配線基板の表面処理方法及びこの表面処理方法により処理された配線基板
【課題】本発明は、配線表面に1000nmを超す凹凸を形成することなく、配線間の絶縁信頼性の確保、配線表面と絶縁層及び絶縁層と絶縁層との接着強度を確保でき、更に配線基板の製造工程を短縮できる絶縁層及び銅配線の表面処理方法、並びにこの表面処理方法により処理された各種信頼性に優れる配線基板を提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを備える配線基板の表面処理方法であって、(I)前記配線基板における絶縁層表面を溶解する処理工程と、(II)前記銅配線表面に凹凸を形成する処理工程とを含み、前記工程(I)と前記工程(II)の一部を同一処理条件下で同時に行うことを特徴とする。
【解決手段】絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを備える配線基板の表面処理方法であって、(I)前記配線基板における絶縁層表面を溶解する処理工程と、(II)前記銅配線表面に凹凸を形成する処理工程とを含み、前記工程(I)と前記工程(II)の一部を同一処理条件下で同時に行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを有する配線基板における絶縁層及び銅配線の表面処理方法、更にこの表面処理方法により表面処理が施された配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の発展は目覚しく、情報処理機器の分野では、大型、小型を問わず、機器の機能向上が求められている。例えば、民生機器の分野では、パソコン、携帯電話等の機器の小型化、軽量化、高性能化及び高機能化が進められている。一方、産業用機器の分野では、無線基地局、光通信装置、及びサーバ、ルータ等のネットワーク関連機器等について、先と同様の検討が進められている。また、情報伝達量の増加に伴い、情報処理機器で扱う信号の高周波化が年々進む傾向にあるため、高速処理及び高速伝送技術の開発も進められている。例えば、実装関係では、CPU、DSP、各種メモリ等のLSIの高速化及び高機能化と共に、新たな高密度実装技術として、システムオンチップ(SoC)、システムインパッケージ(SiP)等の開発が盛んに行われている。このような状況下、半導体チップ搭載基板やマザーボードについても、高周波化、高密度配線化及び高機能化に対応する必要がある。それらの代表的な基板として、近年、ライン/スペース(L/S)=15μm/15μm以下の微細配線を形成した、ビルドアップ方式の多層配線基板(以下、「ビルドアップ基板」と言う)が使用されている。
【0003】
基板上の微細配線の形成は、通常、サブトラクティブ法、又は、セミアディティブ法によって行われる。サブトラクティブ法による一般的な配線形成工程では、最初に、銅箔表面にエッチングレジストを形成し、その後、露光及び現像を行い、レジストパターンを形成する。次に、不要な銅箔をエッチングし、レジスト剥離を行うことによって配線を形成する。
【0004】
一方、セミアディティブ法は、最初に、絶縁層表面に薄膜銅(シード層)を形成し、次いで、シード層表面に、めっきレジストを形成し、その後、露光及び現像を行い、レジストパターンを形成する。更に、電気銅めっき、レジスト剥離及びシード層のエッチングを行うことによって配線を形成する。
【0005】
一般的に、L/S=15μm/15μm以下の微細配線の形成においては、後者のセミアディティブ法を適用することが好ましい。
【0006】
セミアディティブ法におけるシード層の形成は、一般的に、絶縁層表面にパラジウムを吸着させ、無電解銅めっきを析出させることによって達成される。そのため、上記シード層の銅をエッチングした後、配線間の絶縁層表面に残存するパラジウムを除去し、配線間の絶縁信頼性を確保する必要がある。また、絶縁層を多層化する場合は、絶縁層間の接着力を向上させるために、配線形成後に絶縁層表面をエッチング等により溶解し、表面を粗化する処理が行われる。
【0007】
一方、ビルドアップ基板は、配線形成後に、層間絶縁層形成工程と配線形成工程を、交互に繰り返すことによって製造される。
【0008】
また、ビルドアップ基板の最表面には、外部接続端子、半導体チップ接続端子等の、端子部以外の配線を保護するために、必要に応じてソルダーレジスト、カバーレイ等の絶縁層が形成される。
【0009】
従って、ビルドアップ基板では、配線表面と絶縁層及び絶縁層と絶縁層との接着強度を確保すること、更に配線間の絶縁信頼性を確保することが重要である。また、近年、各種機器の機能向上に向けてL/S=15μm/15μm以下の微細配線の需要が高まっており、それら微細配線における伝送速度等の電気特性を向上するためには、配線表面の平滑化や配線精度を確保することも重要である。
【0010】
このような各種特性を確保することを目的として、従来から幾つかの絶縁層表面処理方法及び配線表面処理方法が提案されてきた。
【0011】
絶縁層表面処理方法の一例として、デスミア処理による方法が知られている。デスミア処理とは、配線基板の製造時に行うドリル加工の際に発生する樹脂残渣(スミア)を除去する処理であり、例えば、以下の3つの処理工程(I)〜(III)で構成される方法がある。
(I)エッチングする前処理として、絶縁層表面を膨潤させる膨潤工程。
(II)下記化学反応式(1)に示すように、過マンガン酸塩等の酸化剤を含むアルカリ性水溶液を用いて、絶縁層表面をエッチングするエッチング工程。
【0012】
【化1】
【0013】
(III)過マンガン酸を還元して除去するための後処理として、酸性溶液で処理する中和工程。
ビルドアップ基板の表面に対して上記(I)〜(III)で構成されるデスミア処理を行うことで、配線間の絶縁層表面がエッチングされ、絶縁層表面が粗化され、また絶縁層表面のスミアや残存するパラジウムといった汚れを除去することができる。なお、この方法によって、配線上のパラジウムは除去されることはない。
【0014】
一方、配線表面と絶縁層との接着強度を確保するための配線表面処理方法として、以下に説明するような銅表面処理方法が知られている。
【0015】
第1の方法は、エッチングにより銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与し、アンカー効果によって、銅表面と絶縁層との接着力を確保する方法である。例えば、特許文献1は、無機酸及び銅の酸化剤からなる主剤と、少なくとも一種のアゾール類及び少なくとも一種のエッチング抑制剤からなる助剤とを含む水溶液を用いて、銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与する方法を開示している。また、他の例として、特許文献2は、マイクロエッチングによって高さが1.5〜5.0μmの連続的な凹凸を形成した後、クロメート処理及びカップリング剤処理を施す方法を開示している。
【0016】
上記第1の方法では、酸化剤を含む酸性溶液で酸化処理を行うため、下記化学反応式(2)に示すように、酸化剤により酸化銅(CuO)の生成と同時に、酸によって銅が溶解(エッチング)される。
【0017】
【化2】
【0018】
図1は、前述したエッチングにより銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与する第1の方法に関し、(a)及び(b)は各工程における銅表面の状態を示す模式的断面図である。図1(a)に示すように、銅の粒界部200は、他の部位よりも早くエッチングされ、図1(b)に示すような独特の凹凸形状が形成される。従って、化学反応式(2)に示す反応が進むほど、銅のエッチングも進み、凹凸形状は大きくなる。
【0019】
第2の方法は、銅表面に微細な酸化銅の針状結晶による凹凸形状形成後、還元処理を行うことによって、微細な金属銅の針状結晶を付与し、アンカー効果によって、銅表面と絶縁層との接着力を確保する方法である。例えば、特許文献3は、亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有するアルカリ性水溶液を用い、その水溶液に80℃前後で浸漬することによって銅表面に酸化銅の微細な針状結晶を付与し、更に、引き続き、アミンボラン類の少なくとも一種類とホウ素系薬品とを混合した溶液を用いて還元処理を施すことによって、金属銅の微細な針状結晶を付与する方法を開示している。
【0020】
上記第2の方法では、下記化学反応式(3)に示すように酸化剤によってCuOが生成する。
【0021】
【化3】
【0022】
また、前述した第1の方法と異なり、第2の方法では、アルカリ性溶液を用いた処理を行うため、電位−pHの関係からすると、CuOの状態でほぼ安定となる。図2は、前述した銅表面に微細な酸化銅の針状結晶を付与する第2の方法に関し、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図であり、(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。図2(b2)に示すように、この方法では、先ず、CuOの針状結晶の凹凸201が形成される。その後、還元処理を行うことで、図2(c2)に示すように、金属銅の針状結晶の凹凸202が形成される。
【0023】
上記化学反応式(3)による酸化処理は、銅表面の全てがCuOで覆われるまで反応が進行する。そのため、短時間で銅表面がCuOに覆われる程、即ち、酸化反応速度が速くなるにつれて、CuOの針状結晶は均一で微細な凹凸が形成される。逆に、酸化反応速度が遅くなると、不均一で部分的に長い針状結晶が形成され、ばらつきのある凹凸が形成される。通常、第2の方法では、酸化反応速度が遅いために、図2(b2)及び(c2)に示すように、不均一で部分的に長い針状結晶の凹凸201、202が形成される。
【0024】
第3の方法は、銅表面に、銅よりも貴な金属を離散的に形成後、銅を酸化して、微細な酸化銅の針状結晶による凹凸を形成した後、還元処理を行うことによって、金属銅の針状結晶によるナノレベルの凹凸を付与し、アンカー効果によって、銅表面と絶縁層との接着力を確保する方法である。このような方法は、上記第1及び第2の方法における問題点を解決するために本発明者らによって提案された方法であり、特許文献4で開示されている。
【0025】
上記第3の方法では、酸化処理前に、銅表面に貴金属を離散的に形成する工程を設けることによって、酸化反応速度を高めている。第3の方法のように、標準電極電位の異なる金属を電気的に接触させた場合、より具体的には、銅表面に貴金属を離散的に形成した場合、酸化されやすい金属(銅:Cu)がアノードを、酸化されにくい金属(貴金属)がカソードを分担することになる。そのことによって、引き続き実施される酸化処理における反応速度が増加し、銅を単独で処理する場合と比べて、酸化が加速されることになる。
【0026】
図3は、前述した金属銅の針状結晶によるナノレベルの凹凸を付与する第3の方法に関し、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図であり、(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。銅を単独で酸化処理する場合、図2(b2)に示すように不均一で部分的に長いCuOの針状結晶の凹凸が形成される。一方、図3(a1)に示すように銅表面に貴金属203を離散的に形成した後に酸化処理を行った場合には、図3(b2)に示すように均一で微細なCuOの針状結晶の凹凸204が形成される。そして、引き続き、CuOの針状結晶の還元処理を行うことによって、図3(c2)に示すように微細な金属銅の針状結晶の凹凸205が形成される。
【0027】
第4の方法は、銅表面に、銅よりも貴な金属を離散的に形成後、銅を酸化して、微細な酸化銅の針状結晶による凹凸を形成した後、上記酸化銅を酸性溶液で溶解して、ナノレベルの凹凸を付与し、アンカー効果によって、銅表面と絶縁層との接着力を確保する方法である。このような方法は、上記第3の方法をさらに改善した方法として本発明者によって提案されており、特許文献5で開示されている。
【0028】
上記第4の方法では、酸化処理前に、銅表面に貴金属を離散的に形成する工程、引き続き酸化剤を含むアルカリ溶液を用いて酸化処理を行う工程、次いで、酸性溶液又は銅の錯化剤を含む溶液による処理を行う工程を、連続的に行うことを特徴としている。
【0029】
図4は、前述した酸化銅を酸性溶液で溶解して、ナノレベルの凹凸を付与する第4の方法に関し、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図であり、(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。第4の方法によれば、最初に、第3の方法と同様に、図4(a2)に示したように銅表面に貴金属203を離散的に形成する。次いで、上記銅表面の酸化処理を行うことによって、図4(b2)に示したような均一で微細なCuOの針状結晶の凹凸204が形成される。そして、その後、酸性溶液又は銅の錯化剤を含む溶液による処理を行い、CuOを選択的に溶解させることによって、図4(c2)に示したような微細な針状ではない金属銅の凹凸206が形成されることになる。
【0030】
以上説明したように、ビルドアップ基板等の多層構造を有する配線基板の製造では、配線間の絶縁信頼性の確保、配線表面と絶縁層との接着強度、及び絶縁層と絶縁層との接着強度を確保するために、通常、デスミア処理による絶縁層表面処理と、配線表面処理とを個別に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2000−282265号公報
【特許文献2】特開平9−246720号公報
【特許文献3】特許第2656622号公報
【特許文献4】特開2006−249519号公報
【特許文献5】特開2009−140998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
前述のように、ビルドアップ基板の製造では、一般に、配線形成後にデスミア処理による絶縁層表面処理を行い、その後に配線表面処理が行われる。しかしながら、先に説明したような配線基板に対する従来の表面処理方法では以下に示す解決すべき課題があり、それら課題は従来の表面処理方法を微細配線のビルドアップ基板に適用する際の障害となっている。
【0033】
先ず、上記第1の方法によれば、銅表面にRz(十点平均粗さ)で、1.5〜5μmの凹凸を形成し、アンカー効果による接着強度の改善が見られる。しかし、セミアディティブ法による微細配線形成においては、配線表面の凹凸は1μmを超す粗化形状であるため、そのような配線に高速の電気信号を流すと、表皮効果によって電気信号が、配線の表面付近に集中して流れるようになるため、伝送損失が大きくなる傾向がある。また、更にL/S=15μm/15μm以下の配線になると、配線精度を維持することが困難になる傾向がある。
【0034】
次に、上記第2の方法は、第1の方法と同様に、配線表面に表面粗さRzが、0.1〜1.5μmの凹凸を形成し、そのアンカー効果によって接着強度を確保する技術である。しかし、上記第2の方法では、表面に形成される凹凸の高さのバラツキが大きく、Rz<0.5μmである場合は、絶縁樹脂との高温及び高湿時の接着信頼性が低下する傾向がある。一方、Rz>1.0μmである場合は、第1の方法と同様に、伝送損失が大きくなる傾向がある。また、凹凸を形成する針状結晶が複雑に絡み合っているため、樹脂の粘度特性等の物性によっては、針状結晶の凹凸に樹脂が埋まりにくく、高温及び高湿時の接着信頼性が低下する傾向がある。更に、Rz≧0.1μmの金属銅の針状結晶は折れやすく、水平ラインによる処理を行うことは極めて困難であるため、薄板の処理に関する作業性が悪い。
【0035】
上記第1及び第2の方法における問題点は、本発明者によって提案された上記第3の方法によって解決することが可能である。上記第3の方法によれば、銅表面に離散的に貴金属を形成し、その後、酸化剤を含むアルカリ溶液で酸化処理して、酸化銅を形成し、表面にRzが0.001〜1μmの微細な凹凸を形成することによって、銅表面と絶縁樹脂との接着強度を向上させることができる。上記第3の方法では、スルーホール接続のめっき工程による酸化銅の針状結晶の溶解を防ぐために、酸化処理後に更に還元剤を含むアルカリ溶液を用いて還元処理を行うことが好ましい。しかし、第3の方法によって得られる凹凸は、針状結晶によって形成されるため、部分的に結晶同士が重なり、第2の方法と比較してその程度は小さいが、樹脂の粘度特性等によっては樹脂がこの針状結晶の凹凸に埋まりにくいという課題がある。そのため、本発明者らは上記第3の方法をさらに改善した方法として第4の方法を提案している。上記第4の方法によれば、上記第3の方法において、酸化銅を形成した後、酸性溶液により酸化銅を溶解して、表面にRzが0.001〜1μmの微細な凹凸を形成することによって、銅表面と絶縁樹脂との接着強度を向上させることが可能である。
【0036】
このように上記第4の方法は、配線表面の粗化が低レベルであっても絶縁層との接着性を確保できるという点で優れた方法である。しかし、上記第1及び第2の方法と比較して処理工程が多いため、生産性に劣るという課題があり、工程の短縮化が望まれている。
【0037】
以上説明したように、配線間の絶縁信頼性の確保、配線表面と絶縁層及び絶縁層と絶縁層との接着強度を確保するための配線基板の表面処理に関し、より簡便かつ効果的な方法が望まれている。従って、本発明は、上記従来の方法で見られる課題を改善することを目的とする。より具体的には、配線表面に1000nmを超す凹凸を形成することなく、配線間の絶縁信頼性の確保、及び配線表面と絶縁層並びに絶縁層と絶縁層との接着強度を確保でき、更に、配線基板の製造工程を短縮化できる簡便かつ効果的な絶縁層及び銅配線の表面処理方法、並びにこの表面処理方法により処理された各種信頼性に優れる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の事項に関する。
本発明の第1は、絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを備える配線基板の表面処理方法であって、(I)上記配線基板における絶縁層表面を溶解する処理工程と、(II)上記銅配線表面に凹凸を形成する処理工程とを含み、上記工程(I)と上記工程(II)の一部を同一処理条件下で同時に行うことを特徴とする、配線基板の表面処理方法に関する。
【0039】
ここで上記絶縁層表面を溶解する処理工程(I)は、(Ia)上記絶縁層表面を膨潤させる膨潤工程と、(Ib)上記絶縁層表面をエッチングするエッチング工程と、(Ic)上記絶縁層表面を中和する中和工程とを備え、上記銅配線表面に凹凸を形成する処理工程(II)は、(IIa)上記銅配線表面に銅よりも貴な金属を形成する貴金属処理工程と、(IIb)上記銅配線表面を酸化する酸化工程と、(IIc)上記銅配線表面を酸性溶液で処理する酸処理工程とを備え、上記エッチング工程(Ib)と上記酸化工程(IIc)による処理、及び上記中和工程(Ic)と上記酸処理工程(IIc)による処理の少なくとも一方を同一条件下で同時に行うことが好ましい。
【0040】
本発明の第2は、絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを備える配線基板の表面処理方法であって、(A)上記配線基板における銅配線表面に、銅よりも貴な金属を形成する工程と、(B)上記配線基板を、有機化合物を含むアルカリ性溶液に接触させる工程と、(C)上記配線基板を、過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液に接触させる工程と、(D)上記工程(C)に引き続き、上記配線基板を、上記過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に接触させる工程とを有することを特徴とする、配線基板の表面処理方法に関する。
【0041】
ここで、本発明の第1又は第2の配線基板の表面処理方法は、さら後処理として、銅配線表面に銅よりも卑な金属を形成する処理、アゾール化合物を含有する溶液を用いた処理、及びカップリング剤を用いた処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理を行う工程を有することが好ましい。
【0042】
また、上記銅よりも貴な金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、及びイリジウムからなる群から選択される金属であることが好ましい。
【0043】
また、上記銅よりも貴な金属の形成量は、0.001〜40μmol/dm2であることが好ましい。
【0044】
また、表面処理後の上記銅配線の表面粗さは、Rzで1〜1000nmであることが好ましい。
【0045】
本発明の第3は、本発明の第1又は第2の配線基板の表面処理方法を用いて処理された配線基板に関する。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、銅配線間の絶縁層表面のスミア及び残存パラジウムを除去し、絶縁層間の接着強度を確保するために行うデスミア処理と、配線表面と絶縁層との接着強度を確保するために行う配線表面処理に関して、それぞれの処理における工程の一部を同一処理条件下で同時に行うことができるため、各処理を別々に実施する従来法と比較して、工程の短縮化が可能となる。更に、配線表面に1000nmを超す凹凸を形成することなく、銅配線表面と絶縁層との接着強度を確保すると共に、各種信頼性を向上させることができる配線基板の表面処理方法を提供することができる。本発明による配線基板の表面処理方法は、多層プリント配線基板、ビルドアッププリント配線基板等のマザーボード、並びにリジットサブストレート及びビルドアップサブストレート等の半導体チップ搭載基板等の各種配線基板の配線部材に対して好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、従来の銅表面処理技術に関し、エッチングにより銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与する方法(第1の方法)の説明図であり、(a)及び(b)は各工程における銅表面の状態を示す模式的断面図である。
【図2】図2は、従来の銅表面処理技術に関し、銅表面に微細な酸化銅の針状結晶を付与する方法(第2の方法)の説明図であり、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図、及び(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。
【図3】図3は、従来の銅表面処理技術に関し、金属銅の針状結晶によるナノレベルの凹凸を付与する方法(第3の方法)の説明図であり、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図、及び(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。
【図4】図4は、従来の銅表面処理技術に関し、酸化銅を酸性溶液で溶解して、ナノレベルの凹凸を付与する方法(第4の方法)の説明図であり、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図、及び(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。
【図5】本発明による半導体チップ搭載基板の一例を示す模式的断面図である。
【図6】本発明による半導体チップ搭載基板の別の一例を示す模式的断面図である。
【図7】本発明によるファン−インタイプ半導体チップ搭載基板の一例を示す平面図である。
【図8】本発明によるファン−アウトタイプ半導体チップ搭載基板の一例を示す平面図である。
【図9】本発明による半導体チップ搭載基板の製造方法の一例を示す図であり、(a)〜(g)は各工程に対応する模式的断面図である。
【図10】本発明によるフレーム形状の半導体チップ搭載基板の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は部分拡大図である。
【図11】本発明によるフリップチップタイプ半導体パッケージの一例を示す模式的断面図である。
【図12】本発明によるワイヤボンドタイプ半導体パッケージの一例を示す模式的断面図である。
【図13】本発明による試験用評価基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図14】本発明による試験用評価基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図15】実施例で作製した電食試験用評価基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明について、より具体的に説明する。なお、以下の説明では、本発明による配線基板の表面処理方法について、半導体チップ搭載基板に適用した場合を例に挙げている。しかし、以下の説明は、本発明の一実施形態に過ぎず、その他の実施形態では、多層プリント配線基板及びビルドアップ基板といったマザーボード等の表面処理方法として、本発明を適用することもできる。
【0049】
本発明による配線基板の表面処理方法は、従来、別々の工程として行っていた、(I)絶縁層表面を溶解するデスミア処理工程と、(II)配線表面に凹凸を形成する処理工程との一部を、同一処理で行うことを特徴とする。より具体的には、本発明による表面処理方法では、デスミア処理工程(I)が、(Ia)絶縁層表面を膨潤させる膨潤工程、(Ib)絶縁層表面をエッチングするエッチング工程、(Ic)絶縁層表面を中和する中和工程とを備え、銅配線表面に凹凸を形成する処理工程(II)が、(IIa)銅配線表面に銅よりも貴な金属を形成する貴金属処理工程、(IIb)銅配線表面を酸化する酸化工程、(IIc)銅配線表面を酸性溶液で処理する酸処理工程とを備える場合に、上記エッチング工程(Ib)と上記酸化工程(IIb)による処理、及び上記中和工程(Ic)と上記酸処理工程(IIc)による処理の少なくとも一方の処理を同一条件下で同時に実施することを特徴とする。
【0050】
また、本発明による配線基板の表面処理方法の一実施形態は、(A)配線基板の銅配線表面に、銅よりも貴な金属を形成する工程、(B)有機化合物を含むアルカリ性溶液に配線基板を接触させる工程、(C)過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液に上記配線基板を接触させる工程、(D)過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に上記配線基板を接触させる工程を有する。
【0051】
処理後の配線表面粗さは、Rzで1〜1000nmであることが好ましい。また、Rzで1〜300nmであることがより好ましく、Rzで1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることが更に好ましい。Rzが1nm未満では、徐々に絶縁樹脂等との接着力が低下する傾向がある。一方、Rzが1000nmを超えると、伝送損失が大きくなる問題が発生しやすくなる傾向があり、微細配線において処理後の配線精度が大きくずれる問題が生じる傾向がある。なお、本明細書で記載する表面粗さRzは、接触式表面粗さ計又は、原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて測定した値を意図している。
【0052】
本発明による配線基板の表面処理方法によって形成される配線表面の凹凸は、従来の第4の銅表面処理方法によって得られる凹凸の形状と同等に緻密且つ均一である。しかし、本発明によれば、デスミア処理の工程の一部を、他の処理と同一条件下で同時に行うことによって、全体の工程を短縮化できる。ここで、本明細書で使用する表現「緻密且つ均一」とは、銅表面の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した時、あるいは集束イオンビーム加工観察装置(FIB)により加工を行った後に、その断面を走査イオン顕微鏡(SIM)により観察した時、金属銅の表面に位置する結晶によって形成された凹凸が密集し、凹凸の高さバラツキが小さい状態であることを意味する。
【0053】
本発明の方法によれば、最初に、従来の第4の方法と同様に、図4(a2)に示したように、銅配線表面に貴金属203を離散的に形成する。次いで、銅配線基板を、有機化合物を含むアルカリ性溶液に浸漬して絶縁層を膨潤処理する。その後、過マンガン酸塩(酸化剤)を含むアルカリ性溶液で処理を行うことによって、絶縁層表面をエッチングするのと同時に、図4(b2)に示すような微細なCuOの凹凸が銅配線表面に形成される。更に、過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に浸漬することで、過マンガン酸を還元して除去する中和処理を行い、同時に銅配線表面に形成されたCuOを酸で選択的に溶解させることによって、図4(c2)に示すような微細な凹凸が形成される。これによって、配線間の絶縁層表面には凹凸が形成され、また絶縁層表面上に吸着しているパラジウムも、絶縁層のエッチングに伴って除去される。
【0054】
次に、本発明による配線基板の表面処理方法について、工程毎に、更に詳細に説明する。なお、本願発明においては、各工程による処理に先立ち、銅表面の清浄化を行う脱脂処理、酸洗処理、あるいはこれらを適宜組み合わせた前処理を行うことが好ましい。
【0055】
(工程A:銅よりも貴な金属を形成する工程)
銅より貴な金属を離散的に銅配線表面に形成する方法としては、特に限定されず、下地となる銅配線表面を完全に覆うことなく、銅配線表面に貴な金属を均一に分散した状態で付与することができれば、如何なる方法であってもよい。例えば、無電解めっき、電気めっき、置換めっき、スプレー噴霧、塗布、スパッタリング、蒸着等の方法が挙げられ、中でも、置換めっきによる方法が好ましい。置換めっきは、銅と銅よりも貴な金属とのイオン化傾向の違いを利用する方法であり、このような方法を適用することによって、銅よりも貴な金属を容易且つ安価に銅表面に離散的に形成することができる。
【0056】
銅より貴な金属とは、銅の電位よりも高い電位を有する金属を意図している。そのような貴金属としては、特に限定されないが、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムから選択される金属を用いることができる。
【0057】
銅表面上に離散的に形成する銅よりも貴な金属の形成量は、特に限定されない。しかし、緻密且つ微細で均一な望ましい凹凸の形状を得やすいこと、また絶縁樹脂との充分な接着強度を確保することが可能であることから、上記形成量は、0.001〜40μmol/dm2であることが好ましい。また、上記形成量は0.01〜10μmol/dm2であることがより好ましく、0.1〜4μmol/dm2であることが更に好ましい。形成量が0.001μmol/dm2未満では、緻密且つ均一な微細凹凸を形成することが困難になる傾向があり、40μmol/dm2を超えると絶縁樹脂との接着強度が低下する傾向がある。なお、銅より貴な金属を離散的に銅配線表面に実際に形成した量は、王水によって銅配線表面上の貴な金属を溶解させた後、その溶解液を原子吸光光度計で定量分析を行うことにより求めることができる。本明細書で記載する用語「離散的」とは、銅配線表面に貴金属が完全に被覆されることなく、貴金属が銅配線表面に分散している状態を意味するものであり、具体的な形成量によって限定されるものではないことを意図している。形成量が0.001〜40μmol/dm2であるとき、銅配線表面に貴金属を離散的に形成しやすい。
【0058】
(工程B:有機化合物を含有するアルカリ性溶液で処理する工程)
有機化合物を含むアルカリ性溶液に配線基板を接触させる工程は、絶縁層表面を膨潤させ、次のエッチング工程での絶縁層のエッチングを促進するためのものである。有機化合物としては、絶縁層を充分に膨潤できれば特に限定されないが、グリコール化合物、エーテル化合物を使用した場合には、膨潤効果が高いため好ましい。より具体的には、グリコール化合物としては、エチレングリコールを用いることができる。エーテル化合物としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを用いることができる。
【0059】
アルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を、水又はイオン交換樹脂によって処理した水等の溶媒に添加することで得られるものが好ましい。有機化合物を含むアルカリ性溶液で処理する工程を行う際の、この溶液の温度は、特に限定されない。しかし、充分に絶縁層表面を膨潤させるためには、上記溶液の温度は、55〜85℃であることが好ましく、60〜80℃であることがより好ましく、65〜75℃であることが特に好ましい。本発明の一実施形態では、上記工程Bにおいて、水酸化ナトリウム水溶液と、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等の有機化合物とを混合して得た溶液を好適に使用することができる。このような溶液は、市販品として入手することもできる。本発明では、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製の膨潤液「サーキュポジットホールプリップ4123」(商品名)を好適に使用することができる。
【0060】
(工程C:過マンガン酸塩を含有するアルカリ性溶液による処理)
過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液に配線基板を接触させる工程は、絶縁層表面をエッチングすると共に、銅配線表面に酸化銅を形成する工程である。この工程で、銅配線間の絶縁層表面のパラジウムが除去されると共に、絶縁層表面に接着性を向上させるための凹凸が形成される。また、銅配線表面には微細な針状の凹凸が形成される。絶縁層と銅配線との表面処理を別々に実施する従来法によれば、一般的に、絶縁層表面をエッチングするデスミア処理では、過マンガン酸塩等の遷移元素の酸化剤を含むアルカリ性溶液が使用され、銅配線表面に酸化銅を形成する粗化処理では、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩等の典型元素の酸化剤を含むアルカリ性溶液が使用される。そして、仮に、上記デスミア処理で塩素酸塩等の酸化剤を含むアルカリ性溶液を使用した場合には、絶縁層表面のエッチングは進まず、残存パラジウムを除去すること、及び配線間の絶縁信頼性と絶縁層間の接着性とを確保することは困難であることが知られている。また、銅配線表面の粗化処理で過マンガン酸塩を含有するアルカリ性溶液を使用した場合には、当該粗化処理で一般的に使用される塩素酸塩等の酸化剤を含むアルカリ性溶液と比較して、過マンガン酸塩を含有するアルカリ性溶液は、酸化銅の形成量が少なく、また酸化銅は不均一に析出する。そのため、一般的に、過マンガン酸塩を含有するアルカリ性溶液を使用して銅配線の表面処理を行うことことは困難であることが知られている。
【0061】
しかしながら、本発明では、貴金属を離散的に銅配線表面に形成することによって、銅配線表面における酸化反応速度を増加することができるため、過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液を使用した場合であっても、銅配線表面に緻密且つ均一な微細な凹凸を形成することができる。過マンガン酸塩としては、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム等を用いることができる。上記過マンガン酸塩を含有するアルカリ性溶液の過マンガン酸塩濃度は0.01〜1mol/Lであることが好ましい。更に、0.1〜0.8mol/Lであることが好ましく、最も好ましくは0.3〜0.5mol/Lである。また、当該溶液のpHは、アルカリ性を示す値でなければならない。過マンガン酸の溶液中の安定性を考慮すれば、pH12以上が好ましく、pH13以上であることが更に好ましい。なお、pHを調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の溶液を適宜用いることができる。
