説明

配管閉止治具、及び耐圧試験方法

【課題】構造が単純であり、また配管への取り付け作業性に優れる耐圧試験用治具を提供する。
【解決手段】配管70を閉止する配管閉止治具10であって、前記配管70に設けられたフランジ80のうちシール面側となる一方側の端面81に対向する第一フレーム21と、前記フランジ80の他方側の端面85に対向する第二フレーム25と、前記第一フレーム21に設けられた螺子孔23Aに螺合し前記第一フレーム21の板面に直交する直交方向Lに変位する螺子軸30と、前記螺子軸30に取り付けられ、前記フランジ80の一方側の端面81の中央部に開口する配管出口71を閉止する閉止部50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧試験に使用される配管閉止治具とそれを用いた耐圧試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種プラントの機器、配管などの耐圧性や気密性の試験に使用する配管閉止治具に次のものがある(特許文献1)。特許文献1の治具は、配管の管端フランジ部に密閉用フランジ部材をガスケットを介してボルト止めするが、フランジ部材中心部に貫通しナットで止着された連結軸は管内に挿入され、その軸先端には押さえ板が螺着される。連結軸にはこれを外装するよう円筒材が配置されフランジ部材内面に溶接にて立設してあり、円筒材の押さえ板側にはピストン部材がOリングを介在させて摺動可能に外嵌挿され、また、円筒材に溶接されたストッパーでフランジ部材側への移動を規制してあり、ピストン部材の外周面にはパッキンが外嵌挿してあり、かかるピストン部材は円筒材外周面と配管内面との間に形成されるシリンダ内に嵌入される。押さえ板には外周端面にカラーが周設してあり、カラー端面は前記パッキン端面に当接するよう位置決めしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−140035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の治具は、構造が複雑である。また、配管への取り付けはボルト止めであり、作業性が悪い。というのも、ボルト止めは通常1つの治具で4箇所程度行う必要があるため、耐圧試験の実施にあたり、耐圧試験用治具の使用個数が多い場合には、ボルト止め作業を膨大な回数行う必要があるからである。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、構造が単純であり、また配管への取り付け作業性に優れる耐圧試験用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、配管を閉止する配管閉止治具であって、前記配管に設けられたフランジのうちガスケットの装着面側となる一方側の端面に対向する第一フレームと、前記フランジの他方側の端面に対向する第二フレームと、前記第一フレームに取り付けられた螺子部に螺合し、前記第一フレームの板面に直交する直交方向に変位する螺子軸と、前記螺子軸に取り付けられ、前記フランジの一方側の端面の中央部に開口する配管出口を閉止する閉止部とを備えたところに特徴を有する。
【0006】
尚、「配管」は流体を通過させる管状をなすものであって、相手側とフランジ結合できるものであればよく、管軸の両側にフランジを形成した単体の配管以外にも、タンクなどの容器に形成された入口配管や、出口配管を含むものとする。
【0007】
この発明では、配管のフランジに配管用閉止治具を装着した後、ハンドル等を操作して螺子軸を回転させ、フランジの端面に向けて閉止部を締めてゆくと、やがて、フランジの端面に閉止部が密着して配管出口を閉止する。そして、配管出口が閉止された状態では、閉止部が第二フレームと共にフランジを両側から挟持した状態になるので、配管用閉止治具は配管のフランジに自ずと固定される。このように、本配管閉止治具は、1回の螺子込み操作により、配管閉止治具をフランジに固定できるから、配管への組み付け作業性がよい。
【0008】
この発明の実施態様として、以下の構成が好ましい。
・前記閉止部を、前記螺子軸に対して球状継手を介して取り付ける構造にする。このようにすることで、フランジの端面に閉止部が片当たりした状態で締め付けられることがなく、フランジに密着させた状態で閉止部を締め付けられる。そのため、フランジの配管出口を閉止部により確実に閉止できる。
【0009】
・前記閉止部に、前記配管に対して流体を出入させる流体通路を形成する。このようにすれば、流体通路を通じて配管に流体を出入させることが可能となる。
【0010】
