説明

配線基板及びその製造方法

【課題】半導体チップなどの電子部品が実装される配線基板の製造方法において、狭ピッチの配線層を信頼性よく形成すること。
【解決手段】第1配線層20の上に、絶縁樹脂層30を介してニッケル・銅合金層42が形成された積層体を形成する工程と、ニッケル・銅合金層42及び絶縁樹脂層30に、第1配線層20に到達するビアホールVHを形成する工程と、ビアホールVH内をデスミア処理する工程と、ニッケル・銅合金層42の上及びビアホールVHの内面にシード層44を形成する工程と、ビアホールVHを含む部分に開口部32aが設けられためっきレジスト32を形成する工程と、電解めっきによりめっきレジスト32の開口部32aに金属めっき層46を形成する工程と、めっきレジスト32を除去する工程と、金属めっき層46をマスクにしてシード層44及びニッケル・銅合金層42をエッチングして第2配線層40を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体チップなどの電子部品が実装される配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップなどの電子部品が実装される配線基板がある。そのような配線基板の一例では、コア基板の片面又は両面にセミアディティブ法などによってビルドアップ配線が形成される。
【0003】
近年では、半導体チップなどの電子部品の高性能化に伴って、配線基板の配線層のさらなる狭ピッチ化が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−87931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セミアディティブ法による配線形成では、絶縁樹脂層の表面粗さが大きいほどその上に形成される配線層の密着性はよくなるが、絶縁樹脂層の凹凸は微細な配線層を形成する際の妨げになる。絶縁樹脂層の表面に凹凸が生じていると、シード層除去時の残渣による配線間の電気ショートが発生しやすい。
【0006】
半導体チップなどの電子部品が実装される配線基板及びその製造方法において、狭ピッチの配線層を信頼性よく形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点によれば、第1配線層の上に、絶縁樹脂層を介してニッケル・銅合金層が形成された積層体を形成する工程と、レーザによって前記ニッケル・銅合金層及び前記絶縁樹脂層を加工することにより、前記第1配線層に到達するビアホールを形成する工程と、前記ビアホール内をデスミア処理する工程と、前記ニッケル・銅合金層の上及び前記ビアホールの内面にシード層を形成する工程と、前記ビアホールを含む部分に開口部が設けられためっきレジストを形成する工程と、前記シード層をめっき給電経路に利用する電解めっきにより、前記ビアホール及び前記めっきレジストの開口部に金属めっき層を形成する工程と、前記めっきレジストを除去する工程と、前記金属めっき層をマスクにして前記シード層及び前記ニッケル・銅合金層をエッチングすることにより、前記ビアホールを介して前記第1配線層に接続される第2配線層を前記絶縁樹脂層の上に形成する工程とを有する配線基板の製造方法が提供される。
【0008】
また、その開示の他の観点によれば、第1配線層と、前記第1配線層の上に形成された絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層に形成され、前記第1配線層に到達するビアホールと、前記ビアホールを除く部分に配置されて前記ビアホールの外周から外側の前記絶縁樹脂層の上に形成されたニッケル・銅合金層と、前記ビアホールの内面から前記ニッケル・銅合金層の上に延在するシード層と、前記シード層の上に前記ビアホールに充填された状態で形成された金属めっき層とを含む第2配線層とを有し、前記ニッケル・銅合金層は前記絶縁樹脂層の上に所定のパターンで形成されている配線基板が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以下の開示によれば、ニッケル・銅合金層は、ビアホール内をデスミア処理する際に絶縁樹脂層の表面がエッチングされて凹凸が発生することを防止する保護層として機能すると共に、平滑な絶縁樹脂層に配線層を密着性よく形成するための密着層として機能する。
【0010】
