説明

部品実装方法、および、部品実装システム

【課題】実装ラインの稼働効率の低下を抑制しうる効率の良い段取り替えタイミングの報知。
【解決手段】実装ラインにおいて、第一基板201から第二基板202へ切り替わる際に、部品実装装置101の内のいずれか一つである着目装置131を第二基板202が実装できるように段取り替えする時間を取得する段取り時間取得ステップと、着目装置131よりも上流にある部品実装装置101が第二基板202の処理を開始してから着目装置131に到達するまでの時間を取得する到達時間取得ステップと、段取り時間を超える到達時間に対応する部品実装装置101を特定装置132として特定する特定ステップと、特定装置132に第二基板202が搬送される際に、着目装置131の段取り替えの開始情報を報知する報知ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、部品実装システム、および、これに適用される部品実装方法に関し、特に、一の基板から種類の異なる他の基板に実装対象を切り替える際に発生する段取り替えを効率よく行うことのできる部品実装システム、および、部品実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の部品実装装置がインラインで連結され、各部品実装装置が役割を分担して基板に部品を実装する実装ラインにおいて、現在実装が行われている基板の種類から他の種類の基板に切り替える際は、現在実装が行われている種類の基板の実装をすべて完了させてから、新しい種類の基板に部品を実装できるように各部品実装装置の段取り替えを行っている。
【0003】
しかし、当該段取り替えの方法を採用すると、実装ラインでの操業を完全に停止させた上で、実装ラインに含まれる部品実装装置の段取り替えを行うため、基板品種の切り替えが発生する度に実装ラインの稼働効率が悪化していくという問題がある。
【0004】
そこで、現在実装が行われている種類の基板の最終基板を部品実装装置から次の部品実装装置に搬送する動作と同期して、前記最終基板が存在する位置よりも下流の次の部品実装装置に段取り替え開始信号を順次伝達する技術が特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1によれば、この方法を採用することにより、段取り替え開始信号を受信した部品実装装置は、その際に搬送されてきた基板が同じ種類の基板の最終基板と判断することができ、実装ラインの操業を完全に停止させることなく最終基板の実装が終了した部品実装装置に対し個別に段取り替えを行うことができる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−177473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記部品実装方法では、実装している基板がその基板の種類における最終基板であることを認識する必要があるが、複数の実装ラインで実装基板を生産している場合など、当該種類における最終基板か否かの判断が困難な場合が多い。
【0008】
また、最終基板が認識できたとしても、段取り替え開始信号を受信し最終基板を搬出してから該当する部品実装装置の段取り替えを開始するため、当該部品実装装置の直前まで新しい基板が搬送されていても、当該段取り替え作業が終了するまで新しい種類の基板の実装をすることができず、少なくともそれより上流の部品実装機は待ちの状態となる。従って、実装ラインの稼働効率の低下を大幅に改善することは困難である。
【0009】
本願発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、実装対象を一の種類の基板から他の種類の基板に切り替える際の段取り替えを好適なタイミングで開始することができ、実装ラインの段取り替えによる稼働効率の低下を大幅に改善することができる部品実装方法、および、部品実装システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる部品実装方法は、複数の部品実装装置がインラインで連結され、基板に部品を実装する実装ラインにおいて、実装対象である基板の一の種類である第一基板から他の種類である第二基板へ切り替わる際に、前記部品実装装置の内のいずれか一つである着目装置を前記第二基板が実装できる状態とする段取り替えに要する時間である段取り時間を取得する段取り時間取得ステップと、前記着目装置よりも上流にある前記部品実装装置が第二基板の処理を開始してから前記第二基板が前記着目装置に到達するまでの時間を到達時間として取得する到達時間取得ステップと、前記段取り時間を超える前記到達時間に対応する前記部品実装装置を特定装置として特定する特定ステップと、前記特定装置に前記第二基板が搬送される際に、前記着目装置の段取り替えの開始情報を報知する報知ステップとを含むことを特徴としている。
【0011】
