説明

配合機によるコロイド状ナノ粒子の製造方法

本発明は、均質なコロイド状のナノ粒子、有利にはリポソームを製造するための改善された方法であって、配合機を用いた方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の詳細な説明
リポソームは、主に、様々な型の脂質、リン脂質又は他の親油性成分から構成される小さな球状のベシクルである。脂質成分は、通常は二重層を形成し、その際に、両親媒性物質の極性末端は、その周囲を取り巻く一般的に水性媒体である溶液と接触する。両親媒性物質の非極性で両親媒性の末端は、別の両親媒性物質の非極性で両親媒性の末端と接触して、脂質二重層を形成する。使用される両親媒性物質の種類に依存して、リポソーム膜は、その外部電荷に従って、中性、負、正の実効電荷を有する膜に分類することができる。
【0002】
リポソームは、多くの治療用途及び診断用途のために開発される。なかでも、リポソームは、水中に十分に可溶でない分子を送達するのに使用される。これらの親油性分子は、リポソーム二重層中に導入されるか又は化学的に脂質二重層に結合されている。
【0003】
リポソームは、生物学的活性成分及び親水性成分を負荷するためにリポソームの水性内部区分中で、又は親油性物質の場合には、その脂質二重膜中に導入して広く使用されている。リポソームの皮膚適用の場合に、活性成分又は活性物質は、リポソームの両親媒特性のため皮膚の深層領域に輸送されうる。
【0004】
リポソーム適用の分野は、例えば非経口製剤、経口製剤、局所製剤、そして吸入製剤を含む多岐に亘っている。リポソーム適用の利点は、制御放出又は遅延放出、薬物送達の向上の可能性を含み、そして薬物送達が局所的な多くの他の効果を向上させるので、副作用の低減の可能性をも含む。このように、リポソームは、対象となる物質適用における障害を克服するのに見込みのある道具である。
【0005】
リポソームの形態、例えば二重層の数、粒度、表面電荷又は表面修飾並びに脂質組成及び製造方法に多くのバリエーションがあり、これらを調整することで、理想的な薬物送達システムを得ることができる。
【0006】
様々な型のリポソームのうち、たいていは、約50〜300nmの直径といった小さいないし中間のベシクル粒度を有すると共に、単峰性の粒度分布を有するリポソームが好ましいと考えられている。均一な粒度分布は、再現的かつ良好な特徴付けがなされたリポソーム集合をもたらす。
【0007】
膜形成特性を有するリン脂質は、好適な媒体中に分散させた後に、浸潤し、水和し、そして同心二重層を形成する能力を有する。これらのマルチラメラな同心二重膜は、水性媒体の層によって隔たれている。これらのベシクルは、マルチラメラ脂質ベシクル(MLV)と呼ばれている。それらの直径は一般に300nmから2μmまでの範囲である。MLVは、Banghamによって初めて記載された(Bangham, A. D., et al. Biol. 8 (1964)、第660頁以降)。
【0008】
またリポソームは、1つの二重層だけからなるベシクルを形成することもあり、これらのリポソームは、一般にユニラメラベシクルと呼ばれている。該リポソームは、1つの一枚膜の球状脂質二重層が水性媒体に取り囲まれた形を有する。これらのユニラメラベシクルが約30〜300nmの平均直径を有するのであれば、これらは小さなユニラメラベシクル(SUV)と呼ばれ、一方でそれより大きなユニラメラベシクルは300nmから1μmまでの範囲の直径を有しうる。
【0009】
リポソームの製造のためには、多くの方法が記載されている。リポソームの最も一般的な製造方法の概要と脂質に関連する事実と方法は、“リポソーム技術”、G.グレゴリアディス編、CRS出版社、フロリダ州ボカラトン在、第I巻、第II巻及び第III巻(1993年)("Liposome Technology", ed. G. Gregoriadis, CRS Press Inc., Boca Raton, Florida, Vol. I, II and III (1993))に示されている。しかしながら、これらの方法の殆どは、有機溶剤又は界面活性剤の使用に焦点を絞ったものであり、そこでは膜形成脂質と活性成分とを完全に溶解又は可溶化させてから、水性媒体中に分散させている。その可溶化工程は、更にリポソーム成分の完全な混合を確実なものにする。一般的に、リポソームの製造は少なくとも2工程以上で実施される。第一工程は、脂質を好適な溶剤中に溶解させることであり、それに引き続いて溶液の処理か、又は有機溶剤の蒸発により得られる脂質膜の処理が行われる。(Bangham, A. D., et al., Meth. in Membrane Biol. 1, pages 1-68を参照のこと)。溶剤は通常は真空下に回転蒸発器によって除去される。蒸発されると、残りの脂質は容器又は丸底フラスコの壁面に薄膜を形成する。次いで、親水性材料を含有しうる水性媒体が脂質膜に添加される。丸底フラスコあるいは容器の緩慢な撹拌によって、脂質膜が水和して、大きなマルチラメラベシクル(MLV)が形成される。この時点までで、その製造技術は薄膜法と呼ばれる。より小さいベシクルが所望されるのであれば、他の処理工程を適用する必要がある。
【0010】
リポソーム状ベシクルの粒度は、準弾性レーザ散乱(QELS)(Bloomfeld, et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 10: 421-450 (1981))又は光子相関分光法(PCS)によって測定することができる。それにより、平均リポソーム径がnmで測定され、かつ粒度分布様式を観察することができる。粒度分布は、いわゆる多分散性係数(0〜1の数値)によって表され、その際、数値の増大は粒度分布の広がりを説明している。このように単分散性リポソーム集合(多分散性係数0〜0.2で示される)が検出できるのと同様に、>0.2の数で表される多分散性粒度分布も検出できる。0.2未満の多分散性係数(PI)をとることが望ましく、その場合に、他の要素のなかで再現的なリポソーム品質が確実なものとなる。
【0011】
MLVの縮小のために卓越した方法は、押出技術である(ホープ,MJ他著の押出技術によるリポソーム粒度の減少とユニラメラベシクルの製造:“リポソーム技術”、G.グレゴリアディス編、CRS出版社、フロリダ州ボカラトン在、第I巻、第123頁(1993年)(Hope, MJ et al., Reduction of liposome size and preparation of unilamellar vesicles by extrusion techniques. In: "Liposome Technology", ed. G. Gregoriadis, CRS Press Inc., Boca Raton, Florida, Vol. I, page 123 (1993))を参照のこと)。該方法は、リポソーム(MLV)分散液を規定の孔径のフィルタを通して連続的に濾過することによって実施される。通常、ポリカーボネート膜がこのために使用され、それは該膜が明らかに検証された(その製造方法によって保証された)孔径を有するためであるが、他の膜、例えば溶質の滅菌濾過のために本来設計された酢酸セルロースフィルタを使用することも可能である。懸濁液を、膜を通じて1回又は複数回循環させると、所望のリポソーム粒度が達成される。リポソームを、連続的に孔径が小さくなった膜を用いて押出しすることで、リポソーム粒度は徐々に縮小される。通常は、比較的に良好に定義されたリポソーム粒度分布が得られる。
【0012】
当業者には、MLVの粒度を縮小してSUVを得るための様々な代替法が知られている。他の一般的なSUVの製造方法は超音波処理である。リン脂質の水性分散液を、超音波浴又は超音波プローブのいずれかによって超音波処理することによって、直径で約50nm未満のSUVにまで連続的に粒度縮小がなされ、このことはPapahadjopoulos他、Biochim et Biophys Acta 135:224-238 (1968)によって記載されている。
【0013】
SUVは、Batzri他、Biochim et Biophys Acta 298: 1015-1019 (1973)によって記載されるエタノール注入法又はDeamer他、Biochim et Biophys Acta 443: 629-634 (1976)によって記載されるエーテル注入法によって製造することもできる。これらの方法は、穏やかに撹拌しながら、水性媒体又は緩衝溶液中に脂質の有機溶液を迅速に注入することによって実施される。得られる分散液はユニラメラリポソームを含み、その粒度には、エタノール抽出のために選択される条件(例えば脂質濃度、注入速度など)又は連続した押出工程によって、ある程度まで影響を及ぼすことができる。
【0014】
SUVの更なる製造方法は、Wedder他によって“リポソーム技術”、G.グレゴリアディス編、CRS出版社、フロリダ州ボカラトン在、第I巻、第7章、第79〜107頁(1984年)に示されている。記載される方法は、界面活性剤除去法(detergent removal method)と呼ばれ、その方法は、界面活性剤の除去を基礎として、脂質と添加剤とを混合ミセルの形成で可溶化させている。
【0015】
逆相蒸発技術は、有機溶剤と水性緩衝溶液中における脂質の油中水エマルジョンの形成を伴う。有機溶剤を圧力の使用によって除去すると、脂質は大きなユニラメラベシクル(LUV)に変換される。該方法は、Papahadjopoulos他の米国特許4,235,871号によって説明されている。
【0016】
米国特許第4,016,100号(Suzuki他)では、リン脂質の水性分散液を凍結・融解させることにより製造されたベシクル中に物質をカプセル化する方法を記載している。
