説明

配線基板の製造方法

【課題】導体層と樹脂絶縁層とがそれぞれ少なくとも1層積層されるとともに、最表面にソルダーレジスト層が形成されてなる配線基板を最終製品として提供する際に、その表面に接触痕を形成することなく配線基板の反りを低減し、平坦化することが可能な新規な製造方法を提供する。
【解決手段】導体層と樹脂絶縁層とがそれぞれ少なくとも1層積層されるとともに、最表面にソルダーレジスト層が形成されてなる配線基板を、支持台上に配置する。次いで、凹部が形成されてなる平板状の治具により、前記凹部が前記配線基板のICチップ搭載部上に位置し、前記ICチップ搭載部が前記治具と離間した状態で、前記配線基板を、加熱下、前記支持台に対して押圧する。この際、前記治具の、前記凹部の外方に位置する押圧面の表面粗さを前記ソルダーレジスト層の表面粗さに対応して粗化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導体層と樹脂絶縁層とがそれぞれ少なくとも1層積層され、最表面にソルダーレジスト層が形成されてなる配線基板、いわゆる樹脂製配線基板を用い、この上にICチップを搭載して半導体パッケージを製造することが盛んに行われている。
【0003】
ICチップは、配線基板の主面上のICチップ搭載部のパッド上に形成されたはんだバンプを介して電気的に接続する。一方、配線基板の裏面側にはベース基板と電気的に接続したり、ソケットに挿入して電気的に接続したりするための外部端子が形成されている。
【0004】
上記はんだバンプは、配線基板の主面上にはんだペーストを印刷してリフローし、半球状に形成する。
【0005】
しかしながら、上述したはんだペーストのリフローは、配線基板を加熱装置内に入れて行うものであるため、上述したはんだバンプの形成に際して、配線基板が熱によって反ってしまうという問題があった。このような反りは、特に配線基板のICチップ搭載部で特に問題となり、ICチップ搭載部の反りに起因して、ICチップと配線基板との、はんだバンプを介した電気的接続を十分に行うことができないという問題が生じていた。
【0006】
このような問題に鑑みて、特許文献1には、はんだペーストをリフローする際に、配線基板を、保持治具を用いて台座に固定し、加熱による配線基板の反りを低減することが試みられている。
【0007】
しかしながら、上述した配線基板は、上述したはんだペーストのリフローにおける加熱処理のみならず、その製造過程を通じて種々の熱的プロセス及び機械的プロセスを経るため、最終的には、それらのプロセスに起因しても反りが生じてしまう。したがって、配線基板を最終製品として提供する際には、上述のような製造方法を経ることによって得た配線基板に対して、その反りを低減できるような後加熱処理を行う必要がある。
【0008】
このような後加熱処理は、最表面にソルダーレジスト層が形成されたような配線基板においては、その配線基板を支持台上に固定し、ソルダーレジスト層のガラス転位点の温度以上に配線基板を加熱した後、所定の押圧冶具によって配線基板の全体を支持台に向けて押圧することによって行う。この方法によれば、配線基板の反りを十分に低減できるが、反り低減の操作をソルダーレジスト層のガラス転移点以上の温度で行うことから、配線基板の表面、すなわちソルダーレジスト層の表面に上記押圧冶具の接触痕が形成されてしまう。
【0009】
このような接触痕は、外観を劣化させるため好ましいものではなく、特にICチップ搭載部においては、ICチップと配線基板との電気的接続を行うはんだバンプを押しつぶしてしまうことになり、これらの電気的接続を良好に行うことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−234366号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、導体層と樹脂絶縁層とがそれぞれ少なくとも1層積層されるとともに、最表面にソルダーレジスト層が形成されてなる配線基板を最終製品として提供する際に、その表面に接触痕を形成することなく配線基板の反りを低減し、平坦化することが可能な新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明は、
導体層と樹脂絶縁層とがそれぞれ少なくとも1層積層されるとともに、最表面にソルダーレジスト層が形成されてなる配線基板を、支持台上に配置する工程と、
凹部が形成されてなる平板状の治具により、前記凹部が前記配線基板のICチップ搭載部上に位置し、前記ICチップ搭載部が前記治具と離間した状態で、前記配線基板を、加熱下、前記支持台に対して押圧する工程と、