これによれば、第二基板が着目装置に到達するまでに、着目装置である部品実装装置の段取り替えを実施しておくことができ、待ち時間を発生させることなく着目装置で第二基板を実装することが可能となる。従って、段取り替えによって発生する実装ラインの稼働効率の低下を抑制することが可能となる。
【0012】
また、前記着目装置よりも上流に存在する各前記部品実装装置が第二基板を処理するためにそれぞれ必要な時間の内の最も時間の長い時間を第一必要時間として取得する第一必要時間取得ステップとを含み、前記到達時間取得ステップは、前記着目装置よりも上流の前記部品実装装置の台数に前記第一必要時間を乗算した積を前記到達時間として取得してもよい。
【0013】
これによれば、容易に到達時間を類推的に取得することが可能となる。
【0014】
さらに、前記着目装置、および、前記着目装置よりも下流に存在する各前記部品実装装置とが第一基板を処理するためにそれぞれ必要な時間の内の最も時間の長い時間を第二必要時間として取得する第二必要時間取得ステップとを含み、前記到達時間取得ステップは、前記着目装置よりも上流の前記部品実装装置の台数に前記第一必要時間、および、前記第二必要時間のいずれか長い方を乗算した積を前記到達時間として取得してもよい。
【0015】
これによれば、実装する部品点数が大幅に差があるなど第一基板と第二基板との間に実装処理に必要な時間の相違があった場合でも、適切に段取り替えの開始タイミングを作業者などに報知することが可能となる。
【0016】
さらに、前記特定装置に前記第二基板が搬送される際に、前記着目装置よりも上流の前記部品実装装置に第一基板が残存している場合、残存している前記第一基板を他の実装ラインに移動する移動ステップを含んでもよい。
【0017】
これによれば、第一基板に部品を実装できる状態と第二基板に部品を実装できる状態とを着目装置で併存させる必要がなくなり、実装ラインの稼働効率の低下を可及的に抑制することが可能となる。
【0018】
段取り時間取得ステップは、第一基板に部品を実装できる状態の前記着目装置に交換可能に取り付けられる交換部と第二基板に部品を実装できる状態の前記着目装置に交換可能に取り付けられる交換部との差分を抽出し、各交換部についての所用段取り時間である個別時間が記憶されている段取り時間データベースと前記差分とに基づき前記段取り時間を取得するものでもよい。
【0019】
これによれば、第一基板の後にいかなる種類の第二基板を実装する場合でも、適切に段取り替えのタイミングを報知することが可能となる。
【0020】
また、上記目的を達成するために、本願発明にかかる部品実装システムは、複数の部品実装装置がインラインで連結され、基板に部品を実装する部品実装システムであって、実装対象である基板の一の種類である第一基板から他の種類である第二基板へ切り替わる際に、前記部品実装装置の内のいずれか一つである着目装置を前記第二基板に実装できる状態とする段取り替えに要する時間である段取り時間を取得する段取り時間取得部と、前記着目装置よりも上流にある前記部品実装装置が第二基板の処理を開始してから前記第二基板が前記着目装置に到達するまでの時間を到達時間として取得する到達時間取得部と、前記段取り時間を超える前記到達時間に対応する前記部品実装装置を特定装置として特定する特定部と、前記特定装置に前記第二基板が搬送される際に、前記着目装置の段取り替えの開始情報を報知する報知部とを備えることを特徴とする。
【0021】
これによれば、第二基板が着目装置に到達するまでに、着目装置である部品実装装置の段取り替えを実施しておくことができ、待ち時間を発生させることなく着目装置で第二基板を実装することが可能となる。従って、段取り替えによって発生する実装ラインの稼働効率の低下を抑制することが可能となる。
【0022】
なお、前記部品実装方法が含む各ステップ(処理)をコンピュータに実行させるためのプログラムを実施することも本願発明の実施に該当する。無論、そのプログラムが記録された記録媒体を実施することも本願発明の実施に該当する。
【発明の効果】
【0023】
本願発明によれば、着目装置において、新しい基板が到着するまでに段取り替えを行い、新しい基板を実装できる状態にすることができるため、基板の種類の切り替えの際に発生する実装ラインの稼働効率の低下を可及的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本願発明の実施の形態における部品実装システムの概要を模式的に示す図である。
【図2】図2は、部品実装装置の主要な構成を模式的に示す平面図である。
【図3】図3は、上位制御装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、第一基板から第二基板へ切り替わる際の第一実装ラインにおける基板の流れを模式的に示す図である。
【図5】図5は、段取り時間データベースの内容を示す図である。
【図6】図6は、部品実装方法の概要を示すフロー図である。
