説明

遺伝子検査用マイクロリアクタならびに遺伝子検査方法

【課題】
遺伝子検査用マイクロリアクタに搭載するDNA増幅用プライマー、増幅遺伝子とハイブリダイズするプローブを適宜変更することにより、多用途の遺伝子検査に対応できるDNA検査デバイスを提供すること。
【解決手段】
本発明のマイクロリアクタは、検出にDNA増幅工程を組み込むために感度の高い分析が可能であり、増幅された遺伝子に特異的にハイブリダイズするプローブDNAを用いて目的の遺伝子を精度よく検出することができる。
また、本発明のDNA検査デバイスは、検体ごとの試薬類・送液系エレメント搭載コンポーネントと、制御・検出コンポーネントとを別個にするシステム構成のため、微量分析、増幅反応に対し、クロス・コンタミネーション、キャリーオーバー・コンタミネーションといった深刻な問題が生じにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子検査用マイクロリアクタ、このマイクロリアクタを含むDNA検査デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、セ
ンサーなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている。これは、
μ−TAS(Micro total Analysis System)、バイオリアクタ、ラブ・オン・チップ(Lab-on-chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製
造分野でその応用が期待されている。とりわけ遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程とともに熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化されたミクロ化分析システムは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とする。したがってそれによる恩恵は多大と言える。
【0003】
臨床検査を始めとする各種検査の現場では、場所を選ばず迅速に結果を出すこれらの分析用チップにおける分析の定量性、解析の精度、経済性などが重要視される。分析チップではそのサイズ、形態からの厳しい制約を受けるため、シンプルな構成で、高い信頼性の送液システムを確立することが課題となる。そのため精度が高く、信頼性に優れるマイクロ流体制御素子が求められている。これに好適なマイクロポンプシステムを本発明者らはすでに提案している(特許文献1、2および非特許文献1)。
【0004】
また、試料の必要量を極微量とし、必要とされる試薬量も少なくて済む分析の微量化を図ることは、マイクロリアクタの最大課題である。これを実現するには、混合流路もしくは反応室で液体(検体および試薬)同士を効率よく混合する必要がある。加えて微量の反応生成物を高感度でしかも簡便に検出、または定量できる機構もまたチップに設置することが必要とされる。
【0005】
さらに多数の測定検体、とりわけ汚染、感染のリスクのある臨床検体を対象とするチップに対しては、ディスポーサブルであることが望まれ、さらに多項目分析への対応、製造コストなどの問題点を克服する必要がある。
【0006】
このように簡便かつ迅速な検査手段を提供するマイクロリアクタには、実用上依然として解決すべき具体的な問題が提起され、その解決が望まれている。
【特許文献1】特開2001-322099号公報
【特許文献2】特開2004-108285号公報
【非特許文献1】「DNAチップ技術とその応用」、「蛋白質 核酸 酵素」43巻、13号(1998年)君塚房夫、加藤郁之進、共立出版(株)発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の遺伝子検査用マイクロリアクタおよびこれを含むDNA検査デバイスは、上記の実状に鑑みてなされたものであり、シンプルな構成と高精度の送液システムを組み込みしかも精度の高い検出を可能とするマイクロリアクタを提供することを目的とする。
【0008】
ディスポーサルタイプのマイクロリアクタおよびその機能の制御および検出・処理手段を備えた遺伝子検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、微細流路を有し、少なくとも検出部分が透明なプラスチックであるマイクロリアクタであって、
その微細流路内で、ビオチン標識プライマーを用いて増幅された検体遺伝子をトラップするために、ビオチン親和性タンパク質が、該微細流路の遺伝子増幅反応部位よりも下流上に、検出部位としてポリスチレンに吸着されている
ことを特徴とする遺伝子検査用マイクロリアクタである。
【0010】
前記の増幅された遺伝子とハイブリダイズするプローブが、好ましくはパーオキシダーゼで標識されている。
さらに前記プローブを、発色試薬と反応させることを特徴としている。
【0011】
前記発色試薬が、発色物質として好ましくは3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン、3,3'−ジアミノベンジジン、p−フェニレンジアミン、5−アミノサリチル酸、3-アミノ−9−エチルカルバゾール、4−クロロ−1−ナフトール、4−アミノアンチピリンまたはo−
ジアニシジンを含む。
【0012】
また本発明は、前記遺伝子検査用マイクロリアクタと、
マイクロポンプと、
マイクロポンプおよび温度を制御する装置と、ならびに
遺伝子増幅反応の検出を光学的に行う検出装置と
を備え、該マイクロリアクタを装着することにより遺伝子増幅反応および該増幅反応の検出を自動的に行うことを特徴とするDNA検査デバイスである。
【0013】
前記マイクロポンプは、
流路抵抗が差圧に応じて変化する第一流路と、
差圧の変化に対する流路抵抗の変化の割合が該第一流路よりも小さい第二流路と、
該第一流路および該第二流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部の圧力を変化させるためのアクチュエータと
を備えたピエゾポンプであることが望ましい。
【0014】
前記検出装置は、
微細流路内で増幅された遺伝子を微細流路の検出部位に吸着させたビオチン親和性タンパク質と結合させた後に、プローブDNAとのハイブリダイズによりハイブリダイゼーション生成物を得てから、あるいは
微細流路内で増幅された遺伝子とプローブDNAとをハイブリダイズさせて得られるハイブリダイゼーション生成物を、微細流路の検出部位に吸着させたビオチン親和性タンパク質に結合させてから
該プローブDNAを着色物質に変換することにより光学的に検出する装置であることを特徴
としている。
【0015】
本発明の遺伝子検査用マイクロリアクタの検出部位を作製する方法は、マイクロリアクタの流路内で増幅された遺伝子をトラップするためのビオチン親和性タンパク質を、その流路の遺伝子増幅反応部位よりも下流上に増幅遺伝子の検出部位として固定化させるために、ビオチン親和性タンパク質をSSC緩衝液または生理食塩水に溶解して10〜35μg/mLの
濃度の溶液を調製し、ポリスチレンを用いて形成された微細流路に該溶液を適用して該微細流路上にビオチン親和性タンパク質を吸着させることを特徴としている。
【0016】
本発明の増幅された遺伝子の検出方法は、
マイクロリアクタの微細流路の遺伝子増幅反応部位で増幅された遺伝子を含む反応液と変性液とを混合し、増幅された遺伝子を一本鎖に変性処理する工程と、
