説明

配線基板

【課題】入力される高周波信号に対して、スプリアス領域で十分に減衰させると共に、高調波を特に大きく減衰させる。
【解決手段】入力線路3と出力線路6とを接続する、入力線路3の線路幅より細く、かつ高周波信号に含まれる所定の周波数の1/4波長の線路長を有する主線路4,5と、主線路4と入力線路3との接続部A、及び主線路5と出力線路6との接続部Cに、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、入力線路3の線路幅より太く、かつ所定の周波数の1/12波長の線路長を有する4つの第1のオープンスタブ8,9,12,13と、主線路4の中心位置に互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、入力線路3の幅より太く、かつ所定の周波数の1/8波長の線路長を有する2つの第2のオープンスタブ10,11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダー送信装置等に用いられ、高周波信号回路から入力される高周波信号を減衰させるフィルタを備えた配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯電話機等の電波を送受信する電子機器には、所望の周波数帯の信号を得るために、不要な周数帯(スプリアス領域)を減衰させるフィルタが用いられることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、誘電体基板の表面にマイクロストリップラインで形成された、パターン幅の狭い4本の高インピーダンス伝送線路と、これと交互に接続されたパターン幅の広い3本の低インピーダンス伝送線路とから構成される低域通過フィルタが提案されている。
【0004】
一方、レーダー送信装置等は、マイクロ波電力増幅器により高い出力レベルに増幅された信号波を出力するので、出力される信号波には、基本波の2倍波、3倍波である高調波が特に多く含まれる。そのため、このような高調波について特に大きく減衰させる必要があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、高インピーダンス伝送線路のそれぞれに、所定の阻止周波数の1/4波長の電気長を有する2本のオープンスタブが接続された低域通過フィルタが提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、通過領域周波数が阻止域周波数よりも高いマイクロ波フィルタであって、入力端子および出力端子を有するストリップ経路と、このストリップ経路に間隔が等間隔で順次並列に設けられた長さが異なる第1、第2、及び第3のスタブを構成するマイクロ波フィルタが提案されている。
【特許文献1】特開2004−282573号公報
【特許文献2】特公昭63−10601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の低域通過フィルタでは、ノイズレベルの大きい高調波を減衰させるために、低インピーダンス伝送線路とは別に、2本のオープンスタブを設ける構成としているので、それだけ装置が大型化する場合があった。
【0008】
また、特許文献2に記載のマイクロ波フィルタでは、入力する高周波信号より所望の周波数より高いスプリアス領域で一様な減衰量を得ることができなかった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、装置を大きくすることなく、スプリアス領域で十分な減衰量を得ることができ、かつ高調波に対しては特に大きな減衰量を得ることができるフィルタを備えた配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る配線基板の第1の特徴は、入力線路を介して入力された高周波信号から所望周波数領域を減衰して、出力線路を介して出力する分布定数回路で構成されたフィルタを備えた配線基板であって、前記フィルタは、前記入力線路と前記出力線路とを接続する、前記入力線路の線路幅より細く、かつ前記高周波信号に含まれる所定の周波数の1/4波長の線路長を有する主線路と、前記主線路と前記入力線路との接続部、及び前記主線路と前記出力線路との接続部に、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の線路幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/12波長の線路長を有する4つの第1のオープンスタブと、前記主線路の中心位置に互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/8波長の線路長を有する2つの第2のオープンスタブと、を備えたことにある。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る配線基板の第2の特徴は、入力線路を介して入力された高周波信号から所望周波数領域を減衰して、出力線路を介して出力する分布定数回路で構成されたフィルタを備えた配線基板であって、前記フィルタは、前記入力線路と前記出力線路とを接続する、前記入力線路の線路幅より細く、かつ前記高周波信号に含まれる所定の周波数の3/8波長の線路長を有する主線路と、前記主線路と前記入力線路とを接続する第1の接続部、及び前記主線路と前記出力線路とを接続する第2の接続部に、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の線路幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/12波長の線路長を有する4つの第1のオープンスタブと、前記主線路上における前記第1の接続部及び前記第2の接続部から内側にそれぞれ前記所定の周波数の1/8波長だけ離れた位置に、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/8波長の線路長を有する4つの第2のオープンスタブと、を備えたことにある。