説明

部分フッ素化炭素の電気化学

黒鉛又はコークス粒子の直接的フッ素化によって得られる部分フッ素化炭素質材料が提供される。1組の部分フッ素化炭素質材料は、CF(0.63<x≦0.95、0.66<x≦0.95、又は0.7<x≦0.95)の平均化学組成を有する。部分フッ素化炭素質材料は、比較的高い放電レートにおいて、市販のCFよりも優れた電気化学的性能を示すことができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2006年6月6日に出願された米国特許出願第11/422,564号明細書、2007年2月15日に出願された米国特許出願第11/675,308号明細書、及び両方が2007年2月15日に出願された国際出願PCT/US2007/62243の優先権を主張する。本出願はまた、2006年2月21日に出願された米国特許仮出願第60/775,110号明細書、2006年2月22日に出願された第60/775,559号明細書、及び2007年2月9日に出願されたYazamiらの「Coke Based Subfluorinated Carbon Fluorides(CF) Cathodes in Lithium Batteries」と題された米国特許仮出願の優先権を主張し、その各々の内容全体を本明細書の開示と矛盾しない程度に参照によって援用したものとする。
【0002】
[発明の背景]
本発明はフッ素化炭素材料、特に部分フッ素化された黒鉛及びコークス粒子の分野におけるものである。
【0003】
フッ素化炭素は一次リチウム電池の正電極として商業的に用いられている。黒鉛のフッ素化は、炭素層間のフッ素のインターカレーションを可能にする。Li/CF電池システムは室温でC/100の速度(すなわち、1時間当たりの電池容量の1/100の電池電流)にて700Wh/kg、1000Wh/lまでの供給が可能であることが知られている(例えば、Bruce,G.Development of a CFx D Cell for Man Portable Applications,in Joint Service Power expo.2005、及び、Gabano,J.P.,ed.Lithium Batteries,by M.Fukuda & T.Iijima.1983,Academic Press:New Yorkを参照)。これらのシステムにおけるカソードは通常、典型的にはCF1.05〜CF1.1の範囲の炭素−フッ素化学量論(stoichiometries)を有する。しかしながらこのカソード材料は放電レートが限られていることが知られており、電池の分極(cell polarization)及び大きな容量損失を避けるために、C/50(1時間で割った電池容量の1/50の電池電流)より低い電流が多くの場合必要とされる。カソードの厚みと性能の間には強い相関があり、厚いカソードほど速度がより制限される傾向にあるので、CFの1015Ωcmに及ぶ高い電子抵抗が、観測される放電レート限界の原因である可能性がある(例えば、Zhurnal Strfuctunoi Khimii,2003,Vol.44、99−138より翻訳された、V.N.Mittkin,J.Structural Chemistry,2003,Vol.44、82−115を参照)。
【0004】
フッ素化炭素の他の工業的用途には、固体潤滑剤としての使用、又はBrF及びClFなどの非常に活性な分子状酸化剤の貯蔵容器としての使用が含まれる。
【0005】
リチウム/CF電池において、電池の全体的な放電反応は、Wittingham(1975)Electrochem.Soc.122:526により最初に仮定され、式(1):
(CF+xnLi←→nC+nxLiF (1)
により図式化することができる。
【0006】
したがって、mAh・g−1で表される理論上の具体的な放電容量Qthは式(2):
【数1】


により与えられ、式中、Fはファラデー定数、3.6は単位変換定数である。
【0007】
様々な化学量論の(CF材料の理論的容量は、それゆえ次のとおりである。
x=0.25,Qth=400mAh・g−1;x=0.33,Qth=484mAh・g−1;x=0.50,Qth=623mAh・g−1;x=0.66,Qth=721mAh・g−1;及び、x=1.00,Qth=865mAh・g−1
【0008】
フッ素ガスとの炭素同素体の反応性は、黒鉛化度又は炭素材料の種類により大きく異なる(Hamwi A.et al,;J.Phys.Chem.Solids,1996,57(6−8),677−688)。一般に、黒鉛化度が高いほど、反応温度が高い。フッ化炭素は、フッ素又はフッ素と不活性ガスの混合物の存在下における直接的なフッ素化により得られる。黒鉛が出発物質として用いられる場合、300℃未満では目立ったフッ素化は何ら観察されない。350〜640℃で、主に結晶構造及び組成の異なる2つのフッ化黒鉛、すなわちポリ(一フッ化二炭素)(poly(dicarbon monofluoride))(CF)及びポリ(一フッ化炭素)(poly(carbon monofluoride))(CF)が形成される(Nakajima T.;Watanabe N.Graphite fluorides and Carbon−Fluorine compounds,1991,CRC Press,Boston;Kita Y.;Watanabe N.;Fujii Y.;J.Am.Chem.Soc.,1979,101,3832)。両方の化合物において炭素原子は、炭素六角形が平面から「椅子様(chair-like)」又は「ボート様(boat-like)」配置へひずむことを伴うsp混成を取る。ポリ(一フッ化二炭素)は〜350℃で得られ、六方格子のc軸に沿った強力なC−C共有結合により結合される2つの炭素層によって2つの隣接するフッ素層が隔てられる、特徴的な構造を有する(ステージ2)。一方、〜600℃で得られるポリ(一フッ化炭素)は、2つの隣接するフッ素層の間に1つの炭素層のみがある構造を有する(ステージ1)。350℃〜600℃の間で得られるフッ化黒鉛は、(CF)と(CF)の間の中間の組成を有し、これら2つの相の混合物から成る(Kita,1979,同書)。ステージsは、2つの連続するフッ素の層を隔てる炭素の層数を示す。従ってステージ1の化合物はFCF/FCF・・・のような層の積み重ねの配列を有し、ステージ2の化合物はFCCF/FCCF・・・の配列を有する。ポリ(一フッ化二炭素)及びポリ(一フッ化炭素)は両方とも、電気伝導性が比較的不良であることが知られている。
【0009】
Watanabeらの米国特許第3,536,532号明細書は、主な活性材料として式(CFで表される結晶状フッ素化炭素を有する正電極を含む一次電池を記載しており、xは0.5より小さくないが、1より大きくない。記載されるように、反応器を所望の温度まで加熱し、次いでフッ素を導入することにより、炭素をフッ素化させる。Watanabeらの米国特許第3,700,502号明細書は、その活性材料として式(CFで表されるアモルファス又は部分的にアモルファスな固体フッ素化炭素を有する正電極を含む電池を記載しており、xは0を超えて1までの範囲である。Watanabeらの米国特許第4,247,608号明細書は、主な活性材料として式(CF)で表されるポリ一フッ化二炭素を有する正電極を含む電解槽(electrolytic cell)を記載しており、nは整数である。
【0010】
Lam及びYazami(Lam,P.et al.,2006,J.Power Sources,153,354−359)は、0.33<x<0.63である部分フッ素化フッ化黒鉛(CFについての結果を提示している。
【0011】
