説明

配線基板の製造方法及び配線基板

【課題】 配線間隔が狭くなっても、リーク電流の増加を抑制することができる配線基板の製造方法が要望されている。
【解決手段】 基板の上に配線を形成する。基板の表層部をウェット処理で除去することにより、配線の長さ方向の一部において、配線と基板との間に空洞を形成する。配線の側面、上面、及び底面に、バリア膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線をバリア膜で被覆した配線基板の製造方法、及び配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に対する小型化、高性能化等の要求に伴い、半導体チップの微細化や多端子化とともに、半導体チップを搭載する配線基板においても、配線の微細化、多層化が進められている。
【0003】
半導体チップを搭載する配線基板に、プリント基板、シリコンインターポーザ等が用いられる。また、より小型化を図るために、ウエハレベルパッケージ(WLP)と呼ばれる実装形態が提案されている。これらの配線基板の多層配線の形成には、サブトラクティブ法よりも微細な配線の形成に適したセミアディティブ法が適用される。
【0004】
銅の合金からなる配線に含まれる溶質、例えばSn、In、C等を、配線内の粒界及び配線の界面に濃縮させることにより、エレクトロマイグレーション耐性を高めた配線構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−304167号公報
【特許文献2】特開2004−14975号公報
【特許文献3】特開2008−34639号公報
【特許文献4】特開2003−124591号公報
【特許文献5】特開平9−20942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セミアディティブ法で配線を形成する場合、電解めっき時に電極として用いたシード層のうち余分な部分をドライエッチングで除去する必要がある。このとき、導電性の微細なパーティクルが基板上に残留する。配線間隔が広い場合には、残留したパーティクルは問題にならないが、配線間隔が狭くなると、パーティクルがリーク電流の原因になる。
【0007】
さらに、配線間隔が狭くなると、配線を構成する銅の、絶縁膜中への拡散も、リーク電流の原因になる。
【0008】
配線間隔が狭くなっても、リーク電流の増加を抑制することができる配線基板及びその製造方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によると、
基板の上に配線を形成する工程と、
前記配線の側面、上面、及び底面に、バリア膜を形成する工程と
を有する配線基板の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の他の観点によると、
支持基板の上に形成された第1の層間絶縁膜と、
前記第1の層間絶縁膜内に埋め込まれた導電性の支柱と、
前記支柱及び前記第1の層間絶縁膜の上に形成され、前記支柱に接続された配線と、
前記配線の上面、側面、及び底面を覆い、前記配線の長さ方向に直交する断面において膜と膜との境界を持つこと無く前記配線を取り囲むバリア膜と
を有する配線基板が提供される。
【発明の効果】
【0011】
配線と基板との間に空洞を形成する際に、基板上に残っている導電性の異物が除去される。これにより、異物に起因するリーク電流を抑制することができる。
【0012】
配線の長さ方向に直交する断面において膜と膜との境界を持つこと無く配線を取り囲むバリア膜は、配線内の金属元素の拡散を防止する効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(1A)は、実施例1による配線基板の配線の平面図であり、(1B)及び(1C)は、それぞれ(1A)の一点鎖線1B−1B、1C−1Cにおける断面図である。
【図2−1】実施例1による配線基板の製造方法の製造途中段階における基板の断面図である。
【図2−2】実施例1による配線基板の製造方法の製造途中段階における基板の断面図である。
【図2−3】実施例1による配線基板の製造方法の製造途中段階における基板の断面図である。
【図3−1】実施例2による配線基板の製造方法の製造途中段階における基板の断面図である。
【図3−2】実施例2による配線基板の製造方法の製造途中段階における基板の断面図である。