【図7】図7は、レーン変更モードにおける部品実装方法の概要を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本願発明に係る部品実装システム、および、部品実装方法の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本願発明に係る部品実装システム、および、部品実装方法の一例を示したものに過ぎない。従って本願発明は、以下の実施の形態を参考に請求の範囲の文言によって範囲が画定されるものであり、以下の実施の形態のみに限定されるものではない。
【0026】
図1は、本願発明の実施の形態における部品実装システムの概要を模式的に示す図である。なお、同図中破線で囲まれている部分は、実装ラインを示しており、囲まれている上側を第一実装ライン121、下側を第二実装ライン122としている。
【0027】
同図に示すように、部品実装システム100は、複数の部品実装装置101がインラインで連結され、基板200に部品を実装するシステムであって、例えば、基板200の表面に半田を印刷する前工程から連続的に搬入される基板200に対し、各部品実装装置101が分担して部品を基板200に装着して実装基板を連続的に生産し、後工程に対し搬出するシステムである。
【0028】
本実施の形態の場合、部品実装システム100は、複数台の部品実装装置101と、これらを統括する上位制御装置102とを備えている。また、部品実装システム100は、第一実装ライン121と第二実装ライン122との二本の実装ラインを備えている。
【0029】
図2は、部品実装装置の主要な構成を模式的に示す平面図である。
【0030】
同図に示す部品実装装置101は、基板200を搬送することのできるレーン110を二本備えており、いずれのレーン110で搬送される基板200に対しても独立して動作し部品を実装することのできる第一設備111及び第二設備112を備えている。第一設備111および第二設備112は、実装される基板200を挟んで互いに対向して配置されており、それぞれ部品を吸着するノズル113を複数本備えるヘッド114と、実装するための複数種類の部品を保持し、当該部品を供給する部品供給部115と、交換用のノズル113が保持されるノズルステーション116とを備えている。さらに第一設備111および第二設備112は、各種情報を作業者に表示することができる表示装置155を備えている。
【0031】
ヘッド114は、XY平面内で自在に移動可能となっており、複数のノズル113を備え、複数の部品を吸着し、搬送し、所定の実装点で部品を装着することのできる装置である。
【0032】
なお、図2では、ヘッド114は8本のノズル113を有しているが、ヘッド114が有するノズル113の数は、特に限定されるものでは無い。また第一設備111が備えるヘッド114と第二設備112が備えるヘッド114が同じである必要は無い。
【0033】
また、部品実装装置101のヘッド114は、XY平面内を機構的には独立して移動することができ、いずれのヘッド114でもいずれのレーン110上の基板200に部品を実装することのできるものとなっている。つまり、第一設備111に対し段取り替えの作業を実施している間、第二設備112が第一設備111側のレーン110に流れている基板200に対しても実装することが可能となる。
【0034】
ただし、第一設備111に近い側のレーン110で搬送される基板200は、主として第一設備111が備えるヘッド114によって部品が実装され、第二設備112に近い側のレーン110で搬送される基板200は、主として第二設備112が備えるヘッド114によって部品が実装される。
【0035】
部品供給部115は、例えば複数のテープフィーダなどが並べて取り付けられており、各テープフィーダは、種類の異なる部品や同種の部品をそれぞれ断続的に供給するものとなっている。また、部品供給部115は、実装対象の基板200の種類に応じて変更するものであり、また、部品実装装置101が実装作業中であっても、一部のテープフィーダ等を交換することが可能なものとなっている。
【0036】
なお、本実施の形態にかかる部品実装装置101は、部品供給部115における部品の配置ピッチとノズル113のピッチとが一致するものとすることもでき、部品供給部115において吸着すべき部品とノズル113との並びが合致する場合、複数本のノズル113を同時に降下させて同時に複数個の部品を吸着する、いわゆる同時吸着を行うことも可能である。
【0037】
レーン110は、搬入された基板200を実装ステージまで搬送すると共に、実装中は実装ステージで基板200を保持し、実装が終了すれば隣接する部品実装装置101へ基板200を搬出する装置であり、例えば、一対のレールを備えるコンベアである。
【0038】
なお、本実施の形態では、第一設備111に近い側のレーン110で搬送される基板200を主として実装する第一設備111の並びを第一実装ライン121と記載し、第二設備112に近い側のレーン110で搬送される基板200を主として実装する第二設備112の並びを第二実装ライン122と記載する。また、第一実装ライン121と第二実装ライン122とを総称して実装ラインと記載する場合がある。
【0039】