本発明は、プラントに使用される配管の耐圧試験方法であって、前記配管の一方側の端部を請求項1又は請求項2に記載の配管閉止治具により閉止する閉止ステップと、前記配管に他方側の端部から不活性ガスを耐圧試験圧力になるまで充填し、その後、充填した不活性ガスのガス圧を計測する計測ステップと、を含むところに特徴を有する。
【0011】
本発明は、プラントに使用される配管の耐圧試験方法であって、前記配管の一方側の端部を請求項1又は請求項2に記載の配管閉止治具により閉止すると共に、前記配管の他方側の端部を請求項3に記載の配管閉止治具により閉止する閉止ステップと、前記他方側を閉止する配管閉止治具の前記流体通路から前記配管内へ不活性ガスを耐圧試験圧力になるまで充填し、その後、充填した不活性ガスのガス圧を計測する計測ステップと、を含むところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配管閉止治具は、従来に比べて構造が単純であり、更に配管への組み付け作業性がよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1における配管閉止治具の斜視図
【図2】配管閉止治具の平面図
【図3】配管のフランジに配管閉止治具を組み付けた状態を示す斜視図
【図4】配管閉止治具の分解斜視図
【図5】配管閉止治具の断面図
【図6】Oリングの取り付け構造を示す断面図
【図7】螺子軸に対する閉止部の連結構造を示す拡大図
【図8】配管のフランジに対する配管閉止治具の組み付け作業の手順を示す断面図
【図9】同じく配管のフランジに対する配管閉止治具の組み付け作業の手順を示す断面図
【図10】同じく配管のフランジに対する配管閉止治具の組み付け作業の手順を示す断面図
【図11】ガスタービンの側面図
【図12】マニホールドの耐圧試験方法を説明する図
【図13】燃料配管の耐圧試験方法を説明する図
【図14】実施形態2における配管閉止治具の正面図
【図15】配管閉止治具の平面図
【図16】配管閉止治具の側面図
【図17】治具フレームの斜視図
【図18】配管閉止治具の断面図(図15のA−A線断面図)
【図19】実施形態3における配管閉止治具の正面図
【図20】配管閉止治具の断面図
【図21】配管を配管閉止治具により閉止した状態を示す断面図
【図22】閉止部に接続金具を装着した状態を示す断面図
【図23】耐圧試験方法の説明図
【図24】耐圧試験方法の説明図
【図25】実施形態4におけるタンクの正面図(出入口配管を配管閉止治具で閉止した状態を示す)
【図26】タンクの断面図(図25のB−B線断面図)
【図27】入口配管を配管閉止治具で閉止した状態を示す断面図(図26の拡大図)
【図28】出口配管を配管閉止治具で閉止した状態を示す断面図(図26の拡大図)
【図29】配管閉止治具の変形例を示す断面図(リングプレートを廃止した例)
【図30】配管閉止治具の変形例を示す断面図(リングプレートを廃止した例)
【図31】配管閉止治具の変形例を示す正面図(接続金具をコック付きにした例)
【図32】配管閉止治具の変形例を示す側面図(接続金具をコック付きにした例)
【図33】配管閉止治具の変形例を示す断面図(接続金具をコック付きにした例)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図13によって説明する。
1.配管閉止治具10の説明
配管閉止治具10は、治具フレーム20と、螺子軸30と、ハンドル40と、閉止部50とを備えてなる。治具フレーム20は、金属製の第一フレーム21と、金属製の第二フレーム25とを備える。
【0015】
第一フレーム21は、配管70のフランジ80の外形と同じ大きさの円板から外縁部をカットしたものであり、半円よりやや大きな円形状(一部切欠円形状)をしている。そして円の中心部には、螺子部であるボス部23が溶接により固定されている。このボス部23の中央部には、螺子孔23Aが形成されており、そこに後述する螺子軸30が螺合している。
【0016】
第二フレーム25は、配管70のフランジ80の外形と同じ大きさの円板から外縁部と中央部をカットしたものであり、半円よりやや大きな円弧形状(一部切欠円弧形状)をしている。
【0017】
第一フレーム21と第二フレーム25は、図1に示すように切欠縁21A、25Aを前側に揃えた状態で、周方向の3箇所を連結板27により連結している。より具体的に言えば、両フレーム21、25は3枚の連結板27により、図1、図3のL方向(配管の軸線方向)に一定距離離間した状態で連結(固定)されている。尚、これら3枚の連結板27は、治具フレーム20の中心にフランジ80をセンタリングする位置決め壁としての役目も果たすようになっている。
