説明

配管加熱用のヒータ装置

【課題】直管部や曲管部、T字状部、十字状部などのいずれの突起部を有する配管に対しても容易に装着可能であって、当該配管と、弁類などの突起部分とをともに加温および保温することのできるヒータ装置を提供する。
【解決手段】径方向のあらゆる方向に突起部を有する配管に装着可能なヒータ装置であって、帯状に伸びる可撓性の断熱材および該断熱材の上面に設けられた面状発熱体を備えるヒータ本体と、前記ヒータ本体の長手方向に沿ってその一部の長さ領域に設けられた固定手段と、からなり、前記配管のうち、前記突起形成領域に対しては、ヒータ本体を長手方向に折り返して、前記径方向に直交する方向の両側より面状発熱体を挟着させ、前記突起部の非形成領域に対しては、ヒータ本体の前記長さ領域を面状発熱体が内側となるよう幅方向に湾曲させた状態で周着させ、前記固定手段により両者を互いに固定することを特徴とするヒータ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却される配管を加熱および保温するヒータ装置に関し、特に配管途中に弁類が設けられた場合など、径方向に突起部が突出した配管に対しても装着することのできるヒータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や化学製品等の製造工程においては、様々なプロセスガスやエッチングガスがガス容器より配管を通じて連続的に供給される。ガス容器は高圧圧縮ガスや高圧液化ガス(以下、高圧ガスという。)のように数MPa〜数十MPa程度の圧力で圧縮された状態、または低蒸気圧液化ガス(以下、低圧液化ガスという。)の状態で貯蔵されている。これに対して供給されるガスは高圧ガスの場合は数kgf/cm(1MPa)以下の圧力へ、低圧液化ガスの場合でも真空〜数kgf/cmへ減圧調整して供給することが一般的である。このため、高圧圧縮ガスについては開閉弁を開き、低圧液化ガスについてはガス容器を加温してその気相圧力を一定以上に保持して、また高圧液化ガスについても必要に応じてガス容器を加温して気相圧力を高く維持しつつ、導出されたガスを圧力調整器(減圧弁)によって減圧調整してユーザに供給している。
【0003】
図6(a)は、ガス容器100から配管110(110a,110b,110c)を通じて導出したガスをユーザに減圧供給するガス供給ユニット150の側面図であり、同図(b)はその正面図である。ガス供給ユニット150には一般に、配管110内のガス圧を検知して図示しない表示装置に出力する圧力発振器(PIA)120(120a,120b)や、ガス圧が所定の設定圧力以上となった場合にガスを系外に排出するリリーフ弁122(122a,122b)(排気ラインは図示せず)、緊急遮断用の遮断弁124、減圧ガスの逆流を防止する逆止弁125、圧力調整器126など(以下、これらを「弁類」と略記することがある。)が設けられ、各種ガスを減圧し、安全に供給する構成となっている。
【0004】
またガス容器100は容器元弁101と安全弁102を備え、保持具103に緊縛されて収納ボックス104に固定されることが通常である。容器元弁101を操作してガス容器100を開栓し、圧力調整器126の二次側圧力をユーザ供給圧に設定し、遮断弁124を開放することにより,ガス容器100内のガスは所望の圧力に減圧されてユーザに供給される。
【0005】
リリーフ弁122、遮断弁124、逆止弁125、圧力調整器126、および任意で圧力発振器120は、それぞれ一枚のパネル130に固定されてパネルユニット140が構成され、複数のパネル固定部132によって収納ボックス104に着脱可能に取り付けられることが通常である。これら弁類同士の間は短尺に分割された配管110bで互いに連通され、パネルユニット140とガス容器100とは長尺の配管110aで、パネルユニット140とユーザとの間は他の長尺の配管(供給管)110cでそれぞれ結ばれる。
【0006】
