH3)3); 1.29(d, 3H, J=6.56 Hz, CH3); 1.20(t, 3H, J=7.48 Hz, C-CH3)
【0085】
オレフィン化の一般手順 9-ジアゾニウム化合物0.1gをメタノール(含水または無水)に溶解した溶液に、0.05当量の酢酸パラジウムを加える。この反応混合物を室温で5分間撹拌し、2当量の望ましいオレフィンを加える。大気圧下で、またはHPLC後に、18時間撹拌を続ける。撹拌はN2雰囲気下で行ってもよい。終了後、触媒を濾過除去し、粗液を乾燥させて粗生成物を得た。精製生成物を、メタノール及びリン酸バッファ勾配を用いて、分取逆相HPLCで単離する。
【0086】
例4
[4S-(4a,12aa)]-9-[3’-(E)-プロペン酸]-4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-3,5,10,12,12a-ペンタヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-2-ナフタセンカルボキサミド
MS(FAB): m/z 515 (M+H)
【0087】
例5
[4S-(4a,12aa)]-9-[1'-(E)-(2'-フェニル)エテニル]4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a- オクタヒドロ-3,5,10,12,12a-ペンタヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-2-ナフタセンカルボキサミド
MS(FAB): m/z 547 (M+H)
【0088】
例6
[4S-(4a,12aa)]-7-[3'-(E)-プロペン酸ブチル]-4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-3,5,10,12,12a-ペンタヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-2-ナフタセンカルボキサミド
アリル化の一般手順 9-ジアゾニウム化合物メタノール溶液に、0.10当量の酢酸パラジウムを加える。その混合物を室温で5分間撹拌し、アリールボロン酸を2当量加える。6時間後、触媒を濾過除去し、濾液を乾燥させる。粗生成物をメタノールリン酸バッファ勾配を用いて、分取逆相HPLCで精製する。
【0089】
カルボキシル化の一般手順 ゴム製の隔膜二枚及び真空装置を取り付け、スターラーを入れた三つ口丸底フラスコに、ジアゾニウム化合物100mg、酢酸パラジウム6.0mg、及び無水ジメチルホルムアミド10mLを加えた。その反応容器を排気して、シリンジでCOをその混合物に1時間通気した。この混合物をさらに2時間撹拌し、次いでその溶媒を減圧除去して粗生成物を得た。二成分溶媒勾配を用いた分取C18逆相HPLCで、表題の化合物を単離した。
【0090】
例7
[4S-(4a,12aa)]-9-(カルボキシ)-4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-3,5,10,12,12a-ペンタヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-2-ナフタセンカルボキサミド
MS(FAB): m/z 489 (M+H)
【0091】
水素化の一般手順 0.100gの例4をメタノール10mLに溶解し、0.1%濃塩酸及び10%炭素担持パラジウムを加えて、化合物を調製する。その混合物をパール社製装置(Parr aparatus)に入れて40psiで6時間室温で水素化し、HPLCで監視する。得られた粗生成物を、C18逆相クロマトグラフィにかけてセミ分取二成分溶媒法により望ましい生成物を得る。
【0092】
7位オレフィン化の一般手順 7-ジアゾニウム化合物0.1gを例1及び2に記載の方法と同様の方法により含水アルコールに溶解した溶液に、酢酸パラジウム0.05当量を加える。この反応混合物を室温で5分間撹拌し、望ましいオレフィン2当量を加える。大気圧下で18時間撹拌を続け、その後HPLCにかける。終了後、触媒をセライトで濾過し、濾液を乾燥させて粗生成物を得る。精製生成物は、メタノール及びリン酸バッファ勾配を用いた分取逆相HPLCで単離する。
【0093】
例8
9-フェニルミノサイクリン
[4S-(4a,12aa)]-9-(フェニル)-4,7-ビス (ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-3,5,10,12,12a-テトラヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-2-ナフタセンカルボキサミド
9-アミノミノサイクリン0.100g及び例5に記載のものと同様の試薬及び条件を用いて、化合物を調製した。この反応物を窒素雰囲気下で一晩撹拌し、溶媒を減圧除去して粗生成物0.063gを生成した。C18逆相分取法及び二成分溶媒系を用いたクロマトグラフィを行ってから生成物をブタノールに抽出し、減圧下で生成物を蒸発させて、黄色固体状の望ましい生成物0.027gを得た。
MS(FAB): m/z 571 (M+H)
【0094】
例9
7-ヨードドキシサイクリン
濃硫酸30.0mLを半水塩酸ドキシサイクリン1.00gに撹拌しながら加え、その溶液を0℃まで冷却した。N-ヨードスクシンイミド0.973gを等分して1時間かけて加え、その反応をHPLC及びTLCで監視して反応完了を確認した。この溶液を氷水250mLに注ぎ入れ、ブタノールで三回抽出し、溶媒を減圧下で除去した。粗残留物を分取HPLCで生成し、濃黄色結晶状の表題の化合物1.13g(89%)を得た。
【0095】
MS (FAB): m/z 587 (M+H)
1H NMR (メタノール d-4, 300MHz) d 7.94 (d, J=8.19Hz, 1H), 6.78 (d, J=8.18Hz, 1H), 4.13 (s, 1H), 3.53 (m, 3H), 2.85 (s, 7H), 2.66 (m, 4H), 2.41 (s, 1H), 1.49 (d, J=6.52Hz, 3H), 0.95 (t, J=7.27Hz, 2H)
【0096】
例10及び11
