説明

配線回路基板

【課題】基準孔が優れた精度で、かつ、均一に形成された配線回路基板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】金属支持層17、その上に形成されるベース絶縁層5、および、その上に形成される導体層6を形成し、位置決めに用いられる第1基準孔12を開口するための第1除去領域21を囲むように、第1段差部8を形成し、金属支持層17における第1除去領域21をエッチングして、第1基準孔12を形成する(基準孔形成工程)。この基準孔形成工程では、第1エッチングレジスト14を、金属支持層17の上側において、第1段差部8を被覆するように形成するとともに、第2エッチングレジスト15を、金属支持層17の下側において、第1除去領域21が露出するように、形成し、第2エッチングレジスト15から露出する第1除去領域21をエッチングにより除去し、第1エッチングレジスト14および第2エッチングレジスト15を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法、詳しくは、ハードディスクドライブに搭載される回路付サスペンション基板に好適に用いられる配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路付サスペンション基板は、金属支持層の上に、ベース絶縁層、端子部を有する導体層およびカバー絶縁層を順次積層した後、金属支持層を外形加工することにより得られている。
【0003】
そのような回路付サスペンション基板は、通常、金属支持層に形成された基準孔を基準として、磁気ヘッドを位置決めして、それを実装した後、ハードディスクドライブに搭載される。
【0004】
一方、近年、磁気ヘッドの端子や回路付サスペンション基板の端子部がファインピッチ化されており、そのため、それらの接続信頼性を高める必要がある。従って、基準孔を精度よく形成して、磁気ヘッドの位置決め精度を向上させる必要がある。
【0005】
そのため、例えば、ステンレスからなるサスペンション基板の表面に、ジルコニウムやパラジウムなどの、ステンレスよりもエッチングされにくい材料を付着させ、その後、サスペンション基板をエッチングして、基準孔を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1のエッチング工程では、サスペンション基板に付着する上記した材料によって、サスペンション基板の内端面(基準孔の内周面)を均一に開口し、これにより、基準孔の加工精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−217250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、特許文献1を含む従来のエッチング工程では、図16(a)が参照されるように、まず、金属支持層51の表裏面に、エッチングレジスト52を積層し、続いて、金属支持層51の裏面において、基準孔53(図16(b)参照)の形成予定領域54が露出するように、エッチングレジスト52を開口する。その後、図16(b)が参照されるように、エッチング液との接触によって、エッチングレジスト52から露出する形成予定領域54を除去することにより、基準孔53を開口している。
【0008】
なお、この基準孔53のエッチングは、金属支持層51の裏面から表面に向かって進行することから、基準孔53は、金属支持層17の裏面から表面に向かって次第に幅狭となる傾斜状に形成される。そのため、基準孔53の位置決め精度は、基準孔53の最小径dである上端部の内周面により決定される。
【0009】
しかしながら、かかるエッチングでは、エッチング液が表側のエッチングレジスト52と金属支持層51との境界に浸入して、形成予定領域54の周囲におけるエッチングレジスト52が、金属支持層51から剥離する場合がある。すると、図16(b’)に示すように、それらの間に隙間を生じて、エッチングがさらに進行して、基準孔53の上端部の周囲の金属支持層51が除去される。そうすると、基準孔53の最小径d’が拡径され、さらには、基準孔53の最小径d’にばらつきを生じ易くなるため、基準孔53の位置決め精度が不十分となる。そのため、磁気ヘッドの位置決め精度が低下して、接続信頼性が低下する不具合がある。
【0010】
本発明の目的は、基準孔が優れた精度で、かつ、均一に形成された配線回路基板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の配線回路基板は、金属支持層、前記金属支持層の上に形成される絶縁層、および、前記絶縁層の上に形成される導体層を備える配線回路基板であって、前記金属支持層には、位置決めするための基準孔が形成されており、前記基準孔を囲むように、段差部が形成されていることを特徴している。
【0012】
また、本発明の配線回路基板では、前記段差部は、前記絶縁層および/または前記導体層と同一層として形成されていることが好適である。
【0013】
また、本発明の配線回路基板では、前記段差部と前記基準孔との距離が、100μm以下であることが好適である。
【0014】
また、本発明の配線回路基板では、前記段差部の厚みが、5μm以上であることが好適である。
【0015】
また、本発明の配線回路基板では、前記絶縁層が、ポリイミドから形成されていることが好適である。
【0016】
また、本発明の配線回路基板では、前記導体層が、銅から形成されていることが好適である。
【0017】
また、本発明の配線回路基板は、回路付サスペンション基板として用いられることが好適である。
【0018】
また、本発明の配線回路基板の製造方法は、金属支持層、前記金属支持層の上に形成される絶縁層、および、前記絶縁層の上に形成される導体層を形成する工程と、位置決めに用いられる基準孔を開口するための除去領域を囲むように、段差部を形成する工程と、前記金属支持層における前記除去領域をエッチングして、前記基準孔を形成する基準孔形成工程とを備え、前記基準孔形成工程は、エッチングレジストを、前記金属支持層の厚み方向一側において、前記段差部を被覆するように、かつ、前記金属支持層の厚み方向他側において、前記除去領域が露出するように、形成する工程と、前記エッチングレジストから露出する前記除去領域をエッチングにより除去する工程と、前記エッチングレジストを除去する工程とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の配線回路基板によれば、段差部が基準孔を囲むように形成されている。