【図3−3】実施例2による配線基板の断面図である。
【図4】(4A)は、実施例の効果の検証のために作製した試料の配線パターンを示す平面図であり、(4B)は、検証実験の結果を示すグラフである。
【図5−1】実施例3による配線基板の製造方法の製造途中段階における基板の断面図である。
【図5−2】実施例3による配線基板の製造方法の製造途中段階における基板の断面図である。
【図5−3】実施例3による配線基板の製造方法の製造途中段階における基板の断面図である。
【図5−4】(5Ga)及び(5Gb)は、実施例3による配線基板の製造方法の製造途中段階における基板の断面図であり、(5Ha)及び(5Hb)は、実施例3による配線基板の断面図である。
【図6】(6A)は、実施例4によるインターポーザの断面図であり、(6B)は、実施例5によるWLPの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に説明する実施例1〜3では、プリント基板、インターポーザ、ウエハレベルパッケージ(WLP)等に形成される多層配線内の1つの配線について説明する。着目する1つの配線以外の他の配線も、同様の方法で形成される。
【0015】
[実施例1]
図1Aに、実施例1による配線基板の配線の平面図を示す。2本の下層配線11と12とが、上層の配線10で相互に接続されている。下層配線11と上層の配線10との交差箇所、及び下層配線12と上層の配線10との交差箇所に、それぞれ導電性の支柱(ビアポスト)13が配置されている。上層の配線10は、ビアポスト13を介して下層配線11、12に接続される。図1B及び図1Cに、それぞれ図1Aの一点鎖線1B−1B、1C−1Cにおける断面図を示す。
【0016】
図1Bに示すように、支持基板7の上に下層配線11、12が形成されている。下層配線11、12の上に導電性の支柱(ビアポスト)13が形成されている。支持基板7及び下層配線11、12の上に、第1の層間絶縁膜20が形成されている。支柱13の側面が第1の層間絶縁膜20に接しており、第1の層間絶縁膜20の上面のうち、支柱13の周囲の円環状の領域が、支柱13の上面と同一の高さにされている。この円環状の領域以外の領域では、第1の層間絶縁膜20の上面は、支柱13の上面よりも低い。
【0017】
第1の層間絶縁膜20の上に、一方の支柱13の上面から他方の支柱13の上面まで至る配線10が形成されている。配線10は、第1の層間絶縁膜20の上面から、ある間隔を隔てて配置されている。配線10は、シード層15と、その上に形成された配線主部16とを有する。配線10の底面が、第1のバリア膜22で覆われており、上面及び側面が、第2のバリア膜23で覆われている。第1のバリア膜22と第2のバリア膜23とがバリア膜25を構成する。すなわち、バリア膜25は、配線10の上面、側面、及び底面を覆う。
【0018】
第1の層間絶縁膜20及び配線10の上に、第2の層間絶縁膜30が形成されている。第2の絶縁膜30は、配線10と第1の層間絶縁膜20との間の空間にも充填されている。配線10は、第1のバリア膜22を介して支柱13に電気的に接続される。支柱13の近傍においては、第1のバリア膜13が第1の層間絶縁膜20に接触している。
【0019】
図1Cに示すように、配線10の長手方向と直交する断面において、配線10はバリア膜25で取り囲まれている。第2の層間絶縁膜30は、配線10及びバリア膜25を、その上方、側方、及び下方から取り囲む。
【0020】
シード層15及び配線主部16は、例えば銅、または銅合金で形成される。第1のバリア膜22及び第2のバリア膜23は、配線10を構成する銅が、第1の層間絶縁膜20及び第2の層間絶縁膜30内に拡散することを防止する機能を有する。第1のバリア膜22及び第2のバリア膜23には、銅の拡散を防止することができる材料が用いられる。一例として、第1のバリア膜22にはTiが用いられ、第2のバリア膜23には、銅の表面に無電解めっきすることができる合金が用いられる。無電解めっき可能な材料として、PまたはBを含む合金、例えばCoWP、CoP、CoNiP、NiP、CoWB、CoB、CoNiB、NiB等が挙げられる。
【0021】
次に、実施例1による配線基板の製造方法について説明する。製造方法の説明で参照する図2Aa、図2Ba、図2Ca、図2Da、図2Ea、及び図2Faは、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面に相当し、図2Ab、図2Bb、図2Cb、図2Db、図2Eb、及び図2Fbは、図1Aの一点鎖線1C−1Cにおける断面に相当する。