【0017】
ローラ−ステータ均質化又は液体高圧均質化は、大規模にリポソームを製造するために適している。それらの均質化は、原料脂質分散液を小さな剪断弁を通し、中圧ないし高圧(例えば100バールないし1400バール)を用いて再循環させることを含む。該均質化法の間に生ずる現象は、単なる剪断過程に加えて、衝突とキャビテーションである。液体高圧ホモジナイザは、例えばマイクロフルイダイザを含むが、これらはリポソームの製造に非常に良く適合しているが、そのホモジナイザは、高圧均質化によって処理される脂質と活性成分とに作用する高エネルギー衝撃が存在するという欠点を有する。結果として、剪断応力の影響を受けやすい物質(例えばタンパク質)は、高圧均質化によって取り扱うことができない。高圧均質化によって得られる一般的なリポソーム集合は、その直径が50〜300nmであり、大抵が、広い粒度分布を指す多分散性粒度分布を示す事態を招く。しかしながら、一般的に、広い粒度分布は、それが特徴付けに粗悪で、殆ど再現的でないリポソーム分散液をもたらすため不利であると見なされている。
【0018】
最近のリポソームの製造方法は、大抵が回分法である。特に、十分に確立された薄膜法は、ある容量を超えると規模拡大ができない。連続的なリポソーム製造を可能にする製造技術は存在しないに等しく、また製造方法の規模拡大の試みも全く成功していない。このように、製造方法について、より連続的な内容で作業し、前記の特徴付けに粗悪な回分規模の方法に勝る改良に対して高い要求が存在する。
【0019】
更に、例えば最終リポソーム状生成物内にある程度まで残留しうる残留溶剤といった他の問題に対抗する必要がある。“薄膜法”の間に製造される脂質薄膜から有機溶剤を除去することは、しばしば達成困難であり、こうしてこの方法は不完全である。結果として、最終的なリポソーム分散液は微量の残留溶剤を含有することがあり、これは潜在的に毒性であり、一定の溶剤(例えばクロロホルム、ジクロロメタン、アセトン)の場合には癌原性でさえもある。そのため、有機溶剤を用いて製造されたリポソームの医学的利用には、微量の溶剤が考えられる限りは特定の監視が必要となる。製造の観点からは、薄膜法は、簡単で、容易に販売でき、かつ安全な製造技術であるという要求を満たしていない。
【0020】
再現性は全てのリポソームの適用のために問われるが、しかしながら非経口投与されるリポソームに焦点を絞ると、再現性は、最終生成物の任意の承認についての基本的要求となる。高圧均質化のような高い剪断力を用いる技術は、主に、それにより得られたリポソーム分散液の広い粒度分布を理由に、これらの要求を満たさない。また超音波による製造技術は、しばしば広い粒度分布を有するリポソーム集合をもたらす。リポソームの静注の場合には、それらの粒度は限定されるべきである。約50nm〜200nmの粒度と十分な粒度均一性が必要であるとみなされる。(Huang, L. "Size homogeneity of a liposome preparation is crucial for liposome distribution in vivo", J. Liposome Res. 2, 57-66, 1992を参照のこと)。
【0021】
それらの公知法は、甚だしい技術的な、経済的な、かつ環境的な欠点を有する。
【0022】
こうして、本発明のもととなった問題は、均一なコロイド状のナノ粒子系、例えばミセル、リポソーム又は脂質ナノ粒子を製造するための改善された方法を提供することである。
【0023】
前記問題の解決は、本発明により、特許請求の範囲に特徴が示される実施態様の提供によって達成される。
【0024】
本発明は、均一なコロイド状のナノ粒子の製造方法であって、
a)少なくとも1種の両親媒性成分と、場合により(i)水性媒体、(ii)有機溶剤及び/又は(iii)界面活性剤を含有する組成物を配合機を用いて押し出す工程、
b)工程a)の押し出された組成物を水性媒体中に分散させる工程、
c)場合により、工程b)の調製物を少なくとも1回均質化する工程、及び/又は
d)場合により、工程b)又はc)の調製物を滅菌濾過する工程
を含み、工程a)における水性媒体が、カチオン性ナノ粒子の自発的形成を生じない量であり、かつ場合により少なくとも1種の活性剤が、工程a)の組成物中及び/又は工程b)の水性媒体中に存在している方法に関する。
【0025】
“配合機”を用いるポリマーの押出は当該技術分野で良く知られており、それは異なるポリマーを混合(配合/アロイ化)するため又は添加剤の配合のために用いられる。しかしながら、脂肪、油、蝋、両親媒性物質などのような両親媒性成分を、場合により活性剤と一緒に配合することについては、配合機は知られていない。
【0026】
驚くべきことに、配合機の補助により、コロイド状のナノ粒子を迅速かつ簡単に製造できることが判明した。それにより、少なくとも1種の両親媒性成分を、少なくとも1種の活性剤とを一緒に、非常に高い程度まで混合することができる(例えば薄膜法により製造された参照リポソームの約80%〜約100%のFRETを有するリポソームについて)。
【0027】
前記の単独成分の分子レベルでの混合の程度は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)技術を用いて監視することができる。蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)は、2つの色素分子中の励起状態の電子間での相互作用である。その相互作用の強度は分子間の距離に依存する。ドナー色素分子からの励起は、一般的に10〜100Åの近傍となるとアクセプタ色素分子に遷移する。FRETのための更なる主要条件は、ドナー分子の蛍光発光スペクトルとアクセプタ分子の吸収スペクトルとの重複である。このように、FRETは、例えばリポソーム二重層中の現象を調査するのに有用な技術であり、それにより、蛍光標識された脂質分子をリポソームの脂質二重膜中に組み込んだ場合に、リポソーム膜内の脂質分子の近接とその分布とを研究できる。蛍光強度は、ドナー色素分子からアクセプタ色素分子へのエネルギー移動の効率に直接的に関連している。このように、低い蛍光強度は、リポソームの二重層中の蛍光標識された脂質の混合レベルが低いことを指し、それは、混合が不完全であると、種々の脂質分子の近接の確率が統計的に低いためである。
【0028】
高い混合の程度は、前記の成分を有機溶剤中に溶解させることなく、それらの成分と水性媒体又は界面活性剤とを混合することなく、又はそれらの成分を厳しい条件に晒すことなく、例えば高圧均質化法に供することなく達成することができる。それにより、両親媒性成分は、場合により活性剤と一緒に、共に簡単に秤量して、配合機に移される。その配合機は、シリンダーとプランジャーのシステム又はスクリュー押出機として設計することができる。引き続き、両親媒性成分は、プランジャーに圧力を加えることによって押し出すことができる。得られた材料を好適な水性媒体中に分散させて、コロイド状のナノ粒子、例えばミセル、リポソーム、脂質ナノ粒子、エマルジョン又はゲルを形成させることができる。
【0029】
本発明に開示される配合機を用いた両親媒性化合物の押出は、“古典的な”リポソームの押出とは明確に区別する必要がある。本発明の工程c)で実施される“古典的な”押出は、水性媒体中でリポソームを均質化するためにリポソーム押出機を用いて実施されるが、一方で、本発明で実施される配合機による両親媒性化合物の押出は、リポソームの形成前に少なくとも1種の両親媒性成分の分子を混合するために使用される。両親媒性化合物の分子は、それによって、配合機に適用される材料中に均質に分配されない。両親媒性化合物の分子の均質化は、“配合”の間に行われ、そうして少なくとも1種の両親媒性物質の均質な材料がもたらされる。
【0030】
また、配合機の使用は、1種のみの単独の両親媒性成分を含んで成る均質なコロイド状のナノ凝集体の製造にも適している。それによって、薄膜法、有機溶液注入法又は高圧均質化でのような時間及びエネルギーの浪費又は過酷な工程さえも、回避される。
【0031】
本発明の有利な実施態様では、工程a)は、水性媒体、有機溶液及び/又は界面活性剤の存在なくして実施することができる。
【0032】
得られたコロイド状のナノ粒子は、非常に高い均一性を有し、そして高いFRET率(リポソームについて、その率は標準として薄膜法によって製造された参照リポソームの約80%〜約100%である)を有する一方で、他の方法、特に薄膜法での全ての欠点が回避される。薄膜法によって製造された参照リポソームは、PI値又は同粒度(約150nm)の点で同等に分配されている。
【0033】
少なくとも1種の活性剤は、本発明の工程a)及び/又は工程b)の間のいずれにも存在して良く、例えば1種の単独の両親媒性成分と1種以上の活性剤とを配合機によって押し出すことができる。
【0034】
本発明の工程a)又はb)による好適な水性媒体は、水と、場合により少なくとも1種の好適な添加剤、例えば親水性で生体適合性の溶剤、例えばプロピレン、グリコール、グリセロール(Glyerol)、PEG又は水中に完全に溶解される他の溶剤とを含有する。かかる添加剤は、また緩衝液又は他の別個の成分、凍結保護物質又は他の安定化剤、例えば酸化防止剤であってもよい。凍結保護物質は、糖類又はアルコール又はその組合せ、例えばトレハロース、マルトース、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、マンニトール又はソルビトールから選択でき、その範囲は約20%(m/v)までである。
【0035】