図3は、上位制御装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【0040】
同図に示すように、上位制御装置102は機能部として、段取り時間取得部151と、到達時間取得部152と、特定部153と、報知部154とを備えている。さらに、上位制御装置102は、段取り時間データベース156(図3中は段取り時間DBと表記)を備えている。
【0041】
段取り時間取得部151は、図4に示すように、実装対象である基板200の一の種類である第一基板201から他の種類である第二基板202へ切り替わる際に、部品実装装置101の内のいずれか一つである着目装置131(本実施の形態では図1、図4中の最も右側にある部品実装装置101を着目装置131としている。)を第二基板202に実装できる状態とする段取り替えに要する時間である段取り時間を取得する処理部である。
【0042】
ここで、「段取り替え」とは、部品実装装置101が第一基板201が実装できる状態から第二基板202が実装できる状態にすることであり、例えば次のような作業が段取り替えである。つまり、第一基板201に部品を実装するために、着目装置131の部品供給部115には部品種Aを供給するフィーダAと部品種Bを供給するフィーダBと部品種Cを供給するフィーダCとが取り付けられている。一方、第二基板202に部品を実装するためには、着目装置131の部品供給部115にフィーダAと部品種Dを供給するフィーダDと部品種Eを供給するフィーダEとを取り付ける必要がある。この場合、段取り替えとは、共通するフィーダAはそのままにしておき、フィーダBをフィーダDに交換し、フィーダCをフィーダEに交換する作業である。
【0043】
また、「段取り替え」の語は、次の場合も含んでいる。すなわち、着目装置131の部品供給部115にはフィーダAと同種のフィーダAとフィーダBとが取り付けられており、空きスロットルが一つ存在している。着目装置131で第二基板202に部品を実装するには、フィーダCとフィーダDとフィーダEと部品種Fを供給するフィーダFとを取り付ける必要がある。そして、着目装置131に対する段取り替えを開始する時点で着目装置131よりも上流には第一基板201が残存している(図4に示す状態)。この場合、第一基板201の実装を完了させる必要があるため、段取り替えとは、フィーダCを空きスロットルに挿入し、二つ取り付けられているフィーダAの一方のみをフィーダDと交換する作業である。
【0044】
この場合、着目装置131の部品供給部115に残存しているフィーダAとフィーダBとで、第一基板201に部品を実装することが可能となる。なお、部品実装機101に取り付けられているフィーダAが1つ減った状態となるため、フィーダAが減少している部分については部品種Aをヘッド114が同時に吸着することができない。従って、フィーダAから吸着する動作をヘッド114が2回行う必要が生じ、ヘッド114の動作が増加する分、実装効率が若干低下する。そして残存する2枚の第一基板201を実装し終えた後は、着目装置131に取り付けられているフィーダCとフィーダDとで第二基板202に部品を実装しておき、その間に、フィーダAとフィーダBとをフィーダEとフィーダFとに取り替えればよい。
【0045】
以上のように段取り替えとは、第二基板202に一部の部品が実装できる状態とすることも段取り替えに含まれる。
【0046】
また、段取り替え時間の取得方法は、特に限定されるものでは無いが、例えば、模擬的に段取り替え作業を行い、当該作業に要する時間を実測し、その値を入力することで段取り時間取得部151が取得するものでも良い。
【0047】
また、第一基板201に部品を実装できる状態の着目装置131の部品供給部115等に交換可能に取り付けられるフィーダを始めとする交換部(図示せず)と第二基板202に部品を実装できる状態の着目装置131に交換可能に取り付けられる交換部との差分を抽出し、各交換部についての所用段取り時間である個別時間が記憶されている段取り時間データベース156と前記差分とに基づき前記段取り時間を取得しても良い。
【0048】
図5は、段取り時間データベースの内容を示す図である。
【0049】
ここで、段取り時間データベース156とは、実装対象である基板200の種類に対応するように着目装置131に着脱自在に取り付けられる交換部の着目装置131への取り付け時間、および、着目装置131からの取り外し時間が交換部の種類と対応づけて記憶されている情報群である。従って、段取り時間データベース156によれば、取り外すべき交換部の種類や、取り付けるべき交換部の種類が判明すれば、実際に取り付ける作業や取り外す作業に要する時間、すなわち段取り時間を算出することが可能となる。なお、段取り時間データベース156は、着目装置131ばかりでなく他の部品実装装置101に取り付けられる可能性のある交換部についての情報を含んでいても良い。
【0050】
