説明

配線基板検査装置及び方法

【課題】絶縁ワニスで被覆した絶縁電線を接着剤層を固定することによって製造されるマルチワイヤ配線基板に対する検査を高速で確実に検査する。
【解決手段】マルチワイヤ配線基板に光を垂直に照射し、色フィルタで所定の波長の光を選択し、撮像カメラによって色フィルタで選択した光マルチワイヤ配線基板の全面を撮像し、この全面の画像に所定の画像処理を施すことによって、絶縁電線の始点部、終点部が所定の領域内に入っているかの検査と始点部と終点部の間の経路の配線不良の検査を高速で確実に実現する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、配線基板における配線を検査する配線基板検査装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、絶縁ワニスで被覆した絶縁電線を、接着剤層を形成した絶縁基板表面に押付け、可聴周波数より高い周波数で振動する針状の治具によって接着剤を活性化しながら固定するマルチワイヤ配線基板が製造されている。マルチワイヤ配線基板には、例えばガラスポリイミド樹脂系基板に絶縁ワニスで被覆した絶縁ワニスを配線したものがある。
【0003】
マルチワイヤ配線基板の検査装置としては、特開平5−157517号公報に、配線基板を水平に保つ筐体と、筐体内部に取付けられた蛍光管と、蛍光管から照射された蛍光を筐体外へ導き配線基板の裏から照射する透明窓と、照射された蛍光によって配線基板の表から配線基板の細部を観察するためのテレビカメラと、そのテレビカメラを固定し、かつ配線基板を観察する水平位置に移動するための移動手段と、テレビカメラからの画像を処理する画像処理手段とを有し、基板に照明光を照射して、絶縁電線の始点部、終点部の端部の影と基板のクリアランスの明暗差を利用して、基板と絶縁電線を識別し検査する装置が開示されている。
【0004】
また、銅箔によって配線パターンが形成された配線基板を検査する装置が用いられている。このような装置では、配線基板の主面の全面の画像を撮像するため、撮像カメラをX軸方向に駆動するラインセンサ及び配線基板をY軸方向に駆動するテーブル、撮像カメラをY軸方向に駆動するラインセンサ及び配線基板をX軸方向に駆動するテーブル、固定された撮像カメラ及びXY軸方向に駆動可能なテーブル、XY軸方向に駆動可能な撮像カメラ及び固定されたテーブル、などの方法が提供されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記特開平5−157517号公報による方法は、絶縁電線の始点部、終点部の既に与えられたデータであるX,Y座標を中心とする円を検査範囲とし、その検査範囲ごとに撮像カメラであるエリアカメラの移動、検査範囲の画像の撮像、検査処理を繰返し行っており、検査を行う絶縁電線の始点部、終点部の数が増加すればするほど検査時間が多大となる。また、検査を行うために撮像する領域は、絶縁電線の始点部、終点部のみであり、絶縁電線の始点部と終点部の間の経路の配線不良を検出することができない。
【0006】
また、前述の銅箔によって配線パターンが形成された配線基板を検査する装置では、前記特開平5−157517号公報による検査装置に比べ、撮像時間は速く、検査時間は高速であり、被検査品に光を照射し撮像カメラが画像信号として撮像する画像は、銅箔によって配線パターンが形成された配線基板を検査するには十分である。しかし、マルチワイヤ配線基板に対しては、撮像により絶縁ワニスで被覆した絶縁電線を接着する接着剤が画像化されることや、配線基板の基材部と絶縁ワニスで被覆した絶縁電線とのコントラストが小さいまま基材部が画像化されることや、基材下の層のパターンが画像化されることにより、これらが欠陥として判定され、十分な検査ができなかった。
【0007】
本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、絶縁ワニスで被覆した絶縁電線を接着剤層を固定することによって製造されるマルチワイヤ配線基板に対する検査を高速で確実に行うような配線基板検査装置及び方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明に係る配線基板検査装置は、配線基板を検査するものであって、配線基板を少なくとも第1の方向に可動に支持する支持手段と、前記配線基板の主面を走査する、少なくとも前記第1の方向と直交する第2の方向に可動な撮像カメラと、所定の波長の光を透過する色フィルタと、前記撮像カメラで撮像した画像を処理する画像処理手段と、を有し、前記撮像カメラは、前記色フィルタを介して、前記第1及び第2の方向に前記配線基板の主面を走査して前記配線基板の全面の画像を撮像し、前記画像処理手段は、前記全面の画像を用いて前記配線基板上の配線を検査する。
【0009】
好ましくは、前記配線基板の主面に対して垂直に光を照射する照明手段を有し、前記撮像カメラは、前記照明手段によって照射された光の戻り光を用いて前記色フィルタを介して撮像する。
【0010】
本発明に係る配線基板検査方法は、配線基板の主面に対して垂直に光を照射するステップと、前記配線基板に照射した光の戻り光から色フィルタによって所定の波長の光を選択するステップと、前記選択した所定の波長の光による画像を撮像カメラで撮像するステップと、前記配線基板の主面を走査して前記配線基板の全面の画像を撮像するステップと、前記全面の画像を画像処理し、前記配線基板上の配線を検査するステップと、を有する。