を備え、
前記治具の、前記凹部の外方に位置する押圧面の表面粗さが前記ソルダーレジスト層の表面粗さに対応して粗化されていることを特徴とする、配線基板の製造方法に関する。
【0013】
本発明によれば、導体層と樹脂絶縁層とがそれぞれ少なくとも1層積層されるとともに、最表面にソルダーレジスト層が形成されてなる配線基板を所定の支持台上に配置した後、凹部が形成されてなる平板状の冶具を用い、この冶具の凹部が配線基板のICチップ搭載部に位置するようにし、このICチップ搭載部が冶具と離間して接触しない状態で、配線基板を冶具によって支持台に押圧し、反りを低減するようにしている。
【0014】
この際、治具の、凹部の外方に位置する押圧面の表面粗さがソルダーレジスト層の表面粗さに対応して粗化されているので、上述のように治具によって配線基板を押圧した際においても、上記押圧面による押圧によって上記ソルダーレジスト層に接触痕が生じることがない。
【0015】
また、配線基板のICチップ搭載部は、一般にその中心部に位置するため、従来のように冶具全体で配線基板を押圧した場合、実質的に大きな押圧力が加わり、ICチップと配線基板との電気的接続を行うはんだバンプを押しつぶしてしまうことになり、これらの電気的接続を良好に行うができなくなってしまう。
【0016】
一方、本発明では、凹部が形成された平板状冶具を用い、この平板状冶具の凹部が配線基板のICチップ搭載部に位置してICチップ搭載部が平板状冶具に接触しないようにして配置した後、押圧するようにしている。したがって、押圧時において、配線基板のICチップ搭載部は実質的に押圧されないので、ICチップと配線基板との電気的接続を行うはんだバンプを押しつぶしてしまうことがない。結果として、これらの電気的接続を良好に行うことができる。
【0017】
本発明の一例においては、前記ソルダーレジスト層表面を、治具の前記押圧面と接触する接触面と、治具と接触しない非接触面とに区分した場合、平板状治具により押圧する工程後において、接触面の算術平均表面粗さRaと非接触面の算術平均表面粗さRaとの差が0.03μm以内であり、接触面の十点平均表面粗さRzと、非接触面の十点平均表面粗さRzとの差が0.3μm以内となるよう、押圧面が粗化されていることが好ましい。このように接触面と非接触面との表面粗さの差を上述のような小さい値となるよう押圧面が粗化されているので、冶具を配線基板に押圧した際の接触痕の発生をより効果的に抑制することができる。
【0018】
また、本発明の一例では、平板状治具により押圧する工程前において、平板状治具の凹部の外方に位置する押圧面の算術平均表面粗さRaは、ソルダーレジスト層の算術平均表面粗さRaに対して、4.00倍以上33.00倍以下であり、平板状治具の、前記凹部の外方に位置する押圧面の十点平均表面粗さRzは、ソルダーレジスト層の十点平均表面粗さRzに対して、2.00倍以上14.00倍以下であることが好ましい。平板状治具の押圧面の表面粗さをソルダーレジスト層表面と比べて上述のように適度に大きい値に設定することで、冶具を配線基板に押圧した際に配線基板の反りを低減するとともに、接触痕の発生をより効果的に抑制することができる。
【0019】
さらに、本発明の一例においては、上記平板状冶具で配線基板を押圧する際の温度を、ソルダーレジスト層のガラス転移温度以上の温度で行うことが好ましい。これによって、上記押圧による配線基板の反りをより効果的に抑制することができる。また、このような温度で押圧した場合においても、本発明の方法を用いることにより、例えば上述した作用効果に起因して、配線基板に対する接触痕の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、導体層と樹脂絶縁層とがそれぞれ少なくとも1層積層されるとともに、最表面にソルダーレジスト層が形成されてなる配線基板を最終製品として提供する際に、その表面に接触痕を形成することなく配線基板の反りを低減し、平坦化することが可能な新規な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態における配線基板の平面図である。
【図2】同じく、実施形態における配線基板の平面図である。
【図3】図1及び2に示す配線基板をI−I線に沿って切った場合の断面の一部を拡大して示す図である。
【図4】図1及び2に示す配線基板をII−II線に沿って切った場合の断面の一部を拡大して示す図である。