【0062】
また、過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液で処理する工程を行う際の、この溶液の温度は、特に限定されない。しかし、充分に絶縁層表面をエッチングし、且つ銅配線表面を酸化するためには、上記溶液の温度は、20〜95℃であることが好ましく、50〜85℃であることがより好ましく、60〜80℃であることが特に好ましい。アルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を、水又はイオン交換樹脂によって処理した水等の溶媒に添加することで得られるものが好ましい。本発明の一実施形態では、上記工程Cにおいて、水酸化ナトリウム水溶液と過マンガン酸ナトリウムとを混合して得た溶液を好適に使用することができる。このような溶液は、市販品として入手することもできる。本発明では、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製の過マンガン酸液「サーキュポジットMLBプロモーター213」(商品名)を使用することができる。
【0063】
(工程D:還元剤を含有する酸性溶液で処理する工程)
過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に配線基板を接触させる工程により、絶縁層表面を中和し、銅配線表面の酸化銅を除去することができる。この工程で、絶縁層表面の過マンガン酸は中和されて除去されると共に、銅配線表面の針状の酸化銅も除去され、針状でない微細な凹凸が形成される。還元剤としては、過マンガン酸を中和できれば特に限定されない。例えば、還元剤として、硫酸ヒドロキシルアミン、グリオキサールを使用することができる。
【0064】
また、還元剤を含有する酸性溶液で処理する工程を行う際の、この溶液の温度は、特に限定されない。しかし、使用上の安全性を考慮し、且つ過マンガン酸の還元及び除去による中和処理、銅配線表面における酸化銅の結晶の選択的除去を良好に行うためには、溶液の温度は20〜60℃であることが好ましく、35〜50℃であることがより好ましく、40〜45℃であることが特に好ましい。また、上記溶液による処理時間は、溶液の濃度や液温等を考慮して、過マンガン酸の還元および除去、酸化銅の結晶を選択的に除去できるように適宜決定すればよい。酸性溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、リンゴ酸およびその塩、コハク酸およびその塩、クエン酸およびその塩、グリコール酸およびその塩、乳酸およびその塩、酒石酸およびその塩等の有機酸を含む溶液が使用できる。本発明の一実施形態では、上記工程Dにおいて、硫酸水溶液と硫酸ヒドロキシルアミンとを混合して得た溶液を好適に使用することができる。このような溶液は、市販品として入手することもできる。本発明では、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製の中和液「サーキュポジットMLB216−4」(商品名)を使用することができる。
【0065】
(各工程の順番)
前述の説明では、「銅よりも貴な金属を形成する工程(A工程)」−「有機化合物を含むアルカリ性溶液で処理する工程(B工程)」−「過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液で処理する工程(C工程)」−「還元剤を含む酸性溶液で処理する工程(D工程)」を順番で行う実施形態としている。しかし、別の実施形態としてA工程とB工程との順番を逆にして実施することもできる。いずれの実施形態を適用しても処理後の特性に大きな違いはないが、現行のデスミア処理装置は、B工程−C工程−D工程を一連の処理として順次行っているため、既存の装置を用いることができるという観点からは、前者の実施形態における順番で処理することが好ましい。
【0066】
(工程E:工程Dの後の処理)
本発明では、前述のA工程〜D工程における各処理を行った後、引き続き、銅配線表面と絶縁層の接着強度を向上させるための後処理を実施することが望ましい。具体的には、(E1)銅配線表面に銅よりも卑な金属を形成する処理、(E2)アゾール化合物を含有する溶液を用いて銅配線表面を処理する、又は(E3)カップリング剤を用いて銅配線表面を処理する、といった後処理を実施することによって、絶縁層との接着強度をさらに向上することが可能となる。これら(E1)、(E2)、(E3)の処理は、組み合わせて行うことができる。中でも、(E1)による処理を行った場合には、ソルダーレジストへの接着強度が向上する傾向がある。また、(E2)による処理を行った場合には、ビルドアップ材への接着強度が向上する傾向がある。更に(E1)及び(E2)による処理を組み合わせて実施した場合には、ソルダーレジスト及びビルドアップ材の双方に対する接着強度を向上することが可能である。これらについては、後述する実施例によって明らかにされている。上記(E1)〜(E3)の処理を組み合わせて処理を行う場合、(E1)による処理を最初に行うことが好ましい。より、具体的には、(E1)による処理の後に、(E2)又は(E3)の処理を行うことがより好ましい。
【0067】
(E1:銅配線表面に卑金属を形成する処理)
前述したD工程後、銅配線表面に銅よりも卑な金属を付与することによって、銅配線表面に上記卑金属が形成される。但し、銅配線表面は必ずしも完全に覆われるわけではない。ここで、卑金属とは、銅の電位よりも低い電位を有する金属を意図している。理論によって拘束するものではないが、上述の卑金属による処理を行うことによって、銅配線表面の再酸化が抑制され、絶縁層との接着強度の向上が可能になると推察される。
【0068】
卑金属を銅配線表面に形成する方法としては、特に限定されないが、無電解めっき、電気めっき、スパッタリング、蒸着等により形成することが好ましく、無電解めっきで形成することがより好ましく、無電解めっきにより銅配線表面を卑金属で完全に被覆するのが特に好ましい。
【0069】
上記卑金属は、特に限定されないが、Cr、Co、Ni、Zn、Sn、Mo及びWからなる群から選択される金属を用いることが好ましい。特に、無電解めっきにて析出可能なSn、Ni、Coが好ましく、Snが特に好ましい。更に、銅配線表面に複数の卑金属を形成してもよく、その場合には、最表面にSnを形成することが好ましい。
【0070】
無電解めっきにおいて使用可能なSnを含む溶液は、錫塩及びイオウ化合物を含む酸性溶液であることが好ましい。錫塩としては、酸性溶液に溶解するものであればよいが、有機スルホン酸や塩化物であることが好ましい。イオウ化合物としては、チオ尿素、有機硫化物等であることが好ましい。上記酸性溶液としては、無機酸及び有機酸から選択される1種以上を含む酸性溶液であることが好ましい。特に限定されないが、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、酒石酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等を含む酸性溶液であることが好ましい。その他、リン化合物を含有してもよい。
【0071】
また、銅配線表面上に形成する卑金属の形成量(平均化した層の厚さ)は、特に限定されない。しかし、銅配線表面のRzを考慮して、卑金属の形成量を適切に調節することが好ましい。銅配線表面のRzが1〜1000nmの場合、卑金属の形成量は0.61〜305μmol/dm2(1〜500nmの厚さ)であることが好ましく、銅配線表面のRzが1〜300nmの場合、卑金属の形成量は0.61〜91.5μmol/dm2(1〜150nmの厚さ)であることが好ましい。また、銅配線表面のRzが1〜100nm以下の場合、卑金属の形成量は0.61〜30.5μmol/dm2(1〜50nmの厚さ)であることが好ましく、銅配線表面のRzが1〜50nmの場合、卑金属の形成量は0.61〜15.3μmol/dm2(1〜25nmの厚さ)であることが好ましい。卑金属の形成量を0.61μmol/dm2(1nmの厚さ)以上とすることで、銅配線の再酸化を抑制しやすくなる。また、銅配線表面のRz値に応じて卑金属の形成量を上記範囲内とすることで、絶縁層との接着強度を向上しやすくなる。卑金属の形成量が多すぎる場合、微細凹凸によるアンカー効果が低下し、絶縁層との接着強度が低下する傾向がある。なお、卑金属を離散的に銅配線表面に形成した量は、王水によって銅配線表面上の卑金属を溶解させた後、その溶解液を原子吸光光度計で定量分析を行うことにより求めることができる。
【0072】
更に、上記卑金属を形成した後に、加熱処理を行うことによって、銅配線表面と絶縁層との接着強度を更に向上させることができる。加熱処理は、90〜200℃の温度で実施することが好ましく、110〜170℃がより好ましく、130〜150℃が特に好ましい。90℃以上の温度に加熱することによって、加熱処理による接着強度向上の効果が発現しやすくなる。一方、加熱処理の温度を200℃以下に制御することによって、有機材料を含む基板の劣化を防止することができる。但し、加熱処理の温度は、有機材料等の基板材料に、劣化等の影響が出ない範囲であれば、200℃を超えた高い温度条件下で処理を行っても良い。
【0073】
加熱処理の時間は、所定の効果が得られ、材料に劣化等の影響が出ない範囲であれば、特に制限されるものではない。例えば、加熱処理の時間は、20〜120分が好ましく、40〜90分がより好ましい。特に限定するものではないが、卑金属としてSnを形成した場合は、その後、110〜170℃の温度で、20〜120分にわたって加熱処理を実施することが好ましく、130〜150℃の温度で、40〜90分にわたって加熱処理をすることがより好ましい。このような加熱処理の後、銅配線表面の清浄化を行う脱脂処理、酸洗処理、又はこれらを適宜組み合わせた処理を行っても良い。なお、銅配線表面に卑金属を形成する処理と組み合わせてアゾール化合物を含む溶液による処理やカップリング処理を行う場合も、加熱処理後に行うことが好ましい。
【0074】
(E2:アゾール化合物を含有する溶液による処理)
前述したD工程後、アゾール化合物を含有する溶液で銅配線表面を処理することによって、銅配線表面にアゾール化合物による層が形成される。理論によって拘束するものではないが、このような処理を行うことによって、銅配線表面の再酸化が抑制され、絶縁層との接着強度の向上が可能になると推察される。アゾール化合物を含有する溶液に使用するアゾール化合物は、窒素を1つ以上含む複素5員環化合物である。例えば、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールであり、アゾール化合物を含有する溶液とは、これらアゾール化合物を少なくとも1種以上含んでいるものであればよい。接着強度向上の観点からは、特に、ジアゾールが好ましい。更に、ジアゾールの中でも、ピラゾール(1,2−ジアゾール)が好ましい。なお、接着強度を向上させるためには、アゾール化合物における窒素を含む複素5員環構造そのものが重要であり、置換基の有無については特に限定されない。
【0075】
また、特に、アゾール化合物としてピラゾールを使用して前述した処理を行う場合には、pHが7〜12のアゾール化合物を含有する溶液を使用して処理を行うことが好ましい。更には、pH8〜11の溶液を用いて処理することがより好ましく、pH9〜10の溶液を用いて処理することが特に好ましい。
【0076】
また、特に、アゾール化合物としてイミダゾールを使用して前述した処理を行う場合には、pHが3〜9のアゾール化合物を含有する溶液を使用して処理を行うことが好ましい。更には、pH4〜8の溶液を使用して処理することがより好ましく、pH5〜7の溶液を使用して処理することが特に好ましい。
【0077】
また、特に、アゾール化合物としてトリアゾール及びテトラゾールを使用して上記処理を行う場合には、pHが0.1〜3のアゾール化合物を含有する溶液を使用して処理を行うことが好ましい。更には、pH0.1〜2の溶液を使用して処理することがより好ましく、pH0.1〜1の溶液を使用して処理することが特に好ましい。
【0078】
アゾール化合物を含有する溶液のpHは、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、塩酸、硫酸溶液等を適宜使用して、調整することができる。pHの調整するために、緩衝剤を加えることもできる。なお、pHは、一般的なガラス電極を用いたpHメータによって測定できる。具体的には、例えば、株式会社堀場製作所の商品名:Model(F−51)を使用することができる。フタル酸塩pH標準液(pH:4.01)と、中性リン酸塩pH標準液(pH:6.86)と、ホウ酸塩pH標準液(pH:9.18)をpH標準液として用い、pHメータを3点校正した後、pHメータの電極を溶液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定することで得られる。このとき、標準緩衝液と溶液の液温は、例えば、共に25℃とすることができる。
【0079】
アゾール化合物を含有する溶液におけるアゾール化合物の濃度は、0.1〜5000ppmの濃度が好ましく、0.5〜3000ppmがより好ましく、1〜1000ppmであることが特に好ましい。アゾール化合物を含む溶液による処理時間は、特に限定しないが、アゾール化合物の種類及び濃度に応じて適宜調整することが好ましい。
【0080】
(E3:カップリング処理)
前述したD工程後、カップリング剤を用いて銅配線表面を処理することによって、絶縁層との接着強度の向上が可能になる。本発明の一実施形態では、(E1)卑金属を含む溶液を用いた処理の後、又は(E2)アゾール化合物を含む溶液での処理の後にカップリング処理を行うことが好ましい。
【0081】
カップリング処理に使用するカップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用してもよい。中でもシラン系カップリング剤が好ましく、シラン系カップリング剤としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イミダゾール基、ビニル基、又はメタクリル基等の官能基を分子中に有するものであることが好ましい。また、上記カップリング剤は、それを含む溶液として使用することができ、このカップリング剤溶液の調整に使用される溶媒は、特に限定されないが、水、アルコール、ケトン類等を用いることが可能である。更に、カップリング剤の加水分解を促進させるために、酢酸、や塩酸等の酸を少量添加することもできる。カップリング剤の含有量は、カップリング剤溶液全体に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜1.0質量%であることがより好ましい。
【0082】
前述の各種溶液による処理又は各種溶液と接触させる方法は、各溶液に配線基板を浸漬する方法、各溶液を配線基板に対しスプレー噴霧又は塗布する方法等により行うことができる。また、各溶液で処理した配線基板は、自然乾燥、加熱乾燥、又は真空乾燥により乾燥するが、溶液の種類によっては、乾燥前に水洗又は超音波洗浄を行うことが好ましい。
【0083】
先に説明した本発明による配線基板の表面処理方法は、多層プリント配線基板、ビルドアッププリント配線基板等のマザーボード、並びにリジットサブストレート、ビルドアップサブストレート等の半導体チップ搭載基板、といった様々な用途の配線基板に適用することができる。特に限定するものではないが、以下、本発明による配線基板の表面処理方法を使用した実施形態について例示する。
【0084】
(半導体チップ搭載基板)
図5は、本発明の一実施形態である半導体チップ搭載基板の一例を示す模式的断面図である。図5では、2層のビルドアップ層(層間絶縁層)をコア基板100の片面にのみ形成した場合を例示している。しかし、ビルドアップ層は、図5に示した構成に限らず、必要に応じて、図6に示すようにコア基板100の両面に形成しても良い。
【0085】
半導体チップ搭載基板は、図5に示すように、半導体チップが搭載される側の絶縁層であるコア基板100上に、半導体チップ接続端子(図示省略)及び第1の層間接続端子101を含む第1の配線106aが形成される。コア基板100の他方の側には、第2の層間接続端子103を含む第2の配線106bが形成され、第1の層間接続端子101と第2の層間接続端子103は、コア基板100の第1の層間接続用IVH(インタースティシャルバイアホール)102を介して電気的に接続される。コア基板100の第2の配線106b側には、ビルドアップ層104が形成され、ビルドアップ層104上には、第3の層間接続端子を含む第3の配線106cが形成される。第2の層間接続端子103と第3の層間接続端子は、第2の層間接続用IVH108を介して電気的に接続される。
【0086】
ビルドアップ層が複数形成される場合は、同様の構造を積層し、最外層のビルドアップ層上には、マザーボードと接続される外部接続端子107が形成され、更に外部接続端子107と第3の層間接続端子は、第3の層間接続用IVH105を介して電気的に接続される。配線の形状、各々の接続端子の配置等は特に制限されず、搭載する半導体チップや目的とする半導体パッケージを製造するために、適宜設計可能である。また、半導体チップ接続端子と第1の層間接続端子101等を共用することも可能である。更に、最外層のビルドアップ層上には、必要に応じてソルダーレジスト等の絶縁被覆109を設けることもできる。
【0087】
以下、特に限定するものではないが、半導体チップ搭載基板の代表的な構成部材及び物性について説明する。
(コア基板)
コア基板の材質は特に問わないが、有機基材、セラミック基材、シリコン基材、ガラス基材等が使用できる。熱膨張係数や絶縁性を考慮すると、セラミック基材やガラス基材を用いることが好ましい。ガラス基材は、非感光性ガラスや感光性ガラスであってよい。非感光性ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス(成分例 SiO2:65〜75質量%、Al2O3:0.5〜4質量%、CaO:5〜15質量%、MgO:0.5〜4質量%、Na2O:10〜20質量%)、ホウ珪酸ガラス(成分例 SiO2:65〜80質量%、B2O3:5〜25質量%、Al2O3:1〜5質量%、CaO:5〜8質量%、MgO:0.5〜2質量%、Na2O:6〜14質量%、K2O:1〜6質量%)等が挙げられる。また、感光性ガラスとしては、Li2O−SiO2系結晶化ガラスに、感光剤として金イオン及び銀イオンを含むものが挙げられる。
【0088】
有機基板としては、ガラス布に樹脂を含浸させた材料を積層した基板や樹脂フィルムが使用できる。使用する樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はそれらの混合樹脂が使用できるが、熱硬化性の有機絶縁材料が好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、トリアリルトリメタリレートを含む樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマ等が挙げられる。これらの樹脂には、充填材を添加しても良い。充填材としては、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。コア基板の厚さは、100〜800μmであるのが、IVH形成性の点で好ましく、150〜500μmであるのがより好ましい。
【0089】
(ビルドアップ層)
層間絶縁層(ビルドアップ層)は、絶縁材料からなり、絶縁材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はそれらの混合樹脂が使用できる。また、ビルドアップ層は、熱硬化性の有機絶縁材料を主成分とするのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、トリアリルトリメタリレートを含む樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマ等が挙げられる。絶縁材料には充填材等を添加しても良い。充填材としては、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。
【0090】
(熱膨張係数)
熱膨張係数については、半導体チップの熱膨張係数とコア基板の熱膨張係数とが近似していて、且つコア基板の熱膨張係数とビルドアップ層の熱膨張係数とが近似していることが好ましいが、これらに限定するものではない。更に、半導体チップ、コア基板、ビルドアップ層の各々の熱膨張係数を、α1、α2、α3(ppm/℃)としたとき、α1≦α2≦α3であることがより好ましい。具体的には、コア基板の熱膨張係数α2は、7〜13ppm/℃が好ましく、更に好ましくは9〜11ppm/℃である。ビルドアップ層の熱膨張係数α3は、10〜40ppm/℃であるのが好ましく、10〜20ppm/℃がより好ましく、11〜17ppm/℃が特に好ましい。
【0091】
(ヤング率)
ビルドアップ層のヤング率は、1〜5GPaであるのが、熱ストレスに対する応力緩和の点で好ましい。ビルドアップ層中の充填材は、ビルドアップ層の熱膨張係数が10〜40ppm/℃、ヤング率が1〜5GPaになるように添加量を適宜調整して添加するのが好ましい。
【0092】
(レジスト)
レジストとしては、エッチングレジスト、めっきレジスト、ソルダーレジスト、カバーレイ等が挙げられる。エッチングレジスト及びめっきレジストは、配線形成を目的に使用するために、配線形成後に剥離され、基板等には残らないものである。ソルダーレジスト又はカバーレイは、外部接続端子、半導体チップ接続端子等以外の配線保護を目的としているために、絶縁被服として基板表面に形成される。これらのレジストは、液状又はフィルム状のものを使用することができ、感光性があることが好ましい。
【0093】
(半導体チップ搭載基板の製造方法)
上述の半導体チップ搭載基板は、以下の説明する方法を適宜組み合わせることによって製造することができる。製造工程の順番は、その目的を逸脱しない範囲において、特に限定されるものではない。
【0094】
(配線形成方法)
半導体チップ搭載基板を製造する際の配線の形成方法としては、コア基板表面又はビルドアップ層上に金属箔を形成し、金属箔の不要な箇所をエッチングで除去する方法(サブトラティブ法)、コア基板表面又はビルドアップ層上の必要な箇所にのみめっきにより配線を形成する方法(アディティブ法)、コア基板表面又はビルドアップ層上に薄い金属層(シード層)を形成し、その後、電解めっきで必要な配線を形成した後、薄い金属層をエッチングで除去する方法(セミアディティブ法)等がある。
【0095】
(サブトラクティブ法による配線形成)
金属箔上の配線となる箇所にエッチングレジストを形成し、エッチングレジストから露出した箇所に、化学エッチング液をスプレー噴霧して、不要な金属箔をエッチング除去し、配線を形成することができる。例えば、金属箔として銅箔を用いる場合、エッチングレジストは、通常の配線基板に用いることのできるエッチングレジスト材料を使用できる。エッチングレジストを形成する方法としては、例えば、レジストインクをシルクスクリ−ン印刷してエッチングレジストを形成する方法がある。別法として、エッチングレジスト用ネガ型感光性ドライフィルムを銅箔の上にラミネートして、その上に配線形状に光を透過するフォトマスクを重ね、紫外線で露光し、露光しなかった箇所を現像液で除去してエッチングレジストを形成する方法もある。化学エッチング液には、塩化第二銅と塩酸の溶液、塩化第二鉄溶液、硫酸と過酸化水素の溶液、過硫酸アンモニウム溶液等、通常の配線基板に用いる化学エッチング液を用いることができる。
【0096】
(アディティブ法による配線形成)
コア基板又はビルドアップ層上の必要な箇所にのみ、めっきを行うことで配線を形成することができる。これは、通常のめっきによる配線形成技術を用いることができる。例えば、コア基板に無電解めっき用触媒を付着させた後、めっきが行われない表面部分にめっきレジストを形成して、無電解めっき液に浸漬し、めっきレジストに覆われていない箇所にのみ、無電解めっきを行い配線形成する。
【0097】
(セミアディティブ法による配線形成)
コア基板表面又はビルドアップ層上に、シード層を形成し、その後、電解めっきで必要な配線を形成した後、シード層をエッチングで除去することで配線を形成することができる。例えば、コア基板表面又はビルドアップ層上に、シード層を形成し、この形成されたシード層上に、めっきレジストを必要なパターンに形成し、シード層を介して電解銅めっきにより配線を形成する。その後、めっきレジストを剥離し、最後にシード層をエッチング等により除去することで、配線を形成することができる。セミアディティブ法に用いるシード層を形成する方法は、スパッタリング、蒸着、めっき等による方法と、金属箔を貼り合わせる方法がある。また同様の方法で、サブトラクティブ法の金属箔を形成することもできる。
【0098】
(スパッタリング、蒸着、めっき等によるシード層の形成)
コア基板表面又はビルドアップ層上に、スパッタリング、蒸着、めっき等によってシード層を形成することができる。例えば、シード層として、スパッタリングにより下地金属と薄膜銅層を形成する場合、薄膜銅層を形成するために使用されるスパッタリング装置は、2極スパッタ、3極スパッタ、4極スパッタ、マグネトロンスパッタ、ミラートロンスパッタ等を用いることができる。スパッタに用いるターゲットは、密着を確保するために、例えば、Cr、Ni、Co、Pd、Zr、Ni−Cr合金、Ni−Cu合金等の金属を下地金属として用い、厚み:5〜50nmのスパッタリングを施す。その後、銅をターゲットにして厚み:200〜500nmのスパッタリングを施しシード層を形成することができる。また、コア基板表面又はビルドアップ層上に無電解銅めっきにより、0.1〜3μmの厚みのめっき銅によるシード層を形成してもよい。通常、無電解銅めっきは、絶縁層表面に触媒となるパラジウムを吸着させ、めっき銅を析出させる。めっき銅により形成したシード層は、銅のエッチング処理後に配線間の絶縁層表面に残存するパラジウムの除去が必要となる。通常、絶縁層表面のデスミア処理による絶縁層のエッチング時にパラジウムを同時に除去することができるが、このような処理は、銅配線の表面処理と別途行う必要がある。しかし、本発明による配線基板の表面処理方法によれば、銅配線表面を処理する工程の一部と同時に、上記デスミア処理を行うことが可能である。
【0099】
(金属箔を貼り合わせる方法)
コア基板又はビルドアップ層に接着機能がある場合は、金属箔をプレスやラミネートによって貼り合わせることによりシード層を形成することもできる。しかし、薄い金属層を直接貼り合わせるのは非常に困難であるため、厚い金属箔を張り合わせた後にエッチング等により薄くする方法、キャリア付金属箔を貼り合わせた後にキャリア層を剥離する方法等がある。例えば、前者としては、キャリア銅/ニッケル/薄膜銅の三層銅箔があり、キャリア銅をアルカリエッチング液で、ニッケルをニッケルエッチング液で除去できる。後者としては、アルミ、銅、絶縁材料等をキャリアとしたピーラブル銅箔等が使用でき、厚み:5μm以下のシード層を形成できる。また、厚み:9〜18μmの銅箔を貼り付け、エッチングにより厚み:5μm以下になるように均一に薄くし、シード層を形成しても良い。これらの方法で形成されたシード層上に、めっきレジストを必要なパターンに形成し、シード層を介して電解銅めっきにより配線を形成する。その後、めっきレジストを剥離し、最後にシード層をエッチング等により除去することで、配線を形成することができる。
【0100】
(配線の形状)
配線の形状は特に問わないが、少なくとも半導体チップが搭載される側には半導体チップ接続端子(ワイヤボンド端子等)、その反対面にはマザーボードと電気的に接続される外部接続端子(はんだボール等が搭載される箇所)及びそれらを接続する展開配線、層間接続端子等から構成される。また、配線の配置も特に問わないが、図7に示すような(内層配線、層間接続端子等は省略)、半導体チップ接続端子16より内側に外部接続端子19を形成したファン−インタイプの半導体チップ搭載基板や、図8に示すような半導体チップ接続端子16の外側に外部接続端子19を形成したファン−アウトタイプの半導体チップ搭載基板、又はこれらを組み合わせたタイプでもよい。なお、図7及び図8において、13は半導体パッケージ領域、14はダイボンドフィルム接着領域(フリップチップタイプ)、15は半導体チップ搭載領域(フリップチップタイプ)、17はダイボンドフィルム接着領域(ワイヤボンドタイプ)、18は半導体チップ搭載領域(ワイヤボンドタイプ)、20は展開配線を示す。半導体チップ接続端子16の形状は、ワイヤボンド接続、フリップチップ接続等が可能であれば、特に問わない。また、ファン−アウト、ファン−インどちらのタイプでも、ワイヤボンド接続、フリップチップ接続等は可能である。更に必要に応じて、半導体チップと電気的に接続されないダミーパターン21(図8参照)を形成しても良い。ダミーパターン21の形状や配置は、特には問わないが、半導体チップ搭載領域に均一に配置するのが好ましい。これによって、ダイボンド接着剤で半導体チップを搭載する際に、ボイドが発生しにくくなり、信頼性を向上できる。
【0101】
(バイアホール)
多層の半導体チップ搭載基板は、複数の配線層を有するため、各層の配線を電気的に接続するためのバイアホールを設けることができる。バイアホールは、コア基板又はビルドアップ層に接続用の穴を設け、この穴を導電性ペースト、めっき等で充填し形成することができる。穴の加工方法としては、パンチ、ドリル等の機械加工、レーザ加工、薬液による化学エッチング加工、プラズマを用いたドライエッチング法などがある。また、ビルドアップ層のバイアホール形成方法としては、予めビルドアップ層に導電性ペースト、めっき等で導電層を形成し、これをコア基板にプレス等で積層する方法等もある。
【0102】
(絶縁被覆の形成)
半導体チップ搭載基板の外部接続端子側には、絶縁被覆を形成することができる。パターン形成は、ワニス状の材料であれば印刷で行うことも可能であるが、より精度を確保するためには、感光性のソルダーレジスト、カバーレイフィルム、フィルム状レジストを用いるのが好ましい。材質としては、エポキシ系、ポリイミド系、エポキシアクリレート系、フルオレン系の材料を用いることができる。このような絶縁被覆は硬化時の収縮があるため、片面だけに形成すると基板に大きな反りを生じやすい。そこで、必要に応じて半導体チップ搭載基板の両面に絶縁被覆を形成することもできる。更に、反りは絶縁被覆の厚みによって変化するため、両面の絶縁被覆の厚みは、反りが発生しないように調整することがより好ましい。その場合、予備検討を行い、両面の絶縁被覆の厚みを決定することが好ましい。また、薄型の半導体パッケージとするには、絶縁被覆の厚みが50μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0103】
(配線のめっき)
配線の必要な部分にニッケル、金めっきを順次施すことができる。更に必要に応じてニッケル、パラジウム、金めっきとしても良い。これらのめっきは、配線の半導体チップ接続端子と、マザーボード又は他の半導体パッケージと電気的に接続するための外部接続端子に施される。このめっきは、無電解めっき、又は電解めっきのどちらを用いてもよい。
【0104】
以下、本発明の一実施形態として半導体チップ搭載基板の製造方法について例示する。図9は、本発明における半導体チップ搭載基板の製造方法の一例を示す図であり、(a)〜(g)は各工程に対応する模式的断面図である。但し、図に示した各工程の順番は、本発明の目的を逸脱しない範囲において、特に限定されるものではない。
【0105】
(工程a)
工程(a)は、図9(a)に示したように、コア基板100上に第1の配線106aを作製する工程である。第1の配線106aの形成では、例えば、片面に銅層が形成されたコア基板100の銅層に、脱脂処理を行い、その後、塩酸又は硫酸洗浄を行う前処理工程を設ける。図9に示すように、第1の配線106aが形成された面へのビルドアップを想定しない場合、通常、工程(a)の段階において、銅層表面に対する粗化処理は不要である。しかし、必要に応じて、以下のようにして、従来法による銅層表面の粗化処理を行ってもよい。
【0106】
先ず、必要に応じて、銅よりも貴な金属である金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムから選択される金属を離散的に形成する。次に、酸化剤を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより酸化反応を行う。その後、更に酸性溶液又は銅の錯化剤を含む溶液による処理を行う。次いで、必要に応じて、カップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行うか、又は銅よりも卑な金属を含む溶液での処理を行った後にカップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行う、後処理工程を設けてもよい。上記後処理工程の有無にかかわらず、上述した銅層の表面処理工程によって配線表面はRzが1〜1000nmになるように処理されることが望ましい。その後、必要に応じて表面処理された銅層上に、第1の配線106aの形状にエッチングレジストを形成し、塩化銅や塩化鉄、硫酸−過酸化水素及び硝酸−過酸化水素等のエッチング液により銅層をエッチングした後、エッチングレジストを除去することで第1の配線106aを作製することができる。コア基板100上の銅層の形成は、スパッタリング、蒸着、めっき等により銅薄膜を形成した後、所望の厚みになるまで電気銅めっきを行うことで可能である。なお、第1の配線106aは、第1の層間接続端子101及び半導体チップ接続端子(半導体チップと電気的に接続される部分)を含んでおり、微細配線の形成方法としてはセミアディティブ法を用いるのが好ましい。また、コア基板100上に第1の配線106aを形成した後、該第1の配線106a表面には、直ぐに保護フィルム(不図示)がラミネートされる。保護フィルムをラミネートすることによって、第1の配線106aが工程(b)以降の工程でめっき処理などの影響を受けることを防ぐことができる。
【0107】
(工程b)
工程(b)は、図9(b)に示したように、第1の層間接続端子101と、後述する第2の配線106bとを接続するための第1の層間接続用IVH102を形成する工程である。第1の層間接続用IVH102となる孔は、コア基板100が非感光性基材の場合、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のレーザ光を孔となる箇所に照射することで形成することができる。生産性及び穴品質の観点からは、CO2レーザを用いることが好ましく、孔径が30μm未満の場合には、レーザ光を絞ることが可能なYAGレーザが適している。なお、非感光性基材としては、前述した非感光性ガラス等が挙げられるが、これに限定されない。また、コア基板100が感光性基材の場合、第1の層間接続用IVH102となる箇所以外の領域をマスクし、紫外光を照射した後、熱処理とエッチングにより孔を形成する。なお、感光性基材としては、前述した感光性ガラス等が挙げられるが、これに限定されない。また、コア基板100が、有機溶剤等の薬液による化学エッチング加工が可能な基材の場合は、化学エッチングによって孔を形成することもできる。孔を形成した後は、層間を電気的に接続するために、必要に応じてデスミア処理を行った後、この孔を導電性のペースト、めっき等によって導電化し、第1の層間接続用IVH102とする。
【0108】
(工程c)
工程(c)は、図9(c)に示したように、コア基板100の第1の配線106aと反対側の面に、第2の配線106bを形成する工程である。第2の配線106bは、コア基板100の第1の配線106aと反対の面に、上記工程(a)における第1の配線106aと同様にして形成することができる。銅層の形成方法としては、工程(a)と同様、スパッタリング、蒸着、めっき等により銅薄膜を形成した後、所望の厚みになるまで電気銅めっきを行うことで可能である。なお、第2の配線106bは、第2の層間接続端子103を含んでおり、微細配線の形成方法としてはセミアディティブ法を用いるのが好ましい。
【0109】