【0022】
図2Aa及び図2Abに示すように、支持基板7の上に下層配線11、12を形成する。さらに、下層配線11、12の上に、導電性の支柱(ビアポスト)13を形成する。下層配線11、12、及びビアポスト13の形成には、例えばセミアディティブ法が適用される。支持基板7の上面から支柱13の上面までの高さは、例えば5μmとする。
【0023】
支持基板7、下層配線11、12、及び支柱13の上に、第1の層間絶縁膜20を形成する。第1の層間絶縁膜20には、例えば絶縁性樹脂が用いられる。第1の層間絶縁膜20は、スピンコート法により成膜した後、キュアを行うことにより形成される。第1の層間絶縁膜20に用いる樹脂の一例として、JSR株式会社の感光型絶縁性樹脂WPR−5100が挙げられる。なお、第1の層間絶縁膜20に用いる樹脂は、感光型でなくてもよい。その他に、第1の層間絶縁膜20として、無機絶縁材料を用いることも可能である。無機絶縁材料の成膜には、例えば化学気相成長(CVD)が適用される。
【0024】
第1の層間絶縁膜20の上面は、下層配線11、12、及び支柱13が配置された領域において、その他の領域よりも高くなる。平坦部における第1の層間絶縁膜20の厚さは、例えば4.5μmであり、その上面は、支柱13の上面よりも低い。
【0025】
第1の層間絶縁膜20の上に、暫定膜21を形成する。暫定膜21には、ウェットエッチングで容易に除去することが可能な材料が用いられる。一例として、現像液やアセトンに容易に溶解するフォトレジストを用いることができる。平坦部における暫定膜21の上面の高さは、支柱13上面の高さと等しいか、またはそれよりも高い。一例として、平坦部における暫定膜21の厚さを、0.5μmとする。暫定膜21を形成した後、プリベーキングを行う。
【0026】
図2Ba及び図2Bbに示すように、支柱13の上面が露出するまで、暫定膜21及び第1の層間絶縁膜20を研磨する。支柱13を取り囲む円環状の領域に、第1の層間絶縁膜20が露出し、それよりも外側の領域には、暫定膜21が残る。
【0027】
図2Ca及び図2Cbに示すように、暫定膜21、第1の層間絶縁膜20、及び支柱13の上に、第1のバリア膜22を、例えばスパッタリングにより形成する。第1のバリア膜22には、銅の拡散を防止する機能を持つ導電材料、例えばTiが用いられる。第1のバリア膜22の厚さは、例えば5nm〜20nmの範囲内とする。
【0028】
第1のバリア膜22の上に、例えばスパッタリングにより、銅からなるシード層15を形成する。シード層15の厚さは、例えば10nm〜200nmの範囲内とする。第1のバリア膜22は、銅の拡散防止機能の他に、シード層15の密着性を高める機能を有する。
【0029】
シード層15の上に、配線主部16を形成する。以下、配線主部16の形成方法について説明する。まず、シード層15の上に、フォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜に、配線主部16に対応する開口を形成する。シード層15を電極として、開口内に露出したシード層15の上に銅または銅合金を電解めっきすることにより、配線主部16を形成する。配線主部16の厚さは、例えば2μmとする。電解めっき後、フォトレジスト膜を除去する。
【0030】
図2Da及び図2Dbに示すように、配線主部16で覆われていない領域のシード層15及び第1のバリア膜22を、エッチングにより除去する。このエッチングには、例えばCFを用いたドライエッチングを適用することができる。配線主部16、及びその下に残ったシード層15が、配線10を構成する。第1のバリア膜22が除去された領域に、暫定膜21が露出する。露出した暫定膜21の表面に、導電性のパーティクル27が付着している。
【0031】
図2Ea及び図2Ebに示すように、暫定膜21(図2Da、図2Db)を、現像液またはアセトンを用いたウェット処理により除去する。その表面に付着していたパーティクル27(図2Da、図2Db)も、暫定膜21とともに除去される。第1のバリア膜22と第1の層間絶縁膜20との間に充填されていた暫定膜21が除去されるため、その部分に空洞が形成される。空洞の高さは、約0.5μmになる。第1のバリア膜22及び配線10は、支柱13及びその周囲の第1の層間絶縁膜20により支持される。
