説明

部品を洗浄する方法および部品

【課題】 部品を洗浄のために準備する方法、部品を洗浄する方法、および部品を補修する方法を提供する。
【解決手段】 部品を洗浄のために準備する方法は、内部空洞と、開口部と、空洞内の異物とを有する部品を提供するステップと、異物に隣接して部品に追加の開口部を設けるステップと、を含む。部品を洗浄する方法は、内部空洞と開口部とを有する部品を提供するステップと、部品に追加の開口部を設けるステップと、空洞を液体で洗い流すステップと、を含む。追加の開口部は液体の出口または入口として機能する。部品を補修する方法は、内部空洞と、開口部と、空洞内の異物とを有する部品を提供するステップと、部品に追加の開口部を設けるステップと、追加の開口部を通して異物を除去するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部品を準備、洗浄、補修する方法および補修された部品に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は部品を洗浄のために準備する方法を提供することである。
【0003】
本発明の他の目的は部品を洗浄する方法を提供することである。
【0004】
本発明の他の目的は部品を補修する方法を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は補修された部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上述およびその他の目的は一つの形態では洗浄するために部品を準備する方法によって達成され、該方法は、内部空洞と、空洞に連通する少なくとも一つの開口部と、空洞内の異物とを有する部品を提供するステップと、異物に隣接する位置において部品に追加の開口部を設けるステップと、を含む。
【0007】
本発明の上述およびその他の目的は他の形態では部品を洗浄する方法によって達成され、該方法は、内部空洞と、空洞に連通する少なくとも一つの開口部とを有する部品を提供するステップと、部品に追加の開口部を設けるステップと、空洞を液体で洗い流すステップとを含む。追加の開口部は液体の出口または入口として機能する。
【0008】
本発明の上述およびその他の目的は他の形態では部品を補修する方法によって達成され、該方法は、内部空洞と、空洞に連通する少なくとも一つの開口部と、空洞内の異物とを有する部品を提供するステップと、部品に追加の開口部を設けるステップと、異物を除去するステップとを含む。除去ステップは追加の開口部を通じて行われる。
【0009】
本発明の上述およびその他の目的は他の形態では部品によって達成され、該部品は、外部表面と、内部空洞と、表面を貫通するとともに空洞に連通する少なくとも一つの開口部と、表面の補修された部分とを有する。補修された部分は空洞から異物を除去するための一時的な出口または入口を提供する追加の開口部であったものである。
【0010】
本発明のその他の用途と利点とは明細書および図面を参照すれば当業者にとって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、例えば、推進や発電に用いられるガスタービンエンジン10を示している。エンジン10は、中心軸線12に沿い下流に向かって、ファンセクション14、圧縮機セクション16、燃焼器セクション18、およびタービンセクション20を含む。
【0012】
ファンセクション14はエンジン10に空気22を引き入れる。ファンセクション14によって引き入れられた空気22の一部は圧縮機16に流入し(すなわち「コアエンジン流れ」)、残りは流入しない(すなわち「バイパス流れ」)。コアエンジン流れは、圧縮機セクション16を通過する間に圧縮され、次いで燃焼器セクション18で燃料噴射器によって供給された燃料と混合される。燃焼器セクション18内で空気/燃料混合物が燃焼される。燃焼ガスは燃焼器セクション18を出てタービンセクション20に入る。燃焼ガスはタービンセクション20を駆動する。
【0013】
図2はタービンセクション20の一部を示している。具体的には、図は、プラットフォーム30によってルート部分26およびエアフォイル部分28に分けられるタービンブレード22を示している。ルート部分26は、ローター32(仮想線で図示)の対応する形状の部分に固定されている。プラットフォーム30はエンジン10のその他の部分とともにコアガス流路の半径方向内側の境界を画定しているから、エアフォイル部分28はコアガス流路の内部にある。エンジンケース34(仮想線で図示)はコアガス流路の半径方向外側の境界を画定している。運転中は、ローター32およびタービンブレード22は燃焼器セクション18から放出される燃焼ガスCGによって回転する。
【0014】