増幅された遺伝子を一本鎖に変性処理して得られた処理液を、ビオチン親和性タンパク質をポリスチレンに吸着させた微細流路の検出部位に送液し、増幅された遺伝子を該検出部位にトラップさせる工程と、
該検出部位にパーオキシダーゼで修飾したプローブDNAを送液し、増幅された遺伝子と該プローブDNAとをハイブリダイズさせる工程と、
次いで増幅された遺伝子をトラップした該検出部位に、発色物質を含む発色試薬の溶液を送液し、該パーオキシダーゼが触媒する反応により該発色物質を発色させる工程と、
該検出部位における発色を光学的に測定する工程と
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明のマイクロリアクタは、検出に先立ちDNA増幅工程を組み込むために感度の高い遺伝子分析が可能であり、増幅された遺伝子に特異的にハイブリダイズするプローブDNAを用いるために目的の遺伝子を精度よく検出することができる。
【0018】
また、本発明のDNA検査デバイスは、試薬類・送液系用のエレメントを搭載した、検体ごとのチップコンポーネントと、DNA検査デバイス本体として制御・検出コンポーネントとを別個にするシステム構成のため、微量分析、増幅反応に対し、クロス・コンタミネーション、キャリーオーバー・コンタミネーションといった深刻な問題が生じにくい。検体DNAとプライマー、プローブとの結合(または相互作用)以外の非特異的な結合物の洗浄除去が容易であるために、バックグラウンドの低いマイクロリアクタ・チップを提供することができる。
【0019】
本発明のマイクロリアクタは、材料および構成要素を含めて大量生産に向く構成であり、しかも多項目測定にも対応性がある。増幅された目的遺伝子のトラップおよびその検出方法が、すでに確立されたシンプルな手法であり、しかも検出に使用するプローブ、試薬類が容易に入手できるものであるために、本発明のマイクロリアクタは、低コストで製造できる。
[発明の詳細な説明]
以下、本発明のマイクロリアクタおよびこのマイクロリアクタと各制御装置、検出装置とからなるDNA検査デバイス、本装置およびマイクロリアクタを用いる遺伝子増幅および検出を含む遺伝子検査方法について説明する。なお本明細書において、「遺伝子」とは、何らかの機能を発現する遺伝情報を担うDNAまたはRNAをいうが、単に化学的実体であるDNA、RNAの形でいうこともある。また「塩基」とは、ヌクレオチドの核酸塩基のことをいう。
マイクロリアクタおよびDNA検査デバイスの概要
まず本発明のマイクロリアクタおよびDNA検査デバイスについて概説する。図1は、本発明の一実施形態における遺伝子検査用マイクロリアクタの概略図、図2は、本発明の一実施形態における前記マイクロリアクタと装置本体とからなるDNA検査デバイス(「遺伝子検査装置」ともいう)の概略図である。
【0020】
図1および2に示したマイクロリアクタは、プラスチック樹脂、ガラス、シリコン、セラミックスなどの部材を適宜組み合わせて作製される一枚のチップからなる。好ましくは、マイクロリアクタの微細流路および躯体は、加工成型が容易で安価であり、焼却廃棄が容易なプラスチック樹脂で形成される。なかでもポリスチレン樹脂は成型性に優れ、後述するようにストレプトアビジンなどを吸着する傾向が強く、容易に微細流路上に検出部位を形成することができるために望ましい。また、そうしたマイクロリアクタにおいて、ハイブリダイゼーション反応の生成物を光学的に検出するために、マイクロリアクタ表面の
うち少なくとも微細流路上の検出部位を覆う検出部分は透明であること、好ましくは透明なプラスチックとなっていることが必要である。
【0021】
そのチップには、検体収容部、試薬収容部、プローブDNA収容部、コントロール収容部、流路、ポンプ接続部、送液制御部、逆流防止部、試薬定量部、混合部の各部が、機能面から適切な位置に微細加工技術により設置されている。さらに必要であれば、逆転写酵素部を設置してもよい。検体収容部は、検体注入部に連通し、検体の一時収容および混合部への検体供給を行う。場合によっては、検体収容部には検体液の粘度調整または血球分離の作用などの前処理機能を担わせてもよい。試薬と試薬との混合ならびに検体と試薬との混合は、単一の混合部で所望の比率で混合してもよく、あるいは何れかもしくは両方を分割して複数の合流部を設け、最終的に所望の混合比率となるように混合しても構わない。
【0022】
本発明の遺伝子検査用マイクロリアクタは、血液、喀痰などの検体を検体収容部に注入し、DNA検査デバイス本体に装着することにより、チップ内で遺伝子増幅反応およびその増幅反応の検出に必要な処理を自動的に行い、多項目について同時に、しかも短時間で遺伝子検査ができるように構成されている。本発明の好ましいDNA検査デバイスの態様では、マイクロリアクタに使用する試薬類があらかじめ所定の量だけ封入されており、検体のDNAまたはRNAと所定の増幅反応、ならびに増幅産物の検出を行うユニットとして、該マイクロリアクタが検体ごとに使用される。
【0023】
これに対し、マイクロポンプ、温度、反応の各制御に関わる制御系、増幅反応の検出、データの収集および処理を受け持つ装置は、マイクロポンプおよび光学的に増幅反応の検出を行う検出装置とともに本発明のDNA検査デバイスの一体化された装置本体を構成する。このデバイス本体は、これに上記マイクロリアクタを装着することにより検体群に対して共通で使用される。したがって多数の検体があっても、効率よく迅速に処理できる。従来技術では、内容の異なる分析または合成などを行う場合に、変更される内容に応じたマイクロ流路デバイスをその都度構成する必要があった。これとは異なり、本発明では脱着可能なチップのみ交換すればよい。各デバイスエレメントの制御変更も必要であれば、装置本体に格納された制御プログラムを適宜改変すればよい。
【0024】
本発明のDNA検査デバイスは、いずれのコンポーネントも小型化され、持ち運びに便利な形態としているために、使用する場所および時間に制約されず、作業性、操作性が良好である。場所、時間を問わず迅速に検体を分析することができるために、緊急医療での利用や、在宅医療での個人的な利用も可能である。送液に使用する多数のマイクロポンプユニットなども装置本体側に組み込まれているため、チップは比較的シンプルな構成となり、ディスポーサブルタイプとして使用できる。
【0025】
以上、本発明の遺伝子検査用マイクロリアクタおよびDNA検査デバイス(遺伝子検査装置)の概要を述べたが、本発明は、種々の実施の形態において本発明の趣旨に沿って任意の変形、変更が可能であり、それらは本発明に含まれる。すなわち、本発明のマイクロリアクタおよび検査装置の全体または一部について、構造、構成、配置、形状形態、寸法、材質、方式、方法などを本発明の趣旨に合致する限り、種々のものにすることができる。
遺伝子検査用マイクロリアクタの好ましい態様
本発明の遺伝子検査用マイクロリアクタとして好ましい態様は、一つのチップ内に、
検体もしくは検体から抽出したDNAが注入される検体収容部と、
遺伝子増幅反応に用いる試薬が収容される試薬収容部と、
ポジティブコントロールが収容されるポジティブコントロール収容部と、
ネガティブコントロールが収容されるネガティブコントロール収容部と、
遺伝子増幅反応により増幅された検出対象の遺伝子にハイブリダイゼーションするプローブDNAが収容されるプローブDNA収容部と、
これらの各収容部に連通する流路と、