【0032】
図2Fa及び図2Fbに示すように、配線10の上面及び側面に、第2のバリア膜23を形成する。第2のバリア膜23には、例えばCoWPが用いられ、その成膜には、無電解めっきが適用される。Tiからなる第1のバリア膜22の底面には、無電解めっきによるCoWPは成膜されない。第2のバリア膜23の厚さは、例えば100nmとする。第1のバリア膜22及び第2のバリア膜23が、バリア膜25を構成する。バリア膜25は、配線10の全表面を覆う。
【0033】
第2のバリア膜23として、銅または銅合金の配線10に無電解めっきすることができ、かつ銅の拡散防止機能を有する合金を用いることができる。このような合金として、CoWPの他に、PまたはBを含む合金、例えばCoP、CoWB、CoB、CoNiP、CoNiB、NiP、NiB等が挙げられる。PまたはBの含有量は、例えば1wt%〜2wt%である。
【0034】
第2のバリア膜25を形成した後、図1B及び図1Cに示したように、絶縁性樹脂からなる第2の層間絶縁膜30を、例えばスピンコートにより形成する。第1のバリア膜22と第1の層間絶縁膜20との間の空洞が、第2の層間絶縁膜30で埋め込まれる。
【0035】
上記実施例1では、図2Da及び図2Dbに示した暫定膜21をウェットエッチングで除去する際に、導電性のパーティクル27も除去される。このため、パーティクル27が残留することに起因するリーク電流の発生を防止することができる。
【0036】
[実施例2]
図3Aa〜図3Ebを参照して、実施例2による配線基板の製造方法について説明する。実施例2の配線の平面図は、図1Aに示した実施例1のものと同一である。図3Aa、図3Ba、図3Ca、図3Da、図3Eaは、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面に相当し、図3Ab、図3Bb、図3Cb、図3Db、図3Ebは、図1Aの一点鎖線1C−1Cにおける断面に相当する。
【0037】
図3Aa及び図3Abに示すように、支持基板7の上に、下層配線11、12、支柱13、第1の層間絶縁膜20、及び暫定膜21を形成する。ここまでの工程は、実施例1の図2Ba及び図2Bbに示した暫定膜21を形成するまでの工程と共通である。暫定膜21、第1の層間絶縁膜20、及び支柱13の上に、シード層15を形成する。さらに、シード層15の上に配線主部16を形成する。シード層15及び配線主部16の形成方法は、図2Ca及び図2Cbに示した実施例1のシード層15及び配線主部16の形成方法と同一である。実施例2においては、実施例1の第1のバリア膜22は形成されない。
【0038】
図3Ba及び図3Bbに示すように、配線主部16が形成されていない領域のシード層15を除去する。露出した暫定膜21の上に、導電性のパーティクル27が残存する。配線主部16、及びその下に残ったシード層15が、配線10を構成する。
【0039】
図3Ca及び図3Cbに示すように、暫定膜21(図3Ba、図3Bb)を除去する。このとき、導電性のパーティクル27も除去される。配線10と第1の層間絶縁膜20との間に空洞が形成される。空洞の高さは、約0.5μmになる。
【0040】
図3Da及び図3Dbに示すように、配線10の上面、側面、及び底面に、バリア膜25を形成する。バリア膜25の形成方法は、図2Fa及び図2Fbに示した実施例1の第2のバリア膜23の形成方法と同一である。実施例1では、Tiからなる第1のバリア膜22の底面には第2のバリア膜23が形成されなかったが、実施例2では、第1のバリア膜22が形成されていないため、配線10の底面にもバリア膜25が形成される。
【0041】
バリア膜25の厚さは、例えば100nmであり、配線10と第1の層間絶縁膜20と間に形成されていた空洞の高さは約0.5μmであるため、配線10の底面に形成されたバリア膜25と第1の層間絶縁膜20との間に、高さ約0.4μmの空洞が残る。
【0042】
図3Ea及び図3Ebに示すように、絶縁性樹脂からなる第2の層間絶縁膜30を、例えばスピンコートにより形成する。バリア膜25と第1の層間絶縁膜20との間の空洞は、第2の層間絶縁膜30で埋め込まれる。
【0043】
