説明

部品実装装置

【課題】基板上で隣接する部品どうしの離間距離を考慮した適切なノズルを選定することにより、ノズルと部品との干渉を確実に防止することが可能な部品実装装置を提供する。
【解決手段】本発明の部品実装装置1は、部品吸着用のノズル21の種類を選定するノズル選定手段としての制御部41を備える。この制御部41は、基板P上で隣接する部品どうしの高さの差Sが所定値以下であるか否かを判定するとともに(ステップS11)、当該高さの差Sが所定値以下である場合に、上記部品どうしの離間距離(例えば最小クリアランス値C)に基づいて、部品との干渉を起こすことなく使用可能なノズル21の種類を所定のノズル候補の中から選定するノズル選定手制御(ステップS15)を実行するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動可能なヘッドユニットに設けられた部品吸着用のノズルにより部品を吸着し、吸着された部品を搬送して基板上に実装する部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、部品吸着用の複数のノズルを備えた移動可能なヘッドにより部品を吸着しつつ基板上に実装する部品実装装置において、上記複数のノズルに吸着された複数の部品を部品認識カメラによりそれぞれ撮像し、その撮像結果から得られる各部品の状態に基づいて、上記複数の部品の実装順序を決定することが行われている。
【0003】
この特許文献1に開示された方法によれば、複数のノズルに吸着されている各部品の実際の状態に基づいて実装順序が決定されるため、各部品の間でサイズや吸着状態等が多少異なっていても、その違いを考慮した適切な実装順序が決定され、部品を基板上に実装する際のノズルの干渉(先に基板上に実装された部品にノズルが干渉すること)等を防止できるという利点がある。
【特許文献1】特開2006−237174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成において、例えば基板上で隣接する部品どうしが近接配置されているために両者の離間距離がかなり小さくなっているような場合には、たとえノズルに対する部品の吸着ずれや部品のサイズ誤差等を上記部品認識カメラにより認識し、それに基づき部品の実装順序を検討したとしても、上記吸着ずれ等の大きさによっては、実装順序の入れ替えのみによってノズルと部品との干渉を回避することができず、部品を適切に実装できないおそれが生じる。したがって、このような場合には、当該部品を吸着するノズルの種類をあらかじめ別の種類に変更しておくべきであるが、上記特許文献1にはこのような視点でノズルの種類を選定することについての開示はなく、ノズルと部品との干渉を確実に回避することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、基板上で隣接する部品どうしの離間距離を考慮した適切なノズルを選定することにより、ノズルと部品との干渉を確実に防止することが可能な部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、移動可能なヘッドユニットに設けられた部品吸着用のノズルにより部品を吸着し、吸着された部品を搬送して基板上に実装する部品実装装置であって、基板上で隣接する部品どうしの高さの差が所定値以下であるか否かを判定するとともに、当該高さの差が所定値以下である場合に、上記部品どうしの離間距離に基づいて、部品との干渉を起こすことなく使用可能なノズルの種類を所定のノズル候補の中から選定するノズル選定手段を備えることを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、隣接する部品どうしの高さの差が小さいためにノズルと部品との干渉が起きるおそれがある場合に、上記部品どうしの離間距離に基づいて使用すべきノズルをあらかじめ選定するようにしたため、部品との干渉を起こすおそれのない適切なノズルを上記離間距離を考慮して適正に選定することができ、このノズルを用いて部品の吸着および実装を行うことにより、ノズルの干渉に起因した部品の実装不良等の発生を効果的に防止して基板の品質や生産効率等を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0008】
本発明においては、上記ノズルとの干渉を起こさないために隣接する部品どうしの間で最小限必要な距離としての必要最小距離を、部品およびこれを吸着するノズルの組み合わせごとに記憶する記憶手段をさらに備え、上記ノズル選定手段は、隣接する部品どうしの高さの差が所定値以下である場合に、その部品どうしの離間距離の最小値が、上記記憶手段に記憶されている必要最小距離よりも小さいか否かを判定し、小さい場合には使用すべきノズルの種類を変更する処理を行うことが好ましい(請求項2)。