(工程d)
工程(d)は、図9(d)に示すように、第2の配線106bを形成した面にビルドアップ層(層間絶縁層)104を形成する工程である。ここでは、先ず、第2の配線106b表面を、脱脂処理を行い、塩酸又は硫酸洗浄を行う前処理工程を設けることが好ましい。次に、銅層表面に対する粗化処理を行う。先の工程(b)で形成した層間接続用IVHにペーストを充填し、スパッタで銅層を形成した後に配線を形成する実施形態では、銅層の下にパラジウムが存在しないため、銅層表面に対する粗化処理を行う前にデスミア処理を行う必要はなく、従来の銅表面に対する粗化処理方法を適用することができる。しかし、無電解めっきによって、IVHを導電化するか又は銅層を形成する実施形態の場合には、無電解銅めっきの前に絶縁層表面にパラジウムが付着するため、銅層表面に対する粗化処理に先立ち、デスミア処理が必要となる。したがって、後者の実施形態においては、デスミア処理と配線表面の粗化処理とを同時に実施できる本願発明による配線基板の表面処理方法を適用することが好ましい。
【0110】
このような本発明による上記表面処理方法は、より具体的には、(A)上記銅配線表面に、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムから選択される金属から選択される少なくとも一種の銅よりも貴な金属を離散的に形成し、(B)有機化合物を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより絶縁層を膨潤させ、(C)過マンガン酸塩を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより絶縁層表面を溶解して粗化すると共に銅配線表面を酸化させ、(D)過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に浸漬することにより絶縁層表面の中和と銅配線表面の酸化銅を除去することによって、実施することができる。上記表面処理を施した後、必要に応じて、カップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行うか、又は銅よりも卑な金属を含む溶液での処理を行った後にカップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行う、後処理工程を設けてもよい。いずれの処理を施した場合であっても、銅配線表面の粗さRzが、1〜1000nmとなるようにすることが好ましい。
【0111】
次に、コア基板100表面及び第2の配線106b表面に、ビルドアップ層104を形成する。ビルドアップ層104の絶縁材料としては、上記したように熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はそれらの混合樹脂が使用できるが、熱硬化性材料を主成分とすることが好ましい。ビルドアップ層104の形成は、絶縁材料がワニス状の場合には、印刷やスピンコート等によって行うことができる。また、絶縁材料がフィルム状の場合には、ラミネートやプレス等によって行うことができる。ビルドアップ層104の形成をラミネートによって行う際には、プレスと同じように鏡板で上下に挟んで行ってもよい。絶縁材料が熱硬化性材料を含む場合は、更に加熱硬化させることが望ましい。
【0112】
(工程e)
工程(e)は、図9(e)に示したように、ビルドアップ層104に第2の層間接続用IVH108を形成するための孔を形成する工程であり、その形成手段としては、前述した工程(b)における第1の層間接続用IVH102と同様に行うことができる。
【0113】
(工程f)
工程(f)は、図9(f)に示したように、第2の層間接続用IVH108を形成する孔が形成されたビルドアップ層104上に、第3の配線106cを形成し、IVH108を導通化する工程である。IVH108を導電化し、L/S=15μm/15μm以下の微細な配線を形成するプロセスとして、前述したセミアディティブ法が好ましい。具体的には、ビルドアップ層104上及びIVH108内に、無電解めっきにより、前述したシード層を形成する。この場合、このシード層上に、めっきレジストを必要なパターンに形成し、シード層を介して電解銅めっきにより配線を形成した後、めっきレジストを剥離し、最後にシード層をエッチング等により除去することで、微細な配線を形成することができる。次に、本発明による配線基板の表面処理方法に沿って、各工程の処理を行う。より具体的には、必要に応じ、脱脂処理及び、塩酸又は硫酸洗浄を行う前処理を行い、(A)上記銅配線表面に、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムから選択される金属から選択される少なくとも一種の銅よりも貴な金属を離散的に形成し、(B)有機化合物を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより絶縁層を膨潤させ、(C)過マンガン酸塩を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより絶縁層表面を溶解して粗化すると共に銅配線表面を酸化させ、(D)過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に浸漬することにより絶縁層表面の中和と銅配線表面の酸化銅を除去する。その後、必要に応じて、カップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行うか、又は銅よりも卑な金属を含む溶液で処理を行った後にカップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行う、後処理工程を設けてもよい。上記後処理工程の有無にかかわらず、配線表面はRzが1〜1000nmになるようにすることが好ましい。
【0114】
なお、工程(d)〜工程(f)までを繰り返して、図9(g)に示すようにビルドアップ層104を2層以上作製してもよい。この場合、最外のビルドアップ層に形成された層間接続端子が、外部接続端子107となる。その後、外部接続端子107以外の部分にソルダーレジストを形成し、外部接続端子107を露出させる。外部接続端子107は、第3の層間接続用IVH105を介して第3の配線と電気的に接続される。
【0115】
本発明の一実施形態として、図9に沿って、半導体チップ搭載基板の製造方法の一例について説明したが、半導体チップ搭載基板の形状は、特に限定されるものではい。本発明の一実施形態では、図10に示したようなフレーム形状にすることが好ましい。半導体チップ搭載基板22の形状をフレーム形状にすることで、半導体パッケージの組立てを効率よく行うことができる。以下、フレーム形状の半導体チップ搭載基板の製造について詳細に説明する。
【0116】
図10に示したように、最初に、半導体パッケージ領域13(1個の半導体パッケージとなる部分)を行及び列に各々複数個等間隔で格子状に配置したブロック23を形成する。更に、このようなブロック23を複数個行及び列に形成する。図10では、2個のブロックしか記載していないが、必要に応じて、ブロックを格子状に配置してもよい。ここで、半導体パッケージ領域間のスペース部の幅は、50〜500μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。更に、後に半導体パッケージを切断するときに使用するダイサーのブレード幅と同じにするのが最も好ましい。
【0117】
このように半導体パッケージ領域13を配置することで、半導体チップ搭載基板22の有効利用が可能になる。また、半導体チップ搭載基板22の端部には、位置決めのマーク11等を形成することが好ましく、貫通孔によるピン孔であることがより好ましい。ピン孔の形状や配置は、形成方法や半導体パッケージの組立て装置に合うように選択すればよい。
【0118】
更に、半導体パッケージ領域間のスペース部やブロック23の外側には、補強パターン24を形成することが好ましい。補強パターン24は、別途作製し半導体チップ搭載基板22と貼り合わせてもよいが、半導体パッケージ領域に形成される配線と同時に形成された金属パターンであることが好ましい。補強パターン24の表面には、配線と同様のニッケル、金等のめっきを施すか、絶縁被覆を施すことがより好ましい。補強パターン24が、このような金属の場合は、電解めっきの際のめっきリードとして利用することも可能である。また、ブロック23の外側には、ダイサーで切断する際の切断位置合わせマーク25を形成することが好ましい。このようにして、フレーム形状の半導体チップ搭載基板22を作製することができる。
【0119】
(半導体パッケージ)
図11は、本発明によるフリップチップタイプ半導体パッケージの一例を示す模式的断面図である。図11に示したように、半導体パッケージは、先に説明した半導体チップ搭載基板に、更に半導体チップ111が搭載されている。半導体チップ111と半導体チップ接続端子とは、接続バンプ112を用いてフリップチップ接続することにより、電気的に接続されている。これらの半導体パッケージには、図示するように、半導体チップ111と半導体チップ搭載基板の間を、アンダーフィル材113で封止することが好ましい。アンダーフィル材113の熱膨張係数は、半導体チップ111及びコア基板の熱膨張係数と近似していることが好ましいが、これに限定したものではない。更に好ましくは、(半導体チップの熱膨張係数)≦(アンダーフィル材の熱膨張係数)≦(コア基板の熱膨張係数)との関係になることである。半導体チップの搭載には、異方導電性フィルムや導電性粒子を含まない接着フィルムを用いて行うこともできる。この場合は、アンダーフィル材で封止する必要がないため、より好ましい。更に、半導体チップを搭載する際に超音波を併用すれば、電気的な接続が低温でしかも短時間で行えるため、特に好ましい。
【0120】
図12は、本発明によるワイヤボンドタイプ半導体パッケージの一例を示す模式的断面図である。半導体チップの搭載には、一般のダイボンドペーストを使用してもよいが、ダイボンドフィルム117を使用することがより好ましい。半導体チップ111と半導体チップ接続端子との電気的な接続は、金ワイヤ115を用いたワイヤボンドで行う。半導体チップ111の封止は、半導体用封止樹脂116をトランスファモールドで行うことができる。この場合、封止領域は、必要な部分だけ、例えば、半導体チップ111のフェース面だけを封止すればよいが、図12のように、半導体パッケージ領域全体を封止することがより好ましい。これは、半導体パッケージ領域を行及び列に複数個配列した半導体チップ搭載基板において、基板と半導体用封止樹脂116を同時にダイサー等で切断する場合、特に有効な方法となる。また、マザーボードとの電気的な接続を行うために、外部接続端子107には、例えば、はんだボール114を搭載することができる。はんだボール114には、共晶はんだやPbフリーはんだが用いられる。はんだボール114を外部接続端子107に固着する方法としては、例えば、N2リフロー装置等を用いることができるが、これに限定されない。半導体チップ搭載基板に複数の半導体チップを搭載してなる複数の半導体パッケージを作製した場合には、最後に、ダイサー等を用いて個々の半導体パッケージに切断する。
【実施例】
【0121】
以下、本発明について実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0122】
1.以下の実施例1〜10及び比較例1〜16Aは、各種表面処理を行った半導体パッケージ評価用サンプルの作製に関する。
(実施例1)
本発明による配線基板の表面処理方法を適用して半導体パッケージの評価用サンプルを作製し、半導体パッケージの信頼性を評価した。以下、図9に示した各工程図を参照しながら、半導体パッケージの評価用サンプルの作製方法を説明する。
【0123】
(工程a)
コア基板100として0.4mm厚のソーダガラス基板(熱膨張係数11ppm/℃)を用意し、片面にスパッタリングにより200nmの銅薄膜を形成した後、電気銅めっきで10μmの厚さまでめっきを行った。なお、スパッタリングは、株式会社アルバック製、装置型番:MLH−6315を用いて、以下に示した条件1で行った。
【0124】
(条件1)
電流:3.5A
電圧:500V
アルゴン流量:35SCCM(0.059Pa・m3/s)
圧力:5×10−3Torr(6.6×10−1Pa)
成膜速度:5nm/秒
【0125】
その後、第1の配線106aとなる部分にエッチングレジストを形成し、塩化第二鉄エッチング液を用いてエッチングし、エッチングレジストを除去することで、第1の配線106a(第1の層間接続端子101及び半導体チップ接続端子を含む)を形成した。
【0126】
(工程b)
第1の配線106aが形成されたガラス基板の、第1の配線106aと反対面から第1の層間接続端子101に到達するまで、レーザで孔径:50μmの第1の層間接続用IVH102となる孔を形成した。レーザにはYAGレーザ:LAVIA−UV2000(住友重機械工業株式会社製、商品名)を使用し、周波数:4kHz、ショット数:50、マスク径:0.4mmの条件で、孔の形成を行った。ついで、孔内のデスミア処理を行った。その後、この孔に導電性ペースト:MP−200V(日立化成工業株式会社製、商品名)を充填して、160℃にて30分間硬化させ、ガラス基板上の第1の層間接続端子101と電気的に接続し、第1の層間接続用IVH102を形成した。
【0127】
(工程c)
(工程b)で形成された第1の層間接続用IVH102と電気的に接続するために、ガラス基板の、第1の配線106aと反対側の面にスパッタリングにより200nmの銅薄膜を形成した後、電気銅めっきで10μmの厚さまでめっきを行った。スパッタリングは、(工程a)と同様に行った。その後、(工程a)と同様に第2の配線106bの形状にエッチングレジストを形成し、塩化第二鉄エッチング液を用いてエッチングして、エッチングレジストを除去することで、第2の配線106b(第2の層間接続端子103を含む)を形成した。
【0128】
(工程d−1)
(工程c)で形成した第2の配線106b側の配線表面に対して、以下のようにして前処理を行った。先ず、200ml/Lに調整した酸性脱脂液:Z−200(株式会社ワールドメタル製、商品名)に、液温:50℃で2分間浸漬した後、液温:50℃の水に2分間浸漬することにより湯洗し、更に1分間水洗した。次いで、3.6Nの硫酸水溶液に1分間浸漬し、1分間水洗した。
【0129】
(工程d−2)
上記前処理工程を経た第2の配線106bを、置換パラジウムめっき液:SA−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に30℃で3分間浸漬して、銅よりも貴な金属であるパラジウムめっきを、1.0μmol/dm2施し、1分間水洗した。次いで、更に、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/Lを添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第2の配線106b表面に、0.07mg/cm2の酸化銅の結晶を形成した。この後、1分間水洗した後、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、銅表面に微細凹凸を形成した。その後、5分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた。
【0130】
(工程d−3)
次に、第2の配線106b側の面に層間絶縁層(ビルドアップ層104)を次のように形成した。即ち、ビルドアップ材:AS−ZII(日立化成工業株式会社製、商品名)を真空ラミネートによって、真空引き時間:30秒、加圧:40秒間、0.5MPaの条件で、第2の配線106b側の面にビルドアップ層をラミネートし、厚み:45μmの樹脂層を形成した後、オーブン乾燥機にて180℃で90分間保持することにより熱硬化し、ビルドアップ層104を形成した。
【0131】
(工程e)
上記(工程d−1)〜(工程d−3)に沿って形成したビルドアップ層104の表面から、第2の層間接続用端子103に到達するまで、レーザで孔径:50μmの第2の層間接続用IVH108となる孔を形成した。レーザには、YAGレーザ:LAVIA−UV2000(住友重機械工業株式会社製、商品名)を使用し、周波数:4kHz、ショット数:20、マスク径:0.4mmの条件で孔の形成を行った。その後、デスミア処理を行った。デスミア処理方法としては、膨潤液サーキュポジットホールプリップ4125(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に80℃で3分浸漬後、3分間水洗した。その後、過マンガン酸液サーキュポジットMLBプロモーター213(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に80℃で5分浸漬後、3分間水洗した。次いで、中和液サーキュポジットMLB216−4(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に40℃で3分浸漬後、3分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた。
【0132】
(工程f−1)
上記(工程d−3)で形成したビルドアップ層104上に、第3の配線106c及び第2の層間接続用IVH108を形成するために、ビルドアップ層104上に、無電解銅めっき処理により、厚さ:300nmの薄膜銅層を形成することで、シード層を形成した。無電解銅めっきは、日立化成工業株式会社製の各処理液を用いて以下に示した条件2で行った。
【0133】
(条件2)
1…クリーニング(CLC−1100(日立化成工業株式会社製、商品名)、50℃、5分)
2…湯洗(40℃、1分)
3…水洗(R.T.2分)
4…プリディップ(PD−1300(日立化成工業株式会社製、商品名)、30℃、1分)
5…活性化(パラジウム)処理(HS−1400(日立化成工業株式会社製、商品名)、30℃、5分)
6…水洗(R.T.2分)
7…密着促進処理(ADP−1500(日立化成工業株式会社製、商品名)、30℃、5分)
8…水洗(R.T.2分)
9…無電解銅めっき(CUST−1610(日立化成工業株式会社製、商品名)、20℃、20分)
10…水洗(R.T.2分)
11…乾燥(85℃、30分)
【0134】
(工程f−2)
次に、シード層上(薄膜銅層上)に、スピンコート法でめっきレジストPMER P−LA900PM(東京応化工業株式会社製、商品名)を塗布し、膜厚:10μmのめっきレジスト層を形成した。次いで、めっきレジスト層を1000mJ/cm2の条件で露光した後、PMER現像液P−7G(東京応化工業株式会社製、商品名)に23℃で6分間浸漬し、L/S=10μm/10μmのレジストパターンを形成した。その後、硫酸銅めっき液を用いて電気銅めっきを行い、厚さ:約5μmの第3の配線106cを形成した。めっきレジストの剥離は、メチルエチルケトンを用いて室温(25℃)で1分間浸漬して行った。また、シード層のクイックエッチングには、CPE−700(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)の5倍希釈液を用いて、30℃で30秒間浸漬揺動することにより、これをエッチング除去し、配線パターンを形成した。
【0135】
(工程f−3)
無電解銅めっきのシード層を用いてセミアディティブ法で配線形成を行う場合、シード層のエッチングで配線パターンを形成後、配線間のパラジウム除去を行うために、以下に示す条件3のデスミア処理を行うのが一般的な方法である。しかし、本発明による表面処理方法によれば、以下に記載する配線表面処理における工程の一部と併せてデスミア処理を行うことが可能である。そのため、ここでは下記条件3によるデスミア処理を行わずに、工程f−2に引き続き、以下に示す工程f−4を行った。
【0136】
(条件3)
1…膨潤処理(サーキュポジットホールプリップ4125(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)、70℃、5分)
2…水洗(R.T.3分)
3…過マンガン酸処理(サーキュポジットMLBプロモーター213(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)、70℃、1分)
4…水洗(R.T.3分)
5…中和処理(サーキュポジットMLB216−4(ローム・アンド・ハース電子材料株式会製、商品名)、45℃、5分)
6…水洗(R.T.2分)
7…乾燥(85℃、30分)
【0137】
(工程f−4)
第3の配線106c側の配線表面を、200ml/Lに調整した酸性脱脂液:Z−200(株式会社ワールドメタル製、商品名)に、液温:50℃で2分間浸漬した後、液温:50℃の水に2分間浸漬することにより湯洗し、更に1分間水洗した。次いで、3.6Nの硫酸水溶液に1分間浸漬し、1分間水洗した。
【0138】
(工程f−5)
上記前処理工程を経た基板を、置換パラジウムめっき液:SA−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に30℃で3分間浸漬して、第3の配線106c表面に銅よりも貴な金属であるパラジウムめっきを1.0μmol/dm2施し、1分間水洗した。
【0139】
(工程f−6)
上記パラジウム処理工程を経た基板を、有機化合物を含むアルカリ性溶液で表面処理した。具体的には、膨潤液サーキュポジットホールプリップ4125(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に70℃で3分浸漬後、3分間水洗した。
【0140】
(工程f−7)
上記膨潤処理工程を経た基板を、過マンガン酸液サーキュポジットMLBプロモーター213(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に70℃で1分浸漬後、3分間水洗した。
【0141】
(工程f−8)
上記過マンガン酸処理工程を経た基板を、中和液サーキュポジットMLB216−4(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に40℃で3分浸漬後、2分間水洗した。
【0142】
(工程f−9)
上記中和処理工程を経た基板を、85℃で30分間乾燥させた。以上、(工程f−5)〜(工程f−9)を行うことで、銅配線表面への凹凸形成と、配線間のビルドアップ材表面のパラジウム除去とを同時に行った。
【0143】
(工程g)
上記(工程d−3)〜(工程f−9)までの一連の工程を再度繰り返し、ビルドアップ層及び外部接続端子107を含む最外層の配線を形成することによって更に一層追加した。最後に絶縁被覆109を形成して、その後、外部接続端子107及び半導体チップ接続端子に金めっき処理を施し、図5(1パッケージ分の断面図)、図7(1パッケージ分の平面図)、及び図10(半導体チップ搭載基板全体図)に示すようなファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板を作製した。
【0144】
(工程h)
上記(工程a)〜(工程g)により作製した半導体チップ搭載基板の半導体チップ搭載領域に、接続バンプ112が形成された所望とする数の半導体チップ111を、フリップチップボンダを用いて超音波を印加しながら搭載した(図10を参照)。更に、半導体チップ搭載基板と半導体チップ111の隙間に、半導体チップ端部からアンダーフィル材113を注入し、オーブンを用いて80℃で1時間の1次硬化及び150℃で4時間の2次硬化を行った。次に、外部接続端子107に、直径:0.45mmの鉛・錫共晶はんだボール114を、N2リフロー装置を用いて融着した。最後に、幅:200μmのブレードを装着したダイサーで半導体チップ搭載基板を切断し、図11に示す半導体パッケージを作製した。
【0145】
(実施例2)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面をγ−アミノプロピルトリエトキシシラン:0.5質量%水溶液に、30℃で1分間浸漬するカップリング処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0146】
(実施例3)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、硫酸溶液でpH6.5に調整した2−メチルイミダゾール:0.5質量%水溶液に30℃で1分間浸漬するアゾール処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0147】
(実施例4)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、pH9.5に調整した3,5−ジメチルピラゾール:0.5質量%水溶液に30℃で1分間浸漬するアゾール処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0148】
(実施例5)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する銅よりも卑な金属形成処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0149】
(実施例6)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、硫酸ニッケル・6水和物:0.2g/L、クエン酸ナトリウム:3g/L、ほう酸:3g/L、次亜りん酸ナトリウム:10g/L、pH9の無電解ニッケルめっき液に50℃、120秒浸漬し、その後、1分間水洗し、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する方法によって、銅よりも卑な金属形成処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0150】
(実施例7)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、硫酸コバルト・7水和物:0.2g/L、クエン酸ナトリウム:3g/L、ほう酸:3g/L、次亜りん酸ナトリウム:10g/L、pH8の無電解コバルトめっき液に50℃、120秒浸漬し、その後、1分間水洗し、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する方法によって、銅よりも卑な金属形成処理工程を行った。更に1分間水洗した。
【0151】
(実施例8)
上記(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで上記(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する方法によって、銅よりも卑な金属形成処理工程を行い、その後1分間水洗した。また、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン:0.5質量%水溶液に30℃で3分間浸漬するカップリング処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0152】
(実施例9)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する方法によって、銅よりも卑な金属形成処理工程を行い、1分間水洗した。また、引き続き、水酸化ナトリウム溶液でpH9.5に調整した3,5−ジメチルピラゾール:0.5質量%水溶液に30℃で1分間浸漬する方法によってアゾール処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0153】
(実施例10)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)後に150℃で60分間にわたって加熱処理する工程を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する方法によって、銅よりも卑な金属形成処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0154】
(比較例1)
(工程f)における(工程f−5)の置換パラジウムめっき処理を行わなかったこと以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0155】
(比較例2)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。得られた基板を1分間水洗した後、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、先に形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、得られた基板を5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0156】
(比較例3)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に、(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、更に5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0157】
(比較例4)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に、(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、マイクロエッチング剤であるメックエッチボンドCZ8100(メック株式会社製、商品名)に40℃で1分30秒間浸漬し、更に2分間水洗した。次いで、このような一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0158】
(比較例5)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に、(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理を行った後に、(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、金属銅の結晶による凹凸を形成した。その後、更に5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0159】
(比較例6)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理後、(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、更に1分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0160】
(比較例7)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に、(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理後、(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、更に1分間水洗し、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する銅よりも卑な金属形成処理工程を行った。その後、1分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0161】
(比較例8)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで、(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗した後、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0162】
(比較例9)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで、(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、更に5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0163】
(比較例10)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、マイクロエッチング剤であるメックエッチボンドCZ8100(メック株式会社製、商品名)に40℃で1分30秒間浸漬し、更に2分間水洗した。次いで、このような一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0164】
(比較例11)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで、(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理後、(工程f−6)〜(工程f−8)を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、金属銅の結晶による凹凸を形成した。その後、更に5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0165】
(比較例12)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで、(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理後、(工程f−6)〜(工程f−8)を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、更に1分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0166】
(比較例13)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで、(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理後、(工程f−6)〜(工程f−8)を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、更に1分間水洗し、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する銅よりも卑な金属形成処理工程を行った。その後、1分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0167】
(比較例14)
(工程f)における(工程f−6)の膨潤処理を行わなかった以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0168】
(比較例15)
(工程f)における(工程f−7)の過マンガン酸処理を行わなかった以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0169】
(比較例16)
(工程f)における(工程f−8)の中和処理を行わなかった以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0170】
(比較例16A)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)〜(工程f−6)の各処理を行った後に、過マンガン酸を含むアルカリ性溶液にかえて塩素酸塩を含むアルカリ性溶液を用いて(工程f−7)を実施した。より具体的には、工程(f−7)では、塩素酸塩を含むアルカリ性溶液として、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した溶液を使用し、この溶液に50℃で3分間浸漬後、1分間水洗いした。また、工程(f−8)では、硫酸:20g/Lの酸性溶液を使用し、この溶液に25℃で30秒間浸漬後、1分間水洗いした。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0171】