【0018】
治具フレーム20のうち、切欠縁21A、25Aが形成された前側は、配管(鋼管)70をフレーム内に出入りさせる出入り口20Aとして作用する。そして、出入り口20Aを配管70のフランジ80に向けつつ、治具フレーム20を側方からフランジ80に装着すると、フランジ80が出入り口20Aを通って治具フレーム20に収まって、第一フレーム21側が、配管70のフランジ80の表面(本発明の「一方側の端面」に相当)81に対向し、第二フレーム25側がフランジ80の裏面(本発明の「他方側の端面」に相当)85に対向する関係になっている。
【0019】
螺子軸30は、第一フレーム21の板面に直交する直交方向(図1、図3のL方向)に沿っており、上端にはハンドル40が固定される一方、下端には球状継手60を介して閉止部50が取り付けられている。そして、螺子軸30は第一フレーム21に固定されたボス部23の螺子孔23Aに螺合していることから、ハンドル40を回転操作すると、螺子軸30が上下に移動して、閉止部50を両フレーム21、25間にて上下動させる。
【0020】
閉止部50は、図4に示すように閉止板51と、Oリング55と、リングプレート57と、抜け止め板59とから構成されていており、後述するガスケット座面82より一回り大きな円盤型をしている。
【0021】
閉止板51は概ね円盤状をしている。閉止板51の下面の外縁部は、段差状をした取付部52が形成されていて、リングプレート57が固定されている。リングプレート57の内壁57Aは、図6に示すように、取付部52の内壁52Aとの間に断面逆三角型の取付溝56を形成していて、係る取付溝56内にOリング55が抜け止めされた状態で装着されている。Oリング55はゴム製であって、図6に示すように、閉止板51の下面から先端を下方に突出させている。
【0022】
また、閉止板51の上面中央部には、収容凹部53が形成されている。図7に示すように、収容凹部53は上面側が開口していて、内部に螺子軸30の下端に形成された結合部33を収容する構成となっている。結合部33は、螺子軸30より一回り大きな形状をしていて、閉止板51の上面に取り付けられた抜け止め板59によって抜け止めされている。
【0023】
そして、結合部33の先端(下端)には、球状凸面33Aが形成されている。その一方、収容凹部53の底面には、円錐状の円錐凹面53Aが形成されていて、球状凸面33Aと円錐凹面53Aが球面嵌合する球状継手60を構成している。このような構成とすることで、図5にてR矢印で示すように、螺子軸30に対して閉止部50が自在に動き得る。
【0024】
次に、配管閉止治具10の使い方の説明を行う。配管70を閉止するには、まず、図8に示すように、ハンドル40を開き方向に回して、閉止部50を第一フレーム21の下面に突き当たる上限位置に位置させておく。その後、配管70のフランジ80に対して治具フレーム20を被せ付けるようにして装着する。これにより、図9に示すように、第一フレーム21と第二フレーム25の間にフランジ80が収まり、更には、フランジ80に対してその上方に閉止部50が向かい合った状態になる。尚、このとき、フランジ80は3枚の連結板27に突き当たることで、治具フレーム20の中心に概ねセンタリングされた状態となる。
【0025】
あとは、ハンドル40を締め込み方向に回すと、螺子軸30と共に閉止部50が下降し、やがて、閉止部50は、図10にて示すようにフランジ上面81のガスケット座面82に当接して配管出口71を閉止する。そして、ガスケット座面82への当接後、ハンドル40を更に半回転〜1回転程度回して締めこむと、閉止部50は更に下降する。これにより、ガスケット座面82に対してOリング55が全周に渡って弾性的に密着した状態となり、配管出口71はほぼ完全に密閉される。
【0026】
そして、図10に示すように、ハンドル40の回転操作後には、閉止部50が第二フレーム25と共に、配管70のフランジ80を上下に挟み込んだ状態になることから、配管閉止治具10は配管70のフランジ80に対して固定された状態となる。
【0027】
以上説明したように、配管閉止治具10は、ハンドル40の回転操作だけで配管70に取り付けできる。そのため、配管70への取り付け作業性が極めてよい。また、配管閉止治具10は、治具フレーム20と、螺子軸30と、ハンドル40と、閉止部50のわずか5パーツから構成されているので、構造が極めてシンプルであり、コストメリットが高い。
【0028】
また、本実施形態では、螺子軸30に対し球状継手60を介して閉止部50を連結していることから、フランジ上面81に片当たりした状態のまま閉止部50が締まることがなく、フランジ上面81に密着させた状態で閉止部50を締められる。そのため、フランジ80の配管出口71を閉止部50により確実に閉止できる。
