説明

部品実装装置及び部品実装装置の製造方法

【課題】軽量化を図るとともに、Xビームとレールとの間で発生する反りを抑制することができるXビームを備える部品実装装置を提供する。
【解決手段】レール102とXビーム103とYビーム104とを備える部品実装装置100であって、Xビーム103は、マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部103aと、本体部103aとは異なる材料からなり、本体部103aとレール102とを接続する接続部103b、103eであって、Xビーム103のY軸方向の一端部に本体部103aに固定されて配置される接続部103b、103eとを有し、部品実装装置100は、さらに、本体部103aの熱膨張とレール102の熱膨張との差によって発生するXビーム103の反りに抗する補強部材105であって、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなり、Xビーム103のY軸方向の他端部に取り付けられる補強部材105を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、基板に部品が実装された実装基板を生産するための設備である部品実装装置及び部品実装装置の製造方法に関し、特にヘッドを直線的に移動させるビームを備える部品実装装置及び部品実装装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品実装装置の一つとして、固定されている基板に対し、部品供給部から部品を保持し、基板上方まで部品を搬送し、部品を降下させて基板に取り付ける部品実装装置がある。当該部品実装装置は、保持した部品のXY方向(水平面内)の位置を正確に再現する必要がある。一方、実装基板の生産性を向上させるため、部品供給部から基板上方まで部品を搬送し、XY方向の位置決めをするまでの速度や、部品を実装した後に部品供給部まで戻るまでの速度などをできる限り速める必要もある。
【0003】
そこで、部品実装装置は、基台にY軸方向に延びて固定されるYビームと、当該Yビームに対してスライド可能に取り付けられるX軸方向に延びて配置されるXビームと、当該Xビームに対してスライド可能に取り付けられるヘッドを備える構造となっている。これにより、正確かつ高速に部品を搬送することができるものとなっている。
【0004】
ここで、Xビームには、直接ヘッドと摺動してヘッドを直線的に案内するレールが取り付けられている。これは、ヘッドと摩擦が生じるレールは、摩擦などに強いが重い金属を材料として採用し、レールとヘッドとを支えるXビームは、構造的強度を備え軽量な金属を材料として採用することで、Yビームに沿って運動する部材の軽量化を図るためである。
【0005】
しかしながら、Xビームとレールとは異なる金属からなり、X軸方向に長いレールとXビームとが接合されるため、部品実装装置の温度が変化するとバイメタル効果によりXビームに反りが発生する。このようにXビームに反りが発生すると、基板に部品を正確に取り付けることが困難となり、また、反りを加味した補正をヘッドを移動させるためのデータに加えなければならず、部品実装装置の生産性に悪影響を及ぼすこととなる。
【0006】
そこで、特許文献1や特許文献2、特許文献3に記載の発明は、Xビームのレールが取り付けられている側と反対側に、レールと同じ材質の棒状の補強部材を取り付けてXビームの曲がりを防止している。これによりレールとXビームとによって発生する反りを補強部材とXビームとによって発生する反りによって相殺し、レールを真っ直ぐに維持することができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−176294号公報
【特許文献2】特開2003−168898号公報
【特許文献3】特開2001−352200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、Xビームとレールとの間で発生する反りを相殺するためには、補強部材は、線膨張係数などレールと同じ特性を備える必要がある。従って、X方向の熱膨張、及び、熱応力がつりあうようにXビームにはレールとほぼ同じ形状で同じ重量の補強部材が取り付けられることとなり、Xビームに取り付けられる部材の全重量は増加する。つまり、Xビームを高速に運動させることが困難となって部品実装装置の生産性を向上させることが困難となる。
【0009】
このように、従来の部品実装装置では、Xビームとレールとの間で発生する反りの抑制と、Xビームの軽量化とを同時に達成することができないという課題があった。
【0010】