このように、弁類およびこれらを連通する配管110bをパネルユニット140として一体化することで、収納ボックス104に対する取付作業や交換作業の作業性を向上し、また収納ボックス104の省スペース化を実現している。このため弁類は、配管110bを嵌合させることができるよう太径に形成され、さらに配管110bに対してパネル130側(下方側)が設置部として突出し、パネル反対側にあたる上方側にバルブハンドルやツマミなどの調整部、または端子部などが突出して設けられている。すなわち弁類は、配管110bの径方向のあらゆる方向に突起部が突出し、特に上下に対向して両外側に大きな突起部を有する構成を為している。ここで、ガス容器100から減圧供給されるガスが半導体製造に用いられるプロセスガスやエッチングガスなどの場合、人体に対する毒性の強いものが多いことから、その供給に際しては収納ボックス104を密閉系により構成し、弁類の開閉は扉106を通じておこなうことが求められる。したがってかかる場合、収納ボックス104内の排気を容易にする観点からも特に収納ボックス104の省スペース化が求められている。
【0007】
また配管110aは、図6(a)に示すように、パネル130との固定部134からガス容器100の口金105に至るまでの経路を逆U字状または螺旋状(図示せず)などに迂回させることで、ガス容器100の口金105の設置高さが数十mm程度のバラつきをもって上下した場合も、配管110aを撓み変形させることによって固定部134と口金105とを好適に接続できるようになっている。
【0008】
以上より配管110は、径方向への突起部のない曲管状の配管110aと、弁類のボディやハンドル等、配管径方向のあらゆる方向に突起部が突出形成された、パネルユニット140にあたる突起形成領域を構成する配管110bと、減圧ガスが流通する任意形状の配管110cとからなることが通常である。
【0009】
ここで一般的なガス供給ユニット150においては、圧力調整器126の高圧側(一次側)と低圧側(二次側)とでは、数倍から数十倍の圧力差が設定されるため、これを通過するガスには激しい断熱膨張(断熱可逆膨張)およびジュール・トムソン膨張(断熱不可逆膨張)が発生する。断熱膨張は等エントロピー変化であり、理想気体を含むすべてのガスについて必ず温度の低下をもたらすものであって、圧力調整器126を通過するガスの流速が速い場合は断熱膨張に近い膨張現象がおこる。一方、圧力調整器126を通過するガスの流速が遅い場合はジュール・トムソン膨張に近い膨張現象となる。ジュール・トムソン膨張は等エンタルピー変化であり、理想気体ではガスの温度は変化しないが、実在ガスではジュール・トムソン係数の正負によってガスの温度が上昇または降下する。これをジュール・トムソン効果という。圧力調整器126を用いた一般的なガスの減圧供給に際しては、両膨張の中間的な状態が発生しているといえる。
【0010】
ジュール・トムソン係数はガスの種別のほか、温度や圧力の関数として表されるものであるが、半導体製造工程におけるプロセスガスとして代表的なシラン(SiH),三フッ化窒素(NF),フッ化珪素(SiF)もしくはフロン116(C)、または空気の主成分である窒素(N),酸素(O)もしくはアルゴン(Ar)などの多くのガスについては、常温の高圧圧縮状態においてはいずれもジュール・トムソン係数が正であり、すなわちジュール・トムソン膨張によってガスの温度は低下する傾向にある。
【0011】
すなわちこれらのガスについては、圧力調整器126を介して減圧供給を行った場合、断熱膨張およびジュール・トムソン膨張により相乗的にガスの温度が降下し、ガス容器100から圧力調整器126に至るまでの弁類、および配管110a,110bの熱が急激に奪われることとなる。
【0012】
弁類や配管が冷却されると、液化ガスについては弁類や配管の内部にて凝集して再液化してしまい、ユーザへの所望の供給圧力が得られなくなる。また高圧ガスの場合についても、圧力調整器126が雰囲気の露点温度以下に冷却されると、その可動部であるスプリングやダイヤフラムが結露して動作が妨げられ、さらに摂氏零度以下に冷却された状態が長時間継続された場合、可動部の凍結や本体の応力腐食割れが生じ、所望の減圧が不可能になるため問題となる。
