説明

部分補修塗装方法

【課題】あらゆる劣化レベルの既存塗膜に対して、違和感の少ない部分補修塗膜を形成しうる部分補修塗装方法を提供する。
【解決手段】既存塗膜の一部領域を新たに塗装する部分補修塗装方法であって、塗装時からの時間経過に伴なう塗膜の外観変化を、数値化して定量的に把握する劣化進捗把握工程と、前記劣化進捗把握工程において把握された劣化進捗の中で、分散した2種類以上の劣化レベル数値の塗膜を形成する調色塗料を配合する調色塗料配合工程と、前記既存塗膜の劣化度を調べる劣化度調査工程と、前記調色塗料を用いて、前記調査した既存塗膜の劣化度に近似する補修塗料を作成する補修塗料作成工程と、前記補修塗料を塗装することにより、既存塗膜の上に部分補修塗膜を形成する補修塗装工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面、屋根面、フェンスを含む構築物などを被覆する既存塗膜に対し、経年後に、しかも部分的に塗装する際に使用する部分補修塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物、或いはフェンスなど構築物の塗膜は、太陽光線、風雨に晒されるれるとともに気温の変化を含め厳しい自然環境におかれる。特に有機塗料では、太陽光線中の紫外線が塗料の有機結合を分解するこにより塗膜が劣化し、その結果経年とともに、塗膜表面が白く粉末化するチョーキングを生じ、同時に光沢も低下する。
【0003】
従って、雨垂れ、埃の付着、コケの生育などにより塗膜面に部分的な汚れを生じた時、RC、コンクリートブロック、サイディングボードなどで構成される下地にクラックを生じた時、或いは、前記下地の目地が動いてこれを覆う塗膜面にクラックを生じた時など、これら損傷した一部の領域に既存塗膜に使用した塗料を重ねて塗布すると、この部分補修塗装領域は、既存塗膜と色、艶が合わないために補修跡が目立ち、その結果見栄えを低下させる問題がある。
【0004】
即ち、チョーキングを生じた既存塗膜は全体的に白みを帯びるのに対して、補修塗装領域では、塗装初期の色調がはっきりしているため違いがはっきり確認できる。同時に光沢の高い補修塗装領域が、艶の落ちた既存塗膜に囲まれるため、その相違が明確に表われ、特に光線の反射側から見た場合には、補修塗装領域が光って明るく見え、外観を著しく損ねる。
【0005】
特に、西日が長く当たる西に向き、かつ隣接する建物、木立など遮蔽物がない塗膜面、或いは建築物にあっては、バルコニー、本体切り妻妻面、平家片流れ妻面など軒がなく日当たりの良い部位には、チョーキングが著しく発生し、経過年数が短い場合にも前記補修跡が目立つ傾向がある。
【0006】
そこで、補修に使用する塗料に白色塗料を適量加えることにより色調を調整して、チョーキングによって変色した既存塗膜との差異を目立たなくする補修塗装方法が行われている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−143762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、既存塗膜には白色以外の色調変化もあり、白色塗料のブレンドだけでは色合わせに限界がある。また現場毎に異なる既存塗膜の劣化状態に個々に応じて適切に調色する作業は熟練を必要とするとともに、試行を何度も繰り返して最も適切な補修塗料を作り上げるには相当の時間を要するため作業性が悪いという問題がある。しかも補修塗装箇所が複数箇所に分散する場合、その部位、方位、周囲の状況によって既存塗膜の劣化度が異なるため、色調を個々に調節することを要し、多大な工数が必要となる。
【0009】
また、チョーキングによる色調変化に対しては、前記の如く白色塗料を用いてある程度の補正が可能であるが、光沢の低下に対してはこれに近づける有効な方法がない。従って艶の低下が著しい既存塗膜に対しては、補修跡が目立つことが避けられない。
【0010】