前記各収容部および流路内の液体を送液する別途装置のマイクロポンプユニットに接続可能なポンプ接続部とが設けられ、
前記チップにポンプ接続部を介してマイクロポンプを接続し、検体収容部に収容された検体もしくは検体から抽出したDNAと、試薬収容部に収容された試薬とを流路へ送液し、流路内の遺伝子増幅反応部位で混合して増幅反応させた後、この増幅反応物を処理した処理液を、検出部位があるその下流側流路へ送液し、プローブDNA収容部に収容されたプローブDNAとを流路内で混合してハイブリダイズさせ、このハイブリダイゼーション生成物について増幅反応の検出を行い、
ポジティブコントロール収容部に収容されたポジティブコントロールおよびネガティブコントロール収容部に収容されたネガティブコントロールについても同様に、試薬収容部に収容された試薬と流路内で増幅反応させた後、プローブDNA収容部に収容されたプローブDNAと流路内でハイブリダイズさせ、このハイブリダイゼーション生成物について増幅反応の検出を行うように構成されていることを特徴としている。
【0026】
なお上記遺伝子検査用マイクロリアクタは、さらに
前記検体収容部に検体もしくは検体から抽出したRNAを注入するとともに、これに含まれるRNAから逆転写反応によりcDNAを合成するための逆転写酵素が収容される逆転写酵素収容部が設けられ、
検体収容部に収容された検体もしくは検体から抽出したRNAと、逆転写酵素収容部に収容された逆転写酵素とを流路へ送液し、流路内で混合してcDNAを合成した後、前記増幅反応およびその検出を行うように構成されていてもよい。
遺伝子増幅反応部位
検体遺伝子の増幅は、本発明のマイクロリアクタにおける微細流路内の所定の位置、すなわち遺伝子増幅反応部位で以下のようにして行われる。増幅対象であるDNAを含むDNA溶液と、試薬液体とを合流させる合流部の上流側の各流路に、前記DNA溶液が収容される検体収容部と、前記試薬液体が収容される試薬収容部とが設けられている。これらの各収容部の上流側にポンプ接続部が設けられ、これらのポンプ接続部に別途装置のマイクロポンプを接続し、各マイクロポンプから駆動液を供給することにより前記各収容部内の前記DNA溶液および前記試薬液体を押し出してこれらを合流させることによって遺伝子増幅反応を開始するように構成されている。そうした増幅反応部位の態様は特に限定されるものではなく、様々な形態および様式が考えられる。基本的には
反応試薬を含む少なくとも2種類の液体を、マイクロポンプにより送液して合流させる合流部と、
前記合流部から先に設けられ、前記各液体が拡散混合される微細流路と、
前記微細流路の下流側端部から先に設けられ、該微細流路よりも広幅の空間と
からなり、該微細流路で拡散混合された混合液を貯留して反応を行う液溜部とを備えることが好ましい。
・検体
本発明の測定対象となる検体は、遺伝子検査の場合、増幅反応の鋳型となる核酸として遺伝子、DNAまたはRNAである。このような検体の核酸(DNAまたはRNA)を含む可能性のある試料から調製または単離したものであってよい。そのような試料から遺伝子、DNAまたはRNAを調製する方法は、特に限定されず、従来技術を使用することができる。最近、DNA増幅のために生体試料から遺伝子、DNAまたはRNAを調製する技術が開発され、キットなどの形態でも利用可能である。
【0027】
試料自体にも特に制限はないが、例えば全血、血清、バフィーコート、尿、糞便、唾液、喀痰など生体由来のほとんどの試料;細胞培養物;ウィルス、細菌、カビ、酵母、植物
、動物などの核酸含有試料;微生物などが混入または含有する可能性のある試料、その他核酸が含有されている可能性のあるあらゆる試料が対象となる。
【0028】
DNAは、上記試料から常法に従い、フェノール・クロロホルム抽出およびエタノール沈殿により、分離精製できる。核酸を遊離するために、飽和濃度に近いグアニジン塩酸塩、イソチオシアン酸塩のような高濃度カオトロピック試薬を使用することは一般的に知られている。上記のフェノール−クロロホルム抽出法などを適用せず、代わりに界面活性剤を含むタンパク質分解酵素液で検体を直接処理する方法(斉藤隆、「PCR実験マニュアル」HBJ出版局、1991年、p309)は、簡便で迅速な方法である。得られたゲノムDNAまたは遺伝子が大きい場合には、適当な制限酵素、例えばBamHI、BgLII、DraI、EcoRI、EcoRV、HindIII、PvuIIなどを用いて常法に従い、フラグメント化してもよい。このようにして検体用のDNAおよびそのフラグメントの集合体を調製することができる。
【0029】
RNAの場合、逆転写反応に使用されるプライマーの作製が可能であれば特に制限はない。例えば試料中の全RNAのほか、遺伝子として機能しているレトロウィルスのRNA、発現される遺伝子の直接の情報伝達担体であるmRNA、rRNAなどのRNA分子群が対象となる。これらのRNAは、適当な逆転写酵素を利用してcDNAに変換してから分析すればよい。mRNAの調製方法は、公知の技術に基づいて行うことができ、逆転写酵素は容易に入手することができる。
【0030】
本発明のマイクロリアクタでは、従来の検査装置を使用して行う手作業の場合に比べて、必要とされる検体量は極めて少ない。例えば、遺伝子の場合、DNAとして0.001〜100ngである。このため、微量の試料しか得られない場合も含めて、本発明のマイクロリアクタは、検体面からの制約は少なく、必然的に試薬類も少ない量で済み、検査コストの低減となる。試料は、上記「検体収容部」の注入部から導入される。
・増幅法
本発明のマイクロリアクタでは、DNAの増幅方法を限定されない。例えばDNAの増幅技術は、現在多方面で盛んに利用されているPCR増幅法を使用することができる。その増幅技術を実施するための諸条件が詳細に検討され、改良点も含めて各種の文献に記載されている。PCR増幅においては、3つの温度間で昇降させる温度管理が必要になるが、マイクロチップに対し好適な温度制御を可能とする流路デバイスが、すでに本発明者らにより提案されている(特開2004−108285号)。このデバイスシステムを本発明のチップの増幅用流路に適用すればよい。これにより、熱サイクルが高速に切り替えられ、微細流路を熱容量の小さいマイクロ反応セルとすることにより、DNA増幅は、手作業によりマイクロチューブ、マイクロバイアルなどで行なう従来の方式よりはるかに短時間で行うことができる。
【0031】
最近開発されたICAN(登録商標)(Isothermal chimera primer initiated nucleic acid amplification )法は、従来のPCR反応のように複雑な温度管理を必要としな
い。すなわち、50〜65℃における任意の一定温度の下にDNA増幅を短時間で実施できる(特許第3433929号)。したがって、簡便な温度管理で済むICAN(登録商標)法
は、本発明のマイクロリアクタでは、とくに好適な増幅技術である。手作業では、1時間かかる本法は、本発明のバイオリアクタにおいては、10〜20分、好ましくは、15分で収集データの解析まで終わる。
【0032】
DNA増幅反応は、その他のPCR改良法、PCR変法であってもよく、本発明のマイクロリアクタは、流路の設計変更などによりいずれにも対応できる柔軟性がある。いずれのDNA増幅反応を使用する場合にも、その技術の詳細は開示されており、当業者は容易に導入することができる。
・試薬類
(i) プライマー
