説明

選択的透過性積層体の製造方法

選択的透過性積層体の製造方法を提供する。種々の実施形態において、本発明の積層体は、保護物品としての製造に有用であり、有害な化学物質および生物学的物質に対しては実質的に不透過性であるが、保護服として着用した場合に、保護と着心地の良さとの両方を得るのに十分な水蒸気透過性である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2005年11月7日出願の米国仮特許出願第60/734326号明細書の利益を主張し、その記載内容全体をあらゆる目的で本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、連続キトサンフィルムから選択的透過性積層体を製造する方法に関する。種々の実施形態において、本発明の積層体は、保護物品として製造する場合に有用であり、有害な化学物質および生物学的物質に対しては実質的に不透過性であるが、水蒸気に対しては十分に透過性であり、保護服として着用した場合に、保護性と着心地のよさとの両方が得られる。
【背景技術】
【0003】
毒性の化学物質および生物学的物質から人を保護する構造の必要性が高まっている。毒性化合物の蒸気および液体に対して不透過性である構造が考案されたことは知られているが、衣服として使用される場合には、通常このような構造は着用すると、暑く、重く、不快でもある。
【0004】
保護スーツとして着用される衣服によって得られる快適性の程度は、そのスーツが作られた布を透過することができる水蒸気量の影響が大きい。人体は、体温を調節する方法として連続的に水分を放出している。保護布が人体からの水蒸気の減少を妨害する場合、蒸散による冷却過程が妨害され、その結果、人は不快になる。保護スーツからの水蒸気の減少がほとんどまたは全くない場合は、短時間で過度の熱ストレスまたは熱中症が発生しうる。したがって、毒性の化合物および液体に対して高い保護性が得られることに加えて、実際的な化学的および生物学的保護スーツが、高い水蒸気透過速度を有することが望ましい。適切な保護構造が軽量であり、長期間にわたって同じ高レベルの保護が得られることも望ましい。
【0005】
同時係属中の(特許文献1)では、アラミド、ポリベンズアゾール、または高性能ポリエチレンの繊維を含んでなる防弾布物品および保護服が、物品を抗菌性にするためのキトサン剤含有溶液で処理され、それによって臭気発生、および真菌や細菌の増殖が防止される。このキトサン剤は、物品に直接適用したり、繊維に適用したり、布の仕上げとして適用したりすることができる。
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第10/883,105号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、連続キトサンフィルムを含有し、身体を保護する物品中に使用することができ、不透過性物品よりも改善された快適性を着用者に提供する、選択的透過性積層体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
(a)キトサン部分(a chitosan moiety)の溶液を形成するステップと、
(b)フィルムを形成するのに十分な量のキトサン溶液を基材上に付着(depositing)させるステップであって、基材は、後にフィルムになるキトサンコーティングの希望する厚さよりも高い突出部を基材の面上に実質的に有さないステップと、
(c)付着させたキトサン溶液を基材上で乾燥させることによって、キトサンフィルムを形成するステップと、
(d)場合により、キトサンフィルム上に追加層を付着させるステップと、
(e)基材とキトサンフィルムと少なくとも1層の布とを含んでなる積層体を形成するステップとを含む、選択的透過性積層体の製造方法である。
【0009】
本発明の別の一態様は、
(a)キトサン溶液を形成するステップと、
(b)フィルムを形成するのに十分な量の溶液を加工デバイス上に付着するステップと、
(c)加工デバイス上でキトサン溶液付着物(deposit)を乾燥させることによって、キトサンフィルムを形成するステップと、
(d)場合により、キトサンフィルム上に追加層を付着させるステップと、
(e)加工デバイスからフィルムを取り外すステップと、
(f)フィルムと少なくとも1層の布とを含んでなる積層体を形成するステップとを含んでなる、選択的透過性積層体の製造方法である。
【0010】
本発明のこれらおよびその他の態様は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を見れば当業者には明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本開示においては、多数の用語が使用される。
【0012】
本明細書において使用される場合、用語「フィルム」は、気体、蒸気、エアロゾル、液体、および/または微粒子などの接触する化学種の輸送を抑える、薄いが分離した構造を意味する。フィルムは、化学的または物理的に均一な場合もあり、不均一な場合もある。フィルムは一般に、約0.25mm未満の厚さであると理解されている。
【0013】
本明細書において使用される場合、用語「シート」または「シーティング」は、少なくとも0.25mmの厚さであるフィルムを意味する。
【0014】
特に明記した場合または個別の文脈上明らかである場合を除けば、本明細書において使用される場合、用語「キトサン」は、キトサン自体、キトサン塩、およびキトサン誘導体を含むキトサン系部分(chitosan−based moieties)を含む。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「キトサンフィルム」は、少なくとも50重量%の量で少なくとも1種類のキトサン系部分を含有するフィルムを意味する。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「非多孔性」は、拡散以外では空気が通ることができない材料または表面を意味する。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「連続キトサンフィルム」は、少なくとも1つの非多孔性表面を有するキトサンフィルムを意味する。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「透過性」は、液体または気体が通過または拡散通過できることを意味する。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「選択的透過性」は、特定の化学種は通過できるが、他の化学種に対しては障壁として作用することを意味する。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「積層体」は、少なくも部分的に互いに結合した2層以上の平行な材料層を含んでなる材料を意味する。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「基材」は、その上で溶液からフィルムが形成される材料を意味する。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「加工デバイス」は、フィルム形成のみに使用され、後に積層体の一部とはならない基材を意味する。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「可溶性」は、特定の溶媒と混合した場合に透明に見える溶液を形成する材料を意味する。たとえば、水溶性材料は、水と混合した場合に透明な溶液を形成するが、水不溶性材料の場合には形成しない。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「キトサン溶液」は、指定の溶媒に対して少なくとも1種類のキトサン部分が溶解することを示している。しかし、指定の溶媒に対して不溶性である材料が存在することもできる。
【0025】
本明細書において使用される場合は、用語「可溶化(不溶化)」は、指定の溶媒に対して材料を可溶性(不溶性)にすることを意味する。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「人の健康に対して有害」は、皮膚接触、摂取、または呼吸によって急性または慢性的に曝露した結果、人に障害が生じることを意味する。
【0027】
好ましい実施形態においては、キトサンフィルムおよびそれより作製された積層体は、特定の生物学的物質および/または化学物質が実質的に不透過性である。これらのフィルムおよび積層体は、特定の物質が少なくとも99%不透過性、さらには最大100%が不透過性であることが多くの場合望ましい。
【0028】
一実施形態においては、本発明は、連続キトサンフィルムまたは連続キトサンフィルムを含む選択的透過性積層体から製造された保護構造を提供する。連続キトサンフィルムから製造された構造に関して本明細書において使用される場合、「構造」は、1層および複数層の連続キトサンフィルムを含む。キトサンフィルムを使用して積層体を作製することができる。これらの構造は、人の健康に対して有害な化学物質または生物学的物質への曝露に対して保護する衣料の物品および衣料品(articles and items of apparel)中に使用することができる。具体的な実施形態としては、連続キトサンフィルムまたは連続キトサンフィルムを含む選択的透過性積層体から製造された衣料の物品などの完成品が挙げられる。
【0029】
別の実施形態においては、本発明は、選択的透過性積層体中に連続キトサンフィルムを含むことによって、化学的または生物学的に有害な物質が、選択的透過性積層体、あるいはそれより製造された衣料の物品および衣料品を透過するのを妨害する方法を提供する。
【0030】
さらに別の実施形態においては、本発明は、キトサンフィルムを有する選択的透過性積層体を構造または衣料品中に組み込むことによる、人の健康に対して有害である化学物質または生物学的物質への曝露から保護する構造の製造方法、ならびに衣料品の製造方法を提供する。
【0031】
本発明の積層体は選択的透過性であるため、それより製造した構造は、人に有害となりうる化学物質および生物学的物質による、積層体の透過、したがって構造の透過を妨害する保護障壁となり、同時に、本発明の積層体を衣料品の製造に使用する場合には人の快適性を維持するのに十分な水蒸気透過率を維持することを、本発明者らは見いだした。
【0032】
本明細書において開示される選択的透過性積層体は連続キトサンフィルムを含む。一実施形態においては、本発明の積層体は、基材上に溶液から付着させたキトサンフィルムである。別の一実施形態においては、本発明の積層体は、熱接合によってポリウレタンフィルムなどの層に接着されたキトサンフィルムである。別の一実施形態においては、基材上に流延した連続キトサンフィルムまたはキトサンフィルム、あるいは別の層に熱接合したキトサンフィルムが、1つもしくはそれ以上の布層に接着剤によって接合される。気体および/または液体による選択的透過性積層体の透過を妨害しないようにする目的で、接着剤の不連続層を形成するために、この接着剤は、ストライプ、または好ましくはドットの形態であってよい。図1は、衣料品などの中に使用できる選択的透過性積層体の一実施形態を示している。図示される実施形態においては、この積層体は以下の要素を含む:連続キトサンフィルム(1)、連続キトサンフィルムが接着される基材(2)、追加層(3、3’)、内部ライナー(4)、外部シェル(5)、および接着剤。しかし、選択的透過性積層体のすべての実施形態が、図1中に示されるすべての要素を含むわけではない。
【0033】
連続キトサンフィルム
キトサンは、ポリ−[1−4]−β−D−グルコサミンの一般に使用されている名称である。これは市販されており、ポリ−[1−4]−β−N−アセチル−D−グルコサミンであるキチンから化学的に誘導され、このキチンは、菌類の細胞壁、昆虫、および特に甲殻類の殻から得られる。キチンから調製する場合、アセチル基が外されるが、本発明において使用されるキトサンでは、脱アセチル化度が少なくとも約60%であり、好ましくは少なくとも約85%である。脱アセチル化度が増加すると、キトサン自体を酸性媒体中に溶解させるのが容易になる。
【0034】
好適なキトサン系部分としては、キトサン自体、キトサン塩、およびキトサン誘導体が挙げられる。本発明に使用すると好適なキトサン誘導体の代表例としては、N−およびO−カルボキシアルキルキトサンが挙げられる。本発明に使用されるキトサンの水溶液中の数平均分子量(M)は少なくとも約10,000である。
【0035】
キトサンフィルムは溶液から流延することができる。水溶液からキトサンフィルムを流延することが望ましいが、キトサン自体は水に対して可溶性でないため、最初にキトサンの可溶化が行われる。好ましくは、水溶性酸の希薄溶液にキトサンを加えることによって、溶解性が得られる。これによって、キトサンが酸と反応して水溶性の塩を形成することができ、本明細書においてはこれを「キトサン塩」または「(酸陰イオン)としてのキトサン」と呼び、たとえば酢酸が使用される場合には「酢酸塩としてのキトサン」と呼ばれる。水溶性であるN−およびO−カルボキシアルキルキトサンなどのキトサン誘導体は、酸を加えずに、直接水中で使用することができる。
【0036】