有利な一実施態様では、工程a)での有機溶剤は、有利には、医薬品の溶剤のガイドラインに従って最終適用可能形に希釈した後に許容できる生体適合性溶剤、有利にはエタノールから選択される。更なる例は、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、t−ブタノール、グリセロール、ソルビトール、ソルケタール、n−ピロリドン、ソルフォア(soluphor)、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、塩化メチレン又はこれらの溶剤の混合物である。
【0036】
更に有利な一実施態様では、好適な界面活性剤は、トゥイーン類、プルロニック類、ポロキサマー類、クレモフォア類、レシチン類、ソルトールHS15、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)又は他の生理学的に認容性の界面活性剤、有利にはレシチンから選択することができる。
【0037】
より有利な実施態様では、本発明による方法は、工程a)において水性媒体、有機溶剤又は界面活性剤の存在なくして実施される。
【0038】
工程a)の押し出された組成物を本発明による方法の工程b)で分散させることは、工程a)で得られる材料を水性媒体中で簡単に撹拌することによって実施することができる。それにより、リポソームが自発的に形成される。
【0039】
本発明の後続の均質化工程c)は、有利には、押出及び/又は濾過によって、膜濾過装置(例えばLipex(登録商標)サーモバレル押出機(thermobarrel extruder))を通じて、規定の孔径の押出膜を用いて実施され、大抵その工程は、有利には、約200nmの孔径を有する膜を通じる押出によって実施される。当該分野でよく知られる50nm、100nm、150nm、400nmのような他の孔径を有する膜も同様に使用してよい。膜濾過を通じた濾過は、PVDF、PES、ナイロンフィルタから構成される膜を通じての圧力下での濾過によって実施できるが、他の材料も適していると定められれば使用できる。ポリカーボネートフィルタを使用することが好ましい。膜の孔径は、約100nm〜400nmの範囲であるとしているが、孔径は前記の大きさに限定されない。種々の材料と種々の孔径を組み合わせて、滅菌級の濾過によって処理できる溶液を得ることができる。
【0040】
更に、均質化は、分散液の超音波処理(例えばBranson(登録商標)音波発生器)によって達成できるが、それは好ましくない。
【0041】
孔径又は超音波処理時間に依存して、得られるコロイド状のナノ粒子の粒度は、約20nm〜約1000nm、有利には約50nm〜約500nm、より有利には約100nm〜約300nmの範囲となる。
【0042】
コロイド状のナノ粒子は、工程d)に従って、例えば0.2μmの滅菌フィルタを用いた滅菌濾過によって滅菌することができる。(例えばDuraopre(登録商標)(PVDF)ミリポア社(ドイツのエシュボルン在))。
【0043】
好適な両親媒性成分は、両親媒性物質、例えば脂肪、油、リポ多糖類、リポタンパク質、ステロール又は脂質、例えばコレステロール又はリン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質、スフィンゴ脂質又はペグ化脂質から選択されるが、また正、負又は中性の実効電荷を有する蝋からも選択される。グリセロールの部分的にエステル化された誘導体、例えばモノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド及びそれらの誘導体も同様に選択できる。アニオン性又は中性の両親媒性物質は、正又は中性の実効電荷を有するステロール又は脂質、例えばコレステロール、リン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質、スフィンゴ脂質又はペグ化脂質から選択することができる。それにより、有用なアニオン性脂質と中性の脂質は、例えばホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール(特定の糖類に限定されない)、脂肪酸、カルボン酸基を有するステロール、コレステロール、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(ジオレオイル(DOPE)も含むがそれに制限されない)、1,2−ジアシル−グリセロ−3−ホスホコリン及びスフィンゴミエリンである。グリセロール骨格に結合した脂肪酸は、特定の長さ又は二重結合の数に限定されない。リン脂質は、2つの異なる脂肪酸をも有してよい。有利な一実施態様では、中性の両親媒性物質はジアシルホスファチジルコリンである。
【0044】
それにより、有用なカチオン性の脂質は、例えばDDAB、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド;N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム(DOTAP);1,2−ジアシルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン(ジオレオイル、ジミリストイル、ジラウロイル、ジパルミトイル及びジステアロイルを含むがこれらに制限されない;また2つの異なるアシル鎖はグリセロール骨格に結合してもよい);N−[1−(2,3−ジオロイル(oloyl)オキシ)プロピル]−N,N−ジメチルアミン(DODAP);1,2−ジアシルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン類(ジオレオイル、ジミリストイル、ジラウロイル、ジパルミトイル及びジステアロイルを含むがこれらに制限されない;また2つの異なるアシル鎖はグリセロール骨格に結合してもよい);N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA);1,2−ジアルキルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン(ジオレイル、ジミリスチル、ジラウリル、ジパルミチル及びジステアリルを含むがこれらに制限されない;また2つの異なるアルキル鎖はグリセロール骨格に結合してもよい);ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS);3β−[N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol);2,3−ジオレオイルオキシ−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−エチル)−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA);β−アラニルコレステロール;セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB);ジC14−アミジン;N−t−ブチル−N′−テトラデシル−3−テトラデシルアミノプロピオンアミジン;14Dea2;N−(アルファ−トリメチルアンモニオアセチル)ジドデシル−D−グルタメートクロライド(TMAG);O,O′−ジテトラデカノイル−N−(トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロライド;1,3−ジオレオイルオキシ−2−(6−カルボキシ−スペルミル)−プロピルアミド(DOSPER);N,N,N′,N′−テトラメチル−N,N′−ビス(2−ヒドロキシルエチル)−2,3−ジオレオイルオキシ−1,4−ブタンジアンモニウムヨージド;1−[2−(アシルオキシ)エチル]2−アルキル(アルケニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾリニウムクロライド誘導体(Solodin et al. (1995) Biochem. 43:13537-13544によって記載される)、例えば1−[2−(9(Z)−オクタデセノイルオキシ)エチル]−2−(8(Z)−ヘプタデセニル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロライド(DOTIM)、1−[2−(ヘキサデカノイルオキシ)エチル]−2−ペンタデシル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムクロライド(DPTIM)、2,3−ジアルキルオキシプロピル第四級アンモニウム化合物誘導体(これは第四級アミンにヒドロキシアルキル部を有する、その誘導体は、例えばFelgner他[Felgner et al. J. Biol. Chem. 1994, 269, 2550-2561]によって記載された)、例えば1,2−ジオレオイル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DORI)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DORIE)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシプロピルアンモニウムブロマイド(DORIE−HP)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシブチルアンモニウムブロマイド(DORIE−HB)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシペンチルアンモニウムブロマイド(DORIE−Hpe)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシルエチルアンモニウムブロマイド(DMRIE)、1,2−ジパルミチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DPRIE)、1,2−ジステアリル(Steryl)オキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DSRIE);Santaniello他[US5498633号]によって報告されたアシルカルニチン類のカチオン性エステルである。