なお、圧力調整器126によって減圧された後のガスについては、さらなる急激な減圧を受けることは一般になく、雰囲気に加温されてユーザに至ることが通常であるため、圧力調整器126の二次側に接続される配管110bの一部および配管110c、圧力発振器120b、リリーフ弁122b、逆止弁125などについては過剰な冷却が問題となる虞は低いといえる。
【0013】
上記問題に対し、従来、減圧ガスの断熱膨張やジュール・トムソン膨張によって過剰な冷却を被る圧力調整器126や配管110a,110bについては、温水や電気ヒータなどの加温手段を設けてこれらを常時加温することにより、弁類や配管の結露や凍結を防止しながらガス供給を行っている。かかる加温手段として、例えば下記特許文献1には、直管や曲管に螺旋状に巻き付けて装着することのできる帯状のテープヒータの発明が記載されている。また下記特許文献2には、曲管やT字管に装着してこれらを加温/保温することのできる被覆加熱装置の発明が記載されている。
【0014】
【特許文献1】特開2004−303580号公報
【特許文献2】特開2004−164862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし上記特許文献1に記載のテープヒータを、曲管や、圧力調整器などの弁類が突出した複雑形状の配管に螺旋状に巻き付けるには相当のスキルと施工時間を要するため、作業人員によって配管の保温温度にばらつきが生じやすく、またガス供給を開始するまでに多くの作業時間を要するという問題がある。
【0016】
一方、上記特許文献2に記載の被覆加熱装置は、曲管やT字管に対して、その外周面の展開形状に合わせてあらかじめ形成された柔軟体を被着して、これを面ファスナなどの固定手段で固定する方式を採ることから、作業者のスキルによらず容易かつ確実に配管を被覆することができる。
しかしかかる被覆加熱装置の場合、直管や曲管、T字管に対してはその外周面を被覆して加温/保温することはできるものの、弁類のように配管から径方向のあらゆる方向に突起部が突出した突起形成領域に対しては、その外周面の展開形状を描くことが容易でないことから断熱性の被覆本体を得ることが困難である。またかかる装置の場合、T字管の分岐箇所や曲管の湾曲箇所が予め決定されていなければその展開形状を定めることができず、すなわち被覆本体を作製することができないという問題がある。
【0017】
また配管の結露や凍結を防止するという上記課題は、上記に例示したガスの減圧供給をおこなうガス供給ユニット150(図6を参照)に限って生じるものではなく、例えば冬季に凍結して破損する虞のある水道管やガス管などについても同様に生じるものといえる。
【0018】
本発明は上記各課題を解決するためになされたものであり、分岐のない直管部や曲管部、径方向の一方に突起の設けられたT字状部、および弁類のように径方向のあらゆる方向に突起の設けられた配管に対しても容易に装着可能であって、当該配管と、弁類などの突起部分とをともに加温および保温することのできるヒータ装置を提供することを目的とする。本発明のその他の目的については以下の説明より明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明にかかるヒータ装置は、直管部や曲管部に対しては帯状のヒータ本体を幅方向に湾曲させて筒状または樋状を形成して配管の周囲に接合し、T字状や十字状などあらゆる方向に突起部の設けられた突起形成領域については突起部を両側から挟み込むようにヒータ本体を接合させるという二つの態様の被着方式を同時に実現することにより、上記様々な形状の配管に容易に装着してこれを加温/保温するという技術思想に基づいてなされたものである。
【0020】
すなわち本発明は、径方向のあらゆる方向に突起部が突出して設けられた突起形成領域を長手方向の一部に有する配管に装着して、該配管を加熱および保温することのできるヒータ装置であって、帯状に伸びる可撓性の断熱材および該断熱材の上面に設けられた面状発熱体を備えるヒータ本体と、前記ヒータ本体の長手方向に沿ってその一部の長さ領域に設けられた固定手段と、からなり、前記配管のうち、前記突起形成領域に対しては、ヒータ本体を長手方向に折り返して、前記径方向に直交する方向の両側より面状発熱体を挟着させ、前記突起部の非形成領域に対しては、ヒータ本体の前記長さ領域を面状発熱体が内側となるよう幅方向に湾曲させた状態で周着させ、前記固定手段により両者を互いに固定することを特徴とするヒータ装置を要旨とする。