【0029】
また、本実施形態では、Oリング55を取り付ける取付溝56の一部をリングプレート57が構成していることから、閉止板51からリングプレート57を取り外せば、Oリング55を簡単に交換できる。そのため、メンテナンス性がよい。
【0030】
2.試験方法の説明
次に、発電プラントのガスタービンGの燃焼器100に対して燃料(例えば、天然ガス)を供給する燃料配管140の耐圧試験方法について説明する。耐圧試験方法の説明に先立って、図11を参照して燃焼器100に対する燃料の供給経路を簡単に説明する。
【0031】
図11に示すように、燃焼器100は、ガスタービンGの外周に沿って複数個取り付けられている。そして、燃焼器100の前側(図11の左側)にはマニホールド120が取り付けられている。マニホールド120は円環状をしていて、ガスタービンGの外周側に取り付けられている。
【0032】
そして、マニホールド120に形成された複数個の分岐配管130が、燃料配管(ステンレス製のフレキシブル配管)140を介して燃焼器100側に配管接続されている。以上のことから、マニホールド120に供給された燃料は各分岐配管130、燃料配管140を介して各燃焼器100に分岐して供給される構成となっている。尚、図11の例では、120A〜120Cの3本のマニホールドが設けられている。
【0033】
また、マニホールド120(120A〜120Cの総称)はいずれも円環を上下2つに割った2分割構造となっていて、半円環状をなす。
【0034】
以下、燃料配管140の耐圧試験の試験手順を説明する。まず、ガスタービンGから、上下2分割になっている上側のマニホールド120Uを、各燃料配管140が接続された状態のまま取り外す。次に、ガスタービンGに固定された下側のマニホールド120から各燃料配管140Bを取り外す。その後、図12にて示すように、上側のマニホールド120Uに接続されている1つの燃料配管140A(図12では、右端の燃料配管)に対して、下側のマニホールド120から取り外した各燃料配管140Bを全て接続する(直列接続する)。
【0035】
その後、図12に示すように、上側のマニホールド120Uの両端のフランジ部150と、上側のマニホールド120に接続された各燃料配管140の端部に配管閉止治具10をそれぞれ取り付けて、上側のマニホールド120の両端と、各燃料配管140の先端をそれぞれ閉止する(閉止ステップ)。ただし、下側のマニホールド120から取り外した燃料配管140Bの先端部には、配管閉止治具10を装着せず、そのまま残しておく。
【0036】
あとは、下側のマニホールド120から取り外した燃料配管140Bの先端部に、継手200を介してガス源Jを接続する。そしてガス源Jを接続することが出来たら、圧力調整弁220にて圧力調整しつつ、ガス源Jからマニホールド120U及びそれに接続された各燃料配管140、140Bに対して不活性ガス(窒素ガス)を耐圧試験圧力(一例として、0.8Mpa)になるまで充填し、不活性ガスの供給を停止する。そして、不活性ガスの供給を停止してから一定時間後(一例として、30分)に、充填した不活性ガスの圧力を、圧力計210にて読み取ることで、各燃料配管140、140Bのリークの有無を検査できる(計測ステップ)。
【0037】
すなわち、圧力計210の読み取り値(不活性ガスの圧力)が、耐圧試験圧力から低下した場合には、マニホールド120に接続された燃料配管140のいずれかにリーク(気密漏れ)があると判断できる。そして耐圧試験が終了したら、バルブ230を開けてやれば、マニホールド120に充填された不活性ガスを大気開放できる。
【0038】
また、燃料配管140の耐圧試験は、上記したようにマニホールド120を利用する方法の他にも、図13に示すように、マニホールド120から取り外した各燃料配管140を直列に接続して行うことも可能である。すなわち、燃料配管140を直列に接続した後、一方側の端部に配管閉止治具10を取り付けて、燃料配管140の一方側の端部をまず閉止する(閉止ステップ)。
【0039】
あとは、燃料配管140の他方側の端部に継手200を介してガス源Jを接続する。そしてガス源Jを接続することが出来たら、圧力調整弁220にて圧力調整しつつ、ガス源Jから不活性ガス(窒素ガス)を燃料配管140に耐圧試験圧力になるまで充填し、不活性ガスの供給を停止する。そして、不活性ガスの供給を停止してから、一定時間後に充填した不活性ガスの圧力を、圧力計210にて読み取ることで燃料配管140のリークの有無を検査できる(計測ステップ)。