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る配線基板の第3の特徴は、入力線路を介して入力された高周波信号から所望周波数領域を減衰して、出力線路を介して出力する分布定数回路で構成されたフィルタを備えた配線基板であって、前記フィルタは、前記入力線路と前記出力線路とを接続する、前記入力線路の線路幅より細く、かつ前記高周波信号に含まれる所定の周波数の1/2波長の線路長を有する主線路と、前記主線路と前記入力線路とを接続する第1の接続部、及び前記主線路と前記出力線路とを接続する第2の接続部に、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の線路幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/12波長の線路長を有する4つの第1のオープンスタブと、前記主線路の中心位置と、前記主線路上における前記第1の接続部及び前記第2の接続部から内側にそれぞれ前記所定の周波数の1/8波長だけ離れた位置とに、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/8波長の線路長を有する6つの第2のオープンスタブと、を備えたことにある。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る配線基板の第4の特徴は、入力線路を介して入力された高周波信号から所望周波数領域を減衰して、出力線路を介して出力する分布定数回路で構成されたフィルタを備えた配線基板であって、前記フィルタは、前記入力線路と前記出力線路とを接続する、前記入力線路の線路幅より細く、かつ前記高周波信号に含まれる所定の周波数の1/2波長の線路長を有する主線路と、前記主線路と前記入力線路とを接続する第1の接続部と、前記主線路と前記出力線路とを接続する第2の接続部と、前記主線路上における前記第1の接続部及び前記第2の接続部から内側にそれぞれ前記所定の周波数の1/8波長だけ離れた位置とに、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の線路幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/12波長の線路長を有する8つの第1のオープンスタブと、前記主線路の中心位置に、互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/8波長の線路長を有する2つの第2のオープンスタブと、を備えたことにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装置を大きくすることなく、入力される高周波信号に対して、スプリアス領域で十分に減衰させると共に、高調波を特に大きく減衰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1では、高周波回路から入力線路を介して入力された高周波信号のスプリアス領域を減衰させると共に、入力された高周波信号の2倍波及び3倍波の高調波に対しては特に大きく減衰させるフィルタを備えた配線基板について説明する。
【0017】
≪配線基板の構成≫
図1は、本発明の実施例1である配線基板の構成を示す構成図である。
【0018】
本発明の実施例1である配線基板100は、配線基板100の外部から高周波信号が入力される入力端子2と、この入力端子2に接続された入力線路3と、入力線路3に接続され、入力線路3から高周波信号が入力される分布定数回路であるフィルタ1と、このフィルタ1に接続され、フィルタ1からの高周波信号を伝搬させる出力線路6と、出力線路6からの高周波信号を配線基板100の外部へ出力する出力端子7とを備える。
【0019】
フィルタ1は、主線路4,5と、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ10,11とを備えている。なお、図1では、各構成をそれぞれ説明するため、各構成を離して描き、それぞれの接続関係を線で示している。
【0020】
主線路4は、入力線路3と接続されており、高周波信号の伝搬方向に対する入力線路3の線路幅W1より細い線路幅W2となるように成型されている。
【0021】
主線路5は、主線路4と同一の線路幅W2で成型されており、一方の端部は主線路4に接続され、他方の端部は出力線路6に接続されている。
【0022】
このように、主線路4,5は、線路幅W1より細い線路幅W2となるように成型され、入力線路3と出力線路6との間に連結されているので、入力線路3から入力された高周波信号に対して、入力線路3より高いインピーダンスを有することとなる。
【0023】
第1のオープンスタブ8,9は、入力線路3と主線路4との接続部Aに、互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続され、他方の端部は開放されている。
【0024】
また、第1のオープンスタブ8,9は、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/12波長の線路長L1を有するように成型されている。これにより、高周波信号に含まれる基本波の3倍の周波数を有する3倍波にとって、第1のオープンスタブ8,9の線路長L1は1/4波長となるので、入力線路3から伝搬された3倍波と、第1のオープンスタブ8,9の開放端で全反射された3倍波とが打ち消し合い、結果的に3倍波を減衰させる。
