説明

配線基板の製造方法

【課題】ワイヤハーネス等との接続が可能な放熱性に優れた配線基板を低コストで容易に製造することができる配線基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属コア22となる金属板に、接続端子31の固定部32を形成する固定部形成工程と、金属板の端子部形成領域をマスキングテープで覆うマスキング工程と、絶縁層23を金属板に重ねて、真空下で加熱・加圧し、金属板に絶縁層23を一体化させる絶縁層積層工程と、端子部形成領域における絶縁層23と導電層24を除去して金属板を露出させる絶縁層除去工程と、露出させた金属板を加工して接続端子31の端子部33を形成する端子部形成工程と、を含む配線基板11の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電気・電子部品が実装される配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の電気・電子部品が実装される配線基板として、金属板の表裏面に絶縁層が設けられ、この絶縁層に導体層が形成された多層構造のメタルコア基板が知られており、このメタルコア基板によれば、金属板によって電気・電子部品の熱が良好に放熱される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
このような配線基板の製造方法としては、金属板の表裏面に対し、銅箔を有する絶縁シートをラミネートして積層させるラミネート成形法が知られている(例えば、特許文献3〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−46022号公報
【特許文献2】特開2002−353584号公報
【特許文献3】特開2001−189536号公報
【特許文献4】特開2009−218305号公報
【特許文献5】特開昭62−179200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイヤハーネス等を接続するために、図16に示すように、配線基板1には、コネクタ2が実装されて後付けされるが、このコネクタ2を実装するには、コネクタ2に設けられた多数の接続ピン3を配線基板1の実装面1aに形成されたスルーホールに挿し込み、導体パターンに半田付けするという煩雑な実装作業を要し、配線基板1の製造コストが嵩んでしまう。また、このような多数の接続ピン3を有するコネクタ2の単価も高まりつつあり、したがって、コネクタ2を実装した配線基板1のさらなるコストアップを招いてしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤハーネス等との接続が可能な放熱性に優れた配線基板を低コストで容易に製造することができる配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る配線基板の製造方法は、下記(1)から(6)のいずれかを特徴としている。
(1) 板状の金属コアの表面及び裏面の少なくとも一方の面に、導電層を有する絶縁層が前記金属コア側と反対側に該導電層を配置させて積層され、前記導電層からなる導体パターンを有する面が各種部品の実装面とされた基板と、一端が前記基板に固定された固定部とされ、他端が前記基板の側縁部から延出する端子部とされた前記金属コアの一部からなる接続端子とを備えた配線基板の製造方法であって、
前記金属コアとなる金属板に、前記接続端子の前記固定部を形成する固定部形成工程と、
前記金属板の前記絶縁層を積層させる面における、前記接続端子の前記端子部の形成箇所を含む端子部形成領域をマスキング材で覆うマスキング工程と、
前記導電層を有する前記絶縁層を前記金属板に重ねて、ラミネート処理を行うことにより前記金属板に前記絶縁層を一体化させる絶縁層積層工程と、
前記端子部形成領域における前記絶縁層と前記導電層を除去して前記金属板を露出させる絶縁層除去工程と、
露出させた前記金属板を加工して前記接続端子の前記端子部を形成する端子部形成工程と、
を含むこと。
(2) 上記(1)の配線基板の製造方法において、前記絶縁層積層工程は、前記ラミネート処理後に、ラミネートされた前記金属板と前記絶縁層を加熱・加圧して前記絶縁層の表面を平坦化させる平坦化処理を含むこと。
(3) 上記(1)または(2)の配線基板の製造方法において、前記マスキング工程後に、前記金属板の前記絶縁層が積層される面を粗面化する粗面化工程を含むこと。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの配線基板の製造方法において、前記マスキング工程では、マスキングテープを前記マスキング材として前記金属板に貼り付け、前記絶縁層除去工程では、前記端子部形成領域の内周に沿って絶縁層を座ぐることにより溝部を形成し、その後、前記マスキングテープを剥がすことにより、前記端子部形成領域における前記絶縁層と前記導電層を除去すること。
(5) 上記(4)の配線基板の製造方法において、前記絶縁層除去工程では、前記端子部形成領域の端子部が突出する端面となる部分の絶縁層を座ぐることにより無貫通溝部を形成するとともに、該無貫通溝部の両端部から配線基板の側方に向けて貫通溝部を形成すること。