本願発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、軽量化を図るとともに、Xビームとレールとの間で発生する反りを抑制することができるXビームを備える部品実装装置及び部品実装装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる部品実装装置は、部品を装着するヘッドをX軸方向に摺動自在に案内するX軸方向に延びて配置されるレールと、前記レールがY軸方向の一端部に取り付けられ、X軸方向に延びて配置される棒形状のXビームと、前記XビームをY軸方向に摺動自在に案内するY軸方向に延びて配置されるYビームとを備える部品実装装置であって、前記Xビームは、マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部と、前記本体部とは異なる材料からなり、前記本体部と前記レールとを接続する接続部であって、前記XビームのY軸方向の一端部に前記本体部に固定されて配置される接続部とを有し、当該部品実装装置は、さらに、前記本体部の熱膨張と前記レールの熱膨張との差によって発生する前記Xビームの反りに抗する補強部材であって、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなり、前記XビームのY軸方向の他端部に取り付けられる補強部材を備えることを特徴としている。
【0012】
これによれば、Xビームは、マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部と、本体部とは異なる材料からなる接続部とを有している。つまり、Xビームの本体部は、軽量なマグネシウムを主成分とする材料からなるため、Xビームの軽量化を図ることができる。ここで、マグネシウムは粉状の状態で発火するおそれがあることなどから容易に精度良く加工することは困難であるが、Xビームのレールとの接続箇所は精度良く加工する必要がある。このため、Xビームとレールとの接続箇所に、加工が容易な材料からなる接続部を配置することで、Xビームとレールとの接続箇所を精度良く加工することができる。
【0013】
また、部品実装装置は、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる補強部材を備えている。つまり、マグネシウムは熱により膨張することから、本体部の熱膨張とレールの熱膨張との差によってXビームに反りが発生するため、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる補強部材を配置することで、当該反りを抑制することができる。ここで、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂とは、レールに用いられる材料よりも同一重量あたりの強度が大きく線膨張係数が小さいため、レールと同材料からなる補強部材に比べて軽量化が図れるとともに、温度の変化が発生しても炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂の線膨張係数が小さいことを利用してXビームの反りに抗することができる材料である。
【0014】
これらにより、軽量化を図るとともに、Xビームとレールとの間で発生する反りを抑制することができるXビームを備える部品実装装置を実現することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記接続部は、アルミニウム、鉄、ステンレス及びチタニウムのうちのいずれか1つを主成分とする材料からなる。
【0016】
これによれば、接続部は、アルミニウムなどの加工が容易な材質を主成分とする材料からなるため、Xビームとレールとの接続箇所を精度良く加工することができる。
【0017】
また、好ましくは、前記補強部材は、第一締結具によりX軸方向に並ぶ3箇所以上で前記XビームのY軸方向の他端部に締結される。
【0018】
これによれば、補強部材は、第一締結具により3箇所以上でXビームに締結される。これにより、炭素繊維強化樹脂製またはアラミド繊維強化樹脂の部材の接合に一般に用いられる接着剤を使用しなくとも、Xビームと炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる補強部材とを構造的に接合することができる。従って、Yビームに沿って運動する部材全体の重量の低減を図ることができるとともに、Xビームの反りに抗してXビームを真っ直ぐに維持することができるのはもとより、接着剤を用いる場合に比べて補強部材のXビームへの取り付けが容易であり部品実装装置の組み立てコストの低減を図ることができる。また、Xビームと補強部材との分離も容易であるため、各部材のリサイクルなどを容易に行うことが可能となる。
【0019】
なお、上記記載は、補強部材とXビームとの接合に接着剤を使用することの禁止を意味するのではなく、接着剤を使用する場合でも締結具を併用しさえすれば、本願発明に含まれる。
【0020】
また、好ましくは、前記レールは、前記Xビームに対し第二締結具によりX軸方向に並ぶ3箇所以上で前記接続部に締結され、前記補強部材を前記Xビームに締結する前記第一締結具のX軸方向の配置ピッチは、前記レールを前記接続部に締結する前記第二締結具のX軸方向の配置ピッチ以下である。
【0021】
これによれば、補強部材をXビームに締結する配置ピッチは、レールを接続部に締結する配置ピッチ以下である。これにより、Xビームの反りに対し補強部材が効果的に抗する状態とすることが可能となる。
【0022】
また、好ましくは、前記レールは、Z軸方向に平行に並んで配置される2本のレールであり、前記Xビームは、2本の前記レールのそれぞれと前記本体部とを接続する2つの前記接続部を有し、前記XビームのYZ断面の形状は、Y軸方向の他端部に至るまで徐々にZ軸方向の間隔がY軸対称で狭くなる形状を有し、前記補強部材は、2本の前記レールと等距離となるように前記XビームのY軸方向の他端部に取り付けられる。