炭素−フッ素インターカーレーション化合物は、HF又は他のフッ化物などの、フッ素化触媒として作用することのできる他の化合物をガス混合物中に取り込むことによっても得られている。これらの方法はより低温でのフッ素化を可能にすることができる。これらの方法は(CF)及び(CF)以外の層間化合物を調製することも可能にする(N.Watanabe et al.,“Graphite Fluorides”,Elsevier,Amsterdam,1988,pp240−246)。HF又は金属フッ化物の存在下で調製されるこれらの層間化合物は、フッ素含有量が非常に低い場合(F/C<0.1)にはイオン性を有し、あるいはより高いフッ素含有量(0.2<F/C<0.5)ではイオン−共有結合性を有する。いずれの場合も、化学分析用電子分光法(ESCA)により測定される結合エネルギーは、最も重要なピークであるF1s線については687eV未満の値を示し、C1s線のピークについては285eV未満の値を示した(T.Nakajima,Fluorine−carbon and Fluoride−carbon,Chemistry,Physics and Applications,Marcel Dekker 1995 p.13)。
[発明の概要]
【0012】
本発明は、従来のCF正電極活性材料と比較して、高い放電レートでの向上したカソード性能をもたらすことのできる、部分フッ素化黒鉛及びコークス材料を提供する。これらのフッ素化材料は、一次電池及び二次電池などの電気化学デバイスにおける使用に適する。特に、リチウム電池での部分フッ素化黒鉛及びコークスの使用は、高い放電レートでの良好な電池性能をもたらしうる。
【0013】
本発明の部分フッ素化炭素質材料は、フッ素化炭素質成分と、非フッ素化炭素質成分及び/又はフッ素が炭素と強く結合していない「軽度フッ素化」炭素質成分とを有する、多成分系の材料である。非フッ素化及び/又は「軽度フッ素化」炭素質成分の存在は、ポリ(一フッ化二炭素)、ポリ(一フッ化炭素)、及びそれらの組み合わせのフッ素化相のみから成る材料で得られるよりも、高い電気伝導性をもたらすことができる。
【0014】
ある実施形態において、本発明の方法により製造される部分フッ素化黒鉛材料は、当技術分野で知られている他のタイプのフッ素化プロセスで製造される同じ平均F/C比の材料よりも多量に、非フッ素化炭素、「軽度フッ素化」炭素、又はそれらの組み合わせを保持する。ある実施形態において、本発明の方法は、炭素に対するフッ素の比が0.63を超え0.95以下である部分フッ素化黒鉛材料の製造を可能にする。
【0015】
ある実施形態において、本発明は
a.黒鉛粒子又はコークス粒子から選択される炭素質材料を提供するステップと、
b.炭素質材料を元素状フッ素の流動ガス源に曝露するステップと、
c.炭素質材料を、黒鉛粒子については330℃〜600℃、コークス粒子については300℃〜500℃の間にある選択された反応温度まで加熱するステップと、
d.炭素質材料を選択された温度で十分な時間維持して、部分フッ素化炭素質材料を得るステップと
を含む、部分フッ素化炭素質材料を作製する方法を提供する。
本発明の方法は、平均化学組成がCF(0.33≦x≦0.95)である部分フッ素化黒鉛材料、及び平均化学組成がCF(0.18≦x≦0.95)である部分フッ素化コークス材料を製造することができる。別の実施形態において、部分フッ素化材料は平均化学組成がCF(0.63<x≦0.95、0.66≦x≦0.95、0.7≦x≦0.95、又は0.7≦x≦0.9)である。別の実施形態において、部分フッ素化された材料中の非フッ素化炭素及び「軽度フッ素化」炭素の量は、5%〜40%の間、5%〜37%の間、5%〜25%の間、10%〜20%の間、又は約15%である。
【0016】
別の実施形態において、本発明は
a.黒鉛粒子及びコークス粒子から選択される炭素質材料を提供する工程と、
b.炭素質材料を元素状フッ素の流動ガス源に曝露する工程と、
c.炭素質材料を、黒鉛粒子については330℃〜600℃、コークス粒子については300℃〜500℃の間にある選択された反応温度まで加熱する工程と、
d.炭素材料を選択された温度で十分な時間維持して、平均化学組成がCF(0.63<x≦0.95)である部分フッ素化炭素質材料を得る工程と
により作製される、部分フッ素化炭素質材料を提供する。
【0017】
本発明はまた、部分フッ素化黒鉛の13C核磁気共鳴スペクトル分析により、テトラメチルシラン(TMS)を基準としておよそ100〜150ppmの間に中心を置く少なくとも1つの化学シフトピークと、TMSを基準としておよそ84〜88ppmに中心を置く別の化学シフトピークとを含むスペクトルが得られる、平均化学組成がCF(0.63<x≦0.95)である部分フッ素化黒鉛材料も提供する。
【0018】
さらに、本発明はまた、コヒーレンス長Lが5nm〜20nmの間であるコークスの直接的フッ素化により調製される、平均化学組成がCF(0.63<x≦0.95)である部分フッ素化コークス材料も提供する。部分フッ素化コークスの13C核磁気共鳴スペクトル分析により、テトラメチルシラン(TMS)を基準としておよそ100〜150ppmの間に中心を置く少なくとも1つの化学シフトピークと、TMSを基準としておよそ84〜88ppmに中心を置く別の化学シフトピークとを含むスペクトルが得られる。
[発明の詳細の説明]
【0019】
ある実施形態において、本発明は黒鉛又はコークス粒子の直接的フッ素化によって得られる部分フッ素化炭素質材料を提供する。黒鉛粒子のフッ素化によって得られる部分フッ素化炭素質材料は、本明細書において部分フッ素化黒鉛又は部分フッ素化黒鉛材料と呼ぶこともある。同様に、コークス粒子のフッ素化によって得られる部分フッ素化炭素質材料は、本明細書において部分フッ素化コークス又は部分フッ素化コークス材料と呼ぶこともある。
【0020】
コークスは、典型的には石油又は石炭のピッチから形成される炭素質材料である。当技術分野で知られているように、コークス材料の構造は、材料の熱処理温度に依存する。約2100℃を超える温度範囲では、コークスは結晶性の黒鉛(crystalline graphite)へ転換する。より低温、約1500℃〜約2100℃の間では、炭素層は乱層構造の積層欠陥を伴って乱雑化する。さらにより低温、約700℃〜1500℃の間では、その構造は折れ曲がった円柱を有すると表現することができる。構造は、c方向の結晶子寸法に関係するコヒーレンス長Lによって特徴づけることができ、X線回折分析から決定することができる。a方向の結晶子寸法に関係するパラメーターLは、ラマン分光法によって決定することができる。これらのパラメーターの決定は、当業者には公知である。ある実施形態において、本発明での使用に適するコークスは、炭素層に垂直なc軸に沿ったコヒーレンス長Lが約5nmを超えて約20nm未満である。
【0021】
本明細書で用いられる「部分フッ素化炭素質材料」という表現は、少なくともいくらかの炭素がフッ素に強く結合しているフッ素化炭素質成分と、非フッ素化炭素質成分及び/又はフッ素が炭素に強く結合していない「軽度フッ素化」炭素質成分とを有する多成分系炭素質材料のことを指す。多相の部分フッ素化炭素質材料は、非フッ素化炭素質相(例えば、黒鉛又はコークス)、「軽度フッ素化」相、及び1つ又は複数のフッ素化相(例えば、ポリ(一フッ化炭素)(CF)、ポリ(一フッ化二炭素)など)を含む炭素質相の混合物を含んでいてもよい。部分フッ素化炭素質材料は、炭素質出発材料の不完全な又は部分的なフッ素化を生じる条件下でフッ素源に曝露された炭素質材料を含む。部分的にフッ素化された炭素材料には、主として外側部分はフッ素と反応したが内部領域が大部分未反応のままである材料が含まれる。
【0022】
本明細書で用いられる、材料のフッ素化は、材料へのフッ素の導入を意味する。本発明において、フッ素化は通常炭素とフッ素の間の結合の形成を意味する。当業界で公知のように、フッ素はイオン結合及び共有結合の両方を炭素と形成することができる。いくつかの例において、C−F結合は強さがイオン結合と共有結合の間の中間としても分類される(例えば部分的なイオン性、準イオン性、準共有結合性)。フッ素化の方法はフッ素化生成物に存在する結合のタイプに影響しうる。
【0023】
本発明において、フッ素化炭素材料は直接的フッ素化により製造される。直接的フッ素化では、形成した少なくともいくらかのC−F結合が、低温フッ素インターカレーションによって得られるC−F結合より高エネルギーで、かつより強力で共有結合性の特性を持つ傾向にある。フッ素−黒鉛インターカレーション化合物は、フッ素含有量に応じてイオン性と準共有結合性の間の異なる炭素−フッ素結合を有すると予想される(Matsuo,Y.etal,1995 Z.Anorg.Allg.Chemie,621,1943−1950)。例えば、Matsuoら(1995年)は、687eV、685eV、及び683eVのXPSスペクトル F1sピークをそれぞれ、半共有結合性、ほぼイオン性、及びイオン性と分類している。対照的に、共有結合したフッ化黒鉛におけるF1sピークは、689.3〜689.6eVである(Watanabe 1998 同書)。