【0025】
第2のオープンスタブ10,11は、主線路4と主線路5との間であり、かつ接続部AからP1だけ離れた位置である接続部Bに、互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続されており、他方の端部は開放されている。ここでP1は、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/8波長の長さである。
【0026】
第2のオープンスタブ10,11は、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/8波長の線路長L2を有するように成型されている。これにより、高周波信号に含まれる基本波の2倍の周波数を有する2倍波にとって、第2のオープンスタブ10,11の線路長L2は1/4波長となるので、主線路4から伝搬された2倍波と、第2のオープンスタブ10,11の開放端で全反射された2倍波とが打ち消し合い、結果的に2倍波を減衰させる。
【0027】
第1のオープンスタブ12、13は、主線路5と出力線路6との間であり、かつ接続部BからP1だけ離れた位置である接続部Cに、互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続されており、他方の端部は開放されている。なお第1のオープンスタブ12、13は、第1のオープンスタブ8,9と同様に、線路幅W3及び線路長L1を有しており、P1は、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/8波長の長さである。
【0028】
また、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ12,11と、主線路4,5との組合せによって、フィルタ1は、入力される高周波信号に含まれるスプリアス領域の成分を減衰するローパスフィルタとしての機能を有する。即ち、第1のオープンスタブ8,9,12,13は、入力線路3の線路幅W1より太く、かつ、減衰さるスプリアス領域の成分により定まる第1のオープンスタブ8,9,12,13の表面積をS1としたときに、下記数式1を満たす線路幅W3となるように成型されている。
【0029】
W3=S1/L1 (数式1)
同様に、第2のオープンスタブ10,11は、入力線路3の線路幅W1より太く、かつ、減衰させるスプリアス領域の成分により定まる第2のオープンスタブ10,11の表面積をS2としたときに、下記数式2を満たす線路幅W4となるように成型されている。
【0030】
W4=S2/L2 (数式2)
これにより、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ10,11とは、入力される高周波信号に対して、入力線路3及び主線路4,5より低いインピーダンスを有し、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ12,11と、主線路4,5との組合せによって、フィルタ1は、ローパスフィルタとしての特性を有することになる。
【0031】
図2(a)は、本発明の実施例1である配線基板100の側面図であり、図2(b)は、図2(a)において平面X−Yで切断した場合における本発明の実施例1である配線基板100の斜視図である。
【0032】
図2(b)に示すように、本発明の実施例1である配線基板100は、裏面に導体箔を形成した誘電体基板101上にフィルタ1が配置されたマイクロストリップラインの基板により構成されている。
【0033】
また、フィルタ1の上部に覆い被さるように、キャビティ構造のシールド部102が誘電体基板101上に固定されており、これにより、フィルタ1からの高周波信号の空間伝搬を阻止することができる。
【0034】
なお、本発明の実施例1である配線基板100は、マイクロストリップラインの基板に適用された例について説明したが、これに限らず、フィルタ1をストリップラインの基板に適用することも可能である。
【0035】
≪配線基板の作用≫
次に、本発明の実施例1である配線基板100の作用について図1を用いて説明する。
【0036】
外部の高周波回路から入力端子2を介してフィルタ1に入力された高周波信号は、入力線路3を伝搬して接続部Aに達すると、主線路4側と第1のオープンスタブ8,9側に分岐される。
【0037】
接続部Aにおいて第1のオープンスタブ8,9側に分岐された高周波信号は、第1のオープンスタブ8,9内を伝搬し、第1のオープンスタブ8,9の開放端で全反射されて接続部Aへ伝搬する。そして、この全反射された高周波信号と入力線路3から伝搬される高周波信号が接続部A点において合成される。
【0038】
ここで、第1のオープンスタブ8,9は、伝搬された高周波信号に含まれる基本波の1/12波長の線路長L1を有するように成型されているので、高周波信号に含まれる基本波の3倍の周波数を有する3倍波にとって、第1のオープンスタブ8,9の線路長L1は1/4波長となる。
【0039】
そのため、入力線路3から伝搬された高周波信号に含まれる3倍波と、第1のオープンスタブ8,9の開放端で全反射された3倍波との位相は180度異なるので、互いに打ち消し合い、高周波信号に含まれる3倍波を減衰させる。
【0040】
次に、3倍波が減衰された高周波信号は、主線路4を伝搬して接続部Bに達すると、主線路5側と第2のオープンスタブ10,11側に分岐される。
【0041】