【0023】
これによれば、XビームのYZ断面の形状は、Y軸方向の他端部に至るまで徐々にZ軸方向の間隔がY軸対称で狭くなる形状を有し、補強部材は、2本のレールと等距離となるようにXビームのY軸方向の他端部に取り付けられる。これにより、2本のレールが配置される間隔相当の長さを一辺とする正方形をXビームの断面形状とした場合に比べてXビームを軽量化することが可能となる。また、Xビームの当該断面形状により、2本のレールとXビームとの間で発生する、Xビームを反らせる方向の応力を補強部材が取り付けられる他端部の狭い範囲に集中させることができる。また、Y軸対称でZ軸方向の幅が狭くなっているため、当該応力が均等に補強部材に伝わり、Xビームがねじれることを抑制できる。このため、軽量化を図るとともに、Xビームとレールとの間で発生する反りを抑制することができるXビームを備える部品実装装置を実現することができる。
【0024】
また、上記目的を達成するために、本願発明にかかる部品実装装置の製造方法は、部品を装着するヘッドをX軸方向に摺動自在に案内するX軸方向に延びて配置されるレールと、前記レールがY軸方向の一端部に取り付けられ、X軸方向に延びて配置される棒形状のXビームと、前記XビームをY軸方向に摺動自在に案内するY軸方向に延びて配置されるYビームとを備える部品実装装置の製造方法であって、マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部に、前記本体部とは異なる材質からなり前記本体部と前記レールとを接続する接続部を接合して、前記本体部と前記接続部とを有する前記Xビームを製造するXビーム製造工程と、製造された前記Xビームが有する前記接続部に含まれる、前記レールが取り付けられる取付面を加工する取付面加工工程と、前記取付面が加工された前記Xビームに前記レールを取り付ける取付工程と、前記本体部の熱膨張と前記レールの熱膨張との差によって発生する前記Xビームの反りに抗する補強部材を、前記XビームのY軸方向の他端部に取り付ける補強部材取付工程とを含むことを特徴としている。
【0025】
これによれば、Xビームは、マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部と、本体部とは異なる材料からなる接続部とを有しており、Xビームを製造した後に、接続部の取付面を加工して、レールを取り付ける。つまり、Xビームの本体部は、軽量なマグネシウムを主成分とする材料からなるため、Xビームの軽量化を図ることができる。またXビームとレールとの接続箇所に、加工が容易な材料からなる接続部を配置することで、Xビームとレールとの接続箇所を精度良く加工することができる。
【0026】
また、好ましくは、前記補強部材取付工程では、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる前記補強部材を、前記XビームのY軸方向の他端部に取り付ける。
【0027】
これによれば、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる補強部材をXビームに取り付ける。つまり、マグネシウムは熱により膨張することから、本体部の熱膨張とレールの熱膨張との差によってXビームに反りが発生するため、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる補強部材を取り付けることで、当該反りを抑制することができる。ここで、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂は、レールと同材料からなる補強部材に比べて軽量化が図れるとともに、Xビームの反りに抗することができる材料である。
【0028】
これらにより、軽量化を図るとともに、Xビームとレールとの間で発生する反りを抑制することができるXビームを備える部品実装装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本願発明によれば、軽量化を図るとともに、Xビームとレールとの間で発生する反りを抑制することができるXビームを備える部品実装装置を提供することが可能となり、部品実装の位置の正確性や高速性を高めて生産性の向上に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態にかかる部品実装装置を模式的に示す斜示図である。
【図2】本実施の形態にかかるXビームの断面とヘッドとを側方から示す平面図である。
【図3】本実施の形態にかかるXビームとヘッドとを背方から示す平面図である。
【図4】本実施の形態にかかるXビームとヘッドとを正面から示す平面図である。
【図5A】本実施の形態にかかるXビームを正面から示す平面図である。
【図5B】本実施の形態にかかるXビームを上方から示す平面図である。