【0021】
また本発明にかかるヒータ装置は、より具体的な態様として、前記配管の突起形成領域と、これに挟着したヒータ本体とを互いに固定する固定帯をさらに備えてもよい。
【0022】
またヒータ本体の長手方向の一端側を前記長さ領域とする本発明にかかるヒータ装置には、より具体的な態様として、ヒータ本体の前記一端側に、長手方向と交差する方向に形成された断熱性の延出部と、湾曲させた前記延出部を配管に周着させ、両者を互いに固定する延出部固定手段とを設けてもよい。
【0023】
さらに本発明にかかるヒータ装置は、より具体的な態様として、突起部を加熱するヒータ、および突起部を被覆する断熱性のカバーを備えてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかるヒータ装置によれば、面状発熱体を配管の外表面に装着し、その外側を断熱材で被覆する構成であることから、種々の理由により冷却される配管を加温および保温してその結露や凍結を防止することができる。この際、帯状のヒータ本体を幅方向に湾曲させて筒状や樋状を形成して配管の直管部や曲管部に周着する本発明ではヒータ本体の長さは配管の長さに相当したものとなるため、長尺のテープヒータを配管に螺旋状に巻き付ける従来の方式と比べて装着長さが短くなり、作業性に優れる。
また本発明のヒータ装置によれば、配管の突起形成領域に対してはヒータ本体を長手方向に折り返して両側から面状発熱体によって挟み込むことができるため、T字状のみならず、弁類などのようにあらゆる方向に突起部が形成された配管に対してもこれを装着することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて具体的に説明する。
【0026】
<ヒータ装置の構成について>
図1は本発明のヒータ装置10の展開状態を示す平面図であり、(a)は面状発熱体30による加熱側である表面側、(b)は裏面側を示している。図1(c)は固定帯11である。また図1(a)のIIa−IIa断面図を図2(a)に、同じくIIb−IIb断面図を図2(b)にそれぞれ示す。
【0027】
ヒータ装置10は、帯状に伸びる可撓性の断熱材20と、その一方の面に設けられた面状発熱体30と、両者を包む保護ジャケット40とからなるヒータ本体12とを備え、またヒータ本体12には、その長手方向に沿って一部の長さ領域に固定手段としての面ファスナ50(50a,50b)が設けられている。
【0028】
全体に帯状をなすヒータ本体12は、幅方向の一側に面ファスナ50a(フック側またはループ側のいずれでもよい)が設けられた上記一部の長さ領域(図1において左側にあたる。以下、「周着領域」ということがある。)では、配管の外周面を包み込んでこれを被覆し、当該面ファスナ50aと、保護ジャケット40の裏面に設けられた面ファスナ50b(ループ側またはフック側であって面ファスナ50aと係合する)を係合させることで、かかる周着状態を固定することができる。すなわち周着領域16では、面状発熱体30が内側となるようにヒータ本体12を幅方向に湾曲させ、その長さ寸法と同等までの長さの配管の周囲にこれを装着することで当該配管を加温することができる。
【0029】
一方、ヒータ本体12の長手方向のうち、面ファスナ50aの設けられていない他の長さ領域(図1において右側にあたる。以下、「挟着領域」ということがある。)では、折り返し線14にてヒータ本体12を半分または略半分の長さに短く折り返して、配管を両側から挟み込むことができる。すなわち挟着領域18では、その長さ寸法の半分までの長さの配管の側面にこれを装着して、当該配管を加温することができる。このように本発明のヒータ装置10は、配管の外周面をヒータ本体12で筒状または樋状に包み込む周着領域16と、ヒータ本体12を短く折り返して配管を両側から挟み込む挟着領域18の二つの装着態様をひとつのヒータ本体12で行うことを特徴とするものである。
【0030】