【0020】
そのため、本発明の配線回路基板の製造方法では、上記した段差部を形成し、その後、基準孔形成工程では、金属支持層の厚み方向一側において、エッチングレジストを、段差部を被覆するように形成することにより、基準孔の周囲におけるエッチングレジストと、金属支持層および段差部との接触面積をより広く確保することができ、それらの密着性を向上させることができる。
【0021】
さらに、段差部により、エッチングレジストの鉤状の係止を確保できるので、段差部およびエッチングレジストの密着性をより一層向上させることができる。
【0022】
そのため、エッチングレジストを、金属支持層の厚み方向他側において、除去領域が露出するように形成し、その後、除去領域をエッチングにより除去しても、エッチング液が除去領域の周囲におけるエッチングレジストと金属支持層との境界に浸入することを防止して、エッチングレジストが金属支持層から剥離することを防止することができる。
【0023】
そのため、エッチング液の浸入に起因する基準孔の最小径の拡径を防止して、基準孔を優れた精度で、かつ、均一に形成することができる。
【0024】
その結果、位置決め精度を向上させることにより、接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板を備える回路付サスペンション基板集合体シートの平面図を示す。
【図2】図1に示す回路付サスペンション基板集合体シートの要部拡大平面図を示す。
【図3】図2におけるA−A線に沿う回路付サスペンション基板の断面図を示す。
【図4】図2に示す回路付サスペンション基板の第1基準孔および第1段差部の平面図を示す。
【図5】図1に示す回路付サスペンション基板集合体シートの製造方法を説明するための、図3に対応する製造工程図であって、(a)は、金属支持基板を用意する工程、(b)は、ベース絶縁層および段差ベース層を形成する工程、(c)は、導体層および段差導体層を形成する工程、(d)は、カバー絶縁層および段差カバー層を形成する工程を示す。
【図6】図5に続いて、図1に示す回路付サスペンション基板集合体シートの製造方法を説明するための、図3に対応する製造工程図であって、(e)は、第1エッチングレジストを、金属支持基板の上に形成する工程、(f)は、第2エッチングレジストを、金属支持基板の下に形成する工程、(g)は、第1除去領域をエッチングにより除去して、第1基準孔を形成する工程、(h)は、第1エッチングレジストおよび第2エッチングレジストを除去する工程を示す。
【図7】本発明の配線回路基板の他の実施形態である回路付サスペンション基板の第1基準孔および第1段差部(段差ベース層および段差導体層から2段で形成される態様)の拡大断面図を示す。
【図8】本発明の配線回路基板の他の実施形態である回路付サスペンション基板の第1基準孔および第1段差部(段差ベース層および段差導体層を埋設しない段差カバー層から2段で形成される態様)の拡大断面図を示す。
【図9】本発明の配線回路基板の他の実施形態である回路付サスペンション基板の第1基準孔および第1段差部(段差導体層および段差カバー層から2段で形成される態様)の拡大断面図を示す。
【図10】本発明の配線回路基板の参考となる参考形態である回路付サスペンション基板の第1基準孔および第1段差部(段差ベース層または段差カバー層から1段で形成される態様)の拡大断面図を示す。
【図11】本発明の配線回路基板の他の実施形態である回路付サスペンション基板の第1基準孔および第1段差部(段差ベース層、段差導体層および段差カバー層から3段で形成される態様)の拡大断面図を示す。
【図12】本発明の配線回路基板の参考となる参考形態である回路付サスペンション基板の第1基準孔および第1段差部(径方向内側から外側に向かって上昇する段差金属部分から形成される態様)の拡大断面図を示す。
【図13】本発明の配線回路基板の参考となる参考形態である回路付サスペンション基板の第1基準孔および第1段差部(径方向内側から外側に向かって下降する段差金属部分から形成される態様)の拡大断面図を示す。
【図14】実施例1の第1基準孔の最小径の測定値を示すグラフである。
【図15】比較例1の第1基準孔の最小径の測定値を示すグラフである。
【図16】従来の回路付サスペンション基板の基準孔の形成方法を説明するための断面図(製造工程図)であって、(a)は、エッチングレジストを、金属支持層の表裏面に積層する工程、(b)は、形成予定領域をエッチングにより除去して、基準孔を開口する工程、(b’)は、基準孔の上端部の周囲の金属支持層が除去される状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板を備える回路付サスペンション基板集合体シートの平面図、図2は、図1に示す回路付サスペンション基板集合体シートの要部拡大平面図、図3は、図2におけるA−A線に沿う回路付サスペンション基板の断面図、図4は、図2に示す回路付サスペンション基板の第1基準孔および第1段差部の平面図、図5および図6は、図1に示す回路付サスペンション基板集合体シートの製造方法を説明するための、図3に対応する製造工程図を示す。
【0027】
なお、図1および図2において、後述するベース絶縁層5およびカバー絶縁層7は省略されている。
【0028】
図1において、配線回路基板としての回路付サスペンション基板集合体シート1は、複数の回路付サスペンション基板2と、各回路付サスペンション基板2を分離可能に支持する支持枠3とを備えている。
【0029】
回路付サスペンション基板2は、長手方向(先後方向)に延びており、支持枠3内において、長手方向および幅方向(長手方向に直交する方向)において、互いに間隔を隔てて整列状態で配置されており、切断可能なジョイント部38(後述。図2参照。)を介して支持枠3にそれぞれ支持されている。
【0030】
この回路付サスペンション基板2には、図2に示すように、磁気ヘッド(図示せず)と、リード・ライト基板(図示せず)とを電気的に接続するための導体層6が形成されている。
【0031】