本発明は、塗装時からの時間経過に伴なう塗膜の外観変化を、数値化して定量的に把握する劣化進捗把握工程含むことを基本とし、あらゆる劣化レベルの既存塗膜に対して、違和感の少ない部分補修塗膜を形成しうる部分補修塗装方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、既存塗膜の一部領域を新たに塗装する部分補修塗装方法であって、塗装時からの時間経過に伴なう塗膜の外観変化を、数値化して定量的に把握する劣化進捗把握工程と、前記劣化進捗把握工程において把握された劣化進捗の中で、分散した2種類以上の劣化レベル数値の塗膜を形成する調色塗料を配合する調色塗料配合工程と、前記既存塗膜の劣化度を調べる劣化度調査工程と、前記調色塗料を用いて、前記調査した既存塗膜の劣化度に近似する補修塗料を作成する補修塗料作成工程と、前記補修塗料を塗装することにより、既存塗膜の上に部分補修塗膜を形成する補修塗装工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明において、前記劣化進捗把握工程は、L* * * 表色系のL値を用いることにより塗膜の色の変化を数値化して定量的に把握するプロセスを含み、また請求項3に係る発明では、塗膜の光沢度を用いることにより塗膜の変化を数値化して定量的に把握するプロセスを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明では、前記劣化度調査工程において、既存塗膜の劣化度は、既存塗膜と調色塗料の色見本とを目視により比較して調べることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明において、前記補修塗料作成工程は、調査した既存塗膜の劣化度に最も近似する調色塗料を補修塗料として選択する工程であり、請求項6に係る発明では、調査した既存塗膜の劣化度を挟む、直前直後の劣化度に合わせて作成された2種類の調色塗料を混合して補修塗料を作成する工程であることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明では、前記劣化進捗把握工程と、調色塗料配合工程とは、研究所、工場を含む塗料生産拠点において予備的に実施されるとともに、配合された調色塗料を塗装現場へ供給し、前記劣化度調査工程と、補修塗料作成工程と、補修塗装工程とは、供給された調色塗料を用いて、塗装現場において実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、成分樹脂の違いなど塗料の種類、色の種類によって塗膜の劣化は、進捗傾向が異なるが、劣化進捗把握工程において塗料毎にその塗膜の外観変化を数値化により把握し、この数値化されたデータに基づいて、個々の劣化進捗傾向を反映した調合塗料を配合することができるため、既存塗膜と色調、光沢が近似する部分補修塗膜を形成できる。しかも調色塗料配合工程において配合される調色塗料は、劣化進捗の中で分散した劣化レベルの塗膜を形成するものであるため、あらゆる劣化度の既存塗膜に対して、違和感の少ない部分補修塗膜を形成できる。
【0017】
請求項2に係る発明において用いるL* * * 表色系のL値は、チョーキングとの関係が大きく、しかも多くの色種のおいて劣化傾向が顕著に現れるため、塗膜劣化度を精度良く把握でき、また請求項3に係る発明のように、違和感の大きな要素となる光沢度を用いて劣化進捗を数値化すると、塗膜の劣化度を的確に把握できる。
【0018】
請求項4に係る発明では、色見本との目視比較により既存塗膜の劣化度を判断するため、塗装時の作業性が向上する。
【0019】
請求項5に係る発明では、復数種類の調合塗料の中から補修塗料を選択する方法を用いるため、作業効率に優れ、また請求項6に係る発明において、2種類の調色塗料を混合して得られる補修塗料は、既存塗膜に近似した外観の部分補修塗膜を形成して、補修跡が殆ど判別できないため、見栄えが優れる。
【0020】
請求項7に係る発明では、測色計、光沢計など測定計器類、配合設備などの装置を必要とする工程は、研究所、工場などで予備的に、しかも高精度で実施されるため、品質の安定した調合塗料が得られる。他方塗装現場では簡単な作業のみで補修塗装できるため、作業性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。部分補修塗装方法1は、既存塗膜の一部領域に対して、その上を新たに塗装する方法であって、図1に示すように、塗膜の外観変化を把握する劣化進捗把握工程と、2種類以上の調色塗料を配合する調色塗料配合工程と、既存塗膜の劣化度を調べる劣化度調査工程と、既存塗膜の劣化度に近似する補修塗料を作成する補修塗料作成工程と、既存塗膜の上に部分補修塗膜を形成する補修塗装工程とを含む。
【0022】