実施例2においては、配線10を取り囲むバリア膜25が、同一の成膜工程で同時に成膜される。このため、異なる成膜工程で2つの膜を成膜する場合に現れる膜と膜との界面が存在しない。具体的には、バリア膜25は、配線10の長手方向に延在する結晶構造的な境界を持たない。バリア膜25は、単結晶ではなく多結晶であるため、バリア膜25内に結晶粒界は存在するが、この粒界は、配線10の長手方向に延在する界面とは明確に区別される。このようにバリア膜25は、配線10の長手方向に直交する断面に関して、シームレスである。
【0044】
バリア膜25に膜と膜との界面が存在すると、この界面を通して銅が拡散し易くなる。例えば、実施例1では、図1Cに示した第1のバリア膜22と第2のバリア膜23との接合界面を通して、銅が拡散し易い。実施例2では、バリア膜25に、このような界面が存在しないため、銅の拡散防止機能を高めることができる。
【0045】
実施例では、支柱13の近傍において、配線10と第1の層間絶縁膜20とが直接接触している領域には、バリア膜25が形成されない。ただし、基板面内において支柱13が占める領域は、配線10が占める領域に比べて十分狭く、支柱13同士の間隔は、配線10の間隔に比べて十分大きい。このため、支柱13の近傍における銅の拡散は、リーク電流の原因にはなり難い。
【0046】
実施例2では、バリア膜25に、無電解めっき可能な合金を用いたが、銅の拡散防止機能を有する無機絶縁材料を用いてもよい。無機絶縁材料を用いる場合には、バリア膜25の形成に、例えばCVDを適用することができる。銅の拡散を防止する無機絶縁材料として、N、O、またはCを含む絶縁性のシリコン化合物、例えばSiN、SiO、SiC、SiOC、SiNC、SiNO等が挙げられる。
【0047】
図4A及び図4Bを参照して、実施例1及び実施例2の効果の検証結果について説明する。
【0048】
図4Aに、効果を検証するために作製した試料の配線パターンの平面図を示す。この配線パターンは、相互に噛み合った一対の櫛歯型配線50、55を含む。一方の櫛歯型配線50は、共通接続配線51を介してランド52に連続しており、他方の櫛歯型配線55は、共通接続配線56を介してランド57に連続している。櫛歯型配線50、55の各櫛歯の幅は2μmであり、一方の櫛歯型配線50の櫛歯と、他方の櫛歯型配線55の櫛歯との間隔も2μmである。櫛歯が噛み合った部分の櫛歯の長さは約1.5mmである。
【0049】
ランド52、57の部分に、図1B、図3Eaに示した支柱13が配置されている。すなわち、配線と基板との間に空洞が形成される製造途中段階において、一方の櫛歯型配線50及び共通接続配線51は、1つの支柱で支持され、他方の櫛歯型配線55及び共通接続配線56も、1つの支柱で支持される。
【0050】
図4Aに示した配線パターンを持つ試料を、実施例1及び実施例2の方法で作製した。さらに、比較のために、実施例1の暫定膜21を形成せず、第1の層間絶縁膜20の上に第1のバリア膜22を直接形成した試料を作製した。これらの試料について、相対湿度85%の加湿雰囲気中で、温度を120℃〜140℃とした加速試験を行った。
【0051】
図4Bに加速試験の結果を示す。横軸は経過時間を表し、縦軸は櫛歯型配線間の抵抗値を表す。太い実線aは、実施例2の方法においてバリア膜25をSiNで形成した試料の測定結果を示す。細い実線bは、実施例2の方法においてバリア膜25をCoWPで形成した試料の測定結果を示す。破線cは、実施例1の方法において、第1のバリア膜22をTiで形成し、第2のバリア膜23をCoWPで形成した試料の測定結果を示す。点線dは、比較例の試料の測定結果を示す。
【0052】
比較例の試料dにおいては、他の試料に比べて早い時期に抵抗値が低下(リーク電流が増加)している。これは、図2Da及び図2Dbに示したパーティクル27が残留したままの状態であるためと考えられる。実施例1による方法で作製した試料cは、実施例2の方法で作製した試料a、bに比べて、早い時期に抵抗値が低下している。これは、図1Cに示した第1のバリア膜22と第2のバリア膜23との界面を通って、第1の層間絶縁膜及び第2の層間絶縁膜30内に銅が拡散したためと考えられる。
【0053】
実施例2による方法で作製した試料a、bは、抵抗値の低下がほとんど見られない。これは、図3Ebに示したように、シームレスのバリア膜25により、銅の拡散を防止する高い効果が得られているためであると考えられる。
【0054】
[実施例3]
