説明

配向膜塗布装置及び液晶表示パネル

【課題】往復塗布動作に起因する生産性の低下を防止することができる配向膜塗布装置を提供する。
【解決手段】配向膜塗布装置において、複数の吐出孔Nと、複数の吐出孔Nに連通して配向膜形成用の塗布液を収容する液室Eと、液室Eの容積を変える圧電素子4aとを有し、圧電素子4aにより液室Eの容積を変化させ、液室E内の塗布液を複数の吐出孔Nから液滴として吐出する塗布ヘッド4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布対象物に液滴を吐出して配向膜を塗布する配向膜塗布装置及び配向膜塗布装置を用いて配向膜が形成された液晶表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
配向膜塗布装置は、液晶表示装置等の表示装置を製造する場合、塗布対象物としての基板に配向膜を形成する際に用いられている(例えば、特許文献1参照)。この配向膜塗布装置は、基板に向けて配向膜形成用の塗布液を複数の吐出孔(ノズル)からそれぞれ液滴として吐出(噴射)する塗布ヘッドを備えている。配向膜塗布装置は、ステージ上の基板と塗布ヘッドとを相対移動させながら、その塗布ヘッドにより基板の塗布面に複数の液滴を順次着弾させ、塗布面上に配向膜を形成する。
【0003】
塗布ヘッドは、各吐出孔にそれぞれ対応する複数の圧電素子を備えている。圧電素子は吐出孔から液滴を吐出する駆動源となり、一つの吐出孔に対して一つの圧電素子が設けられている。圧電素子の大きさは、吐出孔から吐出される液滴の吐出量が所望量となるように設定されている。液滴の着弾ピッチの狭ピッチ化が要望されているが、圧電素子を所定サイズより小さくすることができないため、吐出孔のピッチを狭くしても、その狭ピッチの吐出孔に合わせて圧電素子を配置することが不可能である。このため、吐出孔のピッチが広く、一度の塗布動作で発生する塗り残し部分(基板に着弾した各液滴の間に発生する塗り残し部分)は、塗布ヘッドを何度か往復させる往復塗布動作により塗布される。
【特許文献1】特開平9−105937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のように塗布ヘッドを何度か往復させる往復塗布動作を行うと、配向膜の塗布時間が長くなるため、生産性が低下してしまう。また、吐出孔ピッチ間を埋めるための往復塗布動作のために塗布時間が長くなると、往復塗布動作の最初と最後とで、時間差に起因して液滴の乾燥の仕方に差が生じるので、これにより、配向膜に筋状のムラが発生し、製造される液晶表示パネルの品質が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、往復塗布動作に起因する生産性の低下を防止することができる配向膜塗布装置を提供することである。
【0006】
また、本発明の目的は、筋状のムラが抑制された品質の良い液晶表示パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態に係る特徴は、配向膜塗布装置において、複数の吐出孔と、複数の吐出孔に連通して配向膜形成用の塗布液を収容する液室と、液室の容積を変える圧電素子とを有し、圧電素子により液室の容積を変化させ、液室内の塗布液を複数の吐出孔から液滴として吐出する塗布ヘッドを備えることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、往復塗布動作に起因する生産性の低下を防止することができる配向膜塗布装置を提供することができる。
【0009】
また、筋状のムラが抑制された品質の良い液晶表示パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る配向膜塗布装置1は、塗布対象物としての基板Kが水平状態(図中、X軸方向とそれに直交するY軸方向に沿う状態)で載置されるステージ2と、そのステージ2を保持してY軸方向に移動させるY軸移動機構3と、ステージ2上の基板Kに向けて配向膜形成用の塗布液を液滴として吐出する複数の塗布ヘッド4と、それらの塗布ヘッド4を支持する支持部材5と、各部を制御する制御部6と、Y軸移動機構3及び支持部材5を支持する架台7とを備えている。