(6) 上記(5)の配線基板の製造方法において、前記貫通溝部の一部が、前記マスキングテープ又は前記マスキングテープに積層された絶縁層を残した状態で形成されること。
【0008】
上記(1)の構成の配線基板の製造方法では、別個の高価なコネクタを用いなくてもワイヤハーネス等との接続が可能な接続端子が形成された配線基板を容易に製造することができる。また、ラミネート処理によって金属板に絶縁層を一体化させて積層させるので、積層プレス工法と比較して、仕掛り在庫を保有することなく連続処理が可能であり、また、絶縁層を構成するプリプレグの樹脂のボイドを防止しつつ良好に一体化させて積層させることができ、また、プリプレグの削減も図ることができる。また、接続端子の端子部となる部分をマスキングして保護した状態で絶縁層を積層するので、形成した端子部の表面を平滑に保つことができる。よって、相手側の接続端子と円滑かつ確実に接続することができる。
つまり、ワイヤハーネス等と良好に接続することができ、しかも金属コアとなる金属板の一部を接続端子としているので良好な放熱性が確保された多層構造の配線基板を低コストで容易に製造することができる。
上記(2)の構成の配線基板の製造方法では、電気・電子部品の実装面となる絶縁層の表面を平坦化処理によって平坦化させるので、電気・電子部品を良好に実装することができる高品質な配線基板を製造することができる。
上記(3)の構成の配線基板の製造方法では、金属板の絶縁層が積層される面を粗面化するので、金属板と絶縁層との密着力を大幅に向上させることができる。
上記(4)の構成の配線基板の製造方法では、絶縁層を座ぐって溝部を形成することにより、端子部形成領域における絶縁層と導電層を容易に除去することができる。
上記(5)の構成の配線基板の製造方法では、貫通溝部を設けたのでより容易に端子部形成領域上の絶縁層と導電層を除去することができる。
上記(6)の構成の配線基板の製造方法では、貫通溝部において、マスキングテープ又はマスキングテープに積層された絶縁層が残されているので、当該部分をきっかけとして端子部形成領域上の絶縁層と導電層を極めて容易に剥離除去することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワイヤハーネス等との接続が可能な放熱性に優れた配線基板を低コストで容易に製造することができる配線基板の製造方法を提供できる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る配線基板の製造方法によって製造された配線基板の斜視図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する図であって、(a)はワークの平面図、(b)はワークの拡大平面図である。
【図4】実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する図であって、(a)はワークの平面図、(b)はワークの拡大平面図である。
【図5】実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する図であって、(a)はワークの平面図、(b)はワークの拡大平面図である。
【図6】実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する製造途中の配線基板の平面図である。
【図7】実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する製造途中の配線基板の平面図である。
【図8】実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する製造途中の配線基板の平面図である。
【図9】実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する製造途中の配線基板の平面図である。
【図10】実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する図であって、(a)から(c)はワークの一部の断面図である。
【図11】実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する図であって、(a)から(c)は配線基板の一部の断面図である。
【図12】ラミネート成形を行うラミネート成形装置の概略側面図である。
【図13】別の実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する図であって、(a)はワークの平面図、(b)はワークの拡大平面図である。
【図14】更に別の実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する図であって、(a)、(b)は配線基板の長手方向から見たワークの一部の断面図である。
【図15】接続端子を備えた配線基板の製造方法の更に別の実施形態を示す製造途中の配線基板の一部の平面図である。