次に、図5Aa〜図5Hbを参照して、実施例3による配線基板の製造方法について説明する。実施例3の配線の平面図は、図1Aに示した実施例1のものと同一である。図5Aa、図5Ba、図5Ca、図5Da、図5Ea、図5Fa、図5Ga、及び図5Haは、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面に相当し、図5Ab、図5Bb、図5Cb、図5Db、図5Eb、図5Fb、図5Gb、及び図5Hbは、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面に相当する。
【0055】
図5Aa及び図5Abに示すように、下地基板7の上に、下層配線11、12が形成されている。下地基板7及び下層配線11、12の上に、第1の層間絶縁膜20を形成し、その上に暫定膜21を形成する。第1の層間絶縁膜20及び暫定膜21の形成方法は、図2Aa及び図2Abに示した実施例1の第1の層間絶縁膜20及び暫定膜21の形成方法と同一である。
【0056】
暫定膜21及び第1の層間絶縁膜20の、下層配線11、12と重なる位置に、それぞれビアホール24を形成する。ビアホール24は、暫定膜21の露光及び現像の後、暫定膜21をエッチングマスクとして第1の層間絶縁膜20をエッチングすることにより形成することができる。第1の層間絶縁膜20をエッチングするときに、暫定膜21の表層部もエッチングされる。暫定膜21は、第1の層間絶縁膜20の底面まで達するビアホール24が形成された時点で、第1の層間絶縁膜20の上に残存する厚さに設定されている。
【0057】
図5Ba及び図5Bbに示すように、暫定膜21の上、及びビアホール24の底面及び側面に、銅からなるシード層15を、例えばスパッタリグにより形成する。シード層15の上に、フォトレジスト膜26を形成する。フォトレジスト膜26に、開口26Aを形成する。開口26Aは、形成すべき配線に対応する平面形状を有する。
【0058】
図5Ca及び図5Cbに示すように、シード層15を電極として、開口26A内のシード層15の上に、電解めっきにより、銅または銅合金からなる配線主部16を形成する。
【0059】
図5Da及び図5Dbに示すように、レジスト膜26(図5Ca、図5Cb)を除去する。配線主部16が形成されていない領域に、シード層15が露出する。
【0060】
図5Ea及び図5Ebに示すように、露出しているシード層15を除去する。シード層15の除去には、例えばCFを用いたドライエッチングが適用される。配線主部16、及びその下に残ったシード層15が、配線10を構成する。ビアホール24内に充填されたシード層15及び配線主部16が、上層の配線10と下層配線11、12とを接続する導電性ビアとして機能する。露出した暫定膜21の表面に、導電性のパーティクル27が残留している。
【0061】
図5Fa及び図5Fbに示すように、暫定膜21(図5Ea、図5Eb)を、ウェットエッチングにより除去する。このとき、パーティクル27も除去される。
【0062】
配線10と第1の層間絶縁膜20との間に空洞が形成される。配線10は、ビアホール24内に充填されていた部分導電性ビアとして機能する部分により支持される。
【0063】
図5Ga及び図5Gbに示すように、配線10の上面、側面、及び底面に、バリア膜25を形成する。バリア膜25の形成方法は、図3Da及び図3Dbに示したバリア膜25の形成方法を同一である。実施例2では、配線10の底面のうち第1の層間絶縁膜20に接触している領域にはバリア膜25が形成されなかったが、実施例3では、配線10の底面の全域にバリア膜25が形成される。さらに、配線10と下層配線11、12とを接続する導電性ビアとして機能する部分の露出している側面にもバリア膜25が形成される。
【0064】
図5Ha及び図5Hbに示すように、第1の層間絶縁膜20及び配線10の上に、第2の層間絶縁膜30を形成する。第2の層間絶縁膜30は、配線10と第1の層間絶縁膜20との間の空洞にも埋め込まれる。
【0065】
実施例3においても、実施例2と同様に、シームレスなバリア膜25を形成することができる。このため、配線10内の銅の拡散を防止し、リーク電流の増加を抑制することができる。
【0066】
[実施例4]
図6Aに、実施例4によるインターポーザの断面図を示す。支持基板60内に、複数の貫通電極61が配置されている。貫通電極61の底面にバンプ62が形成されている。支持基板60の上に、多層配線層63が形成されている。多層配線層63の各配線は、上記実施例1〜実施例3のいずれかの方法で形成される。多層配線層63の上に、電極パッド64が形成されている。電極パッド64は、多層配線層63内の配線及び導電性ビアを介して、貫通電極61に接続される。
