説明

選択的CDK4阻害剤のイセチオン酸塩

開示されるものは、癌及び再狭窄のような炎症及び細胞増殖性疾病の治療のために有用である、選択的サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)阻害剤である、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩の多形である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、癌及び再狭窄のような炎症及び細胞増殖性疾病の治療のために有用である、選択的サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)阻害剤である、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの塩の形態に関する。
【0002】
考察
サイクリン依存性キナーゼ及び関連するセリン/スレオニンタンパク質キナーゼは、細胞分割及び増殖を制御する本質的な機能を行う重要な細胞酵素である。サイクリン依存性キナーゼの触媒単位は、サイクリンとして知られる制御性サブユニットによって活性化される。少なくとも16の哺乳動物のサイクリンが同定されている(D.G.Johnson and C.L.Walker,Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.(1999)39:295−312)。サイクリンB/CDK1、サイクリンA/CDK2、サイクリンE/CDK2、サイクリンD/CDK4、サイクリンD/CDK6、及び恐らくはCDK3及びCDK7を含む他のヘテロ二量体は、細胞周期の進行の重要な制御因子である。サイクリン/CDKヘテロ二量体の更なる機能は、転写の制御、DNA修復、分化及びアポトーシスを含む(D.O.Morgan,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.(1997)13261−13291)。
【0003】
サイクリン依存性キナーゼ阻害剤は、癌を治療することにおいて有用性を証明することができる。サイクリン依存性キナーゼの増加した活性又は一次的に異常な活性化は、ヒトの腫瘍の発症となることが示されている(C.J.Sherr,Science(1996)274:1672−1677)。実際に、ヒトの腫瘍の発症は、CDKタンパク質それ自体又はその制御因子のいずれかの変化に普通に伴われる(C.Cordon−Cardo,Am.J.Pathol.(1995)147:545−560;J.E.Karp and S.Broder,Nat.Med.(1995)1:309−320;M.Hall et al.,Adv.Cancer Res.(1996)68:67−108)。p16及びp27のような天然に存在するタンパク質のCDKの阻害剤は、肺癌細胞系のin vitroの成長の阻害を起こす(A.Kamb,Curr.Top.Microbiol.Immunol.(1998)227:139−148)。
【0004】
小さい分子のCDK阻害剤もまた、再狭窄及びアテローム性動脈硬化症並びに他の血管性疾患のような異常な細胞増殖による心臓血管性疾患の治療において使用することもできる。血管の平滑筋の増殖及びバルーン血管形成術後の内膜の肥厚化は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤タンパク質p21の過剰発現によって阻害される(M.W.Chang et al.,J.Clin.Invest.(1995)96:2260;Z−Y.Yang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1996)93:9905)。更に、プリンCDK2阻害剤CVT−313(Ki=95nM)は、ラットの新生内膜形成の80%より大きい阻害となった(E.E.Brooks et al.,J.Biol.Chem.(1997)29207−29211)。
【0005】
CDK阻害剤は、真菌、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のような原虫の寄生虫、並びにDNA及びRNAウイルスを含む各種の感染性媒介物によって起こされる疾病を治療するために使用することができる。例えば、サイクリン依存性キナーゼは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染後のウイルスの複製のために必要であり(L.M.Schang et al.,J.Virol.(1998)72:5626)、そしてCDK類似体は、酵母において本質的な役割を演じることが知られている。
【0006】
選択的CDK阻害剤は、各種の自己免疫性疾患の影響を緩和するために使用することができる。慢性の炎症性疾病である慢性関節リウマチは、滑膜組織の過形成によって特徴付けられる。滑膜組織の増殖の阻害は、炎症を最小にし、そして関節の破壊を防止するはずである。CDK阻害剤タンパク質p16の滑膜線維芽細胞における発現は、成長を阻害することが見出されている(K.Taniguchi et al.,Nat.Med.(1999)5:760−767)。同様に、ラットの関節炎のモデルにおいて、関節の膨潤は、アデノウイルスを発現しているp16による治療によって実質的に阻害された。CDK阻害剤は、乾癬(ケラチノサイトの過剰増殖によって特徴付けられる)、糸球体腎炎、及びルーパスを含む他の細胞増殖の疾患に対して有効であることができる。
【0007】
ある種のCDK阻害剤は、正常な形質転換されていない細胞の細胞周期の進行を阻害するその能力により化学予防的薬剤として有用であることができる(Chen et al.J.Natl.Cancer Institute(2000)92:1999−2008)。細胞毒性の薬剤の使用に先立つ、癌患者のCDK阻害剤による予備治療は、化学療法に普通に伴われる副作用を減少することができる。正常に増殖する組織は、選択的CDK阻害剤の作用によって細胞毒性効果から保護される。
【0008】
サイクリン依存性キナーゼの小さい分子の阻害剤に関する総説は、他の酵素を阻害せずに、特定的なCDKタンパク質を阻害する化合物を同定することの困難さを注記している。従って、各種の疾病を治療するその潜在性にも関わらず、CDK阻害剤は現時点で商業的使用のために認可されていない(P.M.Fischer,Curr.Opin.Drug Discovery(2001)4:623−634;D.W.Fry and M.D.Garrett,Curr.Opin.Oncologic,Endocrine & Metabolic Invest.(2000)2:40−59;K.R.Webster and D.Kimball,Emerging Drugs(2000)5:45−59;T.M.Sielecki et al.,J.Med.Chem.(2000)43:1−18)。
【0009】
これらの困難さにも関わらず、最近の研究は、先に検討したように癌を治療することにおいて−抗癌剤又は化学保護剤のいずれかとして−、そして再狭窄及びアテローム性動脈硬化症のような心臓血管性疾患、感染性媒介物によって起こる疾病、並びに関節リウマチを含む自己免疫性疾患の治療において有用性を証明することができる多くの選択的CDK4阻害剤を同定している。これらの選択的CDK4阻害剤の開示に対して、同一出願人になる2003年1月10日に出願された国際特許出願PCT/IB03/00059(’059出願)を参照されたく、これは、本明細書中にその全体が全ての目的のために参考文献として援用される。
【0010】
’059出願は、特別に強力な、そして選択的CDK4阻害剤である以下の式:
【0011】
【化1】

【0012】
の6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンを開示している。
【0013】
標準的な酵素アッセイにおいて、式1の化合物は、CDK4及びCDK2阻害(25℃で)に対してそれぞれ0.011μM及び>5μMのIC50濃度を示す。IC50決定のための標準的なCDK4及びCDK2アッセイの検討についてはD.W.Fry et al.,J.Biol.Chem.(2001)16617−16623を参照されたい。
【0014】
式1の化合物が、強力な、そして選択的CDK4阻害剤であるにも関わらず、医薬的産物中のその使用は、挑戦を与える。例えば、遊離塩基は不良な水溶解度(9μg/mL)を有し、そして動物実験において低い生体利用率を示す。式1の化合物のジ−HCl塩は、十分な水溶解度を示すように見受けられる。然しながら、水分取込み研究は、低い相対湿度(10%RH)においてさえ、ジ−HCl塩は、その質量の約2%より多い量の水を吸収し、固体薬物産物中に使用するために不適当なものとすることを明らかにする。式1の化合物のモノ−HCl塩は、わずかに吸湿性であり、80%より高い相対湿度においてその質量の2%より多くを吸収する。然しながら、モノ−HCl塩を調製するための方法は、部分的に結晶性の薬物物質(crystalline drug substance)を与え、過程の規模拡大に伴う潜在的な問題を示す。従って式1の化合物の他の塩の形態が必要とされる。
【0015】
発明の概要
本発明は、以下の式2:
【0016】
【化2】

【0017】
によって表される、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩を提供する。
【0018】
イセチオン酸塩は、フォームA、フォームB及びフォームDを含む一つ又はそれより多い多形として存在することができる。それぞれの多形は、その粉末X線回折(PXRD)パターン(回折図)又はラマンスペクトル、或いは示差走査熱量計(DSC)サーモグラム、或いはPXRDパターン、ラマンスペクトル、及びDSCサーモグラムのいくつかの組合せによって識別することができる。イセチオン酸塩は、無水物であることができ、或いは変化する量の水又は一つ若しくはそれより多い溶媒を含有することができる。
【0019】
従って、本発明の一つの側面は、フォームAと識別される6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩を提供し、そして一つ又はそれより多い次のこと:約8.7、13.5、及び17.6の2θ値においてピークを有する粉末X線回折パターン、或いは約1600cm−1、1290cm−1、675cm−1、470cm−1、450cm−1、及び425cm−1のラマンシフト値においてピークを有するラマンスペクトル、或いは273℃において鋭い吸熱を有するDSCサーモグラム、によって特徴付けられる。