【図16】配線基板の実装例を示す配線基板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は実施形態に係る配線基板の製造方法によって製造された配線基板の斜視図、図2は図1のA−A矢視断面図である。
【0013】
図1及び図2に示したように、本実施形態の配線基板の製造方法によって製造される配線基板11は、基板21と、この基板21に設けられた複数の接続端子31とを備えている。
【0014】
基板21は、厚さ方向の中央に、銅または銅合金などから形成された板状の金属コア22を有し、この金属コア22の表裏面に、熱硬化性及び絶縁性を有する合成樹脂などからなる絶縁層23がそれぞれ2層ずつ積層されている。
【0015】
それぞれの絶縁層23の表面には、導体パターンを形成する銅箔(導電層)24が形成されており、基板21における外部に露出した絶縁層23の外面は、電気・電子部品が実装される実装面21aとされている。また、各絶縁層23の回路パターンを形成する銅箔24は、内周側がメッキ処理されたスルーホール25によって導通されて電気回路が形成されている。また、回路パターンを形成する銅箔24は、スルーホール25によって金属コア22にも導通されている。尚、この金属コア22を含めて電気回路を形成しても良い。
【0016】
このように、この基板21は、金属コア22が設けられて放熱性及び均熱性に優れた金属コア基板である。しかも、この基板21は、金属コア22の表裏面に、複数層の絶縁層23が積層されて金属コア22を含めて5層構造とされた多層基板である。そして、この多層基板からなる基板21は、その表裏面の実装面21aに各種の電気・電子部品が実装される。この金属コア基板である基板21において生じた電気・電子部品等の熱は、金属コア22によって円滑に均熱されて外部に放熱される。
【0017】
基板21には、対向する側縁部21bに、それぞれ凹部26が形成されており、これらの凹部26を構成する長手方向の底辺部から複数の接続端子31が整列状態で延出されている。これらの接続端子31は、例えば、基板21に形成されたスルーホール25によって回路パターンを形成する銅箔24と導通される。
【0018】
接続端子31は、金属コア22の一部から形成されたもので、絶縁層23によって挟持されて固定されている。
【0019】
そして、この接続端子31は、絶縁層23によって挟持されて固定された一端(基端部)が固定部32とされ、基板21の側縁部21bにて外部に延出されて露出された他端(先端部)が端子部33とされている。
【0020】
上記構成の配線基板11では、例えば、接続端子31を他の配線基板へ接続したり、あるいは、接続端子31に、コネクタのハウジング等の部品を装着することができる。
【0021】
この配線基板11によれば、接続端子31が、基板21の側縁部21bから延出されているので、実装面21aにコネクタの接続ピンを半田付けして接続するような煩雑な実装作業を不要とすることができ、製造コストを極力抑えることができる。また、多数の接続ピンを有する高価なコネクタを不要とすることができ、コスト低減を図ることができる。
【0022】
次に、上記構造の配線基板11を製造する本実施形態に係る配線基板の製造方法について、図3から図11によって説明する。
【0023】
図3から図5は実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する図であって、(a)はワークの平面図、(b)はワークの拡大平面図である。図6から図9は実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する製造途中の配線基板の平面図である。そして、図10は実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する図であって、(a)から(c)はワークの一部の断面図、図11は実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する図であって、(a)から(c)は配線基板の一部の断面図である。
【0024】
(固定部形成工程)
図3(a),(b)及び図10(a)に示したように、複数枚(例えば、12枚)の金属コア22を形成可能な金属板41を用意し、この金属板41にプレス加工を施すことによって、接続端子31の固定部32及びスルーホール25等が通される孔部42を形成する。なお、固定部32は、櫛形形状の開口部43を金属板41の側縁部と略平行に配置して形成することによって形成される。
【0025】
(マスキング工程)
次に、図4(a),(b)及び図10(b)に示したように、金属板41の絶縁層23を積層させる表裏面における、接続端子31の端子部33の形成箇所を含む端子部形成領域にマスキング材44を貼り付ける。つまり、固定部32の端部から開口部43の反対側をマスキング材44で覆う。マスキング材44としては耐熱性を有する樹脂テープなどを用いることができ、例えば、ポリイミドやPET(ポリエチレンテレフタレート)からなるマスキングテープ44を用いることができる。
【0026】
(粗面化工程)