【0012】
ステージ2は、Y軸移動機構3上に積層され、Y軸方向に移動可能に設けられている。このステージ2はY軸移動機構3によりY軸方向に移動する。なお、ステージ2には、基板Kが自重により載置されるが、これに限るものではなく、例えば、その基板Kを保持するため、静電チャックや吸着チャック等の機構を設けるようにしてもよく、また、基板Kを支持する出没可能な複数の支持ピン等を設けるようにしてもよい。
【0013】
Y軸移動機構3は、ステージ2をY軸方向に案内して移動させる移動機構である。このY軸移動機構3は制御部6に電気的に接続されており、その駆動が制御部6により制御される。なお、Y軸移動機構3としては、例えば、リニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構やモータを駆動源とする送りネジ移動機構等を用いる。
【0014】
各塗布ヘッド4は、支持部材5に例えば直線状又は千鳥状に配設されている。これらの塗布ヘッド4は、図2乃至図4に示すように、複数の吐出孔N(例えば、九個の吐出孔N)を一つの群とする複数の吐出孔群Naと、それらの吐出孔群Naにそれぞれ連通して配向膜形成用の塗布液を収容する円筒形状の複数の液室Eと、それらの液室Eの容積をそれぞれ変える複数の圧電素子4aとをそれぞれ具備している。なお、図3では各圧電素子4aが収縮した状態であり、図4では各圧電素子4aが膨張した状態である。
【0015】
各吐出孔群Naは、塗布ヘッド4の吐出面Mに千鳥状(ジクザグ状)に配置されている(図2参照)。各吐出孔群Naにおける吐出孔NのピッチPは例えば0.1mm以下程度であり、隣接する各吐出孔群Naにおける離間距離LはピッチPと同じである。例えば、吐出孔Nの数は数十個から数百個程度であり、吐出孔Nの直径は数μmから数十μm程度である。また、一つの吐出孔群Naの各吐出孔Nの各々の大きさは、それらの吐出孔Nの各々の液滴の吐出量が同じになるように、例えば、各吐出孔Nの並びにおける内側から外側に向かって徐々に大きくなるように調整されている(図2参照)。これにより、基板Kに対して配向膜を均一に塗布することが可能になる。
【0016】
各液室Eは、供給された塗布液をそれぞれ収容する収容室であり、塗布ヘッド4の内部に設けられている(図3及び図4参照)。さらに、各液室Eは、それぞれ吐出孔群Naに対向するように位置付けられており、吐出孔群Na毎に千鳥状に配置されている。塗布ヘッド4の内部には、各液室Eにそれぞれ連通する複数の枝管路Eaやそれらの枝管路Eaに連通する主管路(図示せず)等が設けられている。この主管路には、配向膜形成用の塗布液が、その塗布液を貯留する外部タンクからチューブ等を介して供給される。この塗布液としては、例えばポリイミド(PI)溶液を用いる。
【0017】
各圧電素子4aは、その変形により各液室Eの容積をそれぞれ増減させる部材である(図3及び図4参照)。これらの圧電素子4aは収縮及び膨張可能に塗布ヘッド4の内部にそれぞれ設けられており、各液室Eの壁面の一部として機能する。さらに、各圧電素子4aはそれぞれ吐出孔群Naに対向するように位置付けられており、吐出孔群Na毎に千鳥状に配置されている(図2参照)。これらの圧電素子4aは制御部6に電気的に接続されており、その駆動が制御部6により制御される。一つの圧電素子4aの駆動により、一つの液室Eの容積が増減する(液室Eが拡大/復元する)。したがって、一つの圧電素子4aにより一つの吐出孔群Naの各吐出孔N(例えば九個の吐出孔N)から複数の液滴(例えば九滴)が同時に吐出されることになる。
【0018】
このような塗布ヘッド4は、各圧電素子4aに対する駆動電圧の印加に応じて、各圧電素子4aにより各液室Eの容積を変化させ、各液室E内の塗布液をそれらの液室Eにそれぞれ連通する各吐出孔Nから液滴として吐出する。なお、塗布液は外部タンクから主管路及び枝管路Eaを介して各液室E内に供給され、各液室Eは塗布液により満たされている。この状態で、圧電素子4aが駆動されると、駆動した圧電素子4aに対応する液室E内の塗布液がその液室Eに連通する各吐出孔Nから押し出され、液滴として吐出される。
【0019】