キトサンを可溶化させるために使用される酸は、無機でも有機でもよい。好適な無機酸の例としては、塩酸、スルファミン酸、熱硫酸、リン酸、および硝酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な有機酸は、水溶性のモノカルボン酸、ジカルボン酸、およびポリカルボン酸よりなる群から選択することができる。例としては、ギ酸、酢酸、ピメリン酸、アジピン酸、o−フタル酸、およびハロゲン化有機酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の好適な酸は、米国特許第2,040,880号明細書に開示されている。複数の酸の混合物を使用することもできる。揮発性の酸、すなわち約200℃未満の沸点を有する酸が好ましい。
【0037】
キトサンを可溶化するために使用される酸の量を選択することで、粘度を制御することができる。加える酸が少なすぎると、その結果得られる溶液は、薄いフィルムに流延したり、および/または濾過したりできないほど粘稠となる場合がある。所望の酸使用量は、最終溶液中の所望のキトサン濃度にも依存する。同様に、出発キトサンの分子量および脱アセチル化度にも依存するが、その理由は、これらの性質によって、酸と反応するアミノ基(−NH)のモル濃度が決まるからである。好ましくは、キトサンのアミノ基(−NH)1モル当たり約1酸当量が加えられる。
【0038】
最終溶液中の適切なキトサン濃度は、溶液を適用する方法、およびキトサンの分子量に依存して変動し、比較的高分子量のキトサンの場合には低濃度が望ましい場合もある。異なる適用方法では、異なる粘度の溶液が最適となるが、通常、溶液は、溶液とキトサンを合わせた全重量を基準にして、約0.1〜約15重量%のキトサンを含有する。
【0039】
フィルムが作製されるキトサン溶液は、限定するものではないがデンプンまたはセルロースなどの天然ポリマー、ならびにポリウレタン、ポリアミド、およびポリエステルなどの合成ポリマーなどの有機ポリマーを含むことができる。このようなポリマーは、キトサン溶液に対して可溶性の場合も不溶性の場合もある。たとえば、ポリアミドはキトサンとギ酸との溶液中に溶解することができるが、水中のポリウレタン懸濁液はキトサン/酢酸溶液に加えても懸濁液のままである。
【0040】
フィルムが作製されるキトサン溶液は、限定するものではないがガラススフィア、ガラスバブル、クレー(たとえば、セピオライト、アタパルジャイト、およびモンモリロナイト)などの無機充填剤を含むことができる。キトサンフィルムの熱安定性、弾性率、および遮断性を増加させることが望ましい場合に、少量、好ましくは10重量%未満のこのような充填剤を使用することができる。
【0041】
強度、可撓性、耐火性、および寸法安定性などのキトサンフィルムの種々の性質を向上させるために、フィルムが作製されるキトサン溶液は、難燃剤、可塑剤、安定剤、強化剤などの添加剤を含むことができる。たとえば、湿潤時のフィルムの可撓性は、グリオキシル酸およびレブリン酸などのケト酸を加えることによって向上させることができ、これらの酸はキトサンと反応してN−(カルボキシメチリデン)キトサンを形成する(たとえば、R.A.A.ムツァレリ(Muzzarelli)ら,Carbohydrate Research (1982),107,199−214、R.A.A.ムツァレリ(Muzzarelli)ら,Biotechnology and Bioengineering(1985),27,1115−1121を参照されたい)。N−(カルボキシメチリデン)キトサンは、熱処理によって不溶化させることができ、湿気の存在下で物理的に可撓性である。別の例では、フィルムの不溶性は、グルコースおよびフルクトースなどの糖をキトサン溶液に加えることによって得ることができる。キトサン溶液への添加剤は、溶液に対して可溶性の場合もあり、または分散した不溶性材料として存在することもできる。糖、ならびに二官能性または多官能性の酸を加えることによって、キトサンを不溶性にするための熱的必要を軽減させることができる。これらの添加剤を使用すると、約1〜10分間の約100℃〜120℃のアニール温度によって不溶性となる。これらの添加剤は、キトサン+添加剤の重量を基準にして50重量%未満で存在する。
【0042】
キトサンフィルムは、フィルムとともに積層体中に組み込まれる基材上に直接キトサン溶液を流延することによって作製することができる。あるいは、キトサン溶液は、ガラスまたはポリマーフィルム(たとえば、ポリエステルフィルム)などの平滑面などの加工デバイス上に流延することもできる。フィルムが加工デバイス上に流延される場合、次にフィルムは乾燥され、取り外され、その後別のステップで積層体中に組み込まれる。
【0043】
本発明の溶液は、当技術分野において公知の多種多様の方法のいずれかによって基材に適用することができる。実験室の試験試料などの小規模の方法の場合、通常、溶液はドクターナイフを使用して適用される。平坦であるが不規則な表面を有する表面をコーティングするために利用可能な方法としては、スプレーコーティング、浸漬コーティング、およびスピンコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。工業的方法においては、溶液は、たとえば限定するものではないがリバースロールコーティング法、巻線ロッドまたはマイヤー(Mayer)ロッドコーティング法、直接グラビアおよびオフセットグラビアコーティング法、スロットダイコーティング法、ブレードコーティング法、ホットメルトコーティング法、カーテンコーティング法、ナイフオーバーロールコーティング法、押出コーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、回転スクリーンコーティング法、多層スライドコーティング法、同時押出コーティング法、メニスカスコーティング法、コンマコーティング法、およびマイクログラビアコーティング法などの方法を使用して移動するウェブに適用することができる。これらおよびその他の好適な方法は、カーク−オスマー工業化学百科事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)中のコーヘン(Cohen)およびグトフ(Gutoff)による「コーティング方法」(Coating Processes)[ジョン・ワイリー・アンド・サンズ,第5版(2004),第7巻1〜35ページ(John Wiley & Sons,5th edition(2004),Volume 7,Pages 1−35)]に記載されている。選択される方法は、適用される溶液のレオロジー、所望の未乾燥時フィルム厚さ、移動する基材の速度、および全体厚さのパーセントとしての要求されるコーティング精度などのいくつかの要因に依存する。
【0044】
適用された溶液は次に、熱風オーブンへの曝露、空気衝突乾燥、または放射(たとえば赤外線またはマイクロ波)による乾燥などの当技術分野において公知のあらゆる好適な手段によって乾燥される(一般には、コーヘン(Cohen)およびグトフ(Gutoff)の上述の文献を参照されたい)。この段階での乾燥の結果、連続フィルムが得られる。揮発性の酸、すなわち沸点が約200℃未満の酸の水溶液中にキトサンが溶解される場合、周囲空気に曝露すれば十分に乾燥することができ、乾燥によって酸および水が除去される。
【0045】
この段階でフィルムが水溶性である場合には、加熱することによって、架橋試薬と反応させることによって、強塩基で処理することによって、または2つ以上のこれらの方法の組み合わせによって、水不溶性にすることができる。たとえば、ギ酸溶液から流延されたフィルムは、フィルムを形成し乾燥させた後、たとえば、約100℃〜約260℃で約0.1〜約60分間、より好ましくは約100℃〜180℃で約1〜10分間加熱することによる熱処理によって水不溶性にすることができる。キトサンフィルムを不溶性にするために、熱処理と架橋剤とを併用することもできる。
【0046】
本発明のフィルムは、フィルムが流延される前の溶液に多種多様の架橋剤のいずれかを加えることによって不溶性にすることもできる。架橋剤は、ポリマー鎖間に結合、すなわち架橋を形成する反応性添加剤である。キトサンの架橋剤の例としては、グルタルアルデヒド(J.クノール(Knaul)ら,Advances in Chitin Science(1998),3 399−406)、エピクロロヒドリン(米国特許第5,015,293号明細書)、ならびにコハク酸、リンゴ酸、酒石酸、およびクエン酸などのジ−およびトリ−カルボン酸(M.ボドナー,マグドルナ(Bodnar,Magdolna)ら,論文要旨集(Abstracts of Papers),第228回ACSナショナルミーティング(228th ACS National Meeting),米国ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia,PA,United States,2004年8月22〜26(2004),POLY−179)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アジピン酸などの二酸、あるいはレブリン酸、グリオキシル酸、またはハロゲン化有機酸などの他の多官能性酸を使用してキトサン溶液を調製することができる。これらの添加剤を使用して、約100℃〜120℃の温度で約1〜10分間で不溶性にすることができる。架橋剤は、乾燥させた後のフィルムに適用することもできる。
【0047】
フィルムを塩基と接触させた後、洗浄して、フィルムをキトサン塩型から遊離のキトサンに転化させることによって、フィルムを水不溶性にすることもできる。塩基で処理されるフィルムが基剤に取り付けられている場合は、その塩基の組成および濃度は、基材の性質(たとえば、塩基に対する反応性)および処理条件(たとえば、温度および接触時間、連続方法かバッチ方法か)に影響される。通常、塩基は1重量%〜10重量%の水酸化ナトリウム水溶液であり、典型的な接触時間は周囲温度において30秒〜3時間である。フィルムを不溶性にするために、熱処理と塩基の接触とを併用することもできる。
【0048】
基材材料
自立キトサンフィルムを保護物品中に組み込むこともできるが、基材に接着することもできる。図1を参照すると、フィルムとともに積層体中に組み込まれる基材2上に、直接キトサン溶液を流延することによって、キトサンフィルム1を作製することができる。PETフィルムなどの加工面上に流延し、加工面の取り外しおよび廃棄を行う前後に、追加層または層をコーティングすることもできる。場合によっては、使用条件下での基材の水蒸気透過性が個別の最終用途に適合しているのであれば、上にキトサンフィルムを作製することができる基材自体が、連続シートまたはフィルムであってよい。たとえば、衣類は、テントや防水布よりもはるかに高い水蒸気透過性を必要とする。
【0049】
好適な基材の1つは、平滑な少なくとも1つの表面を有する、すなわち、後にフィルムとなるキトサンコーティングの所望の厚さよりも高い突出部が基材の面上に実質的に存在しない、少なくとも1つの表面を有する。したがって、キトサンコーティングの所望の厚さが25ミクロンである場合には、その厚さが100ミクロンである場合よりも平滑な基材表面が必要となる。
【0050】
好適な基材は、たとえば、使用条件下での水蒸気透過率が個別の最終用途に適合しているフィルムやシート、微孔性膜(すなわち、典型的な孔径が直径約0.1〜10マイクロメートルであるもの)、または以上のいずれかから作製された物品であってよい。キトサンフィルムと接触する基材表面が平滑と非多孔性との両方である基材が好ましい。好適な基材材料としては、エラストマー、ガラス質ポリマー、および半結晶性材料などの極性ポリマーフィルムが挙げられる。極性ポリマーは分散力と双極子間力との両方を有するが、非極性ポリマー分散引力のみを有する。一般に、極性ポリマーは、酸素および窒素を含有する基を実質的な分率で含有するが、非極性ポリマーは、炭化水素またはフルオロカーボンを実質的な分率で含有し、酸素および窒素を含有する基はわずかである。
【0051】
好適な基材材料の例としては、ナフィオン(Nafion)(登録商標)パーフルオロスルホン酸テトラフルオロエチレンコポリマー(米国デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware,USA)より入手可能)、ポリウレタン(たとえば、米国マサチューセッツ州グリーンフィールドのオムニフレックス・カンパニー(Omniflex Co.,Greenfield,Massachusetts,USA)より入手可能なポリウレタンフィルム)、ポリエーテルブロックポリアミドコポリマー(たとえば、フランスのパリのアルケマ(Arkema,Paris,France)より入手可能なペバックス(Pebax)(登録商標)ポリエーテルブロックアミド)、ポリエーテルブロックポリエステルコポリマー、スルホン化スチレン−ポリオレフィンジ−およびトリ−ブロックコポリマー、ならびにポリビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
追加層
本明細書に記載される保護積層体は、連続キトサンフィルムと少なくとも1層の布とを含んでなる。必要に応じて、(a)性能が低下しうる環境からキトサンフィルムを保護する複合構造を形成すること、および/または(b)キトサンフィルムと少なくとも1つの布層とによってのみ得られる特徴以外の特徴を有する積層体、したがって場合によってはその複合構造を形成すること、および/または(c)最終構造の性能を改善すること、を目的として積層体中に追加層(たとえば、第2の布層または微孔性膜)を使用することができる。たとえば、キトサンおよび基材フィルムをダストおよび液体あるいは物理的損傷から保護するために、図1(3、3’)に示されるように、コーティング、熱積層、および当技術分野において公知の他の手段によって、キトサンフィルム、および存在する場合には基材の外面に、追加のフィルムまたは微孔性膜を適用することができる。発射体の衝撃を吸収し着用者が傷つかないようにするため、1つもしくはそれ以上の層の防弾布を使用することができる。
