説明

配線基板

【課題】
隣接する半田バンプ同士が接触して短絡してしまうことを防いで、半導体素子を正常に作動させることが可能な配線基板を提供すること。
【解決手段】
内層配線導体4aが被着された第1の絶縁層3aの表面に内層配線導体4aを挟んで第2の絶縁層3bが積層されているとともに第2の絶縁層3bの表面に半導体素子Sの電極Tが半田バンプ12を介して接続される複数の半導体素子接続パッド9が配設されて成る配線基板10であって、半導体素子接続パッド9は、半導体素子接続パッド9の直下に接続されたビア導体5aを介して内層配線導体4aに接続されている第1のパッド9aと、半導体素子接続パッド9から離間した位置で内層配線導体4aに接続されているか、あるいは内層配線導体4aから電気的に独立している第2のパッド9bとを含み、第2のパッド9bの直下に内層配線導体4aと直接的に非接続のダミービア導体5bが接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子をフリップチップ技術で接続して搭載する配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲーム機器や携帯電話などに代表される電子機器の小型、軽量、高機能化が進む中で、それらに使用される半導体素子を搭載する配線基板にも小型、軽量、高機能化が要求されている。
【0003】
これらの要求に応える技術の一つにフリップチップ技術がある。フリップチップ技術とは、半導体素子の回路面に形成された電極を、配線基板上に形成された半導体素子接続パッド上に対面させて半導体素子の電極と半導体素子接続パッドとを半田バンプを介して接続する技術である。このフリップチップ技術は、これまで主流であったワイヤでの接続方式に比べ、配線基板の面積を小さくでき電気特性に優れているなどの特長を有することから、半導体素子を搭載する配線基板の小型、軽量、高機能化に有効な技術として多用されるようになっている。
【0004】
このようなフリップチップ技術に用いられる配線基板は、複数の絶縁層が積層された絶縁基板の上下面および各絶縁層間に配線導体を配設して成る。そして、各絶縁層間を挟んで上下に位置する配線導体同士の間は、絶縁層を貫通するビア導体を介して接続されている。
【0005】
絶縁基板の上面中央部には半導体素子の電極がフリップチップ接続される半導体素子接続パッドが格子状に配列されている。また、絶縁基板の下面には、電気回路基板と接続するための外部接続パッドが格子状に配列されている。これらの半導体素子接続パッドおよび外部接続パッドは、最表層の配線導体層の一部から成り、各絶縁層を貫通するビア導体および各絶縁層の間に配設された内層の配線導体を介して所定のもの同士が互いに電気的に接続されている。そして、半導体素子の電極を半導体素子接続パッドに半田バンプを介して接続することによって半導体素子が配線基板上に搭載され、外部接続パッドを電気回路基板の配線導体に半田を介して接続することにより、半導体素子を搭載した配線基板が電気回路基板に実装される。
【0006】
なお、このような配線基板においては、半導体素子接続パッドと半導体素子の電極との接続を容易にするため、半導体素子接続パッドの上にあらかじめ半田バンプが溶着されている。この半田バンプはその頂部をコイニングにより平坦化しておく。そして半導体素子の電極を半導体素子接続パッドに接続するときは、平坦化された半田バンプ上に半導体素子の電極を載せてリフロー処理を行うことにより、半導体素子接続パッドと半導体素子の電極とを半田バンプを介して接続する方法が採用されている。なお、半田バンプ上に半導体素子の電極を載せてリフロー処理を行うときには、半導体素子の電極表面の酸化膜を除去するために、両者の間にフラックスが付与される。
【0007】
ところで、これらの半導体素子接続パッドには、その直下に接続されたビア導体を介して下層の内層配線導体に接続される第1のパッドと、その直下にビア導体が接続されておらず半導体素子接続パッドから離間した位置で下層の内層配線導体に接続されている、あるいは内層配線導体から電気的に独立している第2のパッドとが存在する場合があり、その場合、通常は第1のパッドの配列の中に第2のパッドが分散して配設されている。
【0008】
このような第1のパッドと第2のパッドとを有する従来の配線基板においては、半導体素子の電極と半導体素子接続パッドとを半田バンプを介して接続させるリフロー処理の際、直下にビア導体が接続されていない第2のパッドの上に形成された半田バンプが隣接する半田バンプと接触して短絡してしまうという現象が生じることがある。これは、次のような理由によるものと考えられる。まず、直下にビア導体が接続された第1のパッドと、直下にビア導体が接続されていない第2のパッドとでは、直下のビア導体分だけ熱容量が異なる。すなわち、第2のパッドの方が、第1のパッドよりも熱容量が小さい。したがって、リフロー処理の際に第2のパッドに溶着された半田バンプが、第1のパッドに溶着された半田バンプよりも先に温度が上がって溶融する。しかしながら、半導体素子の電極表面の酸化膜がフラックスにより十分に除去されるまでには、ある程度の時間を要する。