説明

部分的にコーティングされた製品の製造方法および装置

製造方法およびシステムは、少なくとも1つの塗装領域(6)と、少なくとも1つの非塗装領域(7)とを有する部分的にコーティングされた製品(5)を製造する。手段(1)は、非塗装とする各領域について、当該非塗装とする領域をカバーするカバー層と、それらの間にあって、製品の外表面から分離された分離層(9)を含む製品のデジタル表現を提供する。生成装置(2)は、デジタル表現に基づく制御により、カバーおよび分離層を含む製品を製造するように構成されている。手段(3)は、カバー層を含む製品をコーティングする。最後に、除去手段(4)は、非塗装とする領域から、カバーと、必要に応じて分離層を、コーティングとともに除去するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの塗装領域と少なくとも1つの非塗装領域とを有する、部分的にコーティングされた製品を製造する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばプラスチックの金属化処理(メタライゼーション)など、プラスチックのコーティング処理が広く行われている。プラスチックやセラミック製品等の選択的な金属化処理は、MID、MEMS、および2コンポーネント型鋳造等の技術の進歩、および、小型軽量化の目的に起因する新しい分野の技術である。金属化の1つの重要な目的は、電気コネクタ部品、センサー、アクチュエータ、およびアンテナ等の(3次元)製品上に導電回路を設けた軽量の製品を実現することである。選択的な金属化処理によって、従来のばらばらな銅線を、製品表面上に一体化させた金属線として置き換えることが可能となる。ここ数年は、とくに立体的な製品へ適用可能な技術に重点が置かれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複雑な立体形状の製品に適用可能な製品の部分的コーティング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
少なくとも1つの塗装領域と、少なくとも1つの非塗装領域とを有する部分的にコーティングされた製品の製造方法を提供する。当該方法は、
非塗装とする各領域について、当該領域を一時的にカバーするように構成された除去可能なカバー層を含む前記製品のデジタル表現を提供するステップと、
製品のデジタル表現に基づく制御により、製品に除去可能なカバー層を生成するために、空間における所定のポイントにエネルギおよび/または材料を連続して供給するステップと、
非塗装とする各領域についてのカバー層を含むように製品をコーティングするステップと、
製品から、非塗装とする領域のカバー層と、当該カバー層のコーティングを除去する除去ステップとを備える。
【0005】
これにより、最終段階においてコーティングまたはクラッディングされない製品の表面領域には、まず、塗装されないこれらの領域をカバーするカバー層が設けられ、製品全体がコーティング(またはクラッディング)される。そして、最終的に、カバー層は、例えば切り取り、破壊、フライス加工(milling)等によって除去され、カバー層で覆われていた非塗装表面領域が露出する。
【0006】
意図的に塗装を施さない非塗装領域7をそれぞれカバーするカバー層は、非常に薄い、平らなチャンバー形状を有する分離層によって非塗装領域から分離されている。そこで、製品は、「ラピッドマニュファクチュアリング」(RM)技術によって製造することができる。RMは、エネルギーおよび/または材料を、空間において所定のポイントに連続的に供給し、コンピュータによって作成された製品のデジタル表現による制御に基づいて製品を製造する。
【0007】
適用可能なRM技術の一つとして、選択的レーザー焼結(SLS、3Dシステムズ社登録商標)がある。これは、コンピュータを利用したアディティブラピッドマニュファクチュアリング技術であって、高出力レーザー(例えば炭酸ガスレーザー)を用いてプラスチック、金属、またはセラミックの粉末を溶融させて、所望の3次元製品を造形していく技術である。レーザは、粉体層の表面における所定部分の3Dデータ(例えば、コンピュータのCADファイルまたはスキャンデータ)から生成される断面をスキャンすることによって、粉末材料を選択的に溶融する。各断面がスキャンされた後に、粉体層は1層厚さ分、下降されて、その上に材料の新たな層が積層される。製品が完成するまでこれらの処理が繰り返される。
【0008】
少なくとも1つの塗装領域(6)と、少なくとも1つの非塗装領域(7)とを有する部分的にコーティングされた製品(5)の製造システムをさらに提供する。当該システムは、