【図5】実施形態で使用する平板状冶具の概略構成を示す図である。
【図6】同じく、実施形態で使用する平板状冶具の概略構成を示す図である。
【図7】実施形態における配線基板の製造方法を説明するための工程図である。
【図8】同じく、実施形態における製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0023】
(配線基板)
最初に、本発明の方法に使用する配線基板の構成について説明する。但し、以下に示す配線基板はあくまでも例示であって、導体層と樹脂絶縁層とがそれぞれ少なくとも1層積層され、最表面にソルダーレジスト層が形成されてなるような樹脂製配線基板であれば特に限定されるものではない。
【0024】
図1及び2は、本実施形態における配線基板の平面図であり、図1は、前記配線基板を上側から見た場合に状態を示し、図2は、前記配線基板を下側から見た場合の状態を示している。また、図3は、図1及び2に示す前記配線基板をI−I線に沿って切った場合の断面の一部を拡大して示す図であり、図4は、図1及び2に示す前記配線基板をII−II線に沿って切った場合の断面の一部を拡大して示す図である。
【0025】
図1〜4に示す配線基板1は、耐熱性樹脂板(たとえばビスマレイミド−トリアジン樹脂板)や、繊維強化樹脂板(たとえばガラス繊維強化エポキシ樹脂)等で構成された板状コア2の両表面に、所定のパターンに形成された金属配線7aをなすコア導体層M1,M11(単に導体層ともいう)がCuメッキによりそれぞれ形成されている。これらコア導体層M1,M11は板状コア2の表面の大部分を被覆する面導体パターンとして形成され、電源層または接地層として用いられるものである。
【0026】
他方、板状コア2には、ドリル等により穿設されたスルーホール12が形成され、その内壁面にはコア導体層M1,M11を互いに導通させるスルーホール導体30が形成されている。また、スルーホール12は、エポキシ樹脂等の樹脂製穴埋め材31により充填されている。
【0027】
また、コア導体層M1,M11の上層には、熱硬化性樹脂組成物6にて構成された第1のビア層(ビルドアップ層:絶縁層)V1,V11がそれぞれ形成されている。さらに、その表面にはパターン化された金属配線7bをなす第1の導体層M2,M12がCuメッキによりそれぞれ形成されている。なお、コア導体層M1,M11と第1の導体層M2,M12とは、それぞれビア34により層間接続がなされている。同様に、第1の導体層M2,M12の上層には、熱硬化性樹脂組成物6を用いた第2のビア層(ビルドアップ層:絶縁層)V2,V12がそれぞれ形成されている。
【0028】
第2のビア層V2及びV12上には、それぞれ金属端子パッド10,17を有する第2の導体層M3,M13が形成されている。これら第1の導体層M2,M12と第2の導体層M3,M13とは、それぞれビア34により層間接続がなされている。ビア34は、ビアホール34hとその内周面に設けられたビア導体34sと、底面側にてビア導体34sと導通するように設けられたビアパッド34pと、ビアパッド34pと反対側にてビア導体34hの開口周縁から外向きに張り出すビアランド34lとを有している。
【0029】
以上のように、板状コア2の第1の主面MP1上には、コア導体層M1、第1のビア層V1、第1の導体層M2および第2のビア層V2が順次に積層され、第1の配線積層部L1を形成している。また、板状コア2の第2の主面MP2上においては、コア導体層M11、第1のビア層V11、第1の導体層M12および第2のビア層V12が順次に積層され、第2の配線積層部L2を形成している。そして、第1の主表面CP1上には複数の金属端子パッド10が形成されており、第2の主表面CP2上には、複数の金属端子パッド17が形成されている。
【0030】
なお、金属端子パッド10は、後に形成するはんだバンプを介して図示しないICチップをフリップチップ接続するためのパッド(FCパッド)であり、ICチップ搭載部を構成する。図1に示すように、金属端子パッド10は、配線基板1の略中央部において形成され、矩形状に配列されている。
【0031】
また、金属端子パッド17は、配線基板1をマザーボードやソケット等にピングリッドアレイ(PGA)あるいはボールグリッドアレイ(BGA)により接続するための裏面ランド(PGAパッド、BGAパッド)として利用されるものであって、配線基板1の略中心部を除く外周部に形成され、前記略中央部を囲むようにして矩形状に配列されている。
【0032】