7-ヨードサンサイクリン及び7,9-ジヨードサンサイクリン
濃硫酸30.0mLを半水塩酸サンサイクリン1.00gに撹拌しながら加え、その溶液を0℃まで冷却した。N-ヨードスクシンイミド1.09gを等分して1時間かけてその溶液に加え、その反応混合物をHPLC及びTLCで監視した。この反応混合物を氷水250mLに注ぎ入れ、n-ブタノールで三回抽出し、その溶媒を減圧下で除去した。粗残留物を分取HPLCで精製し、黄色結晶状7-ヨードサンサイクリン787mg(61%)及び濃黄色結晶状7,9-ジヨードサンサイクリン291mg(22%)を得た。
【0097】
MS (FAB): m/z 587 (M+H) 7-ヨードサンサイクリン
1H NMR (メタノール d-4, 300MHz) d 7.89 (d, J=8.86Hz, 1H), 6.67 (d, 8.87Hz, 1H), 3.56 (s, 1H), 3.03 (s, 2H), 2.84 (s, 6H), 2.46 (m, 2H), 1.63 (m, 4H) 0.95 (m, 2H)
【0098】
MS (FAB): m/z 667 (M+H) 7,9-ジヨードサンサイクリン
1H NMR (メタノール d-4, 300MHz) d 8.35 (s, 1H), 3.78 (s, 1H), 3.33 (s, 2H), 2.88 (s, 7H), 2.41 (m, 2H), 1.41 (m, 5H)
【0099】
例12 一般結合手順
7-4'-Cl-フェニルサンサイクリン
7-ヨードサンサイクリンまたは7-ヨードドキシサイクリン100mg(0.18 mM)及びPd(OAc)2 4mgをアルゴン脱気したメタノール液に加え、次いで2M Na2CO3 200mlを加えた。得られた溶液を室温で10分間撹拌した。4'-Cl-フェニルボロン酸(58mg, 0.37mM)を1mLメタノールに溶解し、ヨードテトラサイクリンに加え、反応フラスコをアルゴンで3回脱気した。この反応物を室温で15分間撹拌し、次いで加熱して18時間還流した。その溶液を冷却、濾過して、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をC18逆相クロマトグラフィで精製し、濃黄色結晶状の生成物23mgを得た。
【0100】
MS (FAB): m/z (M+H) 525.1852
1H NMR (メタノール d4, 300MHz) d 7.35-7.44 (m, 4H), 7.21-7.24 (d, 1H), 6.85-6.88 (d, 1H), 3.55 (s, 1H), 2.88 (s, 6H), 2.47 (m, 2H) 1.52 (m, 2H)
【0101】
例13 7, 9-ジフェニルサンサイクリン
MS (FAB) m/z (M+H) 567.2545
1H NMR (メタノール d4, 300 MHz) d 7.22-7.85 (m, 11H), 4.02 (m, 1H), 3.53 (s, 1H), 2.86 (br s, 6H), 2.41 (m, 2H), 1.52 (m, 2H)
【0102】
例14
7-(4-フルオロフェニル)サンサイクリン
MS (FAB): m/z 509 (M+H)
1H NMR (メタノール d-4, 300MHz) d 7.41 (d, J=8.61Hz, 1H), 7.30 (td, J=6.87, 2.16 Hz, 2H), 7.16 (td, J=6.84, 2.11Hz, 2H), 6.89 (d, J=8.59Hz, 1H) 3.56 (s, 2H), 2.91 (s, 7H), 1.52 (m, 4H), 0.95 (m, 2H).
【0103】
例 15
7-(4-ニトロフェニル)サンサイクリン
MS (FAB): m/z 536 (M+H)
1H NMR (メタノール d-4, 300MHz) d 8.28 (d, J=8.50, 2H), 7.52 (d, J=8.52, 2H), 7.42 (d, J=8.64, 1H), 6.93 (d, J=8.65, 1H), 3.51 (s, 2H), 6.73 (s, 7H), 1.50 (m, 5H), 0.92 (m, 2H).
【0104】
例16
7-(2-ピリジル)ドキシサイクリン
MS (FAB): m/z 522 (M+H)
1H NMR (メタノール d-4, 300MHz) d 8.62 (s, 1H), 7.94 (m, 2H), 7.49 (m, 1H), 7.40 (m, 1H), 6.94 (m, 1H), 4.21 (s, 1H), 3.56(m, 2H), 2.91 (s, 7H), 2.70 (m, 3H), 1.038 (s, 3H), 0.92 (m, 2H).
【0105】
例17
7-エチレニルサンサイクリン
MS (FAB): m/z 471 (M+H)
1H NMR (メタノール d-4, 300MHz) d 7.65 (d, J= 8.79Hz, 1H), 6.80 (d, J=8.76Hz, 1H), 5.56 (d, J=18.42Hz, 1H), 5.25 (d, J=12.15Hz, 1H), 3.84 (s, 1H), 3.19 (m, 2H), 2.98 (s, 6H), 2.82 (m , 1H), 2.32 (m, 2H), 0.92 (m, 1H)
【0106】
等価物
当業者であれば、ごく通常の実験を用いるのみで、ここに説明した特定の手順の等価物を数多く認識し、又は確認できることであろう。このような等価物は本発明の範囲内であり、上述の特許請求の範囲の包含するところである。本出願全体に引用された参考文献、発行済み特許、及び公開特許出願すべての内容を、ここに引用をもって本願明細書の記載に代える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7位及び/又は9位置換テトラサイクリン化合物を調製する方法で、テトラサイクリンジアゾニウム塩及びテトラサイクリンのハロゲン化誘導体から選択される反応性テトラサイクリンベース前駆化合物を、パラジウム触媒及び銅触媒から選択される遷移金属触媒の存在下で、π結合を含む反応性有機置換基に接触させるステップを含み、
前記反応性有機置換基がアルケニル基、アルキニル基、芳香族、カルボニル、チオカルボニル、及び式:


の置換基から選択され、
但し式中、R2及びR3はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、又はカルボキシルであり;あるいはR2及びR3は両方で置換又は非置換の炭素環又は複素環を形成し;そして
前記7位及び/又は9位置換テトラサイクリン化合物が前記反応性有機置換基で置換される、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法で、前記パラジウム触媒が有機パラジウム触媒を含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法で、前記有機パラジウム触媒が塩化パラジウム、酢酸パラジウム、Pd(PPh3)4、Pd(AsPh3)4、PdCl2(PhCN)2、PdCl2 (Ph3P)2、Pd2(dba)3-CHCl3またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法で、前記銅触媒がCuCl2、CuI2、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の方法で、前記反応性テトラサイクリンベース前駆化合物がオキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ケロカルジン、ミノサイクリン、ロリテテラサイクリン、リメサイクリン、サンサイクリン、メタサイクリン、アピサイクリン、クロモサイクリン、グアメサイクリン、メグルサイクリン、メピルサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、エタモサイクリン、またはペニモサイクリンベース前駆化合物である、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法で、前記反応性テトラサイクリンベース前駆化合物が、反応性ミノサイクリンベース前駆化合物と、反応性ドキシサイクリンベース前駆化合物と、反応性サンサイクリンベース前駆化合物とからなる群から選択される、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法で、前記反応性テトラサイクリンベース前駆化合物がテトラサイクリン化合物のアレーンジアゾニウム塩又はヨード誘導体である、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法で、前記反応性有機置換基がアルケニル、アルキニル、または芳香族である、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法で、前記反応性有機置換基がアルケニルである、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法で、前記アルケニル反応性有機置換基がビニルモノマーである、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法で、前記アルケニル反応性有機置換が置換される方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法で、前記アルケニル反応性有機置換基がメチレニル化合物、共役ジエン、イソプレン、ビニルエーテル、又はヨードアルケンである、方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法で、前記芳香族反応性有機置換基がヘテロ芳香族である、方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法で、前記芳香族反応性有機置換基がアリールボロン酸、ヨードアリール、キノン、アリールエチレン、またはスチレンである、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法で、前記反応性有機置換基が、カルボニル基またはチオカルボニルである方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法で、前記反応性有機置換基がアリールビニルケトン、アリールイソプレニルケトン、α,β-不飽和アルデヒド、α,β-不飽和ケトン、又はα,β-不飽和酸である、方法。
【請求項17】
請求項8に記載の方法で、前記アルキニル反応性有機置換基が置換または非置換アセチレンである、方法。
【請求項18】
7位の前記置換基がC-C結合により結合し、前記置換基が芳香族またはヘテロ芳香族である、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項19】
請求項18に記載の7位置換テトラサイクリン化合物で、前記化合物が7-(4’-Cl-フェニル)-サンサイクリンである、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項20】
請求項18に記載の7位置換テトラサイクリン化合物で、前記化合物が7-(4-フルオロフェニル)-サンサイクリンである、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項21】
請求項18に記載の7位置換テトラサイクリン化合物で、前記化合物が7-(4-ニトロフェニル)-サンサイクリンである、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項22】
請求項18に記載の7位置換テトラサイクリン化合物で、前記化合物が7-(2-ピリジル)-ドキシサイクリンである、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項23】
置換基がC-C結合により結合した7位置換テトラサイクリン化合物であって、前記置換基が