PCRプライマーは、増幅したいDNA鎖の特定部位の両端に相補的な2種のオリゴヌクレオチドである。その設計は、すでに専用のアプリケーション・ソフトウェアが開発されており、当業者であればDNAシンセザイザー、化学合成などにより容易に作成できる。ICAN法用のプライマーは、DNAおよびRNAのキメラプライマーであるが、このものの調製法もすでに技術的に確立されている(特許第3433929号)。プライマーの設計
、選択は、増幅反応の成否、効率を左右するために最も適切なものを使用することが重要である。
【0033】
また、プライマーの5'末端に標識としてビオチンを結合させておくと、増幅産物のD
NAを、チップ基板上に吸着されたストレプトアビジンとの結合を介して、その基板上に固定化でき、増幅産物の定量に供し得る。その他のプライマー標識物質としてジゴキシゲニン、各種蛍光色素などが例示される。
(ii) 増幅反応用試薬類
増幅反応に使用する酵素をはじめとする試薬類は、PCR用、ICAN法のいずれも容易に入手できる。
【0034】
PCR法における試薬類として、少なくとも2'−デオキシヌクレオシド5'−三リン酸のほか、Taq DNAポリメラーゼ、Vent DNAポリメラーゼまたはPfu DNAポリメラ
ーゼが含まれる。
【0035】
ICAN法における試薬類は、少なくとも2'−デオキシヌクレオシド5'−三リン酸、検出したい遺伝子に特異的にハイブリダイズできるキメラプライマー、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼのRNaseを含む。
(iii) コントロール
インターナルコントロールは、標的核酸(DNA、RNA)について、増幅のモニタリング、あるいは定量の際の内部標準物質として使用される。インターナルコントロールの配列は、検体DNAとは異なる配列の両側に、検体用プライマーと同じプライマーがハイブリダイズできる配列を有するために検体と同様に増幅できるものである。ポジティブコントロールの配列は、検体を検出する特異的な配列で、プライマーがハイブリダイズする部分とその間の配列が検体と同じものである。コントロールに使用する核酸(DNA,RNA)は、公知技術文献に記載されているものを使用すればよい。ネガティブコントロールは、核酸(DNA,RNA)以外の試薬などをすべて含み、コンタミネーションの有無のチェック、バックグラウンド補正用に用いる。
(iv) 逆転写用試薬
RNAの試料の場合、RNAからcDNAを合成するための逆転写酵素、逆転写プライマーなどであり、これらも市販され容易に入手できる。
【0036】
これらの増幅用基質(2'−デオキシヌクレオシド5'−三リン酸)、遺伝子増幅用試薬などは、一枚のマイクロリアクタの上記試薬収容部に、それぞれ予め所定量封入されている。したがって本発明のマイクロリアクタは使用時にその都度、試薬を必要量充填する必要はなく、即使用可能の状態になっている。
検出部位
増幅された目的遺伝子のDNAを検出する方法として、一般的には可視分光測光法、蛍光測定法、発光ルミネッセンス法といった検出方法が用いられる。さらに、電気化学的方法、表面プラズモン共鳴、水晶発振子マイクロバランスなどの手法も挙げられる。
【0037】
本発明の遺伝子検査用マイクロリアクタでは、微細流路の遺伝子増幅反応部位よりも下流上に、増幅された遺伝子を検出するための検出部位が設けられている。少なくともそのマイクロリアクタの検出部分は、光学的測定を可能とするために透明、好ましくは透明な
プラスチックとなっている。さらに増幅された遺伝子をトラップするためのビオチン親和性タンパク質が、微細流路上の検出部位に吸着されていることを特徴としている。少なくともその微細流路をポリスチレンで形成されていることが望ましい。
【0038】
本発明のDNA検査デバイスは、マイクロリアクタの上記検出部位における工程と連動して、増幅された遺伝子とプローブDNAとのハイブリダイズによるハイブリダイゼーション生成物を対象に増幅反応の有無、規模などの検出を行う検出装置を備えている。プローブDNAの塩基配列を適切に選択することにより、目的の遺伝子に特異的に結合し、共存する他のDNA、バックグラウンドに影響されることなく高感度の検出が可能となる。
【0039】
増幅された目的遺伝子のDNAを検出する方法は特に限定されないが、好ましい態様として具体的に以下の工程で行なわれる。すなわち上記マイクロリアクタを用い、
(1)検体もしくは検体から抽出したDNA、あるいは検体もしくは検体から抽出したRNAから逆転写反応により合成したcDNAと、5'位置でビオチン修飾したプライマー
とを、これらの収容部から流路へ送液し、微細流路内の遺伝子増幅反応部位で、遺伝子を増幅する工程、
(2)微細流路内で増幅された遺伝子を含む増幅反応液と変性液とを混合し、増幅された遺伝子を一本鎖に変性処理する工程、
(3)増幅遺伝子を一本鎖に変性処理した処理液を、ビオチン親和性タンパク質(好ましくはストレプトアビジン)をポリスチレンに吸着させた微細流路内の検出部位に送液し、前記の増幅された遺伝子をビオチン親和性タンパク質に結合させてトラップする工程、
(4)増幅された遺伝子をトラップした部分に、末端をFITC(fluorescein isothiocyanate)で蛍光標識したプローブDNAを流し、該遺伝子にハイブリダイズさせる工程、(5)微細流路内の検出部位にトラップした増幅遺伝子に、FITCに特異的に結合する抗FITC抗体で表面を修飾した金コロイド液を流し、これにより固定化した遺伝子にハイブリダイズしたFITC修飾プローブに、その金コロイドを吸着させる工程、
(6)上記微細流路の金コロイドの濃度を光学的に測定する工程、
とを含む方法である。
【0040】
上記ビオチン親和性タンパク質として、アビジン、ストレプトアビジン、エクストラアビジン(R)などが挙げられる。これらのアビジン類は、ビオチン結合部位として4箇所有するが、なかでもストレプトアビジンはビオチンに対して高度の結合特異性を示し、しかも強固な結合を形成し得るために特に望ましい。ストレプトアビジンを緩衝液に溶解させて得た溶液を、前記微細流路内の固定化する部分に適用することにより吸着される。このStreptomyces avidinii由来のタンパク質を微細流路内に吸着させる好適な条件が本発
明者らにより明らかにされた。その詳細は後記実施例に記載されている。驚くべきことにその方法によれば、ポリスチレン基板に形成された微細流路内にストレプトアビジンを固定化する際、特別な化学的処置を行うことは必要としない。単にビオチン親和性タンパク質をSSC緩衝液または生理食塩水に溶解して10〜35μg/mL、好ましくは20〜30μg/mLの濃
度の溶液を調製し、これを増幅反応部位よりも下流の微細流路上に適用して該ポリスチレン基板に設けられた流路上にビオチン親和性タンパク質を吸着させるだけでよい。このようにストレプトアビジンを固定化させることにより、増幅遺伝子のトラップを行う検出部位を極めて簡便に設けることができる。ストレプトアビジン吸着量を多くするためには、ポリスチレンを吸着させる部分に微細な凹凸、例えば、線条を設けて該検出部位の表面積を拡大してもよい。あるいはストレプトアビジンを別途に吸着もしくは固定化した微小なポリスチレンストリップを敷設してもよく、または多孔質物質を用いてもよい。
【0041】
プローブDNAとして、蛍光標識されたオリゴデオキシヌクレオチドが好ましく用いられる。そのDNA塩基配列は、検出対象の遺伝子塩基配列の一部分と相補的である配列が選択される。蛍光色素として、公知の蛍光色素を用いることができる。例えば、一般的な