さらに、第1の主表面CP1上には開口部8aを有するソルダーレジスト層8が形成されており、金属端子パッド10は開口部8aを介してソルダーレジスト層8から露出している。また、第2の主表面CP2上にも開口部18aを有するソルダーレジスト層18が形成されており、金属端子パッド17は開口部18aを介してソルダーレジスト層18から露出している。
【0033】
また、開口部8a内には、たとえばSn−Pb、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu等のはんだからなる、はんだバンプ11が金属端子パッド10と電気的に接続するようにして形成されている。さらに、開口部18a内には図示しないはんだボールやピン等が金属端子パッド17と電気的に接続するようにして形成されている。
【0034】
なお、図1〜4から明らかなように、本実施形態における配線基板1は矩形の略板形状を呈しており、その大きさは、例えば約35mm×約35mm×約1mmとすることができる。
【0035】
(配線基板の製造方法)
次に、本発明の配線基板の製造方法について説明する。図5及び図6は、本実施形態で使用する平板状冶具の概略構成を示す図であり、図7及び図8は、本実施形態における製造方法を説明するための工程図である。
【0036】
図5は、本実施形態における平板状冶具の基本構成を示す概略構成図である。図5に示す平板状冶具20は、その中心部において凹部21が形成されており、凹部21を画定するようにして外枠22が設けられている。凹部21の大きさは、後に説明するように、配線基板1のはんだバンプ11によって画定されてなるICチップ搭載部を囲い込むことができるような大きさとし、その深さは、はんだバンプ11の上部が凹部21の底面21Aに接触しないような深さとする。
【0037】
また、外枠22は、以下に説明するように、配線基板1の平坦化操作の際の押圧面となることから、その表面粗さは、配線基板1のソルダーレジスト層の表面粗さに対応して粗化されていることが必要である。
【0038】
図6は、図5に示す平板状冶具の変形例に相当する概略構成図である。図6に示す平板状冶具30は、その中心部において凹部31が形成されており、その四隅において凹部31を画定するような柱状部32が設けられている。凹部31の大きさは、後に説明するように、配線基板1のはんだバンプ11によって画定されてなるICチップ搭載部を囲い込むことができるような大きさとし、その深さ、すなわち、柱状部32の高さは、はんだバンプ11の上部が凹部21の底面21Aに接触しないような高さとする。
【0039】
また、柱状部32は、以下に説明するように、配線基板1の平坦化操作の際の押圧面となることから、その表面粗さは、配線基板1のソルダーレジスト層の表面粗さに対応して粗化されていることが必要である。
【0040】
なお、平板状冶具20及び30は、それぞれアルミニウム、ステンレスなどの金属材料の他、ガラスやセラミック材料から構成することができる。
【0041】
次に、図5に示す平板状冶具を用いた場合の配線基板の製造方法、すなわち配線基板の反りの低減方法について説明する。
【0042】
最初に、図7に示すように、配線基板の外形に沿った凹形状をなす設置部41が設けられた支持台40を準備し、この支持台40の設置部41に図1〜4に示すような配線基板1を設置する。配線基板1は、はんだバンプ11で画定されてなるICチップ搭載部が上面に位置し、ソルダーレジスト層18が下面に位置するようにして配置する。なお、設置部41は、例えば浅溝によって形成することができる。
【0043】
なお、支持台40は、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料の他、ガラスやセラミック材料から構成することができる。
【0044】
次いで、図8に示すように、支持台40の設置部41に配線基板1を配置した後、配線基板1を所定の温度、例えばソルダーレジスト層8のガラス転移点以上の温度である、80℃〜280℃に加熱し、図5に示す平板状冶具20によって配線基板1を押圧する。
【0045】
なお、ソルダーレジスト層8は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、シアネ-ト樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂組成物に、シリカ、アルミナなどの無機フィラーを含んで構成することができる。
【0046】