【0040】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図14ないし図18によって説明する。実施形態2の配管閉止治具310は実施形態1の配管閉止治具10に対して治具フレームの構成を変更したものであり、治具フレーム320を、金属製の第一フレーム321と、金属製の第二フレーム325と、これら両フレーム321、325を連結する連結部材327により構成している。
【0041】
実施形態2では、実施形態1に対して、第一フレーム321を小型しており、形状は左右に長い長方形型としている。一方、第二フレーム325は、実施形態1と同様、配管70のフランジ80の外形と同じ大きさの円板から外縁部と中央部をカットしたものであり、半円よりやや大きな円弧形状(一部切欠円弧形状)をしている。第二フレーム325のうち、後部にあたる図16の右端部には、位置決めピン326が取り付けられている。位置決めピン326は、配管70のフランジ80を治具フレーム320に対して位置決め(前後方向の位置決め)する機能を担うものである。すなわち、治具フレーム320をフランジ80に組み付けると、位置決めピン326がフランジ80に当接することにより、治具フレーム320に対してフランジ80を前後方向に位置決めすることが出来る。
【0042】
連結部材327は、金属製の第二フレーム325の左右両端に取り付けられた一対の縦壁328A、328Bを、前後一対の横壁329A、329Bにより橋渡した構造となっている。一対の横壁329A、329Bは板面を上下に向けつつ前後方向に向かい合っていて、左右の端面を左右の横壁329A、329Bの内側の面にそれぞれ固定している。
【0043】
そして、一対の横壁329A、329Bのうち、上側端面の中央部には、プレート324が固定されている。一方、一対の横壁329A、329Bのうち、下側端面の中央部には、プレート324の下方に位置して第一フレーム321が固定されている。第一フレーム321の中心部には、実施形態1と同様、螺子部であるボス部323が溶接により固定されている。このボス部323の中央部には、螺子孔が形成されている。螺子孔には螺子軸330が螺合している。
【0044】
螺子軸330はプレート324に形成された挿通孔を上下に貫通しており、上端にはハンドル340が固定される一方、下端には球状継手360を介して閉止部350が取り付けられている。そのため、ハンドル340を回転操作すると、螺子軸30が上下に移動して、閉止部350が両フレーム321、325間にて上下動する。
【0045】
従って、実施形態1と同様、両フレーム321、325間にフランジ80をセットした後、ハンドル340を締め込み方向に回すことで、配管70の配管出口71を閉止部350により密閉できる。そして、実施形態2では、第二フレーム325に対して2枚の横壁329A、329Bを橋渡すように固定している。そのため、実施形態1のように、2枚のフレーム間を3枚の連結板27によって連結する場合に比べてフレームの剛性が高くできる。尚、この実施形態2の配管閉止治具310は、大型配管など高いフレーム剛性が求められる場合に適している。
【0046】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を図19ないし図24によって説明する。実施形態3の配管閉止治具410は、閉止部450に対して流体通路Uを追加したものである。
【0047】
具体的に説明すると、実施形態3の配管閉止治具410では、閉止部450を、実施形態1と同様、閉止板451と、Oリング455と、リングプレート457と、抜け止め板459とから構成している。
【0048】
閉止板451は実施形態1の閉止板51に対して板厚を増した形状をしており、第一孔452と第二孔453とからなる流体通路Uを設けている。
【0049】
第一孔452は、図19に示すように閉止板451の外周面に開口しつつ、図20に示すように閉止板451の中央に向って水平に延びている。第二孔453は、閉止板451の下面中央(Oリング455の内側)に開口している。第二孔453は、上方向に延びていて、高さ方向の概ね半分の高さに達している。
【0050】
そして、第一孔452は第二孔453の上端に達していて、両孔452、453は互いに連通している。以上のことから、図21に示すように、ガスケット座面82に対してOリング55が全周に渡って密着し、閉止部450により配管出口71を閉止された配管70に対して、不活性ガスなどの流体を流体通路Uを介して出入りさせることが可能となる。
【0051】
尚、第一孔452の内周側には螺子が形成されていて、不活性ガスなどの流体を導入するホースBを取り付けるための接続金具470を装着することが出来る構造となっている(図22参照)。