【0053】
多くの最終用途の場合、特に衣服の場合には、連続キトサンフィルム(および存在する場合にはそれに関連する基材)は、環境に露出している外部材料層(図1中の「外部シェル」5)および/または内部ライナー4を含む構造中に組み込まれる。
【0054】
外部材料および内部材料のそれぞれは、耐久性、防弾性、ならびに摩耗または引裂に対する抵抗性などの機能的な理由で選択することができ、さらに、快適感およびファッショナブルな外観を衣服に付与するために選択することができる。軍事用途においてカモフラージュする特徴を導入するために、着色された材料およびパターンが形成された材料を外部層として使用することもできる。典型的には、外部シェルおよび内部ライナー材料は布または微孔性膜である。
【0055】
布は、織布の場合もあり、または不織布(たとえば、スパンボンド法/メルトブローン法によって形成された不織シート構造、あるいはZ.−M.ファン(Huang)ら,Composites Science and Technology(2003),63,2223−2253などに記載されるエレクトロスピニングによって形成された不織シート構造)の場合もある。布は、特定の最終用途を考慮した場合に適切なあらゆる合成または天然の繊維から製造することができる。好ましい布は、アラミド、ナイロン、ポリエステル、綿、およびこれらのいずれかを含んでなる混合物、たとえば、限定するものではないがナイロン繊維と綿繊維との混合繊維(「NYCO」)から製造することができる。本明細書において使用される場合、用語「ナイロン」は、アラミド以外のポリアミドを意味する。アラミドは、アミド(−CONH−)結合の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合している芳香族ポリアミドである。布の熱的性能および快適性に影響を与えるためにアラミド(好ましくは最大40%)を含む難燃繊維を、アラミドと混合することができる。好適なアラミドは、アラミドのジアミンが10パーセント程度別のジアミンで置換されているか、またはアラミドの二酸塩化物が10パーセント程度別の二酸塩化物で置換されていてもよいコポリマーの形態であってよい。本発明の布中にはp−アラミドが好ましく、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−T)が好ましいp−アラミドである。m−アラミドも本発明において用途を見いだすことができ、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)(MPD−I)が好ましいm−アラミドである。本発明における使用に特に好適なp−アラミドおよびm−アラミドの繊維およびヤーンは、それぞれ商標ケブラー(Kevlar)(登録商標)およびノーメックス(Nomex)(登録商標)(米国デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington Delaware,USA))、ならびにテイジンコーネックス(Teijinconex)(登録商標)、トワロン(Twaron)(登録商標)、およびテクノラ(Technora)(登録商標)(大阪の帝人株式会社(Teijin Ltd.,Osaka))で販売されるもの、ならびに他の供給元によって提供される同等の製品である。通常、アラミド布は外部シェル中に使用され、内部ライナーはポリエステル、ナイロン、綿、またはそれらの混合物などの布を含むことが多いが、m−アラミドを内部ライナーの一部として使用し耐火性を改善することもできる。
【0056】
フィルムおよび微孔性膜は、特定の最終用途を考慮した場合に適切なあらゆる合成または天然の材料から製造することができる。内部ライナーまたは外部シェルの成分として使用することができるフィルムおよび微孔性膜の例としては、商標ゴアテックス(GORE−TEX)(登録商標)(米国デラウェア州ニューアークのW.L.ゴア・アンド・アソシエーツ・インコーポレイテッド(W.L.Gore & Associates,Inc.,Newark,Delaware,USA))で販売されるものなどの発泡ポリ(テトラフルオロエチレン)膜、疎水性ポリウレタン微孔性膜(たとえば、S.ブレジンスキー(Brzezinski)ら,Fibres & Textiles in Eastern Europe,January/December 2005,13(6),53−58参照)、3M(米国ミネソタ州セントポール(St.Paul,Minnesota,USA))などより入手可能な微孔性(ポリ)プロピレン、オムニフレックス(Omniflex)(米国マサチューセッツ州グリーンフィールド(Greenfield,Massachusetts,USA))より商標トランスポート(Transport)(登録商標)ブランド・フィルム(Brand Film)で販売されるものなどの熱可塑性ポリウレタン薄膜、アルケマ(フランスのパリ(Paris,France))によるペバックス(Pebax)(登録商標)ポリエーテルブロックアミド、およびE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)(米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware,USA))より入手可能なポリエステルフィルムであるデュポン(DuPont)(商標)アクティブ・レイヤー(Active Layer)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
製造
本明細書に記載される選択的透過性積層体は、当技術分野において公知のあらゆる縫製、ステッチング、ステープラーによる固定、または加熱加圧などの接着作業のいずれかを使用して組み合わせることができる。
【0058】
図1を参照すると、組み合わされる層は、キトサンフィルム1と、少なくとも1つの別の層とを含む。たとえば、キトサンフィルムが加工デバイス上に流延される場合、次にそのフィルムが乾燥され、自立フィルムとして取り外される。別の層は、加工デバイスから取り外す前または後のいずれかに加えることができる。次に、ポリウレタン系接着剤などの接着剤を使用して別の層(たとえば、基材、外部シェル、内部ライナー)に取り付けることができる。接着剤は、連続層、接着剤のドットの配列、あるいは直線または曲線などの多数の別のパターンで存在することができる。接着剤は、スプレーまたはグラビアロールなどの多種多様の方法で適用することができる。
【0059】
本明細書において開示される積層体から衣料品などの構造またはその他の物品を製造するために、本発明の積層体は、(追加の)織布の間に挟むことができる。本発明のフィルム構造と布との間の接合は、連続的な場合も、半連続な場合もあり、たとえば、接着剤のドットまたはフィルムを有することができる。あるいは、この接合は不連続の場合もあり、たとえば、多くの場合に「ハングライナー」(hung−liner)と呼ばれる配列で縁端部が互いに縫い合わされることによって接合される場合がある。不連続な接合の別の手段としては、ベルクロ(Velcro)(登録商標)ストリップまたはジッパーの使用を挙げることができる。
【0060】
使用
本発明の積層体、および連続キトサンフィルム自体は、選択的透過性であり、少なくとも2kg/m/24hの水蒸気輸送速度(Moisture Vapor Transport Rate)(「MVTR」)を有するが、人の健康に対して有害な材料の輸送速度は、障害、疾患、または死亡の発生を防止するのに十分低い速度である。必要とされる具体的な輸送速度は、必然的に特定の有害物質に依存し、たとえば、NFPA 1994(2006年改訂)では、1時間累積透過量が、マスタードの場合<4.0μg/cmが必要で、ソマン(Soman)の場合<1.25μg/cmが必要であり、どちらの基準も、本発明の積層体およびそれが含有する連続キトサンフィルムによって満たされる。したがって、限定するものではないが戦闘員環境中で使用される可能性のある物質、ならびに「毒性工業化学物質」(Toxic Industrial Chemical)(TIC)または「毒性工業物質」(Toxic Industrial Material)(TIM)と特定される物質などの有毒化学物質および/または生物学的物質に曝露したことによって発生する被害または障害から着用者または使用者を保護することが意図された保護服、特に衣服、衣類、またはその他の品目などの種々の製品の製造またはその成分として、本発明の積層体、および連続キトサンフィルム自体を使用することができ、たとえば、米国司法省国立司法研究所(National Institute of Justice,U.S.Department of Justice)(2001年10月)刊行の緊急時第一応答者のための化学的および生物学的汚染除去設備の選択指針(Guide for the Selection of Chemical and Biological Decontamination Equipment for Emergency First Responders),NIJガイド103−00第I巻(NIJ Guide 103−00,Volume I)を参照することができ、この記載内容を本明細書に援用する。TICの数例としては、ホスゲン、塩素、パラチオン、およびアクリロニトリルが挙げられる。特定の物質による積層体または積層体中の層の透過率は、限定するものではないが、ASTM F739−91の「連続接触条件下での液体または気体の透過に対する保護衣料の抵抗性の標準試験方法」(Standard Test Method for Resistance of Protective Clothing Materials to Permeation by Liquids or Gases Under Conditions of Continuous Contact)に記載される方法などの種々の方法によって求めることができる。
【0061】
一実施形態においては、本発明の衣料品は、戦闘員環境において遭遇する可能性のある化学物質および生物学的物質への皮膚曝露から兵士を保護するために有用である。このような物質の例としては、サリン(Sarin)(「GB」、O−メチルホスホノフルオリド酸イソプロピル)、ソマン(Soman)(「GD」、メチルホスホノフルオリド酸O−ピナコリル)、タブン(Tabun)(「GA」、N,N−ジメチルホスホルアミドシアニド酸O−エチル)、およびVX(O−エチルS−2−ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホノチオレート)などの神経ガス、硫黄マスタード(たとえば、ビス(2−クロロエチル)スルフィドおよびビス(2−クロロエチルチオ)メタン)などのびらん剤、2−クロロビニルジクロロアルシンなどのルイサイト(Lewisite)、ビス−(2−クロロエチル)エチルアミン(「HN1」)などのナイトロジェンマスタード、ブロモベンジルシアニド(「CA」)および塩化フェニルアシル(「CN」)などの催涙ガスおよび暴動鎮圧剤、ウイルス(たとえば、脳炎ウイルス、エボラウイルス)、細菌(たとえば、斑点熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、および毒素(たとえば、リシン(Ricin)、コレラ毒素)などのヒト病原体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ヒト病原体の1つは、ヒトに病気を発生させる微生物である。
【0062】
さらに別の一実施形態においては、本発明の衣料品は、緊急対応状況において遭遇する可能性のある既知または未知の化学物質または生物学的物質から第一応答者の作業員を保護するために有用である。さらに別の一実施形態においては、本発明の物品は、危険物に対応する状況中に化学物質または生物学的物質から汚染除去作業員を保護することを意図している。上述の物質以外の危険物の例としては、ある種の農薬、特に有機リン農薬が挙げられる。
【0063】
このような衣服、衣類、またはその他の品目としては、カバーオール、保護スーツ、コート、ジャケット、限定的に利用される防護服、雨具、スキーパンツ、手袋、靴下、長靴、靴および長靴のカバー、ズボン、フード、帽子、マスク、およびシャツが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
別の一実施形態においては、本発明の積層体は、化学兵器および/または生物兵器から防護するための、防水布などの保護カバー、またはテントなどの集団用シェルターを製造するために使用することができる。
【0065】
さらに、本発明の積層体は、毒性の化学物質および/または生物学的物質から保護する種々の医療用途に使用することができる。一実施形態においては、本発明の積層体は、内科または外科用のガウン、手袋、スリッパ、靴または長靴のカバー、ならびに頭部カバーなどの保健医療従業者の衣料品の構成に使用することができる。
【実施例】
【0066】
以下の実施例において、本発明の具体的な実施形態を説明する。これらの実施例が基礎とする本発明の実施形態は単に説明的なものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0067】