のものであり、但し式中、R2及びR3がそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はカルボキシル基であり、または、R2及びR3の両方で置換または非置換炭素環またはヘテロ環を形成する、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項24】
請求項23に記載の7位置換テトラサイクリン化合物で、R2が水素、R3



であり、及びR4が水素、シアノ基、またはC1-C5アルコキシ基である、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項25】
請求項23に記載の7位置換テトラサイクリン化合物で、R2及びR3の両方で置換または非置換炭素環またはヘテロ環を形成する、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項26】
請求項25に記載の7位置換テトラサイクリン化合物で、前記環が5から15原子を該環において含む、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項27】
請求項25又は26記載の7位置換テトラサイクリン化合物で、前記環が共役または非共役芳香族環系である、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項28】
請求項[25]23に記載の7位置換テトラサイクリン化合物で、前記化合物が7位エチレニルサンサイクリンである、7位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項29】
9位の前記置換基がC-C結合により結合し、前記置換基が芳香族またはヘテロ芳香族である、9位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項30】
置換基がC-C結合により結合した9位置換テトラサイクリン化合物であって、前記置換基が


のものであり、但し式中、R2及びR3がそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はカルボキシル基であり、または、R2及びR3の両方で置換または非置換炭素環またはヘテロ環を形成する、9位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項31】
請求項30に記載の9位置換テトラサイクリン化合物であって、R2が水素、R3