【0052】
図23には、配管閉止治具410を配管70の耐圧試験(配管製作時の耐圧試験)に適用した例が示されている。具体的に説明すると、試験対象となる配管70のうち、図23に示す右端のフランジ80Aに対して実施形態1の配管閉止治具10を取り付けると共に、図23に左端側のフランジに実施形態3の配管閉止治具410を取り付ける。これにて、配管70の右側の配管出口71が配管閉止治具10にて閉止され、配管70の左側の配管出口71が配管閉止治具410にて閉止された状態となる。
【0053】
あとは、配管閉止治具410の閉止部450に取り付けられた接続金具470を、ホースBを介してガス源Jに接続する。その後、圧力調整弁220にて圧力調整しつつ、ガス源JからホースB、接続金具470、流体通路Uを介して、配管70内に、不活性ガスを耐圧試験圧力になるまで充填し、不活性ガスの供給を停止する。
【0054】
そして、不活性ガスの供給を停止してから一定時間後に、充填した不活性ガスの圧力を、圧力計210にて読み取ることで、配管70のリークの有無を検査できる。すなわち、圧力計210の読み取り値(不活性ガスの圧力)が、耐圧試験圧力から低下した場合には、配管70はリーク(気密漏れ)していると判断できる。そして耐圧試験が終了したら、バルブ230を開けてやれば、配管70に充填された不活性ガスを大気開放することが出来る。
【0055】
尚、上記ではガス源Jに対して配管70を1本だけ接続した例を示したが、例えば、図24に示すように、ガス源Jに対して複数本の配管70を並列接続すれば、これら複数本の配管70のリークチェックを複数本同時に一括して行うことが可能である。
【0056】
すなわち、ガス源Jから各接続金具470を介して、各配管70内に不活性ガスを同時供給する。そして、不活性ガスの供給を停止してから一定時間後に、充填した不活性ガスの圧力を、圧力計210にて読み取ることで、並列接続された各配管70のリークの有無を検査できる。具体的には、圧力計210の読み取り値(不活性ガスの圧力)が、耐圧試験圧力から低下した場合には、並列接続された配管70のいずれかが、リーク(気密漏れ)していると判断できる。
【0057】
以上説明したように、配管閉止治具410は、配管出口71を閉止する閉止部450に対して流体通路Uを設けたので、単に配管70を閉止するだけでなく、閉止した配管70に流体を出入りさせることが出来る。
【0058】
<実施形態4>
本発明の実施形態4を図25ないし図28によって説明する。実施形態5はタンク500に形成された入口配管510、出口配管520の閉止に配管閉止治具10、310を用いたものである。
【0059】
具体的に説明すると、タンク500には、天井壁側に入口配管510が形成され、外周壁の下部に出口配管520が形成されている。入口配管510と出口配管520は、タンク500に一体形成された管部511、521の先端にフランジ515、525を設けた構造となっていて、相手配管(図略)をフランジ結合できる構成となっている。そして、相手配管、入口配管510を通じて、例えば燃料などをタンク500内に導入することができる。また、タンク500内の燃料を、出口配管520、相手配管を通じて排出することが出来る。
【0060】
タンク500の未使用時には、入口配管510や出口配管520を閉止して、タンク500を密閉しておく必要がある。この実施形態では、入口配管510のフランジ515に配管閉止治具310を取り付けて入口配管510の配管出口510Aを閉止部350にて閉止(図27参照)すると共に、出口配管520のフランジ525に配管閉止治具10を取り付けて出口配管520の配管出口520Aを閉止部50にて閉止している(図28参照)。
【0061】
このように実施形態1や実施形態2で説明した配管閉止治具10、310は、タンク500に形成された入口配管510や出口配管520を閉止する用途に使用することが可能である。
【0062】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
(1)上記実施形態1では、マニホールド120や燃料配管140をガスタービンGから取り外して耐圧試験を行った例を説明したが、マニホールド120や燃料配管140をガスタービンGに取り付けた状態のまま耐圧試験を行ってもよい。この場合、燃料配管140のうち各燃焼器100に接続された端末部を各燃焼器100からそれぞれ取り外し、その後、取り外した各燃料配管140の端末部に配管閉止治具10を取り付けて各燃料配管140の端末部を閉止する。そして、端末部を閉止することが出来たら、次に、マニホールド120に燃料を供給する供給元側から燃料に替えて不活性ガスを耐圧試験圧力になるまで充填し、不活性ガスの供給を停止する。そして、不活性ガスの供給を停止してから、一定時間後に、充填した不活性ガスの圧力を、圧力計にて読み取ることで、マニホールド120、燃料配管140からなる燃料供給系統のリーク検査を行うことが出来る。