【0045】
有利な一実施態様では、カチオン性の脂質は、第四級アンモニウム塩、例えばN−[1−(2,3−ジアシルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムから選択され、その際、その第四級アミノ化合物の製剤学的に認容性の対イオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、クエン酸イオン、グルタミン酸イオン又は乳酸イオンからなる群から選択される。より有利な実施態様では、カチオン性の脂質はDOTAPである。
【0046】
特に記載がない限り、本願明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の関連する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有するものとする。
【0047】
本願で使用される“活性剤”は、例えば生物学的活性剤であり、そして有用化合物又は治療化合物として作用する全ての分子を意味する。活性剤の例は、説明を目的とするものであり限定するものではないが、診断薬、抗癌剤、造影媒体、蛍光標識及び任意の他の適用のための薬物、例えばタンパク質薬及びペプチド薬などである。更に、用語“活性剤”は、より広範に使用することができ、そして適用、投与又はコロイド状のナノ粒子、例えばリポソーム中での使用が望ましい全ての化学的化合物又は化学物質を意味し、その用語には、説明を目的とするものであり(限定を意図するものではないが)、造影剤、色素及び蛍光標識などが含まれる。それにより活性剤は、親水性又は親油性であってよい。有利な活性剤のための特定の例は、タキサン類から、微小管と相互作用する他の剤、例えばエポシロン、ディスコダーモライド、ラウリマライド、イソラウリマライド、エロイテロビン(eleutherobin)、コルチシン及びその誘導体、ビンカアルカロイド、例えばビノレルビンから、白金複合体、例えばオキサリプラチンから、カンプトテシン類から、アントラサイクリン類、例えばドキソルビシン又はスタチン類(例えばロバスタチン)から選択される。また活性剤は、食事性化合物又は化粧用化合物、例えば健康補助食品、ビタミン又は化粧品から選択することもできる。
【0048】
“コロイド状のナノ粒子”とは、任意のコロイド状の粒子系、例えばミセル、リポソーム、脂質ナノ粒子、ナノカプセル又はエマルジョンを指す。
【0049】
本願で使用される“配合機”又は“押出機”は、有利な実施態様として図4に示した装置又はThermoHaake社(ドイツ・カールスルーエ在)によって提供される一軸スクリュー押出機又は二軸スクリュー押出機を指す。配合機は、回分押出機又は連続押出機として設計することができる。実験室目的のために、配合機は、シリンダーとプランジャーのシステムとして設計することができ、その際、シリンダーは開放上部内径と開放下部内径とを有する。下部内径は上部内径より小さく、下部内径は約0.2mmないし約1.4mm、有利には約0.4mm〜約1.2mm、最も有利には下端で0.8mmである。両親媒性物質又は脂質材料の単独を、この開放端を通して、プランジャーに圧力を印加することによって押し出すことができる。また押出は、スクリュー押出機によって、1つ以上の穿孔を有する押出板を通じて実施することもできる。押出機は、ノズルを介して押出する前に押出物を押出室内で再循環できるように構築することができる。配合機は、0.2バール〜100バール、有利には0.5バール〜10バール、最も有利には1〜6バールの低圧で、かつ約5℃〜約100℃、有利には20℃〜約70℃、最も有利には約25℃〜約50℃の温度で運転する。いかなる寸法への配合機の規模拡大も可能である。
【0050】
本願で使用される“薬物”とは、製剤学的に認容性の薬理学的に活性な物質、生理学的に活性な物質及び/又は診断用の物質を指す。
【0051】
“高圧均質化”は、シリンダピストンポンプと均質化バルブ(homogenizing valve)とからなり、それを通じて液体又は分散液が高圧(100ないし2000バール)下に押し進められる装置を指す。それは、バルブ開口部を通過した直後の加圧された分散液の膨張により、極めて十分な剪断力がもたらされ、そして引き続き粒度の低下と分散度の増大がもたらされる高圧ホモジナイザの特性である。高圧ホモジナイザの例は、APV Gaulin社のMicron Lab 40(商標)型の高圧ホモジナイザ(APV−Gaulin、ドイツ・リューベック在)であり、それは前記の原理に従って作動する。確立された薄膜法により得られたMLV分散液を均質化することも、又は原液分散液を均質化することさえも可能である。
【0052】
“均質化”は、水性媒体中で/エマルジョンでは二相中でナノ粒子系の分散レベルがより高くなる物理工程を指す。一例は、高圧均質化である。
【0053】
本発明の文脈での“均質な”とは、コロイド状の粒子系内での種々の化合物の分子分布さえも意味する。分散液は、分散液の種々のアリコート中でのその化合物の一様な分布に関して均質な分散であるだけでなく、均質性は、単一のコロイド状粒子内で分子レベルでも達成される。コロイド状粒子が種々の分子単位から構成されるのであれば、粒子毎の量的組成は均質性に関連している。特に均質なリポソーム調製物は、脂質薄膜法によって製造された調製物と少なくとも同等のFRETにより測定された均質性を有する調製物を指す、すなわち相対FRETは、薄膜法で製造された調製物について観察されたFRETと比較して、少なくとも約80%、有利には約80〜約100%である。
【0054】
“脂質”とは、水中に不溶性の脂肪又は脂質を含む一般用語として慣用の範囲を指す。脂質は、脂肪、脂肪油、精油、蝋、ステロイド、ステロール、リン脂質、糖脂質、スルホ脂質、アミノ脂質、色素脂質及び脂肪酸を構成する。その用語は、天然産性脂質と合成脂質の両者ともを含む。本発明の関連で有利な脂質は、ステロイド及びステロール、特にコレステロール、リン脂質、例えばホスファチジル及びホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミン及びスフィンゴミエリンである。脂肪酸は、長さで約12〜24個の炭素の鎖を有してよく、その鎖は、6個までの二重結合を有してよく、かつ骨格に結合されており、そして該鎖は、異なっていてもよく(不斉)、又は脂肪酸は1個だけの脂肪酸鎖を有するだけでもよく、例えばリゾレシチンであってよい。混合された配合物も可能であり、それは、特に非カチオン性の脂質が天然源から得られる場合、例えばレシチン(ホスファチジルコリン)が、卵黄、ウシの心臓、脳又は肝臓又は大豆から精製される場合である。
【0055】
“リポソーム押出機”は、液体分散液、一般には液体リポソーム分散液を圧力下にフィルタ、例えば規定の孔径を有するポリカーボネートフィルタ又は滅菌濾過に適した細菌保持フィルタに押し通す装置を指す。
【0056】
本発明の利点は以下に示すとおりである。
【0057】
本発明による方法は迅速かつ簡単である。両親媒性成分を配合し、その後にコロイド状のナノ粒子を製造するのに使用することができる。本発明による方法は、有利には、両親媒性相中に有機媒体又は水性媒体又は界面活性剤を有さずに実施することができる。該方法は、大規模生産に容易に適合させることができる。
【0058】
本発明による製造方法は、非常に緩慢な条件を有する、例えば高められた温度が生じず、そしてまた成分の混合物の製造のために、超音波処理又は高い衝撃力を伴う剪断応力をも必要としない。このように、熱又は超音波応力の影響を受けやすい成分及び水及び/又は熱の存在下に加水分解傾向にある成分を処理することができる。
【0059】
例えばエタノール注入技術[Batzri, et al., Biochim et Biophys Acta 298: 1015-1019 (1973)を参照]のような慣用の製造技術に対して、本発明による方法により得られるコロイド状のナノ粒子は非常に高い混合の程度を示す。例えば、(凍結乾燥された並びに凍結乾燥されていない)脂質を水性媒体中に単に分散させることによって、プレリポソーム状の脂質分散液を製造する場合に、脂質混合の程度は、脂質が本願に記載される配合機により予備均質化された場合ほどまでは高くない。リポソームの製造前に配合機で脂質を予備均質化する工程により、単に機械的に脂質を水性媒体中に、例えば溶質を磁気撹拌機を用いて撹拌することによって分散させるのに対して、リポソームの二重層全体にわたって非常に高い程度の脂質混合がもたらされる。確立された製造技術は、その製造プロトコールで有機溶剤を伴う場合を除いて、リポソームの二重層全体に比較的高い程度の脂質混合をもたらさない。
【0060】
配合された材料は水性媒体中に分散させることができ、それにより、リポソームは自発的に形成し、そして場合により分級を行って、粒径及び/又は多分散性係数で表される規定の特性のナノ粒子/リポソームを得ることができる。特に非経口用途に設計されたリポソームについての更なる利点は、本発明による方法と引き続いての均質化工程とを用いることによって得られるリポソーム集合の明確に規定された粒度分布であり、それは、本発明による方法によって製造されたリポソームの多分散性係数が常に狭い粒度分布を示し、そうして非常に良好に特徴付けられるリポソーム集合であるためである。これらのリポソームが高品質なのは、引き続いての滅菌工程が、ベシクル粒度(Z平均)と多分散性係数とで表現されるリポソーム分散液の特性を変化させないからである。このように、本発明による配合機を用いて製造されたリポソームの高い品質は、連続的な滅菌工程によって低下しない。このように、新規の製造技術によって製造されたベシクルの容易に適合できる粒度と狭い粒度分布とは、リポソーム粒度に殆ど影響を及ぼすことができない慣用の製造技術と比較して明らかに有利である。