【図6】本実施の形態にかかる部品実装装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本願発明の実施の形態にかかる部品実装装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1は、本実施の形態にかかる部品実装装置を模式的に示す斜示図である。
【0033】
同図に示すように、部品実装装置100は、部品供給部(図示せず)から部品300を基板200の上方にまで搬送し、搬送した部品300を基板200に取り付ける装置であり、ヘッド101と、レール102と、Xビーム103と、Yビーム104と、補強部材105とを備えている。また、補強部材105は、第一締結具151によりX軸方向に並ぶ3箇所以上でXビーム103のY軸方向の端部に締結されている。
【0034】
ヘッド101は、部品300を着脱自在に保持する保持手段111(図2など参照)を有する装置であり、X軸方向に往復動自在にレール102に取り付けられている。
【0035】
本実施の形態の場合、保持手段111は、真空吸着により部品300を保持するノズルであり、ヘッド101は、保持手段111を8本備えている。また、ヘッド101は、保持手段111をそれぞれ独立にZ軸方向に出没させる機構を備えており、部品300を保持して搬送し、基板200に部品300を取り付ける機能を備えている。
【0036】
なお、ヘッド101は、部品300を基板200に実装する装置ばかりでなく、部品300を検査するためのヘッド101や、部品300を接着するための樹脂を塗布するためのヘッド101等でもよい。
【0037】
Yビーム104は、Xビーム103と直交して配置され、Xビーム103をY軸方向に摺動自在に案内する部材である。本実施の形態の場合、2本のYビーム104が平行に配置されており、各Yビーム104は、基台106にY軸方向に延びた状態で固定されている。
【0038】
なお、Yビーム104は、基台106と一体に形成されるものでもよい。
【0039】
図2は、本実施の形態にかかるXビームの断面とヘッドとを側方から示す平面図である。
【0040】
図3は、本実施の形態にかかるXビームとヘッドとを背方から示す平面図である。
【0041】
図4は、本実施の形態にかかるXビームとヘッドとを正面から示す平面図である。
【0042】
図5Aは、本実施の形態にかかるXビームを正面から示す平面図である。
【0043】
図5Bは、本実施の形態にかかるXビームを上方から示す平面図である。
【0044】
これらの図に示すように、レール102は、ヘッド101をX軸方向に摺動自在に案内する棒状の部材であって、X軸方向に延びて配置されている。
【0045】
本実施の形態の場合、部品実装装置100は、2本のレール102を備えており、2本のレール102は、Z軸方向に平行に並んで配置されている。レール102は、ヘッド101と相対的に摺動し摩擦が発生するため、SCM435などの鋼やステンレス鋼等が材料として選定されている。
【0046】
また、2本のレール102の間には、ヘッド101をレール102に沿ってX軸方向に移動させるための可動側駆動部107と固定側駆動部108とが設けられている。
【0047】
可動側駆動部107は、コイルで構成され、ヘッド101のXビーム103側に取り付けられている。また、固定側駆動部108は、Xビーム103のヘッド101側に取り付けられており、電磁石108aと、電磁石108aとXビーム103とを接続する金属製の板状部材108bとを備えている。
【0048】
そして、リニアモータの原理によって、電磁石108aで磁界を変化させて、可動側駆動部107をX軸方向に移動させることで、ヘッド101をレール102に沿って移動させる。
【0049】
Xビーム103は、レール102及び固定側駆動部108がY軸方向のヘッド101側の一端部に取り付けられ、X軸方向に延びて配置される棒形状の部材である。
【0050】
本実施の形態の場合、Xビーム103のYZ断面の形状(図2参照)は、Y軸方向の他端部に至るまで徐々にZ軸方向の間隔がY軸対称で狭くなる形状を有している。Xビーム103の当該断面形状により、2本のレール102が配置される間隔相当の長さを一辺とする正方形をXビーム103の断面形状とした場合に比べてXビーム103を軽量化することが可能となる。
【0051】
また、Xビーム103の当該断面形状により、2本のレール102とXビーム103との間で発生するX軸方向の熱膨張差によるXビーム103を反らせる方向の応力をXビーム103のY軸方向におけるレール102の取り付け側とは反対側に位置し、レール102とは離れたXビーム103の他端部の狭い範囲に集中させることができる。従って、Xビーム103の他端部に取り付けられる補強部材105を構成する材料として、集中した前記応力に抗することのできる炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂を採用することで、レール102が取り付けられる側とは反対側のXビーム103のX軸方向の熱膨張を抑え、材質の異なるレール102との熱膨張差によるXビーム103の反りを抑制して真っ直ぐに維持することが可能となり、また、1本の補強部材105を配置するだけで、Xビーム103全体の反りを抑制することが可能となるためYビーム104に沿って運動する部材の重量をさらに軽減することが可能となる。
【0052】