平板状冶具20の凹部21の大きさは、上述したように配線基板1のICチップ搭載部を囲い込むような大きさであって、その深さもはんだバンプ11の上部が底面21Aに接触しないような深さであるので、平板状冶具20によって配線基板1を押圧する際には、凹部21が開口してなる側の第1の面20Aを下側とし、相対向する第2の面20Bを上側として、上記ICチップ搭載部が凹部21内に位置するようにして行う。
【0047】
また、平板状治具20の、凹部21の外方に位置する外枠22、すなわち押圧面の表面粗さをソルダーレジスト層8の表面粗さに対応して粗化しているので、平板状治具20によって配線基板1を押圧した際においても、外枠22、すなわち押圧面による押圧によってソルダーレジスト層8に接触痕が生じることがない。したがって、平板状冶具20の外枠22が配線基板1の、ICチップ搭載部の外方の領域1Aを押圧し、配線基板1の表面、すなわちソルダーレジスト層8に接触痕を生じることなく、配線基板1の反りを低減して平坦化することができる。
【0048】
また、ICチップ搭載部は押圧されないので、ICチップと配線基板1との電気的接続を行うはんだバンプ11を押しつぶしてしまうことがない。結果として、これらの電気的接続を良好に行うことができる。
【0049】
本実施形態では、平板状冶具20で配線基板1を押圧する際の温度を、上述したように、ソルダーレジスト層のガラス転移温度以上の温度で行うようにしているので、上記押圧による配線基板1の反りをより効果的に抑制することができる。また、このような温度で押圧した場合においても、上述した作用効果に起因して、配線基板1に対する接触痕の発生を抑制することができる。
【0050】
なお、平板状治具20の、凹部21の外方に位置する外枠22、すなわち押圧面の算術平均表面粗さRaを、配線基板1の外方領域1A、すなわち平板状治具20の接触面となるソルダーレジスト層8表面の算術平均表面粗さRaに対して4.00倍以上33.00倍以下とし、押圧面の十点平均表面粗さRzを、ソルダーレジスト層8表面の算術平均表面粗さに対して、2.00倍以上14.00倍以下とすることが好ましい。この場合、平板状冶具20の押圧による接触痕の発生をより効果的に抑制することができる。
【0051】
また、ソルダーレジスト層8表面を、平板状冶具20の押圧面(外枠22)と接触する接触面と、平板状冶具20の押圧面(外枠22)と接触しない非接触面とに区分して、平板状治具20により配線基板1を押圧した後に、接触面の算術平均表面粗さRaと、非接触面の算術平均表面粗さRaとの差が0.03μm以内、接触面の十点平均表面粗さRzと、非接触面の十点平均表面粗さRzの差が0.3μm以内となるよう押圧面(外枠22)が粗化されていることが好ましい。
【0052】
接触面と非接触面との表面粗さの差が上述のような小さい値になるよう平板状冶具20の表面粗さを設定することによって、平板状冶具20を配線基板1に押圧した際の接触痕の発生をより効果的に抑制することができる。
【0053】
上述したような平板状冶具20の表面粗化は、例えば平板状冶具20に対してサンドブラスト法などを施すことによって実現することができる。また、平板状治具の表面粗さには、サンドブラスト法における砥粒の大きさ、処理時間を適宜変更することで調整することができる。
【実施例】
【0054】
実施例及び比較例として、押圧面(外枠22)の表面粗さが異なる平板状治具20を用いて押圧した場合において、接触痕の発生の有無を調べた結果を表1に示す。配線基板には、押圧前におけるソルダーレジスト層8表面の算術平均表面粗さRaが0.10μm、十点平均表面粗さRzが2.42μmであるものを使用した。
【0055】
なお、実施例及び比較例における、平板状治具20の凹部21の外方に位置する押圧面(外枠22)の算術平均表面粗Raと、ソルダーレジスト層8の算術平均表面粗さRaとの比、平板状治具20の凹部21の外方に位置する押圧面(外枠22)の十点平均表面粗さRzと、ソルダーレジスト層8(SR)表面の十点平均表面粗さRzとの比などの諸条件については、表2に示した。表2の表面観察結果では、接触痕が観察されたものをOK、接触根が観察されなかったものについてはNGと表記した。
【0056】
また、表面観察結果における接触痕の発生の有無は、押圧後のソルダーレジスト層8表面を拡大鏡にて10倍の倍率で観察して判定を行った。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