本実施の形態の場合、例えば交換部であるフィーダの種類“A” “A” “B”を部品供給部115から取り外し、交換部であるフィーダの“C”“D”“E”を部品供給部115に取り付ける段取り替え作業が発生するとする。この場合、差分は“A” “A” “B”(取り外し)“C”“D”“E”(取り付け)となる。一方、ハードディスクなどの記憶手段に記憶されている段取り時間データベースは、図5に示すようなデータ列となっている。従って、具体的に段取り時間取得部151が取得する段取り時間はいかようになる。
【0051】
段取り時間=9+9+9(“A” “A” “B”の取り外し)+12+12+20(“C”“D”“E”の取り付け)=71secとなる。
【0052】
なお、交換部は、テープフィーダに限定されるわけではなく、ノズル113(自動、手動を含む)や部品がマトリクス状に並べられたトレイなど段取り替えの際に交換を要するすべての部材を意味している。
【0053】
さらに、前記計算で得られた時間に準備時間など任意の時間を加えてもかまわない。
【0054】
また、差分は、第一基板201の実装条件(例えば、実装プログラム)と第二基板202の実装条件とを別途取得し、二つの実装条件に基づき決定してもかまわない。
【0055】
到達時間取得部152は、着目装置131よりも上流にある部品実装装置101が第二基板202の処理を開始してから当該第二基板202が着目装置131に到達するまでの時間とみなせる時間を到達時間として取得する処理部である。
【0056】
例えば、到達時間は次のようにして求められる。着目装置131よりも上流に存在する各部品実装装置101が第二基板202を処理するためにそれぞれ必要な時間の内の最も時間の長い時間を第一必要時間として取得する。そして、着目装置131よりも上流の部品実装装置101の台数に前記第一必要時間を乗算した積を前記到達時間とする。具体的には、着目装置131よりも上流に部品実装装置101が四台あり、着目装置131に最も近い部品実装装置101が第二基板202を受領してから、部品の実装を行い、第二基板202を排出するまでの処理時間を5分とする。着目装置131よりも上流の四台の部品実装装置101の処理時間は順に、4分、6分、3分とする。この場合、第一必要時間は6分となる。従って、着目装置131の上流側に隣接する部品実装装置101に対応する到達時間は6分に1(台数)を乗算した積である6分と見なされる。次の上流側にある部品実装装置101は、着目装置131から2台目になるので、当該部品実装装置101に対応する到達時間は6分に2(台数)を乗算した積である12分と見なされる。
【0057】
以上のように、着目装置131の上流側に存在する各部品実装装置101に対応してそれぞれ異なる到達時間が存在し、到達時間取得部152は、複数ある到達時間の一部、または、全部を取得する。これによれば、容易に到達時間を類推的に取得することが可能となる。
【0058】
さらに、到達時間取得部152は、着目装置131、および、着目装置131よりも下流に存在する各部品実装装置101が第一基板201を処理するためにそれぞれ必要な時間の内の最も時間の長い時間を第二必要時間として取得し、前記第一必要時間と比較していずれか長い方と、着目装置131よりも上流の部品実装装置101の台数を乗算した積を到達時間として取得してもよい。これは、第一基板201の処理時間が、第二基板202の処理時間より長ければ、到達時間について第二必要時間が支配的になるからである。
【0059】
これによれば、第一基板201と第二基板202との間に処理時間の大きな差があった場合でも、より正確に到達時間を算出することが可能となる。
【0060】
なお、第二必要時間のみで到達時間を算出してもかまわない。この場合、第一基板201を実装中に、第二必要時間を実測により取得することができ、これに基づき到達時間を算出することができるため、第二基板202が第一実装ライン121に投入される前に、到達時間を算出しておくことが可能となる。
【0061】
また、第一実装ライン121全体の動作をシミュレーションし、この結果から到達時間を導出してもかまわない。
【0062】
特定部153は、段取り時間取得部151により取得された段取り時間と、到達時間取得部152から取得した着目装置131よりも上流の各部品実装装置101に対応する到達時間とを着目装置131から近い順に比較し、段取り時間を超える到達時間に対応する部品実装装置を仮特定装置として仮に特定しておく。前記仮特定装置よりも上流にある部品実装装置101は、すべて前記条件を満たすことになるため、仮特定装置となる。特定部153は、仮特定装置の中から特定装置132を特定するが、例えば、着目装置131に最も近い部品実装装置101を特定装置132とする特定方法を採用しても良い。また、段取り時間は狂う場合もあるため、余裕のために前記部品実装装置101よりも上流にある部品実装装置101特定装置132としてもかまわない。
【0063】
以上によって、着目装置131に対する特定装置132が事前に特定される。
【0064】
報知部154は、特定部153によって特定された特定装置132に第二基板202が搬送されたことを示す情報を取得し、着目装置131の段取り替えの開始情報を報知する処理部である。