【0024】
本発明の一態様において、フッ素化生成物中の少なくともいくらかの炭素はフッ素に強く結合している(共有結合的又はほぼ共有結合的にフッ素に結合)。
【0025】
本明細書で用いられる、フッ素化生成物中の炭素−フッ素結合は、その結合のエネルギーが黒鉛の低温フッ素化により得られるフッ素の黒鉛インターカレーション化合物中の「準イオン性」又は「準共有結合性」炭素−フッ素結合のエネルギーよりも大きいが、ポリ(一フッ化二炭素)(CF)又はポリ(一フッ化炭素)(CF)における炭素−フッ素共有結合の典型的エネルギーよりも小さい場合は、ほぼ共有結合性と分類される。
【0026】
本発明の別の態様において、部分フッ素化炭素質材料は、フッ素が炭素に強く結合していない、「軽度フッ素化」炭素質成分を含む。そのような炭素質成分中のF−C結合エネルギーは、共有結合性又はほぼ共有結合性のF−C結合のエネルギーよりも小さい。
【0027】
フッ素化生成物中のC−F結合の性質は、適切な分析手法によって決定することができる。そのような手法は当業者に公知であり、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、X線光電子分光法(XPS)又は化学分析用電子分光法(ESCA)が挙げられ、限定はされない。C−F結合における共有結合性の程度は、フッ素化生成物の分析結果を、C−F共有結合を有すると一般に認められた「標準物質」について得られる分析結果と比較することにより、評価することができる。フッ素化生成物の分析結果と「標準物質」の分析結果との間の一致(実験誤差の範囲内)は、共有結合を示すとみなすことができる。フッ化黒鉛のポリ(一フッ化二炭素)(CF)及びポリ(一フッ化炭素)(CF)は、C−F共有結合を有すると一般に認められている。
【0028】
当技術分野で知られているように、約−190ppm/CFClに中心を置く化学シフトピークを有する固体19F−NMRスペクトルは、炭素原子に共有結合しているフッ素原子を示す。別の例として、84〜88ppm/TMSの化学シフトに存在する共鳴を有する固体13C−NMRスペクトルは、フッ素原子に共有結合している炭素原子を示す(Giraudet J.;Dubois M.;Guerin K.;Hamwi A.;Masin F.;J.Phys.Chem.Solids 2006,67(5−6),1100)。約1215cm−1に中心を置く振動バンドを示すフーリエ変換赤外分光(FT−IR)スペクトルも、C−F共有結合を示唆する。ある実施形態において、本発明の部分フッ素化材料の13C−NMR分析により、TMSを基準としておよそ84〜88ppmに中心を置く化学シフトピークを含むスペクトルが得られ、フッ素原子に強く結合している炭素原子を示唆している。
【0029】
当技術分野で知られているように、約42ppm/TMSの化学シフトに存在する共鳴を有する固体13C−NMRスペクトルは、炭素原子に共有結合した炭素原子を示す(sp混成)(Giraudet,2006,同書)。ある実施形態において、本発明の部分フッ素化黒鉛材料の13C−NMR分析により、TMSを基準としておよそ42ppmに中心を置く化学シフトピークを含むスペクトルが得られ、他の炭素原子に強く結合している炭素原子を示唆している。
【0030】
約136ppm/TMSの化学シフトに存在する共鳴を有する、フッ素化黒鉛材料の固体13C−NMRスペクトルは、フッ素化されていないか又はフッ素と弱く相互作用している「黒鉛型(graphitic)」sp型炭素原子を示唆すると解釈されている(Giraudet,2006 同書)。さらに、黒鉛材料の固体13C−NMRスペクトルは、約119ppm/TMSの化学シフトに存在する共鳴を表しうる(Giraudet,2006 同書)。ある実施形態において、本発明の部分フッ素化炭素質材料の13C核磁気共鳴スペクトル分析により、TMSを基準としておよそ120〜140ppmの間に中心を置く少なくとも1つの化学シフトを含むスペクトルが得られ、フッ素に結合していないか又は弱く結合しているのみの「黒鉛型」炭素を示唆している。ある実施形態において、Cu Kα線使用の、部分フッ素化黒鉛又はコークスのXRDスペクトルは、黒鉛又はコークス(002)のピークに相当するおよそ25.5〜26.4°の範囲の2θにおける実質的なピークを含む。別の実施形態において、Cu Kα線使用の、部分フッ素化黒鉛のXRDスペクトルは、およそ26.3〜26.4°の範囲の2θに実質的なピークを含まない。
【0031】
黒鉛型炭素原子(非フッ素化及び「軽度フッ素化」炭素)の相対量は、13C−NMRスペクトルにおける化学シフトピークの面積を比較することによって見積もることができる。詳細には、非フッ素化及び「軽度」フッ素化炭素に相当するピークの面積の総和を、これらのピークに加えてフッ素と強く相互作用している炭素に相当するピーク、及び(存在する場合)炭素−炭素の強い相互作用に相当するピークの総和で割る。実施例5で説明されるように、部分フッ素化コークス材料に関連するさらなるピークが分母に含まれることもある。スペクトルにおいてもしピークが明確に見えなければ、そのピークは総和には含まれない。
【0032】
フッ素対炭素の平均比率(F/C)は、フッ素化の程度の尺度として用いることができる。この平均比率は、重量取り込み測定又は定量的NMR測定によって決定することができる。フッ素が炭素材料の肉厚を通して均一に分布していない場合、この平均比率はX線光電子分光法(XPS)又はESCAによって得ることができるような表面のフッ素対炭素の比率とは異なることがある。
【0033】
いかなる特定の考えにも束縛されることを望まないが、比較的低温での黒鉛及び熱処理コークスのフッ素化は、主として炭素材料表面のフッ素化を生じると考えられる。炭素材料の残りの部分はフッ素化されないままである。この表面フッ素化は、CF及びCFなどの基の形成を含みうる。
【0034】
より高温では、フッ素化は材料表面を過ぎて進行すると考えられる。ある実施形態において、フッ素化黒鉛生成物はフッ化黒鉛(CF)及び(CF)の混合物との結晶学上の類似点をいくつか有する。平均の中間層の間隔は、黒鉛ポリ(一フッ化二炭素)のそれと黒鉛ポリ(一フッ化炭素)のそれとの間の中間でありうる。別の実施形態において、フッ素化コークス生成物は(CF)との結晶学上の類似点をいくつか有する。
【0035】
ある実施形態において、部分フッ素化炭素質材料は複数のナノ構造の粒子を含み、各々のナノ構造粒子は複数のフッ素化ドメインと、複数の非フッ素化又は「軽度フッ素化」ドメインとを含む。この記述の文脈において、「ドメイン」とは特徴的な組成(例えば、非フッ素化又はフッ素化)、相(例えば、アモルファス、結晶性、CF、CF、黒鉛、コークス)、及び/又はモルフォロジーを有する材料の構成成分である。正電極活性材料用の有用な部分フッ素化炭素質材料は、複数の異なるドメインを含む。個々のフッ素化、「軽度フッ素化」、及び非フッ素化ドメインは、約50ナノメートル未満の物理寸法(例えば、長さ、深さ、断面寸法など)を少なくとも1つ有することがいくつかの用途にとって好ましく、約10ナノメートル未満の物理寸法を少なくとも1つ有することがいくつかの用途にとってより好ましい。低温で高い性能を実現する、電気化学セルに特に有用な正電極活性材料は、フッ素化ドメインと非フッ素化又は「軽度」フッ素化ドメインとを有する活性材料の各々のナノ構造粒子を含み、いくつかの実施形態では、活性材料の各ナノ構造粒子の至る所に実質的に均一に分布している。いくつかの実施形態では、正電極活性材料の粒子のフッ素化ドメインは、CFyの平均化学量論を有する部分フッ素化炭素質材料を含み、ここでyは炭素原子に対するフッ素原子の平均原子比率であり、約0.8〜約1.0の範囲から選択され、正電極活性材料の粒子の非フッ素化ドメインは、黒鉛又はコークスなどの非フッ素化炭素質相を含む。