また、Y軸対称でZ軸方向の幅が狭くなっているため、前記応力が均等に補強部材105に伝わり、Xビーム103がねじれることを抑制している。
【0053】
一般に、Xビーム103は、ヘッド101のX軸方向の往復動を案内するレール102をX軸方向に沿って保持する部材であり、往復動するヘッド101が振動すると保持している部品300を落とすなどの不具合が発生し、また、正確な位置に部品300を運ぶためには撓みなどを極力抑える必要がある。従って、Xビーム103は、構造的な強度を十分に備えている必要がある。一方、Xビーム103は、レール102やヘッド101とともに、Yビーム104に沿って直線的に往復動する部材であり、軽量であるほど高速で部品300を搬送することが可能となる。
【0054】
ここで、Xビーム103は、マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部103aと、本体部103aとは異なる材料からなる接続部103b〜103eとを備えている。本体部103aは、中空形状となっており、構造的な強度を確保するため多数のリブが設けられている。これにより、Xビーム103の本体部103aは、アルミニウムを主成分とする材料に比べて、より軽量化が図られることとなる。
【0055】
接続部103b〜103eは、Xビーム103のY軸方向のヘッド101側の一端部にX軸方向に延びて配置される、レール102または固定側駆動部108と本体部103aとを接続する部材である。接続部103b〜103eは、接着剤などにより本体部103aに接合されて固定されている。
【0056】
具体的には、接続部103b及び103eは、2本のレール102のそれぞれと本体部103aとを接続する部材であり、接続部103c及び103dは、固定側駆動部108と本体部103aとを接続する部材である。
【0057】
また、図5Aに示すように、接続部103b〜103eには、レール102または固定側駆動部108を取り付けるための取付孔103fが形成されている。また、図5Bに示す接続部103b〜103eの取付面103gは、レール102または固定側駆動部108が取り付けられる取付面であり、取付精度を良くするために、レール102または固定側駆動部108が取り付けられる前に、予め加工される。
【0058】
なお、マグネシウムを主成分とする本体部103aに対して特にレール102が取り付けられる面は高い加工精度が必要となるが、マグネシウムを主成分とする本体部103aの加工は非常に困難である。このため、接続部103b〜103eは、マグネシウムを主成分とする本体部103aの材質とは異なる材質で当該加工が容易な材質であることが好ましく、ここでは、アルミニウム、鉄、ステンレス及びチタニウムのうちのいずれか1つを主成分とする材料からなる部材である。
【0059】
また、図5A及び図5Bでは、接続部103b〜103eはそれぞれ長尺の長手方向に一体物としたが、分割されていたり段付形状にしたものであってもよい。これにより、接続部103b〜103eに反りが生じるのを抑制することができる。
【0060】
また、レール102は、第二締結具122によりX軸方向に並ぶ3箇所以上で接続部103b及び103eに締結されている。具体的には、第二締結具122は六角穴付きボルトであり、ヘリサートを挿入するなどして接続部103b及び103eに設けられたねじ穴に第二締結具122を螺着することで、レール102が接続部103b及び103eに取り付けられる。
【0061】
また、固定側駆動部108もレール102と同様に、第二締結具122によりX軸方向に並ぶ3箇所以上で接続部103c及び103dに締結されている。本実施の形態の場合、レール102及び固定側駆動部108はともに、60mmのピッチでX軸方向に並べて等間隔に配置された第二締結具122によって、接続部103b〜103eを介して、本体部103aに固定されている。
【0062】
補強部材105は、本体部103aのX軸方向の熱膨張とレール102のX軸方向の熱膨張との差によって発生するXビーム103のY軸方向の反りに抗してXビーム103を真っ直ぐに維持する部材である。ここで、補強部材105の材料については、炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics、またはCFK:炭素繊維強化プラスチック)またはアラミド繊維強化樹脂(AFRP)が採用されている。
【0063】
また、補強部材105は、第一締結具151によりX軸方向に並ぶ3箇所以上でXビーム103のY軸方向の他端部に締結されている。また、補強部材105は、2本のレール102と等距離となるようにXビーム103のY軸方向の他端部に取り付けられるのが好ましい。
【0064】
本実施の形態の場合、第一締結具151は六角ボルトであり、Xビーム103に設けられたねじ穴に第一締結具151を螺着することで補強部材105がXビーム103に取り付けられる。また、補強部材105は、第一締結具151であるボルトを挿通する挿通孔(図示せず)が設けられている。なお、挿通孔は、細長い板状の補強部材105を形成後、ドリルなどによって穿設してもよく、また、挿通孔を有する形状で補強部材105を成型してもかまわない。
【0065】
炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる補強部材105の線膨張係数は、レール102の線膨張係数の3.5%以下であることが好ましい。温度変化に対する補強部材105の長さの変化がレール102に対して十分に少なくなければ、レール102によって発生するXビーム103の反りに補強部材105が十分に対抗できないためである。
【0066】
また、補強部材105の厚みは、挿通孔の加工性等の観点から6mm以下が好ましい。補強部材105の厚みが3mm程度であっても十分に反りを抑制できる。補強部材105の幅は、10mm以上、100mm以下が好ましい。補強部材105の長さは、レール102と同じ長さであることが好ましい。
【0067】
第一締結具151は、補強部材105のX軸方向の両端部とこれらの中間部の少なくとも3箇所で補強部材105を締結することが好ましい。また、補強部材105をXビーム103に締結する第一締結具151のX軸方向の配置ピッチは、レール102を接続部103b〜103eに締結する第二締結具122のX軸方向の配置ピッチ以下であるのが好ましい。
【0068】
本実施の形態の場合、第一締結具151のX軸方向の位置は、第二締結具122のX軸方向の位置と一致している。第一締結具151の配置ピッチは、第二締結具122の配置ピッチと同じであり、第一締結具151は、60mmのピッチでX軸方向に並べて等間隔に配置されている。
【0069】
なお、第一締結具151は、ボルトに限定されるものではない。例えば、第一締結具151としてリベットなど採用し、補強部材105をXビーム103に締結してもかまわない。
【0070】
次に、部品実装装置100の製造方法について、詳細に説明する。
【0071】
図6は、本実施の形態にかかる部品実装装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0072】
同図に示すように、まず、接続部103b〜103eに、レール102または固定側駆動部108を取り付けるための取付孔103fを形成する(S102)。
【0073】
そして、本体部103aに接続部103b〜103eを接合してXビーム103を製造する(S104)。つまり、マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部103aに、本体部103aとは異なる材質からなりレール102または固定側駆動部108と本体部103aとを接続する接続部103b〜103eを接合して、本体部103aと接続部103b〜103eとを有するXビーム103を製造する。
【0074】
次に、製造されたXビーム103が有する接続部103b〜103eに含まれる、レール102または固定側駆動部108が取り付けられる取付面103gを加工する(S106)。
【0075】
そして、当該取付面103gが加工されたXビーム103に、レール102及び固定側駆動部108を取り付ける(S108)。
【0076】
そして、補強部材105を、Xビーム103のY軸方向の、接続部103b〜103が取り付けられる側と反対側の端部に取り付ける(S110)。
【0077】
以上のようにして、Xビーム103に、レール102、固定側駆動部108及び補強部材105を取り付けて、Xビーム103とヘッド101とを接続することで、部品実装装置100を製造する。
【0078】
以上のように、本実施の形態にかかる部品実装装置100によれば、Xビーム103は、マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部103aと、本体部103aとは異なる材料からなる接続部103b〜103eとを有している。つまり、Xビーム103の本体部103aは、軽量なマグネシウムを主成分とする材料からなるため、Xビーム103の軽量化を図ることができる。ここで、マグネシウムは粉状の状態で発火するおそれがあることなどから容易に精度良く加工することは困難であるが、Xビーム103のレール102との接続箇所は精度良く加工する必要がある。このため、Xビーム103とレール102との接続箇所に、アルミニウムなどの加工が容易な材料からなる接続部103b、103eを配置することで、Xビーム103とレール102との接続箇所を精度良く加工することができる。
【0079】
また、部品実装装置100は、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる補強部材105を備えている。つまり、マグネシウムは熱により膨張することから、本体部103aの熱膨張とレール102の熱膨張との差によってXビーム103に反りが発生するため、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる補強部材105を配置することで、当該反りを抑制することができる。ここで、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂とは、レール102に用いられる材料よりも同一重量あたりの強度が大きく線膨張係数が小さいため、レール102と同材料からなる補強部材105に比べて軽量化が図れるとともに、温度の変化が発生しても炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂の線膨張係数が小さいことを利用してXビーム103の反りに抗することができる材料である。
