説明

配線器具

【課題】 放電ガスを流入させる検出孔をピンで塞ぎ、ケース内側への異物の侵入を防止し、放電ガスをピンと検出孔との間の細隙に通してセンサに導き、トラッキングの予兆を高精度に検出する。
【解決手段】 電源コンセントや差込プラグ等の配線器具において、ケース2の前面カバー部2aに検出孔8を形成し、放電ガスGを検出孔8に通してケース2の外側から内側に導入する。ケース2の内壁10に位置決め溝13を形成し、位置決め溝13に金属製の帯板からなるセンサ11を嵌合する。センサ11に係止孔12を形成し、内壁10に係止孔12を貫通するピン14を突設する。ピン14の基部でセンサ11を係止し、ピン14の先部を検出孔8に嵌入する。ピン14と検出孔8との間に、放電ガスGをセンサ11へ導く環状の細隙15を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラッキングの予兆を検出する機能を備えた電源コンセントや差込プラグ等の配線器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラグ接続部に発生した放電ガスをトラッキングの予兆として検出し、警報器や回路遮断器を動作させる配線器具が知られている。例えば、図10に示す従来の電源コンセント51は、ケース52の前面カバー部52aにプラグ差込口53と検出孔54を備え、プラグ刃体(図示略)に発生した火花放電に伴う放電ガスGを検出孔54からケース52の内側に導き、内壁55に埋設した線状のセンサ56で検知し、検知信号を回路基板57上のトラッキング検出回路に送るようになっている。
【0003】
特許文献1には、ケースの前面に大径の透孔を形成し、透孔にブッシングを圧入し、ブッシングの中央に細径の検出孔を貫設した電源コンセントが記載されている。特許文献2には、2本のプラグ刃体の間においてケースに検出孔を形成し、放電ガスを検知するセンサと警報ランプおよび警報ブザーをケースに内蔵し、トラッキング検出機能を差込プラグに付加する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−48962号公報
【特許文献2】特開2007−5027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の配線器具によると、検出孔54がケース52の外面に常時開いているため、異物がケース52の内側に侵入しやすかった。特許文献1では、透孔をブッシングで塞いでいるが、ガス通路を確保するために、別部品であるブッシングに検出孔を微細加工する必要があるうえ、ブッシングを装着する手間も掛かり、配線器具の製作コストが高くつくという問題点があった。
【0006】
また、従来のトラッキング検出機構では、センサ56が検出孔54から空間的に切り離されているため、放電電流が流れ難い。しかも、センサ56と検出孔54がごく狭い面積で相対しているため、ケース52や内壁55の変形等で検出孔54とセンサ56の相対位置が変化した場合に、センサ56の感度が低下する虞があるという問題点もあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ケース内側への異物の侵入を防止でき、簡単かつ安価な機構でトラッキングを高精度に検出できる配線器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の配線器具は、ケースに検出孔を形成し、検出孔に通して放電ガスをケースの内側に導き、ケースの内壁に放電ガスを検知するセンサを設け、センサに係止孔を形成し、内壁に係止孔を貫通するピンを突設し、ピンの基部にセンサを係止し、ピンの先部を検出孔に嵌入し、検出孔とピンとの間に放電ガスをセンサに導く細隙を形成したことを特徴とする。
【0009】
ここで、センサが広い面積で放電ガスに接触できるように、センサを金属板で帯状に形成し、内壁にセンサが嵌合する位置決め溝を設けるのが好ましい。また、限られたスペースの細隙に放電ガス中の湿気を広い面積で付着させるために、ピンと検出孔の相対面に複数の凹凸条を放電ガスの流れ方向へ延びるように形成するのが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配線器具によれば、内壁に突設したピンが検出孔を塞いでいるので、別部品を使用することなく、ケース内側への異物の侵入を防止できる。また、放電ガスに含まれる湿気が細隙面の広範囲に付着するため、放電電流がセンサ側へ流れやすくなる。しかも、ピンがセンサと検出孔との相対位置を固定し、細隙をセンサに直結しているので、センサの感度を高め、トラッキングの予兆を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1を示す電源コンセントの斜視図である。
【図2】電源コンセントのプラグ差込口と検出孔を示す正面図である。
【図3】検出孔周辺のトラッキング検出機構を示す図2のA−A線断面図である。
【図4】トラッキング検出機構のセンサ取付構造を示す斜視図である。
【図5】ピンと検出孔との間の細隙を示す図3のB部拡大図である。
【図6】ピンの外周側に形成した凹凸条を示す図2のC部拡大図である。
【図7】検出孔の内周側に形成した凹凸条を示す図2のC部拡大図である。
【図8】本発明の実施例2を示す差込プラグの断面図である。
【図9】差込プラグのトラッキング検出機構を示す図8のD部拡大図である。
【図10】従来の電源コンセントを示す要部破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態の配線器具では、図5に示すように、ケース2の前面カバー部2aに検出孔8が形成され、放電ガスGが検出孔8を通ってケース2の外側から内側に流入する。ケース2の内壁10には位置決め溝13が形成され、位置決め溝13に金属製の帯板からなるセンサ11が嵌合されている。センサ11には係止孔12が形成され、内壁10に係止孔12を貫通するピン14が突設されている。ピン14の基部はセンサ11を係止し、ピン14の先部が検出孔8に嵌入し、検出孔8とピン14との間に放電ガスGをセンサ11へ導く細隙15が形成されている。