【0020】
本発明のもう一つの側面は、フォームBと識別される6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩を提供し、そして一つ又はそれより多い次のこと:約5.1、11.8、12.1、12.8、13.1、及び14.7の2θ値においてピークを有する粉末X線回折パターン、或いは約1600cm−1、1290cm−1、470cm−1、450cm−1、及び425cm−1のラマンシフト値においてピークを有するが、しかし675cm−1における実質的なピークを有しないラマンスペクトル、或いは271℃において鋭い吸熱を有するDSCサーモグラム、によって特徴付けられる。
【0021】
本発明の更なる側面は、フォームDと識別される6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩を提供し、そして一つ又はそれより多い次のこと:約8.4、8.9、及び21.9の2θ値においてピークを有する粉末X線回折パターン、或いは約463cm−1のラマンシフト値においてピークを有するラマンスペクトル、或いは277℃において鋭い吸熱を有するDSCサーモグラム、によって特徴付けられる。それぞれの塩のフォームに対して、粉末X線回折パターンは、CuΚα照射を使用して得られ、そしてDSCサーモグラム(thermogram)サーモグラムは、5℃/分の加熱速度を使用して得られた。
【0022】
本発明は、更に6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩及び一つ又はそれより多い医薬的に受容可能な賦形剤を含む医薬的剤形(phramaceutical dosage form)を提供する。有用な賦形剤は、崩壊剤、結合剤、希釈剤、表面活性剤、潤滑剤、保存剤、抗酸化剤、香料、着色剤、等を含む。
【0023】
本発明は、更に6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩を製造する方法も提供する。一つの方法は、イセチオン酸及び第1の溶媒の溶液を、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの水性スラリーに加えて、第1の混合物を製造することを含む。この方法は、更に混合物を冷凍乾燥して、無晶性の(amorphous)塩を得ることを含み、これは、その後第2の溶媒と混合されて、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩を含む第2の混合物を製造する。
【0024】
もう一つの方法は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩の形態の種結晶を用意し、そして種結晶を6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン及び第1の溶媒の分散物に加えて、第1の混合物を製造することを含む。この方法は、更に第1の混合物を、イセチオン酸及び第2の溶媒の溶液と混合して、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩を含む第2の混合物を製造することを含む。
【0025】
上記の方法の両方において、第1及び第2の溶媒は、同一又は異なっていることができ、そしてMeOH、EtOH及び他のアルコールを含む水混和性の(water−miscible)溶媒である。収率を改良するために、この方法は、第2の混合物を、室温より高い及び低い温度に加熱し、冷却し、又は加熱及び冷却することを含むことができる。例えば、第2の混合物を、約30℃ないし約60℃の範囲の温度に加熱し、そしてその後室温まで冷却させることができる。別の方法として、第2の混合物を室温で静置させ、そしてその後約0℃又はそれより低い温度に冷却することができる。同様に、第2の混合物を、約30℃ないし約60℃の範囲の温度に加熱し、そしてその後約0℃又はそれより低い温度に冷却することができる。
【0026】
もう一つの方法は、4−{6−[6−(1−ブトキシ−ビニル)−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルを、溶媒及び水中のイセチオン酸と反応させて、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのジ−イセチオン酸塩を含む混合物を得ることを含む。この方法は、所望により立体障害された塩基を反応混合物に加えて、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩を生成することを含む。
【0027】
本発明は、更に異常な細胞増殖、又はウイルス若しくは真菌の感染、或いは自己免疫性疾病によって起こされたヒトを含む哺乳動物の疾患又は症状を治療する方法を提供する。方法は、哺乳動物に疾患又は症状を治療することにおいて有効である量の6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩を投与することを含む。異常な細胞増殖によって起こされる疾患又は症状は、癌、並びにアテローム性動脈硬化症、手術後の血痰狭窄及び再狭窄、並びに子宮内膜症に伴う血管平滑筋の増殖を含む。自己免疫性疾病は、乾癬、炎症様関節リウマチ、ルーパス、1型糖尿病、糖尿病性腎症、多発性硬化症、糸球体腎炎、及び宿主対移植片疾病を含む器官移植拒絶を含む。
【0028】
イセチオン酸塩は、遊離塩基(式1)及びモノ−及びジ−HCl付加塩を含む他の塩の形態に対して有意な利益を提供する。遊離塩基と比較して、イセチオン酸塩は、水溶解度において20,000倍を超える改良を示す。然しながら、ジ−HCl塩の場合と異なり、溶解度の改良は吸湿性の実質的な増加によって達成されるものではない。更に、イセチオン酸塩は、実質的の結晶性(crystalline)であり、そして従って、モノ−HCl塩に伴う潜在的な規模拡大の問題に悩まされることはない。これらの及び他の利益は、式1の選択的CDK4阻害剤を含有する医薬的産物の開発で直面する挑戦の多くを緩和することを援助するはずである。
【0029】
本発明の各種の特徴、利益及び他の使用は、以下の説明及び図面を参照することによって更に明白となるものである。
【0030】
詳細な説明
定義及び略語
他に示さない限り、この開示は、以下に与える定義を使用する。
【0031】
用語“癌”は、非制限的に、次の癌:乳房、卵巣、頚部、前立腺、精巣、食道、胃、皮膚、肺、骨、大腸、膵臓、甲状腺、胆汁管路、頬側口腔及び咽頭(口腔)、唇、舌、口、咽頭、小腸、大腸−直腸、大腸、直腸、脳及び中枢神経系の癌、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、角質化棘細胞腫、類表皮癌腫、大細胞型癌腫、腺癌(adenocarcinoma)、腺癌、アデノーマ、腺癌、濾胞性癌腫、未分化癌腫、乳頭癌腫、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌腫、肝臓癌腫、腎臓癌腫、骨髄球性疾患、リンパ系疾患、ホジキンス病、有毛細胞及び白血病を含む。
【0032】
語句“医薬的に受容可能な”は、健全な医学的判定の範囲内にあり、不都合な毒性、刺激、アレルギー反応、等を伴わず患者の組織と接触する使用のために適し、妥当な利益/危険度比で釣合い、そしてその意図する使用に対して有効である物質を指す。
【0033】
用語“治療すること”は、このような用語が適用される疾患又は症状の進行を逆転、緩和、阻害、若しくは予防すること、或いはこのような疾患又は症状の一つ若しくはそれより多い徴候を予防することを指す。
【0034】
用語“治療”は、直ぐ上で定義したような“治療すること”の作用を指す。
【0035】
表1は、明細書中で使用される略語を列挙する。
【0036】
【表1】

【0037】
モノ−イセチオン酸塩(式2)は、フォームA、フォームB及びフォームDを含む一つ又はそれより多い多形として存在することができる。先に示したように、それぞれの多形は、粉末X線回折(PXRD)、又はラマン分光法、又は示差走査熱量分析法(DSC)、或いはこれらの特徴付けの方法のいくつかの組合せによって識別することができる。モノ−イセチオン酸塩(式2)は、無水物であることができ、或いは変化する量の水又は一つ若しくはそれより多い溶媒を含有することができる。更に、モノ−イセチオン酸塩(式2)は、実質的に純粋であることができ−即ち、少なくとも約99重量%の特定の多形を含有する−或いは二つ又はそれより多い多形の混合物(例えば、フォームB及びフォームD等)であることができる。
【0038】
遊離塩基(式1)は、二塩基性化合物であり、これは、モノ−及びジ−酸付加塩の両方を形成することができる。この共役酸は、7.3及び4.1のpKを有し、従って二塩を精製するために比較的強い酸が必要である。式1の化合物のジ−イセチオン酸を形成することが可能であることができるが、モノ−イセチオン酸塩は、より少ない対イオンを必要とするため更に有用であるように見受けられる。
【0039】
図1及び図2は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩の形態(式2)に対するPXRD回折図を提供する。これらの形態は、図1においてフォームA、そして図2においてフォームB及びフォームDと識別される。解読性を改良するために、図2のフォームDの回折図は、約700単位上方に移動されている。以下の表2は、モノ−イセチオン酸塩の多形A、B、及びDに対する有意なPXRDのピーク(即ち、3.5より大きいピーク高さとノイズの比を示すもの)を列挙し、そして下線の付いた文字は、一つの多形を他から識別するために使用することができる特徴的ピークのサブセットを提供する。表2に提供された特徴的ピークの列挙は、特徴的ピークの唯一の可能な列挙ではない。多形の同定の技術に精通した当業者は、一つの多形を他から識別するものである特徴的ピークの他のセットを選択することができる。
【0040】