【0061】
特に有利なのは、活性剤を所望であれば製造プロトコールの開始時点で添加できるという選択肢であり、つまり化学薬品/薬物を、配合機に移す前に、リポソーム製造に使用される両親媒性成分へと添加混合できるということである。親油性の化学薬品/薬物の場合には、前記の開始時点での成分の混合は、カチオン性のナノ粒子、例えばリポソーム内での化学薬品/薬物の最適な分布を保証し、かつ第二の秤量工程を省くことができるので、全体の作業工程が簡易になる。所望であれば、薬物が負荷された脂質材料は中間体として貯蔵することができ、そしてこの中間体のアリコートを水和工程に供給することができる。
【0062】
本発明の方法は、広範な様々な異なるコロイド状のナノ粒子の製造を可能にし、それにより、生産処方と、最終生成物が意図される用途の特定の要求に簡単に適合させることができる。
【0063】
このように、本願に開示される新規の技術は、非常に高い程度まで混合され、かつ分子レベルでさえもかなり均質なコロイド状のナノ粒子を与える。
【0064】
有利には、本発明による方法を用いてリポソームを製造することができる。これらのリポソームは、約0.4未満、有利には約0.3未満、より有利には約0.25未満、最も有利には約0.2未満の多分散性係数(PI)を有することを特徴とする。
【0065】
本発明のリポソームは、アニオン性、カチオン性又は中性であってよい。有利なリポソームはカチオン性であり、そして該リポソームは、DOTAP、DODAP、DOTAP又はDODAPの類縁物質又は任意の他のカチオン性の脂質を、リポソームを形成する全脂質の少なくとも約30モル%、有利には少なくとも約40モル%、より有利には少なくとも約50モル%の量で含有する。本発明で使用される表現“カチオン性のリポソーム”は、室温で、有利には約0.05MのKCl溶液(室温で約7.5のpHを有する)中で正のゼータ電位を有することを特徴とするリポソームを指す。
【0066】
本発明の方法は、広範な様々な異なるコロイド状のナノ粒子の製造を可能にし、それにより、生産処方と、最終生成物が意図される用途の特定の要求に簡単に適合させることができる。またエマルジョン又はゲルを、開示した本発明による方法によって製造することもできる。
【0067】
医薬品用途の場合に、一般的に、活性剤は、コロイド状のナノ粒子内に負荷される。本発明の生成物は、医薬品用途に特に良好に適合されるが、これらはその用途に限定されず、脂質ベシクルのカプセル化と化合物及び材料の投与が認可され又は有用である任意の工業用途又は化粧品用途、造影研究、食品用途及び農業用途のために設計することもできる。それにより含まれるのは、健康補助食品、ビタミン製剤、酸化防止製剤(トコフェロール)及び化粧用配合物である。
【0068】
有利な一実施態様では、本発明は、活性剤を含まないコロイド状のナノ凝集体の製造を検討している。特に、“空のリポソーム”は、最近では、化粧品調剤並びに治療に適用されるリポソーム製剤の臨床試験におけるプラセボ材料で使用される。一般的に、活性剤は、リポソームの水性コア中か、又は脂質ベシクルの脂質二重層内に負荷される。
【0069】
このように、少なくとも1種の、場合により1種より多くの活性剤を含有するコロイド状のナノ凝集体を製造するため、特に活性剤をリポソーム中に負荷するためには様々な代替的な選択肢が存在する。広範な様々な代替的製造プロトコールにより、所望の生成物の要求を理想的に満たすことが可能となり、かつ製剤に関与する化学薬品の特定の(生理化学的な)特性を維持することが可能である。第一に、活性剤を製造方法の開始前に、該物質を(本発明による方法の工程a)において)使用が意図される両親媒性成分に添加することによって添加することが可能である。第二に、活性剤を、分散後に、従って配合機によって得られた材料の水和の後に添加することができ、形成されるコロイド状のナノ凝集体、例えばリポソームは水性溶質の取り込みを可能にする(本発明による方法の工程b)において)。1種以上の活性剤を、本発明による方法の工程b)の間に、例えばリポソーム中に負荷することは、工程a)で配合機を用いることによって製造される材料が、カプセル化のために所望される化合物を含有する好適な水性媒体、例えば水、水混和性溶剤、生理食塩水又は好適な緩衝液で水和されているか又は分散されている場合に達成することができる。
【0070】
更なる可能性としては、活性剤を、空のリポソームを製造した後に、間接的な負荷のような技術を用いて添加することもできる(例えば活性剤であるドキソルビシンについて確立されていない)。もう一つの方法は、脱水−再水和サイクルを使用し、これは、本発明により製造された空のリポソームに活性剤を負荷することさえも可能にし、前記活性剤は再水和過程の後に取り込まれる。同様の作用で、リポソームの逆方向負荷を凍結−融解サイクルを用いて実施できる:ここでは、化学薬品又は薬物を最初に製造されたリポソーム中に、所望の化学薬品又は薬物を含有する溶質の存在下でのリポソームの繰り返しの凍結と融解により取り込ませることができる。
【0071】
これらの方法は、説明を目的とするものであって、限定をするものではない。
【0072】
従って、これらの方法に、あらゆる所望の変更を行ってよい。温度感受性でもある材料/活性剤又は過酷な剪断力を用いて処理できない材料/活性剤は本発明による方法によって使用することができる。このように、本発明による製造方法により、使用される化学薬品の生理化学的特性による全ての要求を満たすことができる。所望の成分及び活性剤を、それらを配合機に添加する直前に、従って関与する材料についての如何なる温度応力をも回避して添加することができる。更に該製造方法は、配合機を用いることによって得られた材料の水和過程の間に所望の活性剤を添加することも可能にする。また、該製造方法は、例えば空のリポソームを本発明による方法で製造した後に、所望の活性剤を、間接的な負荷又は凍結−融解サイクルのような技術を使用して添加することも可能にする。
【0073】
まとめると、本発明による製造方法は、活性剤の添加が製造方法の間で妥当であるとされれば、所望の活性剤を添加することを可能にし、そして非常に大きな可能な程度にまで変更することもできる。
【0074】
コロイド状のナノ粒子を製造するのに配合機を使用することは知られていない。このように、本発明の更なる課題は、シリンダとプランジャを有し、その際、シリンダが約0.1mm〜約2mm、有利には約0.2mm〜約1.4mm、より有利には約0.4mm〜約1.2mm、最も有利には約0.8mmの開放内径をその下端に有する配合機を、コロイド状のナノ粒子の製造のために使用することである。
【0075】
1つ又は複数の本発明の観点に対して論じられた全ての有利な実施態様は、その他全ての観点にも関することに留意されたい。これは、特にカチオン性脂質の量と種類、中性及び/又はアニオン性脂質の量と種類並びに活性剤の量と種類を指している。
【0076】
以下の図面及び実施例は本発明を説明するものであるが、本願特許請求の範囲に記載の実施態様を制限するものではない。
【0077】
図の説明
図1:本発明による方法によって製造されるリポソームのベシクル粒度と粒度分布;
図2:FRETを示すリポソームの発光スペクトル
リポソームを、薄膜法と本発明による連続的分級工程を用いて製造した。リポソームは、FRETペアを用いて標識した。NBD−DOPE及びロダミン−DOPEを標識用の色素として使用した。本発明に従って脂質押出機を用いて製造されたDOTAP/DOPC/Rh−DOPE/NBD−DOPEリポソームを(A)に示す(実線)。脂質分散法によって製造されたDOTAP/DOPC/Rh−DOPE/NBD−DOPEリポソームを(B)に示す(点線)。
【0078】
図3:本発明による方法により製造されたリポソームのベシクル粒度及び分散性係数(PI);分級は100nmのPC膜を用いて実施した 脂質濃度:グルコース5%中10mM。
【0079】
図4:有利な配合機
該措置は、平滑であり、場合により内部が研磨され、高圧に耐えうるほど十分に堅牢な、不活性の滅菌可能な材料から構成されることが望ましい。特に適した材料は、鋼、セラミック又は他の高品質金属及びそれらの合金である。テフロンコートされた金属又は複合材料又は前記の特性を有する新規材料を使用することもできる。プランジャ上のOリングが脂質又は他の親油性又は両親媒性材料と溶液とにおいて透過性でない実施態様が好ましく、又はOリングは省くことができる。それというのも、それらの成分の処理は、十分な機械的機能を保持しながらも十分な小型化を可能にするからである。これは、本願で処理される材料(脂質、両親媒性分子)が一定の潤滑特性を有するという事実によって可能となる。押出機の幾何学形状は定めない。1=約0.2mmの穴;2=Oリング;3=型枠;4=受台(台);5=脂質を受ける容器;6=プランジャ
本発明の汎用性を説明するが、以下の実施例によって制限されるものではない。
【0080】
実施例
全ての実施例の温度は摂氏温度で示す。
【0081】
実施例1
80mgの卵−ホスファチジルコリン(卵−PC)
10mlのグルコース5%