実施例中に使用される略語の意味は以下の通りである:「s」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「kg」はキログラムを意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「oz」はオンスを意味し、「yd」はヤードを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「m」はメートルを意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「μm」はマイクロメートルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「M」はモル濃度を意味し、「N」は規定濃度を意味し、「重量%」は重量パーセントを意味し、「ppm」は百万分率を意味し、「MW」は分子量を意味し、「M」は数平均分子量を意味し、「M」は重量平均分子量を意味し、「ND」は検出されないことを意味し、「Pa」はパスカルを意味し、「kPa」はキロパスカルを意味し、「psig」はポンド/平方インチゲージを意味し、「PU」はポリウレタンを意味し、「SEC」はサイズ排除クロマトグラフィーを意味する。特に明記しない限り、使用した水は蒸留水または脱イオン水である。
【0068】
以下の実施例中で使用したキトサン材料は、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,Wisconsin,USA))から入手したものであるか、または記載されている場合はノルウェーのプリメックス・イングレジエントASA(Primex Ingredients ASA,Norway)より入手した商標キトクリア(ChitoClear)(登録商標)キトサンであった。製造元によると、プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度が26cPである(0.026Pa・s、1%酢酸水溶液1%のキトサン)。MnおよびMwをSECによって求めると、それぞれ33,000および78,000であった。
【0069】
方法
標準キトサン塩溶液の調製
特に明記しない限り、実施例ではこの方法を使用してキトサン溶液を調製した。フードブレンダーのカップを沸騰水浴中であらかじめ加熱し、ブレンダーのモーター上に取り付け、564gの熱水および36gのキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)(0.22モルの−NH)を投入する。強く撹拌しながら、11.5g(0.25モル)のギ酸を加える。このギ酸は純度98%であり、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,Wisconsin))より入手した。直後に粘度が増加する。3分間の撹拌後、得られた粘稠物をパイレックス(Pyrex)(登録商標)ガラス瓶に入れ、沸騰水浴中で1h加熱する。その後、粗い濾紙で加圧濾過する。得られる溶液は、室温で3日間静置すると気泡がなくなる。
【0070】
この手順は、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)およびプリメックス・イングレジエントASA(Primex Ingredients ASA)(キトクリア(ChitoClear)(登録商標)TM−850−2)より入手されるより低分子量のキトサンにも好適であるが、しかし、より高分子量のキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−1292)の場合、好適な流延溶液を得るためにはより多くの水が好ましい。
【0071】
標準ガラス板の調製
ガラス板などの加工デバイス上にフィルムを流延する場合、ガラス板表面が清浄であることが重要である。実施例では以下のクリーニング手順を使用したが、あらゆる徹底的なクリーニング手順が好適となるであろう。パイレックス(Pyrex)(登録商標)ガラス板をPEXラボ・ソープ(PEX lab soap)で洗浄し、水洗し、拭き取って乾燥させた。次に、この板をメタノールでクリーニングし、最後に、10重量%NaOH水溶液でコーティングし、こすり、10分間静置する。最後の水洗を行い、柔らかいペーパータオルを使用して乾燥させると、板が流延に使用できる状態になる。
【0072】
分子量測定
ウォーターズ2690セパレーションモジュール(Waters 2690 separations module)、ワイアット−DAWN DSP(Wyatt−DAWN DSP)多重角度(18)光散乱検出器、ウォーターズ(Waters)410示差屈折計(米国マサチューセッツ州ミルフォードのウォーターズ・コーポレーション(Waters Corporation,Milford,Massachusetts,USA))、およびビスコテック(Viscotek)T60−B粘度計(米国テキサス州ヒューストンのビスコテック(Viscotek,Houston,Texas,USA))よりなる3つの検出器の水溶液システムを使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって、キトサン試料の分子量を測定する。2つのTSK−ゲルGMPW(TSK−GEL GMPW)カラム(トーソー・バイオサイエンスLLC(TOSOH Bioscience LLC)、東ソー株式会社(TOSOH Corporation)、東京)を使用する。移動相は、流量0.5mL/minの0.3Mの酢酸ナトリウムを有する0.3M酢酸水溶液である。最初に、振盪機中で4時間かけて試料を溶解させた。
【0073】
水蒸気透過速度(MVTR)
これは、MVTR測定の反転カップ法(Inverted Cup method)[ASTM E 96手順BW(ASTM E 96 Procedure BW)、布の水蒸気透過の標準試験方法(Standard Test Methods for Water Vapor Transmission of Fabrics)(ASTM 1999)]に由来する方法によって測定される。上部に開口部を有する容器に水を投入し、続いて、最初に開口部を、発泡PTFEフィルム(「ePTFE」)の蒸気透過性(液体不透過性)層で覆い、次にMVTRを測定する試料で覆い、最後に織布オーバーレイ層[NYCO 50:50ナイロン/綿混合物、6.7oz/yd(0.23kg/m)またはノーメックス(Nomex)(登録商標)布、5.6oz/yd2(0.19kg/m)、どちらも耐久性撥水仕上剤で処理済み]で覆う。これら3層は、所定の位置で封止され、層のコンディショニングのために30分間反転させ、0.001gの単位で最も近い値まで秤量し、反転させた状態で乾燥窒素流と接触させる。指定の時間後、試料を再度秤量し、以下の式によってMVTRを計算する(kg/m/24h):
MVTR=1/[(1/MVTRobs)−(1/MVTRmb)]
上式中、MVTRobsは測定で求められたMVTRであり、MVTRmbはePTFE防湿層のMVTR(別に測定)である。報告される値は、4つの反復試験試料の結果の平均である。
【0074】
ジメチルメチルホスホネート(「DMMP」)の透過
DMMPを、化学兵器Gクラスの神経ガスの比較的毒性のない類似物として使用した。後述の実施例におけるDMMPの透過は、以下のように行った:上部に開口部を有する容器に、GC内部標準として0.100%のプロピレングリコールを含有する一定量の水を投入した。試料がフィルムの場合には、開口部を試料フィルムで覆い、フィルム上部織布オーバーレイ層[NYCO 50:50ナイロン/綿混合物、6.7oz/yd(0.23kg/m)またはノーメックス(Nomex)(登録商標)、5.6oz/yd(0.19kg/m)、どちらも耐久性撥水仕上剤で処理済み]を取り付け、これらの層を所定の位置で封止する。試料がすでに布表面を有する積層体の場合には、追加の布オーバーレイ層を使用しなかった。どちらの種類の試料でも、布表面は2μLのDMMP(2.3mg)を滴下して処理した。窒素パージした箱に容器を17h入れた後、水中のDMMP濃度をGC分析により測定した。結果は、17h後に水中で測定されたDMMPをμgの単位で報告しており、5つの反復試験試料の平均である。DMMPは、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,Wisconsin))より入手したものであり、入手したままの状態で使用した。
【0075】
塩素の透過
これは以下のように測定した:部に開口部を有する容器に一定量の水を投入した。開口部を試料フィルムで覆い、次に50:50ナイロン/綿混合物の織布オーバーレイ層(NYCO、耐久性撥水仕上剤で処理済み)で覆った。これらの層を所定の位置で封止し、試料をチャンバー内に入れた。チャンバーの雰囲気を塩素/窒素混合物(米国ペンシルバニア州モンゴメリービルのマジソン・トライガス・インコーポレイテッド(Matheson Tri−Gas、Inc.,Montgomeryville,Pennsylvania,USA)の窒素中1000ppmの塩素)で置換し、この環境中で試料を周囲温度および周囲圧力下で1h維持した。次に試料をチャンバーから取り出して、容器中の水を分析した。エクスティック(ExStik)(商標)塩素メーター(Chlorine Meter)(米国マサチューセッツ州ウォルサムのエクステック・インストルメンツ(Extech Instruments,Waltham,Massachusetts,USA)を使用して塩素を測定した。透過はμg/m/hとして報告する。
【0076】
マスタードおよびソマン(Soman)の透過速度
米軍TOP−8−2−501(二重流動法)を、硫黄マスタードS(CHCHCl)と神経ガスのソマン(Soman)の24時間透過試験に使用した。あるいは、NFPA 1994(2006年改訂)を使用して同じ2種類の物質の1時間の累積透過を測定した。
【0077】
実施例1および2は、連続キトサンフィルムの調製および輸送特性を示している。
【0078】
実施例1
パイレックス(Pyrex)(登録商標)ガラス瓶中で調製したアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー((Milwaukee,Wisconsin,USA)カタログ番号44,886−9)より入手したブルックフィールド(Brookfield)粘度(1%酢酸中1%溶液)が20〜200cP(0.02〜0.2Pa・s)である7.5g(47mmolの−NH)のキトサンと、175gの水と、2.3g(53mmol)のギ酸との混合物を、沸騰水浴中で加熱し、溶液が得られるまで繰り返し回転させた。この溶液を、約40psi(276kPa)下で粗い濾紙で加圧濾過した。この溶液を4日間保管して気泡を分離させた。計算キトサン含有率:4.3重量%。
【0079】
30ミル(0.76mm)ドクターナイフを使用してパイレックス(Pyrex)(登録商標)ガラス板上に溶液を流延し、100℃で乾燥させることによって1Aおよび1Bの2つのフィルムを作製した。室温で数時間後、鋭利なかみそりの刃を使用して端部を元挙げることによって、一方のフィルム(1A)をガラスから持ち上げた。このフィルムは、まだギ酸塩型であったので、水に可溶性であった。NYCOオーバーレイ層を使用した測定では、MVTR=23.7kg/m/日、DMMP透過=17hで6μgである。
【0080】
流延したガラス板から第2のフィルム(1B)を取り外す前に、これらのフィルムおよびガラスは、10重量%水酸化ナトリウム水溶液の浴中に1時間入れた。フィルムは自然にガラス板からはがれ、このフィルムは、もはや可溶性のギ酸塩型ではないため不溶性であった。
【0081】
洗液が中性になるまで、第2のフィルムを蒸留水で洗浄した後、剥離剤がコーティングされたアルミニウム箔(レイノルズ(Reynolds)ブランドのアルミニウム箔)上に浮かべ、注意深く水から持ち上げ、風乾した。NYCOオーバーレイ層を使用した測定では、MVTR=17.6kg/m/24h、DMMP透過=17hで1μgであった。
【0082】
実施例2
キトサン(20g、120mmol、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company))を、高速撹拌する水(380g)中のギ酸(6.6g、120mmol)溶液に加えた。この粘稠物を瓶の中で振り混ぜ、次にロールミル上で1h回転させ、次に粗い濾紙で加圧濾過した。20ミル(0.5mm)ドクターナイフを使用して、得られた溶液から平坦なパイレックス(Pyrex)ガラス板上にフィルムを流延し、90℃で乾燥させた後、10%NaOH水溶液で20分間処理した。かみそりの刃を使用してガラスからフィルム端部を持ち上げ、続いてガラスから注意深く引き上げることによって、洗浄し乾燥させたフィルムをガラスから取り外した。このフィルムの厚さは約20ミクロンであった。NYCO織布オーバーレイ層を使用した測定では、MVTRが20.4kg/m/日であり、DMMP透過が17hで0μgであり、Cl透過が、0.8μg/cm/hであった。ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用した測定では、MVTRが23.8kg/m/日であり、DMMP透過が17hで0μgであった。
【0083】
実施例3
この実施例は、加熱によってキトサン塩フィルムを不溶化できることを示す。
【0084】
前述の方法によって調製したキトサンギ酸塩溶液を濾過したものを、ガラス板上に流延し、100℃で乾燥させた(試料3A)。次に試料3Aの一部を200℃で15min加熱した(試料3B)。試料3Bは、もはや水および水性酸に対して可溶性ではなかった。熱処理によるMVTRおよびDMMP透過への有意な影響はなかった。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例4および5は、フィルムの作製に使用するキトサンの分子量を変化させても、キトサンフィルムのMVTRおよびDMMP障壁特性の有意な変化がないことを示す。