接続部Bにおいて第2のオープンスタブ10,11側に分岐された高周波信号は、第2のオープンスタブ10,11内を伝搬し、第2のオープンスタブ10,11の開放端で全反射されて接続部Bへ伝搬する。そして、この全反射された高周波信号と主線路4から伝搬される高周波信号が接続部B点において合成される。
【0042】
ここで、第2のオープンスタブ10,11は、伝搬された高周波信号に含まれる基本波の1/8波長の線路長L2を有するように成型されているので、高周波信号に含まれる基本波の2倍の周波数を有する2倍波にとって、第2のオープンスタブ10,11の線路長L2は1/4波長となる。
【0043】
そのため、主線路4から伝搬された高周波信号に含まれる2倍波と、第1のオープンスタブ8,9の開放端で全反射された2倍波との位相は180度異なるので、互いに打ち消し合い、高周波信号に含まれる2倍波を減衰させる。
【0044】
さらに、2倍波が減衰された高周波信号は、主線路5を伝搬して接続部Cに達すると、第1のオープンスタブ8,9と同様に、第1のオープンスタブ12,13により、高周波信号から3倍波を減衰させる。
【0045】
また、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ12,11と、主線路4,5との組合せによって、ローパスフィルタとしての機能を有するので、入力線路3から入力される高周波信号から、この高周波信号に含まれるスプリアス領域の成分を減衰させる。
【0046】
図3は、本発明の実施例1である配線基板100により得られる高周波信号のシミュレーション値の一例を示した図である。
【0047】
外部の高周波回路から入力端子2を介して入力された高周波信号は、基本波201の他に、2倍波202と、3倍波203とを含んでいる。
【0048】
図3に示す減衰量204は、一般的なオープンスタブ型のトラップ回路による高周波信号の減衰量を示し、減衰量205は、一般的なローパスフィルタによる高周波信号の減衰量を示している。
【0049】
このように、一般的なオープンスタブ型のトラップ回路では、高周波数のスプリアス領域では十分な減衰量を得ることはできず、一般的なローパスフィルタでは、基本波の2倍波及び3倍波などのノイズレベル大きい高調波について十分な減衰量を得ることはできない。
【0050】
一方、図3に示す減衰量205は、本発明の実施例1である配線基板100による高周波信号の減衰量を示しており、本発明の実施例1である配線基板100によれば、スプリアス領域で十分な減衰量を得ることができ、かつ高調波に対しては特に大きな減衰量を得ることができる。
【実施例2】
【0051】
本発明の実施例1では、4つの第1のオープンスタブと、2つの第2のオープンスタブとを有し、高周波回路から入力線路を介して入力された高周波信号のスプリアス領域を減衰させると共に、入力された高周波信号に含まれる基本波の2倍波及び3倍波の高調波に対しては特に大きく減衰させるフィルタを備えた配線基板について説明した。
【0052】
本発明の実施例2では、入力された高周波信号に含まれる基本波の2倍波をより減衰するために、4つの第1のオープンスタブと、4つの第2のオープンスタブとを有したフィルタを備える配線基板について説明する。
【0053】
≪配線基板の構成≫
図4は、本発明の実施例2である配線基板の構成を示す構成図である。
【0054】
本発明の実施例2である配線基板100Aは、配線基板100Aの外部から高周波信号が入力される入力端子2と、この入力端子2に接続された入力線路3と、入力線路3に接続され、入力線路3から高周波信号が入力される分布定数回路であるフィルタ1Aと、このフィルタ1Aに接続され、フィルタ1Aからの高周波信号を伝搬させる出力線路6と、出力線路6からの高周波信号を配線基板100Aの外部へ出力する出力端子7とを備える。
【0055】
フィルタ1Aは、主線路4,5,21と、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ10,11,22,23とを備えている。
【0056】
ここで、本発明の実施例2である配線基板100Aのフィルタ1Aが備える構成のうち、主線路4,5と、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ10,11とは、それぞれ本発明の実施例1である配線基板100のフィルタ1が備えるそれぞれ同一符号が付された構成と同一である。
【0057】
即ち、本発明の実施例2である配線基板100Aのフィルタ1Aの特徴は、本発明の実施例1である配線基板100のフィルタ1が備える構成に加え、主線路4と主線路5との間に、主線路21と、第2のオープンスタブ22,23を更に備えたことにある。
【0058】
主線路21は、主線路4と主線路5との間に直列に接続されており、主線路4,5と同様に、線路幅W2で成型されている。
【0059】
第2のオープンスタブ22,23は、主線路21と主線路5との間であり、かつ接続部B,CからP1だけ離れた位置である接続部Dに、互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続されており、他方の端部は開放されている。ここでP1は、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/8波長の長さである。
【0060】
また、第2のオープンスタブ22,23は、第2のオープンスタブ10,11と同様に、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/8波長の線路長L2を有するように成型されている。これにより、高周波信号に含まれる基本波の2倍の周波数を有する2倍波にとって、第2のオープンスタブ22,23の線路長L2は1/4波長となるので、主線路4から伝搬された2倍波と、第2のオープンスタブ22,23の開放端で全反射された2倍波とが打ち消し合い、結果的に2倍波を減衰させる。