これにより、セミアディティブ法により、平滑な絶縁樹脂層の上に密着性のよい状態でビアホールを介して第1配線層に接続される狭ピッチの第2配線層を歩留りよく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)〜(d)は関連技術の配線基板の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図2】図2(a)〜(d)は関連技術の配線基板の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図3】図3(a)〜(c)は実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図4】図4(a)〜(c)は実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図5】図5(a)〜(c)は実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図6】図6は実施形態の配線基板を示す断面図である
【図7】図7は実施形態の配線基板に半導体チップが実装された様子を示す断面図である。
【図8】図8はNi・Cu合金層におけるピール強度のNi含有率依存性を示すものである。
【図9】図9はNi・Cu合金層におけるエッチングレートのNi含有率依存性を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態の説明の前に、基礎となる関連技術(予備的事項)について説明する。
【0014】
関連技術の配線基板の製造方法では、図1(a)に示すように、まず、コア基板100の上に銅からなる第1配線層200を形成する。次いで、図1(b)に示すように、コア基板100の上に第1配線層200を被覆する絶縁樹脂層300を形成する。
【0015】
続いて、図1(c)に示すように、絶縁樹脂層300をレーザで加工することにより、第1配線層200の接続部に到達するビアホールVHを形成する。
【0016】
さらに、図1(d)に示すように、ビアホールVH内を過マンガン酸法などによってデスミア処理を行う。これにより、ビアホールVH内に残留する樹脂スミアなどが除去されてビアホールVH内がクリーニングされる。デスミア処理によって絶縁樹脂層300の表面が同時にエッチングされて粗化面Aとなる。絶縁樹脂層300の粗化面Aの表面粗さ(Ra)は300nm以上になる。
【0017】
次いで、図2(a)に示すように、硫酸系溶液によりビアホールVH内に露出する第1配線層200の接続部(銅)をその表面から1μm程度の深さまでエッチングする。これにより、ビアホールVHの底部の第1配線層200に凹部200aが形成される。
【0018】
続いて、図2(b)に示すように、無電解めっきにより、絶縁樹脂層300の上及びビアホールVHの内面に銅からなるシード層420を形成する。次いで、図2(c)に示すように、第2配線層が配置される部分に開口部320aが設けられためっきレジスト320をシード層420の上に形成する。さらに、シード層420をめっき給電経路に利用する電解めっきによりめっきレジスト320の開口部320aに銅からなる金属めっき層440を形成する。
【0019】
次いで、図2(d)に示すように、めっきレジスト320を除去した後に、金属めっき層440をマスクにしてシード層420をエッチングする。これにより、シード層420及び金属めっき層440から形成される第2配線層400が絶縁樹脂層300の上に得られる。第2配線層400はビアホールVH(ビア導体)を介して第1配線層200の接続部に電気的に接続される。
【0020】
このとき、図2(d)の部分拡大図に示すように、絶縁樹脂層300の表面が粗化面Aとなって比較的大きな凹凸が生じていることから、シード層420をエッチングする際に粗化面Aにエッチング残渣Rが発生しやすく、配線間の電気ショートを招きやすい。
【0021】
また、シード層420のエッチング残渣Rを完全に除去するためにオーバーエッチング量を増やすと、特に微細パターンの場合はサイドエッチングによってパターン飛びが生じてパターンが消失することもある。
【0022】
さらには、絶縁樹脂層300の粗化面A(凹凸)上に形成されたシード層420の上にめっきレジスト320をフォトリソグラフィで形成するので、下地の凹凸の影響によって微細配線用のめっきレジスト320を高精度で形成することが困難になる。
【0023】
以下に説明する実施形態では前述した不具合を解消することができる。
【0024】
(実施の形態)
図3〜図5は実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図、図6は実施形態の配線基板を示す断面図である。