導体層6は、後述するが、磁気ヘッドの端子に接続するためのヘッド側端子28と、リード・ライト基板の端子に接続するための外部側端子29と、ヘッド側端子28および外部側端子29を接続するための配線27とを一体的に備えるパターンとして形成されている。
【0032】
回路付サスペンション基板2は、図3に示すように、金属支持基板4と、金属支持基板4の上に形成される絶縁層としてのベース絶縁層5と、ベース絶縁層5の上に形成される導体層6と、ベース絶縁層5の上に、導体層6を被覆するように形成されるカバー絶縁層7とを備えている。
【0033】
金属支持基板4は、図1および図2に示すように、支持枠3とともに金属支持層17から形成されており、平面視略矩形平板形状に形成されている。また、金属支持基板4を含む金属支持層17を形成する金属としては、例えば、ステンレス、42アロイなどが用いられ、好ましくは、ステンレスが用いられる。また、その厚みは、例えば、10〜100μm、好ましくは、18〜30μmである。
【0034】
また、金属支持基板4には、金属支持層17を切り抜く(開口する)ことにより形成されるスリット39および後で詳述する基準孔としての第1基準孔12が形成されるとともに、第1基準孔12の周囲には、後で詳述する段差部としての第1段差部8が設けられている。スリット39は、長手方向において、ヘッド側端子28を挟む、平面視略コ字状に開口されている。
【0035】
ベース絶縁層5は、図3に示すように、金属支持基板4の上面に、導体層6が形成される部分に対応するパターンとして形成されている。また、ベース絶縁層5を形成する絶縁体としては、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂が用いられる。これらのうち、精度のよいパターンでベース絶縁層5を形成するためには、好ましくは、感光性の合成樹脂が用いられ、さらに好ましくは、感光性ポリイミドが用いられる。また、その厚みは、例えば、3〜30μm、好ましくは、5〜15μmである。
【0036】
導体層6は、図2に示すように、互いに間隔を隔てて並列配置される複数の配線27と、配線27の先端部および後端部からそれぞれ連続するヘッド側端子28および外部側端子29とを一体的に備えている。なお、配線27は、前側のスリット39の後方において、幅方向両端部に配置されており、詳しくは、後側のスリット39の後方において、幅方向途中(中央部)に、後述する第1段差部8が設けられる領域が確保されるように形成されている。
【0037】
導体層6を形成する導体としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだまたはこれらの合金などの金属箔が用いられ、導電性、加工性の観点から、好ましくは、銅箔が用いられる。また、導体層6の厚みは、例えば、3〜20μm、好ましくは、7〜15μmである。また、各配線27の幅は、例えば、5〜500μm、好ましくは、10〜200μmであり、各配線27間の間隔は、例えば、5〜500μm、好ましくは、10〜200μmである。
【0038】
カバー絶縁層7は、図3に示すように、ベース絶縁層5の上において、配線27を被覆し、かつ、ヘッド側端子28および外部側端子29が露出するパターンとして形成されている。カバー絶縁層7を形成する絶縁体としては、上記したベース絶縁層5と同様の絶縁体が用いられ、好ましくは、感光性ポリイミドが用いられる。また、その厚みは、例えば、3〜20μm、好ましくは、4〜15μmである。
【0039】
支持枠3は、図1および図2に示すように、後述する回路付サスペンション基板集合体シート1の製造方法(図5および図6参照)において、金属支持層17を、回路付サスペンション基板2の外形形状に対応するように、部分的に外形加工する(切り抜く)ことにより、ジョイント部38および金属支持基板4とともに形成される。
【0040】
また、支持枠3には、回路付サスペンション基板2を囲む支持枠3の内周縁部と、回路付サスペンション基板2の外周縁部との間に、回路付サスペンション基板2を囲むようにして平面視略枠状の隙間溝19が形成されている。
【0041】
また、上記した隙間溝19を横切るようにして、ジョイント部38が形成されている。ジョイント部38は、支持枠3の内周縁部から隙間溝19を通過して回路付サスペンション基板2の外周縁部に至るように形成されている。
【0042】
また、支持枠3の周端部には、基準孔としての第2基準孔13が形成されており、第2基準孔13の周囲には、段差部としての第2段差部9が設けられている。
【0043】
このように、回路付サスペンション基板集合体シート1は、複数の回路付サスペンション基板2が、幅方向および長手方向において、互いに間隔を隔てて整列状態で配置され、回路付サスペンション基板2が、ジョイント部38を介して支持枠3に支持されることにより形成されている。
【0044】
そして、上記した第1基準孔12および第2基準孔13は、磁気ヘッド(図示せず)の位置決めや、ロードビーム(図示せず)に対する回路付サスペンション基板2の位置決めのために用いられる。
【0045】
詳しくは、回路付サスペンション基板2に磁気ヘッドを実装するときや、回路付サスペンション基板2をロードビームにスポット溶接するときなどに、第1基準孔12および第2基準孔13にピン(図示せず)を挿入して、位置決めする。
【0046】
図3および図4において、第1基準孔12は、金属支持基板4の厚み方向を貫通するように、平面視略円形状に形成されている。また、第1基準孔12は、金属支持基板4の下面から上面に向かって次第に幅狭となって傾斜する、断面略台形状に形成されている。
【0047】
そのため、第1基準孔12の最小径Dは、第1基準孔12の上端部の内径d1と同一であり、位置決めに用いるピン(図示せず)の外径(最大径)に対応して設定され、例えば、200〜1200μm、好ましくは、400〜1000μmに設定される。なお、第1基準孔12の下端部の内径d2は、例えば、220〜1220μm、好ましくは、420〜1020μmである。
【0048】
第1段差部8は、金属支持基板4の上において、第1基準孔12を囲むように形成されており、より具体的には、第1基準孔12を同心状に囲む、平面視略円環形状に形成されている。第1段差部8は、金属支持基板4の上に形成される段差ベース層31と、段差ベース層31の上に形成される段差導体層32と、段差ベース層31の上に、段差導体層32を被覆するように形成される段差カバー層33とを備えている。