FITC、RITC(ローダミンイソチオシアネート)、NBD、Cy3、Cy5などの蛍光物質などが示されるが、特にFITCが、抗FITC抗体、例えば金コロイド抗マウスIgGを入手できることから望ましい。蛍光色素の代わりにステロイドハプテンのジゴキシゲニン(DIG)を、プローブDNAに標識させてもよい。この場合、抗DIG−アルカリホスファターゼ標識抗体を抗FITC抗体の代替として用いる。
【0042】
上記方法において、ビオチン化DNA、ビオチン−ストレプトアビジン結合による固定化、FITC蛍光標識、抗FITC抗体、プライマーおよびプローブの設計技術、プライマーおよびプローブの作製技術などは公知技術である。核酸のハイブリダイゼーションも従来技術ではあるが、様々な条件によってその規模、効率は大きく変動する。増幅遺伝子をプライマーに標識したビオチンを介してストレプトアビジンにトラップさせた後に、これとハイブリダイズさせる方式を述べたが、場合によっては、順序を逆にして、増幅遺伝子とプローブDNAとをハイブリダイズさせた後に、得られたそのハイブリダイゼーション生成物を、プライマーに標識したビオチンを介して、前記ストレプトアビジンにトラップさせる方式であってもよい。ストレプトアビジンにトラップされた増幅遺伝子の特定塩基配列とプローブDNAの塩基配列とが相補的であれば、好適にハイブリダイズするであろう。いずれの場合にも該プローブDNAを着色物質に変換することにより、本発明のDNA検査デバイスの検出装置により光学的に検出される。
【0043】
蛍光色素FITCの蛍光を測定することも可能である。しかしながら、蛍光色素の光褪色、バックグラウンドノイズなどを考慮する必要がある。このため最終的に可視光により、高感度で測定できる方式が好ましい。本発明のDNA検査デバイスでは、金コロイド抗マウスIgGを用いた金コロイドの光学検出を利用する。あるいは、上記蛍光色素の代わりに上記プローブDNAを西洋わさびパーオキシダーゼ(HRP)で標識してもよい。このHRP酵素が触媒する発色反応を利用することもできる。そのための典型的な発色物質として、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3'−ジアミノベンジジン(DAB)、
p−フェニレンジアミン(OPD)、5−アミノサリチル酸(5AS)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、4−クロロ−1−ナフトール(4C1N)、4−アミノアンチピリン、o−ジアニシジンなどが知られている。これら発色物質のうちのいずれかを含む発色試薬と上記プローブのパーオキシダーゼと反応させて該物質を着色させる。
【0044】
パーオキシダーゼの他に、アルカリホスファターゼ、ガラクトシダーゼなどの酵素・発色系も使用できる。
蛍光測光と比べてこのような可視光の吸光分析が優れるのは、使用する機器がより一般的であり、妨害因子が少なくデータ処理も容易であるためである。本発明のDNA検査デバイスには、そのための光学検出装置が、上記マイクロポンプを含む送液手段およびマイクロリアクタの流路内における各反応の反応温度を制御する温度制御装置とともに組み込まれ、一体化した構成となっていることが望ましい。
【0045】
また前記各工程の間に、必要に応じてストレプトアビジンを吸着させた前記流路内に洗浄液を送液する工程を含むことが望ましい。そのような洗浄液としては、例えば各種の緩衝液、塩類水溶液、有機溶媒などが好適である。また上記工程において、変性液は、遺伝子DNAを1本鎖にするための試薬であり、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0046】
以上より、次の方法も本発明に含まれる。
遺伝子検査用マイクロリアクタの検出部位の作製方法として、マイクロリアクタの流路内で増幅された遺伝子をトラップするためのビオチン親和性タンパク質を、その流路の増幅反応部位よりも下流上に増幅遺伝子の検出部位として固定化させるために、ビオチン親和性タンパク質をSSC緩衝液または生理食塩水に溶解して10〜35μg/mLの濃度の溶液を調
製し、ポリスチレンを用いて形成された微細流路に該溶液を適用して該流路上にビオチン親和性タンパク質を吸着させることが含まれる作製方法である。
【0047】
また本発明の増幅された遺伝子の検出方法は、
マイクロリアクタの微細流路の遺伝子増幅反応部位で増幅された遺伝子を含む反応液と変性液とを混合し、増幅された遺伝子を一本鎖に変性処理する工程と、
増幅された遺伝子を一本鎖に変性処理して得られた処理液を、ビオチン親和性タンパク質をポリスチレンに吸着させた微細流路の検出部位に送液し、増幅された遺伝子を該検出部位にトラップさせる工程と、
該検出部位にパーオキシダーゼで修飾したプローブDNAを送液し、増幅された遺伝子と該プローブDNAとをハイブリダイズさせる工程と、
次いで増幅された遺伝子をトラップした該検出部位に、発色物質を含む発色試薬の溶液を送液し、該パーオキシダーゼが触媒する反応により該発色物質を発色させる工程と、
該検出部位における発色を光学的に測定する工程と
を含むことを特徴としている。
【0048】
上記の増幅および検出は、本発明のDNA検査デバイスに格納されたソフトウェアに、マイクロポンプおよび温度の制御とともに、予め送液順序、容量、タイミングなどに関して設定された諸条件をそのプログラムの内容として有する。このようなソフトウェア、前記マイクロポンプ、前記検出装置および温度制御装置とが一体化されたDNA検査デバイス本体と、この装置本体に対し脱着可能な上記マイクロリアクタとを接合させるとマイクロリアクタの流路も作動状態となる。好ましくは試料注入により、自動的に分析が開始され、試料および試薬類の送液、混合に基づく遺伝子増幅反応、遺伝子検出反応および光学的測定が、一連の連続的工程として自動的に実施され、その結果、測定データが、必要な条件、記録事項とともにファイル内に格納される。
遺伝子検査
本発明の遺伝子検査用マイクロリアクタおよびDNA検査デバイスにおいて、検出方法として採用された遺伝子増幅技術およびハイブリダイゼーション技術により、主に2つの遺伝子検査の側面が形成される。まず遺伝子増幅反応に使用するプライマーとして、ある特定の遺伝子、通常は目的の遺伝子に特異的な配列を有するプライマーを用いることにより、増幅の有無または増幅効率を測定することにより、検体中の遺伝子由来のDNAが、その目的遺伝子と同一か、異なるかの判定に利用することができる。特に、感染病の原因となるウィルス、細菌を遺伝子から迅速に同定または判定するのに有効である。アレル特異的オリゴヌクレオチドをPCRオリゴマーとして使用する対立遺伝子特異的PCRとして行うと、相同染色体上の対立遺伝子間の僅かな突然変異も検出できる。
【0049】
増幅された遺伝子DNAにハイブリダイズするプローブDNAのヌクレオチド配列を目的の遺伝子と相補的になるように設計することで、そのプローブの特異的な結合を達成し検出の精度を高めている。あるいはハイブリダイゼーションにおける合成プローブとのミスマッチを指標とする遺伝子変異の検出にも応用が可能である。
【0050】
本発明による遺伝子検査により、癌遺伝子、遺伝性高血圧遺伝子などの発現の程度を、診断するデータを得ることができる。具体的には、そうした遺伝子の発現の証であるmRNAの種類、発現レベルの分析による。
【0051】