【0025】
実施形態の配線基板の製造方法では、図3(a)に示すように、まず、両面側に第1配線層20がそれぞれ形成されたコア基板10を用意する。コア基板10には厚み方向に貫通するスルーホールTHが設けられており、スルーホールTH内に貫通電極12が充填されている。両面側の第1配線層20は貫通電極12を介して相互接続されている。上面側の第1配線層20にはその接続パッドPが示されている。
【0026】
あるいは、コア基板10の両面側の第1配線層20がスルーホールTHの内壁に形成されたスルーホールめっき層によって相互接続され、スルーホールTH内の孔に樹脂が充填されていてもよい。
【0027】
コア基板10はガラスエポキシ樹脂などの絶縁材料やシリコンなどから形成される、コア基板10としてシリコン基板を使用する場合は、コア基板10の両面側及びスルーホールTHの内面にシリコン酸化層などの絶縁層が形成される。
【0028】
コア基板10の両面側に第1配線層20に接続されるビルドアップ配線がそれぞれ形成されるが、本実施形態ではコア基板10の上面側のみにビルドアップ配線を形成する。
【0029】
次いで、図3(b)に示すように、コア基板10の上にエポキシやポリイミドなどの樹脂フィルムを貼付することにより、第1配線層20を被覆する絶縁樹脂層30を形成する。
【0030】
続いて、図3(c)の上図に示すように、Ni−Cuコンポジットターゲットを用いるスパッタ法により、絶縁樹脂層30の上にニッケル(Ni)・銅(Cu)合金層42を形成する。Ni・Cu合金層42の厚みは200乃至1000nm(好適には500nm程度)に設定される。
【0031】
後述するように、Ni・Cu合金層42は、ビアホール内をデスミア処理する際に絶縁樹脂層30の表面がエッチングされて凹凸が発生することを防止する保護層として機能すると共に、平滑な絶縁樹脂層30に配線層を密着性よく形成するための密着層として機能する。
【0032】
従って、絶縁樹脂層30の表面はデスミア処理されないので、絶縁樹脂層30の表面粗さ(Ra)は10乃至200nmであり、平滑な状態が維持される。
【0033】
図8には、絶縁樹脂層30の上にNi・Cu合金層42をスパッタ法で形成したときのピール強度のNi含有率の依存性が示されている。Niを含有しないCu層(Ni含有率:0wt%)では、ピール強度が0.08kgf/cm程度であり、絶縁樹脂層30との十分な密着性が得られない。
【0034】
しかしながら、Cu層にNiを含有させていくと、Ni含有率:18wt%程度でピール強度が0.32kgf/cm程度に上昇する。さらに、Ni含有率の範囲が20乃至100wt%において、ピール強度が0.5乃至0.65kgf/cmに上昇し、Cu層にNiを含有させることにより絶縁樹脂層30との十分な密着性が得られることがわかる。
【0035】
以上のように、表面が平滑な絶縁樹脂層30の上にNiを含有しないCu層をスパッタ法によって形成すると十分な密着性は得られないが、Cu層にNiを含有させることにより、十分な密着性が得られるようになる。
【0036】
なお、スパッタ法の代わりに蒸着法によって絶縁樹脂層30の上にNi・Cu合金層42を形成する場合も同様に絶縁樹脂層30との十分な密着性が得られる。
【0037】
あるいは、図3(c)の下図に示すように、樹脂フィルム30aの上に予めNi・Cu合金層42をスパッタ法又は蒸着法で形成してNi・Cu合金層付きフィルムFとし、Ni・Cu合金層付きフィルムFの樹脂フィルム30aの面をコア基板10の上に貼付してもよい。この場合においても、図3(c)の上図と同一の構造体が得られる。
【0038】
このように、第1配線層20の上に、絶縁樹脂層30を介してNi・Cu合金層42が形成された積層体が形成されるようにすればよい。
【0039】
次いで、図4(a)に示すように、CO2レーザによってNi・Cu合金層42及び絶縁樹脂層30を深さ方向に加工することにより、第1配線層20の接続パッドPに到達するビアホールVHを形成する。
【0040】
Ni・Cu合金層42はCu層に比べてレーザで加工しやすい特性を有し、厚みが薄いほどレーザでの加工が容易になる。スパッタ法や蒸着法で形成されるNi・Cu合金層42は1000nm以下の薄膜に設定できるため、レーザでの加工性がよくなり、生産性や歩留りの向上を図ることができる。
【0041】
レーザ加工を行う際には、できるだけ保護層としてのNi・Cu合金層42を薄く形成する必要がある。これに加えて、後述するビアホール内の第1配線層20をエッチングする際にNi・Cu合金層42(保護層)が消失しないことが必要である。