したがって、ヒータ装置10が装着される配管に、図6に示すように径方向の一方向、対向する二方向、またはあらゆる方向に突起部が突出して設けられている場合でも、当該径方向と折り返し線14の伸びる方向とを一致させるなど、突起部の突出方向と配管の軸方向とで張られる平面と平行にヒータ本体12を当接させることで、突起部の個数や寸法によらず、面状発熱体30によって配管を側面から加温することができる。弁類などのように配管径方向の全方向に突出する突起部に対して本発明のヒータ装置10を装着する場合には、配管からの突出高さの比較的小さい方向(図6に示すパネルユニット140では、弁類のボディのうちパネル130に対する左右両幅方向)を選択してヒータ本体12を当接させることができる。
【0031】
断熱材20には、可撓性と断熱性、および耐熱性の観点から、発泡シリコンやフェノールフォームなどの発泡プラスチック、またはグラスウールやロックウールなどの鉱物系繊維交絡体を好適に用いることができる。特に発泡シリコンシートは柔軟で可撓性に優れ、断熱性と耐熱性に富み良好である。これらの材料を、配管110(図6を参照)の周長に相当する幅寸法の帯状に成形し、必要に応じて耐熱性のシートで被覆して用いることができる。断熱材20は断熱性材料をシート状に成形してそのまま用いてもよいが、耐熱性のカバーに収容して用いてもよい。
【0032】
面状発熱体30には、通電により発熱する電熱線32を備え、またこれを湾曲させた状態で配管110の外表面に被着させることができるよう柔軟性を備えたフィルムヒータを用いることができる。電熱線32の伸びる方向は特に限定されるものではなく、図示のようにヒータ装置10の長手方向に沿って伸びる直線状のほか、波状等に設けてもよい。
また面状発熱体30には、過熱防止用のサーモスイッチ34と、給電用のリード線36が設けられており、PI制御やPID制御などの公知の温度制御方式によって、配管110の外表面の加熱温度を例えば露点温度以上などの所定の値に設定することができる。
また面状発熱体30が断熱材20によって十分に被覆され、配管110に装着されたヒータ装置10から電熱線32の熱が放散されることを防ぐため、面状発熱体30の幅寸法を断熱材20の幅寸法と同等またはこれよりも幅狭にするとよい。
【0033】
面状発熱体30は断熱材20の上面に設けられるが、両者は直接接合されていても、熱伝導性のフィラーが介装されていてもよい。また帯状の断熱材20の上面とは、周面を除く一方面の意味であり、重力方向に対する上下を意味しないことは当業者に明らかであろう。
【0034】
ヒータ本体12の周着領域16を、突起部のない配管110に周着させて両者を固定する固定手段については、上記に例示のようにフック側とループ側とを着脱可能に係合することのできる面ファスナ50を用いることが好ましい。面ファスナによる場合、着脱が容易であるばかりでなく、配管110長手方向に沿って係合部が連続するため、ヒータ装置10の保温性が良好になるという利点がある。ただし具体的な固定手段は面ファスナ50に限られるものではなく、バンドや紐などの公知の固定手段を採用してもよい。
また本実施形態の面ファスナ50aは、帯状のヒータ本体12より幅方向に突出するとともに、長手方向には多数の切れ目51が設けられており、図6に示すように配管110aの湾曲形状に対応してヒータ本体12をこれに密着させて装着させることができる。
【0035】
断熱材20と面状発熱体30を包む保護ジャケット40は必要に応じて用いられ、電熱線32から配管110への熱伝達を阻害しないよう薄地であって、かつ耐熱性と保温性に優れるよう鉱物性繊維の不織布または織布などを好適に用いることができる。
【0036】
またヒータ装置10には、長手方向のうち周着領域16側の端部17に、ヒータ本体12の長手方向と交差する方向に延出部60が形成されている。図1に例示するヒータ装置10では、ヒータ本体12の長手方向と、延出部60の延出方向とは直交している。これにより、後述するように直角な屈曲部をもつ配管に対しても、延出部60と周着領域16とによって隙間なくヒータ装置10を装着し、これを加温することができる。また延出部60はシート状の断熱材20とこれを包む保護ジャケット40と、保護ジャケット40の表面に設けられた面ファスナ61(61a,61b)とからなり、延出部60を配管に周着させた状態で固定することができる。なお、面状発熱体30を延出部60に至るまでL字状に形成して、配管の上記屈曲部を加温可能としてもよい。