あるいは、特定の疾患に対する罹患感受性を示す遺伝性素因の判定、医薬に対する副作用などに関与する遺伝子変異、さらにコーディング領域のほか、調節遺伝子のプロモーター領域における変異も本発明のマイクロリアクタを用いる遺伝子検査により検出することができる。その場合、変異の部分を含む核酸塩基配列を有するプライマーを利用する。なお、上記遺伝子変異とは、遺伝子のヌクレオチド塩基における変異の意味である。さらに
本発明のDNA検査デバイスを使用することによる遺伝子多型の解析は、疾患感受性遺伝子の同定にも役立つ。
【0052】
本発明のDNA検査デバイスを用いる遺伝子検査法は、従来の核酸配列分析、制限酵素分析、核酸ハイブリダイゼーション分析と比べ、はるかに少ない検体量、僅かな手間と簡便な装置により高い精度の結果を得ることができることは、装置構成と使用する分析方法の原理から明らかである。
【0053】
本発明の遺伝子検査用マイクロリアクタ、遺伝子検査用装置などは、遺伝子発現解析、遺伝子機能解析、1遺伝子多型解析(SNP)、臨床検査・診断、医薬スクリーニング、医薬、農薬あるいは各種化学物質の安全性・毒性の検査、環境分析、食品検査、法医学、化学、醸造、漁業、畜産、農産製造、農林業等の分野で利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明の好ましい実施態様の一例として示された図面を参照しながらさらに説明する。本発明は、かかる態様に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【0055】
図1の流路図に示す、プラスチック樹脂製のチップからなるマイクロリアクタは、血液、喀痰から抽出された遺伝子検体を注入することにより、チップ内でICAN(登録商標)法による遺伝子増幅反応およびその検出を自動的に行い、多項目について同時に遺伝子診断ができるように構成されている。例えば、縦横の長さが数cmのチップに2〜3μL程度
の血液検体を滴下するだけで、図2の装置本体2にチップを装着することにより増幅反応およびその検出ができるようになっている。
【0056】
図1の検体収容部20に注入された検体と、試薬収容部18a〜18cに予め封入された遺伝子増幅反応に用いる試薬(検出対象である遺伝子に特異的にハイブリダイゼーションするビオチン修飾したキメラプライマー、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、およびエンドヌクレアーゼを含む)は、図2の装置本体に組み込まれたマイクロポンプ(図示せず)によって各収容部に連通する流路へ送液され、Y字流路を介して流路内で検体と試薬とが混合され、増幅反応が行われる。流路は、幅が数十〜数百μm、好ましくは100〜200μm、深さが25〜200μm、好ましくは50〜100μmに形成される。このようにして増幅されたDNAは、金コロイドの濃度を光学的に測定することにより検出
される。具体的には図2の装置本体2に組み込まれた光学検出装置(図示せず)によって検出される。例えば、LEDなどから検査項目毎の流路上の検出部位に対して測定光を照射し、フォトダイオード、CCDカメラ、光電子増倍管などの光検出手段で透過光もしくは
反射光を検出する。これによりハイブリダイズさせたプローブDNAを介して標識された増幅DNA(遺伝子)を検出できるようになっている。
【0057】
装置本体2には、反応温度を制御する温度制御装置も組み込まれており、送液ポンプ、光学検出装置および温度制御装置が一体となった小型ユニットに、予め試薬が封入されたチップを装着するだけで簡便に遺伝子診断をすることができる。
【0058】
本実施形態では、1枚のチップで高精度かつ迅速に信頼性の高い遺伝子検査を行うために、マイクロリアクタを次のような態様に構成している。
第1に、1枚のチップにコントロールがすべて一体化されており、インターナルコントロール、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールが予めマイクロリアクタに封入され、検体の増幅反応および検出操作と同時に、これらのコントロールの増幅反応および検出操作が行われる。これによって、迅速に信頼性の高い遺伝子検査を行うことができる。
【0059】
第2に、流路の各所定位置には、正方向への送液圧力が予め設定された圧に達するまで液体の通過を遮断し、予め設定された圧以上の送液圧力を加えると液体の通過を許容するというように、マイクロポンプのポンプ圧により液体の通過を制御する送液制御部と、流路内の液体の逆流を防止する逆流防止部とを配設している。後述するように、マイクロポンプ、送液制御部および逆流防止部によって、流路内における液体の送液が制御され、試薬などを高精度に定量送液することができ、分岐流路から導入された複数の試薬を迅速に混合することができる。
【0060】
次に、本実施形態のマイクロリアクタを用いた増幅反応およびその検出操作を、このマイクロリアクタの主要な構成要素と関連づけて具体的に説明する。
・試薬収容部
マイクロリアクタ1には、各試薬を収容するための複数の試薬収容部18が設けられ、遺伝子増幅反応に用いる試薬、増幅された遺伝子を変性する変性液、増幅された遺伝子とハイブリダイズさせるプローブDNAなどが収容される。
【0061】
試薬収容部18には、場所や時間を問わず迅速に検査ができるように、予め試薬が収容されていることが望ましい。チップ内に内蔵される試薬類は、蒸発、漏失、気泡の混入、汚染、変性などを防止するため、その試薬収容部の表面が密封処理されている。さらにマイクロリアクタの保管時に、試薬収容部から試薬が微細流路内に勝手に漏出して試薬が反応してしまうことなどを防止するために封止材により封入されている。マイクロリアクタに予め試薬を収容しておく場合、試薬の安定性上、マイクロリアクタを冷蔵保管することが望ましい。この封止剤は、使用前、マイクロリアクタが保管される冷蔵条件下では、固化もしくはゲル化しており、使用時、室温にすると融解し流動状態となるものである。試薬と、試薬収容部18に連通する流路15との間に封止剤を充填することにより、試薬を試薬収容部に封じ込めることが好ましい。なお、封止剤と試薬との間には空気が介在しても差し支えないが、定量送液の観点から介在する空気の量は(試薬量に対して)充分に少ないことが好ましい。
【0062】
このような封止剤としては、水に対して難溶性の可塑性物質を使用することができ、好ましくは水に対する溶解度が1%以下の油脂が好適である。そうした油脂は、油脂ハンドブックなどで調べることができる。なお、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールを収容する各収容部とこれに連通する流路との間にも、同様に封止剤を充填してもよい。
・ポンプ接続部
本実施形態では、検体収容部20、試薬収容部18、ポジティブコントロール収容部21h、およびネガティブコントロール収容部21iのそれぞれについて、これらの収容部
の内容液を送液するマイクロポンプ11が、マイクロリアクタとは別途の装置として設けられている。マイクロポンプ11は試薬収容部18の上流側に接続され、マイクロポンプ11により駆動液を試薬収容部側へ供給することによって、試薬を流路へ押し出して送液している。好ましくはマイクロポンプユニット(ポンプの駆動部、電気制御部、ポンプ室を含む送液作動部のポンプユニット)は、マイクロリアクタとは別途の装置本体(DNA検