【0080】
これらにより、軽量化を図るとともに、Xビーム103とレール102との間で発生する反りを抑制することができるXビーム103を備える部品実装装置を実現することができる。
【0081】
また、補強部材105は、第一締結具151により3箇所以上でXビーム103に締結されている。これにより、炭素繊維強化樹脂製またはアラミド繊維強化樹脂の部材の接合に一般に用いられる接着剤を使用しなくとも、Xビーム103と炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる補強部材105とを構造的に接合することができる。従って、接着剤を用いる場合に比べて補強部材105のXビーム103への取り付けが容易であり部品実装装置100の組み立てコストの低減を図ることができる。また、Xビーム103と補強部材105との分離も容易であるため、各部材のリサイクルなどを容易に行うことが可能となる。
【0082】
また、補強部材105をXビーム103に締結する配置ピッチは、レール102を接続部103b、103eに締結する配置ピッチ以下である。これにより、Xビーム103の反りに対し補強部材105が効果的に抗する状態とすることが可能となる。
【0083】
また、本実施の形態にかかる部品実装装置100の製造方法によれば、Xビーム103は、マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部103aと、本体部103aとは異なる材料からなる接続部103b〜103eとを有しており、Xビーム103を製造した後に、接続部103b〜103eの取付面103gを加工して、レール102を取り付ける。このため、Xビーム103とレール102との接続箇所を精度良く加工することができる。
【0084】
また、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる補強部材105をXビーム103に取り付ける。このため、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂を使用することで、軽量化が図れるとともに、Xビーム103の反りを抑制することができる。
【0085】
以上により、軽量化を図るとともに、Xビーム103とレール102との間で発生する反りを抑制することができ、また、固定側駆動部108についても同様のことが言えるため、Xビーム103と固定側駆動部108との間で発生する反りを抑制することができる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態に係る部品実装装置100について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0087】
つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0088】
例えば、本実施の形態では、固定側駆動部108は、接続部103c及び103dを介して、本体部103aに固定されていることとした。しかし、固定側駆動部108は、接続部103c及び103dを介することなく、例えば接着剤などで本体部103aに直接固定されていることにしてもよい。この場合でも、レール102が精度良く本体部103aに固定されていることで、ヘッド101を精度良く位置決めすることができる。
【0089】
また、本実施の形態では、本体部103aに、固定側駆動部108が接続されていることとした。しかし、ヘッド101をリニアモータと異なる原理で機械的に移動させる場合などは、本体部103aには固定側駆動部108が接続されていなくともよい。
【0090】
また、本実施の形態では、補強部材105は、第一締結具151によってXビーム103に締結されていることとした。しかし、Xビーム103のマグネシウムを主成分とする材料からなる本体部103aへの補強部材105の取り付けのネジ加工を削減したい場合は、本体部103aへの補強部材105の接着貼付あるいはレール102の本体部103aへの取り付けと同様な形態でマグネシウムを主成分とする本体部103aの材質とは異なる材質の接続部を介して取り付けてもよい。
【0091】
また、本実施の形態では、本体部103aのYZ断面の形状は、三角形状であることとしたが、本体部103aのYZ断面の形状は、矩形形状であることにしてもよい。
【0092】
また、本実施の形態では、本体部103aに1つの補強部材105が取り付けられていることとしたが、本体部103aに複数の補強部材105が取り付けられていることにしてもよい。
【0093】
また、本実施の形態では、接続部103b〜103eに取付孔103fを形成(図6のS102)してから、本体部103aに接続部103b〜103eを接合(図6のS104)することとした。しかし、本体部103aに接続部103b〜103eを接合(図6のS104)してから、接続部103b〜103eに取付孔103fを形成(図6のS102)することにしてもよい。
【0094】