したがって、第2のパッド上で溶融した半田バンプが半導体素子の電極表面にすぐには濡れないことがある。そしてこのような状態で第1のパッドの半田バンプが遅れて温度が上がって溶融すると、遅れて溶融した半田バンプが半導体素子の電極に先に濡れ、その表面張力により半導体素子が配線基板側に引き寄せられる現象が起こる。このとき、第2のパッド上の半田バンプが半導体素子の電極表面に未だ良好に濡れることが出来ていないと、濡れていない半田の一部が横へ押し出され、隣接する半田バンプと接触して短絡してしまうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−311253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、半導体素子接続パッドに溶着された半田バンプ上に半導体素子の電極を載せてリフロー処理する際、隣接する半田バンプ同士が接触して短絡してしまうことを防いで、半導体素子を正常に作動させることが可能な配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の配線基板は、内層配線導体が被着された第1の絶縁層の表面に内層配線導体を挟んで第2の絶縁層が積層されているとともに第2の絶縁層の表面に半導体素子の電極が半田バンプを介して接続される複数の半導体素子接続パッドが配設されて成る配線基板であって、半導体素子接続パッドは、半導体素子接続パッドの直下に接続されたビア導体を介して内層配線導体に接続されている第1のパッドと、半導体素子接続パッドから離間した位置で内層配線導体に接続されているか、あるいは内層配線導体から電気的に独立している第2のパッドとを含み、第2のパッドの直下に内層配線導体と直接的に非接続のダミービア導体が接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配線基板によれば、その直下において電気的な接続の必要性のない第2のパッドの直下に、内層配線導体と直接的に非接続のダミービア導体が接続されているため、第2のパッドにおける熱容量と、第1のパッドにおける熱容量との差が小さくなる。したがって、第1および第2のパッド上に溶着された半田バンプ上に半導体素子の電極を載せてリフロー処理する際、第1のパッド上に溶着された半田バンプと第2のパッド上に溶着された半田バンプとがほぼ同時に溶融する。このため、半導体素子の全ての電極と半田バンプとが同時に濡れる。したがって、隣接する半田バンプ同士が接触して短絡してしまうことを有効に防止することができ、その結果、半導体素子を正常に作動させることが可能な配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の配線基板の実施形態の一例を図1を基にして詳細に説明する。配線基板10は、コア用の配線導体2が被着されたコア用の絶縁板1の両主面にビルドアップ用の絶縁層3と配線導体4とが複数層ずつ積層されて成り、さらにその上下面にソルダーレジスト層6が被着されている。なお、この例では、ビルドアップ用の絶縁層3として第1の絶縁層3aと第2の絶縁層3bとを順次積層した例を示している。
【0015】
コア用の絶縁板1は、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁材料から成り、直径が100〜300μm程度のスルーホール7が複数形成されている。コア用の絶縁板1の厚みは40〜300μm程度である。
【0016】
コア用の絶縁板1の上下面およびスルーホール7の内にはコア用の配線導体2が被着されている。コア用の配線導体2は、例えばコア用の絶縁板1の上下面では銅箔およびその上の銅めっき層から成り、スルーホール7の内部では銅めっき層から成る。コア用の絶縁板1は配線基板10の強度をもたせる芯材としての機能を有している。
【0017】
ビルドアップ用の絶縁層3a,3bは、例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する電気絶縁材料から成り、その上面から下面にかけて貫通するビアホール8がレーザ加工により複数形成されている。絶縁層3a,3bの厚みは10〜50μm程度である。また、ビアホール8の直径は30〜100μm程度である。
【0018】
ビルドアップ用の第1の絶縁層3a上には内層配線導体4aが被着されており、ビルドアップ用の第2の絶縁層3b上には表層配線導体4bが被着されている。ビアホール8内には、ビア導体5が被着されている。そして、コア用の配線導体2と内層配線導体4aおよび内層配線導体4aと表層配線導体4bとがビア導体5を介して電気的に接続されている。なお、配線導体4およびビア導体5は、例えば無電解銅めっき層およびその上の電解銅めっき層から成り、周知のセミアディティブ法で形成されている。
【0019】
配線基板10の上面中央部には、半導体素子Sの電極Tがフリップチップ接続される多数の半導体素子接続パッド9が上面側の表層配線導体4bの一部により形成されている。また、配線基板10の下面には電気回路基板の配線導体と接続される多数の外部接続パッド11が下面側の表層配線導体4bの一部により形成されている。これらの半導体素子接続パッド9および外部接続パッド11は、それぞれ格子状に所定のピッチで配列されており、所定のもの同士がビア導体5および内層配線導体4aならびにコア用の配線導体2を介して互いに電気的に接続されている。