【0065】
具体的に例えば、特定装置132は、搬送された第二基板202に付された識別情報に基づき、第二基板202が搬送されたことを示す情報を報知部154に送信し、当該情報を取得した報知部154は、着目装置131に設けられている表示装置155にその旨を示す情報を送信する。そして当該情報を取得した表示装置155は、段取り替えの開始を促す画像を表示する。
【0066】
当該表示を認識した作業者が段取り替えの作業を開始し、着目装置131が第二基板202に部品を実装できる状態となったタイミングで第二基板202の先頭が到着することとなる。
【0067】
なお、前記各処理部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が、それぞれの処理のための制御プログラムに基づき実現される。
【0068】
次に、以上の構成を有する部品実装システム100を用いた部品実装方法を説明する。
【0069】
図6は、部品実装方法の概要を示すフロー図である。
【0070】
まず、レーン変更モードを採用するか否かを選択する(S101)。ここで、レーン変更モードとは、特定装置132に最初の第二基板202が搬送されたタイミングにおいて、着目装置131よりも上流の部品実装装置101に第一基板201が残存している場合、残存している第一基板201を他の実装ラインである第二実装ライン122に移動する移動ステップを実行するモードである。
【0071】
当該移動ステップを実行することにより、段取り替えの開始が報知された時点で着目装置131は新たに第一基板201に部品を実装する必要がなくなるため、着目装置131を第二基板202に部品を実装できる状態に完全に段取り替えすることができる。従って、最初の第二基板202が到達した時点で、部品実装装置101の全能力を用いて第二基板202に部品を実装することができ、第一実装ライン121の稼働効率の低下をほぼ抑止することが可能となる。
【0072】
なお、第一実装ライン121に残存している第一基板201を第二実装ライン122に移動する方法としては、部品実装装置101の間にレーン変更装置(図示せず)を設けて、自動的に第一実装ライン121から第二実装ライン122へ第一基板201を移動させる方法や、手動により第一基板201を移動させる方法などがある。
【0073】
次に、レーン変更モードを採用しない場合(S101N)を説明する。
【0074】
まず、段取り時間を取得する(S104:段取り時間取得ステップ)。具体的に例えば、着目装置131における第一基板201の実装条件と第二基板202の実装条件を段取り時間取得部151が取得し、交換部の差分を取得する。そして、第一基板201への実装を維持しつつ、交換、および、取り付け可能な交換部を抽出する。そして、抽出された交換部に関し、段取り時間データベース156を用いて算出することにより段取り時間を取得する。
【0075】
次に、到達時間を取得する(S107:到達時間取得ステップ)。到達時間とは、着目装置131よりも上流にある部品実装装置101に最初の第二基板202が搬入されてから、着目装置131に最初の第二基板202が到達するまでの時間である。従って、到達時間は、着目装置131よりも上流に存在する部品実装装置101の台数分存在する。
【0076】
なお、到達時間取得部152は、すべての到達時間を取得する必要は無く、例えば、着目装置131の近くにある部品実装装置101から順に到達時間を取得し、条件に合致した時点で到達時間の取得を終了しても良い。
【0077】
また、到達時間の取得方法は、前述したとおり、シミュレーションを行う方法や、着目装置131、および、着目装置131よりも下流の部品実装装置101で第一基板201を実装する際に律速となる部品実装装置101の処理時間を用いる方法、着目装置131よりも上流の部品実装装置101で第二基板202を実装する際に律速となる部品実装装置101の処理時間を用いる方法等を例示できる。
【0078】
次に、段取り時間取得ステップ(S104)により取得した段取り時間と、到達時間取得ステップ(S107)により取得した到達時間を用い、段取り時間を超える到達時間に対応する部品実装装置101のいずれかを特定装置132を特定する(S110:特定ステップ)。
【0079】
具体的に例えば、段取り時間を超える到達時間であって、最も短い到達時間に対応する部品実装装置101を特定装置132として特定する。これにより、第一実装ライン121を好適な稼働効率にすることが可能となる。
【0080】
なお、段取り替えは手作業で行われるため、アクシデントに対処する時間を考慮してさらに上流側に存在する部品実装装置101を特定装置132としてもよい。
【0081】
以上のようにして、特定された特定装置132は、上流側から搬送された基板200の種類を常に取得し第二基板202か否かを判断する(S113:基板種判断ステップ)。判断方法は、例えば、基板200の表面に印刷されたバーコードなどの識別記号を読み取って判断する方法等を例示することができる。
【0082】