【0049】
段差ベース層31は、第1段差部8の外形形状に対応するように形成されており、金属支持基板4の上面において、平面視略円環形状に形成されている。
【0050】
また、段差ベース層31は、上記したベース絶縁層5と同一層として形成されている。段差ベース層31の内径d3は、例えば、230〜1230μm、好ましくは、430〜1030μmである。また、段差ベース層31の内周面と、第1基準孔12の内周面(上端縁)との間隔L1は、例えば、100μm以下、好ましくは、60μm以下であり、通常、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上である。
【0051】
また、上記した間隔L1は、第1段差部8と第1基準孔12との距離Lと実質的に同一である。第1段差部8と第1基準孔12との距離Lが上記範囲を超える場合には、基準孔形成工程における第1エッチングレジスト14と、金属支持層17および段差部8との接触面積を十分に確保することができず、それらの密着性を向上させることができない場合がある。
【0052】
また、段差ベース層31の幅(径方向長さ、つまり、内周面および外周面間の長さ)は、例えば、50〜1000μm、好ましくは、80〜500μmである。
【0053】
段差導体層32は、段差ベース層31の上面の径方向途中に配置されており、平面視略円環形状に形成されている。
【0054】
また、段差導体層32は、上記した導体層6と同一層として形成されている。
【0055】
また、段差導体層32の内周面と、段差ベース層31の内周面との間隔L2は、例えば、5〜100μm、好ましくは、20〜80μmである。また、段差導体層32の幅(径方向長さ、つまり、内周面および外周面間の長さ)は、例えば、10〜900μm、好ましくは、30〜400μmである。
【0056】
段差カバー層33は、段差導体層32の上面および両側面(内側面および外側面)と、段差導体層32から露出する段差ベース層31の上面を被覆している。詳しくは、段差カバー層33は、内周面が、段差ベース層31の内側端部を露出するように形成されるとともに、外周面が、段差ベース層31の外周面と平面視において同一位置に配置されている。
【0057】
また、段差カバー層33は、段差導体層32を厚み方向に埋設する平面視略円環形状に形成されている。また、段差カバー層33は、上記したカバー絶縁層7と同一層として形成されている。
【0058】
段差カバー層33の内周面と、段差ベース層31の内周面との間隔L3は、例えば、100μm以下、好ましくは、10〜50μmである。また、段差カバー層33の幅(径方向長さ、つまり、内周面および外周面間の長さ)は、例えば、50〜1000μm、好ましくは、80〜500μmである。
【0059】
第1段差部8では、段差カバー層33の内周面から径方向内側に向かって突出する段差ベース層31の内側端部の上面および内周面が、第1段差部分10を形成するとともに、段差カバー層33の内側端部の上面および内周面が、第2段差部分11を形成している。つまり、第1段差部8は、第1段差部分10および第2段差部分11からなり、それらが径方向内側から外側に向かって階段状に上昇する、2段の段差形状として形成されている。
【0060】
第1段差部8の厚みT1は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、通常、例えば、100μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0061】
第1段差部8の厚みT1が上記した範囲に満たない場合には、基準孔形成工程における第1エッチングレジスト14(後述)と、金属支持層17および第1段差部8との接触面積を十分に確保することができず、それらの密着性を向上させることができない場合がある。
【0062】
第2基準孔13は、図1に示すように、支持枠3の上端部および下端部に複数設けられており、各第2基準孔13は、幅方向に間隔を隔てて形成されている。第2基準孔13は、上記した第1基準孔12と同様に形成されている。
【0063】
第2段差部9は、第2基準孔13に対応して設けられ、図2に示すように、各第2段差部9は、各第2基準孔13を囲むようにそれぞれ形成されている。第2段差部9は、上記した第1段差部8と同様に形成されている。
【0064】
次に、本発明の回路付サスペンション基板集合体シート1の製造方法について、図5および図6を参照して説明する。
【0065】
この方法では、まず、図5(a)に示すように、金属支持層17を用意する。金属支持層17は、図1が参照されるように、平面視略矩形平板形状に形成されている。
【0066】
次いで、この方法では、図5(b)に示すように、金属支持層17の上に、ベース絶縁層5を形成する。これと同時に、金属支持層17の上に、段差ベース層31を形成する。
【0067】
ベース絶縁層5および段差ベース層31を同時に形成するには、例えば、金属支持層17の上面全面に、合成樹脂の溶液(ワニス)を塗布した後、乾燥し、次いで、必要に応じて、加熱および硬化させる。その後、エッチングなどにより、上記したパターンに形成する。また、感光性の合成樹脂を用いる場合には、感光性の合成樹脂の溶液(ワニス)を塗布および乾燥後、露光および現像し、その後、必要に応じて、加熱および硬化させることにより、ベース絶縁層5および段差ベース層31を上記したパターンで同時に形成することができる。さらに、ベース絶縁層5および段差ベース層31を同時に形成するには、合成樹脂から、上記したパターンのフィルムを予め形成して、そのフィルムを、金属支持層17の上面に、公知の接着剤層を介して貼着することもできる。
【0068】
なお、段差ベース層31は、金属支持層17における第1基準孔12の開口位置に対応する除去領域としての第1除去領域21、および、金属支持層17における第2基準孔13の開口位置に対応する除去領域としての第2除去領域(図示せず)を囲むように形成する。
【0069】
次に、この方法では、図5(c)に示すように、導体層6を、ベース絶縁層5の上に形成するとともに、段差導体層32を、段差ベース層31の上に形成する。
【0070】
導体層6および段差導体層32を同時に形成するには、アディティブ法やサブトラクティブ法などの公知のパターンニング法が用いられる。好ましくは、アディティブ法が用いられる。