【0061】
また、第2のオープンスタブ22,23は、第2のオープンスタブ10,11と同様に、線路幅W4となるように成型されており、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ10,11,22,23と、主線路4,5,21との組合せによって、フィルタ1Aは、入力される高周波信号に含まれるスプリアス領域の成分を減衰するローパスフィルタとしての機能を有する。
【0062】
以上のように、本発明の実施例2である配線基板100Aは、本発明の実施例1である配線基板100のフィルタ1が備える構成に加え、主線路4と主線路5との間に、主線路21と、第2のオープンスタブ22,23を更に備えているので、スプリアス領域で十分な減衰量を得ることができ、かつ本発明の実施例1である配線基板100と比較して、より2倍波を減衰させることができる。
【実施例3】
【0063】
本発明の実施例2では、4つの第1のオープンスタブと、4つの第2のオープンスタブとを有し、高周波回路から入力線路を介して入力された高周波信号のスプリアス領域を減衰させると共に、入力された高周波信号に含まれる基本波の2倍波及び3倍波の高調波に対しては特に大きく減衰させるフィルタを備えた配線基板について説明した。
【0064】
本発明の実施例3では、入力された高周波信号に含まれる基本波の3倍波をより減衰するために、4つの第1のオープンスタブと、6つの第2のオープンスタブとを有したフィルタを備える配線基板について説明する。
【0065】
≪配線基板の構成≫
図5は、本発明の実施例3である配線基板の構成を示す構成図である。
【0066】
本発明の実施例3である配線基板100Bは、配線基板100Bの外部から高周波信号が入力される入力端子2と、この入力端子2に接続された入力線路3と、入力線路3に接続され、入力線路3から高周波信号が入力される分布定数回路であるフィルタ1Bと、このフィルタ1Bに接続され、フィルタ1Bからの高周波信号を伝搬させる出力線路6と、出力線路6からの高周波信号を配線基板100Bの外部へ出力する出力端子7とを備える。
【0067】
フィルタ1Bは、主線路4,5,21,31と、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ10,11,22,23,32,33とを備えている。
【0068】
ここで、本発明の実施例3である配線基板100Bのフィルタ1Bが備える構成のうち、主線路4,5と、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ10,11,22,23とは、それぞれ本発明の実施例2である配線基板100Aのフィルタ1Aが備えるそれぞれ同一符号が付された構成と同一である。
【0069】
即ち、本発明の実施例3である配線基板100Bのフィルタ1Bの特徴は、本発明の実施例2である配線基板100Aのフィルタ1Aが備える構成に加え、主線路21と主線路5との間に、主線路31と、第2のオープンスタブ32,33を更に備えたことにある。
【0070】
主線路31は、主線路21と主線路5との間に直列に接続されており、主線路4,5,21と同様に、線路幅W2で成型されている。
【0071】
第2のオープンスタブ32,33は、主線路31と主線路5との間であり、かつ接続部B,DからP1だけ離れた位置である接続部Eに、互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続されており、他方の端部は開放されている。ここでP1は、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/8波長の長さである。
【0072】
また、第2のオープンスタブ32,33は、第2のオープンスタブ10,11と同様に、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/8波長の線路長L2を有するように成型されている。これにより、高周波信号に含まれる基本波の2倍の周波数を有する2倍波にとって、第2のオープンスタブ32,33の線路長L2は1/4波長となるので、主線路4から伝搬された2倍波と、第2のオープンスタブ22,23の開放端で全反射された2倍波とが打ち消し合い、結果的に2倍波を減衰させる。
【0073】
また、第2のオープンスタブ32,33は、第2のオープンスタブ10,11と同様に、線路幅W4となるように成型されており、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ10,11,22,23,32,32と、主線路4,5,21,31との組合せによって、フィルタ1Bは、入力される高周波信号に含まれるスプリアス領域の成分を減衰するローパスフィルタとしての機能を有する。
【0074】
以上のように、本発明の実施例3である配線基板100Bは、本発明の実施例2である配線基板100Aが備える構成に加え、主線路21と主線路5との間に、主線路21と、第2のオープンスタブ22,23を更に備えているので、スプリアス領域で十分な減衰量を得ることができ、かつ本発明の実施例2である配線基板100Aと比較して、より2倍波を減衰させることができる。
【実施例4】
【0075】
本発明の実施例1では、4つの第1のオープンスタブと、2つの第2のオープンスタブとを有し、高周波回路から入力線路を介して入力された高周波信号のスプリアス領域を減衰させると共に、入力された高周波信号に含まれる基本波の2倍波及び3倍波の高調波に対しては特に大きく減衰させるフィルタを備えた配線基板について説明した。