マスキングテープ44を貼り付けて端子部形成領域をマスキングしたら、絶縁層23を積層させる金属板41の表裏面を、例えば、サンドブラストや薬剤によって粗面化する。このとき、端子部形成領域は、マスキングテープ44によってマスキングされているので、粗面化されることはない。
【0027】
(絶縁層積層工程)
次に、金属板41の表裏面に導電層(銅箔)24を有する絶縁層23をラミネート成形法によって積層させる。
【0028】
ここで、ラミネート成形法によって絶縁層23を積層させる場合について説明する。
図12に示すものは、ラミネート成形を行うラミネート成形装置である。
【0029】
図12に示したように、ラミネート成形装置は、搬送用PET上フィルム巻出しロール51から巻きだされた搬送用PET上フィルム(フィルム)50を搬送用PET上フィルム巻取りロール52で巻取る上部搬送系と、搬送用PET下フィルム巻出しロール61から巻出された搬送用PET下フィルム(フィルム)60を搬送用PET下フィルム巻取りロール62で巻取る下部搬送系と、上部搬送系と下部搬送系の間に挟まれて搬送される製品を最初に加熱・加圧して積層させるラミネート処理を行う第1ステージ70と、製品の表裏面を加熱・加圧して表裏面を平坦化させる平坦化処理を行う第2ステージ80とから構成されている。
【0030】
上記のラミネート成形装置では、以下の動作によって金属板41の表裏面に絶縁層23が積層される。
【0031】
まず、銅箔24を有する絶縁層23を該銅箔24が金属板41側と反対側に位置するように金属板41の上下に2層ずつ積層したワークWを、搬送用PET下フィルム60の上流側に載置し、下流側に向けて搬送する。途中でワークWの上に搬送用PET上フィルム50が被覆され、ワークWは、搬送用PET上フィルム50と搬送用PET下フィルム60の間に挟まれて第1ステージ70に搬送される。
【0032】
第1ステージ70では、ワークWに対して真空下で加熱・加圧して金属板41に絶縁層23をラミネートするとともに、重ね合わされた絶縁層23同士もラミネートするラミネート処理が施される。具体的には、真空チャンバを密閉して内部を減圧し、ゴムのダイヤフラムからなる可動盤を固定盤に対して近接させることにより熱盤を圧締して熱盤間の絶縁層23のプリプレグ及び銅箔24を加熱・加圧して積層する。これにより、図5(a),(b)に示したように、金属板41には、その表裏面を覆うように、絶縁層23及び導電層(銅箔)24が一体化されて密着され、これにより、ワークWは、図10(c)に示したように、金属板41の表裏面に、導電層24を有する2層の絶縁層23がそれぞれ一体化されて積層された5層構造となる。
【0033】
なお、絶縁層23のプリプレグとしては、例えば、ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させたものが用いられる。そして、このプリプレグからなる絶縁層23は、ラミネート処理において、その熱硬化性樹脂が加熱されて溶融されることにより、金属板41の固定部32が形成された開口部43及びスルーホール25等となる孔部42へボイドや隙間なく入り込む。また、金属板41には、マスキングテープ44の貼り付け箇所以外が粗面化されているので、その表裏面に対して絶縁層23の樹脂が強固に密着する。
【0034】
第1ステージ70において、加熱及び加圧の条件としては、絶縁層23に用いる熱硬化性樹脂を十分に溶融し、固化できれば特に限定されない。
【0035】
尚、それぞれの絶縁層23に設けられた銅箔24としては、予めエッチング処理によって回路パターンが形成されたものが用いることが好ましい。外面側の絶縁層23に設けられた銅箔24は、後工程でエッチング処理して回路パターンを形成しても良い。
【0036】
第1ステージ70でラミネート処理されたワークWは、第1ステージ70から搬出されて第2ステージ80へ搬入される。
【0037】
第2ステージ80では、真空中で加熱・加圧されたことで回路パターンを形成する銅箔24によって表裏面に凹凸が生じたワークWに対して、加熱・加圧してワークWの表裏面を平滑化する平滑化処理が施される。具体的には、第2ステージ80を構成する平坦化プレスによって所定の温度でワークWを加圧し、ワークWの表裏面を平坦に成形する。平坦化プレスは、固定的に配設される上盤と、上盤に対向して可動的に配設されるゴムのダイヤフラムからなる下盤と、下盤を上下移動させるとともに、上盤と協働して圧締させる駆動手段とからなり、ワークWは、加熱手段によって加熱されつつ駆動手段によって下盤が移動されて圧締されて表裏面の平坦化の2次加工が行われる。
【0038】
第2ステージ80において、加熱及び加圧の条件としては、ワークWの表裏面の凹凸をならして平坦に形成できれば特に限定されない。
【0039】
第2ステージ80で表裏面が平坦化されたワークWは、搬送用PET上フィルム50と搬送用PET下フィルム60の間に挟まれたまま第2ステージから搬出される。
【0040】
搬送に使われたPETフィルムは、下流でそれぞれ搬送用PET上フィルム巻取りロール52と搬送用PET下フィルム巻取りロール62に巻き取られ、その際に、ワークWは外部に送り出される。
【0041】
(切断分離工程)