基板種判断ステップ(S113)により特定装置132に第二基板202が到達したと判断されると(S113Y)、特定装置132は、その旨を示す情報を報知部154に送信する。当該信号を受信した報知部154は、段取り替えを開始する旨を報知する(S116:報知ステップ)。
【0083】
具体的には、報知部154は、着目装置131に設けられた表示装置155に段取り替えを開始する旨を示す情報を送信し、表示装置155は、その旨を表示する。なお、報知は、画像ばかりでなくいわゆるシグナル灯などの発光報知装置で報知する方法やブザーなどの音で報知する方法、これらを組み合わせて報知する方法などを例示することができる。
【0084】
最後に、これらの報知を認識した作業者は、着目装置131に対し段取り替えを行うこととなる。
【0085】
以上のような部品実装システム100を用い、部品実装方法を実施することで、着目装置131よりも上流の部品実装装置101に第一基板201が残存した状態で、着目装置131の段取り替えを開始することとなり、残存した第一基板201に対し着目装置131が部品を実装する際の部品の実装効率は低下することとなるが、第二基板202が着目装置131に到達した時点で着目装置131は第二基板202を実装できる状態となっており、さらに、第二基板202を実装中に、残りの第二基板202用の交換部を取り付けることができる。従って、第一実装ライン121に流れる基板200が第一基板201から第二基板202に切り替わる際に、第一実装ライン121を停止させる必要が無く、第一実装ライン121の稼働効率の低下を可及的に抑止することが可能となる。
【0086】
次に、レーン変更モードを採用した場合の部品実装方法を説明する。
【0087】
図7は、レーン変更モードにおける部品実装方法の概要を示すフロー図である。
【0088】
まず、段取り時間を取得する(S204:段取り時間取得ステップ)。具体的には、着目装置131における第一基板201の実装条件と第二基板202の実装条件を段取り時間取得部151が取得し、交換部の差分を取得する。そして、第一基板201への実装を完全に終了し着目装置131を第二基板202に部品が実装できる完全な状態とするための、交換、および、取り付け可能な交換部を抽出する。そして、抽出された交換部に関し、段取り時間データベース156を用いて算出することにより段取り時間を取得する。
【0089】
次に、到達時間取得ステップ(S207)を実施する。なお、到達時間取得ステップ(S207)は先の到達時間取得ステップ(S107)と同じであるため説明を省略する。
【0090】
次に、特定ステップ(S210)を実施する。なお特定ステップ(S210)は、先の特定ステップ(S110)と同じであるため、説明を省略する。
【0091】
次に、実際の実装作業の中で、基板種判断ステップ(S213)を実施し、特定装置132に第二基板202が到達したと判断されると(S213Y)、特定装置132は、その旨を示す情報を報知部154に送信する。当該信号を受信した報知部154は、段取り替えを開始する旨を報知する(S216:報知ステップ)。
【0092】
次に、第一実装ライン121のレーン110に保持されている第一基板201であって、着目装置131よりも上流にある第一基板201を第二実装ライン122のレーン110に移動させる(S219:移動ステップ)。具体的には、手動で第一基板201を移動させる方法や、部品実装システム100が備えるレーン変更装置により自動的に第一基板201を移動させる方法を例示することができる。
【0093】
以上のような部品実装システム100を用い、部品実装方法を実施することで、段取り替えを開始する旨が報知されると、着目装置131よりも上流の部品実装装置101には第一基板201が存在しない状態となる。従って、着目装置131に第二基板202が到達するまでに、第二基板202に部品を完全に実装できる状態となるように着目装置131の段取り替えをすることができる。従って、第一実装ライン121に流れる基板200が第一基板201から第二基板202に切り替わる際に、第一実装ライン121の稼働効率を低下させることなく、着目装置131の段取り替えをすることが可能となる。
【0094】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本願発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本願発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本願発明に含まれる。
【0095】
たとえば、上記実施の形態では1台の着目装置131について説明したが、複数台の部品実装装置101を着目装置131としてもかまわない。
【0096】
また、上位制御装置102が、段取り時間取得部151や到達時間取得部152、特定部153、報知部154等を備えているものとして説明したが、これらの一部の機能や全部の機能を部品実装装置101が備えていてもかまわない。
【0097】