非塗装とする各領域について、当該非塗装とする領域(7)をカバーする除去可能なカバー層(8)を含む製品のデジタル表現を提供する手段(1)と、
デジタル表現に基づく制御により、製品にカバー層を生成するために、空間における所定のポイントにエネルギおよび/または材料を連続して供給することにより、製品にカバー層を生成するよう構成された生成装置(2)と、
非塗装とする各領域についてのカバー層を含む製品をコーティング(10)する手段(3)と、
少なくとも1つの非塗装とする領域から、当該非塗装領域のカバー層を除去するように構成された除去手段(4)とを備える。
【0009】
上記方法およびシステムは、例えば、銅の連続的な無電解金属堆積を開始できる触媒粒子の「コーティング」を施すことで、例えば、選択的なシーディングや製品の高度な作動を可能とするために用いることができる。これにより、例えば3次元電気回路を各製品の表面に形成することができる。
【0010】
以下に、図面を参照して例示的な実施の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、部分的にコーティングされた製品を製造するために設計された製造構成の一例を概略的に示す。
【図2】図2は、製造ステップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1のシステムは、部分的にコーティングされた製品5についてデジタル表現(digital representation)を提供するのに適したコンピュータシステム1を有する。製品5は、完成した状態で、塗装面6と、非塗装面7(図2参照)とを有する。システム1は、生成装置2に接続されている。生成装置2は、システム1から入力されたデジタル表現に基づく制御によって、(未塗装の)製品5を製造するように構成されている。
【0013】
製品5は、意図的に塗装を施さない非塗装領域7をそれぞれカバーするカバー層8を有している。カバー層8は、チャンバー形状を有する分離層9によって非塗装領域から分離されている。当該チャンバーは、非常に薄く、および/または、平らであって、さらに、シート形状であってもよい。当該チャンバーは、空洞としたり、あるいは、ガス、液体、粉体、または固体を充填してもよい。製品は、当該分野において周知の「ラピッドマニュファクチュアリング」(RM)技術によって製造することができる。RMは、エネルギーおよび/または材料を、空間において所定のポイントに連続的に供給し、コンピュータによって作成された製品のデジタル表現による制御に基づいて製品を製造する。カバー層8は、非塗装領域7に隣接して、例えば非塗装領域周囲のリムに沿って、製品5に接し、チャンバーの側壁を形成することができる。必要に応じて、この側壁によって、非塗装領域7を複数の領域に分割するようにしてもよい。チャンバーを「空洞」ではなく、粉体または固体で充填した場合は、側壁を省略できるようにしてもよい。
【0014】
適用可能なRM技術の一つとして、選択的レーザー焼結(SLS、3Dシステムズ社登録商標)がある。これは、コンピュータを利用したアディティブラピッドマニュファクチュアリング技術であって、高出力レーザー(例えば炭酸ガスレーザー)を用いてプラスチック(樹脂)、金属、またはセラミックのパウダーを溶融させて、製品に対してスキャン可能な位置において造形していく技術である。コンピュータは、所望の3次元製品およびカバー層を表す情報を備えている。コンピュータは、粉体層の表面における部分の3Dデータ(例えば、コンピュータのCADファイルまたはスキャンデータ)から生成される断面をスキャンすることによって、粉末材料を選択的に溶融するようにレーザを制御する。各断面がスキャンされた後に、粉体層は1層厚さ分、下降して、その上に材料の新たな層が積層される。製品が完成するまでこれらの処理が繰り返される。
【0015】
あるいは、ステレオリトグラフィーを利用することもできる。これは、所望の部分とカバー層の3Dデジタルデータを備えるコンピュータによる制御によって、製品に対して選択可能な位置にレーザーを指向し、選択可能な位置において樹脂を硬化させる技術である。コンピュータはデータに応じてレーザを制御する。更なる代替手段として、溶融堆積法を利用することもできる。この場合、コンピュータと堆積装置が設けられる。コンピュータは、製品およびカバー層のモデルを記憶しており、選択された位置において、堆積装置の噴射口から材料を噴射するように堆積装置を制御する。
【0016】
一実施の形態では、製品5とカバー層8は、エネルギおよび/または材料を空間における所定のポイントに連続的に供給する一度の工程において一緒に製造される。他の実施の形態では、製品5を最初にいずれかの便利な手法により別に製造し、続いて、エネルギおよび/または材料を空間における所定のポイントに連続的に供給することによって、製品5の選択した領域にカバー層8を設けるようにしてもよい。