【0037】
図1(c)にその展開状態の平面図を示す固定帯11は、シート状の断熱材20(図示せず)を保護ジャケット40で被覆して帯状とし、その長手方向の両端に面ファスナ50を設けたものである。固定帯11は挟着領域18を配管110に装着した際にその保温性を高めつつ両者を固定するために用いられるバンドである。具体的な装着態様は後述する。
【0038】
<ヒータ装置の装着方法について>
以下、ヒータ装置10を配管に装着する態様について図面を用いて具体的に説明する。
本発明のヒータ装置10は、径方向の一方側または対向する両外側に突起部が突出して設けられた配管に装着可能であることを特徴とする。ヒータ装置10の装着される配管は特に限定されるものではなく、図6を用いて上に説明したガス供給ユニット150を構成する配管110を例にとり、以下説明する。
【0039】
図3は、配管110を通じてガス容器100から導出されたガスを減圧供給するガス供給ユニット150に対して、図1にその展開状態を示すヒータ装置10のうち周着領域16を湾曲させて装着する際の状態を模式的に示す斜視図であり(ただし、安全弁102は記載せず)、図4はガス供給ユニット150の配管110にヒータ装置10を装着した後の状態を模式的に示す斜視図である。また図5(a)〜(c)は、それぞれ図4のVa−Va断面図、Vb−Vb断面図、およびVc−Vc断面図である。なお図示の都合上、図6と図4とではガス容器100から突出する口金105の向きを相違させているが、本発明のヒータ装置10は高い柔軟性によりいずれの態様のガス供給ユニット150に対しても装着することが可能である。
【0040】
上述のように、ガス容器100に充填されたガスをユーザに減圧供給する際には、圧力調整器126にて生じる断熱膨張とジュール・トムソン膨張の作用により減圧ガスは一般に激しい冷却を受ける。したがって圧力調整器126からさかのぼって口金105に至るまでのガスの存在する領域ではいずれもガスが低温に冷却され、前述した圧力調整器126の可動部の凍結および弁類の応力腐食割れの懸念や、特に低圧液化ガスや高圧液化ガスに対しガス容器のみを加温してガス供給している場合においては配管内温度の低下により、減圧前のガスが配管内で直ちに再凝集する虞がある。したがって本実施形態のヒータ装置10は、ヒータ装置10の口金105から、配管110a,110b、圧力発振器120、リリーフ弁122、遮断弁124および圧力調整器126までを被覆してこれを同時に加熱することができるよう構成されている。
【0041】
(突起非形成領域に対する装着について)
ヒータ本体12の周着領域16は、配管110のうち突起部の形成されていない領域(突起部の非形成領域)にあたる配管110aに対し、その長手方向を配管110aの軸方向に一致させ、面状発熱体30(同図では図示せず)が内側となるよう細長い管状に湾曲されて配管110aの外周面に接合される。配管110aに接合された周着領域16は面ファスナ50によって固定され、ヒータ本体12と配管110aとが装着される。ヒータ装置10のかかる装着状態を配管110aの長手方向に直交する断面(以下、横断面)で切った断面図が図5(a)にあたる。
【0042】
図5(a)に示すように、周着領域16では、配管110aの外周に保護ジャケット40を介して面状発熱体30が対面してこれを熱伝達により加温する。面状発熱体30はその外周側を断熱材20で被覆されており、面状発熱体30の発した熱は専ら配管110aに与えられる。断熱材20はさらに断熱性の保護ジャケット40で外周側を覆われており、面状発熱体30の発熱が雰囲気に散逸することを防いでいる。また保護ジャケット40には面ファスナ50aと面ファスナ50bとが設けられており、両者を係合することでヒータ本体12は配管110aに密着し、面状発熱体30から配管110aへの熱伝達性を良好に保っている。
【0043】