【0042】
後述するように、Ni・Cu合金層42(保護層)は銅に比べてエッチングレートが低いため、第1配線層20をエッチングする際に生じる凹部の深さより薄く形成することが可能になる。
【0043】
なお、本実施形態と違って、保護層としてNi・Cu合金層42ではなく第1配線層20と同一材料から形成する場合は、第1配線層20をエッチングした後に保護層として残すためには第1配線層20の凹部の深さより厚く形成する必要があり、レーザ加工を行う際に問題が生じる可能性がある。
【0044】
続いて、図4(b)に示すように、ビアホールVH内を過マンガン酸法などのウェットプロセスによってデスミア処理を行う。これにより、ビアホールVH内に残留する樹脂スミアなどが除去されてビアホールVH内がクリーニングされる。
【0045】
このとき、過マンガン酸法などのデスミア処理ではNi・Cu合金層42はほとんどエッチングされず、絶縁樹脂層30がNi・Cu合金層42で保護されるので、デスミア処理によって絶縁樹脂層30の表面が粗化されることはない。従って、絶縁樹脂層30の表面は平滑な状態で維持される(表面粗さ(Ra):10乃至200nm)。
【0046】
デスミア処理として過マンガン酸法などのウェットプロセスを例示したが、CF4/O2系などのフッ素原子を含むガスのプラズマ(ドライプロセス)によってデスミア処理を行ってもよい。ドライプロセスによるデスミア処理においても、Ni・Cu合金層42はほとんどエッチングされず、絶縁樹脂層30はNi・Cu合金層42で保護されるので、絶縁樹脂層30の表面が粗化されることはない。
【0047】
次いで、図4(c)に示すように、ビアホールVHの底部の導通を確保するため、ビアホールVH内に露出する接続パッドP(Cu)の表面を硫酸(H2SO4)と過酸化水素水(H22)との混合溶液(以下、硫酸過水という)によってエッチングして凹部20aを形成する。このとき、接続パッドPが深さ方向に1000nm程度エッチングされる条件に設定されて接続パッドPの表面の酸化銅が除去される。
【0048】
硫酸過水でのNi・Cu合金層42のエッチングレートはCu層のエッチングレートの3分の1程度に設定することができる。従って、上記したように接続パッドP(Cu)を1000nmの厚み分だけエッチングする場合は、Ni・Cu合金層42の厚みを500nmに設定するとき、Ni・Cu合金層42が330nm程度エッチングされて170nm程度の厚みで最終的に残される。
【0049】
このように、本実施形態では、前述した図3(c)の工程で形成するNi・Cu合金層42の厚みは、ビアホールVH内の接続パッドP(第1配線層20)に形成される凹部20aの深さより薄く設定することができる。
【0050】
図9には、Ni・Cu合金層の硫酸過水でのエッチングレートにおけるNi含有率の依存性が示されている。Niを含有しないCu層(Ni含有率:0wt%)では、硫酸過水でのエッチングレートは300nm/min程度である。
【0051】
これに対して、Cu層にNiを含有させていくと、エッチングレートが下がっていくことが分かる。Ni含有率:15wt%程度では180nm/min程度まで下がり、Ni含有率:35wt%程度では110nm/min程度(Cu層のエッチングレートの37%程度)まで下がる。さらにNi含有率を上げるとNi・Cu合金層のエッチングレートはCu層のエッチングレートの3分の1程度になる。
【0052】
接続パッドP(Cu)を硫酸過水でエッチングする際に、Ni・Cu合金層42が絶縁樹脂層30の上に残るようにその厚みを設定することにより、絶縁樹脂層30とNi・Cu合金層42との密着性のよい界面が確保される。
【0053】
このように、Ni・Cu合金層42は硫酸過水でのエッチングレートがCu層のエッチングレートより低い特性を有し、Ni含有率を調整することによってエッチングレートを微調整することができる。
【0054】
これにより、前述したように接続パッドP(Cu)をエッチングする際にNi・Cu合金層42を残すことできる共に、後述するようにシード層(Cu)をエッチングする際にNi・Cu合金層42を同時にエッチングすることができる。
【0055】
このような観点からNi・Cu合金層42のNi含有率は15乃至75wt%、好適には20乃至50wt%に設定される。これにより、硫酸過水でのNi・Cu合金層42のエッチングレートはCu層のエッチングレートより低く設定されつつ、実用レベルでエッチングできる程度に設定される。
【0056】
なお、ビアホールVHの底部の導通が問題にならない場合は、ビアホールVH内の接続パッドPをエッチングする工程を省略してもよい。