【0009】
この構成によれば、部品およびノズルの組み合わせごとに記憶手段に記憶された必要最小距離と、隣接部品間の最小クリアランス値とを比較するだけの簡単かつ確実な構成で、ノズルの干渉の有無をチェックできるとともに、その比較の結果ノズルの干渉が起きるおそれがある場合に(つまり最小クリアランス値が必要最小距離よりも小さい場合に)ノズルの種類を変更することにより、ノズルの干渉を確実に防止して基板の品質等を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0010】
上記ノズル選定手段は、上記ノズル候補の中のいずれのノズルを選定しても、上記部品どうしの離間距離の最小値が上記必要最小距離よりも小さくなってしまう場合には、上記ノズルが部品と干渉する可能性がある旨をユーザに対し報知する所定の処理を行うことが好ましい(請求項3)。
【0011】
この構成によれば、所定の報知を受けたユーザが基板上の部品の配置を変更する等の必要な措置を適切に講じることができるという利点がある。
【0012】
上記ノズル選定手段は、隣接する部品どうしの高さの差が所定値より大きい場合に、これらの部品の実装順序を、上記ノズルとの干渉を起こすことなく実装可能な順序に設定することが好ましい(請求項4)。
【0013】
この構成によれば、部品の高さの差を考慮して実装順序を制御するだけの簡単な構成でノズルと部品との干渉を防止することができる。また、使用すべきノズルの種類に特に制約を受けないため、このノズルとして作業効率等を優先した適切なノズルを用いることにより、部品の実装作業を迅速に行って基板の生産効率等を効果的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の部品実装装置によれば、基板上で隣接する部品どうしの離間距離を考慮した適切なノズルを選定することができ、ノズルと部品との干渉を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態にかかる部品実装装置を概略的に示す平面図である。本図に示される部品実装装置1は、基板P上に各種部品を実装する表面実装機2と、この表面実装機2用の制御プログラム(以下、実装プログラムという)等を作成するためのデータ作成機3とを備えており、これら表面実装機2およびデータ作成機3がネットワーク回線4を介して電気的に接続されることにより構成されている。
【0016】
図2は、上記表面実装機2を単体で示す概略正面図である。この図2および先の図1に示すように、上記表面実装機2の基台10上にはコンベア12が配置されており、このコンベア12によりプリント基板P(以下、単に基板Pと略す)が搬送されて所定の実装作業位置(図1の2点鎖線で示される位置)で停止するとともに、当該位置で停止した基板Pが図外のクランプ機構により位置決め・保持されるようになっている。なお、以下の説明では、コンベア12による基板Pの搬送方向をX軸方向、このX軸と水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることにする。
【0017】
上記コンベア12をY方向両側から挟む基台10上の2箇所には、部品供給用の多数列のテープフィーダー5aからなる部品供給部5が設けられている。各テープフィーダー5aは、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の部品が所定間隔(供給ピッチ)おきに収納されたテープと、これを導出するためのリール等を有しており、後述するヘッドユニット6により上記テープ内の部品がピックアップされるにつれて上記テープがリールによって間欠的に繰り出されるように構成されている。
【0018】
上記基台10の上方には、部品実装用のヘッドユニット6が設けられている。このヘッドユニット6は、X軸方向およびY軸方向に移動可能に支持されており、上記実装作業位置に位置決めされた基板Pと上記部品供給部5とにわたって自在に移動し得るように構成されている。
【0019】
すなわち、上記基台10上には、Y軸方向に延びる一対の固定レール7と、Y軸サーボモータ9により回転駆動されるボールねじ軸8とが配設され、上記ヘッドユニット6を支持するための支持部材11が上記固定レール7に沿ってY軸方向に移動可能に支持されるとともに、この支持部材11に備わるナット部分18が上記ボールねじ軸8と螺合している。また、上記支持部材11には、X軸方向に延びるガイド部材14と、X軸サーボモータ15により回転駆動されるボールねじ軸13とが配設され、このボールねじ軸13と螺合するナット部分(図示省略)を備えた上記ヘッドユニット6が上記ガイド部材14に沿ってX軸方向に移動可能に支持されている。そして、Y軸サーボモータ9が作動してボールねじ軸8が回転駆動されることにより、上記支持部材11がヘッドユニット6と一体にY軸方向に移動するとともに、X軸サーボモータ15が作動してボールねじ軸13が回転駆動されることにより、上記ヘッドユニット6が支持部材11に対しX軸方向に移動するように構成されている。
