説明

配線基板

【課題】コプレナー線路における信号線路の一端部を、絶縁層を貫通する貫通導体に接続させて絶縁層の下面側に電気的に導出させて成る配線基板において、10GHzを超える周波数帯域の信号を効率よく伝送させることが可能な配線基板を提供すること。
【解決手段】絶縁層の上面に高周波信号を伝播させるための細い帯状の信号線路2および信号線路2を所定の間隔で取り囲む接地導体層3から成るコプレナー線路を設けるとともに、前記コプレナー線路における信号線路2の端部を、前記絶縁層を貫通する貫通導体4に接続させて前記絶縁層の下面側に電気的に導出させて成る配線基板において、前記端部と接地導体層3との間隔は、信号線路2の両側における間隔G1よりも信号線路2の延長方向における間隔G2が広くなっているか、前記端部と接地導体層3との間の前記絶縁層に、信号線路2の延長方向を横切る溝が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波用の配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図3(a),(b)に示すように、高周波用の配線基板として、単層または複数層の絶縁層から成る絶縁基板11の上面に高周波信号を伝播させるための細い帯状の信号線路12およびこの信号線路12を所定の間隔で取り囲む接地導体層13から成るコプレナー線路を設けるとともに、このコプレナー線路における信号線路12の一端部を、絶縁基板11を貫通する貫通導体14に接続させて絶縁基板11の下面側に電気的に導出させて成る配線基板がある。このような配線基板においては、貫通導体14に接続される信号線路12の一端は、接地導体層13により円形状に一定の間隔で取り囲まれている。
【0003】
ところが、信号線路12に伝播される高周波信号の周波数が10GHzを超えるような周波数帯域においては、信号線路12を伝播してきた信号の一部が貫通導体14との接続部において、信号線路12の延長方向にある接地導体層13に漏れてしまい、信号の伝送効率が悪いものとなってしまう。この信号の漏れは、信号線路12の端部と接地導体層13との間に形成される容量成分により引き起こされるものと考えられる。そこで、貫通導体14に接続された信号線路12の端部とこれを円形に取り囲む接地導体層13との間隔を広げることにより信号線路12の端部と接地導体層13との間に形成される容量成分を減少させることが提案されている。
【0004】
しかしながら、貫通導体14に接続された信号線路12の端部とこれを円形に取り囲む接地導体層13との間隔を広げると、信号線路12の端部と接地導体層13との間に形成される容量成分は減少するものの、信号線路12の端部がこれを円形状に取り囲む接地導体層13の開口部13a内に突出する長さが長いものとなり、この部分のインダクタンスが増加してしまうので信号の反射損や挿入損を大きく改善できないばかりか、場合によっては悪化させてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−221944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、絶縁層の上面に高周波信号を伝播させるための細い帯状の信号線路およびこの信号線路を所定の間隔で取り囲む接地導体層から成るコプレナー線路を設けるとともに、このコプレナー線路における信号線路の一端を、絶縁層を貫通する貫通導体に接続させて絶縁層の下面側に電気的に導出させて成る配線基板において、貫通導体と接続する信号線路の端部における信号の漏れを低減し、10GHzを超える周波数帯域の信号を効率よく伝送させることが可能な配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一番目の配線基板は、絶縁層の上面に高周波信号を伝播させるための細い帯状の信号線路および該信号線路を所定の間隔で取り囲む接地導体層から成るコプレナー線路を設けるとともに、前記コプレナー線路における前記信号線路の端部を、前記絶縁層を貫通する貫通導体に接続させて前記絶縁層の下面側に電気的に導出させて成る配線基板において、前記端部と前記接地導体層との前記間隔は、前記信号線路の両側における間隔よりも前記信号線路の延長方向における間隔が広くなっていることを特徴とするものである。