【0036】
「ナノ構造」という用語は、約1ミクロン未満の物理寸法(例えば、高さ、幅、長さ、断面寸法)を少なくとも1つ有する複数の別々の構造ドメインを有する材料及び/又は構造を指す。この文脈において、構造ドメインは、特徴的な組成、モルフォロジー、及び/又は相を有する材料又は構造の特徴、成分、又は部分を指す。正電極活性材料として有用なナノ構造材料としては、特に高い放電レート及び/又は低温においては、複数のフッ化炭素ドメインと非フッ素化又は「軽度フッ素化」炭素ドメインとを有するナノ構造複合粒子が挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明のナノ構造材料は、異なる組成、モルフォロジー、及び/又は相が非常に微細なスケール(例えば、数十ナノメートルより少なくとも小さい)で混合した複数の構造ドメインを含む。
【0037】
正電極活性材料としてナノ構造部分フッ素化炭素質粒子を用いることにより、本発明の電気化学セルにおいて多数の利益がもたらされる。第1に、これらの粒子におけるフッ素化及び非フッ素化又は「軽度」フッ素化ドメインのナノスケールでの混合は、フッ素化ドメインと非フッ素化ドメインとの間に大きな界面面積を生じさせる。この性質は、これらのドメイン間で特に低温での電子移動を促進する、良好な電気的特性及び界面特性をもたらす。さらに、これらの粒子中の相当量の非フッ素化又は「軽度」フッ素化成分の存在は、電極活性材料中のナノスケールの電気的伝導路を提供することにより、正味の電極伝導率を増大させる。さらに、これらの材料中のナノスケールのフッ素化ドメインの分布は、電解質にさらされる、フッ素イオンが高充填された相当な密度のフッ素化ドメインをもたらし、このことにより、正電極の動力学をさらに高める、電解質にさらされるフッ素化構造ドメインの、大きい界面面積がもたらされる。
【0038】
本発明において正電極活性材料を構成する部分フッ素化炭素質粒子は、広い範囲の物理寸法、例えば、約100ナノメートル〜約200ミクロンの範囲の断面寸法、及び約100ナノメートル〜約500ミクロンの範囲の側部寸法を有しうる。場合によっては、本発明の電気化学セルの正電極に有用な炭素質粒子は多孔質である。場合によっては、本発明の電気化学セルの正電極に有用な炭素質粒子は、大きいアスペクト比、例えば約50〜約1000の範囲から選択されるアスペクト比を有する(アスペクト比=(縦方向物理寸法(例えば長さ)/(断面物理寸法(例えば直径))。いくつかの実施形態において、本発明の電気化学セルの正電極に有用な炭素質粒子は、薄片形状を有する及び/又は非フッ素化黒鉛粒子に類似したモルフォロジーを有する。
【0039】
本発明のフッ素化炭素質材料は、黒鉛又はコークス粒子を元素状フッ素のガス源と接触させる、直接的フッ素化法を用いて調製される。フッ素化条件(炭素質材料の質量、反応温度、反応時間、及びフッ素流速を含める)は、炭素材料の所望のフッ素化度を得るように選択される。
【0040】
ある実施形態において、黒鉛又はコークス粉末をニッケルボート上に均一に広げ、反応器に導入する。反応器はニッケル製であってもよく、水平の台座を有していてもよい。反応器はフッ素ガスを流し始める前に真空脱気してもよい。反応はフッ素の動的な流れのもとで進行する(開放系反応器)。(反応器が閉鎖系ならば(静的反応器)フッ素化反応ははるかに遅くなると考えられる)。次いで反応器を加熱する。反応器が目標温度に達した後、反応器の加熱を停止するまで反応時間を計測する。反応器が周囲温度まで冷却された後、反応器内に遊離フッ素の痕跡が全く無くなるまで、窒素流下で過剰の(未反応の)フッ素を排出させてもよい。
【0041】
ある実施形態において、反応器を0.5℃/分〜5℃/分の間の速度で加熱する。ある実施形態において、反応器を1℃/分の速度で加熱する。
【0042】
別の実施形態において、黒鉛粒子のフッ素化温度は、330℃〜600℃の間、375℃〜550℃の間、又は390℃〜490℃の間であってもよい。揮発性の炭素−フッ素化合物による重量損失は、約550℃で起こると予想される。
【0043】
別の実施形態において、コークス粒子のフッ素化温度は、300℃〜550℃の間、350℃〜450℃の間、又は370℃〜425℃の間であってもよい。揮発性の炭素−フッ素化合物による重量損失は、約450℃で起こると予想される。
【0044】
別の実施形態において、時間は、2時間を超える時間、2〜40時間の間、3〜30時間の間、4〜20時間の間、4〜16時間の間、4〜12時間の間、8〜20時間の間、8〜16時間の間、8〜12時間の間、又は約16時間である。
【0045】
ある実施形態において、フッ素化は、本質的にF及び不活性ガスから成るガス混合物を用いて、大気圧において行われる。混合物中のフッ素の百分率は、5%〜100%の間、10%〜90%の間、20%〜80%の間、20%〜60%の間、20%〜50%の間、又は約20%であってよい。
【0046】
、約5gまでのコークス質量及び約40gまでの黒鉛質量に対して適したある実施形態において、フッ素流速は1時間当たりフッ素0.5〜2.0gである。
【0047】
別の実施形態において、炭素質材料の平均粒径は2〜200ミクロン、5〜50ミクロン、又は5〜20ミクロンである。
【0048】
他の実施形態において、フッ素化を大気圧未満の圧力で行ってもよい。ある実施形態において、フッ素化を1気圧〜0.1気圧の間、又は1気圧〜0.25気圧の間の圧力で行ってもよい。
【0049】
元素状フッ素の好適なガス源は、当業者に知られていると思われ、例示的なそのようなガス源は、F及び十分に不活性なガスの混合物である。好適な不活性ガスには、限定はされないが、窒素及びアルゴンが含まれる。好ましくは、HF又はフッ素のインターカレーション触媒であることが知られている他のフッ化物が、微量にのみガス混合物中に存在する。
【0050】
本発明の部分フッ素化炭素質材料を、フッ素化に続いて熱処理することができる。
【0051】
「電気化学セル」という用語は、化学エネルギーを電気エネルギーへ、又は電気エネルギーを化学エネルギーへ変換するデバイス及び/又はデバイスの構成要素を指す。電気化学セルは典型的には2つ又はそれより多い電極(例えば、正電極及び負電極)を有し、電極表面で起きる電極反応は電荷移動プロセスを生じる。電気化学セルには、限定はされないが、一次電池、二次電池、リチウム電池、及びリチウムイオン電池が含まれる。一般的なセル及び/又は電池の構築は当技術分野で知られており、例えば、米国特許第6,489,055号明細書、第4,052,539号明細書、第6,306,540号明細書、Seel and Dahn J.Electrochem.Soc.147(3)892−898(2000)を参照されたい。
【0052】
「容量」という用語は、電池などの電気化学セルが保持することのできる電荷の総量を指す、電気化学セルの特性である。容量は通常アンペア−時間の単位で表される。「比容量」という用語は、電池などの電気化学セルの単位重量当たりの容量出力を指す。比容量は通常、アンペア−時間kg−1の単位で表される。理論的比容量はQthと表される。
【0053】
「放電レート」という用語は、電気化学セルが放電する電流を指す。放電電流はアンペアの単位で表すことができる。あるいは、放電電流は「C/n」の割合として表すことができ、ここでnはセルを完全に放電させるのに理論的に必要とされる時間数である。例えば、C/5の速度及び3Cの速度下では、それぞれ5時間及び20分で完全な放電に達すると予想される。強度Iの一定の放電電流下では、理論的な放電時間tはQth(x)=Iにより与えられる。Iは単位重量当たりの電流(例えばmA/g)の単位での、放電電流強度である。
【0054】
「電流密度」とは、単位電極面積当たりに流れる電流を指す。
【0055】
「活性材料」とは、電気化学セル中でエネルギーを貯蔵及び/又は送達する電気化学反応に寄与する電極中の材料を指す。本発明は、部分フッ素化炭素質活性材料を有する正電極を有する電気化学セルを提供する。
【0056】
「室温」とは、華氏約293〜303度の範囲にわたって選択される温度を指す。
【0057】