【0071】
次いで、この方法では、図5(d)に示すように、カバー絶縁層7を、ベース絶縁層5の上に、導体層6を被覆するように形成する。これとともに、段差カバー層33を、段差ベース層31の上に、段差導体層32を被覆するように形成する。
【0072】
カバー絶縁層7および段差カバー層33を同時に形成するには、例えば、ベース絶縁層5および導体層6と、段差ベース層31および段差導体層32とを含む金属支持層17の上面全面に、上記した合成樹脂の溶液を塗布した後、乾燥し、次いで、必要に応じて、加熱および硬化させる。その後、エッチングなどにより上記したパターンに形成する。また、感光性の合成樹脂を用いる場合には、ベース絶縁層5および導体層6と、段差ベース層31および段差導体層32とを含む金属支持層17の上面全面に、感光性の合成樹脂の溶液(ワニス)を塗布および乾燥後、露光および現像し、その後、必要に応じて、加熱および硬化させることにより、カバー絶縁層7および段差カバー層33を、上記したパターンで同時に形成することができる。さらに、カバー絶縁層7および段差カバー層33を同時に形成するには、合成樹脂から、上記したパターンのフィルムを予め形成して、そのフィルムを、導体層6およびベース絶縁層5の上、および、段差導体層32および段差ベース層31の上に、公知の接着剤層を介して貼着することもできる。
【0073】
なお、カバー絶縁層7は、ヘッド側端子28および外部側端子29が露出するように形成する。
【0074】
これにより、段差ベース層31、段差導体層32および段差カバー層33からなる第1段差部8および第2段差部9(図2参照。)を、第1除去領域21および第2除去領域(図示せず)をそれぞれ囲むように同時に形成する。
【0075】
次に、この方法では、図2および図6(e)〜図6(h)に示すように、回路付サスペンション基板2および支持枠3を同時に形成する。これとともに、第1基準孔12および第2基準孔13とを同時に形成する(基準孔形成工程)。
【0076】
回路付サスペンション基板2および支持枠3と、第1基準孔12および第2基準孔13とを同時に形成するには、スリット39および隙間溝19に対応する金属支持層17と、第1基準孔12および第2基準孔13に対応する金属支持層17(つまり、第1除去領域21および図示しない第2除去領域)とをエッチングする。
【0077】
すなわち、まず、図6(e)に示すように、エッチングレジストとしての第1エッチングレジスト14を、金属支持層17の上において、第1段差部8および第2段差部9(図2参照)を被覆するように形成する。
【0078】
第1エッチングレジスト14は、例えば、ドライフィルムレジストを、ベース絶縁層5、導体層6およびカバー絶縁層7と、第1段差部8および第2段差部9(図2参照)とを含む金属支持層17の上面全面に積層した後、露光および現像することにより、それらを被覆するパターンとして形成する。
【0079】
第1エッチングレジスト14の厚みは、例えば、5〜40μm、好ましくは、10〜25μmである。
【0080】
また、図6(f)に示すように、エッチングレジストとしての第2エッチングレジスト15を、金属支持層17の下において、第1開口部16および第2開口部18が形成されるように、形成する。
【0081】
第1開口部16は、第2エッチングレジスト15において、第1除去領域21および図示しない第2除去領域に対応しており、それらを露出するように形成されている。また、
第1開口部16は、第1段差部8と同心状の底面視略円形状に形成されており、具体的には、第2エッチングレジスト15の厚み方向において同一径に形成されている。
【0082】
第1開口部16の内径d4は、第1基準孔12の上端部の内径d1よりやや小さく、例えば、170〜1170μm、好ましくは、370〜970μmである。
【0083】
また、第1開口部16の内周面と、段差ベース層31の内周面との間隔L4は、例えば、20〜120μm、好ましくは、25〜50μmである。
【0084】
また、第2開口部18は、第2エッチングレジスト15において、スリット39および隙間溝19(図2参照)が形成される予定の金属支持層17に対応しており、それらを露出するようにそれぞれ形成されている。
【0085】
また、第2エッチングレジスト15は、例えば、ドライフィルムレジストを金属支持層17の下面全面に積層した後、露光および現像することにより、上記した第1開口部16および第2開口部18が形成されたパターンとして形成する。
【0086】
第2エッチングレジスト15の厚みは、例えば、5〜40μm、好ましくは、10〜25μmである。
【0087】
次いで、この方法では、図6(g)に示すように、第2エッチングレジスト15の第2開口部18から露出する金属支持層17をエッチングにより除去する。これともに、第2エッチングレジスト15の第1開口部16から露出する第1除去領域21および第2除去領域(図示せず)をエッチングにより除去する。
【0088】
上記した金属支持層17(第1除去領域21および第2除去領域を含む)のエッチングでは、例えば、塩化第二鉄水溶液、過酸化水素/硫酸混合液、過硫酸アンモニウム水溶液、過硫酸ナトリウム水溶液などの酸性薬液などの公知のエッチング液が用いられる。また、エッチング液の処理では、浸漬法やスプレー法などの公知の方法(ウエットエッチング法)が用いられる。
【0089】
これにより、スリット39(図2参照)を形成して、ジンバル22を形成するとともに、隙間溝19を形成して、金属支持基板4を備える回路付サスペンション基板2と、回路付サスペンション基板2を整列状態で支持する支持枠3と、回路付サスペンション基板2および支持枠3間を連結するジョイント部38とを、金属支持層17から形成する。これと同時に、第1基準孔12を、回路付サスペンション基板2内の金属支持層17に形成するとともに、第2基準孔13を、支持枠3に同時に形成する。
【0090】
その後、この方法では、図6(h)に示すように、第1エッチングレジスト14および第2エッチングレジスト15を除去する。第1エッチングレジスト14および第2エッチングレジスト15は、例えば、剥離やエッチングなどにより除去する。
【0091】