比較の目的のために、図3−図6は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−メシラート、ジ−メシラート、モノ−HCl、及びジ−HCl塩のそれぞれに対するPXRD回折図を示す。これらの塩は、一つより多いフォームで存在することができるが、はっきりと識別できる多形は、モノ−メシラート塩に対してのみ同定され、これらは、図3においてフォームA、フォームB、フォームC、及びフォームDとして識別されている。モノ−メシラート塩の型間の差を強調するために、図3のフォームB、フォームC、及びフォームDの回折図は、変化する量によって上方に移動されている。
【0041】
図1−図6に示したそれぞれのPXRDパターンは、RIGAKU D/Max 2200粉末X線回折計で、CuKα照射を使用して得た。回折計は、微調節焦点式X線管を備えていた。それぞれの試験の間に、管の電圧及び電流をそれぞれ40kV及び40mAに設定し、発散及び散乱スリットを0.5°に設定し、そして受光スリットを0.3mmに設定した。回折された照射を、NaIシンチレーション検出器を使用して検出した。それぞれの試験に対して、概略1°/分(3秒/0.040°の段階)のθ−2θの連続走査を、3.0ないし40.0°の2θで使用した。分析のための試料を、これらをシリコンウェファーのホルダーに置くことによって調製した。データは、RIGAKUのRIGMEASソフトウェアを使用して収集し、そしてJADEソフトウェアプラットフォームを使用して開発した専売のソフトウェアパッケージを使用して分析した。
【0042】
それぞれの粉末X線回折の測定のために、塩のフォームの試料を、ホルダーの平坦な表面上に位置する空洞中に置き、そしてスライドガラスを、試料の表面を水平にするために使用した。試料を含有するホルダーを、回折装置に置き、そしてX線ビームの線源で、最初はホルダーの平坦な表面に対して小さい角度で試料を照射した。その後X線ビームを弧を通して段階的な様式で移動し、これは、入射ビーム及びホルダーの平坦な表面間の角度を連続的に増加した。走査のそれぞれの段階で、シンチレーション計数器は回折された照射の量を検出し、これを2θの関数として記録した。装置のソフトウェアは、走査の回折された照射の結果を、2θに対する強度として表示した(図1−図6)。
【0043】
同一の多形の別個の測定間のPXRDパターンの差は、多くの理由のために起こることができる。誤差の原因は、試料調製の変化(例えば試料の高さ)、計器の誤差、較正の誤差、及び操作員の誤差(ピークの位置の決定の誤差を含む)を含む。優先的向き、即ち、PXRD試料中の結晶の無秩序な向きの欠如は、相対的ピーク高さの有意な差となりうる。較正誤差及び試料の高さの誤差は、しばしば回折図の全てのピークの同一方向への、そして同一量の移動となる。平坦なホルダーの試料の高さの小さい差は、PXRDのピークの位置の大きい転位に導くことができる。1mmの試料の高さの差が1°の2θのような高いピークの移動に導くことができることを示す系統的な研究に対しては、Chen et al.,J.Pharmaceutical and Biomedical Analysis(2001)26:63を参照されたい。
【0044】
多くの場合、系統的誤差の結果としての回折パターン間のピークの移動は、移動に対して補償する(例えば、全てのピーク位置の値に対して補正係数を適用する)ことによって、或いは回折計を再較正することによって排除することができる。一般的に、回折計間の差を補償するために同一の技術を使用することができ、これにより二つの異なった装置から得られたPXRDピークの位置を合致することができる。更に、これらの技術が同一又は異なった回折計からのPXRD測定に適用された場合、特定の多形に対するピーク位置は、通常±0.2°の2θ内で一致するものである。
【0045】
【表2】

【0046】
図7−図11は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩の形態(式2)のラマンスペクトルを示す。図7は、0cm−1ないし1850cm−1の範囲のラマンシフトに対するフォームA、フォームB、及びフォームDのモノ−イセチオン酸塩ラマンスペクトルを示し、一方、図8−図11は、それぞれ1350cm−1ないし1800cm−1、1100cm−1ないし1350cm−1、500cm−1ないし850cm−1、及び340cm−1ないし550cm−1の範囲のラマンシフトに対するフォームA、フォームB、及びフォームDのモノ−イセチオン酸塩ラマンスペクトルを与える。いくつかの図において、モノ−イセチオン酸塩のフォーム間の差を強調するために、一つ又はそれより多いラマンスペクトルは、異なった縦軸の目盛り(例えば、図7、8、10、及び11のフォームA)、又は異なった基線(例えば、図9のフォームA及びフォームB)、或いは異なった縦軸の目盛り及び基線(図10)を使用することができる。
【0047】
以下の表3は、一つのモノ−イセチオン酸塩のフォームを他から識別するために使用することができるラマンスペクトルの特徴的ピークを列挙する。PXRDデータと同様に、表3に与えられた特徴的ピークの列挙は、特徴的ピークの唯一可能な列挙ではなく、そして多形の同定に精通した当業者は、更に一つの多形を他から識別するものである特徴的ピークの他のセットを選択することができる。
【0048】
図7−図11に示したラマンスペクトルは、KAISER OPTICAL SYSTEMS HOLOLABラマン顕微鏡及び分光器を使用して得た。ラマン分光器は、概略90mWの出力を持つ785nmで操作されるソリッドステートダイオードレーザーを使用した。顕微鏡の対物レンズを通して試料に放射される電力は概略27mWであった。熱電気的に冷却されたCCD検出器を、ラマン信号を検出するために使用した。ラマン顕微鏡及び分光器に接続された光ファイバーケーブルを、試料へのレーザー励起光及び試料からのラマン散乱光を導くためにそれぞれ使用した。
【0049】
代表的なラマンスペクトルを得るために、それぞれの多形のフォームの試料を多重位置又はスポットで探索した。それぞれの試料に対して、ラマンスペクトルを、四つ又は五つのスポットにおいて得て、四つはそれぞれのスポットにおける反復したスペクトルであった。固体試料において正常な事例であるように、一定の多形のフォームに対するデータは、ピーク強度において最も大きい変化を示し、そしてピーク位置において比較的小さい変化を示した。それぞれのフォームに対して、ラマンシフト値(波数の関数としてのピーク位置)は、予測されたようなものであるが、1cm−1より小さく変化し、異なったフォーム間のピーク位置は、1cm−1より大きく変化することができた。ピーク強度又はピーク位置の少なくともいくつかの変化は、レーザー光が、試料中の異なった結晶に衝突した方向の差から起こると考えられる。
【0050】
【表3】

【0051】
先に記載した試験間の変化と同様に、異なった装置を使用して得られた特定の多形のラマンスペクトルは、ピーク位置においてわずかな変化(即ち、1cm−1又はそれより少ない)を、そしてピーク強度において比較的大きい変化を示すように見受けられる。ラマン散乱が使用された励起波長に依存しないとすれば、ピーク位置は、異なった励起源を使用する装置間で概略同一である筈である。ピーク強度は、中でも検出器又は光学系の種類、励起レーザーの電力、及び試料の位置によって変化することができる。
【0052】
図12及び図13は、フォームA(図12)並びにフォームB及びD(図13)として識別される6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸の形態(式2)のDSCサーモグラム(thermogram)を示す。更に、図14−図16は、モノ−メシラート塩(フォームA、B、C、及びD)、ジ−メシラート塩、及びジ−HCl塩のDSCサーモグラムをそれぞれ示す。DSCデータは、TA INSTEUMENT 2920 Modulated DSC V2.6を使用して得た。個々の多形の試料を、排気された密閉したアルミニウムパン中で、350℃までの5℃/分の加熱速度及び50mL/分の窒素置換を使用して分析した。
【0053】
図12−図15に示すように、モノ−イセチオン酸塩(フォームA、B、及びD)、モノ−メシラート塩(フォームA、B、C、及びD)、及びジ−メシラート塩は、特徴的な融点を有し、それぞれ約273℃、271℃、277℃、309℃、307℃、302℃、304℃、及び289℃における鋭い吸熱を示す。対照的に、ジ−HCl塩(図16)は、比較的複雑なDSCサーモグラムを保有し、これは、約40℃ないし110℃間及び約160℃ないし200℃間の幅広い吸熱を含み、これは、それぞれ水分及び格子水の喪失を示すように見受けられる。ジ−HCl塩のDSCの追跡は、更に約207℃において出発する比較的鋭い吸熱及び約275℃で始まる幅広い吸熱を示し、これは、恐らくはそれぞれフォームの変換及び溶融又は分解或いは両方を示す。
【0054】
図17及び図18は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの遊離塩基(式1)並びにモノ−イセチオン酸(フォームB及びD)、モノ−及びジ−HCl、モノ−メシラート(フォームA及びC)、ジ−メシラート、及びモノ−トシラートを含む各種の塩に対する水の吸着及び脱着の等温線図(25℃における)を示す。水の吸着及び脱着データは、VTI CORPORATION MODEL SGA−100対称型重量分析器を使用して得た。水蒸気の等温線図を得るために、多形の試料を密閉された環境容器中の微量天秤上に置き、そしてその後、5℃/分の速度で容器内の温度が40℃に達するまで加熱した。乾燥試料の重量を得るために、多形を、試料が2分間中に0.0270重量%より少ない重量変化となるまで40℃で平衡させた。乾燥に続いて、試料を25℃に冷却し、そしてその後、5又は10%RHから90%RHまで、そして90%RHから10又は5%RHまでの範囲の異なった湿度水準に、10%RHの増加で暴露した。それぞれの湿度水準で、多形を、試料が2分間中に0.0270重量%より少ない重量変化となるまで平衡させた。それぞれの湿度水準における平衡質量を記録し、そして乾燥試料の重量と共に、相対湿度に対する重量変化のプロットを作成するために使用した。
【0055】
図17及び図18に示した化合物中の、遊離塩基、モノ−イセチオン酸塩(フォームB及びD)、及びモノ−トシラート塩のみが、25℃で10%RHないし90%RHの範囲の湿度水準に暴露した場合、2%より少ない質量の変化を示した。