本発明の電気化学デバイスにおいて、部分フッ素化炭素質材料は通常、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、粉末黒鉛、コークス、炭素繊維、カーボンナノチューブ、並びに、粉末ニッケル、アルミニウム、チタン、及びステンレス綱などの金属粉末から選択されうるような導電性希釈剤も含む組成物中に存在する。導電性希釈剤は、組成物の導電性を向上させ、典型的には組成物の約1重量%〜約10重量%、好ましくは組成物の約3重量%〜約8重量%に相当する量で存在する。部分フッ素化炭素質材料及び導電性希釈剤を含有する組成物は、通常高分子バインダーも含有し、好ましい高分子バインダーは少なくとも部分的にフッ素化されている。例示的なバインダーには例えば、限定はしないが、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、及びポリ(エチレンテトラフルオロエチレン共重合体)(PETFE)が含まれる。バインダーは、存在する場合、組成物の約5重量%〜約15重量%に相当するが、一方部分フッ素化炭素質材料は組成物の約70重量%〜約90重量%、好ましくは組成物の約75重量%〜85重量%に相当する。
【0058】
次いで、得られた部分フッ素化炭素質材料を上記の導電性希釈剤及びバインダーと共に混合し、好ましい重量比は、部分フッ素化炭素質材料が約70重量%〜約90重量%、より好ましくは約75重量%〜約85重量%、導電性希釈剤が約1重量%〜約10重量%、好ましくは約3重量%〜約8重量%、及びバインダーが約5重量%〜約15重量%である。
【0059】
通常は、前述の成分を混合して形成されるスラリーを、次いで導電性基材上に堆積させるかあるいは施して電極を形成させる。特に好ましい導電性基材はアルミニウムであるが、例えば、ステンレス綱、チタン、白金、金などの、多数の他の導電性基材も用いることができる。部分フッ素化粒子を引き延ばす場合、それらを堆積プロセスの間少なくとも部分的に配向させてもよい。例えば、部分フッ素化粒子を配向させるのにずり配向(shear alignment)を用いてもよい。
【0060】
本発明のなおさらなる態様において、
本発明の方法に従って部分フッ素化炭素質材料を調製するステップと、
部分フッ素化材料を導電性希釈剤及びバインダーと混合してスラリーを形成するステップと、
スラリーを導電性基材に塗布するステップと
を含む、電気化学デバイスにおいて用いる電極を作製する方法が提供される。
【0061】
ある実施形態において、本発明は、第1の電極及び第2の電極、並びにそれらの間に配置されたイオン輸送材料を含み、第1の電極が本発明による部分フッ素化炭素質材料を含む、電気化学デバイスを提供する。
【0062】
リチウム一次電池において、例えば、前述の電極はカソードとして働き、アノードはリチウムイオン源を供給し、ここでイオン輸送材料は典型的には、非水性電解質で飽和した微多孔性又は不織性の材料である。アノードは例えば、リチウム若しくはリチウムの金属合金(例えばLiAl)の、又はリチウム炭素の箔又はフィルムを含んでもよく、リチウム金属箔が好ましい。イオン輸送材料は、低い電気抵抗を有し、高い強度、良好な化学的及び物理的安定性、並びに均一な全体的特性を示す従来の「セパレーター」材料を含む。本明細書において好ましいセパレーターは、上記のように、微多孔性又は不織性の材料、例えば、不織ポリエチレン及び/又は不織ポリプロピレンなどの不織ポリオレフィン、並びに微多孔性ポリエチレンなどの微多孔性ポリオレフィンフィルムである。微多孔性ポリエチレン材料の例は、Hoechst Celanese製のCelgard(登録商標)(例えばCelgard(登録商標)2400、2500、及び2502)の名称で入手されるものである。リチウムは水性媒体中で反応性であるので、電解質は必ず非水性である。好適な非水性電解質は、非プロトン性有機溶媒、例えばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルエーテル(DME)、及びそれらの混合物に溶解したリチウム塩から成る。PC及びDMEの混合物が一般的であり、通常は約1:3〜約2:1の重量比である。この目的に適したリチウム塩には、限定はしないが、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiClO、LiAlClなどが含まれる。使用の際、電圧の変化が、アノードにおけるリチウムイオンの生成、及びイオンが電解質に浸したセパレーターを通ってカソードの部分フッ素化炭素質材料へ移動すること、すなわち電池の「放電」を引き起こすことが理解されるであろう。
【0063】
ある実施形態において、本発明は、第1の電極がカソードにおいて作用し、第2の電極がアノードとして作用し、かつリチウムイオン源を含み、イオン輸送材料が第1と第2の電極を物理的に隔て、それらの間の直接的な電気接触を防ぐ、リチウム一次電池である電気化学的デバイスを提供する。
【0064】
別の実施形態において、部分フッ素化炭素質材料は二次電池、すなわち再充電可能なリチウム電池などの充電池に用いられる。そのような場合、カチオン(例えば、リチウムイオン)が固体又はゲル状の高分子電解質(これもまた物理的セパレーターとして役立つ)を通って部分フッ素化電極へ輸送され、そこでそれらは部分フッ素化材料にインターカレート及びデインターカレート(de−intercalate)される。固体高分子電解質の例には、化学的に不活性なポリエーテル、例えばポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、及び他のポリエーテルが挙げられ、ここでポリマー材料は塩、例えば前の段落で述べたようなリチウム塩をしみこませているかあるいは塩と会合している。ゲル状高分子電解質の例には、前の段落で述べたような非水性電解質をしみこませているかあるいはそれと会合しているポリフッ化ビニレン(PVDF)のホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0065】
別の実施形態において、本発明は、第2の電極が元素周期表のI、II、及びIII族から選択される金属のイオン源を含み、イオン輸送材料が前記金属カチオンの輸送を可能にし第1と第2の電極を物理的に隔てる固体高分子電解質を含む二次電池である、電気化学的デバイスを提供する。
【0066】
本発明のなおさらなる態様において、
元素周期表のI、II、及びIII族から選択される金属のカチオンの受け取り及び放出が可能な、部分フッ素化炭素質材料を含む第1の電極と、
金属カチオン源を含む第2の電極と、
金属カチオンの輸送を可能にし、第1と第2の電極を物理的に隔てる固体又はゲル状高分子電解質と
を含む、充電池を提供する。
【0067】
Li/部分フッ素化黒鉛電池の例示的な放電プロファイルを図7〜10に示し、Li/部分フッ素化コークス電池の例示的なプロファイルを図18〜20に示す。これらの電池は、式1によるLiFの形成に相当する特徴的な平坦部を示す。平坦部の電圧値は、放電レートに依存する。これらの電池の放電プロファイルは、部分フッ素化材料のフッ素対炭素の比率に応じて異なる。一般に、式2に示されるように、F/Cが高いほど放電容量は高くなる。
【0068】
部分フッ素化材料は、完全なフッ素化材料と比較して、短い放電時間での過電圧の減少を示しうる。このことは、フッ素化部分が増大する、すなわち試料中の生の炭素量が減少すると、試料の電気伝導性が低下することに関連する。
【0069】
さらに、Li及び部分フッ素化炭素質材料を含む電池は、市販のLi/CF電池と比較して、高い放電レート(例えば1C以上)及び高いパワー密度において、改善された性能を示しうる。後者は、エネルギー密度(Wh/kg)対パワー密度の平方根のラゴーン(Ragone)プロットを参照することにより理解することができる。図6及び17に見られるように、部分フッ素化黒鉛及び部分フッ素化コークスは両方とも、高いパワー密度においてCF1より性能が優れうる。
【0070】
ある実施形態において、いったん電気化学セルが組み立てられると、実際の使用の状態にする前に「予備放電」してもよい。予備放電のステップは、電池の容量の1%〜5%の放電を伴う。電池の予備放電は、Li/部分フッ素化炭素質材料電池の特徴的な放電プロファイルに見られる、電圧の平坦部が定着する前の初期電圧遅延を除くことができる。