タービンセクション20、特にタービンブレード22のエアフォイル部分28が燃焼ガスCGの高温に長時間さらされることに耐えるように、エンジン10は冷却空気をタービンセクション20に導入する。通常、エンジン10はこの冷却空気を圧縮機セクション16から導入する。タービンセクション20に冷却空気を導入する一つの経路はタービンブレード22を通過する。以下においてさらに詳細に説明するように、タービンブレード22は冷却空気CAを受け入れるために中空になっている。
【0015】
図3はタービンブレード22の断面図を示している。タービンブレード22は内部空洞36を有する。空洞36は、一つまたは複数の入口38、および一つまたは複数の出口40のような、一つまたは複数の開口部を含む。外部表面42に加えて、タービンブレード22は、入口38と出口40との間で曲がりくねった通路46を形成するように配置された一つまたは複数の内壁44を含んでよい。冷却空気CAは、入口38を通って内部空洞36に入り、通路46に沿って流れ、次いで出口40から出る。図では後縁部に沿って配置されるように示されているが、出口40はエアフォイル部分28の任意の場所に、任意の所望の配置で設けられてよい。
【0016】
図4からわかるように、異物Fが空洞36内に捕捉されることがある。異物Fは様々な原因で空洞36に入り得る。例えば、過酷な運転条件によって異物F(例えば、砂)がエンジン10に入ることがある。加えて、(例えば、コーティングの除去などの)保守作業によって異物Fが空洞36に入ることがある。実際には、タービンブレード22を製造する製造プロセスにおいて異物Fが導入されることもある。図では空洞36内の特定の位置に示されているが、異物Fは空洞36内のいかなる場所にも存在し得る。
【0017】
空洞36内の異物Fの存在は冷却空気CAの効果を低減させる。異物Fがうまく除去されなければ、タービンブレード22は使用に戻されない(すなわち廃棄される)可能性が高い。タービンブレード22の廃棄は高くつく。空洞36から異物Fを除去することは、いくつかの理由で困難であることが多い。第一に、異物Fが存在した状態でのエンジン10の運転、保守作業の実施、および製造プロセスにおいて、異物Fがその位置に焼結する傾向がある。第二に、入口38および出口40の通常の寸法、および曲がりくねった通路46の形状の故に、異物Fへの接近が困難である。
【0018】
以下において、異物Fを除去することによってタービンブレード22を再生させる一つの可能な方法の各ステップを説明する。特にタービンブレードを参照しつつ説明するが、ここに説明する方法は異物Fを含み得る内部空洞を有する任意の部品に応用し得るものである。これらの部品は、例えばタービンベーンなどのエンジン10のその他の部品、あるいはガスタービンエンジンに関係しない部品であってもよい。
【0019】
異物Fの可能な除去方法の一つのステップは、空洞36内の異物Fの位置を特定することである。曲がりくねった通路46内の異物Fの位置によっては、異物の位置を特定するための種々の方法を用いることができる。例えば、技術者は目視によって異物Fの位置を特定できることがある。しかしながら、技術者は異物Fの位置を特定するために適切な機器に頼らなければならないことが多い。例えば、技術者は、異物Fの位置を特定するために、x線、中性子ラジオグラフ、超音波、および熱画像を用いることができる。
【0020】
異物Fの可能な除去方法の他のステップはタービンブレード22に他の開口部を設けることである。図5は空洞36に連通する追加の開口部48を有するタービンブレード22を示している。技術者はタービンブレード22に追加の開口部48を設けるために任意の適切な技術に頼ることができる。例えば、技術者は、追加の開口部48を設けるために、ルーター、フライス盤、放電加工(EDM)、またはレーザー穿孔を用いることができる。図に示されるように、追加の開口部48はタービンブレード22の先端部に設けられてタービンブレード22をエアフォイル部分28の凹面側から凸面側まで横切るチャネルの形をとることができるが、他の形状も可能である。また図は半径方向に伸びる開口部48を示しているが、(例えば、半径方向に対して角度をなす)他の方向も可能である。
【0021】
また追加の開口部48はタービンブレード22において任意の適切な位置にあってよい。追加の開口部48の位置は、異物Fの位置および後の方法のステップに用いられる特定の技術に関連して選択することができる。一般的に言えば、追加の開口部48の一つの適切な位置は異物Fの半径方向外側であって異物Fにできるだけ近い位置である。図に示されるように、追加の開口部48は異物Fの下流にある。
【0022】
位置特定ステップを実施することは必須ではない。位置特定ステップがないと、技術者は異物の正確な位置が分からず、あるいは異物が空洞36内にあるのかどうかさえ分からない。このような場合の追加の開口部48の一つの適切な位置は、従来の経験または推測によって決定された、異物Fの推定位置の近傍である。追加の開口部48を設けたならばタービンブレード22の準備は完了する。タービンブレード22は可能な方法の他のステップ、すなわち異物Fの除去に進むことができる。