【0057】
次いで、図5(a)に示すように、Ni・Cu合金層42の上及びビアホールVHの内面にシード層44をスパッタ法により形成する。シード層44は銅からなり、その厚みは50乃至1000nm程度である。
【0058】
シード層44は、ビアホールVHの径や形状を鑑みて、ビアホールVHの内面を確実に被覆する程度の最低限の厚みに設定されることが望ましい。
【0059】
シード層44が薄すぎると、ビアホールVH内でシード層44のステップカバレッジが十分に得られないため、セミアディティブ法においてビアホールVH内に電解めっきを施す際にボイドなどの不良が発生しやすくなる。また逆に、シード層44が厚すぎると、セミアディティブ法でのシード層44のエッチング時にエッチングシフトが大きくなり、微細配線を形成する際に不利になる。
【0060】
シード層44は、スパッタ法の他に、無電解めっきによって形成してもよい。
【0061】
このとき、前述したようにNi・Cu合金層42は既に密着性のよい状態で絶縁樹脂層30の上に形成されていることから、シード層44はNi・Cu合金層42を介して絶縁樹脂層30に密着性よく形成される。
【0062】
シード層44(Cu)は平滑な絶縁樹脂層30の上に直接形成すると十分な密着性が得られないが、Ni・Cu合金層42のような金属層の上には密着性よく形成されるからである。
【0063】
次いで、図5(b)に示すように、シード層44の上に、第2配線層が配置される部分に開口部32aが設けられためっきレジスト32をフォトリソグラフィによって形成する。めっきレジスト32の形成方法としては、ドライフィルムレジストを貼付してもよいし、あるいは液状レジストを塗布して形成してもよい。
【0064】
さらに、シード層44をめっき給電経路に利用する電解めっきにより、ビアホールVH内及びめっきレジスト32の開口部32aに銅などからなる金属めっき層46を形成する。金属めっき層46の厚みは、所望の配線抵抗が得られるように任意に設定できるが、例えば10μm程度に設定される。ビアホールVH内では、その内面に形成されたシード層44から内側に向かって金属めっきが施されてビアホールVHにビア導体が充填される。
【0065】
シード層44の下のNi・Cu合金層42もシードの一部として利用できるという観点からシード層44の薄膜化が可能になる。
【0066】
続いて、図5(c)に示すように、めっきレジスト32を除去した後に、金属めっき層46をマスクにしてシード層44(Cu)及びその下のNi・Cu合金層42をウェットエッチングして除去する。このとき、ウェットエッチングのエッチャントとして硫酸過水が使用され、硫酸過水によってシード層44(Cu)及びその下のNi・Cu合金層42が連続してエッチングされる。
【0067】
前述したように、Ni・Cu合金層42の硫酸過水でのエッチングレートはシード層44(Cu)のエッチングレートの3分の1程度は得られるため、硫酸過水によってシード層44(Cu)をエッチングした後に、同じ硫酸過水によってNi・Cu合金層42を連続してエッチングすることが可能になる。
【0068】
つまり、バッチタイプのウェットエッチング装置では、硫酸過水のウェット槽に複数のコア基板10を浸漬させることにより、シード層44(Cu)とNi・Cu合金層42を一括処理でエッチングが可能になり、生産効率の向上を図ることができる。
【0069】
これにより、Ni・Cu合金層42、シード層44及び金属めっき層46から形成される第2配線層40が絶縁樹脂層30の上に得られる。第2配線層40はビアホールVH(ビア導体)を介して第1配線層20の接続パッドPに電気的に接続されて形成される。
【0070】
本実施形態では、絶縁樹脂層30の表面が平滑であるため、セミアディティブ法においてめっきレジスト32をフォトリソグラフィで形成する際に、微細なレジストパターンを高精度で形成することができる。
【0071】
また、絶縁樹脂層30の表面は平滑であるため、セミアディティブ法でシード層44及びNi・Cu合金層42をエッチングする際に残渣が発生しにくくなり、狭ピッチの第2配線層40を歩留りよく形成することができる。
【0072】
さらには、シード層44及びNi・Cu合金層42は比較的薄膜に設定できるので、それらをエッチングする際のサイドエッチング量を抑えることができるので、くびれ形状などが改善され、信頼性の高い第2配線層40を得ることができる。
【0073】