であり、及びR4が水素、シアノ基、またはC1-C5アルコキシ基である、9位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項32】
請求項30に記載の9位置換テトラサイクリン化合物であって、R2及びR3の両方で置換または非置換炭素環またはヘテロ環を形成する、9位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項33】
請求項32に記載の9位置換テトラサイクリン化合物であって、前記環が5から15原子を該環において含む、9位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項34】
請求項32又は33に記載の9位置換テトラサイクリン化合物であって、前記環が共役または非共役芳香族環系である、9位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項35】
テトラサイクリンジアゾニウム塩[、]及びテトラサイクリンのハロゲン化誘導体から選択される反応性テトラサイクリンベース前駆化合物を、パラジウム触媒及び銅触媒から選択される遷移金属触媒の存在下で、π結合を含む反応性有機置換基に、接触させるステップを含み、
但しこの場合、前記反応性有機置換基がアルケニル基、アルキニル基、芳香族、カルボニル基、チオカルボニル基、及び式:


の置換基から選択され、但し式中、R2及びR3がそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はカルボキシル基であり、または、R2及びR3の両方で置換または非置換炭素環またはヘテロ環を形成し、前記7位及び/又は9位置換テトラサイクリン化合物が前記反応性有機置換基で置換される、
方法により調製される、7位及び/又は9位置換テトラサイクリン化合物。
【請求項36】
請求項35に記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記パラジウム触媒が有機パラジウム触媒を含む、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項37】
請求項36に記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記有機パラジウム触媒が塩化パラジウム、酢酸パラジウム、Pd(PPh3)4、Pd(AsPh3)4、PdCl2(PhCN)2、PdCl2(Ph3P)2、Pd2(dba)3-CHCl3またはそれらの組み合わせを含む、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項38】
請求項35に記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記銅触媒がCuCl2、CuI2、またはそれらの組み合わせを含む、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項39】
請求項35−38のいずれかに記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記反応性テトラサイクリンベース前駆化合物がオキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ケロカルジン、ミノサイクリン、ロリテテラサイクリン、リメサイクリン、サンサイクリン、メタサイクリン、アピサイクリン、クロモサイクリン、グアメサイクリン、メグルサイクリン、メピルサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、エタモサイクリン、またはペニモサイクリンベース前駆化合物である、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項40】
請求項39に記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記反応性テトラサイクリンベース前駆化合物が反応性ミノサイクリンベース前駆化合物と、反応性ドキシサイクリンベース前駆化合物と、反応性サンサイクリンベース前駆化合物とからなる群から選択される、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項41】
請求項35に記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記反応性テトラサイクリンベース前駆化合物がテトラサイクリン化合物のアレーンジアゾニウム塩又はヨード誘導体である、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項42】
請求項35に記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記反応性有機置換基がアルケン類と、置換アルケン類と、ビニルモノマー類と、芳香族化合物及びヘテロ芳香族化合物とからなる群から選択される、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項43】
請求項35に記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記反応性有機置換基が


であり、ここでR2及びR3がそれぞれ独立して水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はカルボキシル基であり、またはR2及びR3の両方で置換または非置換炭素環またはヘテロ環を形成する、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項44】
請求項43に記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記R2が水素、及びR3


であり、ここでR4は水素、シアノ基、またはC1-C5アルコキシ基である、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項45】
請求項43に記載の置換テトラサイクリン化合物で、R2及びR3の両方が置換または非置換炭素環またはヘテロ環を形成する、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項46】
請求項45に記載のテトラサイクリン化合物で、前記環が5から15原子を該環において含む、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項47】
請求項45又は46に記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記環が共役または非共役芳香族環系である、置換テトラサイクリン化合物。
【請求項48】
請求項45−47のいずれかに記載の置換テトラサイクリン化合物で、前記環が5から8原子を該環において有する、置換テトラサイクリン化合物。

【公開番号】特開2012−31185(P2012−31185A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204707(P2011−204707)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2001−523365(P2001−523365)の分割
【原出願日】平成12年9月13日(2000.9.13)
【出願人】(500155268)トルスティーズ オブ トゥフツ カレッジ (3)
【Fターム(参考)】