【0087】
実施例4
10gのキトサンおよび2.8gのギ酸を使用して、ギ酸塩としてのキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−1292、SECによる測定でM=232,000およびM=452,000)の2.4%溶液を、実施例2の方法により調製した。瓶の中でこの混合物を、均一になるまでミル上で回転させた。製造元によると、プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−1292は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度が3362cP(3.362Pa・s、1%酢酸水溶液1%のキトサン)である。
【0088】
20ミル(0.51mm)ドクターナイフを使用して、清浄なガラス板上にフィルムを流延した。100℃で乾燥させた後、10%NaOH水溶液でフィルムを10分間処理した。ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用して行ったMVTRおよびDMMP透過測定を表1に示す。
【0089】
実施例5
水中のギ酸塩として、10%の低分子量キトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−850−2)の溶液を調製した(3.3gのキトサン/0.55gのギ酸)。瓶の中でこの混合物を、均一になるまでミル上で回転させた。SECにより測定したMは18,000であり、Mwは44,000であった。製造元によると、プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−850−2のブルックフィールド(Brookfield)粘度は9cP(0.009Pa・s、1%酢酸水溶液1%のキトサン)である。20ミル(0.51mm)ドクターナイフを使用して、上記生成物を、清浄なガラス板上に流延した。100℃で乾燥させた後、10%NaOH/水でフィルムを10分間処理した。ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用して行ったMVTRおよびDMMP透過測定を表1に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
実施例6
この実施例は、キトサンフィルムの性能に対する酸の種類および熱処理の影響を示す。
【0092】
キトサンと、表2に示される種々の酸との水溶液からキトサンフィルムを作製した。
【0093】
手順A
10mLのHO中の1gのキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656キトサン)の懸濁液に、6mLの熱水または冷水中に溶解させた表示の酸1モル当量(キトサン−NH基に関して)を加えた。この混合物は1oz(30mL)のシンチレーションバイアル中で作製した。内容物が均一に見えるようになるまで、バイアルをボールミル上で回転させ、続いて保管することによって粘稠溶液から気泡を上昇させた後、フィルムの流延を行った。約95〜100℃の乾燥よりも高温の熱処理を行った場合は、その条件(最高温度およびその温度における時間)を表2に示している。
【0094】
手順B(6Hで使用)
量を10倍にしたことを除けば手順Aと同じである。
【0095】
NYCOオーバーレイ層を使用した透過測定を表2に示している。
【0096】
【表3】

【0097】
実施例7、8、および9は、連続キトサンフィルムを含む積層体の作製および性質を示す。
【0098】
実施例7
実施例2と類似の方法(NaOH溶液に約2分間だけ曝露したことを除く)で標準キトサン塩溶液から作製したキトサンフィルム(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)を、6.7oz/yd(0.23kg/m)のナイロン−綿混合物(50:50)の布、ポリウレタン溶融接着剤のドットマトリックスパターン、および厚さ9μmのポリウレタンフィルム(米国マサチューセッツ州グリーンフィールドのオムニフレックス(Omniflex,Greenfield,Massachusetts,USA)のオムニフレックスTX1540トランスポート(Omniflex TX 1540 Transport)(登録商標)ブランド・フィルム(Brand Film))よりなる予備成形された積層体のポリウレタン側に、熱積層(175℃、10psig(70kPa)、10s)した。得られた積層体のMVTRは10.7kg/m/24hであり、17h後にDMMP透過は検出されなかった。
【0099】
実施例8
実施例7と同様に作製した厚さ25μmのキトサンフィルムを、予備積層した積層体4A[ポリウレタン接着剤のドット(被覆率25%)を使用してモノリシックポリウレタン(PU)フィルム(厚さ9μm)に接合させたノーメックス(Nomex)(登録商標)パジャマチェック(pajamacheck)布(織布、3.3oz/yd、0.11kg/m)。この厚さ9μmのポリウレタンフィルムは、オムニフレックス・カンパニー(Omniflex、Co.)(米国マサチューセッツ州グリーンフィールド(Greenfield,Massachusetts,USA))TX 1540トランスポート(Transport)(登録商標)ブランド・フィルム(Brand Film)であった]のポリウレタン側に熱積層(160℃、10psig(70kPa)、10s)した。
【0100】
試料について、硫黄マスタード[S(CHCHCl)]および神経ガスのソマン(Soman)の米軍TOP−8−2−501(二重流動)プロトコルによる24h透過測定を3回試験した。マスタードの場合の総累積量は、3回の試験でND(「検出されず」)、ND、およびNDであり、ソマン(Soman)の場合は、3回の試験でND、0.07μg/cm、および0.11μg/cmであった。
【0101】
実施例9
2つの積層体構造9Aおよび9Bを以下のように作製した:
【0102】
9A:ポリウレタン接着剤のドット(被覆率25%)を使用して、ノーメックス(Nomex)(登録商標)パジャマチェック(pajamacheck)布(織布、3.3oz/yd、0.11kg/m)をモノリシックポリウレタン(PU)フィルム(厚さ5〜10μm)に接合した。
【0103】
9B:ポリウレタン接着剤のドット(被覆率25%)を使用して、ノーメックス(Nomex)(登録商標)編地(1.5oz/yd、51g/m)をポリウレタン(PU)フィルム(厚さ5〜10μm)に接合した。
【0104】
フィルムの流延に30ミル(0.75mm)ドクターナイフを使用したことを除けば、実施例7と類似の方法でキトサンフィルム(厚さ30μm)を作製した。フィルム試料を、積層体構造9Aおよび9Bの間で、それぞれのPUフィルムがキトサンに面するようにして熱積層(125psig(862kPa)において130℃で45s)した。次にこれらの試料を、積層体9Aが上向きになるようにして、7.5oz/yd(0.25kg/m)のリップストップポリベンズイミダゾール(「PBI」)/パラ系アラミド繊維混合物(サザン・ミルズ・インコーポレイテッド(Southern Mills,Inc.)よりジェミニ(Gemini)の商標で入手可能)の外部シェルを上に重ねた。
【0105】
得られた構造から切り取った試料について、NFPA 1994(2006年改訂)試験プロトコルに基づいた硫黄マスタード[S(CHCHCl)]および神経ガスのソマン(Soman)の透過測定を行った。3回の実験によるマスタードの場合の1h累積透過は、ND(「検出されず」)、ND、0.045、(μg/cm)であり、ソマン(Soman)の場合は、2回の試験で0.018および0.090(μg/cm)であり、NFPA 1994(2006年改訂)条件であるマスタードの場合の1時間累積透過<4.0μg/cmおよびソマン(Soman)の場合の<1.25μg/cmにすべて合格した。
【0106】
以下の3つの比較例は、連続フィルムが得られない方法で織布を処理するとDMMP透過値で示される保護特性が十分となる材料が得られないことを示す。
【0107】
比較例A
アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー((Milwaukee,Wisconsin,USA)カタログ番号44,886−9)より入手したブルックフィールド(Brookfield)粘度(1%酢酸中1%の溶液)が20〜200cP(0.02−0.2Pa・s)であるキトサンを使用して調製した4.3%のキトサン水溶液(ギ酸塩として)を、ガラス板上に流延した。ノーメックス(Nomex)(登録商標)編地(米国デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware,USA))を、未乾燥の流延表面上に重ねた。流延溶液によってノーメックス(Nomex)(登録商標)布が濡らされる。この組立体を100℃で乾燥させた後、10%NaOH水溶液中に30分間浸漬し、遊離の塩基をHOで洗い流し、乾燥させた。このように処理した布は液体の水が透過性であることが分かり、このことは連続キトサンフィルムが形成されなかったことを示している。NYCOオーバーレイ層を使用した測定は、MVTRが21.4kg/m/24hであり、DMMP透過が17hで198μgであった。
【0108】
比較例B
比較例Aと類似の方法で、綿製のチーズクロスをキトサンギ酸塩溶液で処理した。この処理したチーズクロスは液体の水が透過性であったが、このことは連続キトサンフィルムが形成されなかったことを示している。NYCOオーバーレイ層を使用した測定は、MVTR、18.7kg/日であり、DMMP透過は17hで140μgであった。
【0109】
比較例C
典型的な消防士の制服の防護服中に使用される種類のケブラー(Kevlar)(登録商標)/ノーメックス(Nomex)(登録商標)アラミドバットサーマルライナー(aramid batt thermal liner)の試料を、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware))より入手した。このバットは、75%のケブラー(Kevlar)(登録商標)繊維および25%のノーメックス(Nomex)(登録商標)繊維よりなった。このバットを、ノーメックス(Nomex)(登録商標)よりなるタオルに縫い合わせた。このケブラー(Kevlar)(登録商標)/ノーメックス(Nomex)(登録商標)の1枚の布を水に浸漬した。この濡れた布を、0.75%酢酸水溶液中の2%のキトサン(キトクリア(ChitoClear)(登録商標)TM−656)溶液を入れたトレイに通し、次に液体を絞り出すニップロールに通した。こうして処理した布を次に乾燥機で60℃において1h乾燥させた。
【0110】
このキトサンで処理し乾燥させた布は、液体の水が透過性であることが分かったが、このことは連続キトサンフィルムが形成されなかったことを示している。NYCO外部シェル材料を使用して測定したDMMP透過は、17hで210μgのDMMPであり、NYCO外部シェル材料を使用しない場合は、17hで305μgのDMMPであった。
【0111】
実施例10〜13は、キトサンをコーティングしたポリパーフルオロスルホン酸(「PFSA」)テトラフルオロエチレンコポリマーフィルム の性能を示す。
【0112】
実施例10
厚さが約89ミクロンで3インチ×3インチ(7.6cm×7.6cm)のナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSA 1135フィルム(米国デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware USA))を沸騰水中で膨潤させ、次にガラス板上に押し付けて平坦にして隆起およびしわがないようにした。このフィルムは厚さが5ミル(0.13mm)未満であった。幅4インチ(10cm)のドクターナイフを、20ミル(0.51mm)の間隙で、その辺稜部をナフィオン(Nafion)(登録商標)フィルム上ではなくガラス上に置いて使用して、ナフィオン(Nafion)(登録商標)フィルムに、6%のキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656、ギ酸塩として)水溶液をコーティングした。得られた複合フィルムを100℃で乾燥させ、ガラスに取り付けたまま維持し、10%NaOH水溶液で3min処理することによって一部を取り外し、続いて遊離の塩基を洗い流し、乾燥させた。NYCOオーバーレイ層を使用して、未処理のナフィオン(Nafion)(登録商標)フィルム10A、およびキトサン処理したフィルム10Bに対して測定を行い、それらの結果を以下に示している。
【0113】
同様の方法で第2のフィルムを作製し、続いて、乾燥させたフィルムの一部を170℃で加熱すると、堅く非常に薄い黄色のフィルムが得られた。ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用して、MVTRおよびDMMP透過測定を未加熱のフィルム10C、および加熱したフィルム10Dに対して行い、それらの結果を表3に示した。
【0114】
【表4】

【0115】
実施例11
93.2gの蒸留水中の5.1gのキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)の溶液を70℃に加熱した。激しく撹拌しながら1.66gの氷酢酸を加えた。気泡を消散させるためにこの溶液を終夜保管した。計算キトサン含有率:5.1重量%。