粉末化された卵−PCを、室温で、図4に示される配合機を用いるが、如何なる溶剤又は可溶化剤をも用いずに3回(3サイクル)均質化させる。均質に混合されて得られた脂質材料を水性媒体(グルコース5%)中で撹拌することによって分散させ、そして約10分間にわたり水和させて膨潤させる。脂質分散液を、慣用のリポソーム押出機(例えばLipex 10ml サーモバレル押出機)中に移し、そして規定の孔径(100nmのNucleopore(登録商標)膜)を通して繰り返し濾過する。得られたリポソームは、直径±150nmを有し、そして粒度分布の幅(多分散性係数で表現する)は、0.1である。
【0082】
本実施例で記載されるリポソームの粒度(Z平均)及び多分散性(PI)の測定は、DLS(=光子相関分光法)によって、Zetamaster(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)を用いて実施した(図1を参照)。PCSデータの処理に用いたソフトウェアは、ヴァージョン1.4+(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)であった。
【0083】
実施例2
40mgのDOTAP(N−[1−(1−2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド)
40mgのDOPC(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン
10mlのグルコース5%
粉末化された脂質を容器中に秤量し、そして図4に示される配合機中に移す。その脂質を、室温で、本発明に関連する配合機/押出機を用いるが、如何なる溶剤又は可溶化剤をも用いずに、その材料を押出機中に10回通すことによって均質化させる。
【0084】
均質に混合されて得られた脂質材料を水性媒体(グルコース5%)中で撹拌することによって分散させ、そして約10分間にわたり水和させて膨潤させる。脂質分散液を、慣用のリポソーム押出機(例えばLipex 10ml サーモバレル押出機)中に移し、そして規定の孔径(100nmのNucleopore(登録商標)膜)を通して繰り返し濾過する。得られたリポソームは、直径±160nmを有し、そして粒度分布の幅(多分散性係数で表現する)は、0.05である。
【0085】
本実施例で記載されるリポソームの粒度(Z平均)及び多分散性(PI)の測定は、DLS(=光子相関分光法)によって、Zetamaster(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)を用いて実施した(図1を参照)。PCSデータの処理に用いたソフトウェアは、ヴァージョン1.4+(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)であった。
【0086】
多分散性係数(PI)<0.2を、狭い粒度分布についての境界として選択した。
【0087】
実施例3
8mgの卵−ホスファチジルコリン(卵−PC)
1000mlのグルコース5%
粉末化された粗製の卵−PCを、室温で、約20分間にわたり、MiniLab(登録商標)押出機(ThermoHaake社、ドイツ・カールスルーエ在)を用いるが、如何なる溶剤又は可溶化剤を用いずに再循環させる。均質に混合されて得られた脂質材料を水性媒体(グルコース5%)中で分散させ、そして約20分間にわたり水和させて膨潤させる。脂質分散液を、慣用のリポソーム押出機(例えばLipex 100ml 押出機)中に移し、そして規定の孔径(100nmのNucleopore(登録商標)膜)を通して繰り返し濾過する。得られたリポソームは、直径±150nmを有し、そして粒度分布の幅(多分散性係数で表現する)は、<0.15である。
【0088】
本実施例で記載されるリポソームの粒度(Z平均)及び多分散性(PI)の測定は、DLS(=光子相関分光法)によって、Zetamaster(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)を用いて実施した。PCSデータの処理に用いたソフトウェアは、ヴァージョン1.4+(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)であった。
【0089】
実施例3と4に従って製造されたリポソームの粒度及び多分散性係数については図3を参照のこと。
【0090】
実施例4
4gのDOTAP
4gのDOPC
1000mlのグルコース5%
粉末化された脂質を、室温で、約20分間にわたり、MiniLab(登録商標)押出機(ThermoHaake社、ドイツ・カールスルーエ在)、つまり本発明に関連する装置を用いるが、如何なる溶剤又は可溶化剤を用いずに再循環させる。
【0091】
均質に混合されて得られた脂質材料を水性媒体(グルコース5%)中で分散させ、そして約10分間にわたり水和させて膨潤させる。脂質分散液を、慣用のリポソーム押出機(例えばLipex 100ml 押出機)中に移し、そして規定の孔径(100nmのNucleopore(登録商標)膜)を通して繰り返し濾過する。得られたリポソームは、直径±170nmを有し、そして粒度分布の幅(多分散性係数で表現する)は、<0.25である。
【0092】
本実施例で記載されるリポソームの粒度(Z平均)及び多分散性(PI)の測定は、DLS(=光子相関分光法)によって、Zetamaster(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)を用いて実施した。PCSデータの処理に用いたソフトウェアは、ヴァージョン1.4+(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)であった。
【0093】
実施例3と4に従って製造されたリポソームの粒度及び多分散性係数については図3を参照のこと。
【0094】
実施例5
50モル%の、DOPE−ロダミンで標識されたDOTAP
50モル%の、DOPE−NBDで標識されたDOPC
適量のグルコース5%
粉末化された脂質を容器中に秤量し、そして本発明内に記載されかつ図4に示される配合機中に移す。脂質を、室温で、配合機を用いるが、如何なる溶剤又は可溶化剤を用いずに、その材料を押出機中に通すことによって均質化させる。
【0095】
均質に混合されて得られた脂質材料を水性媒体(グルコース5%)中で分散させ、そして約10分間にわたり水和させて膨潤させる。脂質分散液を、慣用のリポソーム押出機(例えばLipex 10ml サーモバレル押出機)中に移し、そして規定の孔径(100nmのNucleopore(登録商標)膜)を通して繰り返し濾過する。
【0096】
得られたリポソームは、直径±160nmを有し、そして粒度分布の幅(多分散性係数で表現する)は、0.15である。
【0097】
分子レベルでの脂質の混合の程度は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)技術を用いて監視することができる。
【0098】
本実施例に記載されるリポソームは、前記のFRET技術によって調査し、そしてこの研究で得られた蛍光強度は、本発明による新規の装置による均質化法のため、この製造工程を用いずに製造されたリポソームと比較して非常に高い脂質の混合の程度が示された。
【0099】
リポソームの発光スペクトルについては図2を参照のこと。
【0100】
本実施例で記載されるリポソームの粒度(Z平均)及び多分散性(PI)の測定は、DLS(=光子相関分光法)によって、Zetamaster(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)を用いて実施した。PCSデータの処理に用いたソフトウェアは、ヴァージョン1.4+(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)であった。
【0101】
実施例6
50モル%のDOTAP
50モル%のDOPC
10mlのグルコース5%
粉末化された脂質を容器中に秤量し、そして図4に示される配合機中に移す。その脂質を、室温で、本発明に関連する新規の装置を用いるが、如何なる溶剤又は可溶化剤をも用いずに、その材料を押出機中に3回通すことによって均質化させる。
【0102】
均質に混合されて得られた脂質材料を水性媒体(グルコース5%)中で分散させ、そして約10分間にわたり水和させて膨潤させる。脂質分散液を、慣用のリポソーム押出機(例えばLipex 10ml サーモバレル押出機)中に移し、そして規定の孔径(100nmのNucleopore(登録商標)膜)を通して繰り返し濾過する。得られたリポソームの直径及び粒度分布の幅(多分散性係数で表現される)を第1表に示す。
【0103】
得られたリポソーム分散液を直ちに、0.2μmの滅菌フィルタ(Durapore(登録商標)(PVDF)Millipore社(ドイツ・エシュボルン在))での滅菌濾過によって滅菌した。滅菌濾過の前と後でのリポソームについてのデータを第1表に示す。全ての調製物からPCS測定のために試料採取した。
【0104】
本実施例で記載されるリポソームの粒度(Z平均)及び多分散性(PI)の測定は、DLS(=光子相関分光法)によって、Zetamaster(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)を用いて実施した。PCSデータの処理に用いたソフトウェアは、ヴァージョン1.4+(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)であった。
【0105】
実施例6に従って製造されたリポソームについての安定性データ(貯蔵寿命6ヶ月)が第2表に示されている。
【0106】
第1表:リポソームを本願に開示される新規の技術に従って製造して得られたベシクル粒度と多分散性係数
【0107】
【表1】

【0108】
第2表:本願に開示される新規技術に従って製造されたリポソームの物理的安定性の研究