そして、この方法では、上記した第1段差部8および第2段差部9を形成し、その後、基準孔形成工程では、金属支持層17の上において、第1エッチングレジスト14を、第1段差部8および第2段差部9を被覆するように形成することにより、第1基準孔12および第2基準孔13の周囲における第1エッチングレジスト14と、金属支持層17、第1段差部8および第2段差部9との接触面積をより広く確保することができ、それらの密着性を向上させることができる。
【0092】
さらに、第1段差部10および第2段差部11により、第1エッチングレジスト14の鉤状の係止を確保できるので、それらの密着性をより一層向上させることができる。
【0093】
そのため、第2エッチングレジスト15を、金属支持層17から形成される金属支持基板4の下面において、第1除去領域21が露出するように形成し、その後、第1除去領域21をエッチングにより除去しても、エッチング液が、第1除去領域21の周囲における第1エッチングレジスト14と金属支持基板4との境界に浸入することを防止して、第1エッチングレジスト14が金属支持基板4や第1段差部8から剥離することを防止することができる。
【0094】
また、第2エッチングレジスト15を、支持枠3の下面において、第2除去領域が露出するように形成し、その後、第2除去領域をエッチングにより除去しても、エッチング液が、第2除去領域の周囲における第1エッチングレジスト14と支持枠3との境界に浸入することを防止して、第1エッチングレジスト14が支持枠3や第2段差部9から剥離することを防止することができる。
【0095】
そのため、エッチング液の浸入に起因する第1基準孔12および第2基準孔13の最小径Dの拡径を防止して、第1基準孔12および第2基準孔13を優れた精度で、かつ、均一に形成することができる。
【0096】
その結果、磁気ヘッドの位置決め精度やロードビームに対する回路付サスペンション基板2の位置決め精度を向上させることにより、回路付サスペンション基板2との接続信頼性を向上させることができる。
【0097】
上記した説明では、第1エッチングレジスト14および第2エッチングレジスト15を順次形成しているが、例えば、図示しないが、それらを同時に形成することもできる。
【0098】
図7〜図13は、本発明の配線回路基板の他の実施形態である回路付サスペンション基板の第1基準孔および第1段差部の拡大断面図を示し、図7は、第1段差部が段差ベース層および段差導体層から2段で形成される態様、図8は、第1段差部が段差ベース層および段差導体層を埋設しない段差カバー層から2段で形成される態様、図9は、段差導体層および段差カバー層から2段で形成される態様、図10は、本発明の参考形態であって、第1段差部が段差ベース層または段差カバー層から1段で形成される態様、図11は、第1段差部が段差ベース層、段差導体層および段差カバー層から3段で形成される態様、図12は、本発明の参考形態であって、第1段差部が、径方向内側から外側に向かって上昇する段差金属部分から形成される態様、図13は、本発明の参考形態であって、径方向内側から外側に向かって下降する段差金属部分から形成される態様を示す。
【0099】
なお、上記した各部に対応する部材については、以降の各図面において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0100】
上記した図3の説明では、第1段差部8において、第1段差部分10を、段差ベース層31から形成し、第2段差部分11を、段差カバー層33から形成しているが、第1段差部分10および第2段差部分11は、上記した各層の組み合わせに限定されない。例えば、図7に示すように、第1段差部分10を、段差ベース層31から形成し、第2段差部分11を、段差導体層32から形成することができ、また、図8に示すように、第1段差部分10を、段差ベース層31から形成し、第2段差部分11を、段差導体層32を埋設しない段差カバー層33から形成することができ、さらに、図9に示すように、第1段差部分10を、段差導体層32から形成し、第2段差部分11を、段差カバー層33から形成することもできる。
【0101】
図7において、第1段差部8は、段差カバー層33を備えておらず、段差ベース層31および段差導体層32を備えている。
【0102】
第1段差部8では、段差導体層32の内周面から径方向内側に向かって突出する段差ベース層31の内側端部の上面および内周面が、第1段差部分10を形成するとともに、段差導体層32の内側端部の上面および内周面が、第2段差部分11を形成している。
【0103】
図8において、第1段差部8は、段差導体層32を備えておらず、段差ベース層31および段差カバー層33を備えている。
【0104】
第1段差部8では、段差カバー層33の内周面から径方向内側に向かって突出する段差ベース層31の内側端部の上面および内周面が、第1段差部分10を形成するとともに、段差カバー層33の内側端部の上面および内周面が、第2段差部分11を形成している。
【0105】
図9において、第1段差部8は、段差ベース層31を備えておらず、段差導体層32および段差カバー層33を備えている。
【0106】
第1段差部8では、段差カバー層33の内周面から径方向内側に向かって突出する段差導体層32の内側端部の上面および内周面が、第1段差部分10を形成するとともに、段差カバー層33の内側端部の上面および内周面が、第2段差部分11を形成している。
【0107】
また、上記した説明では、第1段差部8の段差数を2(段)としているが、段差数はこれに限定されず、例えば、図11に示すように、3(段)とすることもできる。さらには、図示しない4(段)以上の複数段にすることもできる。なお、本発明の参考となる参考形態として、図10に示すように、1(段)とすることができる。
【0108】
図10において、第1段差部8は、段差ベース層31または段差カバー層33のみを備えており、段差ベース層31または段差カバー層33の内側端部の上面および内周面が、第1段差部分10を形成している。
【0109】
また、図示しないが、第1段差部8を、段差導体層32のみから形成して、段差導体層32の内側端部の上面および内周面が、第1段差部分10を形成することもできる。
【0110】
図11において、第1段差部8では、段差ベース層31の内側端部および外側端部は、段差導体層32から露出し、段差導体層32の内側端部および外側端部は、段差カバー層33から露出している。
【0111】