【0020】
ソルダーレジスト層6はエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する電気絶縁材料から成る。配線基板10の上面側に設けられたソルダーレジスト層6には、表層配線導体4bの一部を半導体素子Sの電極Tと接続される半導体素子接続パッド9として露出させる開口部が形成されており、下面側に設けられたソルダーレジスト層6には、表層配線導体4bの一部を外部回路基板の配線導体と接続される外部接続パッド11として露出させる開口部が形成されている。
【0021】
さらに、半導体素子接続パッド9には、半田バンプ12が溶着されている。半田バンプ12は、例えば錫を含む低融点金属から成り、半導体素子接続パッド9上に半田ペーストを印刷塗布するとともにリフロー処理することにより半導体素子接続パッド9上に溶着される。なお、半田バンプ12は、その頂部をコイニングにより平坦としておくことが好ましい。そして、本例の配線基板10によれば、半田バンプ12上に半導体素子Sの電極Tを載せてリフロー処理することにより半導体素子Sの電極Tと半導体素子接続パッド9とが半田バンプ12を介して接続される。
【0022】
なお、本例の配線基板10においては、半導体素子接続パッド9として、その直下に接続されたビア導体5aを介して下層の内層配線導体4aと電気的に接続される第1のパッド9aと、半導体素子接続パッド9から離間した位置で下層の内層配線導体4aと電気的に接続されている、あるいは内層配線導体4aから電気的に独立している第2のパッド9bとが存在している。このような第1のパッド9aと第2のパッド9bとを設けることにより、配線基板10の上面中央部に設けられた多数の半導体素子接続パッド9と配線基板10の下面に設けられた外部接続パッド11とを内層配線導体4aおよび表層配線導体4bを介して高密度配線として接続可能となる。また、第2のパッド9bが内層配線導体4aから電気的に独立している場合には、そのように電気的に独立した第2のパッド9bを配線基板10における将来的な設計変更のための予備パッドとして用いることができる。
【0023】
さらに、本発明においては、第2のパッド9bの直下にダミービア導体5bが接続されている。このダミービア導体5bは内層配線導体4aには直接的には接続されておらず、単に第2のパッド9bの熱容量を第1のパッド9aの熱容量に近似させる機能を有している。
このように、本例の配線基板10によれば、第2のパッド9bの直下に内層配線導体4aとは直接的に非接続のダミービア導体5bが接続されているため、第2のパッド9bにおける熱容量と、第1のパッド9aにおける熱容量との差を小さくすることができる。これにより、第1および第2のパッド9a、9b上に溶着された半田バンプ12上に半導体素子Sの電極Tを載せてリフロー処理する際、第1のパッド9a上に溶着された半田バンプ12と第2のパッド9b上に溶着された半田バンプ12とがほぼ同時に溶融する。このため、半導体素子Sの全ての電極Tと半田バンプ12とが同時に濡れる。したがって、隣接する半田バンプ12同士が接触して短絡してしまうことを有効に防止することができる。その結果、半導体素子Sを正常に作動させることが可能な配線基板10を提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
3a 第1の絶縁層
3b 第2の絶縁層
4a 内層配線導体
5a ビア導体
5b ダミービア導体
9 半導体素子接続パッド
9a 第1のパッド
9b 第2のパッド
10 配線基板
12 半田バンプ
S 半導体素子
T 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層配線導体が被着された第1の絶縁層の表面に前記内層配線導体を挟んで第2の絶縁層が積層されているとともに該第2の絶縁層の表面に半導体素子の電極が半田バンプを介して接続される複数の半導体素子接続パッドが配設されて成る配線基板であって、前記半導体素子接続パッドは、該半導体素子接続パッドの直下に接続されたビア導体を介して前記内層配線導体に接続されている第1のパッドと、前記半導体素子接続パッドから離間した位置で前記内層配線導体に接続されているか、あるいは前記内層配線導体から電気的に独立している第2のパッドとを含み、前記第2のパッドの直下に前記内層配線導体と直接的に非接続のダミービア導体が接続されていることを特徴とする配線基板。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−70003(P2013−70003A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209312(P2011−209312)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】