また、本実施の形態では、Xビーム103にレール102及び固定側駆動部108を取り付けてから(図6のS108)、補強部材105をXビーム103に取り付ける(図6のS110)こととした。しかし、補強部材105をXビーム103に取り付ける時期は特に限定されず、いつ取り付けることにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本願発明は、ヘッドをXY方向に自在に高速で移動させる部品実装装置に利用でき、例えば部品を基板に実装する部品実装装置ばかりでなく、基板に取り付けられた部品を検査する検査機や、接着剤などを基板に塗布する塗布機などにも利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
100 部品実装装置
101 ヘッド
102 レール
103 Xビーム
103a 本体部
103b〜103e 接続部
103f 取付孔
103g 取付面
104 Yビーム
105 補強部材
106 基台
107 可動側駆動部
108 固定側駆動部
108a 電磁石
108b 板状部材
111 保持手段
122 第二締結具
151 第一締結具
200 基板
300 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を装着するヘッドをX軸方向に摺動自在に案内するX軸方向に延びて配置されるレールと、
前記レールがY軸方向の一端部に取り付けられ、X軸方向に延びて配置される棒形状のXビームと、
前記XビームをY軸方向に摺動自在に案内するY軸方向に延びて配置されるYビームと
を備える部品実装装置であって、
前記Xビームは、
マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部と、
前記本体部とは異なる材料からなり、前記本体部と前記レールとを接続する接続部であって、前記XビームのY軸方向の一端部に前記本体部に固定されて配置される接続部とを有し、
当該部品実装装置は、さらに、
前記本体部の熱膨張と前記レールの熱膨張との差によって発生する前記Xビームの反りに抗する補強部材であって、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなり、前記XビームのY軸方向の他端部に取り付けられる補強部材を備える
部品実装装置。
【請求項2】
前記接続部は、アルミニウム、鉄、ステンレス及びチタニウムのうちのいずれか1つを主成分とする材料からなる
請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記補強部材は、第一締結具によりX軸方向に並ぶ3箇所以上で前記XビームのY軸方向の他端部に締結される
請求項1または2に記載の部品実装装置。
【請求項4】
前記レールは、前記Xビームに対し第二締結具によりX軸方向に並ぶ3箇所以上で前記接続部に締結され、
前記補強部材を前記Xビームに締結する前記第一締結具のX軸方向の配置ピッチは、前記レールを前記接続部に締結する前記第二締結具のX軸方向の配置ピッチ以下である
請求項3に記載の部品実装装置。
【請求項5】
前記レールは、Z軸方向に平行に並んで配置される2本のレールであり、
前記Xビームは、2本の前記レールのそれぞれと前記本体部とを接続する2つの前記接続部を有し、
前記XビームのYZ断面の形状は、Y軸方向の他端部に至るまで徐々にZ軸方向の間隔がY軸対称で狭くなる形状を有し、
前記補強部材は、2本の前記レールと等距離となるように前記XビームのY軸方向の他端部に取り付けられる
請求項1〜4のいずれか1項に記載の部品実装装置。
【請求項6】
部品を装着するヘッドをX軸方向に摺動自在に案内するX軸方向に延びて配置されるレールと、
前記レールがY軸方向の一端部に取り付けられ、X軸方向に延びて配置される棒形状のXビームと、
前記XビームをY軸方向に摺動自在に案内するY軸方向に延びて配置されるYビームと
を備える部品実装装置の製造方法であって、
マグネシウムを主成分とする材料からなる本体部に、前記本体部とは異なる材質からなり前記本体部と前記レールとを接続する接続部を接合して、前記本体部と前記接続部とを有する前記Xビームを製造するXビーム製造工程と、
製造された前記Xビームが有する前記接続部に含まれる、前記レールが取り付けられる取付面を加工する取付面加工工程と、
前記取付面が加工された前記Xビームに前記レールを取り付ける取付工程と、
前記本体部の熱膨張と前記レールの熱膨張との差によって発生する前記Xビームの反りに抗する補強部材を、前記XビームのY軸方向の他端部に取り付ける補強部材取付工程と
を含む部品実装装置の製造方法。
【請求項7】
前記補強部材取付工程では、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなる前記補強部材を、前記XビームのY軸方向の他端部に取り付ける
請求項6に記載の部品実装装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−146829(P2012−146829A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4407(P2011−4407)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】