次いで、図6に示すように、コア基板10の上面側に、第2配線層40の接続部に開口部34aが設けられたソルダレジスト34を形成した後に、第2配線層40の接続部にNi/Auめっき層などからなるコンタクト層Cを形成する。
【0074】
また同様に、コア基板10の下面側に、第1配線層20の接続部に開口部34aが設けられたソルダレジスト34を形成した後に、第1配線層20の接続部にNi/Auめっき層などからなるコンタクト層Cを形成する。
【0075】
以上により、本実施形態の配線基板1が得られる。
【0076】
図6の配線基板1では、両面側に第1配線層20が形成されたコア基板10の上面側に1層のビルドアップ配線を形成しているが、コア基板10の両面側に第1配線層20に接続されるビルドアップ配線をn層(nは1以上の整数)でそれぞれ形成してもよい。
【0077】
また、コア基板10としては絶縁基板やシリコン基板などのリジット基板の他に、フレキシブル基板を使用してもよい。
【0078】
前述したように、本実施形態の配線基板の製造方法では、まず、第1配線層20の上に、絶縁樹脂層30の上にNi・Cu合金層42が形成された積層体を形成する。Ni・Cu合金層42は絶縁樹脂層30の上に密着性のよい状態で形成される。次いで、Ni・Cu合金層42及び絶縁樹脂層30をレーザで加工することにより、第1配線層20の接続パッドPに到達するビアホールVHを形成する。
【0079】
さらに、デスミア処理によってビアホールVH内をクリーニングする。このとき、絶縁樹脂層30はNi・Cu合金層42で保護されるため、デスミア処理によって絶縁樹脂層30の表面が粗化されることはない。
【0080】
続いて、ビアホールVH内の接続パッドP(Cu)がウェット処理によってエッチングされる。このとき、Ni・Cu合金層42はCu層よりエッチングレートが低いため、絶縁樹脂層30の上にNi・Cu合金層42に密着層として残すことができる。
【0081】
次いで、セミアディティブ法により、ビアホールVH(ビア導体)を介して第1配線層20の接続パッドPに接続される第2配線層40が形成される。第2配線層40はNi・Cu合金層42、シード層44及び金属めっき層46から形成され、絶縁樹脂層30の上に密着性のよい状態で形成される。
【0082】
このとき、Ni・Cu合金層42はシード層44(Cu)のエッチャントで同時にエッチングできるため、Ni・Cu合金層42を使用することでプロセスが煩雑になるおそれはない。
【0083】
また、絶縁樹脂層30の表面は平滑に維持されていることから、セミアディティブ法において微細なめっきレジストを高精度で形成できると共に、シード層44及びNi・Cu合金層42をエッチングする際に残渣が発生しずらくなる。これにより、微細な第2配線層40を歩留りよく形成することができる。
【0084】
前述したように、本実施形態の配線基板の製造方法では、絶縁樹脂層30にNi・Cu合金層42が形成された積層体を第1配線層20の上に形成する際に(図3(c))、絶縁樹脂層30を形成した後にNi・Cu合金層42をスパッタ法などで成膜する方法、あるいはNi・Cu合金層付きフィルムFを貼付する方法がある。
【0085】
また、ビアホールVH内をデスミア処理する際に(図4(b))、ウェットプロセスを使用する方法、あるいはドライプロセスを使用する方法がある。
【0086】
さらには、セミアディティブ法で使用するシード層44を形成する際に(図5(a))、スパッタ法を使用する方法、あるいは無電解めっきを使用する方法がある。
【0087】
これら3つの工程の各2つの方法の組み合わせはいずれでもよく、合計8種類の製造方法を実施することができる。
【0088】
なお、前述したように、保護密着層として絶縁樹脂層30の上にNi・Cu合金層42を形成したが、Ni・Cu合金層42の代わりに、ニッケル(Ni)層、タンタル(Ta)層、又はチタン(Ti)層を使用することができる。
【0089】
Ni層、Ta層、又はTi層を使用する場合においても、前述した第1配線層20の接続パッドP(Cu)をエッチングする工程(図4(c))で、Ni層、Ta層、又はTi層はCu層よりエッチングレートが低いため密着層として残すことができる。
【0090】
しかしながら、Ni層、Ta層、又はTi層を使用する場合は、セミアディティブ法でシード層44をエッチングする工程(図5(c))において、Cu層のエッチャント(硫酸過水)では十分にエッチングできないため、シード層44(Cu)をエッチングした後に、エッチャントを代えてエッチングする必要がある。
【0091】
従って、Ni層、Ta層、又はTi層を使用する場合は、Ni・Cu合金層42を使用する場合よりエッチング工程が煩雑になり、生産効率の面で不利になる。
