説明

配管機器と管路の変位調整機構

【課題】 軸直角方向のスライド機構部が管軸直角方向の変位吸収量に制限されることなく自由に設定することができるとともに、軸直角方向の変位を吸収した状態であっても、管軸推力に対する固定ボルトに傾きが生じないため、球面座金を必要としない。
【解決手段】 筒状部11とフランジ部12とを有し筒状部11を配管機器2の内部に装着した軸線方向に移動可能な軸方向移動管体6と、この軸方向移動管体6のフランジ部12に環状空間7を形成するように配置された環状リテーナ8と、一端側に環状係合部16および他端側にフランジ部17を有し環状係合部16を軸方向移動管体6と環状リテーナ8との間に形成された環状空間7に装着した軸方向に直交する方向に移動可能な軸直交方向移動管体9とを有し、配管機器側に位置する配管機器2と管路側に位置する配管4との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管軸方向および管軸に直交する方向の調整を可能にする配管機器と管路の変位調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブ、ポンプ、流量計等の配管機器を管路に接続する場合、配管機器と管とのフランジ接合作業において、対向するフランジ部のフランジ面の位置合わせ(管軸方向の位置合わせ、管軸方向に直交する方向の位置合わせ、フランジ面の平行度の合わせ、フランジボルト孔ピッチ円周方向位置合わせ)が重要である。
【0003】
配管機器の管路への接続は、配管機器のフランジ部と管路のフランジ部をそれぞれのフランジボルト孔が整合するように配置し、配管機器のフランジ部と管路のフランジ部を整合したフランジボルト孔を通るボルトおよびナットの締結により行なうようにしている。
【0004】
しかし、上記のように両者のフランジ部同士を直接接続する構造であると、フランジ面間寸法の割付けに高精度が要求されることをはじめ、メンテナンス等の際に配管機器を取り外すことが極めて困難になることなどから、通常配管機器側と管路側との接続部にフランジ面間調整継手が用いられている。
【0005】
従来から用いられているフランジ面間調整継手は、配管機器の接続部に設けられているフランジ部と外管のフランジ部とがボルトで結合され、管路の端部に溶接により接続された内管が外管内に挿入され、外管の端部に係着されたリング状のハウジング内のゴムリング等のシール材が内管の外周面に密着して外管と内管との嵌合隙間のシールを図るように構成されている。
【0006】
上記従来のフランジ面間調整継手では、管軸方向の位置合わせに対しては外管と内管との嵌合深さにより有効に対応することができるが、配管機器側と管路側との軸心のずれに対しては対応することが極めて困難となり、このずれの大きさによっては接続不能となることがあった。
【0007】
そこで、本発明者は、配管機器のフランジ部と管路のフランジ部のフランジ面の位置合わせの作業性を改良するために、配管機器のフランジ部と管路のフランジ部との間に配置される変位調整用継手を開発した。
【0008】
上記変位調整用継手は、配管機器側に設けられたフランジ部と管路端に位置する内管側のフランジ部とにそれぞれ相対応して所要数のボルト挿通孔を穿設し、これらフランジ部のボルト挿通孔にボルトを遊嵌状態に挿通し、配管機器側のフランジ部と内管側のフランジ部との間に内管の外周面に密接するシール材を有する外管を挟在させ、ルト挿通孔の外面側に球面座を介在させてナットで締結する構成である(特願平2004−109962号参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記変位調整用継手は、管軸方向の位置合わせに加え、軸心のずれや曲がりに対しても適応して接続を可能とするが、管軸直角方向の変位吸収量が制限されてしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、上記した点を考慮してなされたもので、管軸直角方向の変位吸収量に制限されることなく、管軸直角方向の調整が可能な配管機器と管路の変位調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の配管機器と管路の変位調整機構は、筒状部とフランジ部とを有し筒状部を配管機器の内部に装着した軸線方向に移動可能な軸方向移動管体と、この軸方向移動管体のフランジ部に環状空間を形成するように配置された環状リテーナと、一端側に環状係合部および他端側にフランジ部を有し環状係合部を軸方向移動管体と環状リテーナとの間に形成された環状空間に装着した軸方向に直交する方向に移動可能な軸直交方向移動管体とから構成される。
【0012】
するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軸直角方向のスライド機構部が管軸直角方向の変位吸収量に制限されることなく自由に設定することができるとともに、軸直角方向の変位を吸収した状態であっても、管軸推力に対する固定ボルトに傾きが生じないため、球面座金を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による配管機器と管路の変位調整機構の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1において、符号1は本発明による配管機器と管路の変位調整機構を示し、この配管機器と管路の変位調整機構1は、配管機器2のフランジ部3と管路4の配管機器2に最も近いフランジ部5との間に配置される。
【0015】
上記配管機器と管路の変位調整機構1は、配管機器2の内部に軸線方向に移動可能に配置された軸方向移動管体6と、この軸方向移動管体6に環状空間7を形成するように配置された環状リテーナ8と、軸方向移動管体6と環状リテーナ8との間に形成された環状空間7に軸方向に直交する方向に移動可能に配置された軸直交方向移動管体9とから構成される。
【0016】
上記軸方向移動管体6は、配管機器2のフランジ部3に形成された口部10に軸線方向に移動可能に装着される筒状部11とこの筒状部11の配管機器2と反対側端に形成されたフランジ部12とを有する。配管機器2のフランジ部3の口部10の内面10aと筒状部11の外面11aとの接合面には、特殊ゴムで成形したシールリング13が配置されている。このシールリング13は、配管機器2のフランジ部3の口部10の内面10aに形成された環状溝14に装着されていることが好ましい。