【0071】
下記の実施例において、使用される数(例えば、量、温度など)に関しては正確さを保証するための努力がなされているが、ある程度の実験上の誤差及び偏差は計上されるはずである。別途示されない限り、温度はセルシウス度であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。すべての溶媒はHPLCグレードとして購入し、すべての試薬は別途示されない限り市販で入手した。
【実施例】
【0072】
実施例1:部分フッ素化黒鉛の合成
黒鉛((10〜30グラムの量Mのマダガスカルの天然黒鉛7.5μm又は人工黒鉛15〜20μmをニッケル板上に0.2g/cmで分散)をニッケル反応器(4リットル)中に置き、室温で2時間真空乾燥させた。次いで、フッ素ガス(純度99.90%)を1気圧で導入し、その後、開放系反応器を用いて、フッ素を制御速度(FL g/時間)で流した。その後、温度を最終温度T(℃)まで規則的に上昇させ(1℃/分)、H時間維持した。反応の最後に、炉を室温まで冷却した。次に、過剰のフッ素を乾燥窒素流下で3時間排出させた。(注:部分フッ素化黒鉛のF/Cモル比は、重量取り込み法により測定した。)
【0073】
CF0.63の合成
黒鉛質量 M=30g
フッ素流速 FL=2g/時間
反応時間 H=17時間
反応温度 T=390℃
【0074】
CF0.74の合成
黒鉛質量 M=30g
フッ素流速 FL=2g/時間
反応時間 H=19時間
反応温度 T=390℃
【0075】
CF0.77の合成
黒鉛質量 M=30g
フッ素流速 FL=2g/時間
反応時間 H=20時間
反応温度 T=390℃
【0076】
CF0.71の合成
黒鉛質量 M=13g
フッ素流速 FL=1g/時間
反応時間 H=14時間
反応温度 T=490℃
【0077】
CF0.71の合成
黒鉛質量 M=13g
フッ素流速 FL=1g/時間
反応時間 H=31時間
反応温度 T=390℃
【0078】
CF0.74の合成
黒鉛質量 M=30g
フッ素流速 FL=2g/時間
反応時間 H=17時間
反応温度 T=490℃
【0079】
CF0.85の合成
黒鉛質量 M=30g
フッ素流速 FL=2g/時間
反応時間 H=20時間
反応温度 T=490℃
【0080】
実施例2:部分フッ素化黒鉛の特性化
図1は、部分フッ素化黒鉛材料のX線回折スペクトルをF/C比の範囲と共に示す。スペクトルは、フッ化黒鉛マトリクスに特徴的なピークを、およそ10〜15°の間及びおよそ40〜45°の間の2θで示している。(002)の黒鉛ピークに特徴的な位置である2θ=26.3のピークが、CF0.34、CF0.48、及びCF0.57で明確に観察される。X線回折(XRD)の粉末パターンを、Cu(Kα)線(λ=1.5406Å)を使用した回折計を用いて得た。スペクトルは強度(カウント)対2θをプロットしている。
【0081】
図2は、F/C比が0.9である部分フッ素化黒鉛材料のX線回折スペクトルの拡大図を示す。スペクトルは、フッ化黒鉛マトリクスに特徴的なピークを、およそ13°(13 degrees)(002)及びおよそ41°(100)の2θにおいて示している。さらなるピークがおよそ28°(004)及び75°(110)の2θに位置している。ピークの上のラベルは、計算された面間隔(spacings)dである(例えば、6,628のラベルは6.628オングストロームの面間隔に相当する)。計算された面間隔(d)は、(002)については6.628オングストローム、(004)については3.258オングストローム、(100)については2.201オングストローム、及び(110)については1.273オングストロームである。(002)の黒鉛ピークに特徴的な位置である2θ=26.3においてピークは観察されない。ミラー指数(hkl)は、部分フッ素化黒鉛材料の結晶構造及び黒鉛の六方対称に関連する。(002)線の6.628オングストロームのd値は、フッ化炭素の層間の平均面間隔dである。
【0082】
図3は、いくつかの部分フッ素化黒鉛材料の13Cマジック角回転(MAS)核磁気共鳴(MNR)スペクトルを示す(10kHz)。部分フッ素化黒鉛材料は390℃の反応温度で合成された。スペクトルに重ねられた波線は、ダイヤモンドライク(diamond-like)sp混成炭素原子(42〜43ppm/TMS)及びフッ素と強く相互作用している炭素(C―F)(約88ppm/TMS)に特徴的なピークの位置、並びに、グラファイトライク(graphite-like)sp混成炭素原子(C)(約120ppm/TMS)及びフッ素と弱く相互作用している炭素原子(C―――F)(約140ppm/TMS)に起因する観察された位置を示す。
【0083】
図4は、0.9のF/C比を有する部分フッ素化黒鉛材料の13C NMRスペクトルを示す。図4において、ダイヤモンドライクsp混成炭素原子に起因するピークはCとラベルされ、フッ素と強く相互作用している炭素(C−F)に起因するピークはBとラベルされている。ピークA及びA’の組み合わせは、グラファイトライクsp混成炭素原子及びフッ素と弱く相互作用している炭素原子(C―――F)の寄与と関連づけられる。ピークAはフッ素と弱く相互作用している炭素原子とより密接に関連しているが、ピークA’はグラファイトライクsp混成炭素原子とより密接に関連している。ピークの相対的な面積を定量するために、データをローレンツ関数により正規化し解析した(Origin7.5ソフトウエア、OriginLab)。結果を図4の波線により示す。解析されたピークA及びA’の面積の総和を、解析されたピークA、A’、B、及びCの面積の総和で割ると19%である。A及びA’の同様の面積比は、それぞれ8%及び11%である。
【0084】
表1はCF1及びF/C比が0.65、0.77、及び0.9の部分フッ素化黒鉛について得られたデータを示す。図5は、図3のスペクトルから得られる黒鉛型炭素及びsp型炭素の百分率対F/C比のプロットである。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例3:部分フッ素化黒鉛の電気化学的特性
電気化学試験のため、正電極を部分フッ素化炭素質材料、導電性材料、及びバインダーから構成した。次いで正電極を、電解質がプロピレンカーボネート(PC)及びジメチルエーテル(DME)に溶解したLiBFの1mol・L−1溶液から成る、二電極セル中に取り付けた。電解質を含有する、ポリエチレン又はポリプロピレンの微多孔フィルムを、フッ化黒鉛電極及びリチウム金属箔の間に挟んだ。
【0087】
図6は、エネルギー密度対パワー密度の平方根のラゴーンプロットを示す。部分フッ素化黒鉛CF0.90、CF0.77、及びCF0.744は、625W/kgを超えるパワー密度において、CFよりも著しく高いエネルギー密度を有する。
【0088】
図7〜10はそれぞれ、部分フッ素化黒鉛CF0.9、CF0.77、CF0.744、及びCF0.647の放電プロファイルを示す。電極厚みはそれぞれ、およそ80ミクロン、40ミクロン、40ミクロン、及び120ミクロンであった。
【0089】
実施例4:部分フッ素化コークスの合成
コークス(ニッケルボート上に分散させた量Mは2g)をニッケル反応器(1リットル)中に置き、室温で2時間真空乾燥させた。次いで、フッ素ガス(純度99.90%)を1気圧まで導入し、その後、開放系反応器を用いてフッ素を制御速度(FL g/時間)で流した。その後、温度を最終温度T(℃)まで規則的に上昇させ(1℃/分)、H時間維持した。反応の最後に、炉を室温まで冷却した。次に、過剰のフッ素を乾燥窒素流下で1時間排出させた。(注:部分フッ素化コークスのF/Cモル比は、重量取り込み法により測定した。)
【0090】
コークスは黒鉛又はカーボンナノチューブよりも反応性が高いことが観察された。例えば、390℃、16時間、FL=1g/時間のF2において、MWCNTからはCF0.09(わずかなフッ素化)が得られ、黒鉛はCF0.7を形成するが、コークスではCF1.13が形成される。
【0091】
燃焼反応(最終質量は減少)CF1.3生成物
コークス質量 M=2g