【0020】
上記ヘッドユニット6には部品を吸着して基板P上に実装するための複数の実装用ヘッド20が搭載されており、当実施形態では、3本の実装用ヘッド20がX軸方向に一列に並べられた状態で搭載されている。
【0021】
これら実装用ヘッド20は、それぞれ、ヘッドユニット6の本体部に対しZ軸方向の移動およびR軸(ノズル中心軸)回りの回転が可能なように支持され、図外のサーボモータを駆動源とする昇降駆動機構および回転駆動機構によりそれぞれ上記各方向に駆動されるようになっている。
【0022】
上記各実装用ヘッド20の先端部には、部品吸着用のノズル21がそれぞれ設けられている。各ノズル21は図外の負圧供給手段にそれぞれ接続されており、上記テープフィーダー5aからの部品取出し時には、上記ノズル21の先端に上記負圧供給手段から負圧が供給されることにより部品の吸着が行われるようになっている。
【0023】
また、上記ノズル21は、実装用ヘッド20に対して着脱可能に装着されており、必要に応じて、基台10上に設けられたノズルステーション16に収納される他のノズル21と交換されるようになっている。すなわち、上記ノズルステーション16には、先端形状や大きさの異なる複数種類のノズル21が収納されており、このノズルステーション16の上方にヘッドユニット6が配置された状態で実装用ヘッド20が昇降駆動されることにより、この実装用ヘッド20に対する上記ノズル21の脱着が行われるように構成されている。
【0024】
上記基台10上には、さらに、上記各実装用ヘッド20のノズル21が部品供給部5から部品をピックアップしたときの部品の吸着状態を画像認識するための部品認識カメラ17が設けられている。この部品認識カメラ17は、例えば図1に示すように、コンベア12とその両側の部品供給部5との間に位置する2箇所に設けられており、その上方を上記ヘッドユニット6が通過する際に、上記ノズル21の先端に吸着された部品の状態が上記部品認識カメラ17により下側から撮像されるようになっている。
【0025】
以上のように構成された表面実装機2では、例えば次のようにして部品の実装作業が進められる。
【0026】
まず、ヘッドユニット6が部品供給部5の上方に移動し、各実装用ヘッド20によりテープフィーダー5aからの部品の取出しが行われる。具体的には、部品を吸着すべき所定の実装用ヘッド20が所定のテープフィーダー5aの上方で昇降移動することにより、当該テープフィーダー5a内に収納された部品が上記実装用ヘッド20のノズル21により吸着されて取り出される。
【0027】
そして、全ての実装用ヘッド20による部品の吸着が完了すると、ヘッドユニット6が部品認識カメラ17の上方に移動し、各実装用ヘッド20に吸着された部品が当該カメラ17により下から撮像されるとともに、その撮像結果に基づき各部品の吸着状態が調べられる。次いで、上記ヘッドユニット6がプリント基板Pの上方に移動し、この基板Pの上面に設定された各実装ポイント上で実装用ヘッド20が昇降移動することにより、当該ヘッド20に吸着された部品がプリント基板P上に実装される。なお、上記部品認識カメラ17の撮像結果に基づき吸着部品の位置ずれ(吸着ずれ)が認識された場合には、その部品を基板P上に実装する際の実装用ヘッド20の目標移動量が上記吸着ずれ量の分だけ補正されることにより、ある程度の吸着ずれがあっても部品が正しく実装されるようになっている。
【0028】
次に、上記表面実装機2の制御系について図3のブロック図を用いて説明する。本図に示すように、表面実装機2には、その作動を統括的に制御するコントローラ30が内蔵されている。このコントローラ30は、周知のCPUや各種メモリ、HDD等から構成されており、その主な機能要素として、演算処理部31、記憶部32、モータ制御部33、外部入出力部34、画像処理部35等を有している。
【0029】
上記記憶部32は、上記データ作成機3で作成された実装プログラム(詳細は後述する)や、その他必要なデータを記憶するものである。
【0030】
上記演算処理部31は、上記記憶部32に記憶された実装プログラムに基づき所定の実装作業を行うべく前記ヘッドユニット6等の動作を統括的に制御するものである。
【0031】
上記モータ制御部33は、X軸およびY軸サーボモータ15,9等のモータを制御するものであり、上記外部入出力部34は、表面実装機2内に設けられた各種センサ類23からの信号等を受け付けるものである。また、上記画像処理部35は、上記部品認識カメラ17から入力される画像データを処理するものである。
【0032】