【0076】
本発明の実施例4では、入力された高周波信号に含まれる基本波の3倍波をより減衰するために、8つの第1のオープンスタブと、2つの第2のオープンスタブとを有したフィルタを備える配線基板について説明する。
【0077】
≪配線基板の構成≫
図6は、本発明の実施例4である配線基板の構成を示す構成図である。
【0078】
本発明の実施例4である配線基板100Cは、配線基板100Cの外部から高周波信号が入力される入力端子2と、この入力端子2に接続された入力線路3と、入力線路3に接続され、入力線路3から高周波信号が入力される分布定数回路であるフィルタ1Cと、このフィルタ1Cに接続され、フィルタ1Cからの高周波信号を伝搬させる出力線路6と、出力線路6からの高周波信号を配線基板100Cの外部へ出力する出力端子7とを備える。
【0079】
フィルタ1Cは、主線路4,5,41,45と、第1のオープンスタブ8,9,12,13,42、43,46,47と、第2のオープンスタブ10,11とを備えている。
【0080】
ここで、本発明の実施例4である配線基板100Cのフィルタ1Cが備える構成のうち、主線路4,5と、第1のオープンスタブ8,9,12,13と、第2のオープンスタブ10,11とは、それぞれ本発明の実施例1である配線基板100のフィルタ1が備えるそれぞれ同一符号が付された構成と同一である。
【0081】
即ち、本発明の実施例4である配線基板100Cの特徴は、本発明の実施例1である配線基板100が備える構成に加え、主線路4と主線路5との間に、主線路41と主線路45とを備え、更に第1のオープンスタブ42,43,46,47を備えたことにある。
【0082】
主線路41は、主線路4と接続されており、主線路4,5と同様に、線路幅W2となるように成型されている。
【0083】
主線路45は、主線路41と同一の線路幅W2で成型されており、一方の端部は主線路41に接続され、他方の端部は主線路5に接続されている。
【0084】
このように、主線路4,41,45,5は入力線路3と出力線路6との間に、直列に接続されている。
【0085】
第1のオープンスタブ42,43は、主線路4と主線路41との間であり、かつ接続部A,BからP1だけ離れた位置である接続部Fに、互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続されており、他方の端部は開放されている。ここでP1は、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/8波長の長さである。
【0086】
また、第1のオープンスタブ42,43は、第1のオープンスタブ8,9と同様に、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/12波長の線路長L1を有するように成型されている。これにより、高周波信号に含まれる基本波の3倍の周波数を有する3倍波にとって、第1のオープンスタブ42,43の線路長L1は1/4波長となるので、主線路4から伝搬された3倍波と、第1のオープンスタブ42,43の開放端で全反射された3倍波とが打ち消し合い、結果的に3倍波を減衰させる。
【0087】
第1のオープンスタブ46,47は、主線路45と主線路5との間であり、かつ接続部B,CからP1だけ離れた位置である接続部Gに、違いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続されており、他方の端部は開放されている。ここでP1は、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/8波長の長さである。
【0088】
第1のオープンスタブ42,43は、第1のオープンスタブ8,9と同様に、入力された高周波信号に含まれる基本波の1/12波長の線路長L1を有するように成型されている。
【0089】
また、第1のオープンスタブ42,43,46,47は、第1のオープンスタブ8,9と同様に、線路幅W3となるように成型されており、第1のオープンスタブ8,9,12,13,42,43,46,47と、第2のオープンスタブ10,11と、主線路4,5,41,45との組合せによって、フィルタ1Cは、入力される高周波信号に含まれるスプリアス領域の成分を減衰するローパスフィルタとしての機能を有する。
【0090】
以上のように、本発明の実施例4である配線基板100Cは、本発明の実施例1である配線基板100のフィルタ1が備える構成に加え、主線路4と主線路5との間に、主線路41,45と、第1のオープンスタブ42,43,46,47を更に備えているので、スプリアス領域で十分な減衰量を得ることができ、かつ本発明の実施例1である配線基板100と比較して、より3倍波を減衰させることができる。
【0091】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、本発明の上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施例1である配線基板の構成を示す構成図である。
【図2】(a)は、本発明の実施例1である配線基板の側面図であり、(b)は、(a)において平面X−Yで切断した場合における本発明の実施例1である配線基板の斜視図である。
【図3】本発明の実施例1である配線基板により得られる高周波信号のシミュレーション値の一例を示した図である。
【図4】本発明の実施例2である配線基板の構成を示す構成図である。
【図5】本発明の実施例3である配線基板の構成を示す構成図である。
【図6】本発明の実施例4である配線基板の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0093】