【0056】
表4は、遊離塩基(スラリー実験によるその最も安定な結晶相)及びイセチオン酸塩(フォームB、スラリー実験によるその最も安定なフォーム)の水中の溶解度を列挙する。フォームBが最も安定なイセチオン酸塩のフォームのように見受けられるために、観察されたイセチオン酸塩のフォームの中で最低の水溶解度を示す筈である。他のイセチオン酸塩のフォームは、準安定な溶解度に対して評価しなかった。イセチオン酸塩に対する水溶解度は、塩を水中に概略300mg/mLまで溶解し、約48時間平衡し、この時点後、ある程度の固体が観察され、そして水相の塩の濃度をHPLCを使用して測定することによって得た。HPLCの条件の列挙に対しては表5を参照されたい。遊離塩基に対する水溶解度は、水中の固体を14時間平衡させ、そして水相の遊離塩基の濃度を、SPECTRMAX PLUS分光光度計プレートリーダーを使用する半自動化UV−可視光法を使用して測定することによって得た。
【0057】
表4のデータは、モノ−イセチオン酸塩の水溶解度(pH5.4における)が、遊離塩基(pH7.9における)より20,000倍より多く高いことを示す。水溶解度におけるこの大きい格差は、遊離塩基及びモノ−イセチオン酸塩の飽和溶液のpHの比較的中程度の差によって説明することはできない。実際に、遊離塩基の理論的水溶解度は、Henderson−Hasselbalch計算(pH7.9における0.0092mg/mLの遊離塩基の溶解度を並びに7.3及び4.1のpKを使用して)によれば、pH5.4でわずか0.62mgA/mLである。117mgA/mLでpH5.4で調製されたモノ−イセチオン酸塩(遊離塩基に関して過飽和)の水溶液への遊離塩基の結晶の種結晶の添加は、沈殿を起こさなかった。代わりに、種は溶解し、イセチオン酸イオンが遊離塩基を水中に可溶化するある程度の能力を示した。
【0058】
【表4】

【0059】
【表5a】

【0060】
【表5b】

【0061】
通常の生理食塩水中のイセチオン酸塩の溶解度は、0.58mgA/mLであり、これは、その水溶解度よりはるかに低く、そしてこの溶液の最終pH(pH5.56)における理論値0.43mgA/mL(Henderson−Hasselbalch計算)に非常に近い。通常の生理食塩水中で、イセチオン酸イオンの驚くべき溶解力は本質的に消滅し、そして化合物の溶解度は、典型的な塩基性化合物のように挙動する。
【0062】
イセチオン酸塩は、多くの技術を使用して調製することができる。例えば、一つの方法において、イセチオン酸及び第1の溶媒の溶液を、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの水性スラリーと混合する。混合物を濾過して、いずれもの固体を除去し、そして得られた濾液を冷凍乾燥(凍結乾燥)して、無晶性のイセチオン酸塩を得る。無晶性の塩を、これを第2の溶媒中に溶解することによって結晶性の形態に転換し、これは、完全な溶解を促進するための加熱を伴うことができる。得られた溶液を、その後室温又はそれより低く冷却して、塩の結晶性の形態を沈殿させ、これは濾過によって単離することができ、そして次いで真空オーブン中で乾燥される。
【0063】
方法は、一般的に化学量論的(即ち、1:1又は2:1のモル比)又は化学量論近辺の量のイセチオン酸及び6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンを使用する。第1及び第2の溶媒は、同一又は異なっていることができ、そして典型的にはMeOH又はEtOHのようなアルコールを含む水混和性溶媒である。無晶性の塩を第2の溶媒中に溶解するために必要な加熱の量は、使用される溶媒に依存するものであるが、しかし混合物の温度は、典型的には約30℃ないし約60℃の範囲であり、そして通常約30℃ないし約50℃の範囲である。ある場合には、混合物の温度は、約30℃ないし約40℃又は約35℃ないし約40℃の範囲である。
【0064】
もう一つの方法において、遊離塩基(式1)は、第1の溶媒中に分散され(スラリー化)、そして結晶性のイセチオン酸塩の形態の種結晶を加えられる。得られた混合物を、イセチオン酸及び第2の溶媒の溶液と混合する。典型的には、イセチオン酸の溶液は、時間をかけて多数の部分として加えられる。得られたスラリー又は分散物は、室温又はそれより上で、通常約35℃又は40℃より高い温度で攪拌される。収率を改良するために、得られた混合物を約0℃より低く冷却することができ、これは、更なるイセチオン酸塩を沈殿する。イセチオン酸塩の結晶は、濾過によって単離することができ、そして次いで真空オーブン中で乾燥する。先に記載した方法と同様に、この技術は、化学量論的な、又は化学量論の近辺の量のイセチオン酸及び6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンを使用する。更に、第1及び第2の溶媒は、同一又は異なっていることができ、そして典型的にはMeOH又はEtOHのようなアルコールを含む水混和性溶媒である。先に記載した方法と比較して、この方法は、しばしば改良された収率及びよりよい(例えば、より大きい、より均一な)結晶となる。
【0065】
もう一つの方法は、遊離塩基(式1)をバイパスし、そしてイセチオン酸塩を保護された工程の中間体から直接生成する。方法は、N−BOCで保護された以下の式3:
【0066】
【化3】

【0067】
の化合物を、第1の溶媒及び水中の約3.5当量の(又はそれより多い)イセチオン酸と反応させることを含み、これは、BOC保護基を除去し、そしてアセチル基を暴露して、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのジ−イセチオン酸塩を与える。反応は、室温又はそれより高くで行うことができ、そしてしばしば約30℃ないし約60℃の範囲の温度で行われる。この反応混合物に、第2の溶媒中の立体障害された塩基(例えば、EtN)を加え、これは、反応混合物中に可溶性であるイセチオン酸との塩を形成する。加えられる塩基の量は、反応混合物中に−ジ−イセチオン酸塩の存在中で−わずかに過剰な遊離のイセチオン酸を維持するために十分な量である。例えば、3.5当量のイセチオン酸を、BOCで保護された式3の化合物と反応させた場合、約1.45当量の立体障害された塩基が使用されることができ、約0.05当量の遊離のイセチオン酸が過剰となる。所望する場合、ジ−イセチオン酸塩は、濾過によって単離することができる。
【0068】
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩を得るために、更なる塩基を、長期の時間をかけて(例えば滴下により)加えて、要求されたモノ−イセチオン酸塩のフォーム(例えばフォームB)の形成を確実にする。早すぎる立体障害された塩基の添加は、他の準安定な多形の形成を起こすことができる。収率を改良するために、得られたスラリーを約5℃又はそれより低い温度に冷却することができ、そして次いで濾過し、そして乾燥する。先に記載した方法のように、第1及び第2の溶媒は、同一又は異なっていることができ、そしてMeOH及びEtOHのようなアルコールを含む水混和性の溶媒である。
【0069】
他の開示された塩の形態−例えば、モノ−又はジ−HCl、メシラート、或いはトシラート塩−は、イセチオン酸塩(式2)のために先に記載した方法と同様な様式で調製することができる。
【0070】
開示された化合物(式1及び塩)は、全ての医薬的に受容可能な同位体の変種を包含する。同位体変種は、少なくとも一つの原子が、同一の原子番号を有するが、しかし天然に通常見出される原子質量と異なった原子質量を有する原子によって置換された化合物である。有用な同位体は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、及び塩素の同位体を含む。従って例示的な同位体は、制約するものではないが、H、H、13C、14C、15N、17O、18O、32P、35S、18F、及び36Clを含む。
【0071】
開示された化合物のジューテリウム、即ちHのような同位体による置換は、より大きい代謝安定性から得られるある種の治療的利益、例えば増加されたin vivoの半減期、又は減少した投与必要量を得ることができ、そして従ってある状況において更に有用であることができる。更に、ある種の同位体変種、例えば放射性同位体を組込んだものは、薬物及び/又は基質組織分布研究において有用である。放射性同位体のトリチウム、即ちH、及び炭素−14、即ち14Cは、その組込みの容易さ及び容易な検出の手段の観点から、この目的のために特別に有用である。
【0072】
開示された化合物の同位体変種は、一般的に当業者にとって既知の慣用的な技術、又は付属する実施例中に記載されるものと類似の方法によって、適した試薬の適当な同位体変種を使用して調製することができる。開示された化合物の医薬的に受容可能な溶媒和物は、結晶化の溶媒が、同位体的に置換されたもの、例えばDO、d−アセトン、d−DMSOを含む。
【0073】
開示された化合物(式1及び塩)は、結晶性又は無晶性の生成物として投与することができる。これらは、例えば沈殿、結晶化、冷凍乾燥、噴霧乾燥、又は蒸発乾燥のような方法によって、固体のプラグ(plug)、粉末、又はフィルムとして得ることができる。マイクロ波又は高周波乾燥をこの目的のために使用することができる。
【0074】
開示された化合物は、単独で、又は他の薬物との組合せで投与することができ、そして一般的に一つ又はそれより多い医薬的に受容可能な賦形剤を伴った製剤として投与されるものである。用語“賦形剤”は、式1によって表される化合物及びその塩以外のいずれもの成分を説明する。賦形剤の選択は、投与の特定の様式に大きく依存するものである。
【0075】
開示された化合物は、経口的に投与することができる。経口投与は、化合物が胃腸管に入るような嚥下を含むことができ、或いは頬側又は舌下投与を使用することができ、これによって化合物は口から直接血流に入る。
【0076】