フッ素流速 FL=2g/時間
反応時間 H=4.5時間
反応温度 T=400℃
【0092】
CF0.5の合成
コークス質量 M=2g
フッ素流速 FL=1.8g/時間
反応時間 H=3時間
反応温度 T=400℃
【0093】
CF0.40の合成
コークス質量 M=2g
フッ素流速 FL=0.5g/時間
反応時間 H=12時間
反応温度 T=370℃
【0094】
CF0.19の合成
コークス質量 M=2g
フッ素流速 FL=1.2g/時間
反応時間 H=12時間
反応温度 T=350℃
【0095】
CF0.57の合成
コークス質量 M=2g
フッ素流速 FL=1.2g/時間
反応時間 H=6時間
反応温度 T=390℃
【0096】
CF0.73の合成
コークス質量 M=2g
フッ素流速 FL=1.2g/時間
反応時間 H=7.5時間
反応温度 T=390℃
【0097】
CF0.63の合成
コークス質量 M=2g
フッ素流速 FL=1.2g/時間
反応時間 H=6.5時間
反応温度 T=390℃
【0098】
CF0.87の合成
コークス質量 M=2g
フッ素流速 FL=1.2g/時間
反応時間 H=8.5時間
反応温度 T=390℃
【0099】
CF0.91の合成
コークス質量 M=2g
フッ素流速 FL=1.2g/時間
反応時間 H=9.5時間
反応温度 T=390℃
【0100】
実施例5:部分フッ素化コークスの特性化
図11〜14はそれぞれ、F/C=0.36、0.64、0.86、及び0.95の部分フッ素化コークス材料のX線回折スペクトルを示す。スペクトルは、およそ13°、41°、43.5°、及び44.4°に等しい2θにおいてフッ素化相のピークを、およそ25.8°に等しい2θにおいてコークス相のピークを、並びにおよそ28.4°及び47.3°に等しい2θにおいてシリコン標準のピークを示す。コークス相に関連するピークの高さは、予想された通り、F/Cの増加に伴って減少する。
【0101】
表2はF/C=0.65のCF材料の典型的XRD回折の結果(10°<2θ<50°、Cu Kα)を、回折ピークの帰属と共に示す。表2において、FWHMは半値全幅(full width at half maximum)である。ここでシェラーの式から計算される結晶子サイズにより、2θ=25.83°のコークスの(002)線を用いて、コークス材料についてLc=7.5nmと与えられた。
【0102】
【表2】

【0103】
図15はいくつかの部分フッ素化コークス材料の13Cマジック角回転(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す(10kHz)。スペクトルに重ねられた波線は、ダイヤモンドライクsp混成炭素原子(42〜43ppm/TMS)及びフッ素と強く相互作用している炭素(C―F)(約88ppm/TMS)に特徴的なピークの位置、並びに、グラファイトライクsp混成炭素原子(C)(約120ppm/TMS)及びフッ素と弱く相互作用している炭素原子(C―――F)(約140ppm/TMS)に起因する観察された位置を示す。
【0104】
図16はF/C=0.73の部分フッ素化コークス材料のNMRスペクトルを示す。解析されたピークを波線で示す。部分フッ素化黒鉛のNMRスペクトルとは対照的に、非フッ素化炭素及びフッ素と弱く会合している炭素の明確なピークが見られない。従って、1つのピークのみがこの領域でフィッティングされた(図16でAと示される)。より低い化学シフト値における2つのさらなるピーク、B’及びDも見られる。表3は、ピーク面積の正規化した値を示す。
【0105】
【表3】

【0106】
実施例6:部分フッ素化コークスの電気化学的特性
電気化学試験のため、正電極を部分フッ素化炭素質材料、導電性材料、及びバインダーから構成した。次いで正電極を、電解質がプロピレンカーボネート(PC)及びジメチルエーテル(DME)に溶解したLiBFの1mol・L−1溶液から成る、二電極セル中に取り付けた。電解質を含有する、ポリエチレン又はポリプロピレンの微多孔フィルムを、フッ化黒鉛電極及びリチウム金属箔の間に挟んだ。
【0107】
図17は、エネルギー密度対パワー密度の平方根のラゴーンプロットを示す。部分フッ素化コークスCF0.64及びCF0.84は、900W/kgを超えるパワー密度において、CFよりも著しく高いエネルギー密度を有する。
【0108】
図18〜20はそれぞれ、部分フッ素化コークス材料CF0.97、CF0.87、及びCF0.63の放電プロファイルを示す。
【0109】
表4は、部分フッ素化コークス材料の電気化学データを表す。表4において、<e>は固定した放電レート下での平均放電電圧、Q=得られる放電容量(mAh/g)及びE=得られるエネルギー密度(Wh/kg)である。
【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

【0112】
【表6】


[参照による援用及び変形に関する記述]
【0113】
本出願を通してのすべての参考文献、例えば、交付若しくは付与された特許又は等価文書を含めた特許文書、特許出願公開、未公開特許出願、及び非特許文献又は他の原資料は、各参考文献が本出願の開示と少なくとも部分的に矛盾しない程度に、参照によって個々に援用されるかのごとく、参照によってその内容全体を本明細書に援用する(例えば、部分的に矛盾する参考文献は、その参考文献の部分的に矛盾する部分を除いて、参照により援用される)。
【0114】
本明細書へのいかなる付属資料も明細書及び/又は図面の一部として参照により援用される。
【0115】
「comprise(含む)」、「comprises」、「comprised」、又は「comprising」という用語が本明細書において用いられる場合、それらは言及される記載の特徴、整数、工程、又は成分の存在を指定するものとして解釈されるべきであるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程、成分、若しくはそれらのグループの存在又は追加を排除しない。「comprising」又は「comprise(s)」又は「comprised」という用語が場合により文法上類似した用語、例えば「consisting/consist(s)(から成る)」又は「consisting essentially of/consist(s) essentially of(から本質的に成る)」によって置き換えられる、本発明の個別の実施形態もまた包含されることが意図され、それによって、必ずしも同一の広がりを持たないさらなる実施形態を記載する。
【0116】
様々な特定の好ましい実施形態及び技術に関して本発明を説明してきた。しかし、本発明の精神及び範囲内にとどまりながら多数の変形及び改変をなしうることを理解されたい。本明細書に詳細に記載されるもの以外の組成物、方法、デバイス、デバイス要素、材料、手法、及び技術が、本明細書で大まかに開示されるように過度の実験に頼らずに本発明の実施に適用されうることは、当業者には明らかであろう。本明細書に記載した組成物、方法、デバイス、デバイス要素、材料、手法及び技術に対する、当技術分野で公知のあらゆる機能上の等価物は、本発明に包含されることを意図している。範囲が開示されるときは必ず、すべての部分的範囲及び個々の値が、個別に明記されるかのごとく包含されることを意図している。本発明は、図面に示されるか又は明細書に例示されるいずれの実施形態も含め、開示される実施形態によって制限すべきではない。この実施形態は実施例又は例証を目的として制限を目的とせずに与えられる。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限すべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】ある範囲のF/C比を有する部分フッ素化黒鉛材料のX線回折スペクトルである。
【図2】F/C比が0.9の部分フッ素化黒鉛材料のX線回折スペクトルである。ピークの上のラベルは計算された面間隔dである。
【図3】いくつかの部分フッ素化黒鉛材料の13Cマジック角回転(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである(10kHz)。