【0017】
図1に示す構成は、さらに、コーティング(またはクラッディング)システム3を備えている。コーティングシステム3は、生成装置2で製造された製品に対して、コーティングまたはクラッディング層10を設ける。この層は、製品の全面に施され、液体またはガス状のコーティングまたはクラッディング媒体によって製品の全面が覆われる。分離層9は、流体またはガス状のクラッディング媒体とは分離されて触れることがないため、各内面は、コーティングまたはクラッディングされない。
【0018】
コーティングは、製品を浸漬浴に浸漬したり、スプレーを用いたり、あるいは、チャンバー内の製品に、スパッタリングソース、ガスすなわち気体(vapor)ソースを用いて材料を堆積させることによって行うことができる。ブラシ等の機械的な塗布装置を用いてコーティングを行ってもよい。
【0019】
一実施の形態では、コーティングを金属化処理に使用してもよい。しかし、別のタイプのコーティング、例えば、接着剤、保護層、着色材料を塗布してもよい。
【0020】
なお、分離層は「空洞」であることが好ましい。すなわち、非塗装製品が製造される環境に応じて、内部が真空、あるいは空気またはガスが充填されていることが好ましい。しかし、(2コンポーネント)RMまたはSLS製造技術の利用の際に容易に挿入できる固体性材料を、分離層に充填してもよい。SLSの場合、例えば非溶融粉末、または、カバー層8よりも粉末粒子の相互接続が少なく、部分的に溶融した状態の粉末を、チャンバーに充填してもよい。すなわち、この場合、分離層は、非溶融粉末、または弱溶融粉末からなる層によって形成される。同様に、例えばステレオリトグラフィを使用する場合、分離層を、非硬化樹脂または弱硬化樹脂から構成してもよい。分離層9を、カバー層8と対応する非塗装領域7とが互いにくっつくことを防止して、カバー層8を除去しやすくするような種類の材料からなる(薄い)層として形成してもよい。すなわち、分離層9は、カバー層8の内面と表面領域7とがくっつくことを防止し、カバー層8を容易にはがしやすくするような種々の(真空、ガス状、液体、または固体の)層によって形成することができる。分離層は、カバー層8とは異なる。分離層の成分すなわち材料の状態は、分離層の製品への接着力が、少なくともカバー層8の接着力よりも小さくなるように選択されている。あるいはまた、カバー層8を、製品5と軽くくっつく程度の、製品5とは異なる材料から生成してもよい。この場合、製品5を破損する力より小さい力でカバー層8を取り除くことができるような材料とする。また、製品5と同じ成分であって、製品5ほど強くない材料をカバー層8に用いてもよい。分離層を用いることによって、以下のような利点が得られる。すなわち、製品5と同じ成分で同程度の強度の比較的強度の高いカバー層を用いることができる。同時に、カバー層を容易に取り除くことができる。
【0021】
製品の外面10(領域6を含む)の全体がコーティングされた後に、(例えば、機械的)除去手段4によって非塗装領域7からコーティング10を含むカバー層8を取り除くことによって、非塗装領域7が露出する。除去手段は、例えば、手動または機械的除去のためのカッター、フライス盤、製品に接触してカバー層8を取り外し、または破壊するための振動装置、カバー層をつかんで剥ぎ取るための吸着カップ、接着クランプ等を含んでもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの塗装領域と、少なくとも1つの非塗装領域とを有する部分的にコーティングされた製品の製造方法であって、
非塗装とする各領域について、当該領域を一時的にカバーするように構成された除去可能なカバー層を含む前記製品のデジタル表現を提供するステップと、
前記製品の前記デジタル表現に基づく制御により、前記製品に前記除去可能なカバー層を生成するために、空間における所定のポイントにエネルギおよび/または材料を連続して供給するステップと、
非塗装とする各領域についての前記カバー層を含むように前記製品をコーティングするステップと、
前記製品から、非塗装とする領域のカバー層と、当該カバー層のコーティングを除去する除去ステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記デジタル表現は、非塗装とする各領域について、当該領域と当該領域の前記カバー層との間の分離層を含み、前記カバー層は、前記分離層によって前記製品から分離されるように生成されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法において