経口投与に適した製剤は、錠剤のような固体の製剤、粒子、液体、又は粉末を含有するカプセル、ロゼンジ(液体で充填されたものを含む)、咀嚼剤、多−及びナノ−粒子、ゲル、固体溶液、リポソーム、フィルム(粘膜付着剤)、膣挫剤(ovule)、噴霧剤及び液体製剤を含む。液体製剤は、懸濁液、溶液、シロップ及びエリキシルを含む。このような製剤は、軟質及び硬質カプセルの充填物として使用することができ、そして典型的には担体、例えば、水、EtOH、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、又は適した油、並びに一つ又はそれより多い乳化剤及び/又は懸濁剤を含んでなる。液体の製剤は、更に例えばサッシェからの固体の再構成によっても調製することができる。
【0077】
開示された化合物は、更にLiang and Chen,Expert Opinion in Therapeutic Patents(2001)11(6):981−986に記載されているもののような急速溶解型、急速崩壊型剤形中に使用することもできる。
【0078】
投与量にもよるが、錠剤の剤形のために、薬物は、剤形の1重量%ないし80重量%、更に典型的には剤形の5重量%ないし60重量%を構成する。薬物に加えて、錠剤は一般的に崩壊剤を含有する。崩壊剤の例は、グリコール酸デンプンナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン、及びアルギン酸ナトリウムを含む。一般的に、崩壊剤は、剤形の1重量%ないし25重量%、好ましくは5重量%ないし20重量%を構成する。
【0079】
結合剤は、一般的に錠剤の製剤に粘着性の品質を与えるために使用される。適した結合剤は、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然及び合成ゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化(pregelatinized)デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。錠剤は、更にラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプン、及び二塩基性リン酸カルシウム二水和物のような希釈剤を含有することもできる。
【0080】
錠剤は、更に所望によりラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80のような表面活性剤、並びに二酸化ケイ素及びタルクのような流動促進剤を含有することもできる。存在する場合、表面活性剤は、錠剤の0.2重量%ないし5重量%を構成することができ、そして流動促進剤は、錠剤の0.2重量%ないし1重量%を構成することができる。
【0081】
錠剤は、更に、一般的にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物のような滑沢剤を含有する。滑沢剤は、一般的に錠剤の0.25重量%ないし10重量%、好ましくは0.5重量%ないし3重量%を構成する。他の成分は、保存剤、抗酸化剤、香料、及び着色剤を含むことができる。
【0082】
錠剤配合物は、直接圧縮されて、錠剤を形成することができる。錠剤配合物又は配合物の一部は、別の方法として、錠剤化の前に、湿式、乾式、又は溶融顆粒化、溶融凝結或いは押出し成形することができる。最終的な製剤は、一つ又はそれより多い層を含んでなることができ、そして被覆され、又は被覆されないことができる。例示的な錠剤は、約80%までの薬物、約10重量%ないし約90重量%の結合剤、約0重量%ないし約85重量%の希釈剤、約2重量%ないし約10重量%の崩壊剤、及び約0.25重量%ないし約10重量%の滑沢剤を含有する。錠剤の製剤に関する更なる詳細に対しては、H.Lieberman and L.Lachman,Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Vol.1(1980)を参照されたい。
【0083】
経口投与のための固体製剤は、即時及び/又は修飾放出のために処方することができる。修飾放出製剤は、遅延、継続、パルス、制御、標的、及びプログラム放出を含む。適した修飾放出製剤の一般的な説明に対しては、米国特許第6,106,864号を参照されたい。高エネルギー分散及び浸透圧並びに被覆粒子のような他の有用な放出技術の詳細に対しては、Verma et al,Pharmaceutical Technology On−line(2001)25(2):1−14を参照されたい。制御放出を達成するための咀嚼剤ガムの使用の検討に対しては、国際特許出願公開WO00/35298を参照されたい。
【0084】
開示された化合物(式1及び塩)は、更に直接血流中に、筋肉内に、又は内部器官内にも投与することができる。非経口投与のために適した手段は、静脈内、動脈内、腹腔内、クモ膜下腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、及び皮下を含む。非経口投与のために適したデバイスは、針(極微針を含む)注射器、無針注射器、及び注入技術を含む。
【0085】
非経口製剤は、典型的には塩、炭水化物、及び緩衝剤(好ましくは3ないし9のpHに)のような賦形剤を含有することができる水溶液であるが、しかしある適用のために、これらは、滅菌非水性溶液として、又は滅菌の発熱物質を含まない水のような適したベヒクルと共に使用される乾燥された形態として更に適当に処方することができる。例えば、凍結乾燥による滅菌条件下の非経口製剤の調製は、当業者にとって公知の標準的な医薬的技術を使用して、容易に達成することができる。
【0086】
非経口溶液の調製に使用される開示された化合物の溶解度は、溶解度向上剤の組込みのような適当な製剤技術の使用によって増加することができる。経口投与のための製剤は、即時及び/又は先に記載したような修飾放出であるように処方することができる。従って、開示された化合物は、活性な化合物の長期の放出を与える植込みデポー(depot)としての投与のための更に固い形態で処方することができる。
【0087】
本発明の化合物は、更に皮膚又は粘膜に表皮的或いは経皮的のいずれかで局所的に投与することができる。この目的のための典型的な製剤は、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、撒布剤、包帯剤、泡状剤、フィルム、皮膚貼布、ウエファ、植込み錠、スポンジ、繊維、包帯、及びマイクロエマルジョンを含む。リポソームも更に使用することができる。典型的な担体は、アルコール、水、鉱油、液体ワセリン、白ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを含む。局所製剤は、更に浸透向上剤を含むことができる。例えば、Finnin and Morgan,J Pharm Sci(1999)88(10):955−958を参照されたい。
【0088】
局所投与の他の手段は、イオン導入法、電気穿孔法、フォノフォレシス、ソノフォレシス及び無針(例えば、POWDERJECT)又は極微針注射による放出を含む。局所投与のための製剤は、即時及び/又は先に記載したような修飾放出であるように処方することができる。
【0089】
開示された化合物は、更に鼻腔内的に又は吸入によって、典型的には乾燥粉末の形態(単独で、混合物、例えばラクトースとの乾燥配合物、又は例えばリン脂質と混合された、混合された成分の粒子としてのいずれか)で、乾燥粉末吸入器から又はエアゾールスプレーとして加圧容器、ポンプ、噴霧器、アトマイザー(好ましくは微小な霧を発生するために電気流体力学を使用したアトマイザー)、或いはネブライザーから、ジクロロフルオロメタンのような適した噴射剤の使用を伴って又は伴わずに投与することもできる。加圧容器、ポンプ、噴霧器、アトマイザー、又はネブライザーは、活性化合物、活性化合物の分散、可溶化、又は延長放出のための薬剤(例えば、EtOH又はEtOH水溶液)、噴射剤として働く一つ又はそれより多い溶媒、及びトリオレイン酸ソルビタン又はオリゴ乳酸のような所望による界面活性剤を含んでなる溶液又は懸濁液を含有する。
【0090】
乾燥粉末又は懸濁液製剤の使用の前に、薬物生成物は、吸入による放出のために適したサイズ(典型的には5ミクロンより小さく)の微粉にされる。これは、スパイラルジェットミル、流動床ジェットミル、ナノ粒子を形成する超臨界流動加工、高圧均質化又は噴霧乾燥のようないずれもの適当な粉砕法によって達成することができる。
【0091】
吸入器又は通気器で使用するためのカプセル、ブリスター及びカートリッジ(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから製造)は、活性化合物、ラクトース又はデンプンのような適した粉末基剤、及びL−ロイシン、マンニトール、又はステアリン酸マグネシウムのような性能改良剤の粉末混合物を含有するように処方することができる。ラクトースは、無水物又は、好ましくは一水和物であることができる。他の適した賦形剤は、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース及びトレハロースを含む。
【0092】
微小な霧を発生するために電気流体力学を使用したアトマイザーにおいて使用するために適した溶液の製剤は、作動当り1μgないし20mgの本発明の化合物を含有することができ、そして作動体積は、1μlないし100μlで変化することができる。典型的な製剤は、式1又は式2の化合物、プロピレングリコール、滅菌水、EtOH、及びNaClを含んでなることができる。プロピレングリコールの代わりに使用することができる別の溶媒は、グリセリン及びポリエチレングリコールを含む。
【0093】
吸入/鼻腔内投与のための製剤は、例えば、ポリ(DL−乳酸−コグリコール酸(PGLA)を使用して、即時及び/又は修飾放出であるように処方することができる。メントール及びレボメントールのような適した香料、又はサッカリン若しくはサッカリンナトリウムのような甘味剤を、吸入/鼻腔投与を意図する製剤に加えることができる。
【0094】
乾燥粉末吸入及びエアゾールの場合、投与量単位は、計量された量を放出する弁によって決定される。本発明による単位は、典型的には100ないし1000μgの活性な医薬的成分を含有する計量された投与量又は“一吹き(puff)”が投与されるように準備される。全体的な日量は、典型的には100μgないし10mgの範囲であるものであり、これは、単一投与又は、更に普通には一日を通した分割投与で投与することができる。
【0095】