本発明の二番目の配線基板は、絶縁層の上面に高周波信号を伝播させるための細い帯状の信号線路および該信号線路を所定の間隔で取り囲む接地導体層から成るコプレナー線路を設けるとともに、前記コプレナー線路における前記信号線路の端部を、前記絶縁層を貫通する貫通導体に接続させて前記絶縁層の下面側に電気的に導出させて成る配線基板において、前記端部と前記接地導体層との間の前記絶縁層に、前記信号線路の延長方向を横切る溝が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一番目の配線基板によれば、コプレナー線路を形成する信号線路の端部とこれを取り囲む接地導体層との間隔は、信号線路の両側における間隔よりも信号線路の延長方向における間隔が広くなっていることから、信号線路の端部におけるインダクタンスの増加を伴うことなく信号線路の端部とこれを取り囲む接地導体層との間に形成される容量成分を小さいものとすることができる。したがって、貫通導体と接続する信号線路の端部における信号の漏れを低減し、10GHzを超える周波数帯域の信号を効率よく伝送させることが可能となる。
【0009】
本発明の二番目の配線基板によれば、コプレナー線路を形成する信号線路の端部とこれを取り囲む接地導体層との間の絶縁層に、信号線路の延長方向を横切る溝が形成されていることから、信号線路の端部におけるインダクタンスの増加を伴うことなく信号線路の端部とこれを取り囲む接地導体層との間に形成される容量成分を小さいものとすることができる。したがって、貫通導体と接続する信号線路の端部における信号の漏れを低減し、10GHzを超える周波数帯域の信号を効率よく伝送させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す要部概略断面図であり、(b)は、(a)に示す配線基板の要部概略上面図である。
【図2】(a)は、本発明の配線基板の実施形態の別の例を示す要部概略断面図であり、(b)は、(a)に示す配線基板の要部概略上面図である。
【図3】(a)は、従来の配線基板の例を示す要部概略断面図であり、(b)は、(a)に示す配線基板の要部概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の配線基板における実施形態の一例を図1(a),(b)を基に説明する。本例の配線基板は、アルミナや窒化アルミニウム、ムライト、ガラスセラミックス等のセラミック材料や、エポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂、アリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する樹脂材料から成る単層または複数層の絶縁層から成る絶縁基板1の上面に、高周波信号を伝播させるための細い帯状の信号線路2およびこの信号線路2を所定の間隔で取り囲む接地導体層3とから成るコプレナー線路を設けるとともに、信号線路2の一端部を、絶縁基板1を貫通する貫通導体4を接続させることにより絶縁基板1の下面に導出させてなる。
なお、信号線路2および接地導体層3は、絶縁基板1がセラミックス材料から成る場合であれば、タングステンやモリブデン、銅等の金属粉末焼結体から成り、絶縁基板1が樹脂材料から成る場合であれば、銅箔や銅めっき層から成る。
【0012】
信号線路2は、絶縁基板1の上面を幅が20〜200μm、厚みが10〜25μmの細い帯状で延びており、図示しない高周波半導体素子の信号電極に接続されている。接地導体層3は、絶縁基板1の上面を信号配線2を20〜200μmの間隔で取り囲むように広がっており、信号線路2と同様の厚みのベタパターンとして形成されており、この信号線路2と接地導体層3とで高周波信号を伝送するためのコプレナー線路を形成している。そして、このコプレナー線路においては、信号線路2を接地導体層3が20〜200μmの間隔で取り囲んでいることにより信号線路2の特性インピーダンスが例えば50Ωに整合するように設計されている。なお、信号線路2の幅や厚み、信号線路2と接地導体層3との間の間隔等は、絶縁基板1に使用される誘電率や誘電正接や信号線路2および接地導体3に使用される材料の持つ導電率等の物性により適宜設定すればよい。
【0013】