査デバイス)に組み込まれており、マイクロリアクタを装置本体に装着することによって、ポンプ接続部12からマイクロリアクタに接続されるようになっている。マイクロポンプユニットのうち、少なくともポンプ駆動部および電気制御部は、マイクロリアクタとは別途の装置本体に組み込まれており、マイクロリアクタを該装置本体に装着することによって、ポンプ接続部12からマイクロリアクタに接続されるようになっている。マイクロポンプ・エレメントとして、このポンプ接続部12の他に、ポンプ室を含むポンプ送液作動部もまたマイクロリアクタの微細流路内に設けることも可能であるが、その場合には、マイクロポンプ・エレメントはポンプ接続部12および該送液作動部を含む。
【0063】
本実施形態では、マイクロポンプとしてピエゾポンプを用いている。すなわち、
流路抵抗が差圧に応じて変化する第一流路と、
差圧の変化に対する流路抵抗の変化の割合が該第一流路よりも小さい第二流路と、
該第一流路および該第二流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部の圧力を変化させるためのアクチュエータと
を備えたピエゾポンプである。その詳細は、上記特許文献1および2に記載されている。
・送液制御部および逆流防止部
本実施形態のマイクロリアクタには、その流路に、送液制御部13が多数設けられている。この送液制御部は、正方向への送液圧力が所定圧に達するまで液体の通過を遮断し、所定圧以上の送液圧力を加えることにより液体の通過を許容する。
【0064】
本マイクロリアクタの流路には、液体の逆流を防止する逆流防止部16が多数設けられている。この逆流防止部16は、逆流圧により弁体が流路開口部を閉止する逆止弁か、あるいは弁体変形手段により弁体を流路開口部へ押圧して該開口部を閉止する能動弁からなる。
・試薬定量部
上記の送液制御部および逆流防止部を用いて、試薬を定量的に送液することができる。試薬定量部の構成として、逆流防止部16と送液制御部13aとの間の流路(試薬充填流路15a)には、所定量の試薬が充填される。また、この試薬充填流路15aから分岐し、駆動液を送液するマイクロポンプ11に連通する分岐流路が設けられている。なお、試薬充填流路15aに、大容積の貯留部17aを設けることによって、定量のバラツキが小さくなる。
【0065】
試薬の混合は、2つの試薬をY字流路により混合する。この場合、各試薬を同時に送液したとしても、液の先頭部分では混合比率が安定しない。そこでこの先頭部分を切り捨てて、混合比率が安定してから混合液を次工程へ送液するようにすることが望ましい。
・遺伝子増幅反応部位
検出対象の遺伝子に特異的にハイブリダイズするビオチン修飾したキメラプライマー、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、およびエンドヌクレアーゼなどの試薬は、図3の試薬収容部18a、18b、18cに収容され、各試薬収容部の上流側には、マイクロリアクタとは別途の装置本体に内蔵されたピエゾポンプ11がポンプ接続部12で接続され、各試薬収容部から下流側の流路15aへこれらのポンプにより試薬が送液される。
【0066】
流路15aと、流路15aから分岐した次工程への流路と、送液制御部13a、13bは、各試薬収容部から送液された試薬の混合液の先端部を切り捨て、混合状態が安定した後に試薬混合液を次工程へ送液するような流路を構成する。各試薬収容部には、合計で7.5μL超の試薬が収容されており、先端を切り捨てた計7.5μLの試薬混合液が、2.5μLずつ3本に分岐した流路15b、15c、15dへ送液される。流路15bは検体
との反応、検出系22へ(図1、3)、流路15cはポジティブコントロールとの反応、検出系22へ(図1)、流路15dはネガティブコントロールとの反応、検出系22へ(図1)、それぞれ連通している。
【0067】
流路15bに送液された混合試薬は、図1の貯留部17aに充填される。なお、貯留部
17aの上流側の逆止弁16と、下流側の送液制御部13aとの間で、試薬充填流路が構
成され、駆動液を送液するポンプ11に連通する分岐流路に設けられた送液制御部13bとともに、前述した試薬定量部を構成している。
【0068】
血液もしくは喀痰から抽出した検体は、図1の検体収容部20から注入され、貯留部17bに、上記の試薬定量部と同じ機構で検体が定量に充填され(2.5μL)、後続する
流路へ定量送液される。各貯留部17に充填された検体と試薬混合液は、Y字流路を介して流路15e(容積5μL)に送液され、この流路15e内で混合およびICAN(登録
商標)反応が行われる。ここで、検体と試薬との送液は、交互に各ポンプ11を駆動して流路15eへ輪切り状に検体と試薬混合液とを交互に導入し、迅速に検体と試薬とが拡散、混合するようにしている。
【0069】
増幅反応は、5μLの反応液と、停止液収容部21aに収容された1μLの反応停止液とを容積6μLの流路15fに送液してこれらを混合することにより停止される。次いで、
変性液収容部21bに収容された変性液(1μL)と、反応液と停止液との混合液(0.
5μL)とを、容積1.5μLの流路15gへ送液して混合し、増幅された遺伝子を1本鎖に変性する。次いで、変性処理した処理液(1.5μL)を2分して、流路内にストレプ
トアジビンを吸着させた検出部位22a、22bへ送る。
・検出部位
この増幅遺伝子が固定化された流路22a内へ、単一のポンプ11により、ハイブリダイゼーションバッファー収容部21cのバッファーを流す。次にプローブDNA収容部21fに収容された、末端をFITCで蛍光標識したプローブDNA溶液(2.5μL)を
送液し、一本鎖の増幅遺伝子にプローブDNAをハイブリダイズさせる。さらに各収容部21d、21eに収容された洗浄液および抗FITC抗体で標識した金コロイドの溶液を、同図に示した順序で送液する。同様に、増幅遺伝子が固定化された流路22b内へ、単一のポンプ11により、各収容部21c、21d、21g、21eに収容されたハイブリダイゼーションバッファー、洗浄液、インターナルコントロール用プローブDNA溶液および抗FITC抗体で標識した金コロイドの溶液を、同図に示した順序で送液する。
【0070】
金コロイド溶液を送液することにより、固定化された増幅遺伝子にFITCを介して金コロイドが結合され、固定化される。この固定化された金コロイドを光学的に検出することにより、増幅の有無または増幅効率を測定する。
【0071】
図3の流路15c、15dは、ポジティブコントロールの反応、検出系、およびネガティブコントロールの反応、検出系に連通され、試薬混合液をこれらに送液することにより、上述した検体の反応、検出系における場合と同様に、試薬と流路内で増幅反応させた後、プローブDNA収容部に収容されたプローブDNAと流路内でハイブリダイゼーションさせ、この反応生成物に基いて増幅反応が検出される。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。本発明は、かかる実施例によりなんら限定されるものではない。
用いた試薬類
・ストレプトアビジン;ナカライテスク社製を使用した。
・ビオチン化金コロイド;Albumin-Biotin Gold Labeled 20nm(シグマ社、品番A4417)
これを下記の5×SSCで50倍に希釈して用いた。
・緩衝液(調製後、0.2μmのフィルターでろ過滅菌した)
5×SSC;750mM 塩化ナトリウムおよび75mM クエン酸三ナトリウム
生理食塩水;0.9% 塩化ナトリウム
50mM Tris-HCl; Trisは、2-amino-2-hydroxymethyl-1,3-propandiolである。
【0073】
純水
検出