【0017】
上記環状リテーナ8は、断面略L形であって、半径方向内方を開口した環状空間7を形成するように軸方向移動管体6のフランジ部12の配管機器2と反対側端のフランジ面12aに周方向に間隔を置いた複数のボルト15を介して取り付けられている。
【0018】
上記軸直交方向移動管体9は、一端側に半径方向外方に突設された環状係合部16および他端側に形成されたフランジ部17とを有する。軸直交方向移動管体9に形成された環状係合部16は、軸方向移動管体6と環状リテーナ8との間に形成された環状空間7に密に係合しかつ環状空間7に対して半径方向に移動できる寸法である。軸方向移動管体6のフランジ部12の配管機器2と反対側端のフランジ面12aと軸直交方向移動管体9に形成された環状係合部16との間にOリング18が配置されている。このOリング18は、軸直交方向移動管体9に形成された環状係合部16に形成された環状溝19に装着されていることが好ましい。
【0019】
また、配管機器2のフランジ部3には周方向に間隔を置いた複数の管軸推力に対する固定ボルト20が配置されている。各固定ボルト20は、フランジ部3に対する突出長さがねじ部20aのフランジ部3の両側に位置するナット21,21により調整される。
【0020】
なお、図1において、符号22は軸直交方向移動管体9のフランジ部17と管路4の端部フランジ部5とを結合するためのボルトナット手段である。
【0021】
つぎに、本発明による配管機器と管路の変位調整機構1の作用を説明する。
上記配管機器と管路の変位調整機構1は、軸方向移動管体6のフランジ部12に軸直交方向移動管体9の環状係合部16が整合するように、軸方向移動管体6と軸直交方向移動管体9を配置し、軸方向移動管体6のフランジ部12に環状リテーナ8を軸直交方向移動管体9の環状係合部16を囲むように配置し、環状リテーナ8をボルト15を介して軸方向移動管体6のフランジ部12に取り付けることで組み立てられる。この場合、軸方向移動管体6のフランジ部12と軸直交方向移動管体9の環状係合部16との間にOリング18が配置される。このOリング18は、軸方向移動管体6のフランジ部12と軸直交方向移動管体9の環状係合部16との接合面を液密にシールする。
【0022】
また、上記配管機器と管路の変位調整機構1は、軸方向移動管体6の筒状部11を配管機器2のフランジ部3の口部10に軸線方向に移動可能に装着することで配管機器2に取り付けられる。この場合、配管機器2のフランジ部3の口部10と筒状部11との接合面に特殊ゴム製シールリング13が配置される。この特殊ゴム製シールリング13は、軸方向移動管体6の筒状部11と配管機器2のフランジ部3の口部10との接合面を液密にシールする。
【0023】
上記配管機器と管路の変位調整機構1は、配管機器2のフランジ部3と管路4の配管機器2に最も近いフランジ部5との間に配置され、軸方向移動管体6の筒状部11を配管機器2のフランジ部3の口部10に軸線方向に移動可能に装着し、配管機器2のフランジ部3に設けた管軸推力に対する固定ボルト20を軸方向移動管体6のフランジ部12に当接させることで配管機器2に対する管軸方向の移動量が調節される。
【0024】
また、上記配管機器と管路の変位調整機構1は、軸直交方向移動管体9のフランジ部17に設けたボルト孔を管路4の配管機器2に最も近いフランジ部5に設けたボルト孔に整合し、整合したボルト孔にボルトナット手段22を通し締結することで管路4に結合される。
【0025】
本発明の配管機器と管路の変位調整機構1は、軸方向移動管体6が配管機器2に対して管軸方向に移動可能で、軸直交方向移動管体9が軸方向移動管体6に対して管軸直交方向に移動可能であるから、管軸直交方向の変位を吸収した状態であっても、管軸推力に対する固定ボルト20に傾きが生じないので、従来の装置のような球面座金が不要となる。
【0026】
また、本発明の配管機器と管路の変位調整機構1は、管軸推力に対する固定機構部に規格フランジを使用しないため、外径の小型化および管軸直交方向の対する固定ボルトの本数削減が可能になり、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による配管機器と管路の変位調整機構の一部を断面で示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 配管機器と管路の変位調整機構
2 配管機器
6 軸方向移動管体
7 環状空間
8 環状リテーナ
9 軸直交方向移動管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管機器側に位置する配管機器と管路側に位置する配管との間に配置された配管機器と管路の変位調整機構において、前記変位調整機構は、筒状部とフランジ部とを有し筒状部を配管機器の内部に装着した軸線方向に移動可能な軸方向移動管体と、この軸方向移動管体のフランジ部に環状空間を形成するように配置された環状リテーナと、一端側に環状係合部および他端側にフランジ部を有し環状係合部を軸方向移動管体と環状リテーナとの間に形成された環状空間に装着した軸方向に直交する方向に移動可能な軸直交方向移動管体とを有することを特徴とする配管機器と管路の変位調整機構。
【請求項2】
配管機器のフランジ部内周面と軸方向移動管体の筒状部外周面との間に環状シールリングを配置し、軸方向移動管体のフランジ部と軸直交方向移動管体の環状係合部の間にOリングを配置したことを特徴とする請求項1記載の配管機器と管路の変位調整機構。
【請求項3】
配管機器フランジ部と軸方向移動管体フランジ部との間に管軸推力固定ボルトを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の配管機器と管路の変位調整機構。

【図1】
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【公開番号】特開2006−226319(P2006−226319A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37687(P2005−37687)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000230526)日本ヴィクトリック株式会社 (39)
【Fターム(参考)】