【0092】
図6に示すように、本実施形態の配線基板1では、コア基板10に貫通電極12が形成されており、コア基板10の両面側に形成された第1配線層20が貫通電極12を介して相互接続されている。
【0093】
コア基板10の上面側には第1配線層20を被覆する絶縁樹脂層30が形成されている。絶縁樹脂層30には第1配線層20の接続パッドPに到達するビアホールVHが形成されている。
【0094】
絶縁樹脂層30の上には、ビアホールVH(ビア導体)を介して第1配線層20の接続パッドPに接続される第2配線層40が形成されている。
【0095】
ビアホールVHに配置された第2配線層40は、ビアホールVHを除く部分に配置されてビアホールVHの外周から外側の絶縁樹脂層30の上に形成されたNi・Cu合金層42と、ビアホールVHの内面からNi・Cu合金層42の上まで延在するシード層44と、シード層44の上に形成されてビアホールVHに充填された金属めっき層46とを備えて形成される。
【0096】
絶縁樹脂層30の上に配置された第2配線層40は、下から順に、Ni・Cu合金層42、シード層44及び金属めっき層46から形成される。
【0097】
また、ビアホールVHの底部の第1配線層20の表面にはエッチングよって形成された凹部20aが設けられている。前述した製造方法で説明したように、Ni・Cu合金層42の厚みは第1配線層20の凹部20aの深さより薄く設定される。従って、最終的に残されたNi・Cu合金層42の厚みも第1配線層20の凹部20aの深さより薄くなっている。
【0098】
図6の部分拡大平面図(1)に示すように、第2配線層40がビアホールVHに配置されたパッド部40aとそれに繋がって外側に延びる延在配線部40bとを有する場合は、Ni・Cu合金層42はビアホールVHを除くパッド部40a(ビアホールVHの外側周辺部)及び延在配線部40bの領域にそれらの最下層として配置される(斜線部)。
【0099】
あるいは、図6の部分拡大平面図(2)に示すように、第2配線層40がビアホールVHに島状のパッド部40aとして配置される場合は、Ni・Cu合金層42はビアホールVHを除くパッド部40aの領域にその最下層としてリング状に配置される(斜線部)。
【0100】
このように、Ni・Cu合金層42は絶縁樹脂層30の上に所定のパターンで第2配線層40の最下層として形成されている。
【0101】
図6の部分拡大平面図(1)及び(2)では、ビアホールVH及び第2配線層40のみが模式的に描かれている。
【0102】
さらに、コア基板10の両面側に、第1配線層20及び第2配線層40の各接続部に開口部34aが設けられたソルダレジスト34がそれぞれ形成されており、各接続部にNi/Auめっき層などからなるコンタクト層Cが形成されている。
【0103】
前述したように、Ni・Cu合金層42はスパッタ法や蒸着法によって平滑な絶縁樹脂層30の上に密着性よく形成することができる。そして、Ni・Cu合金層42はCu層のエッチャント(硫酸過水)によるエッチングレートがCu層のエッチングレートより低いため、ビアホールVHを形成した後に第1配線層20の接続パッドPをエッチングするとしても密着層として残すことができる。
【0104】
また、Ni・Cu合金層42はCu層のエッチャント(硫酸過水)によってある程度のエッチングレートが得られるため、セミアディティブ法でシード層44(Cu)をエッチングする際に同時にエッチングすることが可能である。
【0105】
このように、セミアディティブ法を使用する配線形成において、シード層44の下に密着層としてNi・Cu合金層42を配置することにより、絶縁樹脂層30の表面を粗化することなく、微細な第2配線層40を密着性がよい状態で絶縁樹脂層30の上に形成することができる。絶縁樹脂層30の表面粗さ(Ra)は10乃至200nmであり、平滑な状態となっている。
【0106】
図7には、図6の配線基板に半導体チップが実装された様子が示されている。
【0107】
図7の例では、上面側の第2配線層40のコンタクト層Cにはんだなどのバンプ電極52によって半導体チップ50(LSIチップ)がフリップチップ接続される。さらに、半導体チップ50の下側の隙間にアンダーフィル樹脂54が充填される。そして、下面側の第1配線層20のコンタクト層Cにはんだボールを搭載するなどして外部接続端子56が設けられる。
【符号の説明】
【0108】