また、信号線路2の一端部は、絶縁基板1を貫通する貫通導体4に接続されており、それにより絶縁基板1の下面に電気的に導出されている。貫通導体4は、絶縁基板1がセラミックス材料から成る場合であれば、タングステンやモリブデン、銅等の金属粉末焼結体から成り、絶縁基板1が樹脂材料から成る場合であれば、銅めっき等のめっき導体または銅や錫、銀、ビスマス等を含む導電ペーストの硬化物から成る。貫通導体4の直径は30〜300μmである。
【0014】
貫通導体4が導出した絶縁基板1の下面には、例えば外部電気回路基板の配線導体に接続される直径が50〜500μmの円形の接続パッド5が形成されているとともに、接続パッド5を所定の間隔で取り囲む接地導体層6が形成されている。これらの接続パッド5および接地導体層6は、信号線路2および接地導体層3と同様の材料から成る。なお、絶縁基板1の上面の接地導体層5と絶縁基板1下面の接地導体層2とは、絶縁基板1を貫通する図示しない複数の接地用貫通導体により互いに接続されており、それらの接地用貫通導体は貫通導体4を取り囲んで貫通導体4との間に疑似同軸線路を形成して貫通導体4における特性インピーダンスが例えば50Ωとなるように配置されている。なお、接続パッド5の直径や接続パッド5と接地導体層6との間隔等は、絶縁基板1に使用される誘電率や誘電正接や信号線路2および接地導体3に使用される材料の持つ導電率等の物性により適宜設定すればよい。
【0015】
そして本例の配線基板においては、絶縁基板1の上面においてコプレナー線路を形成する信号線路2の端部とこれを取り囲む接地導体層3との間隔は、信号線路2の両側における間隔G1よりも信号線路2の延長方向における間隔G2の方が広くなっている。具体的には、信号用線路2とこれを取り囲む接地導体層3との間隔は、信号線路2の両側においては、信号線路2の端部まで同じ広さの間隔G1であり、信号線路2の延長方向のみがに対して1.5倍から5倍程度広い間隔G2となっている。これにより、信号線路2は、その端部まで同じ間隔G1で両側の接地導体層3と対向することになり、端部におけるインダクタンスの増加が発生することはないとともに、信号線路2の端部と信号線路2の延長方向における接地導体層3との間に形成される容量成分が減少するので、信号線路2を伝播してきた信号が信号線路2の延長方向にある接地導体層3に漏れることを抑制することができる。したがって、本例の配線基板によれば、貫通導体4と接続する信号線路2の端部における信号の漏れを低減し、10GHzを超える周波数帯域の信号を効率よく伝送させることが可能となる。なお、信号線路2の端部とこれを取り囲む接地導体層3との間隔は、信号線路2の両側における間隔G1に対する信号線路2の延長方向における間隔G2の比率が1.5倍未満では信号の漏れを低減する効果が低いものの、2倍以上あれば十分であり、5倍を超えるとそのような広い間隔G2を設けるために余分なスペースが必要となるとともに効果の更なる増大が望めない。したがって、信号線路2の端部とこれを取り囲む接地導体層3との間隔は、信号線路2の両側における間隔G1に対する信号線路2の延長方向における間隔G2の比率が1.5〜5倍の範囲であることが好ましい。ちなみに、本発明者が、図1に示した配線基板をモデル化した本例に対応する解析モデルにおいて、G1に対するG2の比率を1.5倍した場合の解析モデルと、図3に示した配線基板をモデル化した従来技術に対応する解析モデルとを電磁界シミュレーターによりシミュレーションした結果によると、40GHzにおいて反射損はほとんど同一であるものの、挿入損では0.15dBの改善が見られた。
【0016】
次に、本発明の配線基板における実施形態の他の例を図2(a,)(b)を基に説明する。なお、本例の配線基板において上述した配線基板の実施形態の一例と同様の箇所には同様の符号を付し、煩雑をさけるため、その詳細な説明は省略する。本例の配線基板においても上述した実施形態の一例と同様に、単層または複数層の絶縁層から成る絶縁基板1の上面に、高周波信号を伝播させるための細い帯状の信号線路2およびこの信号線路2を所定の間隔で取り囲む接地導体層3から成るコプレナー線路を設けるとともに、信号線路2の一端部を、絶縁基板1を貫通する貫通導体4を接続させることにより絶縁基板1の下面に導出させてなる。また、絶縁基板1の下面には接続パッド5および接地導体層6が形成されている。絶縁基板1、信号線路2、接地導体層3、貫通導体4、接続パッド5および接地導体層6は、上述した実施形態の一例と同様の材料から形成されている。