【0023】
図6は異物Fの可能な除去方法の他のステップを示している。図は高圧洗浄機50などの、空洞36の洗浄装置を示している。洗浄機は、液体供給源52と、液体供給源52から液体Wを受け入れるマニフォルド54と、液体を空洞36中に放出する一つまたは複数のプローブ56とを含む。空洞36内のプローブ56の長さおよび位置は、曲がりくねった通路46の形状によって決定されてよい。一例として、プローブ56の位置は液体を曲がりくねった通路46を通して送り、空洞36から排出するのに役立つ。異物Fを洗い出す液体としては水が最も経済的で環境に優しい選択と思われるが、洗浄機50は他の液体で、あるいは添加物を含有する水で作動してもよい。
【0024】
洗浄機50は、例えば、約1000〜20,000psiの圧力で作動してよい。さらに洗浄機50は自動的な洗浄サイクルを有してもよく、また技術者が洗浄機50を手動操作してもよい。一例として、洗浄機50はオハイオ州デイトンのハンメルマンコーポレーション(Hammelmann Corporation)から入手できるHDP52パワーフラッシュ(Power Flush)ユニットでもよい。
【0025】
図6では入口38から空洞36に入るように示されているが、プローブ56は任意の適切な開口部から空洞36に入ってよい。換言すれば、プローブ56は出口40や追加の開口部48から空洞36に入ってもよい。すなわち追加の開口部48は空洞36への液体の入口として機能してもよく、また図6に示されるように、空洞36からの液体Wの出口として機能してもよい。技術者は異物Fを完全に除去するために必要に応じて前述の方法を任意の回数反復してよい。
【0026】
洗浄器50を使用するかわりに、本発明は異物Fを除去するための別のステップを用いることもできる。一例として、技術者は空洞36に差し入れて異物Fに物理的に接触するためのピックなどの器具を用いてもよい。技術者は器具を追加の開口部48から挿入することができるが、他の開口部を用いてもよい。追加の開口部48から空洞36に挿入するためには、追加の開口部48は上述とは異なる位置または形状を有しなければならない可能性がある。例えば、追加の開口部は器具の挿入を容易にするために異物Fの方に向けられてもよい。
【0027】
異物を除去した後の、可能な方法の他のステップは追加の開口部48を閉鎖することである。技術者は追加の開口部48を閉鎖するために任意の適切な方法を用いることができる。タービンブレード22に用いられた材料によるが、適切な方法としては、例えば、溶接肉盛り、プラグ溶接、液相拡散接合、および充填材料のロウ付けが挙げられる。
【0028】
図7は追加の開口部48を閉鎖した後のタービンブレード22を示している。この状態ではタービンブレード22はかつて追加の開口部48であった補修部分58を有する。換言すれば、追加の開口部はタービンブレード22の一時的な特徴部であったものである。好ましくは、補修されたタービンブレード22は、異物Fがないことを除いては、補修前のタービンブレードと同一である。本発明によって、空洞36内の異物Fの存在の故に通常は廃棄されるタービンブレード22が再生される。
【0029】
本発明を各図面に示された好ましい実施例に関連して説明した。本発明から逸脱することなく本発明と同様の機能を果たすために他の類似の実施例が用いられ、または説明された実施例に改良または追加がなされ得ることは理解されよう。したがって本発明は単独の実施例に限定されるべきではなく、請求の範囲の記載に従って範囲が解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ガスタービンエンジンの断面図である。
【図2】図1のエンジンに用いられるタービンブレードの正面図である。
【図3】図2のタービンブレードの断面図である。
【図4】内部の異物の存在を示す図3のタービンブレードの断面図である。
【図5】一つの可能な異物除去方法における一ステップ後の図3のタービンブレードの断面図である。
【図6】一つの可能な異物除去方法の他のステップにおける図3のタービンブレードの断面図である。
【図7】一つの可能な異物除去方法によって再生された後の図3のタービンブレードの断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10…ガスタービンエンジン
12…中心軸線
14…ファンセクション
16…圧縮機セクション
18…燃焼器セクション
20…タービンセクション
22…空気
32…ローター
34…エンジンケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄のために部品を準備する方法であって、