1…配線基板、10…コア基板、12…貫通電極、20…第1配線層、30…絶縁樹脂層、30a…樹脂フィルム、32…めっきレジスト、32a,34a…開口部、34…ソルダレジスト、40…第2配線層、42…Ni・Cu合金層、44…シード層、46…金属めっき層、50…半導体チップ、52…バンプ電極、54…アンダーフィル樹脂、56…外部接続端子、C…コンタクト層、F…Ni・Cu合金層付きフィルム、TH…スルーホール、VH…ビアホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線層の上に、絶縁樹脂層を介してニッケル・銅合金層が形成された積層体を形成する工程と、
レーザによって前記ニッケル・銅合金層及び前記絶縁樹脂層を加工することにより、前記第1配線層に到達するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホール内をデスミア処理する工程と、
前記ニッケル・銅合金層の上及び前記ビアホールの内面にシード層を形成する工程と、
前記ビアホールを含む部分に開口部が設けられためっきレジストを形成する工程と、
前記シード層をめっき給電経路に利用する電解めっきにより、前記ビアホール及び前記めっきレジストの開口部に金属めっき層を形成する工程と、
前記めっきレジストを除去する工程と、
前記金属めっき層をマスクにして前記シード層及び前記ニッケル・銅合金層をエッチングすることにより、前記ビアホールを介して前記第1配線層に接続される第2配線層を前記絶縁樹脂層の上に形成する工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1配線層は銅から形成され、
前記デスミア処理する工程の後であって、前記シード層を形成する工程の前に、
前記ビアホール内の前記第1配線層の表面をエッチングする工程をさらに有し、
前記ニッケル・銅合金層の厚みは、前記第1配線層をエッチングする工程の後も残る厚みに設定されることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記積層体を形成する工程において、前記ニッケル・銅合金層の厚みは、前記第1配線層をエッチングして形成される凹部の深さより薄く設定されることを特徴とする請求項2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記ニッケル・銅合金層のニッケルの含有率は、15乃至75wt%の範囲に設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記シード層は銅から形成され、
前記第2配線層を形成する工程において、前記シード層と前記ニッケル・銅合金層とを同一のエッチャントで一括してエッチングすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
第1配線層と、
前記第1配線層の上に形成された絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層に形成され、前記第1配線層に到達するビアホールと、
前記ビアホールを除く部分に配置されて前記ビアホールの外周から外側の前記絶縁樹脂層の上に形成されたニッケル・銅合金層と、前記ビアホールの内面から前記ニッケル・銅合金層の上に延在するシード層と、前記シード層の上に前記ビアホールに充填された状態で形成された金属めっき層とを含む第2配線層とを有し、
前記ニッケル・銅合金層は前記絶縁樹脂層の上に所定のパターンで形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
前記ビアホールの底部の前記第1配線層に凹部が形成されており、前記ニッケル・銅合金層の厚みは、前記第1配線層の前記凹部の深さより薄いことを特徴とする請求項6に記載の配線基板。
【請求項8】
前記絶縁樹脂層の表面粗さ(Ra)は、10乃至200nmの範囲に設定されることを特徴とする請求項6又は7に記載の配線基板。
【請求項9】
前記ニッケル・銅合金層のニッケルの含有率は、15乃至75wt%の範囲に設定されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項10】
前記第1配線層及び前記シード層は、銅からなることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−94734(P2012−94734A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241744(P2010−241744)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】