【実施例1】
【0013】
次に、本発明を電源コンセントに具体化した実施例1を図1〜図7に基づいて説明する。図1に示すように、この電源コンセント1では、ケース2の前面カバー部2aに2つ一組のプラグ差込口3が例えば上下に二組配設されている。プラグ差込口3の横には、トラッキングの予兆を検出したときに動作する警報ランプ4及び回路遮断器5と、動作したブザーを停止させるブザー停止ボタン6と、トラッキング検出回路の動作試験を行うテストボタン7とが設けられている。
【0014】
図2、図3に示すように、2つのプラグ差込口3の間には、放電ガスをケース2の内側に導く検出孔8が形成されている。プラグ差込口3の奥には、プラグ刃体23(図8参照)を受ける受け刃9が固定され、一対の受け刃9の間に内壁10が検出孔8と相対する位置で前面カバー部2aの内面に当接するように立設されている。そして、内壁10の上端面にセンサ11が装着され、検出孔8から流入した放電ガスを検知し、検知信号(電流)を回路基板(図10参照)上のトラッキング検出回路に送信する。
【0015】
図4、図5に示すように、センサ11は金属製の帯板で形成され、帯板の一部に検出孔8と略同じ大きさの係止孔12が形成されている。内壁10の上端面には、センサ11が嵌合する位置決め溝13が設けられるとともに、係止孔12を貫通するピン14が一体的に突設されている。ピン14は係止孔12及び検出孔8よりも僅かに小径の円柱状に形成され、ピン14の基部がセンサ11を係止し、ピン14の先部が検出孔8に嵌入している。そして、検出孔8とピン14との間に円環状の細隙15が形成され、放電ガスGを細隙15に通してセンサ11に導くようになっている。
【0016】
図6、図7に示すように、検出孔8とピン14の相対面には、複数の凹凸条16,17が細隙15を放電ガスGの流れ方向(図5の矢印方向)へ延びるように形成されている。図6に示す凹凸条16は、ピン14の外周面に等ピッチで形成されている。図7に示す凹凸条17は、検出孔8の内周面に等ピッチで形成されている。
【0017】
以上のように構成された電源コンセント1によれば、次のような作用効果が得られる。
(a)内壁10に突設したピン14で前面カバー部2aの検出孔8を塞ぎ、ブッシング等の別部品を使用することなく、ケース2の内側への異物の侵入を確実に防止できる。
(b)プラグ差込口3の間から開口部をなくし、ユーザーに安心感を与え、電源コンセント1の外観を改善できる。
【0018】
(c)放電ガスGに含まれる湿気を検出孔8とピン14の相対面に付着させ、細隙15に湿気を媒体とする円環状の電流通路を形成できる。
(d)検出孔8とピン14の相対面に複数の凹凸条16,17を形成したので、湿気の付着面積を拡張し、細隙15の電流通路をより広範囲に形成できる。
【0019】
(e)ピン14がセンサ11と検出孔8との相対位置を固定し、細隙15の電流通路をセンサ11に直結しているので、放電電流に対するセンサ11の感度を高め、トラッキングの予兆を高精度に検出できる。
(f)センサ11が帯状に形成され、内壁10の位置決め溝13に嵌合しているので、放電ガスGとの接触面積を広げ、センサ11の感度をさらに高めることができる。
【実施例2】
【0020】
次に、本発明を差込プラグに具体化した実施例2を図8、図9に従って説明する。この差込プラグ21では、ケース22の前面カバー部22aから2本のプラグ刃体23が突出している。プラグ刃体23の間には検出孔24が形成され、放電ガスGが検出孔24を通ってケース22の外側から内側に流入する。ケース22の内壁25には位置決め溝28が形成され、位置決め溝28に実施例1と同様の帯状センサ26が嵌合している。
【0021】
センサ26には係止孔27が形成され、内壁25に係止孔27を貫通するピン29が一体的に突設されている。ピン29の基部はセンサ26を係止し、ピン29の先部が検出孔24に嵌入している。そして、検出孔24とピン29との間に放電ガスGをセンサ26側に導く細隙30が形成され、必要に応じて、細隙30に凹凸条16,17(図6,7参照)が設けられている。したがって、この差込プラグ21によっても、実施例1の電源コンセント1と同様に、ケース22内への異物の侵入を防止できるとともに、簡単かつ安価な機構でトラッキングの予兆を高精度に検出することができる。
【0022】
なお、本発明は上記実施例1,2に限定されず、例えば、検出孔やピンの形状を長円形や多角形に変更したり、プラグとコンセントの両方を装備した配線器具に適用したりするなど、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 電源コンセント
21 差込プラグ
2,22 ケース
8,24 検出孔
10,25 内壁
11,26 センサ
12,27 係止孔
13,28 位置決め溝
14,29 ピン
15,30 細隙
16,17 凹凸条
G 放電ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに検出孔を形成し、検出孔に通して放電ガスをケースの内側に導き、ケースの内壁に放電ガスを検知するセンサを設けた配線器具において、
前記センサに係止孔を形成し、前記内壁に係止孔を貫通するピンを突設し、ピンの基部にセンサを係止し、ピンの先部を前記検出孔に嵌入し、検出孔とピンとの間に前記放電ガスをセンサに導く細隙を形成したことを特徴とする配線器具。
【請求項2】
前記センサを金属製の帯板で形成し、前記内壁にセンサが嵌合する位置決め溝を設けた請求項1記載の配線器具。
【請求項3】
前記ピンと検出孔の相対面に複数の凹凸条を放電ガスの流れ方向へ延びるように形成した請求項1又は2記載の配線器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−96512(P2011−96512A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249207(P2009−249207)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】