【0116】
30ミル(0.76mm)ドクターナイフを使用して、この溶液を7ミル(0.18mm)マイラー(Mylar)(登録商標)ポリエステルフィルム上に流延することによってフィルム11Aを作製した。室温で終夜乾燥させた後、テープを使用して端部を持ち上げることによって、フィルム(厚さ0.7ミル(0.18mm))をマイラー(Mylar)(登録商標)ポリエステルフィルムから取り外した。このフィルム試料は水に対して不溶性であることが分かった。ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用した測定は、MVTRが38.0kg/m/24hであり、DMMP透過が17hで0μgであった。
【0117】
8ミル(0.20mm)ドクターナイフを使用して、上記溶液を0.75ミル(19μm)ナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSAフィルム(マイラー(Mylar)(登録商標)ポリエステルフィルムバッキング上)に流延することによってフィルム11Bを作製した。このフィルムを室温で終夜乾燥させた。テープを使用して端部を持ち上げることによって、得られた0.3ミル(8μm)キトサン/0.75ミル(19μm)ナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSAフィルムをマイラー(Mylar)(登録商標)ポリエステルフィルムから取り外した。ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用した透過値は、MVTRが42.6kg/m/24hでありDMMP透過が17hで0μgであった。
【0118】
実施例12
改良したワールドワイド・マグネティック・テープ・ラム(Worldwide Magnetic Tape Ram)スロットダイコーターを使用して、3ミル(76μm)マイラー(Mylar)(登録商標)ポリエステルフィルム基材上に、幅25インチ(0.64m)、厚さ0.2〜0.6ミル(5μm〜15μm)のキトサンフィルムを作製した。4.2重量%のキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)を含有する1.6%酢酸水溶液をあらかじめ10μmフィルターで濾過したものを、2つの40μmフィルターを取り付けたポンプカート組立体に投入した。コーティング前に取り込まれた空気をシステムから除去するために、溶液をダイにパージした。上記キトサン溶液をマイラー(Mylar)(登録商標)ポリエステルフィルム基材上に流延し、3つの加熱帯域に通して、フィルムを作製した。フィルム取り込み中にフィルム表面を保護するためにポリエチレンカバーシートを加えた。0.4ミル(10μm)のフィルムを流延するために、以下の条件を使用した:
流延条件
ライン速度:10fpm(0.05m/s)
ポンプ速度(溶液):55rpm(5.8rad/s)
ダイとウェブの間の間隙:6ミル(150μm)
ダイの真空:1.2インチHO(299Pa)
乾燥条件
帯域1:160°F(71℃)
帯域2:160°F(71℃)
帯域3:260°F(127℃)
【0119】
得られたキトサンフィルムは、平滑な表面および均一な厚さを有した。ポンプ速度を偏光することによって、異なるキトサンフィルム厚さを得た。流延したフィルムを安定化させるために、必要に応じてダイの真空を調整した。次に、マイラー(Mylar)(登録商標)ポリエステルフィルムバッキングおよびポリエチレンカバーシートを取り外し、ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用した透過値を求めると、MVTRが40.0kg/m/24hであり、DMMP透過が17hで4μgであった。
【0120】
同様の条件を使用して5重量%のキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)を含有する1%ギ酸水溶液からもキトサンフィルムを作製した。
【0121】
実施例13
改良したワールドワイド・マグネティック・テープ・ラム(Worldwide Magnetic Tape Ram)スロットダイコーターを使用し、実施例12に記載の方法を使用して、4.2重量%のキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)を含有する0.6%酢酸水溶液を、10μmフィルターであらかじめ濾過したものを、ナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSA基材上に流延することによって、幅25インチ(0.64m)、厚さ1.2〜1.4ミル(30μm〜36μm)のフィルムを作製した。E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)(米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware,USA))より入手可能な市販の1.0ミル(25μm)Gen 1およびGen 2 CSナフィオン(Nafion)(登録商標)フィルム上にキトサンフィルムを流延した。この結果得られたキトサン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)フィルムは、平滑で均一な表面を有し、厚さの均一性が良好であった。ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用した透過値は、MVTRが38.6kg/m/24hであり、DMMP透過が17hで0μgであった。
【0122】
実施例14〜17は、連続キトサンフィルムおよびナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSAフィルムを有する積層体の作製および性能を示す。
【0123】
実施例14
75μmのPETフィルムによって支持され乾燥時フィルム厚さが20μmであるナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSAフィルムを、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)(米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware,USA))より入手した。0.2mmの間隙でドクターブレードを使用して、PETフィルムによって支持されているナフィオン(Nafion)(登録商標)フィルム側の上に、ギ酸塩としての5%キトサン水溶液をコーティングした。これを150℃で2分間乾燥させると、キトサンの乾燥時フィルム厚さは8μmであった。PETを取り外し、このキトサン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)構造を、予備成形された積層体[ポリウレタン接着剤ドット(被覆率25%)を使用してポリウレタンフィルム(厚さ5〜10μm)に接合したナイロントリコット布(1.3oz/yd、44g/m)]のポリウレタン側に、160℃、10psig(70kPa)において合計時間10sで積層して、ナイロントリコット/接着剤ドット/PUフィルム/キトサン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の最終積層体を作製した。
【0124】
上記最終積層体の試料について、米軍TOP−8−2−501(二重流動)プロトコルによる硫黄マスタード[S(CHCHCl)]および神経ガスのソマン(Soman)の24h透過試験を3回行った。マスタードの場合の総累積量は、3回の試験で23.4μg/cm、5.8μg/cm、15.4μg/cmであり、ソマン(Soman)の場合、3回の試験で1.6μg/cm、1.6μg/cm、および2.3μg/cmであった。
【0125】
実施例15
乾燥時フィルム厚さが20μmであり75μmのPETフィルムによって支持されたナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSAフィルムを、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)(米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware,USA))より入手した。0.2mmの間隙でドクターブレードを使用して、PETフィルムによって支持されているナフィオン(Nafion)(登録商標)フィルム側の上に、ギ酸塩としての5%キトサン水溶液をコーティングした。これを150℃で2分間乾燥させると、キトサンの乾燥時フィルム厚さは8μmであった。次に、このキトサン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)構造を、予備成形された積層体[ポリウレタン接着剤ドット(被覆率25%)を使用してポリウレタンフィルム(厚さ5〜10μm)に接合したナイロントリコット布(1.3oz/yd、44g/m)]のポリウレタン側に、190℃、10psig(70kPa)において合計時間10sで積層した。PETを取り外し、次にこの構造のナフィオン(Nafion)(登録商標)側を、もう1つの予備成形された積層体の層のポリウレタン側に、170℃、10psig(70kPa)において、合計時間10sで積層して、ナイロントリコット/接着剤ドット/PUフィルム/キトサン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)/PUフィルム/接着剤ドット/ナイロントリコットの最終積層体を作製した。
【0126】
上記最終積層体の試料について、米軍TOP−8−2−501(二重流動)プロトコルによる硫黄マスタード[S(CHCHCl)]および神経ガスのソマン(Soman)の24h透過試験を3回行った。マスタードの場合の総累積量は、3回の試験で7.7μg/cm、4.7μg/cm、および4.7μg/cmであり、ソマン(Soman)の場合、3回の試験でNDμg/cm、NDμg/cm、およびNDμg/cmであった。
【0127】
実施例16
乾燥時フィルム厚さが20μmであり75μmのPETフィルムによって支持されたナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSAフィルムを、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)(米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware,USA))より入手した。0.2mmの間隙でドクターブレードを使用して、PETフィルムによって支持されているナフィオン(Nafion)(登録商標)フィルム側の上に、ギ酸塩としての5%キトサン水溶液をコーティングした。これを150℃で2分間乾燥させると、キトサンの乾燥時フィルム厚さは8μmであった。このキトサン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)構造を、厚さ9μmのPUフィルムに190℃で接合した。次に、このPU/キトサン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)/PET構造を、予備成形された予備積層体[ポリウレタン接着剤ドット(被覆率25%)を使用してポリウレタンフィルム(厚さ5〜10μm)に接合したナイロントリコット布(1.3oz/yd、44g/m)]のPU側に、190℃、10psig(70kPa)において合計時間10sで積層した。PETを取り外し、上記構造のナフィオン(Nafion)側を、もう1つの予備成形された予備積層体の層のPU側に、170℃、10psig(70kPa)において、合計時間10sで積層して、ナイロントリコット/接着剤ドット/PUフィルム/PUフィルム/キトサン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)/PUフィルム/接着剤ドット/ナイロントリコットの最終積層体を作製した。
【0128】
次にこの最終積層体を3回の洗浄/乾燥洗濯サイクルで処理したが、層間剥離は起こらなかった。この選択した試料について、米軍TOP−8−2−501(二重流動)プロトコルによる硫黄マスタード[S(CHCHCl)]および神経ガスのソマン(Soman)の24h透過試験を3回行った。マスタードの場合の総累積量は、3回の試験でNDμg/cm、1.8μg/cm、および3.6μg/cmであり、ソマン(Soman)の場合、3回の試験でND、ND、およびNDμg/cmであった。
【0129】
実施例17
実施例13により作製したキトサン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSA構造を、ポリウレタン接着剤ドット(被覆率25%)を使用してノーメックス(Nomex)(登録商標)布(織布、5.6oz/yd、0.19kg/m)に接合した。次に、ナフィオン(Nafion)(登録商標)上のPET支持フィルムを取り外し、その構造のナフィオン(Nafion)(登録商標)側を、ポリウレタン接着剤ドット(被覆率25%)を使用してノーメックス(Nomex)(登録商標)ジャージー(Jersey)布(1.3oz/yd、44g/m)に接合して、ノーメックス(Nomex)(登録商標)布(織布)/接着剤ドット/キトサン/ナフィオン(Nafion)(登録商標)/接着剤ドット/ノーメックス(Nomex)(登録商標)ジャージー(Jersey)布の最終構造を作製した。次に、この積層体を空気中160℃で2分間焼き付けした。MVTRは30kg/m/24hであり、DMMP透過は17hで2μgであった。