【0067】
多層配線層63が、上記実施例1〜実施例3のいずれかの方法で形成されるため、リーク電流の増大を抑制することができる。
【0068】
[実施例5]
図6Bに、実施例5によるウエハレベルパッケージの断面図を示す。半導体チップ70が、樹脂基板71の開口内に配置され、固定用樹脂72で樹脂基板71に固定されている。半導体チップ70の回路形成面の上、及び樹脂基板71の上に、多層配線層73が形成されている。多層配線層73内の各配線は、上記実施例1〜実施例3のいずれかの方法で形成される。多層配線層73の上に、バンプ74が形成されている。バンプ74は、多層配線層73内の配線及び導電性ビアを介して、半導体チップ70の電極パッド70Aに接続されている。
【0069】
多層配線層73が、上記実施例1〜実施例3のいずれかの方法で形成されるため、リーク電流の増大を抑制することができる。
【0070】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0071】
以上の実施例1〜実施例5を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0072】
(付記1)
基板の上に配線を形成する工程と、
前記基板の表層部をウェット処理で除去することにより、前記配線の長さ方向の一部において、前記配線と前記基板との間に空洞を形成する工程と、
前記配線の側面、上面、及び底面に、バリア膜を形成する工程と
を有する配線基板の製造方法。
【0073】
(付記2)
前記基板は、支持基板、該支持基板の上に形成された第1の層間絶縁膜、該第1の層間絶縁膜の上に形成された暫定膜、及び該第1の層間絶縁膜に埋め込まれ、上面が露出している導電性の支柱を含み、
前記配線を形成する工程において、前記配線の一部が前記支柱と重なるように前記配線を形成し、
前記空洞を形成する工程において、前記暫定膜を除去することにより、前記空洞を形成する付記1に記載の配線基板の製造方法。
【0074】
(付記3)
前記バリア膜を形成する工程は、前記空洞を形成した後、前記配線の長手方向と直交する断面において、該配線を取り囲むように前記バリア膜を形成する付記1または2に記載の配線基板の製造方法。
【0075】
(付記4)
前記バリア膜は、無電解めっきにより形成される付記3に記載の配線基板の製造方法。
【0076】
(付記5)
前記バリア膜は、PまたはBを含む合金である付記4に記載の配線基板の製造方法。
【0077】
(付記6)
前記バリア膜は、化学気相成長により形成される付記3に記載の配線基板の製造方法。
【0078】
(付記7)
前記バリア膜は、N、O、またはCを含む絶縁性のシリコン化合物である付記6に記載の配線基板の製造方法。
【0079】
(付記8)
前記配線を形成する前に、前記基板の上に、前記バリア膜の一部となる第1のバリア膜を形成し、
前記配線を形成する工程において、前記第1のバリア膜の上に前記配線を形成し、
前記空洞を形成する前に、前記配線が形成されていない領域の前記第1のバリア膜を除去し、
前記空洞を形成した後、前記配線の表面のうち、前記第1のバリア膜が形成されていない領域に、前記バリア膜の一部となる第2のバリア膜を形成する付記1または2に記載の配線基板の製造方法。
【0080】
(付記9)
前記バリア膜を形成した後、前記空洞に充填されるように、前記基板及び前記配線の上に、第2の層間絶縁膜を形成する付記1乃至8のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【0081】
(付記10)
支持基板の上に形成された第1の層間絶縁膜と、
前記第1の層間絶縁膜内に埋め込まれた導電性の支柱と、
前記支柱及び前記第1の層間絶縁膜の上に形成され、前記支柱に接続された配線と、
前記配線の上面、側面、及び底面を覆い、前記配線の長さ方向に直交する断面において膜と膜との境界を持つこと無く前記配線を取り囲むバリア膜と
を有する配線基板。
【0082】
(付記11)
前記配線と前記第1の層間絶縁膜との間、及び前記第1の層間絶縁膜の上に、前記配線を埋め込むように配置された第2の層間絶縁膜を、さらに有する付記10に記載の配線基板。
【0083】
(付記12)
前記バリア膜は、PまたはBを含む合金である付記10または11に記載の配線基板。
【0084】
(付記13)