上記のようにして金属板41の表裏面に、導電層24を有する絶縁層23を2層ずつ一体化して5層構造としたら、この5層構造のワークWを切断して分離し、図6に示したように、金属板41からなる金属コア22を有する5層構造の複数の配線基板11とする。
【0042】
そして、図7に示したように、所定の箇所に、ドリル等によってスルーホール25を形成して内周側をメッキすることにより、銅箔24、金属コア22及び接続端子31を必要に応じて導通させて電気回路を形成させる。
【0043】
(絶縁層除去工程)
次に、配線基板11の端子部形成領域における絶縁層23と導電層24を除去し、金属コア22を露出させる。
【0044】
具体的には、図7及び図11(a)に示したように、まず、配線基板11の表裏から絶縁層23と導電層24を、端子部形成領域の端子部が突出する端面となる部分をリーマやフライスによって座ぐることにより無貫通溝部46を形成する。なお、この座ぐり加工によって形成する無貫通溝部46は、マスキングテープ44を除去して金属コア22と接するか、または僅かに削る程度の深さとする。続いて、無貫通溝部46の両端を該無貫通溝部46と略直行する方向に配線基板11の側方へ向けてルータを用いて切削加工することにより貫通溝部47を形成する。
【0045】
そして、無貫通溝部46側から、マスキングテープ44ごと端子部形成領域上の絶縁層23と導電層24を剥すと、図8及び図11(b)に示したように、端子部形成領域における金属コア22だけを露出させることができる。
【0046】
(端子部形成工程)
図9及び図11(c)に示したように、露出させた端子部形成領域の金属コア22を、プレス加工またはルータを用いた切削加工等によって加工して接続端子31の固定部32に対応する端子部33を形成する。その後、形成した接続端子31の端子部33には、錫メッキ等のメッキ処理を施す。
【0047】
上記の工程によって、表裏面が実装面21aとされ、側縁部21bから接続端子31が延出された5層構造の配線基板11を容易に製造することができる。
【0048】
以上、説明したように、上記実施形態に係る配線基板の製造方法によれば、別個の高価なコネクタを用いなくてもワイヤハーネス等との接続が可能な接続端子31が延出された配線基板11を容易に製造することができる。また、ラミネート処理によって金属板41に絶縁層23を一体化させて積層させるので、積層プレス工法と比較して、仕掛り在庫を保有することなく連続処理が可能であり、また、絶縁層23を構成するプリプレグの樹脂のボイドを防止しつつ良好に一体化させて積層させることができ、また、プリプレグの削減も図ることができる。また、接続端子31の端子部33となる部分をマスキングして保護した状態で絶縁層23を積層するので、形成した端子部33の表面を平滑に保つことができる。よって、相手側の接続端子と円滑かつ確実に接続することができる。
【0049】
つまり、ワイヤハーネス等との接続ができ、しかも金属コア22によって良好な放熱性が確保された配線基板11を低コストで容易に製造することができる。
【0050】
また、電気・電子部品の実装面21aとなる最外層の絶縁層23の表面を平坦化処理によって平坦化させるので、電気・電子部品を良好に実装することができる高品質な配線基板11を製造することができる。
【0051】
しかも、金属板41の絶縁層23が積層される面を粗面化するので、金属板41と絶縁層23との密着力を大幅に向上させることができる。
【0052】
また、絶縁層23を座ぐって無貫通溝部46を形成することにより、端子部形成領域における絶縁層23と導電層24をマスキングテープ44とともに容易に除去することができる。
【0053】
さらには、銅箔24(導電層24)を有する複数の絶縁層23を金属板41の表裏の両面に積層させて多層化させることにより、基板21の面積を抑えつつ複雑な回路設計に対応可能な配線基板11とすることができる。
【0054】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0055】
例えば、絶縁層除去工程では、端子部形成領域上の絶縁層23と導電層24が除去されれば良く、該端子部形成領域の内周に沿って絶縁層23を座ぐることにより無貫通溝部を形成し、その後にマスキングテープ44を剥すことにより除去することもできる。
【0056】
例えば、上記実施形態では絶縁層積層工程の後にワークWから個々の配線基板11に分ける切断分離工程を設けたが、図13(a),(b)に示すように、ワークWの状態で端子部形成領域の端子部が突出する端面となる部分を座ぐって無貫通溝部46を形成し、その後、ルータ加工により配線基板11を切断すると共に、端子部形成領域における貫通溝部47を形成しても良い。
【0057】
また、本発明において、配線基板11にスルーホール25を形成する前に端子部形成工程を設けてもよい。
【0058】