(突起形成領域に対する装着について)
図3および図4で、圧力発振器120、リリーフ弁122、遮断弁124、圧力調整器126などの弁類が配管の径方向の一方側または対向する両外側に突出して設けられた突起形成領域にあたる配管110bに対しては、ヒータ本体12の挟着領域18を折り返し線14にて矢印で示すように長手方向に半分に折り返して、前記径方向とは直交する方向の両側より面状発熱体30を挟着させてこれを加温する。ヒータ装置10のかかる装着状態の横断面図が図5(b)にあたる。
【0044】
図5(b)に示すように、挟着領域18では、配管110bの外周に保護ジャケット40を介して面状発熱体30が対向して設けられ、配管110bおよび弁類(例えばリリーフ弁122)を熱伝達によって加温する。面状発熱体30が断熱材20および保護ジャケット40によって外周側を被覆されてその発熱の散逸が防止されていることは周着領域16に関する図5(a)と同様である。
【0045】
ただし挟着領域18では、特に配管110bの対向する両側に突起部が形成されている場合は周着領域16の如くヒータ本体12によってその外表面を周回状に被覆することはできないため、配管110bや弁類には、ヒータ本体12で加温されない非装着部112が残存する。したがって図4に例示のように、配管110bより突出する弁類や固定部134(図6を参照)の間には、固定帯11(図1(c)を参照)を周着させて保温性を高めつつヒータ本体12を配管110bに固定し、またヒータ本体12と配管110bとの密着性を向上するとよい。
【0046】
なお、固定帯11は、周着領域16に対してもヒータ装置10の外側から周着させてさらにヒータ本体12と配管110aとの密着性を向上させてもよい。図4では、計6箇所にわたり配管110aに固定帯11を周着させている。
【0047】
また配管110bより径方向に突出する弁類の操作部や設置部などの突起部については、図4に示すようにブロックヒータ等の他の加熱手段を設け、また断熱性のカバーを装着することで個別に加温/保温してもよい。特に圧力調整器126などの弁類はヒータ装置10で被覆されない上方側のハンドルや下方側の設置部などの非装着部112(図5(b)を参照)の表面積が大きく放熱性が高いことから、例えば設置部の側面などにヒータ80を装着し、またハンドルやボディの露出部や突出部を保温カバー90で被覆して弁類の全体を加温/保温することが好ましいといえる。
【0048】
(延出部に対する装着について)
図3に示すように、配管110はガス容器100の口金105に装着するため、口金105の突出方向と逆向きとなるよう屈曲部113が曲げ形成されている。かかる屈曲部113に対しては、ヒータ本体12の延出部60を周着することが可能である。ヒータ装置10のかかる装着状態の横断面図が図5(c)にあたる。
【0049】
図5(c)に示すように、延出部60では、配管110の屈曲部113の外周に保護ジャケット40および断熱材20が被覆され、面ファスナ61a,61bによって互いに密着して固定されている。屈曲部113は配管110からの熱伝導により所定の温度に加温され、これを延出部60によって保温している。
【0050】
なお、本実施形態のヒータ本体12は、長手方向の一端側(端部17)に周着領域16が形成され、他端側に挟着領域18が形成されたものであるが、本発明のヒータ装置10についてはこれに限られるものではなく、例えば帯状のヒータ本体12の長手方向の両端に挟着領域18を形成し、これに挟まれる中間部に周着領域16および面ファスナ50などの固定手段を設けてもよい。これにより、配管110の両端に弁類などの突起部が形成され、中間部に分岐のない直管部や曲管部を備える場合に、これに好適に装着可能となる。
【0051】
また延出部60についても、本実施形態のヒータ本体12のように周着領域16の形成された片側の端部17のみに設ける態様に限られず、例えばヒータ本体12の長手方向の中間部よりこれと交差する方向に延出して形成してもよい。
【0052】