前記バリア膜は、N、O、またはCを含む絶縁性のシリコン化合物である付記10または11に記載の配線基板。
【符号の説明】
【0085】
7 支持基板
10 配線
11、12 下層配線
13 支柱(ビアポスト)
15 シード層
16 配線主部
20 第1の層間絶縁膜
21 暫定膜
22 第1のバリア膜
23 第2のバリア膜
24 ビアホール
25 バリア膜
26 レジスト膜
27 パーティクル
30 第2の層間絶縁膜
50、55 櫛歯型配線
51、56 共通接続配線
52、57 ランド
60 支持基板
61 貫通電極
62 バンプ
63 多層配線層
64 電極パッド
70 半導体チップ
71 樹脂基板
71A 電極パッド
72 固定用樹脂
73 多層配線層
74 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に配線を形成する工程と、
前記基板の表層部をウェット処理で除去することにより、前記配線の長さ方向の一部において、前記配線と前記基板との間に空洞を形成する工程と、
前記配線の側面、上面、及び底面に、バリア膜を形成する工程と
を有する配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記基板は、支持基板、該支持基板の上に形成された第1の層間絶縁膜、該第1の層間絶縁膜の上に形成された暫定膜、及び該第1の層間絶縁膜に埋め込まれ、上面が露出している導電性の支柱を含み、
前記配線を形成する工程において、前記配線の一部が前記支柱と重なるように前記配線を形成し、
前記空洞を形成する工程において、前記暫定膜を除去することにより、前記空洞を形成する請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記バリア膜を形成する工程は、前記空洞を形成した後、前記配線の長手方向と直交する断面において、該配線を取り囲むように前記バリア膜を形成する請求項1または2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記バリア膜は、無電解めっきにより形成される請求項3に記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記バリア膜は、PまたはBを含む合金である請求項4に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記バリア膜は、化学気相成長により形成される請求項3に記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記バリア膜は、N、O、またはCを含む絶縁性のシリコン化合物である請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記配線を形成する前に、前記基板の上に、前記バリア膜の一部となる第1のバリア膜を形成し、
前記配線を形成する工程において、前記第1のバリア膜の上に前記配線を形成し、
前記空洞を形成する前に、前記配線が形成されていない領域の前記第1のバリア膜を除去し、
前記空洞を形成した後、前記配線の表面のうち、前記第1のバリア膜が形成されていない領域に、前記バリア膜の一部となる第2のバリア膜を形成する請求項1または2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記バリア膜を形成した後、前記空洞に充填されるように、前記基板及び前記配線の上に、第2の層間絶縁膜を形成する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
支持基板の上に形成された第1の層間絶縁膜と、
前記第1の層間絶縁膜内に埋め込まれた導電性の支柱と、
前記支柱及び前記第1の層間絶縁膜の上に形成され、前記支柱に接続された配線と、
前記配線の上面、側面、及び底面を覆い、前記配線の長さ方向に直交する断面において膜と膜との境界を持つこと無く前記配線を取り囲むバリア膜と
を有する配線基板。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−104647(P2012−104647A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251721(P2010−251721)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】