前記既存塗膜は、壁、屋根、軒先化粧板など建築物の屋外部位、或いはフェンス、門柱、ガレージ、電柱、時計台などの屋外構築物を被覆する塗膜が含まれ、紫外線が直接照射されるものを主な対象とする。しかし、居室、浴室、洗面所など建物内部の壁を覆う塗膜を対象とすることもできる。また使用する塗料は、アミノアクリル樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、エポキシ塗料、ビニル樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料など各種樹脂系塗料が含まれ、さらにはエマルジョン塗料、堅練りペイント、水溶性塗料、ゾル型塗料、多液型塗料、調合ペイント、粉体塗料など各種形態の塗料が含まれる。
【0023】
前記劣化進捗把握工程は、塗装時点からの時間経過に伴なって発生する塗膜の外観変化を、数値化することにより定量的に把握する工程である。前記塗膜の外観変化は、チョーキングなどの色あせをはじめ、艶低下など各種の要素が複雑に絡んで生じる。そして、これらの塗膜の外観変化は、前記成分樹脂を主とした塗料原料の違い、塗料形態の違い、さらには、色種によって劣化の進捗傾向が異なる。
【0024】
そこで、本形態の劣化進捗把握工程では、対象とする各種の塗料に対して、L* * * 表色系のL値、及び塗膜の光沢度を用いることにより塗膜の外観変化を数値化して定量的に把握している。なお前記チョーキングは、紫外線、熱の影響で、塗料の原子の結合が解離するため塗膜中の充填物が離脱して生じるものであり、塗膜表面が粉末状になり、その結果手で触れると、塗膜粒子が白く手に付く。
【0025】
前記L* * * 表色系は、物体の色を表わすために、あらゆる分野で現在最もポピュラーに使用されている表色系であり、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化され、日本でもJIS(JISZ8729)において採用されている。そして図2に示すように、明度を表わすL値は、黒に示す0から白を示す100までの数値により定量化される。また色相と彩度を示す色度は、a* とb* とで表わされ、これにより色の方向が示される。a* は0〜60の数値により赤方向を示し、−a* は0〜−60の数値によって緑方向を示す。他方b* は0〜60の数値により黄方向を示し、−b* は0〜−60の数値によって青方向を示す。各々の数値は、その絶対値が大きくなるに従って色あざやかになり、中心になるに従ってくすんだ色になる。また実際の計測では、塗膜面上に測色計の検知部を当てて各値を測定する。
【0026】
前記の如く色を数値化して定義したL* * * 表色系の中のL値は、白色化して明るさが変化するチョーキングとの相関関係が大きく、図3に示すように経年変化により塗膜の白色化度合が進むと、L値が比例的に増加する。しかも多くの色種において、劣化傾向が顕著に表れる。従ってL値を用いて塗膜の外観変化を把握すると、各種の塗料に関して塗膜の劣化レベルを精確に数値として把握できる点で好ましい。
【0027】
また前記光沢度は、塗膜表面に対し、ある一定の角度で照射した光が、同一の対角に向けて跳ね返る比率を0〜100の数値で表したものである。光沢度は、数値が高いほど光って見え、逆に低いほど優しく見える。また実際の計測では、塗膜面上に光沢度計の検知部を当てて光沢度を測定する。前記L値と同様、光沢度は、塗膜の白色化度合との相関が明確であって、図3に示すように白色化度合が進むと、光沢度が逆比例的に漸減する。しかも塗膜の光沢の違いは、観察者に大きな違和感を与える。従って、光沢度を用いて塗膜の外観変化を把握すると、各種の塗料に関して塗膜の外観変化傾向を的確に把握できる点で好ましい。
【0028】
表1は、グレー系塗料Iを用いた本形態の実施例1を例示している。この実施例1では、元色塗料及び塗装後の経過年数A〜Fまでの6回に亘り、前記L* * * 表色系を用いてL値を測定するとともに、光沢度の推移を測定して、これによりグレー系塗料Iの塗膜の外観変化を数値として把握している。その結果期間経過とともに、Aの62.6からFの68.64までL値が漸増し、逆に光沢度は、7.9から3.5に漸減するという定量的な塗膜劣化の進捗を把握している。
【0029】
【表1】

【0030】
また表2は前記表1と同様に、ブラウン系塗料IIを用いた本形態の実施例2を例示している。AからFまで期間経過とともにL値が漸増し、光沢度が漸減する塗膜劣化の進捗を把握している。
【0031】
【表2】

【0032】