活性な化合物は、直腸的に又は膣的に、例えば座薬、ペッサリー、又は浣腸の形態で投与することができる。ココアバターは、伝統的な座薬の基剤であるが、しかし各種の別のものを適当に使用することができる。直腸/膣投与のための製剤は、即時及び/又は先に記載したような修飾放出であるように処方することができる。
【0096】
開示された化合物は、更に典型的には等張の、pHを調節された滅菌生理食塩水中の微粉にされた懸濁液又は溶液の液滴の形態で、直接目又は耳に投与することもできる。眼球及び耳への投与のために適した他の製剤は、軟膏、生分解性(例えば吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)及び非生分解性(例えばシリコーン)移植片、ウエファー、レンズ及びニオゾーム又はリポソームのような粒子或いは小胞系を含む。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロース系ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はメチルセルロース)、又はヘテロポリサッカリドポリマー(例えば、ゲランガム)のようなポリマーは、塩化ベンザルコニウムのような保存剤といっしょに組込むことができる。このような製剤は、イオン導入法によっても放出することができる。眼球/アンジアル(andial)投与のための製剤は、即時及び/又は先に記載したような修飾放出であるように処方することができる。
【0097】
開示された化合物は、シクロデキストリン又はポリエチレングリコールを含有するポリマーのような可溶性の巨大分子実存物(entities)と組合せて、その溶解度、溶解速度、味覚遮蔽、生体利用率及び/又は安定性を改良することができる。例えば、薬物−シクロデキストリン複合体は、一般的に、殆んどの剤形及び投与経路に対して有用であることが見出されている。封入及び非封入複合体の両方を使用することができる。薬物との直接の複合体化の別の方法として、シクロデキストリンは、補助的な添加剤、即ち、担体、希釈剤、又は可溶化剤として使用することができる。アルファ−、ベータ−及びガンマ−シクロデキストリンは、これらの目的のために普通に使用される。例えば、国際特許出願公開WO91/11172、WO94/02518、及びWO98/55148を参照されたい。
【0098】
式1、式2の化合物又は他の塩の治療的に有効な投与量は、一日当り体重の概略0.01mg/kgないし概略100mg/kgで変化するものである。典型的な成人は、一日当り概略0.1mgないし概略3000mg投与されるものである。単位投与製剤中の活性成分の量は、特定の適用及び活性成分の効力によって、概略0.1mgないし概略500mg、好ましくは約0.6mgないし100mgで変化又は調節することができる。組成物は、所望する場合、更に他の適合性の治療剤を含有することができる。治療を必要とする患者は、一日当り約0.6ないし約500mgの投与量を、一回で又は24時間にわたる多数回投与のいずれかで投与される。このような治療は、必要な限り長く連続した間隔で繰返すことができる。
【0099】
実施例
以下の実施例は、例示であることを意図し、そして非制限的であり、そして本発明の具体的な態様を表す。
【0100】
実施例1
4−[6−(6−ブロモ−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ)−ピリジン−3−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
6−ブロモ−8−シクロペンチル−2−メタンスルフィニル−5−メチル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(10.00g、0.027mol、本明細書中に参考文献として援用されるWO01/707041の実施例6のように調製)及び10.37g(0.0373mol)の4−(6−アミノ−ピリジン−3−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルのトルエン(100mL)中の懸濁液を、窒素下の油浴で7時間加熱した。薄層クロマトグラフィー(SiO、10%MeOH/DCM)は、両方の出発物質の存在を示した。懸濁液を還流下で更に18時間加熱した。得られた懸濁液を室温に冷却し、そして濾過して、4−[6−(6−ブロモ−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ)−ピリジン−3−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.93g、38%)を得た。融点>250℃。MS(APCI)M+1:計算値、584.2、実測値、584.2。
【0101】
実施例2
4−{6−[8−シクロペンチル−6−(1−エトキシ−ビニル)−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
4−[6−(6−ブロモ−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ)−ピリジン−3−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.93g、0.010mol、実施例1のように調製)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.40g、0.00121mol)、及びトリブチル(1−エトキシビニル)スズ(5.32mL、0.0157mol)のトルエン(30mL)中の懸濁液を、還流下で3.5時間加熱した。混合物を冷却し、そして濾過して、固体を得た。5%−66%酢酸エチル/ヘキサンの勾配を15分かけて使用するシリカゲルのクロマトグラフィーによる固体の精製により、4−{6−[8−シクロペンチル−6−(1−エトキシ−ビニル)−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルを、黄色の泡状物(4.50g、78%)として得た。MS(APCI)M+1:計算値576.2、実測値、576.3。
【0102】
実施例3
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン塩酸塩の調製
塩化水素ガスを、4−{6−[8−シクロペンチル−6−(1−エトキシ−ビニル)−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(4.50g、0.00783mol、実施例2のように調製)のDCM(100mL)中の氷浴で冷却された溶液に泡状で通した。得られた懸濁液を共栓で止め(stoppered)、そして室温で一晩撹拌し、次いでジエチルエーテル(200mL)で希釈した。固体を濾過によって収集し、ジエチルエーテルで洗浄し、そして乾燥して、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの塩酸塩を、黄色の固体(4.01g、92%)として得た。融点200℃。HPLC、C−18逆相、22分間の0.1%TFA/HO中の0.1%TFA/CHCNの10%−95%勾配:11.04分で99.0%。MS(APCI)M+1:計算値、448.2、実測値、448.3。分析値C2429・2.4HO・1.85HClに対する計算値:C、51.64;H、6.44;N、17.56、Cl(合計)、11.75。実測値:C、51.31;H、6.41;N、17.20;Cl(合計)、12.11。
【0103】
実施例4
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームB)の調製
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(7.0g、15.64mmol、実施例3のように調製、続いてNaOHと接触)の250mLの水中に分散されたスラリーに、30mLの、MeOH中の0.52Mのイセチオン酸の溶液(15.64mmol)を滴下により5.2のpHまで加えた。溶液をガラス濾過器(微細)を通して濾過し、そして透明な溶液を冷凍乾燥して、9.4gの無晶性の塩を得た。無晶性の塩(3.16g)を25mLのMeOHと混合し、そして殆んど完全な溶解後、新しい沈殿物が形成された。更に25mLのMeOHを加え、そして混合物を46℃ないし49℃で4時間撹拌した。混合物を32℃までゆっくりと冷却し、そして低温室(+4℃)に一晩入れた。PXRDのための試料を採取し、これはフォームBの形成を示した。混合物を濾過し、そして沈殿物を一晩50℃の真空オーブン中で乾燥した。これにより、2.92gの式1の化合物のモノ−イセチオン酸塩を、92%の収率で得た。HPLC−99.25%、PXRD−フォームB、CHNS、H−NMRは、構造と一致した。
【0104】
実施例5
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームB)の調製
MeOH(100mL)を、機械式撹拌機、熱電対/制御器、凝縮器、及び加熱用マントルを備えた250mLのフラスコに入れ、そして35℃に予熱した。無晶性のイセチオン酸塩(2g、実施例4のように調製)を、三つの等しい部分で、添加間に25分ないし30分の間隔をおいてゆっくりと加えた。反応混合物を一晩35℃で撹拌し、そしてその後冷却した。試料を濾過し、そしてPXRDによって試験した。これは純粋なフォームBであった。次いで全体の反応混合物を、大規模な実験のフォームBの種として使用した。
【0105】
実施例6
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームB)の調製
MeOH(50mL)を、電磁撹拌器、凝縮器、熱電対/制御器、及び加熱用マントルを備えた250mLのフラスコに入れ、そして40℃に予熱した。無晶性のイセチオン酸塩(1g、実施例4のように調製)を、三つの等しい部分で、部分間に30分の間隔をおいてゆっくりと加え、そして次いで一晩40℃で撹拌した。反応をin−situのラマン分光計によってモニターした。試料を採取し、濾過し、そしてPXRDによって分析した。これは、PXRD及びラマン分光計によって純粋なフォームBであった。混合物を3℃/時間の速度で25℃まで冷却し、−10℃に冷却し、濾過し、そして真空乾燥して、0.85gのフォームBの結晶性の生成物を得た。