以上のような表面実装機2とネットワーク回線4を介して接続された上記データ作成機3は、上記表面実装機2の制御動作を規定する実装プログラム等を作成するためのものであり、各種データを記憶する記憶部42と、ユーザからの所定の入力操作を受け付けるキーボードやマウス等からなる入力部43と、液晶モニタまたはCRT等からなる表示部44と、これら各部を制御する制御部41とを有している。
【0033】
上記データ作成機3の記憶部42は、上記実装プログラムの作成に必要なデータをはじめとした各種データを記憶するもので、その機能要素として、基本データ記憶部42aおよびノズルデータ記憶部42bを有している。
【0034】
このうち、基本データ記憶部42aには、外部からユーザにより入力される基板Pの設計データ(CADデータ等)や生産計画等の情報、およびその情報から得られる基板P上の各実装ポイントの位置やそこに実装される部品の種類・形状等に関する各種情報が記憶されている。
【0035】
一方、上記ノズルデータ記憶部42bには、上記表面実装機2において使用可能なノズル21の候補(ノズル候補)およびこれらノズル21の形状等に関する各種データが記憶されているとともに、以下に説明する必要最小距離に関するデータが記憶されている。
【0036】
上記必要最小距離とは、あるノズル21により部品を吸着して基板P上に実装しようとしたときに、先に基板P上に実装されている他の部品との間の離間距離が最小限どれだけ存在すれば当該他の部品とノズル21との干渉が起きないかを表わすものである。図4は、この必要最小距離について詳しく説明するための図である。本図に示すように、ある部品p1を吸着しているノズル21の先端部の直径が当該部品p1よりも大きいような場合には、当該部品p1とこれと隣接する他の部品p2との間のクリアランスが小さいことに起因して、同図(b)に示すように上記ノズル21が隣接部品p2に干渉するおそれが生じる。そこで、当実施形態では、このような干渉を防止するために上記両部品p1,p2どうしの間で必要な最小限の距離が、必要最小距離として上記ノズルデータ記憶部42bに記憶されており、このノズルデータ記憶部42bに記憶されている必要最小距離を読み出して図5(a)〜(c)に示すような両部品p1,p2間の最小クリアランス値C(つまり部品p1,p2どうしの離間距離の最小値)と比較する等の処理が上記制御部41で実行されることにより、部品との干渉を起こすおそれのない適切なノズル21が選定されるようになっている(その処理の詳細については後述する)。
【0037】
上記必要最小距離の具体的な値は、ノズル21の部品p1に対する外径差(図4に示す寸法α)がどの程度であるかということに加えて、当該部品p1をノズル21が吸着するときに部品p1の吸着ずれがどの程度発生するかといったことも考慮して決定される。すなわち、ノズル21による部品p1の吸着は、先にも述べたように、必ずしも両者の中心が一致する状態で行われるわけではなく、図6に示すように、両者の中心が所定量ずれた状態で行われることもある(図6ではこの吸着ずれ量をεで示している)。そして、このようにある程度の吸着ずれ量εが存在する状態では、この吸着ずれ量εの分だけノズル21の相対位置が片寄ることに起因して、当該ノズル21が他の部品p2に干渉するおそれがある。このため、上記必要最小距離は、上記ノズル21と部品p1との外径差αの値に加えて、上記吸着ずれ量εの値も考慮して決定される。なお、吸着ずれがどの程度生じるかということについては、例えば、実際に部品の実装を行う過程で得られた吸着ずれ量εの実績値から統計的に判断することが可能である。
【0038】
図7は、上記ノズルデータ記憶部42bに記憶されている必要最小距離(以下当該距離をXという)のデータを示す図であり、本図表の最左欄に示されるノズル候補の種類(ノズルタイプA〜K)と、最上欄に示される部品の種類(部品タイプa〜z)との組み合わせごとに、所定の数値データ(単位:μm)からなる必要最小距離Xが定められている。例えば、この図7の表によれば、ノズルタイプAと部品タイプaとの組み合わせ時における必要最小距離Xは150μmであり、ノズルタイプBと部品タイプaとの組み合わせ時における必要最小距離Xは400μmであることが分かる。なお、本図において必要最小距離Xが「0」とあるのは、隣接する他の部品との間がどれだけ狭くても実装が可能であることを示している。すなわち、部品に対してノズル21が十分に小さい等の理由により、明らかにノズル21の干渉が起きないと考えられる場合に、必要最小距離Xとして「0」が入力されるようになっている。
【0039】