内部空洞と、該空洞に連通する少なくとも一つの開口部と、前記空洞内の異物とを有する部品を提供するステップと、
前記異物に隣接する位置において前記部品に追加の開口部を設けるステップと、
を有することを特徴とする、洗浄のために部品を準備する方法。
【請求項2】
前記空洞内の異物の位置を特定するステップをさらに有し、追加の開口部を設けるステップが位置特定ステップに対応することを特徴とする、請求項1記載の洗浄のために部品を準備する方法。
【請求項3】
位置特定ステップは目視を含むことを特徴とする、請求項2記載の洗浄のために部品を準備する方法。
【請求項4】
位置特定ステップは、x線、中性子線、超音波、または熱画像解析を含むことを特徴とする、請求項2記載の洗浄のために部品を準備する方法。
【請求項5】
前記空洞は入口から出口までの通路を有し、前記追加の開口部の位置は前記異物の下流であることを特徴とする、請求項1記載の洗浄のために部品を準備する方法。
【請求項6】
前記部品はブレードまたはベーンであることを特徴とする、請求項1の洗浄のために部品を準備する方法。
【請求項7】
部品を洗浄する方法であって、
内部空洞と、該空洞に連通する少なくとも一つの開口部とを有する部品を提供するステップと、
前記部品に追加の開口部を設けるステップと、
前記空洞を液体で洗い流すステップとを含み、
前記追加の開口部が前記液体の出口または入口として機能することを特徴とする、部品を洗浄する方法。
【請求項8】
前記部品は前記空洞内に異物を有し、追加の開口部を設けるステップは前記空洞内の異物の位置を特定するステップを含むことを特徴とする、請求項7記載の部品を洗浄する方法。
【請求項9】
追加の開口部を設けるステップが位置特定ステップに対応することを特徴とする、請求項8記載の部品を洗浄する方法。
【請求項10】
前記空洞は入口から出口までの通路を有し、前記追加の開口部は前記異物の下流に位置することを特徴とする、請求項8記載の部品を洗浄する方法。
【請求項11】
洗い流すステップは高圧洗浄を含むことを特徴とする、請求項7記載の部品を洗浄する方法。
【請求項12】
前記追加の開口部を閉鎖するステップをさらに有することを特徴とする、請求項7記載の部品を洗浄する方法。
【請求項13】
前記部品はブレードまたはベーンであることを特徴とする、請求項7記載の部品を洗浄する方法。
【請求項14】
部品を補修する方法であって、
内部空洞と、該空洞に連通する少なくとも一つの開口部と、前記空洞内の異物とを有する部品を提供するステップと、
前記部品に追加の開口部を設けるステップと、
前記異物を除去するステップとを含み、
除去ステップが前記追加の開口部を通して行われることを特徴とする、部品を補修する方法。
【請求項15】
除去ステップは前記空洞を液体で洗い流すことを含むことを特徴とする、請求項14記載の部品を補修する方法。
【請求項16】
洗い流すステップは高圧洗浄を含むことを特徴とする、請求項15記載の部品を補修する方法。
【請求項17】
追加の開口部を設けるステップは、前記追加の開口部を前記異物に隣接して位置付けることを特徴とする、請求項14記載の部品を補修する方法。
【請求項18】
追加の開口部を設けるステップは、前記追加の開口部を前記異物の下流に位置付けることを特徴とする、請求項17記載の部品を補修する方法。
【請求項19】
前記空洞内の異物の位置を特定するステップをさらに有し、追加の開口部を設けるステップが位置特定ステップに対応することを特徴とする、請求項14記載の部品を補修する方法。
【請求項20】
前記追加の開口部を閉鎖するステップをさらに有することを特徴とする、請求項14記載の部品を補修する方法。
【請求項21】
前記部品はブレードまたはベーンであることを特徴とする、請求項14記載の部品を補修する方法。
【請求項22】
外部表面と、
内部空洞と、
前記表面を貫通するとともに前記空洞に連通する少なくとも一つの開口部と、
前記表面の補修された部分とを有し、
前記補修された部分は、前記空洞から異物を除去するための前記空洞への一時的な出口または入口を提供する追加の開口部であったことを特徴とする、部品。
【請求項23】
前記部品はガスタービンエンジンの部品であることを特徴とする、請求項22記載の部品。
【請求項24】
前記部品はブレードまたはベーンであることを特徴とする、請求項22記載の部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−247598(P2006−247598A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−70753(P2005−70753)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】