【0106】
実施例7
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームB)の調製
遊離塩基(式1、0.895mg、2mmol)を、10mLのMeOHと混合し、そして33mgの式1の化合物のモノ−イセチオン酸塩(フォームB)の種結晶を加えた。次いで5.6mLの、MeOH中の0.375Mのイセチオン酸の溶液(2.1mmol)を、10回の等しい部分で75分の時間をかけて加えた。混合物を更に1時間撹拌し、そして試料をPXRD分析のために採取した。これは、結晶性のフォームBの形成を確認した。混合物を室温で一晩撹拌し、そしてもう一度PXRDをとった。結晶型に変化は無かった。混合物を冷蔵庫で−8℃で一晩冷却し、濾過し、そして50℃の真空オーブンで乾燥して、1.053g(理論値の91.8%)の先に命名した化合物(フォームB)を得た。HPLC−99.8%、CHNS、H−NMR、IRは、構造と一致し、PXRD−フォームBであった。
【0107】
実施例8
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームA)の調製
無晶性のイセチオン酸塩(47mg、実施例4のように調製)を、電磁撹拌器、熱電対及び凝縮器を備えた15mLのフラスコ中の4mLのEtOHと混合した。混合物を還流で加熱し、これは、殆んど透明な溶液の形成となった。10−15分間還流した後、混合物は濁ってきた。これを50℃にゆっくりと冷却し、そして69℃でフォームAの種結晶を加えた。混合物を50℃で5時間保持し、そして室温まで一晩冷却させた。その後、混合物を1℃まで氷浴で冷却し、1.5時間保持し、濾過し、0.5mLの冷EtOHで洗浄し、空気乾燥し、そして次いで70℃の真空オーブン中で一晩乾燥して、38.2mgの微細な結晶性の物質を得た。結晶性の物質は、PXRDによってフォームAのモノ−イセチオン酸塩であることが見出された。H−NMRはモノ−イセチオン酸塩と一致し、そして約5.9mol%又は0.6重量%の残留EtOHの存在を示した。
【0108】
実施例9
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームD)の調製
無晶性のイセチオン酸塩(9.0g、実施例4のように調製)を、300mLのMeOHと混合し、撹拌し、そして63.8℃(還流で)加熱した。わずかに濁った混合物に2回の50mLの部分のMeOHを加えた。熱混合物を、機械式撹拌機を備えた2Lのフラスコ中に濾過した。混合物を簡単に還流で加熱し、そして次いで60℃に冷却した。IPA(100mL)を混合物に加えた。混合物を再び60℃で加熱し、そして更なる110mLのIPAを加えた。沈殿物は59.7℃で形成し始めた。混合物を67.5℃に再加熱し、50℃に冷却し、そして一晩保持した。翌朝PXRD分析のために試料を採取した。混合物を3℃/時間の速度で25℃に冷却し、そして混合物が28℃に達した時点でもう一つの試料を採取した。混合物を室温まで一晩冷却させた。沈殿物を収集し、そして65℃及び30トールの真空オーブンで乾燥した。この手順により、7.45g(82.8%収率)の結晶性の化合物(PXRDによりフォームD)を製造した。先に分析した試料も更にフォームDであった。HPLCは98.82%の純度を示し、CHNS微量分析は、±0.4%内であった。フォームA、B、及びDのイセチオン酸塩のMeOH中のスラリーは、3日より短い内に実質的に純粋なフォームBとなった。
【0109】
実施例10
イセチオン酸(2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸)の調製
機械式撹拌機、熱電対、ガス注入器、及び水トラップを経由する大気放出口を供えた5Lの四つ口丸底フラスコに、748g(5.05mol)のイセチオン酸ナトリウム(ALDRICH)、及び4LのIPAを入れた。スラリーを室温で撹拌した。925g(25.4mol)の塩化水素ガス(ALDRICH)を、これが加えられるに伴い迅速に溶解されるような速さで(水トラップを通る泡がないことによって注目されるように)系中に注入されるように、内部温度を50℃より低く保つために氷浴を使用した。系が飽和するまで十分な量のHClガスを加えた(水トラップを通って泡が流れ始めることによって注目されるように)。HClの添加中、温度は45℃に上昇した。スラリーを室温に冷却し、粗いガラス濾過器で濾過した。ケークを100mLのIPAで洗浄し、そして濁った濾液を10−20μの濾過器を通して濾過した。得られた透明な無色の濾液を減圧下の回転蒸発器で、浴温度を50℃より低く保ちながら濃縮した。得られた1.07kgの透明な薄黄色の油状物を50mLの水道水及び400mLのトルエンで希釈し、そして減圧下の回転蒸発器で3日間、浴温度を50℃より低く保ちながら濃縮した。得られた800gの透明な薄黄色の油状物を500mLのトルエン及び250mLのIPAで希釈し、そして減圧下の回転蒸発器で11日間、浴温度を50℃より低く保ちながら濃縮した。得られた713gの透明な薄黄色の油状物は、7.9重量%の水及び7.5重量%のIPAを含有する81重量%(580g、91.1%収率)と滴定された。
【0110】
実施例11
4−{6−[6−(1−ブトキシ−ビニル)−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
機械式撹拌機、熱電対、及びシリコーン油のバブラーを経由して放出される窒素入口/出口を備えた、5Lの三つ口丸底フラスコを、窒素雰囲気下に置き、そして4−[6−(6−ブロモ−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ)−ピリジン−3−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(300g、0.51mol、実施例2のように調製)、ブチルビニルエーテル(154g、1.54mol、ALDRICH)、n−ブタノール(1.5L、ALDRICH)、及びジイソプロピルエチルアミン(107mL、0.62mol、ALDRICH)を入れた。スラリーを概略50トールの真空下に置き、そして次いで窒素で3回再充填した。これに、8.3g(0.01mol)のビス−(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウム二塩化物ジクロロメタン(JOHNSON MATTHEY,Lot 077598001)を加え、そして得られたスラリーを更に3回先に記載したように置換した。次いで混合物を95℃に加熱し、そして20時間撹拌した。得られた薄い赤色のスラリーを2Lのヘプタンで希釈し、そして概略5℃に冷却した。この温度で、400mLの飽和炭酸カリウム水溶液を加え、そして混合物を濾過し、そして250mLのヘプタンで洗浄した。オーブン中で16時間45℃で乾燥した後、231.7g(75%収率)の表題化合物を、黄色の固体として得た。
【0111】
実施例12
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームB)の調製
機械式撹拌機、熱電対、及びシリコーン油のバブラーを経由して放出される窒素入口/出口を備えた、22Lの三つ口丸底フラスコを窒素雰囲気下に置き、そして4−{6−[6−(1−ブトキシ−ビニル)−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(725g、1.20mol、実施例11のように調製)及びMeOH(14L)を入れた。スラリーを室温で撹拌ながら、これにイセチオン酸(530g、4.20mol、実施例10のように調製)、MeOH(1.5L)、及び水(70mL、3.89mol)の溶液を入れた。得られたスラリーを55℃に30分かけて加熱し、そして次いで55℃で30分間撹拌した。175g(1.73mol)のEtN(ALDRICH)の200mLのMeOH中の溶液を、スラリーを30℃に冷却しながら入れた。スラリーを30℃に保持しながら、128g(1.26mol)のEtNの2LのMeOH中の溶液を、滴下により6時間かけて加えた。得られたスラリーを試料採取して、結晶形を決定した(フォームB)。スラリーを冷却し、そして5℃で15分間保持し、そしてその後粗いガラス濾過器を通して濾過した。得られた濾過ケークを200mLの冷MeOHで多数回洗浄で洗浄した。固体の生成物を55℃の真空下で乾燥して、710g(91%収率)の表題化合物を、黄色の結晶として得た。
【0112】
上記の説明が、例示であることを意図し、そして制約的ではないことは理解されることである。多くの態様は、上記の説明を読んで当業者にとって明白であるものである。従って、本発明の範囲は、上記の説明を参照して決定されるべきではなく、代わりに特許請求の範囲を参照して、このような特許請求の範囲に権利が与えられた均等物の全体の範囲に添って決定されるべきである。特許、特許出願、及び特許出願公開を含む全ての文献及び参考文献の開示は、本明細書中にその全てが、そして全ての目的に対して援用される。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームA)のPXRDパターンを示す。
【図2】図2は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームB及びフォームD)のPXRDパターンを示す。
【図3】図3は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−メシラート塩(フォームA、フォームB、フォームC及びフォームD)のPXRDパターンを示す。
【図4】図4は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのジ−メシラート塩のPXRDパターンを示す。
【図5】図5は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−HCl塩のPXRDパターンを示す。
【図6】図6は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのジ−HCl塩のPXRDパターンを示す。
【図7】図7は、0cm−1ないし1850cm−1の範囲のラマンシフトを有する、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームA、フォームB、及びフォームD)のラマンスペクトルを示す。