2.以下の実施例11〜20及び比較例17〜32Aは、表面処理後の銅表面の接着性、平滑度、及び表面形状を評価するための電解銅箔試験片の作製に関する。
(実施例11)
配線基板の表面処理後におけるビルドアップ材と銅表面の接着性、ソルダーレジストと銅表面の接着性、平滑度、表面形状を評価するために、18μmの電解銅箔GTS−18(古河サーキットフォイル株式会社製、商品名)のシャイニー面に電気めっきを行い、厚さ:50μmの電解銅箔を作製した。その後、電解銅箔を5cm×8cm(接着試験用、銅表面平滑度評価用、銅表面形状評価用)に切り出し、各電解銅箔の電気めっき面に、実施例1の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施し、電解銅箔の試験片を作製した。
【0172】
(実施例12)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例2の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、カップリング処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0173】
(実施例13)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例3の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、アゾール処理:イミダゾール、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0174】
(実施例14)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例4の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、アゾール処理:ピラゾール、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0175】
(実施例15)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例5の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0176】
(実施例16)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例6の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解ニッケルめっき処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0177】
(実施例17)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例7の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解コバルトめっき処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0178】
(実施例18)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例8の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、カップリング処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0179】
(実施例19)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例9の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、アゾール処理:ピラゾール、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0180】
(実施例20)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例10の(工程f−4)〜(工程f−9)及び150℃の加熱処理工程による各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、乾燥、150℃加熱処理)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0181】
(比較例17)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例1の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0182】
(比較例18)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例2の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、酸化処理:80℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0183】
(比較例19)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例3の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、酸化処理:80℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0184】
(比較例20)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例4の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、エッチング処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0185】
(比較例21)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例5の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0186】
(比較例22)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例6の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0187】
(比較例23)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例7の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0188】
(比較例24)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例8の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、酸化処理:85℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0189】
(比較例25)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例9の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、酸化処理:85℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0190】
(比較例26)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例10の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、エッチング処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0191】
(比較例27)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例11の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0192】
(比較例28)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例12の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0193】
(比較例29)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例13の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0194】
(比較例30)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例14の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0195】
(比較例31)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例15の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0196】
(比較例32)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例16の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、過マンガン酸処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0197】
(比較例32A)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例16Aに記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、塩素酸処理(酸化処理:50℃)、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0198】
3.以下の実施例21〜30及び比較例33〜48Aは、配線間の絶縁抵抗値及び耐PCT性を評価するための評価用基板の作製に関する。
(実施例21)
(工程f)における配線基板の表面処理による効果を評価するために、以下のようにして評価用基板を作製し、配線間の絶縁抵抗値及び耐PCT性を評価した。図13及び図14は、評価用基板の製造工程を模式的に示す工程図であり、各工程図は、先に図9に沿って説明した(工程f)をさらに詳細に説明したものである。すなわち、図13及び図14を参照すると、(i)はコア基板110にビルドアップ層104を形成した後にデスミア処理を行う工程、(ii)はシード層118を形成する工程、(iii)はめっきレジストパターン119を形成する工程、(iv)は電気めっきを施し、配線106を形成する工程、(v)はめっきレジストを剥離する工程、(vi)はシード層118を除去した後に所定の処理を施し、ビルドアップ層104を形成する工程を示している。
【0199】
より具体的には、評価用基板は以下のようにして作製した。先ず、図13及び図14に示すコア基板100として0.4mm厚のソーダガラス基板(熱膨張係数11ppm/℃)を用意し、片面にビルドアップ層104を次のように形成した。即ち、ビルドアップ材AS−ZII(日立化成工業株式会社製、商品名)を真空ラミネートによって、真空引き時間:30秒、加圧:40秒、0.5MPaの条件で、コア基板100の面にビルドアップ材をラミネートし、厚み:45μmの樹脂層を形成した後、オーブン乾燥機にて180℃で90分間保持することにより熱硬化し、層間絶縁層を形成した。その後、上記層間絶縁層の表面をデスミア処理した。デスミア処理方法としては、膨潤液サーキュポジットホールプリップ4125(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に80℃で3分浸漬後、3分間水洗した。その後、過マンガン酸液サーキュポジットMLBプロモーター213(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に80℃で5分浸漬後、3分間水洗した。次いで、中和液サーキュポジットMLB216−4(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に40℃で3分浸漬後、3分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた。次に、実施例1の(工程f−1)と同様に、ビルドアップ層上にシード層を形成した。具体的には、無電解銅めっき処理により、厚さ:300nmの銅薄膜(シード層118)を形成した。無電解銅めっきは、日立化成工業株式会社製の各処理液を用いて、先に説明を行った条件2で行った。
【0200】
次に、実施例1の(工程f−2)と同様に、配線パターンを形成した。具体的には、シード層118上に、スピンコート法でめっきレジストPMER P−LA900PM(東京応化工業株式会社製、商品名)を塗布し、膜厚:10μmのめっきレジスト層を形成した。次いで、めっきレジスト層を1000mJ/cm2の条件で露光した後、PMER現像液P−7Gに23℃で6分間浸漬し、L/S=10μm/10μmとなるようにレジストパターン119を形成した。その後、硫酸銅めっき液を用いて電気銅めっきを行い、厚さ:約5μmの配線106を形成した。めっきレジストの剥離は、メチルエチルケトンを用いて室温(25℃)で1分間浸漬して行った。また、シード層118のクイックエッチングには、CPE−700(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)の5倍希釈液を用いて、30℃で30秒間浸漬揺動することにより、これをエッチング除去し、配線106を形成した。
【0201】
配線106に対し、実施例1の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施した後、図13に示す層間絶縁層(ビルドアップ層104)と、図14に示すソルダーレジスト(絶縁被覆109)をそれぞれ形成し、図15に示すL/S=10μm/10μmの評価用基板を、それぞれ32枚作製した。
【0202】
(実施例22)
各表面処理として、実施例2の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、カップリング処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0203】
(実施例23)
各表面処理として、実施例3の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、アゾール処理:イミダゾール、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0204】
(実施例24)
各表面処理として、実施例4の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、アゾール処理:ピラゾール、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0205】
(実施例25)
各表面処理として、実施例5の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0206】
(実施例26)
各表面処理として、実施例6の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解ニッケルめっき処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0207】
(実施例27)
各表面処理として、実施例7の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解コバルトめっき処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0208】
(実施例28)
各表面処理として、実施例8の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、カップリング処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0209】
(実施例29)
各表面処理として、実施例9の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、アゾール処理:ピラゾール、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0210】
(実施例30)
表面処理として、実施例10の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、乾燥、150℃加熱処理)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0211】
(比較例33)
各表面処理として、比較例1の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0212】
(比較例34)
各表面処理として、比較例2の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、酸化処理:85℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0213】
(比較例35)
各表面処理として、比較例3の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、酸化処理:85℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0214】
(比較例36)
各表面処理として、比較例4の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、エッチング処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0215】
(比較例37)
各表面処理として、比較例5の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0216】
(比較例38)
各表面処理として、比較例6の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0217】
(比較例39)
各表面処理として、比較例7の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0218】
(比較例40)
各表面処理として、比較例8の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、酸化処理:85℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0219】
(比較例41)
各表面処理として、比較例9の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、酸化処理:80℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0220】
(比較例42)
各表面処理として、比較例10の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、エッチング処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0221】
(比較例43)
各表面処理として、比較例11の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0222】
(比較例44)
各表面処理として、比較例12の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0223】
(比較例45)
各表面処理として、比較例13の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0224】
(比較例46)
各表面処理として、比較例14の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0225】
(比較例47)
各表面処理として、比較例15の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0226】
(比較例48)
各表面処理として、比較例16の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、過マンガン酸処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0227】
(比較例48A)
各表面処理として、比較例16Aに記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、塩素酸塩処理(酸化処理:50℃)、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0228】
4.各種特性の評価
(半導体パッケージの信頼性試験)
先に実施例1〜10及び比較例1〜16Aで作製した各々22個の半導体パッケージサンプルに対して吸湿処理を行った。次いで、到達温度:240℃、長さ:2mのリフロー炉に0.5m/分の条件で各サンプルを流して、リフローを行った。その後、各サンプルについてクラック発生の有無を調べ、発生した場合をNGとした。結果を表1に示す。また、各々22個の半導体パッケージサンプルを厚さ:0.8mmのマザーボードに実装し、−55℃にて30分〜125℃にて30分の条件で温度サイクル試験を行い、500サイクル目、1000サイクル目、1500サイクル目に、マルチメータ3457A(ヒューレット・パッカード社製、商品名)を用い、配線の導通抵抗値を測定した。測定した抵抗値が初期抵抗値より10%以上変化した場合をNGとした。結果を表1に示す。但し、比較例4、比較例10については、配線精度を維持することができず、試験基板を作製することができなかった。
【0229】
【表1】
【0230】
(ビルドアップ材との接着性試験1)
先に実施例11〜20及び比較例17〜32Aで作製した電解銅箔上に、膜厚:45μmのビルドアップ材であるAS−ZII(日立化成工業株式会社製、商品名)を積層し、真空加圧式ラミネーター装置(株式会社名機製作所製)で、温度:110℃、加圧:0.5MPaで40秒による仮接着を行った。その後、乾燥機により180℃で90分保持することによって、銅箔とビルドアップ樹脂を接着した。なお、上記電解銅箔は、各種表面処理を施した面側において絶縁層(ビルドアップ樹脂)と接着している。次に、ビルドアップ樹脂表面に、膜厚:25μmのソルダーレジストであるSR−7200(日立化成工業株式会社製、商品名)を形成し、接着性試験用基板を作製した。上記で得た各接着性試験用基板について、初期(0時間)の接着強度、150℃で120時間及び240時間放置した後の接着強度、121℃、0.2MPaで48時間及び96時間のPCT放置した後の接着強度を測定した。なお、上記接着強度の指標となるピール強度(N/m)の測定は、レオメータNRM−3002D−H(不動工業株式会社製、商品名)を用い、電解銅箔を基板に対して垂直方向に50mm/minの速度で引き剥がして行った。結果を表2に示す。
【0231】
【表2】
【0232】
(ビルドアップ材との接着性試験2)
先に実施例11〜20及び比較例17〜32Aで作製した電解銅箔上に、膜厚:45μmのビルドアップ材であるABF−GX−13(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名)を積層し、真空加圧式ラミネーター装置(株式会社名機製作所製)で、温度:110℃、加圧:0.5MPaで40秒による仮接着を行った。その後、乾燥機により170℃で90分保持することによって、銅箔とビルドアップ樹脂を接着した。なお、上記電解銅箔は、各種表面処理を施した面側において絶縁層(ビルドアップ樹脂)と接着している。次に、ビルドアップ樹脂表面に、膜厚:25μmのソルダーレジストであるSR−7200(日立化成工業株式会社製、商品名)を形成し、接着性試験用基板を作製した。上記で得た各接着性試験用基板について、初期(0時間)の接着強度、150℃で120時間及び240時間放置した後の接着強度、121℃、0.2MPaで48時間及び96時間のPCT放置した後の接着強度を測定した。なお、上記接着性の指標となるピール強度(N/m)の測定は、レオメータNRM−3002D−H(不動工業株式会社製、商品名)を用い、電解銅箔を基板に対して垂直方向に50mm/minの速度で引き剥がして行った。結果を表3に示す。
【0233】
【表3】
【0234】
(ソルダーレジストとの接着性試験)
先に実施例11〜20及び比較例17〜32Aで作製した電解銅箔上に、膜厚:25μmのソルダーレジストであるSR−7200(日立化成工業株式会社製、商品名)を塗布し、硬化することにより銅箔とソルダーレジストを接着し、接着性試験用基板を作製した。なお、上記電解銅箔は、各種表面処理を施した面側において絶縁層(ソルダーレジスト)と接着している。上記で得た各接着性試験用基板について、初期(0時間)の接着強度、150℃で120時間及び240時間放置した後の接着強度、121℃、0.2MPaで48時間及び96時間のPCT放置した後の接着強度を測定した。なお、上記接着性の指標となるピール強度(N/m)の測定は、レオメータNRM−3002D−H(不動工業株式会社製、商品名)を用い、電解銅箔を基板に対して垂直方向に50mm/minの速度で引き剥がして行った。結果を表4に示す。
【0235】
【表4】
【0236】
(銅表面平滑度評価試験)
先に実施例11〜20及び比較例17〜32Aで作製した電解銅箔の表面処理を施した面側の表面粗さ(Rz)を、簡易式原子間力顕微鏡(AFM)Nanopics2100(エスアイアイ・ナノテクノジー株式会社製、商品名)を用いて、以下に示した条件4で測定した。結果を表5に示す。
【0237】
(条件4)
測定長さ:1μm
SCAN SPEED:1.35μm/sec
FORCE REFARENCE:160
【0238】
【表5】
【0239】
(配線間の絶縁性試験)
先に実施例21〜30及び比較例33〜48Aに記載された各評価用基板について、以下のようにして、L/S=10/10μmの配線間の短絡及び配線の断線が無い評価基板4枚を選び、配線間の絶縁抵抗値を測定した。但し、比較例36及び比較例42の評価基板については、配線精度を維持することができなかったため、測定を行わなかった。先ず、デジタル超高抵抗微小電流計R−8340A(株式会社アドバンテスト製、商品名)を用いて、L/S配線間に室温(25℃)でDC5Vの電圧を30秒間印加し、L/S配線間の絶縁抵抗値を測定した。なお、1GΩ以下の絶縁抵抗測定には、デジタルマルチメータ3457A(ヒューレット・パッカード株式会社製、商品名)を用いた。次に、温度85℃及び相対湿度85%に保った恒温恒湿層中で、L/S配線間に連続的にDC5Vの電圧を印加し、24時間、48時間、96時間、200時間、500時間、1000時間後にそれぞれ上記と同様にL/S配線間の絶縁抵抗値を測定した。なお、恒温恒湿槽は、EC−10HHPS(株式会社日立製作所製、商品名)を用い、投入後1000時間まで測定した。以上のようにして測定した評価基板4枚について、絶縁抵抗値の最小値が、1GΩ未満の場合には「否(×)」とし、1GΩ以上の場合には「良(○)」とした。結果を表6に示す。
【0240】
【表6】
【0241】
(耐PCT性評価試験)
実施例21〜30及び比較例33〜48Aに記載された各評価用基板について、耐PCT試験(121℃、0.2MPa、200時間)を行った。評価方法は、試験後の配線106と絶縁層(ビルドアップ層104)間、絶縁層(ビルドアップ層104)と絶縁層(ビルドアップ層104)間及び配線106とソルダーレジスト(絶縁被覆109)間、絶縁層(ビルドアップ層104)とソルダーレジスト(絶縁被覆109)間に膨れ及び剥がれが無いものを良品とし、その数を調べた。結果を表7に示す。但し、比較例36及び比較例42の評価基板については、配線精度を維持することができなかったため、評価を行わなかった。
【0242】
【表7】
【0243】
以上、表1〜表7の結果から明らかなように、本発明によれば、配線間の絶縁層表面に残存するパラジウムの除去と銅配線表面処理の一部を同一処理で行うことで、工程を短縮することができるとともに、各種特性において優れた結果を得ることができる。より詳細には、表1に示すように、実施例1〜10で作製した半導体パッケージの信頼性については、極めて良好であった。また、表5に示すように、実施例11〜20で作製した電解銅箔は、Rzが100nm以下の平滑な表面であっても、表2及び表3に示すように、ビルドアップ樹脂との150℃、240時間放置後の接着強度(ピール強度)は、カップリング処理及びアゾール処理をすることで向上し、ピラゾール処理することで、更に向上し良好であった。上記接着強度(ピール強度)は無電解錫めっき処理した場合でも、加熱処理を行うことで、更に向上し良好であった。また、表4に示すように、ソルダーレジストとの150℃、240時間放置後及びPCT放置後の接着強度(ピール強度)は、無電解錫めっき処理をすることで更に向上し良好であった。また、表6に示すように、実施例21〜30で作製した評価基板における配線間絶縁信頼性は、L/S=10μm/10μmにおいて、極めて良好であった。さらに、表7に示すように実施例21〜30で作製した評価基板における耐PCT性は、無電解錫めっき処理をすることで、ビルドアップ層と配線間、ビルドアップ層と絶縁層間及びソルダーレジストと配線間、ソルダーレジストと絶縁層間の何れにおいても極めて良好であった。
【0244】
一方、本発明と比較して、従来の表面処理方法を適用した場合には、比較例1〜48Aで示したように、工程の短縮及び平滑性、接着性、配線間絶縁信頼性、耐PCT性による特性の全てを満足することはできなかった。
【0245】
従って、本発明の配線基板の表面処理方法によれば、工程を短縮することができ、100nm以下の平滑な銅配線表面でありながら、銅配線表面と絶縁層との接着強度を向上させることが可能となる。この結果、配線間絶縁信頼性、微細配線形成に優れた配線基板及び半導体チップ搭載基板、更に耐リフロー性、温度サイクル性に優れた半導体パッケージを製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0246】
11…位置決めのマーク、13…半導体パッケージ領域、
14…ダイボンドフィルム接着領域(フリップチップタイプ)、
15…半導体チップ搭載領域(フリップチップタイプ)、
16…半導体チップ接続端子、17…ダイボンドフィルム接着領域(ワイヤボンドタイプ)、
18…半導体チップ搭載領域(ワイヤボンドタイプ)、19…外部接続端子、20…展開配線、
21…ダミーパターン、22…半導体チップ搭載基板、23…ブロック、24…補強パターン、
25…切断位置合わせマーク、
100…コア基板、101…第1の層間接続端子、102…第1の層間接続用IVH、
103…第2の層間接続端子、104…ビルドアップ層、105…第3の層間接続用IVH、
106…配線、106a…第1の配線、106b…第2の配線、106c…第3の配線、
107…外部接続端子、108…第2の層間接続用IVH、109…絶縁被覆、
111…半導体チップ、112…接続バンプ、113…アンダーフィル材、114…はんだボール、115…金ワイヤ、116…半導体用封止樹脂、117…ダイボンドフィルム、
118…シード層、119…レジストパターン、
200…粒界部、201…凹凸、202…凹凸、203…貴金属、204…凹凸、
205…凹凸、206…凹凸
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを有する配線基板における絶縁層及び銅配線の表面処理方法、更にこの表面処理方法により表面処理が施された配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の発展は目覚しく、情報処理機器の分野では、大型、小型を問わず、機器の機能向上が求められている。例えば、民生機器の分野では、パソコン、携帯電話等の機器の小型化、軽量化、高性能化及び高機能化が進められている。一方、産業用機器の分野では、無線基地局、光通信装置、及びサーバ、ルータ等のネットワーク関連機器等について、先と同様の検討が進められている。また、情報伝達量の増加に伴い、情報処理機器で扱う信号の高周波化が年々進む傾向にあるため、高速処理及び高速伝送技術の開発も進められている。例えば、実装関係では、CPU、DSP、各種メモリ等のLSIの高速化及び高機能化と共に、新たな高密度実装技術として、システムオンチップ(SoC)、システムインパッケージ(SiP)等の開発が盛んに行われている。このような状況下、半導体チップ搭載基板やマザーボードについても、高周波化、高密度配線化及び高機能化に対応する必要がある。それらの代表的な基板として、近年、ライン/スペース(L/S)=15μm/15μm以下の微細配線を形成した、ビルドアップ方式の多層配線基板(以下、「ビルドアップ基板」と言う)が使用されている。
【0003】
基板上の微細配線の形成は、通常、サブトラクティブ法、又は、セミアディティブ法によって行われる。サブトラクティブ法による一般的な配線形成工程では、最初に、銅箔表面にエッチングレジストを形成し、その後、露光及び現像を行い、レジストパターンを形成する。次に、不要な銅箔をエッチングし、レジスト剥離を行うことによって配線を形成する。
【0004】
一方、セミアディティブ法は、最初に、絶縁層表面に薄膜銅(シード層)を形成し、次いで、シード層表面に、めっきレジストを形成し、その後、露光及び現像を行い、レジストパターンを形成する。更に、電気銅めっき、レジスト剥離及びシード層のエッチングを行うことによって配線を形成する。
【0005】
一般的に、L/S=15μm/15μm以下の微細配線の形成においては、後者のセミアディティブ法を適用することが好ましい。
【0006】
セミアディティブ法におけるシード層の形成は、一般的に、絶縁層表面にパラジウムを吸着させ、無電解銅めっきを析出させることによって達成される。そのため、上記シード層の銅をエッチングした後、配線間の絶縁層表面に残存するパラジウムを除去し、配線間の絶縁信頼性を確保する必要がある。また、絶縁層を多層化する場合は、絶縁層間の接着力を向上させるために、配線形成後に絶縁層表面をエッチング等により溶解し、表面を粗化する処理が行われる。
【0007】
一方、ビルドアップ基板は、配線形成後に、層間絶縁層形成工程と配線形成工程を、交互に繰り返すことによって製造される。
【0008】
また、ビルドアップ基板の最表面には、外部接続端子、半導体チップ接続端子等の、端子部以外の配線を保護するために、必要に応じてソルダーレジスト、カバーレイ等の絶縁層が形成される。
【0009】
従って、ビルドアップ基板では、配線表面と絶縁層及び絶縁層と絶縁層との接着強度を確保すること、更に配線間の絶縁信頼性を確保することが重要である。また、近年、各種機器の機能向上に向けてL/S=15μm/15μm以下の微細配線の需要が高まっており、それら微細配線における伝送速度等の電気特性を向上するためには、配線表面の平滑化や配線精度を確保することも重要である。
【0010】
このような各種特性を確保することを目的として、従来から幾つかの絶縁層表面処理方法及び配線表面処理方法が提案されてきた。
【0011】
絶縁層表面処理方法の一例として、デスミア処理による方法が知られている。デスミア処理とは、配線基板の製造時に行うドリル加工の際に発生する樹脂残渣(スミア)を除去する処理であり、例えば、以下の3つの処理工程(I)〜(III)で構成される方法がある。