【0017】
本例の配線基板においては、接地導体層3が信号線路2を取り囲む間隔は、上述の実施形態の一例におけるG1と同様の間隔G1で一定となっているとともに、絶縁基板1の上面においてコプレナー線路を形成する信号線路2の端部とこれを取り囲む接地導体層3との間の絶縁基板1の表面に信号線路2の延長方向を横切る溝7が形成されている。これにより、信号線路2は、その端部まで同じ間隔G1で両側の接地導体層3と対向することになり、端部におけるインダクタンスの増加が発生することはないとともに、信号線路2の端部と信号線路2の延長方向における接地導体層3との間に形成される容量成分が溝部7内の低誘電率の空気により減少するので、信号線路2を伝播してきた信号が信号線路2の延長方向にある接地導体層3に漏れることを抑制することができる。したがって、本例の配線基板によれば、貫通導体4と接続する信号線路2の端部における信号の漏れを低減し、10GHzを超える周波数帯域の信号を効率よく伝送させることが可能となる。ちなみに、本発明者が、図2に示した配線基板をモデル化した本例に対応する解析モデルにおいて、信号線路2の端部とこれを取り囲む接地導体層3との間の絶縁層に幅がG1と同様の溝7を設けた場合の解析モデルと、図3に示した配線基板をモデル化した従来技術に対応する解析モデルとを電磁界シミュレーターによりシミュレーションした結果によると、40GHzにおいて反射損はほとんど同一であるものの、挿入損では0.25dBの改善が見られた。
【0018】
なお、本発明は上述の実施形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更は可能であり、例えば上述の実施形態の一例では、信号線路2および接地導体層3から成るコプレナー線路を絶縁基板1の上面に設けた場合を示したが、絶縁基板を複数の形成し、絶縁基板の内部の絶縁層上に信号配線および接地導体層から成るコプレナー線路を形成するとともにこの絶縁基板内部のコプレナー線路に対して上述の実施形態の一例におけるコプレナー線路と同様の構成を適用してもよい。また、上述の実施形態の一例にさらに上述の実施形態の他の例を適用してもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 絶縁基板
2 信号線路
3 接地導体層
4 貫通導体
7 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の上面に高周波信号を伝播させるための細い帯状の信号線路および該信号線路を所定の間隔で取り囲む接地導体層から成るコプレナー線路を設けるとともに、前記コプレナー線路における前記信号線路の端部を、前記絶縁層を貫通する貫通導体に接続させて前記絶縁層の下面側に電気的に導出させて成る配線基板において、前記端部と前記接地導体層との前記間隔は、前記信号線の両側における間隔よりも前記信号線の延長方向における間隔が広くなっていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記信号線の延長方向における前記間隔が前記信号線の両側における前記間隔の1.5〜5倍であることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
絶縁層の上面に高周波信号を伝播させるための細い帯状の信号線路および該信号線路を所定の間隔で取り囲む接地導体層から成るコプレナー線路を設けるとともに、前記コプレナー線路における前記信号線路の端部を、前記絶縁層を貫通する貫通導体に接続させて前記絶縁層の下面側に電気的に導出させて成る配線基板において、前記端部と前記接地導体層との間の前記絶縁層に、前記信号線の延長方向を横切る溝が形成されていることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−96954(P2011−96954A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251473(P2009−251473)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】