【0011】
好ましくは、前記配線基板上の配線を検査するステップは、前記配線の始点部及び終点部が所定の領域内に入っているか検査するステップと、前記配線の始点部及び終点部の間の経路が接続されているか検査するステップと、を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る配線基板検査装置及び方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態の配線基板検査装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【0014】
配線基板検査装置は、マルチワイヤ配線基板1を支持するテーブル(支持手段)2と、マルチワイヤ配線基板1を照明する照明部材(照明手段)3と、照明部材3に光を供給する照明光源装置4と、所定の波長の光を透過させる色フィルタ5と、対物レンズ6と、撮像カメラ7と、図示しない画像処理ユニット(画像処理手段)とを有している。
【0015】
配線基板検査装置の被検査品であるマルチワイヤ配線基板1は、接着剤層を形成した例えばガラスポリイミド樹脂系の絶縁基板表面に絶縁ワニスで被覆した絶縁電線を押付け、可聴周波数より高い周波数で振動する針状の治具によって接着剤を活性化しながら固定して製造したものである。
【0016】
テーブル2は、水平になされた平坦な主面上にマルチワイヤ配線基板1の主面に対して平行にマルチワイヤ配線基板1を支持する。テーブル2は、マルチワイヤ配線基板1と共に少なくとも図中のY軸方向(第1の方向)に移動可能である。
【0017】
照明部材3は、撮像カメラ7とテーブル2を結び、テーブル2の主面及びマルチワイヤ配線基板1の主面にそれぞれ直交する光軸上においてマルチワイヤ配線基板1と対物レンズ6の間に配置される。照明部材3は、照明光源装置4から例えば光ファイバを介して提供される光束を、マルチワイヤ配線基板1の主面に対して前記光軸に沿って垂直に入射させる。
【0018】
本実施の形態においては、照明部材3によってマルチワイヤ配線基板1に対して垂直に光が照射されるので、絶縁ワニスで被覆した絶縁電線を接着する接着剤部からの光の反射を無くすことができる。したがって、撮像カメラ7においては、絶縁ワニスで被覆した絶縁電線部のみの光の反射を得ることで、接着剤部を画像化することなく絶縁電線を画像化できる。
【0019】
照明光源装置4は、例えばメタルハライドランプのような高輝度の光源を備え、照明部材3に所定の光束を供給する。
【0020】
対物レンズ6は、前記光軸上において色フィルタ5と撮像カメラ7の間に配置される。
【0021】
色フィルタ5は、前記光軸上において照明部材3と対物レンズ6の間に配置される。色フィルタ5は、マルチワイヤ配線基板1における所定の波長の光のみを選択的に透過させる。
【0022】
本実施の形態においては、絶縁ワニスで被覆した絶縁電線を反射する光の波長を選択的に撮像カメラ7に与える色フィルタ5を挿入することや、マルチワイヤ配線基板1の基材部及び基材下の層のパターン部を反射する光の波長を選択的に撮像カメラ7に与えない色フィルタ5を挿入することで、基材部と絶縁ワニスで被覆した絶縁電線とのコントラストがなく基材部が画像化されることや、基材下の層のパターンが画像化されることがなくなる。したがって、この配線基板検査装置が良品部を欠陥として誤って検出することを防ぐことができる。この色フィルタ6は、品種の違いによる絶縁電線の種類、基材種類、基材下の層のパターン種類に応じて色を変えて挿入して適用しても構わない。
【0023】
撮像カメラ7は、照明部材3からマルチワイヤ配線基板1に照射された光の戻り光を、対物レンズ6及び色フィルタ5を介して受光する。受光した撮像カメラ7からは、アナログもしくはデジタルの画像信号が出力される。
【0024】
撮像カメラ7は、少なくとも、テーブル2が移動可能なY方向に直交するX方向(第2の方向)に移動可能であり、ラインセンサとも称される。撮像カメラ7は、モノクロ又はカラーのいずれでもよい。また、撮像カメラ7は、CCDセンサ又はCMOSセンサのいずれによっても構成することができる。
【0025】
撮像カメラ7は、マルチレイヤ配線基板1の一部の領域の画像のみを一時に撮像可能である。本実施の形態では、テーブル2及び撮像カメラ7をX軸及びY軸方向にそれぞれ逐次に駆動することで、撮像カメラ7はマルチレイヤ配線基板1の主面の全面の画像を撮像する。
【0026】
図示しない画像処理ユニットは、撮像カメラ7によって撮像された被検査品のマルチワイヤ配線基板1の主面の全面の画像に画像処理を施すことによって、配線を検査する。すなわち、マルチワイヤ配線基板1の主面の全面の画像に基づいて、絶縁電線の始点部及び終点部が所定の領域内に存在するか検査する。また、絶縁電線の始点部と終点部の間が接続されているか検査する。
【0027】
このように、本実施の形態においては、照明部材3によってマルチワイヤ配線基板1の主面に対して垂直に光を照射し、マルチワイヤ配線基板1に照射した光の戻り光から色フィルタ5によって所定の波長の光を選択し、選択した所定の波長の光による画像を撮像カメラ7で撮像し、撮像カメラ7によってマルチワイヤ配線基板1の主面を走査して前記配線基板の全面の画像を撮像し、画像処理ユニットによってこの全面の画像を画像処理し、マルチワイヤ配線基板1上の配線を検査する。
【0028】