(I)エッチングする前処理として、絶縁層表面を膨潤させる膨潤工程。
(II)下記化学反応式(1)に示すように、過マンガン酸塩等の酸化剤を含むアルカリ性水溶液を用いて、絶縁層表面をエッチングするエッチング工程。
【0012】
【化1】
【0013】
(III)過マンガン酸を還元して除去するための後処理として、酸性溶液で処理する中和工程。
ビルドアップ基板の表面に対して上記(I)〜(III)で構成されるデスミア処理を行うことで、配線間の絶縁層表面がエッチングされ、絶縁層表面が粗化され、また絶縁層表面のスミアや残存するパラジウムといった汚れを除去することができる。なお、この方法によって、配線上のパラジウムは除去されることはない。
【0014】
一方、配線表面と絶縁層との接着強度を確保するための配線表面処理方法として、以下に説明するような銅表面処理方法が知られている。
【0015】
第1の方法は、エッチングにより銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与し、アンカー効果によって、銅表面と絶縁層との接着力を確保する方法である。例えば、特許文献1は、無機酸及び銅の酸化剤からなる主剤と、少なくとも一種のアゾール類及び少なくとも一種のエッチング抑制剤からなる助剤とを含む水溶液を用いて、銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与する方法を開示している。また、他の例として、特許文献2は、マイクロエッチングによって高さが1.5〜5.0μmの連続的な凹凸を形成した後、クロメート処理及びカップリング剤処理を施す方法を開示している。
【0016】
上記第1の方法では、酸化剤を含む酸性溶液で酸化処理を行うため、下記化学反応式(2)に示すように、酸化剤により酸化銅(CuO)の生成と同時に、酸によって銅が溶解(エッチング)される。
【0017】
【化2】
【0018】
図1は、前述したエッチングにより銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与する第1の方法に関し、(a)及び(b)は各工程における銅表面の状態を示す模式的断面図である。図1(a)に示すように、銅の粒界部200は、他の部位よりも早くエッチングされ、図1(b)に示すような独特の凹凸形状が形成される。従って、化学反応式(2)に示す反応が進むほど、銅のエッチングも進み、凹凸形状は大きくなる。
【0019】
第2の方法は、銅表面に微細な酸化銅の針状結晶による凹凸形状形成後、還元処理を行うことによって、微細な金属銅の針状結晶を付与し、アンカー効果によって、銅表面と絶縁層との接着力を確保する方法である。例えば、特許文献3は、亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有するアルカリ性水溶液を用い、その水溶液に80℃前後で浸漬することによって銅表面に酸化銅の微細な針状結晶を付与し、更に、引き続き、アミンボラン類の少なくとも一種類とホウ素系薬品とを混合した溶液を用いて還元処理を施すことによって、金属銅の微細な針状結晶を付与する方法を開示している。
【0020】
上記第2の方法では、下記化学反応式(3)に示すように酸化剤によってCuOが生成する。
【0021】
【化3】
【0022】
また、前述した第1の方法と異なり、第2の方法では、アルカリ性溶液を用いた処理を行うため、電位−pHの関係からすると、CuOの状態でほぼ安定となる。図2は、前述した銅表面に微細な酸化銅の針状結晶を付与する第2の方法に関し、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図であり、(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。図2(b2)に示すように、この方法では、先ず、CuOの針状結晶の凹凸201が形成される。その後、還元処理を行うことで、図2(c2)に示すように、金属銅の針状結晶の凹凸202が形成される。
【0023】
上記化学反応式(3)による酸化処理は、銅表面の全てがCuOで覆われるまで反応が進行する。そのため、短時間で銅表面がCuOに覆われる程、即ち、酸化反応速度が速くなるにつれて、CuOの針状結晶は均一で微細な凹凸が形成される。逆に、酸化反応速度が遅くなると、不均一で部分的に長い針状結晶が形成され、ばらつきのある凹凸が形成される。通常、第2の方法では、酸化反応速度が遅いために、図2(b2)及び(c2)に示すように、不均一で部分的に長い針状結晶の凹凸201、202が形成される。
【0024】
第3の方法は、銅表面に、銅よりも貴な金属を離散的に形成後、銅を酸化して、微細な酸化銅の針状結晶による凹凸を形成した後、還元処理を行うことによって、金属銅の針状結晶によるナノレベルの凹凸を付与し、アンカー効果によって、銅表面と絶縁層との接着力を確保する方法である。このような方法は、上記第1及び第2の方法における問題点を解決するために本発明者らによって提案された方法であり、特許文献4で開示されている。
【0025】
上記第3の方法では、酸化処理前に、銅表面に貴金属を離散的に形成する工程を設けることによって、酸化反応速度を高めている。第3の方法のように、標準電極電位の異なる金属を電気的に接触させた場合、より具体的には、銅表面に貴金属を離散的に形成した場合、酸化されやすい金属(銅:Cu)がアノードを、酸化されにくい金属(貴金属)がカソードを分担することになる。そのことによって、引き続き実施される酸化処理における反応速度が増加し、銅を単独で処理する場合と比べて、酸化が加速されることになる。
【0026】
図3は、前述した金属銅の針状結晶によるナノレベルの凹凸を付与する第3の方法に関し、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図であり、(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。銅を単独で酸化処理する場合、図2(b2)に示すように不均一で部分的に長いCuOの針状結晶の凹凸が形成される。一方、図3(a1)に示すように銅表面に貴金属203を離散的に形成した後に酸化処理を行った場合には、図3(b2)に示すように均一で微細なCuOの針状結晶の凹凸204が形成される。そして、引き続き、CuOの針状結晶の還元処理を行うことによって、図3(c2)に示すように微細な金属銅の針状結晶の凹凸205が形成される。
【0027】
第4の方法は、銅表面に、銅よりも貴な金属を離散的に形成後、銅を酸化して、微細な酸化銅の針状結晶による凹凸を形成した後、上記酸化銅を酸性溶液で溶解して、ナノレベルの凹凸を付与し、アンカー効果によって、銅表面と絶縁層との接着力を確保する方法である。このような方法は、上記第3の方法をさらに改善した方法として本発明者によって提案されており、特許文献5で開示されている。
【0028】
上記第4の方法では、酸化処理前に、銅表面に貴金属を離散的に形成する工程、引き続き酸化剤を含むアルカリ溶液を用いて酸化処理を行う工程、次いで、酸性溶液又は銅の錯化剤を含む溶液による処理を行う工程を、連続的に行うことを特徴としている。
【0029】
図4は、前述した酸化銅を酸性溶液で溶解して、ナノレベルの凹凸を付与する第4の方法に関し、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図であり、(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。第4の方法によれば、最初に、第3の方法と同様に、図4(a2)に示したように銅表面に貴金属203を離散的に形成する。次いで、上記銅表面の酸化処理を行うことによって、図4(b2)に示したような均一で微細なCuOの針状結晶の凹凸204が形成される。そして、その後、酸性溶液又は銅の錯化剤を含む溶液による処理を行い、CuOを選択的に溶解させることによって、図4(c2)に示したような微細な針状ではない金属銅の凹凸206が形成されることになる。
【0030】
以上説明したように、ビルドアップ基板等の多層構造を有する配線基板の製造では、配線間の絶縁信頼性の確保、配線表面と絶縁層との接着強度、及び絶縁層と絶縁層との接着強度を確保するために、通常、デスミア処理による絶縁層表面処理と、配線表面処理とを個別に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2000−282265号公報
【特許文献2】特開平9−246720号公報
【特許文献3】特許第2656622号公報
【特許文献4】特開2006−249519号公報
【特許文献5】特開2009−140998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
前述のように、ビルドアップ基板の製造では、一般に、配線形成後にデスミア処理による絶縁層表面処理を行い、その後に配線表面処理が行われる。しかしながら、先に説明したような配線基板に対する従来の表面処理方法では以下に示す解決すべき課題があり、それら課題は従来の表面処理方法を微細配線のビルドアップ基板に適用する際の障害となっている。
【0033】
先ず、上記第1の方法によれば、銅表面にRz(十点平均粗さ)で、1.5〜5μmの凹凸を形成し、アンカー効果による接着強度の改善が見られる。しかし、セミアディティブ法による微細配線形成においては、配線表面の凹凸は1μmを超す粗化形状であるため、そのような配線に高速の電気信号を流すと、表皮効果によって電気信号が、配線の表面付近に集中して流れるようになるため、伝送損失が大きくなる傾向がある。また、更にL/S=15μm/15μm以下の配線になると、配線精度を維持することが困難になる傾向がある。
【0034】
次に、上記第2の方法は、第1の方法と同様に、配線表面に表面粗さRzが、0.1〜1.5μmの凹凸を形成し、そのアンカー効果によって接着強度を確保する技術である。しかし、上記第2の方法では、表面に形成される凹凸の高さのバラツキが大きく、Rz<0.5μmである場合は、絶縁樹脂との高温及び高湿時の接着信頼性が低下する傾向がある。一方、Rz>1.0μmである場合は、第1の方法と同様に、伝送損失が大きくなる傾向がある。また、凹凸を形成する針状結晶が複雑に絡み合っているため、樹脂の粘度特性等の物性によっては、針状結晶の凹凸に樹脂が埋まりにくく、高温及び高湿時の接着信頼性が低下する傾向がある。更に、Rz≧0.1μmの金属銅の針状結晶は折れやすく、水平ラインによる処理を行うことは極めて困難であるため、薄板の処理に関する作業性が悪い。
【0035】
上記第1及び第2の方法における問題点は、本発明者によって提案された上記第3の方法によって解決することが可能である。上記第3の方法によれば、銅表面に離散的に貴金属を形成し、その後、酸化剤を含むアルカリ溶液で酸化処理して、酸化銅を形成し、表面にRzが0.001〜1μmの微細な凹凸を形成することによって、銅表面と絶縁樹脂との接着強度を向上させることができる。上記第3の方法では、スルーホール接続のめっき工程による酸化銅の針状結晶の溶解を防ぐために、酸化処理後に更に還元剤を含むアルカリ溶液を用いて還元処理を行うことが好ましい。しかし、第3の方法によって得られる凹凸は、針状結晶によって形成されるため、部分的に結晶同士が重なり、第2の方法と比較してその程度は小さいが、樹脂の粘度特性等によっては樹脂がこの針状結晶の凹凸に埋まりにくいという課題がある。そのため、本発明者らは上記第3の方法をさらに改善した方法として第4の方法を提案している。上記第4の方法によれば、上記第3の方法において、酸化銅を形成した後、酸性溶液により酸化銅を溶解して、表面にRzが0.001〜1μmの微細な凹凸を形成することによって、銅表面と絶縁樹脂との接着強度を向上させることが可能である。
【0036】
このように上記第4の方法は、配線表面の粗化が低レベルであっても絶縁層との接着性を確保できるという点で優れた方法である。しかし、上記第1及び第2の方法と比較して処理工程が多いため、生産性に劣るという課題があり、工程の短縮化が望まれている。
【0037】
以上説明したように、配線間の絶縁信頼性の確保、配線表面と絶縁層及び絶縁層と絶縁層との接着強度を確保するための配線基板の表面処理に関し、より簡便かつ効果的な方法が望まれている。従って、本発明は、上記従来の方法で見られる課題を改善することを目的とする。より具体的には、配線表面に1000nmを超す凹凸を形成することなく、配線間の絶縁信頼性の確保、及び配線表面と絶縁層並びに絶縁層と絶縁層との接着強度を確保でき、更に、配線基板の製造工程を短縮化できる簡便かつ効果的な絶縁層及び銅配線の表面処理方法、並びにこの表面処理方法により処理された各種信頼性に優れる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の事項に関する。
本発明の第1は、絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを備える配線基板の表面処理方法であって、(I)上記配線基板における絶縁層表面を溶解する処理工程と、(II)上記銅配線表面に凹凸を形成する処理工程とを含み、上記工程(I)と上記工程(II)の一部を同一処理条件下で同時に行うことを特徴とする、配線基板の表面処理方法に関する。
【0039】
ここで上記絶縁層表面を溶解する処理工程(I)は、(Ia)上記絶縁層表面を膨潤させる膨潤工程と、(Ib)上記絶縁層表面をエッチングするエッチング工程と、(Ic)上記絶縁層表面を中和する中和工程とを備え、上記銅配線表面に凹凸を形成する処理工程(II)は、(IIa)上記銅配線表面に銅よりも貴な金属を形成する貴金属処理工程と、(IIb)上記銅配線表面を酸化する酸化工程と、(IIc)上記銅配線表面を酸性溶液で処理する酸処理工程とを備え、上記エッチング工程(Ib)と上記酸化工程(IIc)による処理、及び上記中和工程(Ic)と上記酸処理工程(IIc)による処理の少なくとも一方を同一条件下で同時に行うことが好ましい。
【0040】
本発明の第2は、絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを備える配線基板の表面処理方法であって、(A)上記配線基板における銅配線表面に、銅よりも貴な金属を形成する工程と、(B)上記配線基板を、有機化合物を含むアルカリ性溶液に接触させる工程と、(C)上記配線基板を、過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液に接触させる工程と、(D)上記工程(C)に引き続き、上記配線基板を、上記過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に接触させる工程とを有することを特徴とする、配線基板の表面処理方法に関する。
【0041】
ここで、本発明の第1又は第2の配線基板の表面処理方法は、さら後処理として、銅配線表面に銅よりも卑な金属を形成する処理、アゾール化合物を含有する溶液を用いた処理、及びカップリング剤を用いた処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理を行う工程を有することが好ましい。
【0042】
また、上記銅よりも貴な金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、及びイリジウムからなる群から選択される金属であることが好ましい。
【0043】
また、上記銅よりも貴な金属の形成量は、0.001〜40μmol/dm2であることが好ましい。
【0044】
また、表面処理後の上記銅配線の表面粗さは、Rzで1〜1000nmであることが好ましい。
【0045】
本発明の第3は、本発明の第1又は第2の配線基板の表面処理方法を用いて処理された配線基板に関する。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、銅配線間の絶縁層表面のスミア及び残存パラジウムを除去し、絶縁層間の接着強度を確保するために行うデスミア処理と、配線表面と絶縁層との接着強度を確保するために行う配線表面処理に関して、それぞれの処理における工程の一部を同一処理条件下で同時に行うことができるため、各処理を別々に実施する従来法と比較して、工程の短縮化が可能となる。更に、配線表面に1000nmを超す凹凸を形成することなく、銅配線表面と絶縁層との接着強度を確保すると共に、各種信頼性を向上させることができる配線基板の表面処理方法を提供することができる。本発明による配線基板の表面処理方法は、多層プリント配線基板、ビルドアッププリント配線基板等のマザーボード、並びにリジットサブストレート及びビルドアップサブストレート等の半導体チップ搭載基板等の各種配線基板の配線部材に対して好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、従来の銅表面処理技術に関し、エッチングにより銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与する方法(第1の方法)の説明図であり、(a)及び(b)は各工程における銅表面の状態を示す模式的断面図である。
【図2】図2は、従来の銅表面処理技術に関し、銅表面に微細な酸化銅の針状結晶を付与する方法(第2の方法)の説明図であり、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図、及び(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。
【図3】図3は、従来の銅表面処理技術に関し、金属銅の針状結晶によるナノレベルの凹凸を付与する方法(第3の方法)の説明図であり、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図、及び(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。
【図4】図4は、従来の銅表面処理技術に関し、酸化銅を酸性溶液で溶解して、ナノレベルの凹凸を付与する方法(第4の方法)の説明図であり、(a1)〜(c1)は各工程を示す模式的断面図、及び(a2)〜(c2)は各工程における銅表面の状態を模式的に示す部分拡大図である。
【図5】本発明による半導体チップ搭載基板の一例を示す模式的断面図である。
【図6】本発明による半導体チップ搭載基板の別の一例を示す模式的断面図である。
【図7】本発明によるファン−インタイプ半導体チップ搭載基板の一例を示す平面図である。
【図8】本発明によるファン−アウトタイプ半導体チップ搭載基板の一例を示す平面図である。
【図9】本発明による半導体チップ搭載基板の製造方法の一例を示す図であり、(a)〜(g)は各工程に対応する模式的断面図である。
【図10】本発明によるフレーム形状の半導体チップ搭載基板の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は部分拡大図である。
【図11】本発明によるフリップチップタイプ半導体パッケージの一例を示す模式的断面図である。
【図12】本発明によるワイヤボンドタイプ半導体パッケージの一例を示す模式的断面図である。
【図13】本発明による試験用評価基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図14】本発明による試験用評価基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図15】実施例で作製した電食試験用評価基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明について、より具体的に説明する。なお、以下の説明では、本発明による配線基板の表面処理方法について、半導体チップ搭載基板に適用した場合を例に挙げている。しかし、以下の説明は、本発明の一実施形態に過ぎず、その他の実施形態では、多層プリント配線基板及びビルドアップ基板といったマザーボード等の表面処理方法として、本発明を適用することもできる。
【0049】
本発明による配線基板の表面処理方法は、従来、別々の工程として行っていた、(I)絶縁層表面を溶解するデスミア処理工程と、(II)配線表面に凹凸を形成する処理工程との一部を、同一処理で行うことを特徴とする。より具体的には、本発明による表面処理方法では、デスミア処理工程(I)が、(Ia)絶縁層表面を膨潤させる膨潤工程、(Ib)絶縁層表面をエッチングするエッチング工程、(Ic)絶縁層表面を中和する中和工程とを備え、銅配線表面に凹凸を形成する処理工程(II)が、(IIa)銅配線表面に銅よりも貴な金属を形成する貴金属処理工程、(IIb)銅配線表面を酸化する酸化工程、(IIc)銅配線表面を酸性溶液で処理する酸処理工程とを備える場合に、上記エッチング工程(Ib)と上記酸化工程(IIb)による処理、及び上記中和工程(Ic)と上記酸処理工程(IIc)による処理の少なくとも一方の処理を同一条件下で同時に実施することを特徴とする。
【0050】
また、本発明による配線基板の表面処理方法の一実施形態は、(A)配線基板の銅配線表面に、銅よりも貴な金属を形成する工程、(B)有機化合物を含むアルカリ性溶液に配線基板を接触させる工程、(C)過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液に上記配線基板を接触させる工程、(D)過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に上記配線基板を接触させる工程を有する。
【0051】
処理後の配線表面粗さは、Rzで1〜1000nmであることが好ましい。また、Rzで1〜300nmであることがより好ましく、Rzで1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることが更に好ましい。Rzが1nm未満では、徐々に絶縁樹脂等との接着力が低下する傾向がある。一方、Rzが1000nmを超えると、伝送損失が大きくなる問題が発生しやすくなる傾向があり、微細配線において処理後の配線精度が大きくずれる問題が生じる傾向がある。なお、本明細書で記載する表面粗さRzは、接触式表面粗さ計又は、原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて測定した値を意図している。
【0052】
本発明による配線基板の表面処理方法によって形成される配線表面の凹凸は、従来の第4の銅表面処理方法によって得られる凹凸の形状と同等に緻密且つ均一である。しかし、本発明によれば、デスミア処理の工程の一部を、他の処理と同一条件下で同時に行うことによって、全体の工程を短縮化できる。ここで、本明細書で使用する表現「緻密且つ均一」とは、銅表面の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した時、あるいは集束イオンビーム加工観察装置(FIB)により加工を行った後に、その断面を走査イオン顕微鏡(SIM)により観察した時、金属銅の表面に位置する結晶によって形成された凹凸が密集し、凹凸の高さバラツキが小さい状態であることを意味する。
【0053】
本発明の方法によれば、最初に、従来の第4の方法と同様に、図4(a2)に示したように、銅配線表面に貴金属203を離散的に形成する。次いで、銅配線基板を、有機化合物を含むアルカリ性溶液に浸漬して絶縁層を膨潤処理する。その後、過マンガン酸塩(酸化剤)を含むアルカリ性溶液で処理を行うことによって、絶縁層表面をエッチングするのと同時に、図4(b2)に示すような微細なCuOの凹凸が銅配線表面に形成される。更に、過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に浸漬することで、過マンガン酸を還元して除去する中和処理を行い、同時に銅配線表面に形成されたCuOを酸で選択的に溶解させることによって、図4(c2)に示すような微細な凹凸が形成される。これによって、配線間の絶縁層表面には凹凸が形成され、また絶縁層表面上に吸着しているパラジウムも、絶縁層のエッチングに伴って除去される。
【0054】
次に、本発明による配線基板の表面処理方法について、工程毎に、更に詳細に説明する。なお、本願発明においては、各工程による処理に先立ち、銅表面の清浄化を行う脱脂処理、酸洗処理、あるいはこれらを適宜組み合わせた前処理を行うことが好ましい。
【0055】
(工程A:銅よりも貴な金属を形成する工程)
銅より貴な金属を離散的に銅配線表面に形成する方法としては、特に限定されず、下地となる銅配線表面を完全に覆うことなく、銅配線表面に貴な金属を均一に分散した状態で付与することができれば、如何なる方法であってもよい。例えば、無電解めっき、電気めっき、置換めっき、スプレー噴霧、塗布、スパッタリング、蒸着等の方法が挙げられ、中でも、置換めっきによる方法が好ましい。置換めっきは、銅と銅よりも貴な金属とのイオン化傾向の違いを利用する方法であり、このような方法を適用することによって、銅よりも貴な金属を容易且つ安価に銅表面に離散的に形成することができる。
【0056】
銅より貴な金属とは、銅の電位よりも高い電位を有する金属を意図している。そのような貴金属としては、特に限定されないが、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムから選択される金属を用いることができる。
【0057】
銅表面上に離散的に形成する銅よりも貴な金属の形成量は、特に限定されない。しかし、緻密且つ微細で均一な望ましい凹凸の形状を得やすいこと、また絶縁樹脂との充分な接着強度を確保することが可能であることから、上記形成量は、0.001〜40μmol/dm2であることが好ましい。また、上記形成量は0.01〜10μmol/dm2であることがより好ましく、0.1〜4μmol/dm2であることが更に好ましい。形成量が0.001μmol/dm2未満では、緻密且つ均一な微細凹凸を形成することが困難になる傾向があり、40μmol/dm2を超えると絶縁樹脂との接着強度が低下する傾向がある。なお、銅より貴な金属を離散的に銅配線表面に実際に形成した量は、王水によって銅配線表面上の貴な金属を溶解させた後、その溶解液を原子吸光光度計で定量分析を行うことにより求めることができる。本明細書で記載する用語「離散的」とは、銅配線表面に貴金属が完全に被覆されることなく、貴金属が銅配線表面に分散している状態を意味するものであり、具体的な形成量によって限定されるものではないことを意図している。形成量が0.001〜40μmol/dm2であるとき、銅配線表面に貴金属を離散的に形成しやすい。
【0058】
(工程B:有機化合物を含有するアルカリ性溶液で処理する工程)
有機化合物を含むアルカリ性溶液に配線基板を接触させる工程は、絶縁層表面を膨潤させ、次のエッチング工程での絶縁層のエッチングを促進するためのものである。有機化合物としては、絶縁層を充分に膨潤できれば特に限定されないが、グリコール化合物、エーテル化合物を使用した場合には、膨潤効果が高いため好ましい。より具体的には、グリコール化合物としては、エチレングリコールを用いることができる。エーテル化合物としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを用いることができる。
【0059】
アルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を、水又はイオン交換樹脂によって処理した水等の溶媒に添加することで得られるものが好ましい。有機化合物を含むアルカリ性溶液で処理する工程を行う際の、この溶液の温度は、特に限定されない。しかし、充分に絶縁層表面を膨潤させるためには、上記溶液の温度は、55〜85℃であることが好ましく、60〜80℃であることがより好ましく、65〜75℃であることが特に好ましい。本発明の一実施形態では、上記工程Bにおいて、水酸化ナトリウム水溶液と、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等の有機化合物とを混合して得た溶液を好適に使用することができる。このような溶液は、市販品として入手することもできる。本発明では、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製の膨潤液「サーキュポジットホールプリップ4123」(商品名)を好適に使用することができる。
【0060】
(工程C:過マンガン酸塩を含有するアルカリ性溶液による処理)
過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液に配線基板を接触させる工程は、絶縁層表面をエッチングすると共に、銅配線表面に酸化銅を形成する工程である。この工程で、銅配線間の絶縁層表面のパラジウムが除去されると共に、絶縁層表面に接着性を向上させるための凹凸が形成される。また、銅配線表面には微細な針状の凹凸が形成される。絶縁層と銅配線との表面処理を別々に実施する従来法によれば、一般的に、絶縁層表面をエッチングするデスミア処理では、過マンガン酸塩等の遷移元素の酸化剤を含むアルカリ性溶液が使用され、銅配線表面に酸化銅を形成する粗化処理では、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩等の典型元素の酸化剤を含むアルカリ性溶液が使用される。そして、仮に、上記デスミア処理で塩素酸塩等の酸化剤を含むアルカリ性溶液を使用した場合には、絶縁層表面のエッチングは進まず、残存パラジウムを除去すること、及び配線間の絶縁信頼性と絶縁層間の接着性とを確保することは困難であることが知られている。また、銅配線表面の粗化処理で過マンガン酸塩を含有するアルカリ性溶液を使用した場合には、当該粗化処理で一般的に使用される塩素酸塩等の酸化剤を含むアルカリ性溶液と比較して、過マンガン酸塩を含有するアルカリ性溶液は、酸化銅の形成量が少なく、また酸化銅は不均一に析出する。そのため、一般的に、過マンガン酸塩を含有するアルカリ性溶液を使用して銅配線の表面処理を行うことことは困難であることが知られている。
【0061】
しかしながら、本発明では、貴金属を離散的に銅配線表面に形成することによって、銅配線表面における酸化反応速度を増加することができるため、過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液を使用した場合であっても、銅配線表面に緻密且つ均一な微細な凹凸を形成することができる。過マンガン酸塩としては、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム等を用いることができる。上記過マンガン酸塩を含有するアルカリ性溶液の過マンガン酸塩濃度は0.01〜1mol/Lであることが好ましい。更に、0.1〜0.8mol/Lであることが好ましく、最も好ましくは0.3〜0.5mol/Lである。また、当該溶液のpHは、アルカリ性を示す値でなければならない。過マンガン酸の溶液中の安定性を考慮すれば、pH12以上が好ましく、pH13以上であることが更に好ましい。なお、pHを調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の溶液を適宜用いることができる。
【0062】
また、過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液で処理する工程を行う際の、この溶液の温度は、特に限定されない。しかし、充分に絶縁層表面をエッチングし、且つ銅配線表面を酸化するためには、上記溶液の温度は、20〜95℃であることが好ましく、50〜85℃であることがより好ましく、60〜80℃であることが特に好ましい。アルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を、水又はイオン交換樹脂によって処理した水等の溶媒に添加することで得られるものが好ましい。本発明の一実施形態では、上記工程Cにおいて、水酸化ナトリウム水溶液と過マンガン酸ナトリウムとを混合して得た溶液を好適に使用することができる。このような溶液は、市販品として入手することもできる。本発明では、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製の過マンガン酸液「サーキュポジットMLBプロモーター213」(商品名)を使用することができる。
【0063】
(工程D:還元剤を含有する酸性溶液で処理する工程)
過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に配線基板を接触させる工程により、絶縁層表面を中和し、銅配線表面の酸化銅を除去することができる。この工程で、絶縁層表面の過マンガン酸は中和されて除去されると共に、銅配線表面の針状の酸化銅も除去され、針状でない微細な凹凸が形成される。還元剤としては、過マンガン酸を中和できれば特に限定されない。例えば、還元剤として、硫酸ヒドロキシルアミン、グリオキサールを使用することができる。
【0064】
また、還元剤を含有する酸性溶液で処理する工程を行う際の、この溶液の温度は、特に限定されない。しかし、使用上の安全性を考慮し、且つ過マンガン酸の還元及び除去による中和処理、銅配線表面における酸化銅の結晶の選択的除去を良好に行うためには、溶液の温度は20〜60℃であることが好ましく、35〜50℃であることがより好ましく、40〜45℃であることが特に好ましい。また、上記溶液による処理時間は、溶液の濃度や液温等を考慮して、過マンガン酸の還元および除去、酸化銅の結晶を選択的に除去できるように適宜決定すればよい。酸性溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、リンゴ酸およびその塩、コハク酸およびその塩、クエン酸およびその塩、グリコール酸およびその塩、乳酸およびその塩、酒石酸およびその塩等の有機酸を含む溶液が使用できる。本発明の一実施形態では、上記工程Dにおいて、硫酸水溶液と硫酸ヒドロキシルアミンとを混合して得た溶液を好適に使用することができる。このような溶液は、市販品として入手することもできる。本発明では、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製の中和液「サーキュポジットMLB216−4」(商品名)を使用することができる。
【0065】
(各工程の順番)
前述の説明では、「銅よりも貴な金属を形成する工程(A工程)」−「有機化合物を含むアルカリ性溶液で処理する工程(B工程)」−「過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液で処理する工程(C工程)」−「還元剤を含む酸性溶液で処理する工程(D工程)」を順番で行う実施形態としている。しかし、別の実施形態としてA工程とB工程との順番を逆にして実施することもできる。いずれの実施形態を適用しても処理後の特性に大きな違いはないが、現行のデスミア処理装置は、B工程−C工程−D工程を一連の処理として順次行っているため、既存の装置を用いることができるという観点からは、前者の実施形態における順番で処理することが好ましい。
【0066】
(工程E:工程Dの後の処理)
本発明では、前述のA工程〜D工程における各処理を行った後、引き続き、銅配線表面と絶縁層の接着強度を向上させるための後処理を実施することが望ましい。具体的には、(E1)銅配線表面に銅よりも卑な金属を形成する処理、(E2)アゾール化合物を含有する溶液を用いて銅配線表面を処理する、又は(E3)カップリング剤を用いて銅配線表面を処理する、といった後処理を実施することによって、絶縁層との接着強度をさらに向上することが可能となる。これら(E1)、(E2)、(E3)の処理は、組み合わせて行うことができる。中でも、(E1)による処理を行った場合には、ソルダーレジストへの接着強度が向上する傾向がある。また、(E2)による処理を行った場合には、ビルドアップ材への接着強度が向上する傾向がある。更に(E1)及び(E2)による処理を組み合わせて実施した場合には、ソルダーレジスト及びビルドアップ材の双方に対する接着強度を向上することが可能である。これらについては、後述する実施例によって明らかにされている。上記(E1)〜(E3)の処理を組み合わせて処理を行う場合、(E1)による処理を最初に行うことが好ましい。より、具体的には、(E1)による処理の後に、(E2)又は(E3)の処理を行うことがより好ましい。
【0067】
(E1:銅配線表面に卑金属を形成する処理)