前記の如く本形態の劣化進捗把握工程では、部分補修塗装を行なう各種の塗料に関して、前記L* * * 表色系のL値、及び塗膜の光沢度を用いて、その塗膜の経時的な外観変化を数値として把握するプロセスを行う。前記プロセスの他、或いはこれに加えて、前記L* * * 表色系のa値又はb値、L* * * 表色系などを用いることにより塗膜の外観変化を数値化して把握するプロセスを採ることもできる。
【0033】
前記調色塗料配合工程は、前記劣化進捗把握工程において把握された劣化進捗の中で、その進捗レベルが均等に分散する2種類以上の劣化レベル数値の外観の塗膜を形成できる調色塗料を配合する工程である。前記実施例1では、劣化進捗把握工程において把握された経過期間A、C、EのL値、及び光沢度の塗膜を形成する三種類の調色塗料Pa、Pc、Peを調整して配合する。経過期間B、Dの劣化進捗に合わせた調色塗料Pb、Pdを追加して五種類の調色塗料を配合することも良い。経過期間を更に細分化し、L値、光沢度を比例配分により換算して、そのL値、光沢度の塗膜を形成する調色塗料を加えることにより、豊富な種類の調色塗料を配合することもできる。
【0034】
前記調色塗料の調整は、例えば基になる塗料に白色塗料を適量ブレンドする方法、一種類以上の顔料を添加する方法などを用いて行なう。
【0035】
なお、前記劣化進捗把握工程及び調色塗料配合工程は、例えば塗料メーカーの研究所、試験体暴露場、検査センター、工場などの塗料生産拠点において、予備的に実施される。このように、測色計、光沢計などの計測機器、測定データ分析装置、塗料配合設備などの精密機器及び大型機械設備・装置が必要な工程は、これらが装備された拠点において実施されるため、分析の精度が向上するとともに品質の安定した調合塗料が得られる点で好ましい。
【0036】
そして、前記塗料生産拠点において配合し、生産された調合塗料は、メーカー及び販売網の物流ルートを経て、注文に応じて塗装現場へ供給される。
【0037】
前記劣化度調査工程は、部分補修塗装を行なう既存塗膜に対して、塗装後の経過期間において生じた退色、艶落ちの度合いを調べるプロセスである。本形態では、図4に示すように、色見本2を既存塗膜の上に重ね、両者を目視により比較して行なう。前記色見本2は、本形態では、基板上にサンプルとして前記三種類の調色塗料Pa、Pc、Peの塗膜を並設したものが例示される。そして観察者は、既存塗膜の色、光沢が調色塗料Pa、Pc、Peの何れに最も近いか、或いは何れの調色塗料の間に位置するかを感性的に判断することにより、既存塗料の劣化度を調査する。本形態では、目視による色見本2との対比よって、既存塗膜の劣化度を判断するため、作業能率が向上できる点で好ましい。なお図4に示された本形態の既存塗膜の外観は、調色塗料Pcに最も近く、かつ調色塗料PcとPeとの間に位置している。
【0038】
前記補修塗料作成工程は、前記調色塗料を用い、前記劣化度調査工程で調査した既存塗膜の劣化度に近似する補修塗料を作成する工程である。本形態の補修塗料作成工程においては、前記色見本2を用いて既存塗膜の劣化度に最も近いと判断した調色塗料Pcを、補修塗料として選択する。なお選択を決定する際、既存塗膜の劣化度の前後の調色塗料(本形態では、調色塗料PcとPe)をテスト塗布して確認することが好ましい。特に冬季は、ドライヤーを用いて乾燥させることにより、塗膜を形成した状態で確認することが重要である。このように複数の調色塗料の中で、劣化度が最も近いものを補修塗料として選択する方法を採ると、塗装現場において手間、熟練及び器具が必要な調合作業が不要であるため、作業性が向上する点で好ましい。なお既存塗料の劣化度が、前後の調色塗料の真中にあるときは、その後の塗膜劣化速度は既存塗膜の方が速いため、劣化レベルの進んだ調色塗料を選択することが好ましい。
【0039】
また前記補修塗料作成工程は、既存塗膜の劣化度を挟み、その直前直後の劣化度に合わせて配合された調色塗料を、同量混合して作成することも良い。このようにして得られた補修塗料は、既存塗膜の劣化度に一層近い外観の部分補修塗膜を形成できる補修塗料が作成され、補修跡が殆ど判らないため見栄えを一層向上できる。
【0040】
前記補修塗装工程は、補修塗料作成工程において得られた補修塗料を、既存塗膜上の部分補修箇所に塗布して、部分補修塗膜を形成するプロセスである。塗装方法は、圧縮空気を用いてスプレー塗装する方法、塗装ローラ、塗装刷毛などを用いて直接塗布する方法その他の公知の方法を用いる。
【0041】