詳述すると、圧電素子4aは駆動電圧の印加により収縮し(容積増加動作)、この収縮に応じて液室E内の容積が増大し、液室E内に枝管路Eaから塗布液が引き込まれる(図3参照)。その後、電圧印加の解除により圧電素子4aが膨張(復元)し(容積減少動作)、液室E内の容積も減少して元に戻る(図4参照)。このとき、液室E内の塗布液が各吐出孔Nから押し出され、液滴として吐出される。すなわち、一つの圧電素子4aが一つの吐出孔群Naの各吐出孔N(例えば九個の吐出孔N)から同時に液滴を吐出させる。
【0020】
図1に戻り、支持部材5は、各塗布ヘッド4を支持する門型のコラムである。この支持部材5は、その延伸部がX軸方向に沿うように位置付けられ、その脚部が架台7の上面に固定されて架台7上に設けられている。なお、各塗布ヘッド4は延伸部の前面(図1中)に設けられている。
【0021】
制御部6は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、塗布に関する塗布情報や各種のプログラム等を記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を備えている。この制御部6は架台7内に設けられている(図1参照)。塗布情報は、ドットパターン等の所定の塗布パターン、塗布ヘッド4の吐出周波数及び基板Kの移動速度に関する情報等を含んでいる。このような制御部6は、塗布動作を行う場合、塗布情報に基づいてY軸移動機構3及び各塗布ヘッド4を制御する。
【0022】
次に、前述の配向膜塗布装置1が行う塗布動作について説明する。なお、配向膜塗布装置1の制御部6が各種のプログラムに基づいて塗布処理を実行する。
【0023】
制御部6は、塗布情報に基づいてY軸移動機構3を制御し、各塗布ヘッド4を基板Kの塗布面にそれぞれ対向する塗布開始位置に移動させる。その後、制御部6は、塗布情報に基づいて、Y軸移動機構3及び各塗布ヘッド4を制御し、ステージ2をY軸方向に移動させながら各塗布ヘッド4に塗布液を吐出させ、ステージ2上の基板Kの塗布面に各液滴を塗布する。このとき、各塗布ヘッド4は、Y軸方向に移動するステージ2上の基板Kの塗布面に向けて液滴を吐出し、X軸方向に並ぶドット列をY軸方向に順次塗布する。基板Kの塗布面に着弾した各液滴はそれぞれすぐに広がってつながり、膜となる。これにより、配向膜が基板Kの塗布面上に形成される。なお、各塗布ヘッド4は基板Kの移動方向に直交するX軸方向に基板Kの幅全体を網羅するように並べて設けられているので、基板Kの塗布面全体に一度で配向膜を形成することができる。
【0024】
この塗布動作において、塗布ヘッド4は、一つの圧電素子4aにより一つの吐出孔群Naの各吐出孔N(例えば、九個の吐出孔N)から同時に液滴を吐出する。したがって、一つの圧電素子4aが複数の吐出孔Nからそれぞれ液滴を吐出する駆動源となるので、各圧電素子4aの配置に依存せずに吐出孔NのピッチPを例えば0.1mm以下程度に狭くすることが可能になる。これにより、各吐出孔N間のピッチは十分に狭ピッチ化され、基板Kに着弾した各液滴の間に塗り残し部分が発生しないので、塗布ヘッド4を何度か往復させる往復塗布動作を行う必要がなくなり、塗布時間を短縮することができる。
【0025】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、複数の吐出孔Nと、それらの吐出孔Nに連通して配向膜形成用の塗布液を収容する液室Eと、その液室Eの容積を変える圧電素子4aとを有し、その圧電素子4aにより液室Eの容積を変化させ、液室E内の塗布液を各吐出孔Nから液滴として吐出する塗布ヘッド4を設けることによって、一つの圧電素子4aにより複数の吐出孔Nからそれぞれ液滴が吐出される。したがって、一つの圧電素子4aが複数の吐出孔Nからそれぞれ液滴を吐出する駆動源となることから、各圧電素子4aの配置に依存せずに吐出孔NのピッチPを狭くすることが可能になる。これにより、塗布ヘッド4は十分に狭ピッチ化され、基板Kに着弾した各液滴の間に塗り残し部分が発生せず、塗布ヘッド4を何度か往復させる往復塗布動作を行う必要がなくなるので、塗布時間を短縮することが可能になり、往復塗布動作に起因する生産性の低下を防止することができる。加えて、基板Kの塗布面全体に一度で配向膜を形成することが可能になるので、往復塗布動作を行う場合に比べ、液滴の乾燥状態等の塗布状態が一様となり、塗布時間差に起因する筋ムラ等の発生が抑制され、均一な配向膜を得ることができる。これにより、製造される液晶表示パネルの品質を向上させることができる。