次に、上記データ作成機3の制御部41について説明する。この制御部41は、上記記憶部42に記憶された各種データに基づいて、上記表面実装機2用の実装プログラムを作成する機能を有している。具体的に、制御部41は、上記実装プログラムを作成する処理の一環として、基板P上で隣接する部品どうしの最小クリアランス値C(図5参照)が、上記ノズルデータ記憶部42bに記憶されている必要最小距離X(図7参照)よりも小さいか否かを必要に応じて判定し、その判定結果に基づいて上記ノズル21の選定を行うように構成されている。そして、このようなノズル21の選定結果に沿ったプログラムを上記実装プログラムとして作成し、上記表面実装機2に送信する。
【0040】
図9は、上記制御部41の制御動作の具体的内容を示すフローチャートである。ユーザによる入力部43への入力操作に応じ実装プログラムを作成する旨の指示が出されて図8のフローチャートがスタートすると、制御部41は、まず、記憶部42から必要な各種データを読み込むとともに(ステップS1)、基板P上の隣接部品のペア番号iをリセット(i=1)する処理を実行する(ステップS3)。なお、ここでいう隣接部品のペア番号iとは、基板P上で隣接する全ての部品の組み合わせに対し付与される通し番号である。以下では、このように互いに隣接する部品ペアの一方を図5等にならって部品p1、他方を部品p2と称することにする。
【0041】
次いで、制御部41は、上記記憶部42に記憶されている基板P上の実装ポイントの位置や部品の形状等のデータに基づいて、上記ペア番号iに対応する部品p1,p2どうしの最小クリアランス値C(図5参照)を算出する処理を実行するとともに(ステップS5)、この離間距離が所定値Ca以内であるか否かを判定する処理を実行する(ステップS7)。なお、このステップS7での判断は、ノズル21と部品との干渉をチェックする必要がない程度に上記最小クリアランス値Cが十分大きく確保されているか否かを判断するためのものである。したがって、ここでNOと判定されて最小クリアランス値Cが上記所定値Caよりも大きいことが確認された場合には、後述するようなノズル21の干渉チェックを行うことなく、直ちに次のペア番号に移行して同様の処理を繰り返す。
【0042】
一方、上記ステップS7でYESと判定されて上記部品p1,p2間の距離がある程度小さいことが確認された場合には、図8に示される部品p1,p2どうしの高さ寸法の差Sを、上記記憶部42に記憶されている当該部品p1,p2の形状データ(高さ寸法の設計値)に基づいて算出する処理を実行するとともに(ステップS9)、この高さ寸法の差S(設計上の寸法差)が所定値Sa以下であるか否かを判定する処理を実行する(ステップS11)。なお、ここでの所定値Saは、例えば、上記部品p1,p2がそれぞれ有する高さ方向の寸法誤差を足し合わせた程度の値とされる。すなわち、上記ステップS11において部品p1,p2の設計上の高さ寸法の差Sが所定値Sa以下であるということは、両部品p1,p2の設計上の高さ寸法が同一であるか、もしくは異なっていたとしても、その誤差によっては両部品p1,p2の実際の高さ寸法が略同一となることがあり得る(したがってノズル21との干渉チェックが必要である)ことを示している。
【0043】
そこで、上記ステップS11でYESと判定されて上記部品p1,p2の高さ寸法の差Sが小さいことが確認された場合、制御部41は、部品との干渉を起こすことなく使用可能なノズル21の種類を選定すべく、ステップS15のノズル選定制御を実行する。なお、詳細は後述するが、このステップS15のノズル選定制御では、上記部品p1,p2どうしの離間距離の最小値からなる上記最小クリアランス値Cを、図7に示した必要最小距離Xと比較することでノズル21と部品との干渉をチェックし、その結果に基づいてノズル21の種類を選定する処理が行われる。すなわち、当実施形態では、部品との干渉を起こすことなく使用可能なノズル21の種類をこのような手順で選定する上記制御部41により、本発明のノズル選定手段が構成されている。
【0044】
一方、上記ステップS11でNOと判定されて上記部品p1,p2の高さ寸法の差Sが所定値Saよりも大きいことが確認された場合には、これら部品p1,p2の基板P上への実装順序さえ適切に制御すれば(つまり高さの低い部品から順に実装すれば)ノズル21の干渉は起きないため、ノズル21の干渉を考慮してその選定を行う上記ステップS15の処理は必要なく、制御部41は、単に部品の実装順序に所定の制約を加えるステップS13の処理を実行する。これにより、後の実装プログラムの作成完了時(ステップS25)に定められる部品の実装順番が、ノズル21と部品との干渉が起きないような順序、つまり、高さの低い部品の後に高い部品が実装されるような順序に設定されることになる。なお、この場合に使用されるノズル21の種類は、実装作業の効率化等の点を考慮した上で適当に選定される。
【0045】
図10は、上記ステップS15で示されるノズル選定制御の具体的内容を示すサブルーチンである。なお、このノズル選定制御は、互いに隣接する上記ペア部品p1およびp2に対し順次(個別に)実行されるが、以下では、これらのうち一方の部品p1を吸着するときのノズル21を選定する場合について説明する。