【図8】図8は、1350cm−1ないし1800cm−1の範囲のラマンシフトを有する、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームA、フォームB、及びフォームD)のラマンスペクトルを示す。
【図9】図9は、1100cm−1ないし1350cm−1の範囲のラマンシフトを有する、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームA、フォームB、及びフォームD)のラマンスペクトルを示す。
【図10】図10は、500cm−1ないし850cm−1の範囲のラマンシフトを有する、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームA、フォームB、及びフォームD)のラマンスペクトルを示す。
【図11】図11は、340cm−1ないし550cm−1の範囲のラマンシフトを有する、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームA、フォームB、及びフォームD)のラマンスペクトルを示す。
【図12】図12は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームA)のDSCサーモグラムを示す。
【図13】図13は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩(フォームB及びフォームD)のDSCサーモグラムを示す。
【図14】図14は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのモノ−メシラート塩(フォームA、フォームB、フォームC及びフォームD)のDSCサーモグラムを示す。
【図15】図15は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのジ−メシラート塩のDSCサーモグラムを示す。
【図16】図16は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのジ−HCl塩のDSCサーモグラムを示す。
【図17】図17は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの遊離塩基に対する水吸着/脱着等温線図を示す。
【図18】図18は、モノ−イセチオン酸(フォームB及びフォームC)、モノ−及びジ−HCl、モノ−メシラート(フォームA及びフォームC)、ジ−メシラート、並びにモノ−トシラートを含む、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの各種の塩に対する水吸着/脱着等温線図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩。
【請求項2】
フォームAのモノ−イセチオン酸塩を含んでなる、請求項1に記載のイセチオン酸塩。
【請求項3】
フォームBのモノ−イセチオン酸塩を含んでなる、請求項1に記載のイセチオン酸塩。
【請求項4】
フォームDのモノ−イセチオン酸塩を含んでなる、請求項1に記載のイセチオン酸塩。
【請求項5】
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩及び一つ又はそれより多い医薬的に受容可能な賦形剤を含んでなる医薬剤形。
【請求項6】
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの結晶性の(crystalline)イセチオン酸塩を製造する方法であって:
イセチオン酸及び第1の溶媒の溶液を、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン及び水の分散物を混合して、第1の混合物を製造し;
前記第1の混合物を、冷凍乾燥して、そして無晶性の塩(amorphous salt)を得て;
前記無晶性の塩を、第2の溶媒と混合して、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの結晶性のイセチオン酸塩を含む第2の混合物を製造し、前記第2の溶媒は、第1の溶媒と同一であるか、又は異なっていることができ;そして
所望により、第2の混合物を加熱するか、第2の混合物を冷却するか、又は第2の混合物を加熱し、そして冷却すること;
を含んでなる、前記方法。
【請求項7】
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩の形態の種結晶を用意し;
種結晶を、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン及び第1の溶媒の分散物に加えて、第1の混合物を製造し;
第1の混合物を、イセチオン酸及び第2の溶媒の溶液と混合して、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩を含む第2の混合物を製造し;そして
所望により、第2の混合物を加熱するか、第2の混合物を冷却するか、又は第2の混合物を加熱し、そして冷却すること;
を含んでなる、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩を製造する方法。
【請求項8】
前記第1及び第2の溶媒が、水混和性である、請求項6又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の溶媒が、アルコールである、請求項6又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の溶媒が、MeOHである、請求項6又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の混合物又は第2の混合物が、それぞれ、概略等モル量のイセチオン酸及び6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンを混合することによって製造される、請求項6又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の混合物を、約30℃ないし約60℃の範囲の温度で攪拌することを更に含んでなる、請求項6又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の混合物を、約0℃又はそれより低い温度に冷却することを更に含んでなる、請求項6又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩を製造する方法であって:
4−{6−[6−(1−ブトキシ−ビニル)−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルを、イセチオン酸と第1の溶媒及び水中で反応させて、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンのジ−イセチオン酸塩を含む混合物を得ること;
を含んでなる、前記方法。
【請求項15】
立体障害された塩基を反応混合物に加えて、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−b]ピリミジン−7−オンのモノ−イセチオン酸塩を得ることを更に含んでなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
異常な細胞増殖によって起こされるヒトを含む哺乳動物の疾患又は症状を治療する方法であって、前記哺乳動物に、前記疾患又は症状を治療することにおいて有効である量の6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−b]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩を投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項17】
前記疾患又は症状が、アテローム性動脈硬化症、手術後の血管狭窄及び再狭窄、又は子宮内膜症に伴う血管平滑筋の増殖である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記異常な細胞増殖が、癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ウイルス又は真菌性感染によって起こされるヒトを含む哺乳動物の疾患又は症状を治療する方法であって、前記哺乳動物に、前記疾患又は症状を治療することにおいて有効である量の6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−b]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩を投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項20】
ヒトを含む哺乳動物の自己免疫性疾病を治療する方法であって、前記哺乳動物に、前記自己免疫性疾病を治療することにおいて有効である量の6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−b]ピリミジン−7−オンのイセチオン酸塩を投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項21】
前記自己免疫性疾病が、乾癬、炎症様関節リウマチ、ルーパス、1型糖尿病、糖尿病性腎症、多発性硬化症、糸球体腎炎、宿主対移植片疾病を含む器官移植拒絶である、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2007−530425(P2007−530425A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520024(P2006−520024)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002152
【国際公開番号】WO2005/005426
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】