本発明の範囲内である、押圧前におけるソルダーレジスト層表面の算術平均表面粗さRaに対して押圧面の算術平均表面粗さRaが4.00倍以上33.00倍以下、押圧前におけるソルダーレジスト層8表面の十点平均表面粗さRzに対して押圧面の十点平均表面粗さRzが、2.00倍以上14.00倍以下となる平板状治具を用いて押圧した配線基板では、平板状治具と接触するソルダーレジスト層8の接触面と接触しない非接触面との間における表面粗さの差が小さく、特に平板状治具20により配線基板1を押圧した後に、接触面の算術平均表面粗さRaと、非接触面の算術平均表面粗さRaとの差が0.03μm以内、接触面の十点平均表面粗さRzと、非接触面の十点平均表面粗さRzの差が0.3μm以内となり、接触痕が観察されなかった。
【0060】
一方、本発明の範囲外にある平板状治具を用いた場合には、ソルダーレジスト層の接触面と非接触面との間における表面粗さの差が大きく、接触痕が観察された。
【0061】
以上においては、図5に示す平板状部材20を用いて配線基板1を製造する場合について説明したが、図6に示す平板状部材30を用いた場合においても上記同様にして配線基板1を製造することができる。但し、この場合は、図8に示す工程において、平板状部材30の第1の面30Aを下側にし、第1の面30Aと相対向する第2の面30Bを上側とし、平板状部材20の外枠22の代わりに、柱状部32によって配線基板1の外方領域1Aを押圧することになる。
【0062】
以上、本発明を具体例を挙げながら詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0063】
例えば、上記具体例では、単一の凹部21及び31が形成された平板状冶具20及び30を用いて、単一の配線基板1を製造する方法、すなわち反りを低減する方法について述べているが、平板状冶具20及び30が複数連結され、複数の凹部を有するような冶具を用いることによって、複数の配線基板1を一括して製造(反りの低減)することもできる。
【0064】
また、上記具体例においては、コア基板2を有する配線基板1に対して説明したが、本発明の製造方法は、当然にコア基板2を有しない配線基板においても適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 配線基板
8,18 ソルダーレジスト層
11 はんだバンプ
20,30 平板状部材
21,31 凹部
22 外枠
32 柱状部
40 支持台
41 設置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層と樹脂絶縁層とがそれぞれ少なくとも1層積層されるとともに、最表面にソルダーレジスト層が形成されてなる配線基板を、支持台上に配置する工程と、
凹部が形成されてなる平板状の治具により、前記凹部が前記配線基板のICチップ搭載部上に位置し、前記ICチップ搭載部が前記治具と離間した状態で、前記配線基板を、加熱下、前記支持台に対して押圧する工程と、
を備え、
前記治具の、前記凹部の外方に位置する押圧面の表面粗さが前記ソルダーレジスト層の表面粗さに対応して粗化されていることを特徴とする、配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記ソルダーレジスト層表面は、前記治具の前記押圧面と接触する接触面と、前記治具と接触しない非接触面とに区分され、
前記押圧する工程後において、
前記接触面の算術平均表面粗さRaと、前記非接触面の算術平均表面粗さRaとの差が0.03μm以内であり、前記接触面の十点平均表面粗さRzと、前記非接触面の十点平均表面粗さRzの差が0.3μm以内となるように、前記押圧面は粗化されていることを特徴とする、請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記押圧する工程前において、
前記治具の、前記凹部の外方に位置する押圧面の算術平均表面粗さRaは、前記ソルダーレジスト層の算術平均表面粗さRaに対して、4.00倍以上33.00倍以下であり、
前記治具の、前記凹部の外方に位置する押圧面の十点平均表面粗さRzは、前記ソルダーレジスト層の十点平均表面粗さRzに対して、2.00倍以上14.00倍以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記加熱は、前記ソルダーレジスト層のガラス転移温度以上の温度で行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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