図2は、本実施の形態の配線基板検査装置の要部の断面図である。
【0029】
この図においては、図1で示した照明部材3は、照明光源装置4から供給された光束を出射するターミナル3、ターミナル3から出射された光束を集光する集光レンズ3、集光レンズ3から出射された光の方向をマルチワイヤ配線基板1の方向に直角に転じると共にマルチワイヤ配線基板1からの戻り光を透過させるハーフミラー3の各部材によって構成されることが示されている。
【0030】
マルチワイヤ配線基板1に垂直な光を照射するために、照明光源装置4から供給された光束をターミナル3から照射し、ターミナル3照射した光は、集光レンズ3により集光され、ハーフミラー3により屈折され、マルチワイヤ配線基板1の主面に照射される。
【0031】
照射された光は、マルチワイヤ配線基板1の主面から反射し、ハーフミラー3を透過し、色フィルタ5により、マルチワイヤ配線基板1の絶縁電線10からの反射光の波長を選択的に透過するもしくは,基材12、接着剤11からの反射光の波長を選択的に透過しないようにし、その光を対物レンズ6を介して撮像カメラ7上に結像する。
【0032】
なお、色フィルタ5は、照明光源装置4内に内蔵し、波長を限定した光をターミナル3に与えてもよいし、ターミナル3と対物レンズ3の間に挿入しても、集光レンズ3とハーフミラー3の間やハーフミラー3とマルチワイヤ配線基板1間、あるいは、対物レンズ6と撮像カメラ7の間に挿入しても構わない。
【0033】
本実施の形態によると、マルチワイヤ配線基板1に垂直な光を照射し、色フィルタ5により任意の波長光を選択した光を撮像カメラ7が受光することで、絶縁電線を画像化することができる。また、撮像カメラ7としてラインセンサを用い、全面を撮像することによって、高速で、絶縁電線部を画像化し、絶縁電線の始点部、終点部が所定の領域内に入っているかの検査と始点部と終点部の間の経路の配線不良の検査をすることができる。
【0034】
なお、上述の実施の形態は、本発明の一具体例を示すものであり、本発明はこれに限定されない。本発明の範囲を逸脱しない限り、種々の構成が可能である。また、品種の違いによる絶縁電線の種類、基材種類、基材下の層のパターン種類、接着剤の種類により、マルチワイヤ配線基板1に垂直な光を当てなくても、基材部と絶縁ワニスで被覆した絶縁電線とのコントラストが十分な画像で得られる照明構成であっても構わない。
【0035】
【発明の効果】
本発明によると、絶縁ワニスで被覆した絶縁電線を接着剤層を固定することによって製造されるマルチワイヤ配線基板に対する検査を高速で確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の配線基板検査装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態の配線基板検査装置の要部の断面図である。
【符号の説明】
1 マルチワイヤ配線基板
2 テーブル
3 照明部材
4 照明光源装置
5 色フィルタ
6 対物レンズ
7 撮像カメラ
8 集光レンズ
9 ハーフミラー
10 絶縁電線
11 接着剤
12 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板を検査する配線基板検査装置において、
配線基板を少なくとも第1の方向に可動に支持する支持手段と、
前記配線基板の主面を走査する、少なくとも前記第1の方向と直交する第2の方向に可動な撮像カメラと、
所定の波長の光を透過する色フィルタと、
前記撮像カメラで撮像した画像を処理する画像処理手段と、
を有し、
前記撮像カメラは、前記色フィルタを介して、前記第1及び第2の方向に前記配線基板の主面を走査して前記配線基板の全面の画像を撮像し、前記画像処理手段は、前記全面の画像を用いて前記配線基板上の配線を検査すること
を特徴とする配線基板検査装置。
【請求項2】
前記配線基板の主面に対して垂直に光を照射する照明手段を有し、前記撮像カメラは、前記照明手段によって照射された光の戻り光を用いて前記色フィルタを介して撮像することを特徴とする請求項1記載の配線基板検査装置。
【請求項3】
配線基板の主面に対して垂直に光を照射するステップと、
前記配線基板に照射した光の戻り光から色フィルタによって所定の波長の光を選択するステップと、
前記選択した所定の波長の光による画像を撮像カメラで撮像するステップと、
前記配線基板の主面を走査して前記配線基板の全面の画像を撮像するステップと、
前記全面の画像を画像処理し、前記配線基板上の配線を検査するステップと、
を有することを特徴とする配線基板検査方法。
【請求項4】
前記配線基板上の配線を検査するステップは、
前記配線の始点部及び終点部が所定の領域内に入っているか検査するステップと、
前記配線の始点部及び終点部の間の経路が接続されているか検査するステップと、
を有することを特徴とする請求項3記載の配線基板検査方法。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate


【公開番号】特開2004−69334(P2004−69334A)
【公開日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−225283(P2002−225283)
【出願日】平成14年8月1日(2002.8.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】