【0109】
【表2】

【0110】
実施例7
50モル%のDOTAP
50モル%のDOPC
適量のグルコース5%
リポソームは、以下の製造プロトコールに従って製造した:
バッチI):本発明による配合
粉末化された脂質を容器中に秤量し、そして図4に示される配合機中に移す。その脂質を、室温で、本発明に関連する新規の装置を用いるが、如何なる溶剤又は可溶化剤をも用いずに、その材料を押出機中に3回通すことによって均質化させる。
【0111】
均質に混合されて得られた脂質材料を水性媒体(グルコース5%)中で分散させ、そして約10分間にわたり水和させて膨潤させる。脂質分散液を、慣用のリポソーム押出機(例えばLipex 10ml サーモバレル押出機)中に移し、そして規定の孔径(100nmのNucleopore(登録商標)膜)を通して繰り返し濾過する。
【0112】
バッチII):高圧均質化
凍結乾燥された脂質を、グルコース5%中に、手動で振り混ぜることで分散させ、そして10分間浸潤させて水和させた。
【0113】
得られた原料脂質分散液を次いで、200バールの均質化圧力において、APV Gaulin社のMicron Lab 40型の高圧ホモジナイザ(APV−Gaulin社、ドイツ・リューベック在)を用いて10回均質化させた。
【0114】
バッチIII):エタノール注入技術
脂質をまず、無水エタノール中に溶解させて、約400mMの脂質濃度の澄明な脂質原液を得ることとする。
【0115】
次いで、溶質を、僅かに撹拌しながら、水性媒体(グルコース5%)中に1mlのHamilton社シリンジ(Hamilton社、スイス)を用いて注入した。次いで、得られた分散液を、100nmのポリカーボネート膜(Osmonics社、米国ミネトンカ在)を通して、Lipex 10ml サーモバレル押出機(Lipex社、カナダ・バンクーバー在)を用いて10回押し出した。
【0116】
バッチIV):超音波処理
超音波処理によりリポソームを調製するために、脂質をまずクロロホルム中に溶解させて、澄明な脂質溶液を得るものとする。
【0117】
次いで溶剤を回転蒸発器で除去すると、丸底フラスコの側面に脂質薄膜が形成する。フラスコを真空ポンプ中に1時間載置することにより、脂質膜を完全に乾燥させて、残留有機溶剤を除去した。乾燥脂質膜の水和を、その丸底フラスコに水性媒体(グルコース5%)を添加して、撹拌することによって達成した。
【0118】
得られたMLVの分散液を、Branson音波発生器を用いて10分間にわたり短いサイクルで超音波処理した。
【0119】
バッチV):薄膜法
脂質をまずクロロホルム中に溶解させて、澄明な脂質溶液を得ることとする。
【0120】
次いで溶剤を回転蒸発器で除去すると、丸底フラスコの側面に脂質薄膜が形成する。フラスコを真空ポンプ中に1時間載置することにより、脂質膜を完全に乾燥させて、残留有機溶剤を除去した。乾燥脂質膜の水和を、その丸底フラスコに水性媒体(グルコース5%)を添加して、撹拌することによって達成した。
【0121】
バッチVI):薄膜法+連続的押出
脂質をまずクロロホルム中に溶解させて、澄明な脂質溶液を得ることとする。
【0122】
次いで溶剤を回転蒸発器で除去すると、丸底フラスコの側面に脂質薄膜が形成する。フラスコを真空ポンプ中に1時間載置することにより、脂質膜を完全に乾燥させて、残留有機溶剤を除去した。乾燥脂質膜の水和を、その丸底フラスコに水性媒体(グルコース5%)を添加して、撹拌することによって達成した。最後に、リポソームを、100nmのポリカーボネート膜(Osmonics社、米国ミネトンカ在)を通して、Lipex 10ml サーモバレル押出機(Lipex社、カナダ・バンクーバー在)を用いて10回押し出した。
【0123】
本実施例で記載されるリポソームの粒度(Z平均)及び多分散性(PI)の測定は、DLS(=光子相関分光法)によって、Zetamaster(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)を用いて実施した。PCSデータの処理に用いたソフトウェアは、ヴァージョン1.4+(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)であった。多分散性係数(PI)<0.2を、狭い粒度分布についての境界として選択した。
【0124】
本実施例に従って製造されたリポソームの詳細なデータについては第3表を参照のこと。
【0125】
第3表:リポソームを慣用の製造技術と本願に開示される新規の技術に従って製造して得られたベシクル粒度と多分散性係数
【0126】
【表3】

【0127】
実施例8
50モル%のDOTAP
45モル%のDOPC
5モル%のロダミン−DOPE
適量のグルコース5%
粉末化された脂質を容器中に秤量し、そして図4に示される配合機中に移す。その脂質を、室温で、本発明に関連する新規の装置を用いるが、如何なる溶剤又は可溶化剤をも用いずに、その材料を押出機中に3回通すことによって均質化させる。
【0128】
均質に混合されて得られた脂質材料を水性媒体(グルコース5%)中で分散させ、そして約10分間にわたり水和させて膨潤させる。脂質分散液を、慣用のリポソーム押出機(例えばLipex 10ml サーモバレル押出機)中に移し、そして規定の孔径(100nmのNucleopore(登録商標)膜)を通して繰り返し濾過する。全ての調製物からPCS測定のために試料採取した。本実施例で記載されるリポソームの粒度(Z平均)及び多分散性(PI)の測定は、DLS(=光子相関分光法)によって、Zetamaster(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)を用いて実施した。PCSデータの処理に用いたソフトウェアは、ヴァージョン1.4+(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)であった。得られたリポソームは、直径±155nmを有し、そして粒度分布の幅(多分散性係数で表現する)は、±0.15である。
【0129】
実施例8に従って製造されたリポソームの脂質含量をHPLCを用いて分析した。負荷効率について得られたデータを第4表に示す。
【0130】
第4表:本願に開示される新規技術に従って製造されたリポソームについての負荷効率
【0131】
【表4】

値は二重反復試験の平均を表す
実施例9
50モル%の、DOPE−ロダミンで標識されたDOTAP
50モル%の、DOPE−NBDで標識されたDOPC
適量のグルコース5%
リポソームは、以下の製造プロトコールに従って製造した:
バッチa):本発明による配合
粉末化された脂質を容器中に秤量し、そして図4に示される配合機中に移す。その脂質を、室温で、本発明に関連する新規の装置を用いるが、如何なる溶剤又は可溶化剤をも用いずに、その材料を押出機中に3回通すことによって均質化させる。均質に混合されて得られた脂質材料を水性媒体(グルコース5%)中で分散させ、そして約10分間にわたり水和させて膨潤させる。脂質分散液を、慣用のリポソーム押出機(例えばLipex 10ml サーモバレル押出機)中に移し、そして規定の孔径(100nmのNucleopore(登録商標)膜)を通して繰り返し濾過する。
【0132】
バッチb):高圧均質化
凍結乾燥された脂質を、グルコース5%中に、手動で振り混ぜることで分散させ、そして10分間浸潤させて水和させた。得られた原料脂質分散液を次いで、200バールの均質化圧力において、APV Gaulin社のMicron Lab 40型の高圧ホモジナイザ(APV−Gaulin社、ドイツ・リューベック在)を用いて10回均質化させた。
【0133】
バッチc):エタノール注入技術
脂質をまず、無水エタノール中に溶解させて、約400mMの脂質濃度の澄明な脂質原液を得ることとする。次いで、溶質を、僅かに撹拌しながら、水性媒体(グルコース5%)中に1mlのHamilton社シリンジ(Hamilton社、スイス)を用いて注入した。次いで、得られた分散液を、100nmのポリカーボネート膜(Osmonics社、米国ミネトンカ在)を通して、Lipex 10ml サーモバレル押出機(Lipex社、カナダ・バンクーバー在)を用いて10回押し出した。
【0134】
バッチd):“脂質分散技術”+連続的押出
凍結乾燥された脂質を、グルコース5%中に、手動で振り混ぜることで分散させ、そして10分間浸潤させて水和させた。次いで、得られた原料脂質分散液を、100nmのポリカーボネート膜(Osmonics社、米国ミネトンカ在)を通して、Lipex 10ml サーモバレル押出機(Lipex社、カナダ・バンクーバー在)を用いて10回押し出した。
【0135】
バッチe):薄膜法+連続的押出
脂質をまずクロロホルム中に溶解させて、澄明な脂質溶液を得ることとする。
【0136】
次いで溶剤を回転蒸発器で除去すると、丸底フラスコの側面に脂質薄膜が形成する。フラスコを真空ポンプ中に1時間載置することにより、脂質膜を完全に乾燥させて、残留有機溶剤を除去した。乾燥脂質膜の水和を、その丸底フラスコに水性媒体(グルコース5%)を添加して、撹拌することによって達成した。最後に、リポソームを、100nmのポリカーボネート膜(Osmonics社、米国ミネトンカ在)を通して、Lipex 10ml サーモバレル押出機(Lipex社、カナダ・バンクーバー在)を用いて10回押し出した。
【0137】
本実施例に記載されるリポソームは、前記のFRET技術によって調査し、そしてこの研究で得られた蛍光強度は、本発明による新規の装置による均質化法のため、この製造工程を用いずに製造されたリポソームと比較して非常に高い脂質の混合の程度が示された(第5表を参照)。
【0138】