【0026】
また、一つの吐出孔群Naの各吐出孔Nの各々の大きさは、それらの吐出孔Nの各々の液滴の吐出量が同じになるように調整されていることから、基板Kに対して配向膜を均一に塗布することができる。
【0027】
さらに、一つの吐出孔群Naの各吐出孔Nの各々の大きさは、各吐出孔Nの並びにおける内側から外側に向かって徐々に大きくなるように調整されていることから、圧電素子4aの変形による吐出力が伝わり易い液室Eの内側の吐出孔Nと圧電素子4aの変形による吐出力が伝わり難い液室Eの外壁側に位置する吐出孔Nとで同じ吐出量を得ることが可能になるので、吐出孔Nの大きさ調整により容易に各吐出孔Nからの吐出量を同じにすることができる。
【0028】
(他の実施の形態)
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0029】
例えば、前述の実施の形態においては、塗布ヘッド4に対して基板Kを移動させるようにしているが、これに限るものではなく、基板Kに対して塗布ヘッド4を移動させるようにしてもよく、基板Kと塗布ヘッド4とを相対移動させるようにすればよい。
【0030】
また、前述の実施の形態においては、基板Kの移動方向に直交するX軸方向に基板Kの幅全体を網羅するように複数の塗布ヘッド4を並べて用いているが、これに限るものではなく、一つの塗布ヘッド4を用いるようにしてもよく、あるいはX軸方向に基板Kの幅全体より短く複数の塗布ヘッド4を並べて用いるようにしてもよい。これらの場合には、基板Kの塗布面全体に複数回に分けて塗布液を塗布する制御を行う。このような場合でも、本発明の実施の形態に係る塗布ヘッド4を用いることによって、従来に比べ、往復塗布動作の回数を減少させることができる。
【0031】
最後に、前述の実施の形態においては、各種の数値を挙げているが、それらの数値は例示であり、限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の一形態に係る配向膜塗布装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す配向膜塗布装置が備える塗布ヘッドの吐出面を示す平面図である。
【図3】図1に示す配向膜塗布装置が備える塗布ヘッド内部の概略構成を示す模式図である。
【図4】図1に示す配向膜塗布装置が備える塗布ヘッド内部の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1 配向膜塗布装置
4 塗布ヘッド
4a 圧電素子
E 液室
N 吐出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出孔と、前記複数の吐出孔に連通して配向膜形成用の塗布液を収容する液室と、前記液室の容積を変える圧電素子とを有し、前記圧電素子により前記液室の容積を変化させ、前記液室内の前記塗布液を前記複数の吐出孔から液滴として吐出する塗布ヘッドを備えることを特徴とする配向膜塗布装置。
【請求項2】
前記複数の吐出孔の各々の大きさは、前記複数の吐出孔の各々の前記液滴の吐出量が同じになるように調整されていることを特徴とする請求項1記載の配向膜塗布装置。
【請求項3】
前記複数の吐出孔の各々の大きさは、前記複数の吐出孔の並びにおける内側から外側に向かって徐々に大きくなるように調整されていることを特徴とする請求項2記載の配向膜塗布装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の配向膜塗布装置を用いて、配向膜が形成されてなることを特徴とする液晶表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−139560(P2009−139560A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314814(P2007−314814)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】