【0046】
上記ノズル選定制御がスタートすると、制御部41は、上記ノズルデータ記憶部42bに記憶されているノズル候補(図7に示されるノズルタイプA〜K)の中から適当なノズル21を選択する処理を実行するとともに(ステップS31)、その選択されたノズル21と、このノズル21により吸着される部品p1との組み合わせに対し定められた必要最小距離X(つまりノズル21との干渉を起こさないために部品p1,p2の間に必要な最小限の距離)を、図7のテーブルデータから読み出す処理を実行する(ステップS33)。
【0047】
次いで、制御部41は、図9のステップS5で算出した部品p1,p2間の最小クリアランス値Cが、上記ステップS33で読み出した必要最小距離Xよりも小さいか否か、つまり、部品p1を吸着したノズル21が隣接する部品p2と干渉するおそれがあるか否かを判定する処理を実行する(ステップS35)。そして、ここでYESと判定されてノズル21の干渉が起きるおそれがあることが確認された場合には、他にもノズル候補があるか否かを判定し(ステップS37)、ここでNOと判定されて他にノズル候補が存在しないことが確認された場合に、上記ノズル21と部品p2との干渉が起きる可能性があることを記録すべくNG発生フラグFに「1」を入力する処理を実行する(ステップS39)。
【0048】
一方、上記ステップS37でYESと判定されて他にもノズル候補が存在することが確認された場合には、その残りのノズル候補の中から適当なノズル21を選択する処理を実行した上で(ステップS41)、上記ステップS33以降の処理に戻り、その新たなノズル21に対し上記と同様の処理を繰り返す。
【0049】
また、制御部41は、上記ステップS35でNOと判定されてノズル21の干渉が起きるおそれのないことが確認された場合、先のステップS31で選択されたノズル21を部品p1の吸着に使用すべきノズル21として決定した上で(ステップS43)、上記部品p1の吸着が問題なく行えることを記録すべくNG発生フラグFに「0」を入力する処理を実行する(ステップS45)。なお、これまではペア部品p1,p2のうちの一方の部品p1を吸着するときのノズル21の干渉(つまりノズル21と部品p2との干渉)をチェックする場合について説明したが、もう一方の部品p2を吸着するときのノズル21の干渉(つまりノズル21と部品p1との干渉)についても、上記と同様の処理により実行される。そして以上の処理により、図10のサブルーチンが終了する。
【0050】
再び図9のメインフローに戻って説明を続ける。以上のようにしてステップS15のノズル選定制御が終了すると、制御部41は、上記NG発生フラグF=1であるか否か、つまり、部品実装時にノズル21が上記部品p1またはp2と干渉するおそれがあるか否かを判定する処理を実行し(ステップS17)、ここでYESと判定されてノズル21の干渉が起きるおそれがあることが確認された場合には、上記データ作成機3の表示部44に、上記のような干渉が起きる可能性がある旨のエラーメッセージを表示する処理を実行することにより(ステップS19)、基板P上における上記部品p1,p2の配置を変更する等の設計変更が必要であることをユーザに対し報知する。
【0051】
一方、上記ステップS17でNOと判定されて部品p1を問題なく吸着できることが確認された場合、制御部41は、上記部品ペア番号iが部品ペア総数Nより小さいか否か、つまり基板P上に存在する全ての部品ペアに対し本フローチャートによる検討(ノズル21の干渉に関するチェック)を行ったか否かを判定する処理を実行し(ステップS21)、ここでYESと判定されてノズル21との干渉をチェックすべき部品ペアが未だに存在することが確認された場合には、上記部品ペア番号iをインクリメント(i=i+1)する処理を実行した上で(ステップS23)、上記ステップS5以降の処理に戻り、新たな部品ペアに対し上記と同様の処理を繰り返す。
【0052】
これに対し、上記ステップS21でNOと判定されて全ての部品ペアに対するチェックが終了したことが確認された場合には、これまでの処理により選定されたノズル21を用いて部品の吸着および実装を行うべく、表面実装機2の各部の動作パラメータ等を規定する実装プログラムを上記ノズル21の選定結果に沿って作成し、これを上記表面実装機2に送信する処理を実行する(ステップS25)。
【0053】
上記のように移動可能なヘッドユニット6に設けられた部品吸着用のノズル21により部品を吸着し、吸着された部品を搬送して基板P上に実装する部品実装装置1において、その制御部41の制御の下、基板P上で隣接する部品どうしの高さの差Sが所定値以下であるか否かを判定するとともに(図9のステップS11)、当該高さの差Sが所定値以下である場合に、上記部品どうしの離間距離(より具体的には図5に示した最小クリアランス値C)に基づいて、部品との干渉を起こすことなく使用可能なノズル21の種類を所定のノズル候補の中から選定するノズル選定手制御(ステップS15)を実行するようにした上記実施形態の構成によれば、基板P上で隣接する部品どうしの離間距離を考慮した適切なノズル21を選定することができ、ノズル21と部品との干渉を確実に防止できるという利点がある。