第1段差部8では、段差導体層32の内周面から径方向内側に向かって突出する段差ベース層31の内側端部の上面および内周面が、第1段差部分10を形成し、段差カバー層33の内周面から径方向内側に突出する段差導体層32の内側端部の上面および内周面が、第2段差部分11を形成するとともに、段差カバー層33の内側端部の上面および内周面が、第3段差部分30を形成している。
【0112】
第1段差部8は、第1段差部分10、第2段差部分11および第3段差部分30からなり、それらが径方向内側から外側に向かって階段状に上昇する、3段の段差形状として形成されている。
【0113】
また、上記した説明では、第1段差部8を、段差ベース層31、段差導体層32および段差カバー層33のいずれかの層から形成しているが、例えば、参考形態として、図12および図13に示すように、上記した各層から形成することなく、金属支持層17の段差金属部分26から形成することもできる。
【0114】
図12において、段差金属部分26は、基準孔形成工程前の金属支持層17における第1除去領域21およびその周辺の上側部分が除去される一方、金属支持層17における第1除去領域21およびその周辺以外において残存する残存部42として形成されている。
【0115】
そして、段差金属部分26の内側端部の上面および内周面が、第1段差部分10を形成している。すなわち、第1段差部8は、第1段差部分10からなり、径方向内側から外側に向かって階段状に上昇する、1段の段差形状として形成されている。
【0116】
また、図13において、段差金属部分26は、基準孔形成工程前の金属支持層17における第1除去領域21およびその周辺以外の上側部分が均一に除去される一方、金属支持層17における第1除去領域21の近傍に残存する残存部42として形成されている。
【0117】
そして、段差金属部分26の外側端部の上面および外周面が、第1段差部分10を形成している。すなわち、第1段差部8は、第1段差部分10からなり、径方向内側から外側に向かって階段状に下降する、1段の段差形状として形成されている。
【0118】
なお、上記した説明では、2つの基準孔、つまり、第1基準孔12および第2基準孔13の両方を用いて、磁気ヘッドを位置決めしたり、回路付サスペンション基板2をロードビームに対して位置決めしているが、例えば、第1基準孔12および第2基準孔13のいずれか一方のみを用いて位置決めすることもできる。
【0119】
また、上記した説明では、第1段差部8(および第2段差部9)を、金属支持層17(および金属支持基板4)の上側に形成しているが、例えば、図示しないが、金属支持層17(および金属支持基板4)の下側に形成することもできる。その場合には、第1エッチングレジスト14および第2エッチングレジスト15を上下反転して形成して、第1開口部16を、金属支持層17の上側に形成する。
【0120】
好ましくは、第1段差部8(および第2段差部9)を、金属支持層17(および金属支持基板4)の上側に形成する。これにより、段差ベース層31、段差導体層32および段差カバー層33を、金属支持層17に対して、ベース絶縁層5、導体層6およびカバー絶縁層7と同じ側、つまり、上側に設け、しかも、同一層としてそれぞれ形成することができる。そのため、製造工程を簡略化できるとともに、第1段差部8および第2段差部9をより一層優れた精度で形成して、第1基準孔12および第2基準孔13をより一層優れた精度で、かつ、より一層均一に形成することができる。
【0121】
また、上記した説明では、本発明の配線回路基板を回路付サスペンション基板2を備える回路付サスペンション基板集合体シート1として例示しているが、例えば、金属支持層17を補強層として備えるフレキシブル配線回路基板を備えるフレキシブル配線回路基板集合体シートとして用いることもできる。
【実施例】
【0122】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何らそれらに限定されることはない。
【0123】
実施例1
まず、平面視矩形平板形状のステンレスからなる金属支持層を用意した(図5(a)参照)。金属支持層の厚みは20μmであった。
【0124】
次いで、金属支持基板の上面全面に、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを塗布した後、加熱、乾燥し、フォトマスクを介して露光し、アルカリ現像液で現像した。その後、加熱、硬化させることにより、ポリイミドからなるベース絶縁層および段差ベース層を上記したパターンで形成した(図5(b)参照)。
【0125】
ベース絶縁層および段差ベース層の厚みは10μmであった。また、段差ベース層の幅は300μmであり、内径(d3)は840μmであった。
【0126】
次いで、金属支持基板、ベース絶縁層および段差ベース層の上に、クロム薄膜と銅薄膜とを、スパッタリング法によって順次形成することにより、金属薄膜を形成した。その後、金属薄膜の表面に、導体層および段差導体層の反転パターンで、ドライフィルムレジストからめっきレジストを形成した。そして、電解銅めっきにより、導体層および段差導体層を同時に形成した後、めっきレジストを剥離し、導体パターンおよび段差導体層から露出する金属薄膜をエッチングにより形成した(図5(c)参照)。
【0127】
導体層および段差導体層の厚みは12μmであった。また、段差導体層の幅は215μmであり、段差導体層の内周面と、段差ベース層の内周面との間隔(L2)は30μmであった。
【0128】
次いで、ベース絶縁層、段差ベース層、導体層および段差導体層を含む金属支持層の上面全面に、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを塗布した後、加熱、乾燥し、フォトマスクを介して露光し、アルカリ現像液で現像した。その後、加熱、硬化させることにより、ポリイミドからなるカバー絶縁層および段差カバー層を上記したパターンで形成した(図5(d)参照)。
【0129】
カバー絶縁層および段差カバー層の厚みは5μmであった。また、段差カバー層の幅は290μmであり、段差カバー層の内周面と、段差ベース層の内周面との間隔(L3)は5μmであった。
【0130】
これによって、段差ベース層、段差導体層および段差カバー層からなる、厚み27μmの第1段差部および第2段差部を同時に形成した。なお、第1段差部および第2段差部は、2段の段差形状であって、ともに同一寸法で形成した。