前述したD工程後、銅配線表面に銅よりも卑な金属を付与することによって、銅配線表面に上記卑金属が形成される。但し、銅配線表面は必ずしも完全に覆われるわけではない。ここで、卑金属とは、銅の電位よりも低い電位を有する金属を意図している。理論によって拘束するものではないが、上述の卑金属による処理を行うことによって、銅配線表面の再酸化が抑制され、絶縁層との接着強度の向上が可能になると推察される。
【0068】
卑金属を銅配線表面に形成する方法としては、特に限定されないが、無電解めっき、電気めっき、スパッタリング、蒸着等により形成することが好ましく、無電解めっきで形成することがより好ましく、無電解めっきにより銅配線表面を卑金属で完全に被覆するのが特に好ましい。
【0069】
上記卑金属は、特に限定されないが、Cr、Co、Ni、Zn、Sn、Mo及びWからなる群から選択される金属を用いることが好ましい。特に、無電解めっきにて析出可能なSn、Ni、Coが好ましく、Snが特に好ましい。更に、銅配線表面に複数の卑金属を形成してもよく、その場合には、最表面にSnを形成することが好ましい。
【0070】
無電解めっきにおいて使用可能なSnを含む溶液は、錫塩及びイオウ化合物を含む酸性溶液であることが好ましい。錫塩としては、酸性溶液に溶解するものであればよいが、有機スルホン酸や塩化物であることが好ましい。イオウ化合物としては、チオ尿素、有機硫化物等であることが好ましい。上記酸性溶液としては、無機酸及び有機酸から選択される1種以上を含む酸性溶液であることが好ましい。特に限定されないが、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、酒石酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等を含む酸性溶液であることが好ましい。その他、リン化合物を含有してもよい。
【0071】
また、銅配線表面上に形成する卑金属の形成量(平均化した層の厚さ)は、特に限定されない。しかし、銅配線表面のRzを考慮して、卑金属の形成量を適切に調節することが好ましい。銅配線表面のRzが1〜1000nmの場合、卑金属の形成量は0.61〜305μmol/dm2(1〜500nmの厚さ)であることが好ましく、銅配線表面のRzが1〜300nmの場合、卑金属の形成量は0.61〜91.5μmol/dm2(1〜150nmの厚さ)であることが好ましい。また、銅配線表面のRzが1〜100nm以下の場合、卑金属の形成量は0.61〜30.5μmol/dm2(1〜50nmの厚さ)であることが好ましく、銅配線表面のRzが1〜50nmの場合、卑金属の形成量は0.61〜15.3μmol/dm2(1〜25nmの厚さ)であることが好ましい。卑金属の形成量を0.61μmol/dm2(1nmの厚さ)以上とすることで、銅配線の再酸化を抑制しやすくなる。また、銅配線表面のRz値に応じて卑金属の形成量を上記範囲内とすることで、絶縁層との接着強度を向上しやすくなる。卑金属の形成量が多すぎる場合、微細凹凸によるアンカー効果が低下し、絶縁層との接着強度が低下する傾向がある。なお、卑金属を離散的に銅配線表面に形成した量は、王水によって銅配線表面上の卑金属を溶解させた後、その溶解液を原子吸光光度計で定量分析を行うことにより求めることができる。
【0072】
更に、上記卑金属を形成した後に、加熱処理を行うことによって、銅配線表面と絶縁層との接着強度を更に向上させることができる。加熱処理は、90〜200℃の温度で実施することが好ましく、110〜170℃がより好ましく、130〜150℃が特に好ましい。90℃以上の温度に加熱することによって、加熱処理による接着強度向上の効果が発現しやすくなる。一方、加熱処理の温度を200℃以下に制御することによって、有機材料を含む基板の劣化を防止することができる。但し、加熱処理の温度は、有機材料等の基板材料に、劣化等の影響が出ない範囲であれば、200℃を超えた高い温度条件下で処理を行っても良い。
【0073】
加熱処理の時間は、所定の効果が得られ、材料に劣化等の影響が出ない範囲であれば、特に制限されるものではない。例えば、加熱処理の時間は、20〜120分が好ましく、40〜90分がより好ましい。特に限定するものではないが、卑金属としてSnを形成した場合は、その後、110〜170℃の温度で、20〜120分にわたって加熱処理を実施することが好ましく、130〜150℃の温度で、40〜90分にわたって加熱処理をすることがより好ましい。このような加熱処理の後、銅配線表面の清浄化を行う脱脂処理、酸洗処理、又はこれらを適宜組み合わせた処理を行っても良い。なお、銅配線表面に卑金属を形成する処理と組み合わせてアゾール化合物を含む溶液による処理やカップリング処理を行う場合も、加熱処理後に行うことが好ましい。
【0074】
(E2:アゾール化合物を含有する溶液による処理)
前述したD工程後、アゾール化合物を含有する溶液で銅配線表面を処理することによって、銅配線表面にアゾール化合物による層が形成される。理論によって拘束するものではないが、このような処理を行うことによって、銅配線表面の再酸化が抑制され、絶縁層との接着強度の向上が可能になると推察される。アゾール化合物を含有する溶液に使用するアゾール化合物は、窒素を1つ以上含む複素5員環化合物である。例えば、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールであり、アゾール化合物を含有する溶液とは、これらアゾール化合物を少なくとも1種以上含んでいるものであればよい。接着強度向上の観点からは、特に、ジアゾールが好ましい。更に、ジアゾールの中でも、ピラゾール(1,2−ジアゾール)が好ましい。なお、接着強度を向上させるためには、アゾール化合物における窒素を含む複素5員環構造そのものが重要であり、置換基の有無については特に限定されない。
【0075】
また、特に、アゾール化合物としてピラゾールを使用して前述した処理を行う場合には、pHが7〜12のアゾール化合物を含有する溶液を使用して処理を行うことが好ましい。更には、pH8〜11の溶液を用いて処理することがより好ましく、pH9〜10の溶液を用いて処理することが特に好ましい。
【0076】
また、特に、アゾール化合物としてイミダゾールを使用して前述した処理を行う場合には、pHが3〜9のアゾール化合物を含有する溶液を使用して処理を行うことが好ましい。更には、pH4〜8の溶液を使用して処理することがより好ましく、pH5〜7の溶液を使用して処理することが特に好ましい。
【0077】
また、特に、アゾール化合物としてトリアゾール及びテトラゾールを使用して上記処理を行う場合には、pHが0.1〜3のアゾール化合物を含有する溶液を使用して処理を行うことが好ましい。更には、pH0.1〜2の溶液を使用して処理することがより好ましく、pH0.1〜1の溶液を使用して処理することが特に好ましい。
【0078】
アゾール化合物を含有する溶液のpHは、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、塩酸、硫酸溶液等を適宜使用して、調整することができる。pHの調整するために、緩衝剤を加えることもできる。なお、pHは、一般的なガラス電極を用いたpHメータによって測定できる。具体的には、例えば、株式会社堀場製作所の商品名:Model(F−51)を使用することができる。フタル酸塩pH標準液(pH:4.01)と、中性リン酸塩pH標準液(pH:6.86)と、ホウ酸塩pH標準液(pH:9.18)をpH標準液として用い、pHメータを3点校正した後、pHメータの電極を溶液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定することで得られる。このとき、標準緩衝液と溶液の液温は、例えば、共に25℃とすることができる。
【0079】
アゾール化合物を含有する溶液におけるアゾール化合物の濃度は、0.1〜5000ppmの濃度が好ましく、0.5〜3000ppmがより好ましく、1〜1000ppmであることが特に好ましい。アゾール化合物を含む溶液による処理時間は、特に限定しないが、アゾール化合物の種類及び濃度に応じて適宜調整することが好ましい。
【0080】
(E3:カップリング処理)
前述したD工程後、カップリング剤を用いて銅配線表面を処理することによって、絶縁層との接着強度の向上が可能になる。本発明の一実施形態では、(E1)卑金属を含む溶液を用いた処理の後、又は(E2)アゾール化合物を含む溶液での処理の後にカップリング処理を行うことが好ましい。
【0081】
カップリング処理に使用するカップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用してもよい。中でもシラン系カップリング剤が好ましく、シラン系カップリング剤としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イミダゾール基、ビニル基、又はメタクリル基等の官能基を分子中に有するものであることが好ましい。また、上記カップリング剤は、それを含む溶液として使用することができ、このカップリング剤溶液の調整に使用される溶媒は、特に限定されないが、水、アルコール、ケトン類等を用いることが可能である。更に、カップリング剤の加水分解を促進させるために、酢酸、や塩酸等の酸を少量添加することもできる。カップリング剤の含有量は、カップリング剤溶液全体に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜1.0質量%であることがより好ましい。
【0082】
前述の各種溶液による処理又は各種溶液と接触させる方法は、各溶液に配線基板を浸漬する方法、各溶液を配線基板に対しスプレー噴霧又は塗布する方法等により行うことができる。また、各溶液で処理した配線基板は、自然乾燥、加熱乾燥、又は真空乾燥により乾燥するが、溶液の種類によっては、乾燥前に水洗又は超音波洗浄を行うことが好ましい。
【0083】
先に説明した本発明による配線基板の表面処理方法は、多層プリント配線基板、ビルドアッププリント配線基板等のマザーボード、並びにリジットサブストレート、ビルドアップサブストレート等の半導体チップ搭載基板、といった様々な用途の配線基板に適用することができる。特に限定するものではないが、以下、本発明による配線基板の表面処理方法を使用した実施形態について例示する。
【0084】
(半導体チップ搭載基板)
図5は、本発明の一実施形態である半導体チップ搭載基板の一例を示す模式的断面図である。図5では、2層のビルドアップ層(層間絶縁層)をコア基板100の片面にのみ形成した場合を例示している。しかし、ビルドアップ層は、図5に示した構成に限らず、必要に応じて、図6に示すようにコア基板100の両面に形成しても良い。
【0085】
半導体チップ搭載基板は、図5に示すように、半導体チップが搭載される側の絶縁層であるコア基板100上に、半導体チップ接続端子(図示省略)及び第1の層間接続端子101を含む第1の配線106aが形成される。コア基板100の他方の側には、第2の層間接続端子103を含む第2の配線106bが形成され、第1の層間接続端子101と第2の層間接続端子103は、コア基板100の第1の層間接続用IVH(インタースティシャルバイアホール)102を介して電気的に接続される。コア基板100の第2の配線106b側には、ビルドアップ層104が形成され、ビルドアップ層104上には、第3の層間接続端子を含む第3の配線106cが形成される。第2の層間接続端子103と第3の層間接続端子は、第2の層間接続用IVH108を介して電気的に接続される。
【0086】
ビルドアップ層が複数形成される場合は、同様の構造を積層し、最外層のビルドアップ層上には、マザーボードと接続される外部接続端子107が形成され、更に外部接続端子107と第3の層間接続端子は、第3の層間接続用IVH105を介して電気的に接続される。配線の形状、各々の接続端子の配置等は特に制限されず、搭載する半導体チップや目的とする半導体パッケージを製造するために、適宜設計可能である。また、半導体チップ接続端子と第1の層間接続端子101等を共用することも可能である。更に、最外層のビルドアップ層上には、必要に応じてソルダーレジスト等の絶縁被覆109を設けることもできる。
【0087】
以下、特に限定するものではないが、半導体チップ搭載基板の代表的な構成部材及び物性について説明する。
(コア基板)
コア基板の材質は特に問わないが、有機基材、セラミック基材、シリコン基材、ガラス基材等が使用できる。熱膨張係数や絶縁性を考慮すると、セラミック基材やガラス基材を用いることが好ましい。ガラス基材は、非感光性ガラスや感光性ガラスであってよい。非感光性ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス(成分例 SiO2:65〜75質量%、Al2O3:0.5〜4質量%、CaO:5〜15質量%、MgO:0.5〜4質量%、Na2O:10〜20質量%)、ホウ珪酸ガラス(成分例 SiO2:65〜80質量%、B2O3:5〜25質量%、Al2O3:1〜5質量%、CaO:5〜8質量%、MgO:0.5〜2質量%、Na2O:6〜14質量%、K2O:1〜6質量%)等が挙げられる。また、感光性ガラスとしては、Li2O−SiO2系結晶化ガラスに、感光剤として金イオン及び銀イオンを含むものが挙げられる。
【0088】
有機基板としては、ガラス布に樹脂を含浸させた材料を積層した基板や樹脂フィルムが使用できる。使用する樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はそれらの混合樹脂が使用できるが、熱硬化性の有機絶縁材料が好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、トリアリルトリメタリレートを含む樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマ等が挙げられる。これらの樹脂には、充填材を添加しても良い。充填材としては、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。コア基板の厚さは、100〜800μmであるのが、IVH形成性の点で好ましく、150〜500μmであるのがより好ましい。
【0089】
(ビルドアップ層)
層間絶縁層(ビルドアップ層)は、絶縁材料からなり、絶縁材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はそれらの混合樹脂が使用できる。また、ビルドアップ層は、熱硬化性の有機絶縁材料を主成分とするのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、トリアリルトリメタリレートを含む樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマ等が挙げられる。絶縁材料には充填材等を添加しても良い。充填材としては、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。
【0090】
(熱膨張係数)
熱膨張係数については、半導体チップの熱膨張係数とコア基板の熱膨張係数とが近似していて、且つコア基板の熱膨張係数とビルドアップ層の熱膨張係数とが近似していることが好ましいが、これらに限定するものではない。更に、半導体チップ、コア基板、ビルドアップ層の各々の熱膨張係数を、α1、α2、α3(ppm/℃)としたとき、α1≦α2≦α3であることがより好ましい。具体的には、コア基板の熱膨張係数α2は、7〜13ppm/℃が好ましく、更に好ましくは9〜11ppm/℃である。ビルドアップ層の熱膨張係数α3は、10〜40ppm/℃であるのが好ましく、10〜20ppm/℃がより好ましく、11〜17ppm/℃が特に好ましい。
【0091】
(ヤング率)
ビルドアップ層のヤング率は、1〜5GPaであるのが、熱ストレスに対する応力緩和の点で好ましい。ビルドアップ層中の充填材は、ビルドアップ層の熱膨張係数が10〜40ppm/℃、ヤング率が1〜5GPaになるように添加量を適宜調整して添加するのが好ましい。
【0092】
(レジスト)
レジストとしては、エッチングレジスト、めっきレジスト、ソルダーレジスト、カバーレイ等が挙げられる。エッチングレジスト及びめっきレジストは、配線形成を目的に使用するために、配線形成後に剥離され、基板等には残らないものである。ソルダーレジスト又はカバーレイは、外部接続端子、半導体チップ接続端子等以外の配線保護を目的としているために、絶縁被服として基板表面に形成される。これらのレジストは、液状又はフィルム状のものを使用することができ、感光性があることが好ましい。
【0093】
(半導体チップ搭載基板の製造方法)
上述の半導体チップ搭載基板は、以下の説明する方法を適宜組み合わせることによって製造することができる。製造工程の順番は、その目的を逸脱しない範囲において、特に限定されるものではない。
【0094】
(配線形成方法)
半導体チップ搭載基板を製造する際の配線の形成方法としては、コア基板表面又はビルドアップ層上に金属箔を形成し、金属箔の不要な箇所をエッチングで除去する方法(サブトラティブ法)、コア基板表面又はビルドアップ層上の必要な箇所にのみめっきにより配線を形成する方法(アディティブ法)、コア基板表面又はビルドアップ層上に薄い金属層(シード層)を形成し、その後、電解めっきで必要な配線を形成した後、薄い金属層をエッチングで除去する方法(セミアディティブ法)等がある。
【0095】
(サブトラクティブ法による配線形成)
金属箔上の配線となる箇所にエッチングレジストを形成し、エッチングレジストから露出した箇所に、化学エッチング液をスプレー噴霧して、不要な金属箔をエッチング除去し、配線を形成することができる。例えば、金属箔として銅箔を用いる場合、エッチングレジストは、通常の配線基板に用いることのできるエッチングレジスト材料を使用できる。エッチングレジストを形成する方法としては、例えば、レジストインクをシルクスクリ−ン印刷してエッチングレジストを形成する方法がある。別法として、エッチングレジスト用ネガ型感光性ドライフィルムを銅箔の上にラミネートして、その上に配線形状に光を透過するフォトマスクを重ね、紫外線で露光し、露光しなかった箇所を現像液で除去してエッチングレジストを形成する方法もある。化学エッチング液には、塩化第二銅と塩酸の溶液、塩化第二鉄溶液、硫酸と過酸化水素の溶液、過硫酸アンモニウム溶液等、通常の配線基板に用いる化学エッチング液を用いることができる。
【0096】
(アディティブ法による配線形成)
コア基板又はビルドアップ層上の必要な箇所にのみ、めっきを行うことで配線を形成することができる。これは、通常のめっきによる配線形成技術を用いることができる。例えば、コア基板に無電解めっき用触媒を付着させた後、めっきが行われない表面部分にめっきレジストを形成して、無電解めっき液に浸漬し、めっきレジストに覆われていない箇所にのみ、無電解めっきを行い配線形成する。
【0097】
(セミアディティブ法による配線形成)
コア基板表面又はビルドアップ層上に、シード層を形成し、その後、電解めっきで必要な配線を形成した後、シード層をエッチングで除去することで配線を形成することができる。例えば、コア基板表面又はビルドアップ層上に、シード層を形成し、この形成されたシード層上に、めっきレジストを必要なパターンに形成し、シード層を介して電解銅めっきにより配線を形成する。その後、めっきレジストを剥離し、最後にシード層をエッチング等により除去することで、配線を形成することができる。セミアディティブ法に用いるシード層を形成する方法は、スパッタリング、蒸着、めっき等による方法と、金属箔を貼り合わせる方法がある。また同様の方法で、サブトラクティブ法の金属箔を形成することもできる。
【0098】
(スパッタリング、蒸着、めっき等によるシード層の形成)
コア基板表面又はビルドアップ層上に、スパッタリング、蒸着、めっき等によってシード層を形成することができる。例えば、シード層として、スパッタリングにより下地金属と薄膜銅層を形成する場合、薄膜銅層を形成するために使用されるスパッタリング装置は、2極スパッタ、3極スパッタ、4極スパッタ、マグネトロンスパッタ、ミラートロンスパッタ等を用いることができる。スパッタに用いるターゲットは、密着を確保するために、例えば、Cr、Ni、Co、Pd、Zr、Ni−Cr合金、Ni−Cu合金等の金属を下地金属として用い、厚み:5〜50nmのスパッタリングを施す。その後、銅をターゲットにして厚み:200〜500nmのスパッタリングを施しシード層を形成することができる。また、コア基板表面又はビルドアップ層上に無電解銅めっきにより、0.1〜3μmの厚みのめっき銅によるシード層を形成してもよい。通常、無電解銅めっきは、絶縁層表面に触媒となるパラジウムを吸着させ、めっき銅を析出させる。めっき銅により形成したシード層は、銅のエッチング処理後に配線間の絶縁層表面に残存するパラジウムの除去が必要となる。通常、絶縁層表面のデスミア処理による絶縁層のエッチング時にパラジウムを同時に除去することができるが、このような処理は、銅配線の表面処理と別途行う必要がある。しかし、本発明による配線基板の表面処理方法によれば、銅配線表面を処理する工程の一部と同時に、上記デスミア処理を行うことが可能である。
【0099】
(金属箔を貼り合わせる方法)
コア基板又はビルドアップ層に接着機能がある場合は、金属箔をプレスやラミネートによって貼り合わせることによりシード層を形成することもできる。しかし、薄い金属層を直接貼り合わせるのは非常に困難であるため、厚い金属箔を張り合わせた後にエッチング等により薄くする方法、キャリア付金属箔を貼り合わせた後にキャリア層を剥離する方法等がある。例えば、前者としては、キャリア銅/ニッケル/薄膜銅の三層銅箔があり、キャリア銅をアルカリエッチング液で、ニッケルをニッケルエッチング液で除去できる。後者としては、アルミ、銅、絶縁材料等をキャリアとしたピーラブル銅箔等が使用でき、厚み:5μm以下のシード層を形成できる。また、厚み:9〜18μmの銅箔を貼り付け、エッチングにより厚み:5μm以下になるように均一に薄くし、シード層を形成しても良い。これらの方法で形成されたシード層上に、めっきレジストを必要なパターンに形成し、シード層を介して電解銅めっきにより配線を形成する。その後、めっきレジストを剥離し、最後にシード層をエッチング等により除去することで、配線を形成することができる。
【0100】
(配線の形状)
配線の形状は特に問わないが、少なくとも半導体チップが搭載される側には半導体チップ接続端子(ワイヤボンド端子等)、その反対面にはマザーボードと電気的に接続される外部接続端子(はんだボール等が搭載される箇所)及びそれらを接続する展開配線、層間接続端子等から構成される。また、配線の配置も特に問わないが、図7に示すような(内層配線、層間接続端子等は省略)、半導体チップ接続端子16より内側に外部接続端子19を形成したファン−インタイプの半導体チップ搭載基板や、図8に示すような半導体チップ接続端子16の外側に外部接続端子19を形成したファン−アウトタイプの半導体チップ搭載基板、又はこれらを組み合わせたタイプでもよい。なお、図7及び図8において、13は半導体パッケージ領域、14はダイボンドフィルム接着領域(フリップチップタイプ)、15は半導体チップ搭載領域(フリップチップタイプ)、17はダイボンドフィルム接着領域(ワイヤボンドタイプ)、18は半導体チップ搭載領域(ワイヤボンドタイプ)、20は展開配線を示す。半導体チップ接続端子16の形状は、ワイヤボンド接続、フリップチップ接続等が可能であれば、特に問わない。また、ファン−アウト、ファン−インどちらのタイプでも、ワイヤボンド接続、フリップチップ接続等は可能である。更に必要に応じて、半導体チップと電気的に接続されないダミーパターン21(図8参照)を形成しても良い。ダミーパターン21の形状や配置は、特には問わないが、半導体チップ搭載領域に均一に配置するのが好ましい。これによって、ダイボンド接着剤で半導体チップを搭載する際に、ボイドが発生しにくくなり、信頼性を向上できる。
【0101】
(バイアホール)
多層の半導体チップ搭載基板は、複数の配線層を有するため、各層の配線を電気的に接続するためのバイアホールを設けることができる。バイアホールは、コア基板又はビルドアップ層に接続用の穴を設け、この穴を導電性ペースト、めっき等で充填し形成することができる。穴の加工方法としては、パンチ、ドリル等の機械加工、レーザ加工、薬液による化学エッチング加工、プラズマを用いたドライエッチング法などがある。また、ビルドアップ層のバイアホール形成方法としては、予めビルドアップ層に導電性ペースト、めっき等で導電層を形成し、これをコア基板にプレス等で積層する方法等もある。
【0102】
(絶縁被覆の形成)
半導体チップ搭載基板の外部接続端子側には、絶縁被覆を形成することができる。パターン形成は、ワニス状の材料であれば印刷で行うことも可能であるが、より精度を確保するためには、感光性のソルダーレジスト、カバーレイフィルム、フィルム状レジストを用いるのが好ましい。材質としては、エポキシ系、ポリイミド系、エポキシアクリレート系、フルオレン系の材料を用いることができる。このような絶縁被覆は硬化時の収縮があるため、片面だけに形成すると基板に大きな反りを生じやすい。そこで、必要に応じて半導体チップ搭載基板の両面に絶縁被覆を形成することもできる。更に、反りは絶縁被覆の厚みによって変化するため、両面の絶縁被覆の厚みは、反りが発生しないように調整することがより好ましい。その場合、予備検討を行い、両面の絶縁被覆の厚みを決定することが好ましい。また、薄型の半導体パッケージとするには、絶縁被覆の厚みが50μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0103】
(配線のめっき)
配線の必要な部分にニッケル、金めっきを順次施すことができる。更に必要に応じてニッケル、パラジウム、金めっきとしても良い。これらのめっきは、配線の半導体チップ接続端子と、マザーボード又は他の半導体パッケージと電気的に接続するための外部接続端子に施される。このめっきは、無電解めっき、又は電解めっきのどちらを用いてもよい。
【0104】
以下、本発明の一実施形態として半導体チップ搭載基板の製造方法について例示する。図9は、本発明における半導体チップ搭載基板の製造方法の一例を示す図であり、(a)〜(g)は各工程に対応する模式的断面図である。但し、図に示した各工程の順番は、本発明の目的を逸脱しない範囲において、特に限定されるものではない。
【0105】
(工程a)
工程(a)は、図9(a)に示したように、コア基板100上に第1の配線106aを作製する工程である。第1の配線106aの形成では、例えば、片面に銅層が形成されたコア基板100の銅層に、脱脂処理を行い、その後、塩酸又は硫酸洗浄を行う前処理工程を設ける。図9に示すように、第1の配線106aが形成された面へのビルドアップを想定しない場合、通常、工程(a)の段階において、銅層表面に対する粗化処理は不要である。しかし、必要に応じて、以下のようにして、従来法による銅層表面の粗化処理を行ってもよい。
【0106】
先ず、必要に応じて、銅よりも貴な金属である金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムから選択される金属を離散的に形成する。次に、酸化剤を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより酸化反応を行う。その後、更に酸性溶液又は銅の錯化剤を含む溶液による処理を行う。次いで、必要に応じて、カップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行うか、又は銅よりも卑な金属を含む溶液での処理を行った後にカップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行う、後処理工程を設けてもよい。上記後処理工程の有無にかかわらず、上述した銅層の表面処理工程によって配線表面はRzが1〜1000nmになるように処理されることが望ましい。その後、必要に応じて表面処理された銅層上に、第1の配線106aの形状にエッチングレジストを形成し、塩化銅や塩化鉄、硫酸−過酸化水素及び硝酸−過酸化水素等のエッチング液により銅層をエッチングした後、エッチングレジストを除去することで第1の配線106aを作製することができる。コア基板100上の銅層の形成は、スパッタリング、蒸着、めっき等により銅薄膜を形成した後、所望の厚みになるまで電気銅めっきを行うことで可能である。なお、第1の配線106aは、第1の層間接続端子101及び半導体チップ接続端子(半導体チップと電気的に接続される部分)を含んでおり、微細配線の形成方法としてはセミアディティブ法を用いるのが好ましい。また、コア基板100上に第1の配線106aを形成した後、該第1の配線106a表面には、直ぐに保護フィルム(不図示)がラミネートされる。保護フィルムをラミネートすることによって、第1の配線106aが工程(b)以降の工程でめっき処理などの影響を受けることを防ぐことができる。
【0107】
(工程b)
工程(b)は、図9(b)に示したように、第1の層間接続端子101と、後述する第2の配線106bとを接続するための第1の層間接続用IVH102を形成する工程である。第1の層間接続用IVH102となる孔は、コア基板100が非感光性基材の場合、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のレーザ光を孔となる箇所に照射することで形成することができる。生産性及び穴品質の観点からは、CO2レーザを用いることが好ましく、孔径が30μm未満の場合には、レーザ光を絞ることが可能なYAGレーザが適している。なお、非感光性基材としては、前述した非感光性ガラス等が挙げられるが、これに限定されない。また、コア基板100が感光性基材の場合、第1の層間接続用IVH102となる箇所以外の領域をマスクし、紫外光を照射した後、熱処理とエッチングにより孔を形成する。なお、感光性基材としては、前述した感光性ガラス等が挙げられるが、これに限定されない。また、コア基板100が、有機溶剤等の薬液による化学エッチング加工が可能な基材の場合は、化学エッチングによって孔を形成することもできる。孔を形成した後は、層間を電気的に接続するために、必要に応じてデスミア処理を行った後、この孔を導電性のペースト、めっき等によって導電化し、第1の層間接続用IVH102とする。
【0108】
(工程c)
工程(c)は、図9(c)に示したように、コア基板100の第1の配線106aと反対側の面に、第2の配線106bを形成する工程である。第2の配線106bは、コア基板100の第1の配線106aと反対の面に、上記工程(a)における第1の配線106aと同様にして形成することができる。銅層の形成方法としては、工程(a)と同様、スパッタリング、蒸着、めっき等により銅薄膜を形成した後、所望の厚みになるまで電気銅めっきを行うことで可能である。なお、第2の配線106bは、第2の層間接続端子103を含んでおり、微細配線の形成方法としてはセミアディティブ法を用いるのが好ましい。
【0109】
(工程d)
工程(d)は、図9(d)に示すように、第2の配線106bを形成した面にビルドアップ層(層間絶縁層)104を形成する工程である。ここでは、先ず、第2の配線106b表面を、脱脂処理を行い、塩酸又は硫酸洗浄を行う前処理工程を設けることが好ましい。次に、銅層表面に対する粗化処理を行う。先の工程(b)で形成した層間接続用IVHにペーストを充填し、スパッタで銅層を形成した後に配線を形成する実施形態では、銅層の下にパラジウムが存在しないため、銅層表面に対する粗化処理を行う前にデスミア処理を行う必要はなく、従来の銅表面に対する粗化処理方法を適用することができる。しかし、無電解めっきによって、IVHを導電化するか又は銅層を形成する実施形態の場合には、無電解銅めっきの前に絶縁層表面にパラジウムが付着するため、銅層表面に対する粗化処理に先立ち、デスミア処理が必要となる。したがって、後者の実施形態においては、デスミア処理と配線表面の粗化処理とを同時に実施できる本願発明による配線基板の表面処理方法を適用することが好ましい。
【0110】
このような本発明による上記表面処理方法は、より具体的には、(A)上記銅配線表面に、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムから選択される金属から選択される少なくとも一種の銅よりも貴な金属を離散的に形成し、(B)有機化合物を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより絶縁層を膨潤させ、(C)過マンガン酸塩を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより絶縁層表面を溶解して粗化すると共に銅配線表面を酸化させ、(D)過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に浸漬することにより絶縁層表面の中和と銅配線表面の酸化銅を除去することによって、実施することができる。上記表面処理を施した後、必要に応じて、カップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行うか、又は銅よりも卑な金属を含む溶液での処理を行った後にカップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行う、後処理工程を設けてもよい。いずれの処理を施した場合であっても、銅配線表面の粗さRzが、1〜1000nmとなるようにすることが好ましい。
【0111】
次に、コア基板100表面及び第2の配線106b表面に、ビルドアップ層104を形成する。ビルドアップ層104の絶縁材料としては、上記したように熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はそれらの混合樹脂が使用できるが、熱硬化性材料を主成分とすることが好ましい。ビルドアップ層104の形成は、絶縁材料がワニス状の場合には、印刷やスピンコート等によって行うことができる。また、絶縁材料がフィルム状の場合には、ラミネートやプレス等によって行うことができる。ビルドアップ層104の形成をラミネートによって行う際には、プレスと同じように鏡板で上下に挟んで行ってもよい。絶縁材料が熱硬化性材料を含む場合は、更に加熱硬化させることが望ましい。
【0112】
(工程e)
工程(e)は、図9(e)に示したように、ビルドアップ層104に第2の層間接続用IVH108を形成するための孔を形成する工程であり、その形成手段としては、前述した工程(b)における第1の層間接続用IVH102と同様に行うことができる。
【0113】
(工程f)
工程(f)は、図9(f)に示したように、第2の層間接続用IVH108を形成する孔が形成されたビルドアップ層104上に、第3の配線106cを形成し、IVH108を導通化する工程である。IVH108を導電化し、L/S=15μm/15μm以下の微細な配線を形成するプロセスとして、前述したセミアディティブ法が好ましい。具体的には、ビルドアップ層104上及びIVH108内に、無電解めっきにより、前述したシード層を形成する。この場合、このシード層上に、めっきレジストを必要なパターンに形成し、シード層を介して電解銅めっきにより配線を形成した後、めっきレジストを剥離し、最後にシード層をエッチング等により除去することで、微細な配線を形成することができる。次に、本発明による配線基板の表面処理方法に沿って、各工程の処理を行う。より具体的には、必要に応じ、脱脂処理及び、塩酸又は硫酸洗浄を行う前処理を行い、(A)上記銅配線表面に、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムから選択される金属から選択される少なくとも一種の銅よりも貴な金属を離散的に形成し、(B)有機化合物を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより絶縁層を膨潤させ、(C)過マンガン酸塩を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより絶縁層表面を溶解して粗化すると共に銅配線表面を酸化させ、(D)過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に浸漬することにより絶縁層表面の中和と銅配線表面の酸化銅を除去する。その後、必要に応じて、カップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行うか、又は銅よりも卑な金属を含む溶液で処理を行った後にカップリング処理及びアゾール化合物を含む溶液による処理の少なくとも1つの処理を行う、後処理工程を設けてもよい。上記後処理工程の有無にかかわらず、配線表面はRzが1〜1000nmになるようにすることが好ましい。