【0064】
(2)上記実施形態1では、プラントに使用される配管の耐圧試験の一例として、発電プラントのガスタービンに使用される燃料配管140の耐圧試験を例示した。本発明は実施形態で挙げた燃料配管の耐圧試験の他にも、蒸気配管や水道配管等に広く適用することが可能である。
【0065】
また、プラントに使用される配管の耐圧試験には、配管製作時の耐圧試験が含まれる。
【0066】
(3)上記実施形態1では、閉止板51とは、別にリングプレート57を設けた例を示した。リングプレート57は必ずしも必要な部材ではなく、例えば、図29に示すように、リングプレート57を別体として分割せず、閉止板651だけの構成としてもよい。この場合、閉止部650を構成する閉止板651の底面に取付溝656を形成し、そこに、Oリング55を直接嵌め込むようにすればよい。尚、Oリング55を取り付ける取付溝655の形状は、図29に示すような両アリ溝以外にも、図30に示すような片あり溝にすることが可能である。
【0067】
(4)上記実施形態3では、閉止部450に、第一孔452と第二孔453とからなる流体通路Uを形成したものを示した。流体通路Uの第一孔452に取り付ける接続金具470は、実施形態3で使用した接続金具の他にも、例えば、図31〜図33に示すにコック付きの接続金具770を取り付けて使用出来る。この場合、配管70に対する流体の出入口となる流体通路Uを、コック780の操作により、簡単に開閉できる。尚、接続金具770はL字型をしていて、図32に示すように、ホースBが図中の左側より接続される構成となっている。
【符号の説明】
【0068】
10…配管閉止治具
20…治具フレーム
21…第一フレーム
23A…螺子孔
25…第二フレーム
30…螺子軸
40…ハンドル
50…閉止部
70…配管
80…フランジ
82…ガスケット座面
120…マニホールド
130…分岐管
140…燃料配管
G…ガスタービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を閉止する配管閉止治具であって、
前記配管に設けられたフランジのうちガスケットの装着面側となる一方側の端面に対向する第一フレームと、
前記フランジの他方側の端面に対向する第二フレームと、
前記第一フレームに設けられた螺子孔に螺合し、前記第一フレームの板面に直交する直交方向に変位する螺子軸と、
前記螺子軸に取り付けられ、前記フランジの一方側の端面の中央部に開口する配管出口を閉止する閉止部とを備えたことを特徴とする配管閉止治具。
【請求項2】
前記閉止部は、前記螺子軸に対して球状継手を介して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の配管閉止治具。
【請求項3】
前記閉止部に、前記配管に対して流体を出入させる流体通路を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管閉止治具。
【請求項4】
プラントに使用される配管の耐圧試験方法であって、
前記配管の一方側の端部を請求項1又は請求項2に記載の配管閉止治具により閉止する閉止ステップと、
前記配管に他方側の端部から不活性ガスを耐圧試験圧力になるまで充填し、その後、充填した不活性ガスのガス圧を計測する計測ステップと、を含むことを特徴とする耐圧試験方法。
【請求項5】
プラントに使用される配管の耐圧試験方法であって、
前記配管の一方側の端部を請求項1又は請求項2に記載の配管閉止治具により閉止すると共に、前記配管の他方側の端部を請求項3に記載の配管閉止治具により閉止する閉止ステップと、
前記他方側を閉止する配管閉止治具の前記流体通路から前記配管内へ不活性ガスを耐圧試験圧力になるまで充填し、その後、充填した不活性ガスのガス圧を計測する計測ステップと、を含むことを特徴とする耐圧試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−225899(P2012−225899A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283593(P2011−283593)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(391019658)株式会社中部プラントサービス (28)
【Fターム(参考)】