また、本発明において、絶縁層除去工程において、貫通溝部47を形成する際にルータ加工の深さを調節して、図14(a)に示すように、マスキングテープ44の端部44aを残した状態や、図14(b)に示すように、マスキングテープ44に積層された絶縁層23の端部23aを残した状態で、貫通溝部47を形成しても良い。マスキングテープ44の端部44aを残した状態のとき、該マスキングテープ44が金属コア22から突出しているので、該マスキングテープ44をきっかけとして極めて容易に絶縁層23と導電層24を除去することができる。また、絶縁層23の端部23aを残した状態のとき、マスキングテープ44と該マスキングテープ44に積層された絶縁層23は互いに密着しているため、この絶縁層23をきっかけとして剥すことによりマスキングテープ44ごと絶縁層23と導電層24を除去することができる。
尚、金属コア22の両面に絶縁層23と導電層24が積層されている場合は、端子部形成領域の一方の貫通溝部47を表面から切削加工し、他方の貫通溝部47は裏面から切削加工して、マスキングテープ44や絶縁層23の端部23a,44aを残した部分を形成すれば良い。
【0059】
また、図15は、接続端子31を備えた配線基板11を製造する方法の更に別の実施形態を示し、この実施形態では、金属コア22の端子形成領域に、予め作製した接続端子31を配列させてテープ48等によって保持し、その後、接続端子31を保持した金属コア22の表裏面に、接続端子31の固定部32にラップさせるように絶縁層23をラミネートして積層する。これにより、基板21の側縁部21bから接続端子31が延在された配線基板11を製造することができる。
【0060】
本発明の実施形態では、金属コア22を含めた5層構造の配線基板11について説明したが、その構造は特に限定されず、2〜4層、又は6層以上の構造とすることもできる。
【符号の説明】
【0061】
11 配線基板
21 基板
21a 実装面
21b 側縁部
22 金属コア
23 絶縁層
24 銅箔(導電層)
31 接続端子
32 固定部
33 端子部
44 マスキングテープ(マスキング材)
46 無貫通溝部
47 貫通溝部
50 搬送用PET上フィルム(フィルム)
60 搬送用PET下フィルム(フィルム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の金属コアの表面及び裏面の少なくとも一方の面に、導電層を有する絶縁層が前記金属コア側と反対側に該導電層を配置させて積層され、前記導電層からなる導体パターンを有する面が各種部品の実装面とされた基板と、一端が前記基板に固定された固定部とされ、他端が前記基板の側縁部から延出する端子部とされた前記金属コアの一部からなる接続端子とを備えた配線基板の製造方法であって、
前記金属コアとなる金属板に、前記接続端子の前記固定部を形成する固定部形成工程と、
前記金属板の前記絶縁層を積層させる面における、前記接続端子の前記端子部の形成箇所を含む端子部形成領域をマスキング材で覆うマスキング工程と、
前記導電層を有する前記絶縁層を前記金属板に重ねて、ラミネート処理を行うことにより前記金属板に前記絶縁層を一体化させる絶縁層積層工程と、
前記端子部形成領域における前記絶縁層と前記導電層を除去して前記金属板を露出させる絶縁層除去工程と、
露出させた前記金属板を加工して前記接続端子の前記端子部を形成する端子部形成工程と、
を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層積層工程は、前記ラミネート処理後に、ラミネートされた前記金属板と前記絶縁層を加熱・加圧して前記絶縁層の表面を平坦化させる平坦化処理を含むことを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記マスキング工程後に、前記金属板の前記絶縁層が積層される面を粗面化する粗面化工程を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記マスキング工程では、マスキングテープを前記マスキング材として前記金属板に貼り付け、
前記絶縁層除去工程では、前記端子部形成領域の内周に沿って絶縁層を座ぐることにより溝部を形成し、その後、前記マスキングテープを剥がすことにより、前記端子部形成領域における前記絶縁層と前記導電層を除去することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁層除去工程では、前記端子部形成領域の端子部が突出する端面となる部分の絶縁層を座ぐることにより無貫通溝部を形成するとともに、該無貫通溝部の両端部から配線基板の側方に向けて貫通溝部を形成することと特徴とする請求項4に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記貫通溝部の一部が、前記マスキングテープ又は前記マスキングテープに積層された絶縁層を残した状態で形成されることを特徴とする請求項5に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−94597(P2012−94597A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238773(P2010−238773)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】