前記カバー層は、前記領域と前記カバー層との間のチャンバーによって前記製品から分離されるように生成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法において、
前記カバー層と前記製品とは、前記製品の前記デジタル表現に基づく制御により、空間における所定のポイントにエネルギおよび/または材料を連続して供給する同一の工程中に製造されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法において、
前記製品は、前記製品の前記デジタル表現に基づく制御により、空間における所定のポイントにエネルギおよび/または材料を連続して供給し、前記製品を製造する、ラピッドマニュファクチュアリング技術によって製造されることを特徴とする方法。
【請求項6】
少なくとも1つの塗装領域(6)と、少なくとも1つの非塗装領域(7)とを有する部分的にコーティングされた製品(5)の製造システムであって、
非塗装とする各領域について、当該非塗装とする領域(7)を一時的にカバーする除去可能なカバー層(8)を含む前記製品のデジタル表現を決定する手段(1)と、
前記デジタル表現に基づく制御により、前記製品に前記カバー層を生成するために、空間における所定のポイントにエネルギおよび/または材料を連続して供給することにより、前記製品に前記カバー層を生成するよう構成された生成装置(2)と、
非塗装とする各領域についての前記カバー層を含む前記製品をコーティングする手段(3)と、
前記少なくとも1つの非塗装とする領域から、当該非塗装領域のカバー層を除去するように構成された除去手段(4)とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記デジタル表現を提供する手段(1)は、前記製品と前記カバー層との間に分離層を設けるように構成され、前記生成装置(2)は、前記分離層を前記カバー層とともに生成するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のシステムにおいて、
前記生成装置(2)は、前記空間における所定のポイントにエネルギおよび/または材料を連続して供給することにより、前記製品とともに前記カバー層を製造するように構成され、中間物体は、製品の少なくとも1つの塗装される領域にコーティングを施し、少なくとも1つの塗装されない領域にはコーティングを施さず、前記中間物体は、前記製品を含み、前記塗装されない領域は、エネルギおよび/または材料の連続的な供給によって形成された除去可能なカバー層と、前記カバー層と前記塗装されない領域との間の分離層によってカバーされることを特徴とするシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの塗装領域(6)と、少なくとも1つの非塗装領域(7)とを有する部分的にコーティングされた製品の製造装置であって、
選択可能な位置において材料を溶融または硬化して造形を行うよう構成されたレーザと、
前記製品のデジタル表現に基づく制御により、前記位置を選択するように前記レーザを制御するよう構成された制御コンピュータとを備え、前記デジタル表現は、前記製品から分離層によって分離され、非塗装とする各領域(7)について当該非塗装とする領域をカバーするカバー層(8)を決定することを特徴とする装置。
【請求項10】
少なくとも1つの塗装領域(6)と、少なくとも1つの非塗装領域(7)とを有する部分的にコーティングされた製品の製造装置であって、
噴射口を備え、選択可能な位置において前記噴射口から材料を噴射する堆積装置と、
前記製品のデジタル表現に基づく制御により、前記位置を選択するように前記堆積装置を制御するよう構成された制御コンピュータとを備え、前記デジタル表現は、前記製品から分離層によって分離され、非塗装とする各領域(7)について当該非塗装とする領域をカバーするカバー層(8)を決定することを特徴とする装置。



【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−510874(P2010−510874A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538357(P2009−538357)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050590
【国際公開番号】WO2008/063069
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(506297485)ネーデルランデ オルガニサティー ヴール トゥーヘパストナツールウェテンスハペライク オンデルズーク テーエヌオー (30)
【Fターム(参考)】