また、上記実施形態のように、実装ラインは、2つのレーンを有する部品実装装置101を連結させた、各レーンを実装ラインとするものに限定されない。例えば、実装ラインは、1つのレーンのみ有する部品実装装置を連結させた実装ラインでもよい。この場合実装システムは、単独のレーンを備える実装ラインが2つ存在するシステムとなる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本願発明は、基板に部品を実装して実装基板を製造する分野に利用でき、特に、インライン状に多数の部品実装装置を備える部品実装システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0099】
100 部品実装システム
101 部品実装装置
102 上位制御装置
110 レーン
111 第一設備
112 第二設備
113 ノズル
114 ヘッド
115 部品供給部
116 ノズルステーション
121 第一実装ライン
122 第二実装ライン
131 着目装置
132 特定装置
151 段取り時間取得部
152 到達時間取得部
153 特定部
154 報知部
155 表示装置
156 段取り時間データベース
200 基板
201 第一基板
202 第二基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品実装装置がインラインで連結され、基板に部品を実装する実装ラインにおいて、
実装対象である基板の一の種類である第一基板から他の種類である第二基板へ切り替わる際に、前記部品実装装置の内のいずれか一つである着目装置を前記第二基板が実装できる状態とする段取り替えに要する時間である段取り時間を取得する段取り時間取得ステップと、
前記着目装置よりも上流にある前記部品実装装置が第二基板の処理を開始してから前記第二基板が前記着目装置に到達するまでの時間を到達時間として取得する到達時間取得ステップと、
前記段取り時間を超える前記到達時間に対応する前記部品実装装置を特定装置として特定する特定ステップと、
前記特定装置に前記第二基板が搬送される際に、前記着目装置の段取り替えの開始情報を報知する報知ステップと
を含む部品実装方法。
【請求項2】
前記着目装置よりも上流に存在する各前記部品実装装置が第二基板を処理するためにそれぞれ必要な時間の内の最も時間の長い時間を第一必要時間として取得する第一必要時間取得ステップとを含み、
前記到達時間取得ステップは、前記着目装置よりも上流の前記部品実装装置の台数に前記第一必要時間を乗算した積を前記到達時間として取得する
請求項1に記載の部品実装方法。
【請求項3】
前記着目装置、および、前記着目装置よりも下流に存在する各前記部品実装装置とが第一基板を処理するためにそれぞれ必要な時間の内の最も時間の長い時間を第二必要時間として取得する第二必要時間取得ステップとを含み、
前記到達時間取得ステップは、前記着目装置よりも上流の前記部品実装装置の台数に前記第一必要時間、および、前記第二必要時間のいずれか長い方を乗算した積を前記到達時間として取得する
請求項2に記載の部品実装方法。
【請求項4】
さらに、
前記特定装置に前記第二基板が搬送される際に、前記着目装置よりも上流の前記部品実装装置に第一基板が残存している場合、残存している前記第一基板を他の実装ラインに移動する移動ステップ
を含む請求項1に記載の部品実装方法。
【請求項5】
段取り時間取得ステップは、第一基板に部品を実装できる状態の前記着目装置に交換可能に取り付けられる交換部と第二基板に部品を実装できる状態の前記着目装置に交換可能に取り付けられる交換部との差分を抽出し、各交換部についての所用段取り時間である個別時間が記憶されている段取り時間データベースと前記差分とに基づき前記段取り時間を取得する
請求項1に記載の部品実装方法。
【請求項6】
複数の部品実装装置がインラインで連結され、基板に部品を実装する部品実装システムであって、
実装対象である基板の一の種類である第一基板から他の種類である第二基板へ切り替わる際に、前記部品実装装置の内のいずれか一つである着目装置を前記第二基板に実装できる状態とする段取り替えに要する時間である段取り時間を取得する段取り時間取得部と、
前記着目装置よりも上流にある前記部品実装装置が第二基板の処理を開始してから前記第二基板が前記着目装置に到達するまでの時間を到達時間として取得する到達時間取得部と、
前記段取り時間を超える前記到達時間に対応する前記部品実装装置を特定装置として特定する特定部と、
前記特定装置に前記第二基板が搬送される際に、前記着目装置の段取り替えの開始情報を報知する報知部と
を備える部品実装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−124341(P2012−124341A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274092(P2010−274092)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】