【0054】
すなわち、上記実施形態では、隣接する部品どうしの高さの差Sが小さいためにノズル21と部品との干渉が起きるおそれがある場合に、上記部品どうしの離間距離に基づいて使用すべきノズル21をあらかじめ選定するようにしたため、部品との干渉を起こすおそれのない適切なノズル21を上記離間距離を考慮して適正に選定することができ、このノズル21を用いて部品の吸着および実装を行うことにより、ノズル21の干渉に起因した部品の実装不良等の発生を効果的に防止して基板Pの品質や生産効率等を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0055】
特に、上記実施形態のように、ノズル21との干渉を起こさないために隣接する部品どうしの間で最小限必要な距離としての必要最小距離Xを、部品およびこれを吸着するノズル21の組み合わせごとに記憶する記憶手段としてのノズルデータ記憶部42bをさらに設け、隣接する部品どうしの高さの差Sが所定値Sa以下である場合に、その部品どうしの離間距離の最小値からなる最小クリアランス値Cが、上記ノズルデータ記憶部42bに記憶されている必要最小距離Xよりも小さいか否かを判定するとともに(図10のステップS35)、小さい場合には使用すべきノズル21の種類を変更する処理(同図のステップS37,S41)を行うように上記制御部41を構成した場合には、より簡単かつ確実な構成でノズル21の干渉を防止できる等の利点がある。
【0056】
すなわち、上記構成では、部品およびノズル21の組み合わせごとにノズルデータ記憶部42bに記憶された必要最小距離Xと、隣接部品間の最小クリアランス値Cとを比較するだけの簡単かつ確実な構成で、ノズル21の干渉の有無をチェックできるとともに、その比較の結果ノズル21の干渉が起きるおそれがある場合に(つまり最小クリアランス値Cが必要最小距離Xよりも小さい場合に)ノズル21の種類を変更することにより、ノズル21の干渉を確実に防止して基板Pの品質等を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0057】
また、上記実施形態では、ノズルデータ記憶部42bに記憶されているノズル候補の中のいずれのノズル21を選定しても、上記部品間の最小クリアランス値Cが上記必要最小距離Xよりも小さくなってしまう場合(図9のステップS17でYESの場合)には、上記ノズル21が部品と干渉する可能性がある旨をユーザに報知すべく表示部44に所定のエラーメッセージを表示するようにしたため、ユーザは、その表示を見ることにより、基板P上の部品の配置を変更する等の必要な措置を適切に講じることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、隣接する部品どうしの高さの差Sが所定値Saより大きい場合に(図9のステップS11でNOの場合に)、これらの部品の実装順序が、上記ノズル21との干渉を起こすことなく実装可能な順序に設定されるように構成されているため、部品の高さの差Sを考慮して実装順序を制御するだけの簡単な構成で、ノズル21と部品との干渉を効果的に防止できるという利点がある。また、このように部品の実装順序を適切に制御することで、使用すべきノズル21の種類が特に制限されなくなるため、このノズル21として表面実装機2の作業効率等を優先した適切なノズル21を用いることにより、部品の実装作業を迅速に行って基板Pの生産効率等を効果的に向上させることができる。
【0059】
なお、上記実施形態に基づき説明した部品実装装置1は、本発明の好ましい形態の一例に過ぎず、その具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、部品との干渉を起こすことなく使用可能なノズル21の種類を選定するノズル選定制御(図9のステップS15)の実行の有無を判断する際の基準となる閾値Sa、つまり、隣接する部品(例えば図8に示される部品p1,p2)どうしの設計上の高さ寸法差Sの閾値Saを、これらの部品p1,p2の高さ方向の寸法誤差を足し合わせた程度の値とすることにより、上記部品p1,p2の実際の高さ寸法が略同一になり得る場合にのみ上記ノズル選定制御を行うようにしたが、上記閾値Saの値を上記のような寸法誤差程度の値よりも多少大きくすることにより、上記部品p1,p2の間にある程度の高さ寸法差が必ず存在すると予想される場合でも上記ノズル選定制御を実行するようにしてもよい。このようにすれば、仮に寸法誤差を外れた規格外の部品が混入したような場合でも上記ノズル21の干渉を確実に防止できるとともに、ある程度の高さ寸法差がある部品をその実装順序に特に制約を設けることなく基板P上に適正に実装できるという利点がある。