【0114】
なお、工程(d)〜工程(f)までを繰り返して、図9(g)に示すようにビルドアップ層104を2層以上作製してもよい。この場合、最外のビルドアップ層に形成された層間接続端子が、外部接続端子107となる。その後、外部接続端子107以外の部分にソルダーレジストを形成し、外部接続端子107を露出させる。外部接続端子107は、第3の層間接続用IVH105を介して第3の配線と電気的に接続される。
【0115】
本発明の一実施形態として、図9に沿って、半導体チップ搭載基板の製造方法の一例について説明したが、半導体チップ搭載基板の形状は、特に限定されるものではい。本発明の一実施形態では、図10に示したようなフレーム形状にすることが好ましい。半導体チップ搭載基板22の形状をフレーム形状にすることで、半導体パッケージの組立てを効率よく行うことができる。以下、フレーム形状の半導体チップ搭載基板の製造について詳細に説明する。
【0116】
図10に示したように、最初に、半導体パッケージ領域13(1個の半導体パッケージとなる部分)を行及び列に各々複数個等間隔で格子状に配置したブロック23を形成する。更に、このようなブロック23を複数個行及び列に形成する。図10では、2個のブロックしか記載していないが、必要に応じて、ブロックを格子状に配置してもよい。ここで、半導体パッケージ領域間のスペース部の幅は、50〜500μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。更に、後に半導体パッケージを切断するときに使用するダイサーのブレード幅と同じにするのが最も好ましい。
【0117】
このように半導体パッケージ領域13を配置することで、半導体チップ搭載基板22の有効利用が可能になる。また、半導体チップ搭載基板22の端部には、位置決めのマーク11等を形成することが好ましく、貫通孔によるピン孔であることがより好ましい。ピン孔の形状や配置は、形成方法や半導体パッケージの組立て装置に合うように選択すればよい。
【0118】
更に、半導体パッケージ領域間のスペース部やブロック23の外側には、補強パターン24を形成することが好ましい。補強パターン24は、別途作製し半導体チップ搭載基板22と貼り合わせてもよいが、半導体パッケージ領域に形成される配線と同時に形成された金属パターンであることが好ましい。補強パターン24の表面には、配線と同様のニッケル、金等のめっきを施すか、絶縁被覆を施すことがより好ましい。補強パターン24が、このような金属の場合は、電解めっきの際のめっきリードとして利用することも可能である。また、ブロック23の外側には、ダイサーで切断する際の切断位置合わせマーク25を形成することが好ましい。このようにして、フレーム形状の半導体チップ搭載基板22を作製することができる。
【0119】
(半導体パッケージ)
図11は、本発明によるフリップチップタイプ半導体パッケージの一例を示す模式的断面図である。図11に示したように、半導体パッケージは、先に説明した半導体チップ搭載基板に、更に半導体チップ111が搭載されている。半導体チップ111と半導体チップ接続端子とは、接続バンプ112を用いてフリップチップ接続することにより、電気的に接続されている。これらの半導体パッケージには、図示するように、半導体チップ111と半導体チップ搭載基板の間を、アンダーフィル材113で封止することが好ましい。アンダーフィル材113の熱膨張係数は、半導体チップ111及びコア基板の熱膨張係数と近似していることが好ましいが、これに限定したものではない。更に好ましくは、(半導体チップの熱膨張係数)≦(アンダーフィル材の熱膨張係数)≦(コア基板の熱膨張係数)との関係になることである。半導体チップの搭載には、異方導電性フィルムや導電性粒子を含まない接着フィルムを用いて行うこともできる。この場合は、アンダーフィル材で封止する必要がないため、より好ましい。更に、半導体チップを搭載する際に超音波を併用すれば、電気的な接続が低温でしかも短時間で行えるため、特に好ましい。
【0120】
図12は、本発明によるワイヤボンドタイプ半導体パッケージの一例を示す模式的断面図である。半導体チップの搭載には、一般のダイボンドペーストを使用してもよいが、ダイボンドフィルム117を使用することがより好ましい。半導体チップ111と半導体チップ接続端子との電気的な接続は、金ワイヤ115を用いたワイヤボンドで行う。半導体チップ111の封止は、半導体用封止樹脂116をトランスファモールドで行うことができる。この場合、封止領域は、必要な部分だけ、例えば、半導体チップ111のフェース面だけを封止すればよいが、図12のように、半導体パッケージ領域全体を封止することがより好ましい。これは、半導体パッケージ領域を行及び列に複数個配列した半導体チップ搭載基板において、基板と半導体用封止樹脂116を同時にダイサー等で切断する場合、特に有効な方法となる。また、マザーボードとの電気的な接続を行うために、外部接続端子107には、例えば、はんだボール114を搭載することができる。はんだボール114には、共晶はんだやPbフリーはんだが用いられる。はんだボール114を外部接続端子107に固着する方法としては、例えば、N2リフロー装置等を用いることができるが、これに限定されない。半導体チップ搭載基板に複数の半導体チップを搭載してなる複数の半導体パッケージを作製した場合には、最後に、ダイサー等を用いて個々の半導体パッケージに切断する。
【実施例】
【0121】
以下、本発明について実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0122】
1.以下の実施例1〜10及び比較例1〜16Aは、各種表面処理を行った半導体パッケージ評価用サンプルの作製に関する。
(実施例1)
本発明による配線基板の表面処理方法を適用して半導体パッケージの評価用サンプルを作製し、半導体パッケージの信頼性を評価した。以下、図9に示した各工程図を参照しながら、半導体パッケージの評価用サンプルの作製方法を説明する。
【0123】
(工程a)
コア基板100として0.4mm厚のソーダガラス基板(熱膨張係数11ppm/℃)を用意し、片面にスパッタリングにより200nmの銅薄膜を形成した後、電気銅めっきで10μmの厚さまでめっきを行った。なお、スパッタリングは、株式会社アルバック製、装置型番:MLH−6315を用いて、以下に示した条件1で行った。
【0124】
(条件1)
電流:3.5A
電圧:500V
アルゴン流量:35SCCM(0.059Pa・m3/s)
圧力:5×10−3Torr(6.6×10−1Pa)
成膜速度:5nm/秒
【0125】
その後、第1の配線106aとなる部分にエッチングレジストを形成し、塩化第二鉄エッチング液を用いてエッチングし、エッチングレジストを除去することで、第1の配線106a(第1の層間接続端子101及び半導体チップ接続端子を含む)を形成した。
【0126】
(工程b)
第1の配線106aが形成されたガラス基板の、第1の配線106aと反対面から第1の層間接続端子101に到達するまで、レーザで孔径:50μmの第1の層間接続用IVH102となる孔を形成した。レーザにはYAGレーザ:LAVIA−UV2000(住友重機械工業株式会社製、商品名)を使用し、周波数:4kHz、ショット数:50、マスク径:0.4mmの条件で、孔の形成を行った。ついで、孔内のデスミア処理を行った。その後、この孔に導電性ペースト:MP−200V(日立化成工業株式会社製、商品名)を充填して、160℃にて30分間硬化させ、ガラス基板上の第1の層間接続端子101と電気的に接続し、第1の層間接続用IVH102を形成した。
【0127】
(工程c)
(工程b)で形成された第1の層間接続用IVH102と電気的に接続するために、ガラス基板の、第1の配線106aと反対側の面にスパッタリングにより200nmの銅薄膜を形成した後、電気銅めっきで10μmの厚さまでめっきを行った。スパッタリングは、(工程a)と同様に行った。その後、(工程a)と同様に第2の配線106bの形状にエッチングレジストを形成し、塩化第二鉄エッチング液を用いてエッチングして、エッチングレジストを除去することで、第2の配線106b(第2の層間接続端子103を含む)を形成した。
【0128】
(工程d−1)
(工程c)で形成した第2の配線106b側の配線表面に対して、以下のようにして前処理を行った。先ず、200ml/Lに調整した酸性脱脂液:Z−200(株式会社ワールドメタル製、商品名)に、液温:50℃で2分間浸漬した後、液温:50℃の水に2分間浸漬することにより湯洗し、更に1分間水洗した。次いで、3.6Nの硫酸水溶液に1分間浸漬し、1分間水洗した。
【0129】
(工程d−2)
上記前処理工程を経た第2の配線106bを、置換パラジウムめっき液:SA−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に30℃で3分間浸漬して、銅よりも貴な金属であるパラジウムめっきを、1.0μmol/dm2施し、1分間水洗した。次いで、更に、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/Lを添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第2の配線106b表面に、0.07mg/cm2の酸化銅の結晶を形成した。この後、1分間水洗した後、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、銅表面に微細凹凸を形成した。その後、5分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた。
【0130】
(工程d−3)
次に、第2の配線106b側の面に層間絶縁層(ビルドアップ層104)を次のように形成した。即ち、ビルドアップ材:AS−ZII(日立化成工業株式会社製、商品名)を真空ラミネートによって、真空引き時間:30秒、加圧:40秒間、0.5MPaの条件で、第2の配線106b側の面にビルドアップ層をラミネートし、厚み:45μmの樹脂層を形成した後、オーブン乾燥機にて180℃で90分間保持することにより熱硬化し、ビルドアップ層104を形成した。
【0131】
(工程e)
上記(工程d−1)〜(工程d−3)に沿って形成したビルドアップ層104の表面から、第2の層間接続用端子103に到達するまで、レーザで孔径:50μmの第2の層間接続用IVH108となる孔を形成した。レーザには、YAGレーザ:LAVIA−UV2000(住友重機械工業株式会社製、商品名)を使用し、周波数:4kHz、ショット数:20、マスク径:0.4mmの条件で孔の形成を行った。その後、デスミア処理を行った。デスミア処理方法としては、膨潤液サーキュポジットホールプリップ4125(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に80℃で3分浸漬後、3分間水洗した。その後、過マンガン酸液サーキュポジットMLBプロモーター213(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に80℃で5分浸漬後、3分間水洗した。次いで、中和液サーキュポジットMLB216−4(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に40℃で3分浸漬後、3分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた。
【0132】
(工程f−1)
上記(工程d−3)で形成したビルドアップ層104上に、第3の配線106c及び第2の層間接続用IVH108を形成するために、ビルドアップ層104上に、無電解銅めっき処理により、厚さ:300nmの薄膜銅層を形成することで、シード層を形成した。無電解銅めっきは、日立化成工業株式会社製の各処理液を用いて以下に示した条件2で行った。
【0133】
(条件2)
1…クリーニング(CLC−1100(日立化成工業株式会社製、商品名)、50℃、5分)
2…湯洗(40℃、1分)
3…水洗(R.T.2分)
4…プリディップ(PD−1300(日立化成工業株式会社製、商品名)、30℃、1分)
5…活性化(パラジウム)処理(HS−1400(日立化成工業株式会社製、商品名)、30℃、5分)
6…水洗(R.T.2分)
7…密着促進処理(ADP−1500(日立化成工業株式会社製、商品名)、30℃、5分)
8…水洗(R.T.2分)
9…無電解銅めっき(CUST−1610(日立化成工業株式会社製、商品名)、20℃、20分)
10…水洗(R.T.2分)
11…乾燥(85℃、30分)
【0134】
(工程f−2)
次に、シード層上(薄膜銅層上)に、スピンコート法でめっきレジストPMER P−LA900PM(東京応化工業株式会社製、商品名)を塗布し、膜厚:10μmのめっきレジスト層を形成した。次いで、めっきレジスト層を1000mJ/cm2の条件で露光した後、PMER現像液P−7G(東京応化工業株式会社製、商品名)に23℃で6分間浸漬し、L/S=10μm/10μmのレジストパターンを形成した。その後、硫酸銅めっき液を用いて電気銅めっきを行い、厚さ:約5μmの第3の配線106cを形成した。めっきレジストの剥離は、メチルエチルケトンを用いて室温(25℃)で1分間浸漬して行った。また、シード層のクイックエッチングには、CPE−700(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)の5倍希釈液を用いて、30℃で30秒間浸漬揺動することにより、これをエッチング除去し、配線パターンを形成した。
【0135】
(工程f−3)
無電解銅めっきのシード層を用いてセミアディティブ法で配線形成を行う場合、シード層のエッチングで配線パターンを形成後、配線間のパラジウム除去を行うために、以下に示す条件3のデスミア処理を行うのが一般的な方法である。しかし、本発明による表面処理方法によれば、以下に記載する配線表面処理における工程の一部と併せてデスミア処理を行うことが可能である。そのため、ここでは下記条件3によるデスミア処理を行わずに、工程f−2に引き続き、以下に示す工程f−4を行った。
【0136】
(条件3)
1…膨潤処理(サーキュポジットホールプリップ4125(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)、70℃、5分)
2…水洗(R.T.3分)
3…過マンガン酸処理(サーキュポジットMLBプロモーター213(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)、70℃、1分)
4…水洗(R.T.3分)
5…中和処理(サーキュポジットMLB216−4(ローム・アンド・ハース電子材料株式会製、商品名)、45℃、5分)
6…水洗(R.T.2分)
7…乾燥(85℃、30分)
【0137】
(工程f−4)
第3の配線106c側の配線表面を、200ml/Lに調整した酸性脱脂液:Z−200(株式会社ワールドメタル製、商品名)に、液温:50℃で2分間浸漬した後、液温:50℃の水に2分間浸漬することにより湯洗し、更に1分間水洗した。次いで、3.6Nの硫酸水溶液に1分間浸漬し、1分間水洗した。
【0138】
(工程f−5)
上記前処理工程を経た基板を、置換パラジウムめっき液:SA−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に30℃で3分間浸漬して、第3の配線106c表面に銅よりも貴な金属であるパラジウムめっきを1.0μmol/dm2施し、1分間水洗した。
【0139】
(工程f−6)
上記パラジウム処理工程を経た基板を、有機化合物を含むアルカリ性溶液で表面処理した。具体的には、膨潤液サーキュポジットホールプリップ4125(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に70℃で3分浸漬後、3分間水洗した。
【0140】
(工程f−7)
上記膨潤処理工程を経た基板を、過マンガン酸液サーキュポジットMLBプロモーター213(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に70℃で1分浸漬後、3分間水洗した。
【0141】
(工程f−8)
上記過マンガン酸処理工程を経た基板を、中和液サーキュポジットMLB216−4(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に40℃で3分浸漬後、2分間水洗した。
【0142】
(工程f−9)
上記中和処理工程を経た基板を、85℃で30分間乾燥させた。以上、(工程f−5)〜(工程f−9)を行うことで、銅配線表面への凹凸形成と、配線間のビルドアップ材表面のパラジウム除去とを同時に行った。
【0143】
(工程g)
上記(工程d−3)〜(工程f−9)までの一連の工程を再度繰り返し、ビルドアップ層及び外部接続端子107を含む最外層の配線を形成することによって更に一層追加した。最後に絶縁被覆109を形成して、その後、外部接続端子107及び半導体チップ接続端子に金めっき処理を施し、図5(1パッケージ分の断面図)、図7(1パッケージ分の平面図)、及び図10(半導体チップ搭載基板全体図)に示すようなファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板を作製した。
【0144】
(工程h)
上記(工程a)〜(工程g)により作製した半導体チップ搭載基板の半導体チップ搭載領域に、接続バンプ112が形成された所望とする数の半導体チップ111を、フリップチップボンダを用いて超音波を印加しながら搭載した(図10を参照)。更に、半導体チップ搭載基板と半導体チップ111の隙間に、半導体チップ端部からアンダーフィル材113を注入し、オーブンを用いて80℃で1時間の1次硬化及び150℃で4時間の2次硬化を行った。次に、外部接続端子107に、直径:0.45mmの鉛・錫共晶はんだボール114を、N2リフロー装置を用いて融着した。最後に、幅:200μmのブレードを装着したダイサーで半導体チップ搭載基板を切断し、図11に示す半導体パッケージを作製した。
【0145】
(実施例2)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面をγ−アミノプロピルトリエトキシシラン:0.5質量%水溶液に、30℃で1分間浸漬するカップリング処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0146】
(実施例3)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、硫酸溶液でpH6.5に調整した2−メチルイミダゾール:0.5質量%水溶液に30℃で1分間浸漬するアゾール処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0147】
(実施例4)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、pH9.5に調整した3,5−ジメチルピラゾール:0.5質量%水溶液に30℃で1分間浸漬するアゾール処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0148】
(実施例5)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する銅よりも卑な金属形成処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0149】
(実施例6)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、硫酸ニッケル・6水和物:0.2g/L、クエン酸ナトリウム:3g/L、ほう酸:3g/L、次亜りん酸ナトリウム:10g/L、pH9の無電解ニッケルめっき液に50℃、120秒浸漬し、その後、1分間水洗し、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する方法によって、銅よりも卑な金属形成処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0150】
(実施例7)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、硫酸コバルト・7水和物:0.2g/L、クエン酸ナトリウム:3g/L、ほう酸:3g/L、次亜りん酸ナトリウム:10g/L、pH8の無電解コバルトめっき液に50℃、120秒浸漬し、その後、1分間水洗し、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する方法によって、銅よりも卑な金属形成処理工程を行った。更に1分間水洗した。
【0151】
(実施例8)
上記(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで上記(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する方法によって、銅よりも卑な金属形成処理工程を行い、その後1分間水洗した。また、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン:0.5質量%水溶液に30℃で3分間浸漬するカップリング処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0152】
(実施例9)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。本実施例の上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する方法によって、銅よりも卑な金属形成処理工程を行い、1分間水洗した。また、引き続き、水酸化ナトリウム溶液でpH9.5に調整した3,5−ジメチルピラゾール:0.5質量%水溶液に30℃で1分間浸漬する方法によってアゾール処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0153】
(実施例10)
(工程f−8)後に後処理工程を行い、次いで(工程f−9)後に150℃で60分間にわたって加熱処理する工程を行った以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。上記後処理工程では、第3の配線106c表面を、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する方法によって、銅よりも卑な金属形成処理工程を行い、更に1分間水洗した。
【0154】
(比較例1)
(工程f)における(工程f−5)の置換パラジウムめっき処理を行わなかったこと以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0155】
(比較例2)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。得られた基板を1分間水洗した後、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、先に形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、得られた基板を5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0156】
(比較例3)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に、(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、更に5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0157】
(比較例4)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に、(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、マイクロエッチング剤であるメックエッチボンドCZ8100(メック株式会社製、商品名)に40℃で1分30秒間浸漬し、更に2分間水洗した。次いで、このような一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0158】
(比較例5)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に、(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理を行った後に、(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、金属銅の結晶による凹凸を形成した。その後、更に5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0159】
(比較例6)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理後、(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、更に1分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0160】
(比較例7)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行った後に、(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理後、(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、更に1分間水洗し、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する銅よりも卑な金属形成処理工程を行った。その後、1分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0161】
(比較例8)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで、(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗した後、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0162】
(比較例9)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで、(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、更に5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0163】
(比較例10)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理、及び(工程f−6)〜(工程f−8)の各処理を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、マイクロエッチング剤であるメックエッチボンドCZ8100(メック株式会社製、商品名)に40℃で1分30秒間浸漬し、更に2分間水洗した。次いで、このような一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0164】
(比較例11)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで、(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理後、(工程f−6)〜(工程f−8)を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、金属銅の結晶による凹凸を形成した。その後、更に5分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0165】
(比較例12)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで、(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理後、(工程f−6)〜(工程f−8)を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に、亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、更に1分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0166】
(比較例13)
実施例1と同様に(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)の前処理を行った。次いで、(工程f−5)における置換パラジウムめっき処理後、(工程f−6)〜(工程f−8)を行わずに、以下のようにして処理を行った。先ず、基板を、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第3の配線106c表面に酸化銅の結晶を形成した。この後、得られた基板を1分間水洗し、硫酸:20g/Lの酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去し、凹凸を形成した。その後、更に1分間水洗し、塩化第一錫:3g/L、チオ尿素:25g/L、酒石酸:25g/Lを含む無電解錫めっき液に30℃で15秒浸漬する銅よりも卑な金属形成処理工程を行った。その後、1分間水洗した。次いで、上述の一連の処理を行った後に(工程f−9)を行った。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にして、ファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0167】
(比較例14)
(工程f)における(工程f−6)の膨潤処理を行わなかった以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0168】
(比較例15)
(工程f)における(工程f−7)の過マンガン酸処理を行わなかった以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0169】
(比較例16)
(工程f)における(工程f−8)の中和処理を行わなかった以外、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0170】
(比較例16A)
(工程f)における(工程f−3)のデスミア処理を行わずに、(工程f−4)〜(工程f−6)の各処理を行った後に、過マンガン酸を含むアルカリ性溶液にかえて塩素酸塩を含むアルカリ性溶液を用いて(工程f−7)を実施した。より具体的には、工程(f−7)では、塩素酸塩を含むアルカリ性溶液として、りん酸三ナトリウム:10g/L及び水酸化カリウム:25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム:15g/L添加した溶液を使用し、この溶液に50℃で3分間浸漬後、1分間水洗いした。また、工程(f−8)では、硫酸:20g/Lの酸性溶液を使用し、この溶液に25℃で30秒間浸漬後、1分間水洗いした。以上のように上記以外は、全て実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0171】
2.以下の実施例11〜20及び比較例17〜32Aは、表面処理後の銅表面の接着性、平滑度、及び表面形状を評価するための電解銅箔試験片の作製に関する。
(実施例11)
配線基板の表面処理後におけるビルドアップ材と銅表面の接着性、ソルダーレジストと銅表面の接着性、平滑度、表面形状を評価するために、18μmの電解銅箔GTS−18(古河サーキットフォイル株式会社製、商品名)のシャイニー面に電気めっきを行い、厚さ:50μmの電解銅箔を作製した。その後、電解銅箔を5cm×8cm(接着試験用、銅表面平滑度評価用、銅表面形状評価用)に切り出し、各電解銅箔の電気めっき面に、実施例1の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施し、電解銅箔の試験片を作製した。
【0172】
(実施例12)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例2の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、カップリング処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0173】
(実施例13)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例3の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、アゾール処理:イミダゾール、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0174】
(実施例14)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例4の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、アゾール処理:ピラゾール、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0175】
(実施例15)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例5の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0176】
(実施例16)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例6の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解ニッケルめっき処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0177】
(実施例17)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例7の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解コバルトめっき処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0178】
(実施例18)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例8の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、カップリング処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0179】
(実施例19)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例9の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、アゾール処理:ピラゾール、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0180】