このようにして形成される部分補修塗膜は、前記劣化進捗把握工程において得られた劣化レベルを示す数値データに基づき、劣化進捗傾向を反映して配合された調合塗料を用いて形成される。しかも劣化度調査工程により既存塗膜の劣化度を調べ、調合塗料を用いて、この劣化度に近似する部分補修塗膜を形成できる補修塗料を作成し、これを塗布して部分補修塗膜を形成するものである。その結果、既存塗膜と色調、光沢が近似した部分補修塗膜を形成でき、補修跡が殆ど目視で確認できないため、見栄えが向上する。また調色塗料配合工程において配合される調色塗料は、劣化進捗の中で分散した劣化レベルの塗膜を形成するものであるため、あらゆる劣化度の既存塗膜に対して、違和感の少ない部分補修塗膜を形成することができる。
【0042】
なお、前記劣化度調査工程、補修塗料作成工程及び補修塗装工程は、前記の如く供給された調合塗料を用いて、塗装現場において実施する。このように塗装現場では、色見本2、塗装機器は使用するものの、前記のような精密機器、大型機械設備・装置大型機械を必要としないため、作業性能が向上して工期を短縮でき、しかも熟練を必要としない。
【0043】
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態を例示するフロー図である。
【図2】L* * * 表色系を説明する図面である。
【図3】塗膜の白色化と、L値及び光沢度との関係を示すグラフである。
【図4】色見本の使用状態を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 部分補修塗装方法
2 色見本

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存塗膜の一部領域を新たに塗装する部分補修塗装方法であって、
塗装時からの時間経過に伴なう塗膜の外観変化を、数値化して定量的に把握する劣化進捗把握工程と、
前記劣化進捗把握工程において把握された劣化進捗の中で、分散した2種類以上の劣化レベル数値の塗膜を形成する調色塗料を配合する調色塗料配合工程と、
前記既存塗膜の劣化度を調べる劣化度調査工程と、
前記調色塗料を用いて、前記調査した既存塗膜の劣化度に近似する補修塗料を作成する補修塗料作成工程と、
前記補修塗料を塗装することにより、既存塗膜の上に部分補修塗膜を形成する補修塗装工程とを含むことを特徴とする部分補修塗装方法。
【請求項2】
前記劣化進捗把握工程は、L* * * 表色系のL値を用いることにより塗膜の色の変化を数値化して定量的に把握するプロセスを含むことを特徴とする請求項1記載の部分補修塗装方法。
【請求項3】
前記劣化進捗把握工程は、塗膜の光沢度を用いることにより塗膜の変化を数値化して定量的に把握するプロセスを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の部分補修塗装方法。
【請求項4】
前記劣化度調査工程において、既存塗膜の劣化度は、既存塗膜と調色塗料の色見本とを目視により比較して調べることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の部分補修塗装方法。
【請求項5】
前記補修塗料作成工程は、調査した既存塗膜の劣化度に最も近似する調色塗料を補修塗料として選択する工程であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の部分補修塗装方法。
【請求項6】
前記補修塗料作成工程は、調査した既存塗膜の劣化度を挟む、直前直後の劣化度に合わせて作成された2種類の調色塗料を混合して補修塗料を作成する工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の部分補修塗装方法。
【請求項7】
前記劣化進捗把握工程と、調色塗料配合工程とは、研究所、工場を含む塗料生産拠点において予備的に実施されるとともに、配合された調色塗料を塗装現場へ供給し、
前記劣化度調査工程と、補修塗料作成工程と、補修塗装工程とは、供給された調色塗料を用いて、塗装現場において実施することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の部分補修塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−111589(P2007−111589A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303330(P2005−303330)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】