【0131】
次いで、スリットおよび隙間溝をエッチングにより形成するとともに、第1基準孔および第2基準孔をエッチングにより形成した(図6(e)〜図6(h)参照)。
【0132】
すなわち、まず、ドライフィルムレジストを、ベース絶縁層、導体層およびカバー絶縁層と、第1段差部および第2段差部とを含む金属支持層の上面全面に積層した後、露光および現像することにより、それらを被覆するパターンで第1エッチングレジストを形成した(図6(e)参照)。なお、第1エッチングレジストの厚みは40μmであった。
【0133】
次いで、ドライフィルムレジストを、金属支持層の下面全面に積層した後、フォトマスクを介して露光および現像することにより、上記した第1開口部および第2開口部が形成されたパターンで第2エッチングレジスト形成した(図6(f)参照)。
【0134】
第1開口部の内径(d4)は770μmであり、第1開口部の内周面と、段差ベース層の内周面との間隔(L4)は20μmであった。第2エッチングレジストの厚みは25μmであった。
【0135】
その後、第2エッチングレジストの第2開口部から露出する金属支持層をエッチングにより除去するともに、第2エッチングレジストの第1開口部から露出する第1除去領域および第2除去領域をエッチングにより除去した(図6(g)参照)。
【0136】
エッチングでは、塩化第二鉄水溶液をエッチング液として用いる浸漬法を実施した。
【0137】
これにより、スリットを形成して、ジンバルを形成するとともに、隙間溝を形成して、金属支持基板を備える回路付サスペンション基板と支持枠とジョイント部とを、金属支持層から形成した。これと同時に、第1基準孔を、回路付サスペンション基板内の金属支持層に形成するとともに、第2基準孔を、支持枠に形成した。
【0138】
第1基準孔および第2基準孔は、上側に向かって次第に幅狭となって傾斜する、断面台形状に形成されており、最小径(D)、すなわち、上端部の内径(d1)は約800μmであった。なお、第1基準孔および第2基準孔における下端部の内径(d2)は820μmであった。
【0139】
また、段差ベース層の内周面と、第1基準孔の内周面(上端縁)との間隔(L1)は、50μmであった。
【0140】
その後、第1エッチングレジストおよび第2エッチングレジストを、剥離により除去した(図6(h)参照)。
【0141】
これにより、回路付サスペンション基板集合体シートを得た(図1および図2参照)。
【0142】
比較例1
実施例1において、第1段差部および第2段差部(段差ベース層、段差導体層および段差カバー層)を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、回路付サスペンション基板集合体シートを得た。
【0143】
(評価)
実施例1の回路付サスペンション基板集合体シートの複数の第1基準孔の最小径(D)を測長機にて測定した。その結果を、図14に示す。なお、実施例1の最小径(D)の測定値の標準偏差(σ)は、0.0012であった。
【0144】
また、上記と同様にして、比較例1の回路付サスペンション基板集合体シートについても、第1基準孔の最小径(D)を測定した。その結果を、図15に示す。なお、比較例1の最小径(D)の測定値の標準偏差(σ)は、0.0049であった。
【符号の説明】
【0145】
2 回路付サスペンション基板
5 ベース絶縁層
6 導体層
12 第1基準孔
13 第2基準孔
14 第1エッチングレジスト
15 第2エッチングレジスト
17 金属支持層
21 第1除去領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持層、前記金属支持層の上に形成される絶縁層、および、前記絶縁層の上に形成される導体層を備える配線回路基板であって、
前記金属支持層には、位置決めするための基準孔が形成されており、
前記基準孔を間隔を隔てて囲むように、段差部が形成され、
前記段差部は、
前記金属支持層の上に形成される環状または枠状の第1段差層と、
前記第1段差層の上に、内周面が、前記第1段差層の内側端部を露出するように、形成される環状または枠状の第2段差層とを備え、
前記第2段差層の内周面から内側に向かって突出する前記第1段差層の内側端部の上面および内周面が、第1段差部分を形成するとともに、前記第2段差層の内側端部の上面および内周面が、第2段差部分を形成しており、これによって、前記段差部は、前記第1段差部分および前記第2段差部分が内側から外側に向かって階段状に上昇する、2段の段差形状に形成されている
ことを特徴とする、配線回路基板。
【請求項2】
前記段差部は、前記絶縁層および/または前記導体層と同一層として形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記段差部と前記基準孔との距離が、100μm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記段差部の厚みが、5μm以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記絶縁層が、ポリイミドから形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記導体層が、銅から形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項7】
回路付サスペンション基板として用いられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の配線回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−93097(P2013−93097A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−22710(P2013−22710)
【出願日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【分割の表示】特願2009−195840(P2009−195840)の分割
【原出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】