(実施例20)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例10の(工程f−4)〜(工程f−9)及び150℃の加熱処理工程による各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、乾燥、150℃加熱処理)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0181】
(比較例17)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例1の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0182】
(比較例18)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例2の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、酸化処理:80℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0183】
(比較例19)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例3の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、酸化処理:80℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0184】
(比較例20)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例4の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、エッチング処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0185】
(比較例21)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例5の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0186】
(比較例22)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例6の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0187】
(比較例23)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例7の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0188】
(比較例24)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例8の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、酸化処理:85℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0189】
(比較例25)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例9の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、酸化処理:85℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0190】
(比較例26)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例10の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、エッチング処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0191】
(比較例27)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例11の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0192】
(比較例28)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例12の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0193】
(比較例29)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例13の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0194】
(比較例30)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例14の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0195】
(比較例31)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例15の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0196】
(比較例32)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例16の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、過マンガン酸処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0197】
(比較例32A)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例16Aに記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、塩素酸処理(酸化処理:50℃)、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例11と同様にして電解銅箔の試験片を作製した。
【0198】
3.以下の実施例21〜30及び比較例33〜48Aは、配線間の絶縁抵抗値及び耐PCT性を評価するための評価用基板の作製に関する。
(実施例21)
(工程f)における配線基板の表面処理による効果を評価するために、以下のようにして評価用基板を作製し、配線間の絶縁抵抗値及び耐PCT性を評価した。図13及び図14は、評価用基板の製造工程を模式的に示す工程図であり、各工程図は、先に図9に沿って説明した(工程f)をさらに詳細に説明したものである。すなわち、図13及び図14を参照すると、(i)はコア基板110にビルドアップ層104を形成した後にデスミア処理を行う工程、(ii)はシード層118を形成する工程、(iii)はめっきレジストパターン119を形成する工程、(iv)は電気めっきを施し、配線106を形成する工程、(v)はめっきレジストを剥離する工程、(vi)はシード層118を除去した後に所定の処理を施し、ビルドアップ層104を形成する工程を示している。
【0199】
より具体的には、評価用基板は以下のようにして作製した。先ず、図13及び図14に示すコア基板100として0.4mm厚のソーダガラス基板(熱膨張係数11ppm/℃)を用意し、片面にビルドアップ層104を次のように形成した。即ち、ビルドアップ材AS−ZII(日立化成工業株式会社製、商品名)を真空ラミネートによって、真空引き時間:30秒、加圧:40秒、0.5MPaの条件で、コア基板100の面にビルドアップ材をラミネートし、厚み:45μmの樹脂層を形成した後、オーブン乾燥機にて180℃で90分間保持することにより熱硬化し、層間絶縁層を形成した。その後、上記層間絶縁層の表面をデスミア処理した。デスミア処理方法としては、膨潤液サーキュポジットホールプリップ4125(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に80℃で3分浸漬後、3分間水洗した。その後、過マンガン酸液サーキュポジットMLBプロモーター213(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に80℃で5分浸漬後、3分間水洗した。次いで、中和液サーキュポジットMLB216−4(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名)に40℃で3分浸漬後、3分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた。次に、実施例1の(工程f−1)と同様に、ビルドアップ層上にシード層を形成した。具体的には、無電解銅めっき処理により、厚さ:300nmの銅薄膜(シード層118)を形成した。無電解銅めっきは、日立化成工業株式会社製の各処理液を用いて、先に説明を行った条件2で行った。
【0200】
次に、実施例1の(工程f−2)と同様に、配線パターンを形成した。具体的には、シード層118上に、スピンコート法でめっきレジストPMER P−LA900PM(東京応化工業株式会社製、商品名)を塗布し、膜厚:10μmのめっきレジスト層を形成した。次いで、めっきレジスト層を1000mJ/cm2の条件で露光した後、PMER現像液P−7Gに23℃で6分間浸漬し、L/S=10μm/10μmとなるようにレジストパターン119を形成した。その後、硫酸銅めっき液を用いて電気銅めっきを行い、厚さ:約5μmの配線106を形成した。めっきレジストの剥離は、メチルエチルケトンを用いて室温(25℃)で1分間浸漬して行った。また、シード層118のクイックエッチングには、CPE−700(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)の5倍希釈液を用いて、30℃で30秒間浸漬揺動することにより、これをエッチング除去し、配線106を形成した。
【0201】
配線106に対し、実施例1の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施した後、図13に示す層間絶縁層(ビルドアップ層104)と、図14に示すソルダーレジスト(絶縁被覆109)をそれぞれ形成し、図15に示すL/S=10μm/10μmの評価用基板を、それぞれ32枚作製した。
【0202】
(実施例22)
各表面処理として、実施例2の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、カップリング処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0203】
(実施例23)
各表面処理として、実施例3の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、アゾール処理:イミダゾール、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0204】
(実施例24)
各表面処理として、実施例4の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、アゾール処理:ピラゾール、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0205】
(実施例25)
各表面処理として、実施例5の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0206】
(実施例26)
各表面処理として、実施例6の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解ニッケルめっき処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0207】
(実施例27)
各表面処理として、実施例7の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解コバルトめっき処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0208】
(実施例28)
各表面処理として、実施例8の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、カップリング処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0209】
(実施例29)
各表面処理として、実施例9の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、アゾール処理:ピラゾール、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0210】
(実施例30)
表面処理として、実施例10の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、無電解錫めっき処理、乾燥、150℃加熱処理)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0211】
(比較例33)
各表面処理として、比較例1の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、膨潤処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0212】
(比較例34)
各表面処理として、比較例2の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、酸化処理:85℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0213】
(比較例35)
各表面処理として、比較例3の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、酸化処理:85℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0214】
(比較例36)
各表面処理として、比較例4の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、エッチング処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0215】
(比較例37)
各表面処理として、比較例5の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0216】
(比較例38)
各表面処理として、比較例6の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0217】
(比較例39)
各表面処理として、比較例7の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(パラジウム除去処理、前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0218】
(比較例40)
各表面処理として、比較例8の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、酸化処理:85℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0219】
(比較例41)
各表面処理として、比較例9の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、酸化処理:80℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0220】
(比較例42)
各表面処理として、比較例10の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、エッチング処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0221】
(比較例43)
各表面処理として、比較例11の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、還元処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0222】
(比較例44)
各表面処理として、比較例12の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0223】
(比較例45)
各表面処理として、比較例13の(工程f−4)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、酸化処理:50℃、酸性溶液処理、無電解錫めっき処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0224】
(比較例46)
各表面処理として、比較例14の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、過マンガン酸処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0225】
(比較例47)
各表面処理として、比較例15の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0226】
(比較例48)
各表面処理として、比較例16の(工程f−3)〜(工程f−9)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、過マンガン酸処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0227】
(比較例48A)
各表面処理として、比較例16Aに記載された各表面処理(前処理、パラジウム処理、膨潤処理、塩素酸塩処理(酸化処理:50℃)、中和処理、乾燥)を施した以外は、実施例21と同様にして評価用基板を作製した。
【0228】
4.各種特性の評価
(半導体パッケージの信頼性試験)
先に実施例1〜10及び比較例1〜16Aで作製した各々22個の半導体パッケージサンプルに対して吸湿処理を行った。次いで、到達温度:240℃、長さ:2mのリフロー炉に0.5m/分の条件で各サンプルを流して、リフローを行った。その後、各サンプルについてクラック発生の有無を調べ、発生した場合をNGとした。結果を表1に示す。また、各々22個の半導体パッケージサンプルを厚さ:0.8mmのマザーボードに実装し、−55℃にて30分〜125℃にて30分の条件で温度サイクル試験を行い、500サイクル目、1000サイクル目、1500サイクル目に、マルチメータ3457A(ヒューレット・パッカード社製、商品名)を用い、配線の導通抵抗値を測定した。測定した抵抗値が初期抵抗値より10%以上変化した場合をNGとした。結果を表1に示す。但し、比較例4、比較例10については、配線精度を維持することができず、試験基板を作製することができなかった。
【0229】
【表1】
【0230】
(ビルドアップ材との接着性試験1)
先に実施例11〜20及び比較例17〜32Aで作製した電解銅箔上に、膜厚:45μmのビルドアップ材であるAS−ZII(日立化成工業株式会社製、商品名)を積層し、真空加圧式ラミネーター装置(株式会社名機製作所製)で、温度:110℃、加圧:0.5MPaで40秒による仮接着を行った。その後、乾燥機により180℃で90分保持することによって、銅箔とビルドアップ樹脂を接着した。なお、上記電解銅箔は、各種表面処理を施した面側において絶縁層(ビルドアップ樹脂)と接着している。次に、ビルドアップ樹脂表面に、膜厚:25μmのソルダーレジストであるSR−7200(日立化成工業株式会社製、商品名)を形成し、接着性試験用基板を作製した。上記で得た各接着性試験用基板について、初期(0時間)の接着強度、150℃で120時間及び240時間放置した後の接着強度、121℃、0.2MPaで48時間及び96時間のPCT放置した後の接着強度を測定した。なお、上記接着強度の指標となるピール強度(N/m)の測定は、レオメータNRM−3002D−H(不動工業株式会社製、商品名)を用い、電解銅箔を基板に対して垂直方向に50mm/minの速度で引き剥がして行った。結果を表2に示す。
【0231】
【表2】
【0232】
(ビルドアップ材との接着性試験2)
先に実施例11〜20及び比較例17〜32Aで作製した電解銅箔上に、膜厚:45μmのビルドアップ材であるABF−GX−13(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名)を積層し、真空加圧式ラミネーター装置(株式会社名機製作所製)で、温度:110℃、加圧:0.5MPaで40秒による仮接着を行った。その後、乾燥機により170℃で90分保持することによって、銅箔とビルドアップ樹脂を接着した。なお、上記電解銅箔は、各種表面処理を施した面側において絶縁層(ビルドアップ樹脂)と接着している。次に、ビルドアップ樹脂表面に、膜厚:25μmのソルダーレジストであるSR−7200(日立化成工業株式会社製、商品名)を形成し、接着性試験用基板を作製した。上記で得た各接着性試験用基板について、初期(0時間)の接着強度、150℃で120時間及び240時間放置した後の接着強度、121℃、0.2MPaで48時間及び96時間のPCT放置した後の接着強度を測定した。なお、上記接着性の指標となるピール強度(N/m)の測定は、レオメータNRM−3002D−H(不動工業株式会社製、商品名)を用い、電解銅箔を基板に対して垂直方向に50mm/minの速度で引き剥がして行った。結果を表3に示す。
【0233】
【表3】
【0234】
(ソルダーレジストとの接着性試験)
先に実施例11〜20及び比較例17〜32Aで作製した電解銅箔上に、膜厚:25μmのソルダーレジストであるSR−7200(日立化成工業株式会社製、商品名)を塗布し、硬化することにより銅箔とソルダーレジストを接着し、接着性試験用基板を作製した。なお、上記電解銅箔は、各種表面処理を施した面側において絶縁層(ソルダーレジスト)と接着している。上記で得た各接着性試験用基板について、初期(0時間)の接着強度、150℃で120時間及び240時間放置した後の接着強度、121℃、0.2MPaで48時間及び96時間のPCT放置した後の接着強度を測定した。なお、上記接着性の指標となるピール強度(N/m)の測定は、レオメータNRM−3002D−H(不動工業株式会社製、商品名)を用い、電解銅箔を基板に対して垂直方向に50mm/minの速度で引き剥がして行った。結果を表4に示す。
【0235】
【表4】
【0236】
(銅表面平滑度評価試験)
先に実施例11〜20及び比較例17〜32Aで作製した電解銅箔の表面処理を施した面側の表面粗さ(Rz)を、簡易式原子間力顕微鏡(AFM)Nanopics2100(エスアイアイ・ナノテクノジー株式会社製、商品名)を用いて、以下に示した条件4で測定した。結果を表5に示す。
【0237】
(条件4)
測定長さ:1μm
SCAN SPEED:1.35μm/sec
FORCE REFARENCE:160
【0238】
【表5】
【0239】
(配線間の絶縁性試験)
先に実施例21〜30及び比較例33〜48Aに記載された各評価用基板について、以下のようにして、L/S=10/10μmの配線間の短絡及び配線の断線が無い評価基板4枚を選び、配線間の絶縁抵抗値を測定した。但し、比較例36及び比較例42の評価基板については、配線精度を維持することができなかったため、測定を行わなかった。先ず、デジタル超高抵抗微小電流計R−8340A(株式会社アドバンテスト製、商品名)を用いて、L/S配線間に室温(25℃)でDC5Vの電圧を30秒間印加し、L/S配線間の絶縁抵抗値を測定した。なお、1GΩ以下の絶縁抵抗測定には、デジタルマルチメータ3457A(ヒューレット・パッカード株式会社製、商品名)を用いた。次に、温度85℃及び相対湿度85%に保った恒温恒湿層中で、L/S配線間に連続的にDC5Vの電圧を印加し、24時間、48時間、96時間、200時間、500時間、1000時間後にそれぞれ上記と同様にL/S配線間の絶縁抵抗値を測定した。なお、恒温恒湿槽は、EC−10HHPS(株式会社日立製作所製、商品名)を用い、投入後1000時間まで測定した。以上のようにして測定した評価基板4枚について、絶縁抵抗値の最小値が、1GΩ未満の場合には「否(×)」とし、1GΩ以上の場合には「良(○)」とした。結果を表6に示す。
【0240】
【表6】
【0241】
(耐PCT性評価試験)
実施例21〜30及び比較例33〜48Aに記載された各評価用基板について、耐PCT試験(121℃、0.2MPa、200時間)を行った。評価方法は、試験後の配線106と絶縁層(ビルドアップ層104)間、絶縁層(ビルドアップ層104)と絶縁層(ビルドアップ層104)間及び配線106とソルダーレジスト(絶縁被覆109)間、絶縁層(ビルドアップ層104)とソルダーレジスト(絶縁被覆109)間に膨れ及び剥がれが無いものを良品とし、その数を調べた。結果を表7に示す。但し、比較例36及び比較例42の評価基板については、配線精度を維持することができなかったため、評価を行わなかった。
【0242】
【表7】
【0243】
以上、表1〜表7の結果から明らかなように、本発明によれば、配線間の絶縁層表面に残存するパラジウムの除去と銅配線表面処理の一部を同一処理で行うことで、工程を短縮することができるとともに、各種特性において優れた結果を得ることができる。より詳細には、表1に示すように、実施例1〜10で作製した半導体パッケージの信頼性については、極めて良好であった。また、表5に示すように、実施例11〜20で作製した電解銅箔は、Rzが100nm以下の平滑な表面であっても、表2及び表3に示すように、ビルドアップ樹脂との150℃、240時間放置後の接着強度(ピール強度)は、カップリング処理及びアゾール処理をすることで向上し、ピラゾール処理することで、更に向上し良好であった。上記接着強度(ピール強度)は無電解錫めっき処理した場合でも、加熱処理を行うことで、更に向上し良好であった。また、表4に示すように、ソルダーレジストとの150℃、240時間放置後及びPCT放置後の接着強度(ピール強度)は、無電解錫めっき処理をすることで更に向上し良好であった。また、表6に示すように、実施例21〜30で作製した評価基板における配線間絶縁信頼性は、L/S=10μm/10μmにおいて、極めて良好であった。さらに、表7に示すように実施例21〜30で作製した評価基板における耐PCT性は、無電解錫めっき処理をすることで、ビルドアップ層と配線間、ビルドアップ層と絶縁層間及びソルダーレジストと配線間、ソルダーレジストと絶縁層間の何れにおいても極めて良好であった。
【0244】
一方、本発明と比較して、従来の表面処理方法を適用した場合には、比較例1〜48Aで示したように、工程の短縮及び平滑性、接着性、配線間絶縁信頼性、耐PCT性による特性の全てを満足することはできなかった。
【0245】
従って、本発明の配線基板の表面処理方法によれば、工程を短縮することができ、100nm以下の平滑な銅配線表面でありながら、銅配線表面と絶縁層との接着強度を向上させることが可能となる。この結果、配線間絶縁信頼性、微細配線形成に優れた配線基板及び半導体チップ搭載基板、更に耐リフロー性、温度サイクル性に優れた半導体パッケージを製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0246】
11…位置決めのマーク、13…半導体パッケージ領域、
14…ダイボンドフィルム接着領域(フリップチップタイプ)、
15…半導体チップ搭載領域(フリップチップタイプ)、
16…半導体チップ接続端子、17…ダイボンドフィルム接着領域(ワイヤボンドタイプ)、
18…半導体チップ搭載領域(ワイヤボンドタイプ)、19…外部接続端子、20…展開配線、
21…ダミーパターン、22…半導体チップ搭載基板、23…ブロック、24…補強パターン、
25…切断位置合わせマーク、
100…コア基板、101…第1の層間接続端子、102…第1の層間接続用IVH、
103…第2の層間接続端子、104…ビルドアップ層、105…第3の層間接続用IVH、
106…配線、106a…第1の配線、106b…第2の配線、106c…第3の配線、
107…外部接続端子、108…第2の層間接続用IVH、109…絶縁被覆、
111…半導体チップ、112…接続バンプ、113…アンダーフィル材、114…はんだボール、115…金ワイヤ、116…半導体用封止樹脂、117…ダイボンドフィルム、
118…シード層、119…レジストパターン、
200…粒界部、201…凹凸、202…凹凸、203…貴金属、204…凹凸、
205…凹凸、206…凹凸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを備える配線基板の表面処理方法であって、
(I)前記配線基板における絶縁層表面を溶解する処理工程と、
(II)前記銅配線表面に凹凸を形成する処理工程とを含み、
前記工程(I)と前記工程(II)の一部を同一処理条件下で同時に行うことを特徴とする、配線基板の表面処理方法。
【請求項2】
前記絶縁層表面を溶解する処理工程(I)が、
(Ia)前記絶縁層表面を膨潤させる膨潤工程と、
(Ib)前記絶縁層表面をエッチングするエッチング工程と、
(Ic)前記絶縁層表面を中和する中和工程とを備え、
前記銅配線表面に凹凸を形成する処理工程(II)が、
(IIa)前記銅配線表面に銅よりも貴な金属を形成する貴金属処理工程と、
(IIb)前記銅配線表面を酸化する酸化工程と、
(IIc)前記銅配線表面を酸性溶液で処理する酸処理工程とを備え、
前記エッチング工程(Ib)と前記酸化工程(IIc)による処理、及び前記中和工程(Ic)と前記酸処理工程(IIc)による処理の少なくとも一方を同一条件下で同時に行うことを特徴とする、請求項1に記載の配線基板の表面処理方法。
【請求項3】
絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを備える配線基板の表面処理方法であって、
(A)前記配線基板における銅配線表面に、銅よりも貴な金属を形成する工程と、
(B)前記配線基板を、有機化合物を含むアルカリ性溶液に接触させる工程と、
(C)前記配線基板を、過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液に接触させる工程と、
(D)前記工程(C)に引き続き、前記配線基板を、前記過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に接触させる工程とを有することを特徴とする、配線基板の表面処理方法。
【請求項4】
さらに後処理として、銅配線表面に銅よりも卑な金属を形成する処理、アゾール化合物を含有する溶液を用いた処理、及びカップリング剤を用いた処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理を行う工程を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線基板の表面処理方法。
【請求項5】
前記銅よりも貴な金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、及びイリジウムからなる群から選択される金属であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の配線基板の表面処理方法。
【請求項6】
前記銅よりも貴な金属の形成量が、0.001〜40μmol/dm2であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の配線基板の表面処理方法。
【請求項7】
表面処理後の前記銅配線の表面粗さが、Rzで1〜1000nmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の配線基板の表面処理方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の配線基板の表面処理方法を用いて処理された配線基板。
【請求項1】
絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを備える配線基板の表面処理方法であって、
(I)前記配線基板における絶縁層表面を溶解する処理工程と、
(II)前記銅配線表面に凹凸を形成する処理工程とを含み、
前記工程(I)と前記工程(II)の一部を同一処理条件下で同時に行うことを特徴とする、配線基板の表面処理方法。
【請求項2】
前記絶縁層表面を溶解する処理工程(I)が、
(Ia)前記絶縁層表面を膨潤させる膨潤工程と、
(Ib)前記絶縁層表面をエッチングするエッチング工程と、
(Ic)前記絶縁層表面を中和する中和工程とを備え、
前記銅配線表面に凹凸を形成する処理工程(II)が、
(IIa)前記銅配線表面に銅よりも貴な金属を形成する貴金属処理工程と、
(IIb)前記銅配線表面を酸化する酸化工程と、
(IIc)前記銅配線表面を酸性溶液で処理する酸処理工程とを備え、
前記エッチング工程(Ib)と前記酸化工程(IIc)による処理、及び前記中和工程(Ic)と前記酸処理工程(IIc)による処理の少なくとも一方を同一条件下で同時に行うことを特徴とする、請求項1に記載の配線基板の表面処理方法。
【請求項3】
絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の主面上に形成された銅配線とを備える配線基板の表面処理方法であって、
(A)前記配線基板における銅配線表面に、銅よりも貴な金属を形成する工程と、
(B)前記配線基板を、有機化合物を含むアルカリ性溶液に接触させる工程と、
(C)前記配線基板を、過マンガン酸塩を含むアルカリ性溶液に接触させる工程と、
(D)前記工程(C)に引き続き、前記配線基板を、前記過マンガン酸に対する還元剤を含む酸性溶液に接触させる工程とを有することを特徴とする、配線基板の表面処理方法。
【請求項4】
さらに後処理として、銅配線表面に銅よりも卑な金属を形成する処理、アゾール化合物を含有する溶液を用いた処理、及びカップリング剤を用いた処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理を行う工程を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線基板の表面処理方法。
【請求項5】
前記銅よりも貴な金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、及びイリジウムからなる群から選択される金属であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の配線基板の表面処理方法。
【請求項6】
前記銅よりも貴な金属の形成量が、0.001〜40μmol/dm2であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の配線基板の表面処理方法。
【請求項7】
表面処理後の前記銅配線の表面粗さが、Rzで1〜1000nmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の配線基板の表面処理方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の配線基板の表面処理方法を用いて処理された配線基板。
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図2】
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【図4】
【公開番号】特開2011−159966(P2011−159966A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1282(P2011−1282)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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