第5表:本発明に従って製造されたリポソーム及び慣用の製造技術に従って製造されたリポソームを調査することによって得られたFRETデータ
【0139】
【表5】

【0140】
本実施例で記載されるリポソームの粒度(Z平均)及び多分散性(PI)の測定は、DLS(=光子相関分光法)によって、Zetamaster(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)を用いて実施した。PCSデータの処理に用いたソフトウェアは、ヴァージョン1.4+(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)であった。
【0141】
多分散性係数(PI)<0.2を、狭い粒度分布についての境界として選択した。結果は第5表に示す。
【0142】
実施例10
種々のリポソーム製剤を以下に示す。
【0143】
粉末化された脂質及び活性成分のカンプトテシン−ラクトン(CPT−ラクトン)又はカンプトテシン−カルボキシレート(CPT−カルボキシレート)を容器中に秤量し、そして図4に示される配合機中に移す。その脂質を、室温で、本発明に関連する新規の装置を用いるが、如何なる溶剤又は可溶化剤をも用いずに、その材料を押出機中に3回通すことによって均質化させる。
【0144】
活性成分のカンプトテシン−ラクトン(CPT−ラクトン)又はカンプトテシン−カルボキシレート(CPT−カルボキシレート)を含む、均質に混合されて得られた脂質材料を、水性媒体(トレハロース10%)中に分散させ、そして約10分間にわたり水和させて膨潤させる。該脂質分散液を慣用のフィルタ押出機(例えばLipex 10ml サーモバレル押出機)中に移し、そして規定の孔径を有する膜(200nmのNucleopore(登録商標)膜)を通して、温度4℃で濾過する(3回)。全ての調製物からPCS測定のために試料採取した。
【0145】
本実施例で記載されるリポソームの粒度(Z平均)及び多分散性(PI)の測定は、DLS(=光子相関分光法)によって、Zetamaster HS 3000(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)を用いて実施した。PCSデータの処理に用いたソフトウェアは、ヴァージョン1.61(Malvern Instruments社、ドイツ・ヘーレンベルク在)であった。得られたリポソームの直径と粒度分布の幅(多分散性係数によって表す)を第6表に示す。実施例10に従って製造されたリポソームの脂質含量をHPLCを用いて分析した。負荷効率について得られたデータを第7表に示す。
【0146】
第6表:リポソームを本願に開示される新規の技術に従って製造して得られたベシクル粒度と多分散性係数
【0147】
【表6】

【0148】
第7表:CPTのHPLC定量からの結果
【0149】
【表7】

【0150】
実施例11
実施例10に従って製造されたリポソーム製剤
バッチa)
95.2モル%のDOTAP
4.8モル%のカンプトテシン−カルボキシレート
適量のトレハロース10%
最終濃度15mM
バッチb)
47.5モル%のDOTAP
47.5モル%のDOPC
5モル%のカンプトテシン−カルボキシレート
適量のトレハロース10%
最終濃度15mM
バッチc)
95.2モル%のDOTAP
4.8モル%のカンプトテシン−ラクトン
適量のトレハロース10%
最終濃度15mM
バッチd)
47.5モル%のDOTAP
47.5モル%のDOPC
5モル%のカンプトテシン−ラクトン
適量のトレハロース10%
最終濃度15mM
バッチe)
95.2モル%のDOTAP
4.8モル%のカンプトテシン−カルボキシレート
適量のトレハロース10%
最終濃度15mM
全てのバッチの製造は、実施例10の方法に従って実施した。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1は、本発明による方法によって製造されるリポソームのベシクル粒度と粒度分布を示す
【図2】図2は、FRETを示すリポソームの発光スペクトルを示す
【図3】図3は、本発明による方法により製造されたリポソームのベシクル粒度及び分散性係数(PI)を示す
【図4】図4は、有利な配合機を示す
【符号の説明】
【0152】
1 約0.2mmの穴、 2 Oリング、 3 型枠、 4 受台(台)、 5 脂質を受ける容器、 6 プランジャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
均質なコロイド状のナノ粒子の製造方法であって、
(a)少なくとも1種の両親媒性成分を含有する組成物を配合機によって押し出す工程
(b)工程a)で押し出された組成物を水性媒体中に分散させる工程
(c)場合により、工程b)の調製物を少なくとも1回均質化させる工程、及び/又は
(d)場合により、工程b)又はc)の調製物を滅菌濾過する工程
を含み、その際、場合により少なくとも1種の活性剤が、工程a)の組成物中に及び/又は工程b)の水性媒体中に存在する方法。
【請求項2】
コロイド状のナノ粒子が、ミセル、リポソーム、脂質ナノ粒子、有利にはリポソームから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
均質なコロイド状のナノ粒子が、薄膜法によって製造された参照コロイド状ナノ粒子の約100%〜約80%のFRETを有することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
両親媒性成分が、正、負又は中性の実効電荷を有する脂肪、油、蝋、ステロール又は脂質、例えばコレステロール又はリン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質、スフィンゴ脂質又はペグ化脂質から選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
両親媒性成分がカチオン性の脂質又は脂質の混合物、有利には少なくとも1種のカチオン性脂質と場合により中性脂質との混合物である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
コロイド状のナノ粒子が、約0.4未満、有利には約0.2未満の多分散性係数(PI)を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程a)を、有機溶剤及び/又は界面活性剤を用いずに実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程a)を、水性媒体を用いずに実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程a)での押出の間の温度が、約5℃〜約100℃、有利には約20℃〜約70℃、最も有利には約25℃〜約50℃である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程a)での押出の間の圧力が、約0.2バール〜約100バール、有利には約0.5バール〜約10バールである、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
配合機が回分押出機又は連続押出機である、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
活性剤が、生物学的な活性剤、例えば健康補助食品、ビタミン、化粧品、診断薬又は治療剤、有利には診断薬又は治療剤から選択される、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程a)の押し出された組成物を中間生成物として貯蔵する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
中間生成物を水和工程に供給する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
食事性組成物、化粧用組成物又は医薬品組成物の製造のための、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
シリンダとプランジャを有し、シリンダが約0.1mm〜約2mm、有利には約0.2mm〜約1.4mm、より有利には約0.4〜約1.2mm、最も有利には約0.8mmの開放内径をその下端に有する配合機を、コロイド状のナノ粒子の製造のために用いる使用。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか1項記載の方法によって得られるカチオン性のコロイド状のナノ粒子であって、分子レベルで均質であり、かつ有機溶剤及び/又は界面活性剤を含まないカチオン性のコロイド状のナノ粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−515278(P2007−515278A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546082(P2006−546082)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014684
【国際公開番号】WO2005/063377
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506131019)メディゲーネ アクチエンゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】MediGene AG
【住所又は居所原語表記】Lochhamer Strasse 11, D−82152 Planegg/Martinsried, Germany
【Fターム(参考)】