【0060】
また、上記実施形態では、隣接する部品どうしの高さ寸法差Sが所定値Saより大きい場合に、高さの低い部品から順に実装されるように実装順序を設定することでノズル21と部品との干渉を回避するようにしたが、例えば部品の詳細な3次元形状等を考慮して部品実装時のノズル21の移動経路を適切に制御する等により、高い部品から実装してもノズル21との干渉を回避できる場合には、必ずしも上記のような順序で部品を実装しなくても、ノズル21と部品との干渉を回避することが可能である。
【0061】
また、上記実施形態では、部品実装装置1を構成する表面実装機2とデータ作成機3とが別々に設けられた例について説明したが、本発明の構成は、上記表面実装機2とデータ作成機3とが一体的に設けられた部品実装装置1に対しても好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態にかかる部品実装装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】表面実装機の概略正面図である。
【図3】上記部品実装装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】(a)(b)は隣接する部品どうしの必要最小距離について説明するための図である。
【図5】(a)〜(c)は隣接する部品どうしの最小クリアランス値について説明するための図である。
【図6】部品の吸着ずれに起因したノズルと部品との干渉を説明するための図である。
【図7】上記ノズルデータ記憶部42bに記憶されている必要最小距離のデータを示す図である。
【図8】隣接する部品どうしの高さ寸法の差を説明するための図である。
【図9】データ作成機の制御動作の具体的内容を示すフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートの中で行われるノズル選定制御の具体的内容を示すサブルーチンである。
【符号の説明】
【0063】
1 部品実装装置
6 ヘッドユニット
21 ノズル
41 制御部(ノズル選定手段)
42b ノズルデータ記憶部(記憶手段)
S (部品どうしの)高さの差
C 最小クリアランス値(部品どうしの離間距離の最小値)
X 必要最小距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能なヘッドユニットに設けられた部品吸着用のノズルにより部品を吸着し、吸着された部品を搬送して基板上に実装する部品実装装置であって、
基板上で隣接する部品どうしの高さの差が所定値以下であるか否かを判定するとともに、当該高さの差が所定値以下である場合に、上記部品どうしの離間距離に基づいて、部品との干渉を起こすことなく使用可能なノズルの種類を所定のノズル候補の中から選定するノズル選定手段を備えることを特徴とする部品実装装置。
【請求項2】
請求項1記載の部品実装装置において、
上記ノズルとの干渉を起こさないために隣接する部品どうしの間で最小限必要な距離としての必要最小距離を、部品およびこれを吸着するノズルの組み合わせごとに記憶する記憶手段をさらに備え、
上記ノズル選定手段は、隣接する部品どうしの高さの差が所定値以下である場合に、その部品どうしの離間距離の最小値が、上記記憶手段に記憶されている必要最小距離よりも小さいか否かを判定し、小さい場合には使用すべきノズルの種類を変更する処理を行うことを特徴とする部品実装装置。
【請求項3】
請求項2記載の部品実装装置において、
上記ノズル選定手段は、上記ノズル候補の中のいずれのノズルを選定しても、上記部品どうしの離間距離の最小値が上記必要最小距離よりも小さくなってしまう場合には、上記ノズルが部品と干渉する可能性がある旨をユーザに対し報知する所定の処理を行うことを特徴とする部品実装装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の部品実装装置において、
上記ノズル選定手段は、隣接する部品どうしの高さの差が所定値より大きい場合に、これらの部品の実装順序を、上記ノズルとの干渉を起こすことなく実装可能な順序に設定することを特徴とする部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−170573(P2009−170573A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5316(P2008−5316)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】