【図4】0.77のF/C比を有する部分フッ素化黒鉛材料の13C NMRスペクトルである。
【図5】390℃で合成されたいくつかの部分フッ素化黒鉛における、%Cgraphitic及び%Csp3対F/C比のプロットである。
【図6】CFと比較したいくつかの部分フッ素化黒鉛のラゴーンプロットである。
【図7】部分フッ素化黒鉛CF0.9の放電曲線である。
【図8】部分フッ素化黒鉛CF0.77の放電曲線である。
【図9】部分フッ素化黒鉛CF0.744の放電曲線である。
【図10】部分フッ素化黒鉛CF0.647の放電曲線である。
【図11】F/C比が0.36の部分フッ素化コークス材料のX線回折スペクトルである。
【図12】F/C比が0.64の部分フッ素化コークス材料のX線回折スペクトルである。
【図13】F/C比が0.86の部分フッ素化コークス材料のX線回折スペクトルである。
【図14】F/C比が0.95の部分フッ素化コークス材料のX線回折スペクトルである。
【図15】いくつかの部分フッ素化コークス材料の13Cマジック角回転(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである(10kHz)。
【図16】0.73のF/C比を有する部分フッ素化コークス材料の13C NMRスペクトルである。
【図17】CFと比較したいくつかの部分フッ素化コークス材料のラゴーンプロットである。
【図18】部分フッ素化コークス材料CF0.97の放電曲線である。
【図19】部分フッ素化コークス材料CF0.87の放電曲線である。
【図20】部分フッ素化コークス材料CF0.63の放電曲線である。
【0118】
[参考文献]
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.黒鉛粒子及びコークス粒子から選択される炭素質材料を提供するステップ、
b.前記炭素質材料を元素状フッ素の流動ガス源に曝露するステップ、
c.前記炭素質材料を、黒鉛粒子については330℃〜600℃の間、コークス粒子については300℃〜500℃の間にある選択された温度まで加熱するステップ、並びに
d.前記炭素材料を前記選択された温度で十分な時間維持して、平均化学組成がCF(0.63<x≦0.95)である部分フッ素化炭素質材料を得るステップ
のプロセスにより作製される、部分フッ素化炭素質材料。
【請求項2】
0.66≦x≦0.95である、請求項1に記載の部分フッ素化炭素質材料。
【請求項3】
0.7≦x≦0.95である、請求項1に記載の部分フッ素化炭素質材料。
【請求項4】
前記炭素質材料が黒鉛粒子である、請求項1に記載の部分フッ素化炭素材料。
【請求項5】
前記炭素質材料がコークス粒子である、請求項1に記載の部分フッ素化炭素質材料。
【請求項6】
前記部分フッ素化フッ化炭素の13C核磁気共鳴スペクトル分析により、TMSを基準としておよそ120〜140ppmの間に中心を置く少なくとも1つの化学シフトピークと、TMSを基準としておよそ84〜88ppmに中心を置く別の化学シフトピークとを含むスペクトルが得られる、請求項1に記載の部分フッ素化炭素質材料。
【請求項7】
非フッ素化炭素及びフッ素と弱く結合している炭素の相対的な量が、5%以上で37%未満である、請求項1に記載の部分フッ素化炭素質材料。
【請求項8】
非フッ素化炭素及びフッ素と弱く結合している炭素の相対的な量が、10%以上で20%以下である、請求項7に記載の部分フッ素化炭素質材料。
【請求項9】
前記部分フッ素化フッ化炭素の13C核磁気共鳴スペクトル分析により、TMSを基準としておよそ120〜140ppmの間に中心を置く少なくとも1つの化学シフトピークと、TMSを基準としておよそ84〜88ppmに中心を置く別の化学シフトピークとを含むスペクトルが得られる、平均化学組成がCF(0.63<x≦0.95)である部分フッ素化黒鉛材料。
【請求項10】
0.66≦x≦0.95である、請求項9に記載の部分フッ素化黒鉛材料。
【請求項11】
0.7≦x≦0.95である、請求項10に記載の部分フッ素化黒鉛材料。
【請求項12】
非フッ素化炭素及びフッ素と弱く結合している炭素の相対的な量が、5%以上で37%未満である、請求項9に記載の部分フッ素化黒鉛材料。
【請求項13】
非フッ素化炭素及びフッ素と弱く結合している炭素の相対的な量が、10%以上で20%以下である、請求項12に記載の部分フッ素化黒鉛材料。
【請求項14】
5nm〜20nmの間のコヒーレンス長Lを有するコークスの直接的フッ素化により調製された部分フッ素化コークス材料であって、平均化学組成がCF(0.63<x≦0.95)である、部分フッ素化コークス材料。
【請求項15】
0.66≦x≦0.95である、請求項14に記載の部分フッ素化コークス材料。
【請求項16】
0.7≦x≦0.95である、請求項15に記載の部分フッ素化コークス材料。
【請求項17】
非フッ素化炭素及びフッ素と弱く結合している炭素の相対的な量が、5%以上で37%未満である、請求項14に記載の部分フッ素化コークス材料。
【請求項18】
非フッ素化炭素及びフッ素と弱く結合している炭素の相対的な量が、10%以上で20%以下である、請求項17に記載の部分フッ素化コークス材料。
【請求項19】
a.黒鉛粒子又はコークス粒子から選択される炭素質材料を提供するステップと、
b.前記炭素質材料を元素状フッ素の流動ガス源に曝露するステップと、
c.前記炭素質材料を、黒鉛粒子については330℃〜600℃の間、コークス粒子については300℃〜500℃の間にある、選択された反応温度まで加熱するステップと、
d.前記炭素質材料を前記選択された温度で十分な時間維持して、平均化学組成がCF(0.63<x≦0.95)である部分フッ素化炭素質材料を得るステップと
を含む、部分フッ素化炭素質材料を作製する方法。
【請求項20】
前記炭素質材料を前記選択された温度で2時間〜30時間の間の時間維持する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子の平均粒径が約2ミクロン〜約200ミクロンの間にある、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
アノード、カソード、及びその間のイオン輸送材料を含み、前記カソードが請求項1に記載の部分フッ素化炭素質材料を含む、電気化学デバイス。
【請求項23】
0.66≦x≦0.95である、請求項22に記載の電気化学デバイス。
【請求項24】
0.7≦x≦0.95である、請求項23に記載の電気化学デバイス。
【請求項25】
非フッ素化炭素及びフッ素に弱く結合している炭素の相対的な量が、5%以上で37%以下である、請求項22に記載の電気化学デバイス。
【請求項26】
1600W/kgのパワー密度において、エネルギー密度が1000Wh/kgを超える、請求項22に記載の電気化学デバイス。
【請求項27】
第2の電極が元素周期表のI、II、及びIII族から選択される金属のイオン源を含む、請求項22に記載のデバイス。
【請求項28】
前記イオンがリチウムイオンである、請求項27に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2009−527441(P2009−527441A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555538(P2008−555538)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/062518
【国際公開番号】WO2007/098478
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(305053547)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (18)
【出願人】(502017261)セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(シー.エヌ.アール.エス.) (15)
【出願人】(508105854)ユニベルシテ ブレイズ パスカル (4)
【Fターム(参考)】