1,1A,1B,1C…フィルタ、2…入力端子、3…入力線路、4,5,21,31,41,45…主線路、6…出力線路、7…出力端子、8,9,12,13,42,43,46,47…第1のオープンスタブ、100,100A,100B,100C…配線基板、101…誘電体基板、102…シールド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力線路を介して入力された高周波信号から所望周波数領域を減衰して、出力線路を介して出力する分布定数回路で構成されたフィルタを備えた配線基板であって、
前記フィルタは、
前記入力線路と前記出力線路とを接続する、前記入力線路の線路幅より細く、かつ前記高周波信号に含まれる所定の周波数の1/4波長の線路長を有する主線路と、
前記主線路と前記入力線路との接続部、及び前記主線路と前記出力線路との接続部に、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の線路幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/12波長の線路長を有する4つの第1のオープンスタブと、
前記主線路の中心位置に互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/8波長の線路長を有する2つの第2のオープンスタブと、を備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
入力線路を介して入力された高周波信号から所望周波数領域を減衰して、出力線路を介して出力する分布定数回路で構成されたフィルタを備えた配線基板であって、
前記フィルタは、
前記入力線路と前記出力線路とを接続する、前記入力線路の線路幅より細く、かつ前記高周波信号に含まれる所定の周波数の3/8波長の線路長を有する主線路と、
前記主線路と前記入力線路とを接続する第1の接続部、及び前記主線路と前記出力線路とを接続する第2の接続部に、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の線路幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/12波長の線路長を有する4つの第1のオープンスタブと、
前記主線路上における前記第1の接続部及び前記第2の接続部から内側にそれぞれ前記所定の周波数の1/8波長だけ離れた位置に、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/8波長の線路長を有する4つの第2のオープンスタブと、を備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項3】
入力線路を介して入力された高周波信号から所望周波数領域を減衰して、出力線路を介して出力する分布定数回路で構成されたフィルタを備えた配線基板であって、
前記フィルタは、
前記入力線路と前記出力線路とを接続する、前記入力線路の線路幅より細く、かつ前記高周波信号に含まれる所定の周波数の1/2波長の線路長を有する主線路と、
前記主線路と前記入力線路とを接続する第1の接続部、及び前記主線路と前記出力線路とを接続する第2の接続部に、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の線路幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/12波長の線路長を有する4つの第1のオープンスタブと、
前記主線路の中心位置と、前記主線路上における前記第1の接続部及び前記第2の接続部から内側にそれぞれ前記所定の周波数の1/8波長だけ離れた位置とに、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/8波長の線路長を有する6つの第2のオープンスタブと、を備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項4】
入力線路を介して入力された高周波信号から所望周波数領域を減衰して、出力線路を介して出力する分布定数回路で構成されたフィルタを備えた配線基板であって、
前記フィルタは、
前記入力線路と前記出力線路とを接続する、前記入力線路の線路幅より細く、かつ前記高周波信号に含まれる所定の周波数の1/2波長の線路長を有する主線路と、
前記主線路と前記入力線路とを接続する第1の接続部と、前記主線路と前記出力線路とを接続する第2の接続部と、前記主線路上における前記第1の接続部及び前記第2の接続部から内側にそれぞれ前記所定の周波数の1/8波長だけ離れた位置とに、2つづつ互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の線路幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/12波長の線路長を有する8つの第1のオープンスタブと、
前記主線路の中心位置に、互いに対向するように一方の端部がそれぞれ接続された、前記入力線路の幅より太く、かつ前記所定の周波数の1/8波長の線路長を有する2つの第2のオープンスタブと、を備えたことを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−296306(P2009−296306A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147890(P2008−147890)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】