極大波長が、520~530nmの発光ダイオードと、フォトダイオードとを対向させて、その
間にサンプルの測定部分を置き、フォトダイオードの出力を測定した。すなわち、発光ダイオードとフォトダイオードとの間に何もないときの数値をI0、吸着させていない素ベー
スの数値をIb、金コロイドを反応させたときの数値をIgとした場合、吸着強度は、
log (I0 / (I0 + (Ig−Ib) )で算出される。
手順
図4に示すように、ポリスチレンのシートに、直径4mmの穴の空いたシリコーンゴムを貼り付ける。上記の穴に、各種の緩衝液(Trisバッファー、SSCバッファー、ハイブリバッファー、生理食塩水)で調製した、種々の濃度(10〜50μg/mLの範囲で9種類)のストレプトアビジン溶液をそれぞれ12μL充填する。シリコーンゴムの穴をシリコーンゴ
ムの蓋を載せて塞ぎ、室温に1時間静置した。ストレプトアビジン溶液を抜き取り、各種
緩衝液で3回、穴を洗浄した。次いでシリコーンの穴にビオチン標識金コロイドを2μL
充填した。ビオチン標識金コロイドを抜き取り、各種緩衝液で3回、穴を洗浄した。シリコーンゴムを外して、ポリスチレンシートを乾燥させた。
【0074】
その後、ポリスチレンシートの穴の部分とその他の部分の光学濃度を測定し、金コロイド部分の吸着強度を上記式に従い、算出した。得られた結果を表1に示す。
ストレプトアビジンの濃度としては、25μg/mLが最適である。使用する緩衝液として、生理食塩水>SSC>Tris>純水の順で好ましい。
【0075】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における遺伝子検査用マイクロリアクタの概略図である。なおマイクロポンプ11は、基本的には別途の装置に属する。
【図2】図2は、図1のマイクロリアクタと装置本体とからなるDNA検査デバイスの概略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態におけるマイクロリアクタの試薬混合部の構成を示した図である。
【図4】図4は、ポリスチレンへのストレプトアビジンの吸着条件を調べるために使用したポリエチレンシートおよびシリコーンゴムの配置を示す。
【符号の説明】
【0077】
1 マイクロリアクタ
2 装置本体
11 マイクロポンプ
12 ポンプ接続部
13 送液制御部
15 流路
16 逆流防止部
17a 試薬貯留部
17b 検体貯留部
18 試薬収容部
20 検体収容部
21a 停止液収容部
21b 変性液収容部
21c ハイブリダイゼーションバッファー収容部
21d 洗浄液収容部
21e 金コロイド収容部
21f プローブDNA収容部
21g インターナルコントロール用プローブDNA収容部
21h ポジティブコントロール収容部
21i ネガティブコントロール収容部
22 検出部(ストレプトアジビン吸着)
23 廃液貯留部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細流路を有し、少なくとも検出部分が透明なプラスチックであるマイクロリアクタであって、
その微細流路内で、ビオチン標識プライマーを用いて増幅された検体遺伝子をトラップするために、ビオチン親和性タンパク質が、該微細流路の遺伝子増幅反応部位よりも下流上に、検出部位としてポリスチレンに吸着されている
ことを特徴とする遺伝子検査用マイクロリアクタ。
【請求項2】
前記の増幅された遺伝子とハイブリダイズするプローブが、パーオキシダーゼで標識されていることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子検査用マイクロリアクタ。
【請求項3】
前記プローブを、発色試薬と反応させることを特徴とする請求項2に記載の遺伝子検査用マイクロリアクタ。
【請求項4】
前記発色試薬が、発色物質として3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン、3,3'−ジアミ
ノベンジジン、p−フェニレンジアミン、5−アミノサリチル酸、3-アミノ−9−エチル
カルバゾール、4−クロロ−1−ナフトール、4−アミノアンチピリンまたはo−ジアニシ
ジンを含むことを特徴とする請求項3に記載の遺伝子検査用マイクロリアクタ。
【請求項5】
前記遺伝子検査用マイクロリアクタと、
マイクロポンプと、
マイクロポンプおよび温度を制御する装置と、ならびに
遺伝子増幅反応の検出を光学的に行う検出装置と
を備え、該マイクロリアクタを装着することにより遺伝子増幅反応および該増幅反応の検出を自動的に行うことを特徴とするDNA検査デバイス。
【請求項6】
前記マイクロポンプは、
流路抵抗が差圧に応じて変化する第一流路と、
差圧の変化に対する流路抵抗の変化の割合が該第一流路よりも小さい第二流路と、
該第一流路および該第二流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部の圧力を変化させるためのアクチュエータと
を備えたピエゾポンプであることを特徴とする請求項5に記載のDNA検査デバイス。
【請求項7】
前記検出装置は、
微細流路内で増幅された遺伝子を微細流路の検出部位に吸着させたビオチン親和性タンパク質と結合させた後に、プローブDNAとのハイブリダイズによりハイブリダイゼーション生成物を得てから、あるいは
微細流路内で増幅された遺伝子とプローブDNAとをハイブリダイズさせて得られるハイブリダイゼーション生成物を、微細流路の検出部位に吸着させたビオチン親和性タンパク質に結合させてから
該プローブDNAを着色物質に変換することにより光学的に検出する装置であることを特徴
とする請求項5に記載のDNA検査デバイス。
【請求項8】
マイクロリアクタの流路内で増幅された遺伝子をトラップするためのビオチン親和性タンパク質を、その流路の遺伝子増幅反応部位よりも下流上に増幅遺伝子の検出部位として固定化させるために、ビオチン親和性タンパク質をSSC緩衝液または生理食塩水に溶解し
て10〜35μg/mLの濃度の溶液を調製し、ポリスチレンを用いて形成された微細流路に該溶液を適用して該微細流路上にビオチン親和性タンパク質を吸着させることを特徴とする遺伝子検査用マイクロリアクタの検出部位の作製方法。
【請求項9】
マイクロリアクタの微細流路の遺伝子増幅反応部位で増幅された遺伝子を含む反応液と変性液とを混合し、増幅された遺伝子を一本鎖に変性処理する工程と、
増幅された遺伝子を一本鎖に変性処理して得られた処理液を、ビオチン親和性タンパク質をポリスチレンに吸着させた微細流路の検出部位に送液し、増幅された遺伝子を該検出部位にトラップさせる工程と、
該検出部位にパーオキシダーゼで修飾したプローブDNAを送液し、増幅された遺伝子と該プローブDNAとをハイブリダイズさせる工程と、
次いで増幅された遺伝子をトラップした該検出部位に、発色物質を含む発色試薬の溶液を送液し、該パーオキシダーゼが触媒する反応により該発色物質を発色させる工程と、
該検出部位における発色を光学的に測定する工程と
を含むことを特徴とする増幅された遺伝子の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−217818(P2006−217818A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31748(P2005−31748)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】