【0130】
実施例18および19は、フィルム形成後のキトサンフィルムの化学架橋を示す。
【0131】
実施例18
実施例7と類似の方法でキトサンフィルムを作製した。まだガラス上にあるときに、以下のように調製した架橋性防火溶液を塗装した:
【0132】
10.5gの蒸留水中の0.8gのNaHPOの溶液に、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド(米国ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouri,USA)より入手した)(HOCHPClの80%溶液7.2gを加え、続いて1.68gの尿素を加えた[参考文献:ドナルドソン(Donaldson),ノーマンド(Normand),ドレーク(Drake),およびリーブス(Reeves),J.Coated Fabrics,,250−6(1974)]。
【0133】
コーティングしたキトサンフィルムを80℃で乾燥させ、160℃で2分間加熱した後、冷却した。冷却したフィルムを湿らせたペーパータオルで湿らせて、ガラス板から剥離し、風乾した(周囲条件)。再乾燥の後、得られた無色のフィルムをマッチの火炎に曝露した。このキトサンは、炭化したが燃焼やくすぶりは起こらなかった。
【0134】
NYCOオーバーレイ層を使用した測定値は、MVTRが10.5kg/m/24hであり、DMMP透過が17hで4μgであった。
【0135】
実施例19
プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656キトサン粉末(7g)を、激しく撹拌しながら0.1NのHCl(200mL)に加えた。その混合物を80℃で0.5h加熱した。続いて12.1NのHCl(0.120mL)を加えた。すべての固形分が溶解するまで、混合物を室温で撹拌した(1h)。50ミル(1.3mm)ブレードを使用して、得られた溶液をガラス板上に流延し、周囲条件下で24時間乾燥させた。まだガラス上にあるときに、フィルムを10%水酸化ナトリウム水溶液で2分間処理し、脱イオン水で洗浄し、2時間乾燥させた。次に、フィルムを水中の0.1%グルタルアルデヒドで1分間処理し、脱イオン水で洗浄し、2時間乾燥させた。乾燥したフィルムをガラスから取り外した。ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用した測定値は、MVTR=21.6kg/m/24h、DMMP透過=17hで0μmであった。
【0136】
実施例20〜23は、反応性化学添加剤を含有するキトサン溶液から作製したフィルムの性能を示す。
【0137】
実施例20
16gのHO中の1gのキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)の懸濁液に、0.71gのレブリン酸を加えた。得られた粘稠溶液は小さな気泡を有した。沸騰水浴中で加熱して溶液粘度を低下させると、急速に溶液から気泡が抜けた。20ミル(0.51mm)ドクターナイフを使用してガラス板上に流延することによってキトサンフィルムを作製した。このフィルムを10%NaOH水溶液で処理し、70℃で部分的に乾燥させた。この湿潤状態のフィルムは強靱で、意外なほどに弾性が高かった。指を押し込んだ場合に、引き裂かれることなく引き伸ばされた。乾燥すると、そのフィルムは前に作製したキトサンフィルム(たとえば実施例2のフィルム)よりも強靱であった。
【0138】
上記の量の4倍を使用したことを除けば、上記のようにして別の溶液を調製した。流延したフィルムを乾燥(約90℃)させた後、フィルムは剛性で透明となった周囲雰囲気から水分を取り込んだ後には、弾性になった。引き続き10%NaOH水溶液で処理した後には、フィルムは強靱かつ透明になった。20ミル(0.51mm)ドクターナイフを使用して作製した0.7ミル(18ミクロン)と、10ミル(0.25mm)ドクターナイフを使用して作製した0.4ミル(10ミクロン)との2つの厚さのフィルムを作製し、相対湿度100%で保管した。数時間後、これらのフィルムは十分な水分を吸収して、弾性となりさらに強靱になった。
【0139】
表4に示すように、ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用した試料のMVTRおよびDMMP透過を測定した。
【0140】
【表5】

【0141】
実施例21
21A.30mLのHO中の3gのプリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656キトサン(18mmolの−NH)の懸濁液に、0.55g(12mmol)のギ酸、0.44g(6mmol)のHO中50%グリオキシル酸、および20mLのHOよりなる溶液を加えた。均一になるまで、この溶液をロールミル上で回転させた。溶液から気泡が抜けた後、25ミル(0.64mm)ドクターナイフを使用してガラス板上にフィルムを流延した。このフィルムを100℃で乾燥させ、10%NaOH水溶液で1分間処理し、乾燥させ、ガラス板から取り外して、試験を行った。HOで濡らすと、フィルムは強靱で、わずかにエラストマー性となった。
【0142】
21B.ギ酸塩としてのプリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656キトサン(12mmolの−NH)の6%溶液33gに、0.15g(4mmol)グリオキシル酸(HO中0.3gの50%グリオキシル酸として)を加えた。12Aのようにして、この溶液からキトサンフィルムを作製した。このフィルムは濡れた状態ではエラストマー性であった。ノーメックス(Nomex)(登録商標)オーバーレイ層を使用してMVTRおよびDMMP透過測定を行い、これを表5に示している。
【0143】
【表6】

【0144】
実施例22
数滴の10%テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド(「TK」)水溶液を、プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656キトサン(ギ酸塩として)の5%水溶液に加えた。室温において1minでゲルが形成されたことから、キトサンの架橋が進行したことが示唆される。0℃においては、ゲル形成に6minを陽子、最初の3minでは粘度の変化は非常にわずかであった。
【0145】
22A.プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656キトサン(ギ酸塩として)(3mmolの−NH基)の5%水溶液10gに、0.35gのイソプロピルアルコールおよび65mgの10%TK水溶液(0.03mmol)を加えた。
【0146】
22B.0.3gの10%TK水溶液(0.66mol)を使用したことを除けば、22Aと同様にした。
【0147】
40ミル(1.0mm)ドクターナイフを使用して、22Aおよび22Bの溶液のそれぞれをガラス板上に流延し、100℃で乾燥させた。フィルムをガラスから剥離するために、湿らせたペーパータオルでフィルムを覆った。NYCOオーバーレイ層を使用してMVTRおよびDMMP透過を測定した。結果を表6に示す。
【0148】
【表7】

【0149】
実施例23
0.12g。アリカット(Aliquat)336(N−メチル−N,N−ジオクチル−1−オクタンアミニウムクロリド、液体)(最終フィルム中5重量%を、プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656キトサン(ギ酸塩として)の5%水溶液80gに加えた。アリカット(Aliquat)336は、大きなアルキル基を有する第4級アミン塩の混合物である。ガラス板上に40ミル(1.0mm)の流延を行うことによってフィルムを作製し、100℃で乾燥させると、ガラスから自発的に剥離した。これを10%NaOH水溶液で処理し、遊離の塩基を水で洗い流し、ガラス板上に再び取り付け、約70℃で乾燥させた。得られたフィルムは、湿潤時には弾性で、乾燥時には強靱であった。MVTRは20kg/m/24hであり、DMMP透過は17hで1μgであった。
【0150】
実施例24、25、および26は、キトサンフィルム性能に対する糖の影響を示す。
【0151】
実施例24
水(3g、19mmol)中のギ酸塩としての50gの6%キトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)中に、0.17g(1mmol)のグルコースを溶解させると、透明な溶液が得られた。20ミル(0.51mm)ドクターナイフを使用して、この溶液をガラス板上に流延した。この板/流延物組立体を、104℃の開放したプレス盤上に4min置き、この時間は流延物を乾燥させるのに必要な時間であった。次に、このフィルムを室温において10%NaOH水溶液で2min処理し、遊離の塩基を洗い流し、水浴中で、ガラス板上に浮かせ、平滑化して、約70℃で乾燥させた。次に、さらなるフィルムを、アルミニウム箔中に巻き込み、104℃で2分または5分のいずれかで加熱した。これらの試料およびキトサンフィルム対照試料のMVTRおよびDMMP測定値を表7に示す。フィルムは質的には強靱であった。
【0152】
【表8】

【0153】
実施例25
42gの水、0.92g(20mmol)のギ酸、および0.7g(2mmol)のスクロースよりなる溶液を、密閉瓶中で沸騰水浴中で加熱して、スクロースの少なくとも一部をフルクトースおよびグルコースに転化させた。冷却したこの溶液に、3g(20mmolの−NH2基)のキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)を加えた。この混合物は直ちにゲル化した。容器を激しく振盪した後、キトサンが溶解するまでロールミル上に置いた。この溶液を粗い濾紙で加圧濾過した。
【0154】
ガラス板上にフィルムを流延し、108℃のプレス盤上で5分間乾燥させた。そのフィルムを10%NaOH水溶液で2分間処理し、遊離の塩基を洗い流し、乾燥させた。次に、そのフィルムを104℃で15分間加熱し、未反応の糖を除去するために水洗した。MVTRおよびDMMPの測定値を、キトサンフィルム対照試料のデータとともに表8に示している。
【0155】
【表9】

【0156】
実施例26〜30は、キトサンを可溶性および不溶性の他のポリマーとブレンドすることができ、そのようなブレンドが、高いMVTRおよび低い刺激物透過性を示すことを説明する。
【0157】
実施例26
約0.3gのプリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656キトサンと、0.3gのナイロン4,6(米国ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company,Milwaukee,Wisconsin,USA))とを、12mLのギ酸中に溶解させた。溶解を促進するために、この混合物を90℃に加熱した後、均一に濁った溶液が得られるまで繰り返しロールミル上で回転させた。ガラス板上に流延することによってフィルムを作製し、乾燥させた。10%NaOH水溶液で約2分処理すると、透明で強靱なフィルムが得られた。乾燥したフィルムは、終夜静置すると大気中から水を吸収することによって重量が8%増加した。
【0158】
ナイロンをギ酸中に溶解させた後、ガラス板上に流延することによって、ナイロン4,6フィルム(厚さ30μm)を作製した。60gのギ酸中に3.75gのキトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)と、1.25gのナイロン4,6とを溶解させることによって、キトサン/ナイロン4,6の溶液を調製した。20ミル(0.51mm)ドクターナイフおよび10ミル(0.25mm)ドクターナイフを使用して、キトサン/ナイロン4,6ブレンドのフィルムを流延して、それぞれ厚さ1ミル(25ミクロン)および0.5ミル(13ミクロン)のフィルムを得た。
【0159】
これらのフィルムのMVTR(kg/m/24h)およびDMMP(17hにおけるμg)透過測定の結果を表9に示す。
【0160】
【表10】

【0161】
実施例27
標準方法により調製したキトサン溶液を、パーマックス(Permax)(商標)200ポリウレタン分散液(米国オハイオ州ウィクリフ(Wickliffe,Ohio,USA)のザ・ルブリゾール・コーポレーション(The Lubrizol Corporation)の子会社のノベオン・インコーポレイテッド(Noveon,Inc.)製造の水性分散液)と、キトサン/ポリウレタンの乾燥固形分の重量比85/15で混合した。このキトサン/ポリウレタンブレンドを流延し、乾燥させ、NaOHクエンチを行い、再び乾燥させた。厚さ25μmのフィルムのDMMP透過は、17h後に3μgとなることが分かった。
【0162】
実施例28
実施例27と類似の方法で、乾燥固形分の重量比30/70でキトサン/ポリウレタンのフィルムを作製した。厚さ20μmのキトサン/ポリウレタンブレンドフィルムを、予備成形された積層体[ポリウレタン接着剤ドット(被覆率25%)を使用してペバックス(Pebax)(登録商標)フィルム(厚さ6μm)に接合した6.7oz/ydのNYCO布(0.23kg/m)]に熱積層(165℃)した。この積層体のMVTRは15kg/m/日であり、アクリロニトリルの透過は1hで10μgであった。
【0163】
実施例29
プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656キトサン(ギ酸塩として)5%水溶液50gと、0.83gの粉末セルロース(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)、20ミクロンスクリーン)との混合物を、均一に見えるようになるまでミル上で回転させた後、気泡を除去するために減圧下に置いた。25ミル(0.64mm)ドクターナイフを使用して、この分散物をガラス板上に流延し、100℃で乾燥させ、10%NaOH水溶液で処理し、水洗し、乾燥させた(試料29A)。乾燥させた後、アルミニウム箔で覆い150℃で5min加熱した後、10%NaOH水溶液で処理し、水洗し、乾燥させたことを除けば、同様にして第2のフィルムを作製した(試料29B)。MVTRおよびDMMP測定値を表10に示す。
【0164】
【表11】

【0165】
実施例30
プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656キトサン(ギ酸塩として)の5%水溶液80gに、1gのARGO(登録商標)コーンスターチ(Corn Starch)を加えた。この混合物をボールミルで処理してコーンスターチを分散させた。この分散液の一部をガラス板上に流延し、100℃で乾燥させ、10%NaOH水溶液で処理し、水洗し、乾燥させると、不透明で厚さ0.9ミル(23ミクロン)のフィルム(試料30A)が得られた。上記分散液の第2の部分を100℃で2h加熱した後、30Aのようにしてフィルムを作製した。得られたフィルム(試料30B)は厚さが0.8ミル(20ミクロン)であり透明であった。各フィルムのMVTRは20.8kg/m/24hであった。DMMP透過は、試料30Aの場合17hで3μgであり、試料30Bの場合17hで1μgであった。
【0166】
実施例31、32、および33は、MVTRまたはDMMP障壁特性に悪影響を与えることなく、少量の無機充填剤をキトサンフィルムに加えることができることを示す。
【0167】
実施例31
2mLの水中の30mgのセピオライト(水和ケイ酸マグネシウム、パンゲル(Pangel)(登録商標)S9、スペインのマドリッドのグルポ・トルサ(Grupo Tolsa,Madrid,Spain))の分散液を、水中のギ酸塩としての33gの6%キトサン(プリメックス・キトクリア(Primex ChitoClear)(登録商標)TM−656)溶液(2gのキトサン/0.55gのギ酸)に加えた。瓶の中でこの混合物を、均一になるまでミル上で回転させた。20ミル(0.51mm)ドクターナイフを使用して、この生成物を、清浄なガラス板上に流延した。100℃で乾燥させた後、フィルムを10%NaOH/水で10分間処理した。乾燥フィルムは1.5%のセピオライトを含有する。MVTRおよびDMMP透過測定値を表11に示す。
【0168】
実施例32
セピオライトの代わりに、無機物5.5%の乾燥フィルムを得るために0.11gのクロイサイト(Cloisite)(登録商標)Na+(モンモリロナイト、米国テキサス州ゴンザレスのサザン・クレイ・プロダクツ・インコーポレイテッド(Southern Clay Products,Inc.,Gonzales,Texas,USA))を加えたことを除けば、実施例31の手順に従って溶液を調製した。さらに、20ミル(0.51mm)ドクターナイフを使用して、アルミニウム板上にテープで留めたマイラー(Mylar)(登録商標)ポリエステルシート上にフィルムを流延した。最初に、メタノールを使用してマイラー(Mylar)(登録商標)を清浄にしておいた。この組立体を、わずかに減圧したオーブン中90℃で20分間加熱した。乾燥後、これを7%NaOH/水で15分間処理し、水道水で4分間洗浄し、減圧および窒素下で終夜乾燥させた。MVTRおよびDMMP透過測定値を表11に示す。
【0169】
実施例33
セピオライトの代わりに、5.5%のガラスバブルを有する乾燥フィルムを得るために0.11gのスコッチライト(Scotchlite)(商標)ガラスバブル(Glass Bubble)S60/18000(米国ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,Minnesota,USA)の3M)を加えたことを除けば、実施例32の手順に従った。MVTRおよびDMMP透過測定値を表11に示す。
【0170】
【表12】

【0171】
特定の構成要素またはステップを含んでなる、含む、含有する、有する、特定の構成要素またはステップによって構成される、または形成されるとして本明細書において装置または方法を記載または説明してきたが、明確に反対の意味に記載または説明されるのでなければ、明確に記載または説明されるもの以外の1つもしくはそれ以上の構成要素またはステップが、その装置または方法中に存在できることを理解されたい。あるいは、本発明の装置または方法の一実施形態は、特定の構成要素またはステップより実質的になるとして記載または説明することができ、その場合、その装置または方法の動作原理またはきわだった特徴を実質的に変化させる構成要素およびステップを含まないことを示している。さらに、装置または方法が、特定の構成要素またはステップよりなると記載される場合、記載または説明されるもの以外の構成要素およびステップが、その中に存在しない。
【0172】
本発明の装置中の構成要素の存在、または本発明の方法中のステップの存在の記載または説明に関して不定冠詞「a」または「an」が使用される場合、明確に反対の意味に記載または説明されるのでなければ、そのような不定冠詞の使用によって、その装置中の構成要素の存在する数、またはその方法中のステップの存在する数を1に限定されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本発明の一実施形態による選択的透過性積層体の一種の構造を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)キトサン部分の溶液を形成するステップと、
(b)フィルムを形成するのに十分な量のキトサン溶液を基材上に付着させるステップであって、基材は、後にフィルムになるキトサンコーティングの希望する厚さよりも高い突出部を、基材の面上に実質的に有さないステップと、
(c)付着させたキトサン溶液を基材上で乾燥させることによって、キトサンフィルムを形成するステップと、
(d)場合により、キトサンフィルム上に追加層を付着させるステップと、
(e)基材とキトサンフィルムと少なくとも1層の布とを含んでなる積層体を形成するステップとを含む、選択的透過性積層体の製造方法。
【請求項2】
基材が、フィルム、シート、および微孔性膜よりなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基材が、極性ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種類の材料のフィルムを含んでなり、極性ポリマーが、エラストマー、ガラス質ポリマー、または半結晶性材料である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
極性ポリマーが、パーフルオロスルホン酸テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリウレタン、ポリエーテルブロックポリアミドコポリマー、ポリエーテルブロックポリエステルコポリマー、スルホン化スチレン−ポリオレフィンジ−およびトリ−ブロックコポリマー、ならびにポリビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマーよりなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
加熱、架橋剤との接触、および水性塩基との接触よりなる群の方法の1つもしくはそれ以上によってキトサンフィルムを不溶化させるステップをさらに含んでなる請求項2に記載の方法。
【請求項6】
酸が、塩酸、スルファミン酸、硫酸、リン酸、硝酸、ならびに水溶性のモノ−、ジ−およびポリカルボン酸、ならびにこれらのいずれか2種類以上の混合物よりなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項7】
酸の沸点が約200℃未満である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)における溶液中のキトサン濃度が約0.1〜約15重量%である請求項2に記載の方法。
【請求項9】
キトサン溶液が、ドクターナイフコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、またはスピンコーティングを使用して基材上に付着されるか、あるいは、リバースロールコーティング法、巻線ロッドまたはマイヤー(Mayer)ロッドコーティング法、直接グラビアおよびオフセットグラビアコーティング法、スロットダイコーティング法、ブレードコーティング法、ホットメルトコーティング法、カーテンコーティング法、ナイフオーバーロールコーティング法、押出コーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、回転スクリーンコーティング法、多層スライドコーティング法、同時押出コーティング法、メニスカスコーティング法、コンマコーティング法、あるいはマイクログラビアコーティング法を使用して移動するウェブまたは基材に適用される請求項2に記載の方法。
【請求項10】
キトサン溶液が、天然ポリマー、合成ポリマー、架橋剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、強化剤、および安定剤よりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の要素を含んでなり、結果として得られるフィルムの50重量%を超える部分がキトサンである請求項2に記載の方法。
【請求項11】
(a)キトサン溶液を形成するステップと、
(b)フィルムを形成するのに十分な量の前記溶液を加工デバイス上に付着するステップと、
(c)加工デバイス上でキトサン溶液付着物を乾燥させることによって、キトサンフィルムを形成するステップと、
(d)場合により、キトサンフィルム上に追加層を付着させるステップと、
(e)加工デバイスからフィルムを取り外すステップと、
(f)フィルムと少なくとも1層の布とを含んでなる積層体を形成するステップとを含んでなる、選択的透過性積層体の製造方法。
【請求項12】
キトサン溶液(a)が架橋剤を含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
加熱、架橋剤との接触、および水性塩基との接触よりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の方法によって連続フィルムを不溶化させるステップをさらに含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項14】
酸が、塩酸、スルファミン酸、熱硫酸、リン酸、硝酸、ならびに水溶性のモノ−、ジ−およびポリカルボン酸、ならびにこれらのいずれか2種類以上の混合物よりなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項15】
酸の沸点が約200℃未満である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
キトサン溶液(a)中のキトサン濃度が約0.1〜約15重量%である請求項11に記載の方法。
【請求項17】
キトサン溶液が、ドクターナイフコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、またはスピンコーティングを使用して加工デバイス上に付着されるか、あるいは、リバースロールコーティング法、巻線ロッドまたはマイヤー(Mayer)ロッドコーティング法、直接グラビアおよびオフセットグラビアコーティング法、スロットダイコーティング法、ブレードコーティング法、ホットメルトコーティング法、カーテンコーティング法、ナイフオーバーロールコーティング法、押出コーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、回転スクリーンコーティング法、多層スライドコーティング法、同時押出コーティング法、メニスカスコーティング法、コンマコーティング法、またはマイクログラビアコーティング法を使用して移動するウェブまたは基材に適用される請求項11に記載の方法。
【請求項18】
キトサン溶液が、天然ポリマー、合成ポリマー、架橋剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、強化剤、および安定剤よりなる群から選択されるいずれか1つもしくはそれ以上の要素をさらに含んでなり、結果として得られるフィルムの少なくとも50重量%がキトサンである請求項11に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−514711(P2009−514711A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540118(P2008−540118)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/043304
【国際公開番号】WO2007/056349
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】