また本実施形態のヒータ装置10が装着されるガス供給ユニット150は、上述のように配管110のうち突起部の非形成領域にあたる配管110aが逆U字状に形成されて撓み変形可能とし、ガス容器100の種別による高さのばらつきに順応できるよう構成されているが、このほか、配管110aが螺旋状に形成された場合については、ヒータ装置10を当該螺旋に沿って装着してもよく、また螺旋状部分を包含するよう、当該螺旋状部分の全体を覆うようにヒータ本体12を装着してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のヒータ装置10を装着して好適に加温および保温することのできる配管は、上に例示したガス供給ユニット150を構成する配管110(図6を参照)に限られるものではなく、雰囲気で冷却されて凍結する虞のある上下水道管や、冷却ガスを温度調整して供給するガス供給装置なども広くその対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のヒータ装置10の展開状態を示す平面図であり、(a)はその表面側を示し、(b)はその裏面側を示している。また(c)は固定帯11の平面図である。
【図2】(a)は図1(a)のIIa−IIa断面図であり、(b)は図1(a)のIIb−IIb断面図である。
【図3】ガス供給ユニット150に対してヒータ装置10を装着する前の状態を模式的に示す斜視図である。
【図4】ガス供給ユニット150に対してヒータ装置10を装着した後の状態を模式的に示す斜視図である。
【図5】(a)は図4のVa−Va断面図、(b)は同じくVb−Vb断面図、(c)は同じくVc−Vc断面図である。
【図6】(a)はガス供給ユニット150の構成を示す側面図であり、(b)はその正面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 ヒータ装置
11 固定帯
12 ヒータ本体
14 折り返し線
16 周着領域
18 挟着領域
20 断熱材
30 面状発熱体
32 電熱線
40 保護ジャケット
50,61 面ファスナ
60 延出部
100 ガス容器
105 口金
110 配管
113 屈曲部
126 圧力調整

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向のあらゆる方向に突起部が突出して設けられた突起形成領域を長手方向の一部に有する配管に装着して、該配管を加熱および保温することのできるヒータ装置であって、
帯状に伸びる可撓性の断熱材および該断熱材の一方の面に設けられた面状発熱体を備えるヒータ本体と、前記ヒータ本体の長手方向に沿ってその一部の長さ領域に設けられた固定手段と、からなり、
前記配管のうち、
前記突起形成領域に対しては、ヒータ本体を長手方向に折り返して、前記径方向に直交する方向の両側より面状発熱体を挟着させ、
前記突起部の非形成領域に対しては、ヒータ本体の前記長さ領域を面状発熱体が内側となるよう幅方向に湾曲させた状態で周着させ、前記固定手段により両者を互いに固定することを特徴とするヒータ装置。
【請求項2】
前記配管の突起形成領域と、これに挟着したヒータ本体とを互いに固定する固定帯を備える請求項1に記載のヒータ装置。
【請求項3】
ヒータ本体の長手方向の一端側を前記長さ領域とする請求項1または2に記載のヒータ装置であって、
ヒータ本体の前記一端側には、
長手方向と交差する方向に形成された断熱性の延出部と、
湾曲させた前記延出部を配管に周着させ、両者を互いに固定する延出部固定手段と、が設けられていることを特徴とするヒータ装置。
【請求項4】
突起部を加熱するヒータ、および突起部を被覆する断熱性のカバーを備える請求項1から3のいずれかに記載のヒータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−164115(P2008−164115A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356006(P2006−356006)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【出願人】(593027967)エヌエスエンジニアリング株式会社 (14)
【Fターム(参考)】